【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、光ファイバ素線製造の高速化、すなわち引き抜き速度の高線速化に伴う問題、例えば断線や偏肉などの問題を解決するため、従来から種々の対策が提案されているが、本発明者等は、高線速化に伴って、従来は特に注目されていなかった問題が生じることを新たに認識した。その問題について、
図2A〜
図2Dを参照して説明する。
【0010】
図2A〜
図2Dには、簡略化した樹脂コーティング装置5の構成、すなわち最も単純な単層コーティング用のコーティング装置5を使用しての、線引き開始から定常被覆状態(定常線引き状態)に至るまでの、コーティング装置内での状況を段階的かつ模式的に示している。
【0011】
ここで、コーティング装置5は、全体として、逆円錐台状の形状となっている。そしてその底部5Aがダイスに相当し、上蓋5Bがニップルに相当し、底部5Aと上蓋5Bとの間の空間が周壁部5Cによって取り囲まれている。そして周壁部5Cによって取り囲まれる空間は、垂直円筒状の隔壁5Dによって内外に2分され、外側の空間は樹脂貯留室(樹脂供給室)5E、内側の空間は光ファイバ裸線が通過する樹脂被覆室5Fとされている。上蓋5Bの中央には、コーティング対象となる光ファイバ裸線3を樹脂被覆室5Fに装入するためのニップル孔5Gが形成され、また上蓋5Bの周縁近くの位置には、液体樹脂を、樹脂貯留室5Eに注入するための樹脂注入孔5Hと、樹脂貯留室5E内の空気を排出するための排気孔5Iが形成されている。また周壁部5Cには、外側の樹脂貯留室5Eと内側の樹脂被覆室5Fを連通させて、樹脂貯留室5Eから液体樹脂を樹脂被覆室5Fに導くための連通孔5Jが形成されている。さらに底部5Aの中央には、液体樹脂がコーティングされた光ファイバ裸線3を下方に引き出すためのダイス孔5Kが形成されている。
【0012】
図2Aは、線引き立ち上げ時の状況、すなわち光ファイバ裸線3をコーティング装置5の挿通させた際の状況を示す。線引き立ち上げ時においては、未だ樹脂は注入されておらず、コーティング装置5内には、空気などの気体Gが存在する。
次いで
図2Bに示すように、コーティング装置5内に所定の圧力で液体樹脂Mを注入する。これによってコーティング装置5内の気体Gが、排気孔5Iやニップル孔5G、あるいはダイス孔5Kから外部に追い出される。また同時に、ダイス孔5Kから引き出される光ファイバ裸線3の外周面に液体樹脂被覆層Nが形成されていく。
そして
図2Cに示すように、コーティング装置5内に液体樹脂Mが満たされれば、定常的な線引きコーティングが行われる。なお排気孔5Iに連続する図示しない排気管には開閉バルブもしくは圧力調整用バルブが設けられていて、定常被覆状態では、コーティング装置5内に注入される樹脂供給圧力が所定の圧力を維持するように設定される。
【0013】
ここで、
図2Cに示す定常線引き中においては、コーティング装置5の内部にはほぼ気体が存在せず、コーティングされた光ファイバ被覆層にできるだけ気泡が混入しないようにする必要がある。すなわち、光ファイバ裸線3に液体樹脂Mがコーティングされた状態でコーティング装置5のダイス孔5Kから外部に出た際に樹脂中に気泡が存在すれば、コーティング装置5の外部で樹脂中の気泡が膨張し、そのため気泡が多量に存在する箇所では被覆層が変形して、光ファイバ素線製品において線径のばらつきや被覆層の偏肉が生じてしまう。さらに、気泡が被覆層内に存在すれば、光ファイバ素線のスクリーニング試験において張力を負荷した際や、巻取り時の張力、あるいは曲げなどによって被覆層が破損あるいは剥離しやすくなるなど、種々の問題を招く。
【0014】
コーティング装置内の気体は、液体樹脂の注入時において,気体抜き用の排気孔5Iやニップル孔5G、あるいはダイス孔5Kから追い出されるのが一般的であるが、最近のコーティング装置では、線引き速度の高速化に伴って、高線速でも安定したコーティングを施すために内部の構造が複雑になっていることが多く、そのため内部構造に妨げられて、
