【文献】
KIMURA,A. FATAGAWA,N. USUI,A. MIZUTA,M.,Supersaturation-dependent step-behavior of InGaN grown by metal organic vapor phase epitaxy,Journal of Crystal Growth,NL,ELSEVIER,2001年 7月 1日,Vol.229 No.1-4,pp.53-57
【文献】
MIRAGLIA,P.Q. et al,Helical-type surface defects inInGaN thin films epitaxially grown on GaN templates at reduced temperatures,Thin Solid Films,スイス,ELSEVIER-SEQUOIA S.A.,2003年 8月 1日,Vol.437, No.1-2,pp.140-149
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インジウム−III−V族半導体層を形成するステップは、前記インジウム−III−V族半導体層の前記成長表面からのインジウムの脱着流動に比べて、前記インジウム−III−V族半導体層のVピット側壁部からのインジウムの脱着流動を低下させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記Vピット側壁部におけるインジウムの前記取り込みを上昇させるステップは、前記チャンバ温度を低下させるステップ、チャンバ圧力を上昇させるステップ、およびインジウム分圧を上昇させるステップの中の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記インジウム−III−V族半導体層を形成するステップは、III族分圧の合計に比べて、前記処理チャンバ内のインジウム分圧を上昇させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記インジウム−III−V族半導体層を形成するステップは、インジウムガリウム窒化物(InGaN)層を形成するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記インジウム−III−V族半導体層を形成するステップは、III族分圧の合計に比べて、前記処理チャンバ内のインジウム分圧を上昇させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において提示される図は、いかなる特定の材料、デバイス、または方法の実際図となるべきものでもなく、本発明の実施形態を説明するために使用される単なる理想的表象に過ぎない。
【0016】
「第1の」、「第2の」等の指示語を使用した本明細書におけるいかなる要素の参照も、限定が明示されない限り、それらの要素の量または順列を限定するものではない点を理解されたい。むしろ、これらの指示語は、本明細書においては、2つ以上の要素または要素例を区別する便宜的な方法として使用され得る。したがって、第1の要素および第2の要素に対する参照は、2つの要素のみがそこで使用され得ることも、または第1の要素が何らかの態様で第2の要素に先行しなければならないことも、意味しない。また、別様のことが述べられない限り、要素のセットが、1つまたは複数の要素を含んでもよい。
【0017】
本明細書において説明される要素は、同一要素の複数の例を含み得る。これらの要素は、一般的には数字指示子(例えば110)によって示され得るものであり、具体的にはアルファベット指示子が後に続く数字指示子(例えば110A)または「ダッシュ」の前に来る数字指示子(例えば110−1)によって示され得る。本説明を辿るのを容易にするために、殆どの部分において、要素の番号指示子は、それらの要素が紹介されるかまたはほぼ完全に論じられる図面番号で始まる。したがって、例えば、
図1の要素指示子は、殆どの場合は1xxという数字形態となり、
図4の要素は、殆どの場合は4xxという数字形態なる。
【0018】
以下の説明は、本開示の実施形態およびその実装を完全に説明するために、材料タイプおよび処理条件などの具体的詳細を提示する。しかし、本開示の実施形態は、これらの特定の詳細を使用せずに、および従来的な組立技術と組み合わせて、実施し得る点が、当業者には理解されよう。さらに、本明細書において示される説明は、半導体デバイスまたは半導体システムを製造するための完全なプロセスフローを形成しない。本明細書においては、本発明の実施形態を理解するために必要なプロセス行為および構造体が、詳細に説明されるに過ぎない。本明細書において説明される材料は、化学気相成長法(「CVD」)、プラズマ化学気相成長法(「PECVD」)、原子層堆積法(「ALD」)、プラズマALD、または物理気相成長法(「PVD」)を含むがそれらに限定されない任意の適切な技術により形成(例えば堆積または成長)され得る。本明細書において説明および示される材料は、層として形成され得るが、これらの材料は、層に限定されず、他の3次元構成で形成されてもよい。
【0019】
本明細書における「水平な」および「垂直な」という用語は、半導体構造体(例えばウェーハ、ダイ、基板等)の配向にかかわらず、半導体構造体の主要平面または主要表面に対する要素または構造体の相対位置を規定するものであり、説明されている構造体の配向に対して解釈される直交次元である。本明細書においては、「垂直な」という用語は、半導体構造体の主要表面に対して実質的に垂直な次元を意味および包含し、「水平な」という用語は、半導体構造体の主要表面に対して実質的に水平な次元を意味する。
【0020】
本明細書においては、「半導体構造体」という用語は、半導体デバイスの形成において使用される任意の構造体を意味および包含する。半導体構造体には、例えば、ダイおよびウェーハ(例えばキャリア基板およびデバイス基板)、ならびに、相互に3次元積層された2つ以上のダイおよび/またはウェーハを有するアセンブリあるいは複合構造体が含まれる。また、半導体構造体には、完全に製造された半導体デバイスと、半導体デバイスの製造中に形成される中間構造体とが含まれる。半導体構造体は、導体材料、半導体材料、非導体材料(例えば電気絶縁体)、およびそれらの組合せを含み得る。
【0021】
本明細書においては、「処理済み半導体構造体」という用語は、1つまたは複数の少なくとも部分的に形成されたデバイス構造体を備える任意の半導体構造体を意味および包含する。処理済み半導体構造体は、半導体構造体のサブセットであり、あらゆる処理済み半導体構造体が、半導体構造体である。
【0022】
本明細書においては、「III−V族半導体」という用語は、周期表のIIIA族からの1つまたは複数の元素(例えばB、Al、Ga、In、およびTi)、ならびに周期表のVA族からの1つまたは複数の元素(例えばN、P、As、Sb、およびBi)とから少なくとも主に構成される任意の半導体材料を意味および包含する。
【0023】
本明細書においては、「インジウムガリウム窒化物」および「InGaN」という用語は、InxGa1−xNという組成を有するインジウム窒化物(InN)およびガリウム窒化物(GaN)の合金を意味する。ここでは、0<x≦1である。
【0024】
本明細書においては、「臨界厚さ」という用語は、仮像成長が継続せず、層が歪み緩和を被る時点以降の、半導体材料層の平均総厚さを意味する。
【0025】
本明細書においては、「成長表面」という用語は、半導体基板または半導体層のさらなる成長が実施され得る半導体基板または半導体層の任意の表面を意味する。
【0026】
本明細書においては、「転位」という用語は、例えば結晶構造内における要素の欠損および結晶構造体における結合の破壊などの特性により特徴づけられ得る、半導体材料の結晶構造の不完全性が存在する半導体材料の領域を意味する。
【0027】
本明細書においては、「実質的に」という用語は、当技術において通常予想される任意の不足を除いては完全である結果を指すために使用される。
【0028】
本発明の実施形態は、多様なIII−V族半導体材料に対する用途を有し得る。例えば、本発明の実施形態の方法および構造体は、2成分形態、3成分形態、4成分形態、および5成分形態の、III族−窒化物、III族−ヒ化物、III族−リン化物、およびIII族−アンチモン化物に適用し得る。特定の用途は、インジウムガリウム窒化物(InGaN)などの、インジウムを含有するIII族−窒化物半導体の成長に関する。したがって、単に簡略化および便宜上の理由により、限定化を目的とせずに、以下の説明および図面は、III族−窒化物の一般的特徴を反映し、特にInGaNに焦点を置く場合がある。
【0029】
III族−窒化物材料システムの実験により、臨界厚さを越える厚さにまで仮像的に成長したInGaN層は、歪み緩和を被り、格子の不整合から生じる結晶格子の歪みを緩和させ得ることが実証されている。InGaN層における歪み緩和の開始時には、多量のインジウムが取り込まれる場合があり、これにより、InGaN層の厚さにわたってインジウムの不均一な濃度プロファイルが得られる場合がある。例えば、InGaN層は、層の成長表面の近位に高い割合のインジウムを含む場合がある。InGaN層におけるかかる不均一なインジウム組成は、少なくともいくつかの用途にとっては望ましくない場合がある。
【0030】
また、実験により、InGaN層の歪み緩和によってInGaN層の成長表面の粗面化が生じる場合もあることが実証されている。かかる表面の粗面化は、このInGaN層を使用した半導体デバイスの作製にとって好ましくない場合がある。さらに、実験により、InGaN層の歪み緩和によって結晶材料中の欠陥密度が上昇する場合があることが実証されている。かかる欠陥には、例えば、転位、および不均質組成領域(すなわち相分離領域)などが含まれ得る。
【0031】
非限定的な例としては、InGaN(III族−窒化物材料)の場合に、InGaN層は、重畳されるInGaN層の結晶格子と整合しない結晶格子を有し得る下層基板の上にヘテロエピタキシャルに堆積され得る。例えば、InGaN層は、ガリウム窒化物(GaN)を含む半導体基板上に堆積され得る。GaNは、約3.189Åの緩和された(すなわち実質的に歪みのない)面内格子パラメータを有し、InGaN層は、対応するインジウム含有量の割合に応じて、約3.21Å(7%インジウムの場合、すなわちIn0.07Ga0.93N)、約3.24Å(15%インジウムの場合、すなわちIn0.15Ga0.85N)、および約3.26Å(25%インジウムの場合、すなわちIn0.25Ga0.75N)の緩和された面内格子パラメータを有し得る。
【0032】
図1は、半導体材料層130およびその上に形成されたインジウム−III−V族半導体層140を有し、それらの中に形成された転位(132および142)およびVピット150を示す、半導体構造体100の概略断面図である。半導体構造体100は、基板110を備えるように製造されるか、または別様に準備されてもよい。基板110は、以下においてさらに詳細に説明するように、半導体材料層130およびインジウム−III−V族半導体層140の組立の一部として1つまたは複数の追加の半導体材料層をその上に形成する際に使用するためのシード層として使用され得る半導体材料を含んでもよい。
【0033】
半導体材料層130は、基板110に装着され、基板110により担持されてもよい。しかし、いくつかの実施形態においては、半導体材料層130は、基板または任意の他の材料の上に配設されないまたは担持されない、独立した半導体材料バルク層を備えてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態においては、半導体材料層130は、半導体材料エピタキシャル層を備えてもよい。非限定的な例としては、半導体材料層130は、III−V族半導体材料エピタキシャル層を備えてもよい。非限定的な例としては、III−V族半導体層130は、GaNエピタキシャル層であってもよい。
【0035】
基板110は、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)(例えばサファイア)、酸化亜鉛(ZnO)、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)、ガリウムヒ素(GaAs)、リチウム没食子酸塩(LiGaO2)、リチウムアルミ酸塩(LiAlO2)、イットリウム酸化アルミニウム(Y3Al5O12)、または酸化マグネシウム(MgO)などの材料であってもよい。
【0036】
任意には、別の半導体材料層などの1つまたは複数の中間材料層(図示せず)か、あるいは1つまたは複数の誘電体材料層が、半導体材料層130と基板110との間に配設されてもよい。かかる中間材料層は、例えば、半導体材料層130をその上に形成するためのシード層として、あるいは、基板110の上に半導体材料層130を直接的に形成することが困難または不可能である場合に実施され得るような、基板110に対して半導体材料層130を結合するための結合層として使用されてもよい。さらに、基板110に対して半導体材料層130を結合することは、半導体材料層130が極性結晶配向を有する場合には、望ましいものとなり得る。かかる実施形態においては、結合プロセスは、有極半導体材料の極性を変更するために使用され得る。
【0037】
本明細書においては、図面は、縮尺どおりには描かれておらず、実際には、III−V族半導体層130は、基板110よりも比較的薄くてもよい。
【0038】
転位(132Bおよび132D)は、III−V族半導体層130が形成されつつある際に形成され得る。
図1に示すように、これらの転位は、層が大きな厚さで形成されるにつれて継続する貫通転位となり得る。換言すれば、転位が生ずると、これは、層が形成されるにつれて伝播する傾向があり、したがって層形成の完了後にIII−V族半導体層130の最終表面上に出現することとなる。
【0039】
当技術において公知の様々な方法の任意のものが、III−V族半導体層130における転位密度を低下させるために使用されてもよい。かかる方法には、例えば、エピタキシャル横方向成長(ELO)、ペンデオエピタキシー、in−situマスキング技術等が含まれ得る。半導体材料層130は、例えば、有機金属気相成長法(MOCVD)、分子線エピタキシー法(MBE)、またはハイドライド気相成長法(HVPE:hydride vapor phase epitaxy)などのプロセスを利用して堆積されてもよい。
【0040】
また、
図1は、III−V族半導体層130上の追加のIII−V族半導体材料140を示す。非限定的な例としては、この追加のIII−V族半導体材料140は、InGaN層140か、またはガリウムリン(GaP)およびガリウムヒ素(GaAs)などの別のタイプのIII−V族半導体材料と組み合わされたインジウムを備えてもよい。III−V族半導体材料と組み合わされたインジウム半導体層は、本明細書においては、インジウム−III−V族半導体材料またはインジウム−III−V族半導体層140と呼ばれる場合がある。
【0041】
InGaN合金層が、GaNテンプレート(例えばサファイア110上のGaN130)の上に不整合の格子を成長させる。InGaN層140中のインジウムがより多くなるにつれ、InGaN層140とGaNテンプレートとの間の格子不整合がより大きくなる。一般的には、構成不整合成長(すなわちInGaN層140とGaNテンプレートとの間の不整合)は、InGaN層140中に蓄積された歪みエネルギーが転位同士を凝集させる歪みエネルギーよりも大きな場合に、歪み緩和を伴う。この格子不整合成長は、立方晶系に配列された格子に対して生じるが、GaNまたはInGaNまたはAlGaNなどの六方晶系格子構造を有する材料に対してはより複雑なものとなる。
【0042】
六方晶系層においては、転位の容易なすべり面は存在しない場合があり、したがって、はるかに高い歪みエネルギーが、転位の凝集までにInGaN層140中に蓄積され得る。緩和に達すると、塑性緩和が、成長表面の修飾により引き起こされる。成長表面が、(0001)六方晶系である場合には、ピット欠陥150が、発生し得る。これらのピット欠陥は、GaN基板の転位(しばしば貫通転位)付近に頂点を有する逆ピラミッドとして出現し、Vピット150としばしば呼ばれる。InGaN層140が、成長するにつれて、この逆ピラミッドもまた成長する。厚いInGaN層の場合には、Vピット150は、非常に大きくなり得る。
【0043】
一般的には、より薄いInGaN層140は、Vピット150を殆どまたは全く伴わずに成長し得る。InGaN層140中の歪みエネルギーは、層厚さと共に上昇するため、薄層は、歪み緩和が生じる厚さ(すなわち臨界厚さ)に達しない場合がある。しかし、いくつかの用途においては、厚いInGaN層が望ましい場合がある。その結果、従来的な処理により、Vピット150は、より厚いInGaN層140中に存在し、Vピット150は、InGaN層140がより厚くなるにつれて、より深くより幅広になる。
【0044】
より薄いInGaN層に加えて、インジウム濃度がガリウム濃度に対して比較的低く維持される場合にも、比較的Vピットが存在しないInGaN層を形成することが一般的には可能となり得る。しかし、多くの用途は、厚いInGaN層、InGaN層中の高いインジウム濃度、またはそれらの組合せを必要とし、これらはいずれも、深く幅広のVピットをもたらし得る。
【0045】
既述のように、Vピットは、しばしば、III−V族半導体層130中の132Bおよび132Dならびにインジウム−III−V族半導体層140中の142Aおよび142Eとして示される貫通転位などの転位から始まる。これらの転位132から、Vピット(150A、150B、150D、および150E)は、インジウム−III−V族半導体層140が成長するにつれて、より大きく形成され成長し得る。また、Vピットは、Vピット150Cにより示すような原転位としても始まり得る。
【0046】
これらの深いVピット150は、層転写のためのさらなる処理の後に、すなわちスマートカットプロセスおよび結合プロセスにより、穴となり得る。また、Vピット150は、イオン注入深さを局所的に変化させる場合があり、結果としてスプリッティング欠陥をもたらし得る。さらに、ピットが形成されたInGaN層の上への層転写後のさらなる再成長により、LEDデバイスにとって好ましくない非常に深いピットが生じる。例えば、Vピット150が、InGaN層140全体にわたって生じる場合には、このVピット150は、LEDデバイスのダイオード部分に短絡を引き起こし、それにより、デバイスは、意図した機能を果たすことができなくなる場合がある。
【0047】
図2は、非限定的な例のIn−III−V族半導体層140中のVピット150の非限定的な例を示す概略等角図である。成長表面148上の開口の六角形状は、InGaNの結晶構造成長によるものである。さらに、Vピット側壁部152は、結晶構造成長によりVピット150が形成を始める場所である頂点155から上方に続き、これによってVピット150は、深さ154に対して一定の比率の幅156を一般的に有する。したがって、Vピット150の深さ154は、Vピットの幅156に基づき正確に推定することが可能である。
【0048】
本発明の実施形態は、インジウム−III−V族半導体層140がIII−V族半導体層130の上に形成される場合に形成されるVピット150の個数、サイズ、またはそれらの組合せを低減させることができる。また、Vピット150のこの低減は、本明細書においては「軽減されたVピット密度」および「軽減されたVピットの密度」とも呼ばれる。したがって、Vピット密度の軽減は、所与の表面積におけるVピットの少数化、所与の表面積におけるVピットの縮小化、または所与の表面積におけるVピットの少数化および縮小化の組合せを指し得る。
【0049】
Vピットの形成に関していかなる特定の理論にも縛られるものではないが、Shiojiri(非特許文献1参照)は、成長速度が、成長表面148の{0001}基面に比べて、Vピット側壁部152である{10−11}面においては異なる点を示唆している。さらに、Vピット側壁部152の{10−11}面は、成長表面148の{0001}基面よりもインジウムに対する高い付着係数を有し得る。その結果、本発明の実施形態は、処理中の気相のインジウムの割合を上昇させることにより、形成される固体材料の成長表面148の{0001}基面上のインジウム濃度が飽和し得ると共に、Vピット側壁部152の{10−11}面上のインジウムのより高い濃度によってVピット側壁部上のInGaNの成長を促進させることが可能となることによって、Vピット密度を低下させ得る。
【0050】
図3は、半導体材料層130およびその上に形成されるインジウム−III−V族半導体層140を有し、本発明の1つまたは複数の実施形態によるそれらの中に形成されたVピットの軽減された密度が示される、半導体基板110の概略断面図である。
図1と同様に、半導体構造体100は、基板110を備えるように製造されるかまたは別様に準備され得る。基板110、半導体材料層130、およびインジウム−III−V族半導体層140は、
図1において説明されるものと同様である。
【0051】
しかし、
図3は、従来的なVピット152A、152B、および152C(すなわち従来的な処理が利用される場合に形成され得るVピット)を示す。また、
図3は、より小さなVピット(158A、158B、および158C)も示し、これらは、本発明の1つまたは複数の実施形態によるVピット密度の軽減をもたらす。軽減されたVピット158Aおよび158Cは、貫通転位132Bおよび132Cからそれぞれ端を発するVピットが、従来的な処理を利用して形成されたVピット152Aおよび152Cに比べてより低速で成長した(すなわち同様の大きさを有していない)ことを示す。軽減されたVピット158Bは、従来的な処理を利用することにより転位から直接的に形成され得るVピット152Bに比べてより小さなVピットを示す。
【0052】
図4は、ある気相インジウム濃度に対するインジウム飽和状況を示すための、インジウム固相濃度対インジウム気相濃度のグラフである。
図4は、比較的一定の温度、比較的一定の圧力、比較的一定の合計ガス流、および比較的一定のウェーハ回転速度を用いた処理チャンバにおける実験から展開され得る。ある特定のガリウム流量を伴う場合に、インジウム流量を変化させて、x軸により示すように気相のインジウムの割合を変化させることができる。InGaN層において展開される固相のインジウムの割合は、気相のインジウムの割合の関数としてy軸上に示される。
【0053】
いくつかの実施形態においては、InGaN層を形成するためのインジウム前駆体は、例えばトリメチルインジウム(TMI)、トリエチルインジウム(TEI)、またはそれらの組合せなどを含んでもよい。いくつかの実施形態においては、InGaN層を形成するためのガリウム前駆体は、例えばトリエチルガリウム(TEG)または他の適切な材料などを含んでもよい。いくつかの実施形態においては、InGaN層を形成するための窒素前駆体は、例えばアンモニア(NH3)または他の適切な材料などを含んでもよい。
【0054】
したがって、一実施形態については、
気相の%インジウム=100*(TMI流/(TMI流+TEG流)) (1)
となる。
【0055】
初めに、気相のインジウムの割合が上昇するにつれて、固相のインジウムの割合は、セグメント410Aにより示されるように比例して上昇する。しかし、変曲点410Bに達すると、気相のインジウムの割合がさらに上昇しても、セグメント410Cにより示されるように固相のインジウムの割合の上昇にはつながらない。固相のインジウム濃度の比例上昇が起きない気相のインジウム濃度のこの範囲は、本明細書においてはインジウム飽和状況(saturation regime)と呼ばれる。
【0056】
図5は、
図4の飽和状況と、本発明の1つまたは複数の実施形態による過飽和状況とを示す、インジウム固相濃度対インジウム分圧のグラフである。
【0057】
当業者には理解されるように、処理チャンバ内のガス流量は、処理チャンバ内のそれぞれ異なるガスによる分圧に相関する。その結果、気相のインジウム濃度は、
気相の%インジウム=100*(P
TMI/(P
TMI+P
TEG)) (2)
として表すことも可能である。
【0058】
換言すれば、インジウム分圧(P
TMI)およびガリウム分圧の組合せであるIII族の分圧合計(P
TMI+P
TEG)に対するインジウム分圧の関係を容易に判定することが可能となる。説明を簡略化するために、本明細書においては、説明の殆どが、分圧に関するものであるが、これらの説明は、相関する流量に対しても該当し得ることが当業者には理解されよう。
【0059】
当然ながら、他の不活性ガス(例えば窒素)および例えばドーパントなどの他の反応物が、反応チャンバ内に存在してもよい。非限定的な例としては、Nドーパントが、例えばシラン(SiH
4)などのケイ素含有蒸気を含んでもよく、Pドーパントが、例えばビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(Cp2Mg)などの蒸気を含むマグネシウムを含んでもよい。
【0060】
図5においては、y軸は、インジウム分圧(本明細書においては気相のインジウム濃度とも呼ばれる)を示すx軸に対する固相のインジウムの割合(本明細書においては固相のインジウム濃度とも呼ばれる)を示す。
【0061】
セグメント510Aおよび510Cは、気相のインジウム濃度に対する固相のインジウム濃度の比例上昇(510A)と、その後の、インジウム濃度が気相のインジウム濃度の上昇に対して比較的一定に留まる(510C)飽和状況とを示す。
【0062】
線520は、飽和状況よりもより高い固相のインジウム濃度が得られ得るインジウム過飽和状況を示す。したがって、本明細書においては、インジウム過飽和状況という用語は、上記において論じた飽和状況を利用して固相半導体層中に形成されるインジウム濃度に比べて、形成された固相半導体層中のインジウム濃度がより高くなるように設定された処理チャンバ内の状況を意味する。
【0063】
非限定的な例としては、飽和状況は、所与のチャンバ圧力、成長表面温度、III族元素前駆体分圧、V族元素前駆体分圧、およびインジウム前駆体分圧として定義され得る。飽和状況よりもインジウム前駆体の濃度または分圧がより高いことにより、形成された半導体層中においてより高いインジウム濃度を形成する過飽和状況が展開され得る。
【0064】
別の非限定的な例としては、所与の成長表面温度、所与のチャンバ圧力、所与のウェーハスピン速度、ならびにインジウム前駆体、III族元素前駆体、およびV族元素前駆体の所与の分圧の組合せにより定義される飽和状況においては、成長表面温度の低下により、過飽和状況がもたらされ、この過飽和状況により、飽和状況に対して得られるインジウムの割合に比べて、形成された半導体層中のインジウムの割合がより高くなる固相成長条件がもたらされる。同様に、この飽和状況温度に温度が維持された状態でのチャンバ圧力の上昇またはウェーハ回転速度の変化により、インジウム過飽和状況が展開され得る。
【0065】
線520においては、例えばチャンバ圧力およびウェーハ回転速度などのチャンバパラメータは、比較的一定に維持され得るが、温度は、低下して、インジウム過飽和状況を展開する。温度は、チャンバ温度または成長表面温度として決定され得る。非限定的な例としては、セグメント510Aおよび510Cのチャンバ温度は、約839℃であり、線520のチャンバ温度は、約811℃である。さらに、III族前駆体(例えばガリウム前駆体と組み合わされたインジウム前駆体)とV族前駆体との相対濃度が、V/III比=3560で比較的一定に維持される。換言すれば、一実施形態においては、線520が左から右へと移動するにつれて、TEGの分圧は、比較的一定に留まり得るが、TMIの分圧が上昇するにつれて、アンモニアの分圧は、比例的に上昇して、約3560のV/III族比を維持する。
【0066】
非限定的な例としては、線530は、約811℃のチャンバ温度で展開され得るものであり、V族分圧(例えばアンモニアの分圧)は、III族分圧および変動インジウム分圧に対して実質的に一定に維持される。換言すれば、一実施形態においては、線530が左から右へと移動するにつれて、TEGおよびアンモニアの分圧は、比較的一定に留まり得るが、TMIの分圧は、上昇する。
【0067】
さらに詳細には、ならびに
図3および
図5を参照すると、InGaN層140へのインジウム前駆体の流れは、成長表面148およびVピット側壁部152の上における相互作用に使用可能なインジウム種の入着流動(incoming flux)に影響を及ぼし得る。インジウムは、高揮発性になり得る。表面において、TMIは、破壊され、金属(例えばインジウム)を放出するが、このインジウムは、固体層中に取り込まれ得るか、または蒸気として消散する。温度がより高い場合には、金属が取り込まれるよりも消散する可能性がより高くなる。
【0068】
その結果、InGaN層140中ヘのインジウムの取り込みと、InGaN層140からのインジウムの脱着(本明細書においては脱着流動(desorption flux)とも呼ばれる)との間にトレードオフが生ずる。温度を下降させるかまたは圧力を上昇させることにより、取り込みは、InGaN層140中の固相インジウム濃度を上昇させるのに好ましいものとなり得る。さらに、成長表面148については、飽和状況に達する場合がある一方で、異なる成長面を有するVピット側壁部152は、成長表面148に比べてより高い成長速度へとより一層なりやすく、これにより、Vピット密度の軽減がもたらされ得る。
【0069】
図6A〜
図6Cは、本発明の1つまたは複数の実施形態によるインジウム分圧に対する、インジウム固相濃度、Vピット密度、およびVピット幅のそれぞれを示すグラフである。
【0070】
図6Aの線610により示すように、気相のインジウム濃度が上昇するにつれて、固相のインジウム濃度もまた最高で約94%のインジウム濃度まで上昇する。この時点では、気相濃度の上昇は、固相濃度の低下につながる。
【0071】
図6Bの線620により示すように、気相のインジウム濃度が上昇するにつれて、Vピット密度もまた最高で約94%のインジウム濃度まで上昇する。この時点では、気相濃度の上昇は、固相濃度の低下につながる。
【0072】
しかし、
図6Cの線630により示されるように、気相のインジウム濃度が上昇するにつれて、Vピット幅は縮小される。
図6Cの破線は、平均Vピット幅を示し、上方バー632および下方バー634は、Vピット幅に対する3シグマ分布点を示す。その結果、インジウム分圧が上昇するにつれて、所与の面積に対してVピットがより少数であるもの、Vピットがより小さいもの、または所与の面積に対するVピット個数およびそれらのVピットサイズの組合せの中のいずれかによるVピット密度の軽減が、観測され得る。
【0073】
ピット幅は、原子間力顕微鏡法(AFM)によりVピットを測定するための好ましい一方式である。なぜならば、AFMチップは、Vピットの総深さを正確に測定するためにこの深さにわたって貫通するのに十分な鋭さを有さない場合があるからである。結晶学的(例えば(10−11)面と(0001)面との間の角度の)考察から、ピット深さは、ピット幅から算出することが可能である(非特許文献2参照)。
【0074】
また、非常に薄いInGaN層の場合には、Vピットは、存在しても、それらの幅がAFM分解能未満となり得ることにより検出不能となり得る点に留意されたい。
【0075】
先述のように、多数の用途は、厚いInGaN層、InGaN層中の高いインジウム濃度、またはそれらの組合せを必要とするが、これらはいずれも、深く幅広のVピットをもたらし得る。本発明のいくつかの実施形態により、約6%から9%の範囲の固相インジウム濃度についてVピット密度の軽減をもたらすことができる。さらに、いくつかの実施形態においては、Vピット密度の軽減は、約150ナノメートルおよび場合よっては最大で約200ナノメートルまでの比較的厚いInGaN層に対して実現し得る。