図2Dに示しているように、気体が液体樹脂中の気泡Gpとして内部に残留してしまいやすくなっている。
【0015】
このように最近では、被覆層内に気泡が混入しやすい条件が多くなっており、そこで、光ファイバ素線の高品質化のために、樹脂被覆層内に気泡ができるだけ混入しないような被覆方法を開発することが急務であることを本発明者等は認識した。
しかしながら、前記特許文献1や特許文献2に示されるような従来技術では、コーティング装置内の残留気泡、及びそれによる悪影響については全く認識されておらず、したがって当然のことながら、残留気泡に対する対処策は全く講じられていなかったのが実情である。
【0016】
なお、前述のようなコーティング装置内の残留気泡Gpは、樹脂圧力によって圧縮され、定常線引きコーティング状態となった状態でも、樹脂の流れに乗って樹脂とともにダイス孔5Kから追い出され、光ファイバ裸線の外周上のコーティング層内に入った状態でコーティングされてしまう。このとき、樹脂圧力が高いほど残留気泡が小さく圧縮されて、ダイス出口から追い出されやすくなる。
しかるに前記各特許文献に示されるような従来技術においては、コーティング樹脂圧力を、区分けされた実線引き速度に応じて変化させる(上昇させる)ため、最終的な目標線速(定常線速)に達した時が、最高コーティング樹脂圧力となる。そのため、コーティング装置内部の残留気泡の一部が、目標線速に到達してからようやく追い出される場合もあり,それにより光ファイバ素線の被覆層に気泡混入の不良部が発生し、良品歩留りが悪くなってしまっていたのである。
【0017】
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、光ファイバ素線を製造するにあたって、樹脂コーティング時における被覆層への気泡の混入を少なくし、これによって、樹脂被覆層内の気泡に起因する光ファイバ素線製品の線径のばらつきや樹脂被覆層の偏肉、あるいは強度低下などの問題が生じることなく、高品質の光ファイバ素線を製造し得る方法を提供し、併せてそれに使用される光ファイバ素線製造装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述のような課題を解決するため、本発明者等が種々実験・検討を重ねた結果、線引き立ち上げ時において、良品部(製品部)を製造する以前の段階において、コーティング樹脂の供給圧力を、定常線速での良品部(製品部)の製造期間(すなわち定常被覆状態での被覆期間)の圧力(上限)よりも高くする期間(高圧力期間)を設けることによって、定常被覆状態において被覆層への気泡の混入が少ない光ファイバ素線を製造し得ることを見い出し、本発明をなすに至った。
なおここで、定常被覆状態とは、線引き開始から線速を増速させて、定常線速に至っており、しかも樹脂供給圧力が定常線速に応じた所定の圧力(定常圧力)となっている状態を意味する。したがって、上記の高圧力期間は、基本的には、線速を増速させている期間(増速期間)を過ぎた後まで及ぶことが許容される。但し、より良品歩留まりを向上させるためには、後述するように、増速期間中に前記高圧力期間を設けることが望ましい。
【0019】
したがって本発明の基本的な態様(第1の態様)による光ファイバ素線製造方法は、
加熱溶融された光ファイバ母材を連続的に線引きして光ファイバ裸線とし、更にその光ファイバ裸線を樹脂被覆用のコーティング装置に連続的に通して保護用樹脂を被覆する光ファイバ素線の製造方法であって、線引き開始の立ち上げ時から線引き速度を増速させて、定常線速でかつその定常線速に応じた樹脂供給圧力での、定常被覆状態に至らしめる光ファイバ素線の製造方法において、
線引き開始の立ち上げ時から、所定の経過時間に至るまでの初期期間中に、定常被覆状態での樹脂供給圧力よりも高い樹脂供給圧力とする高圧力期間を設けて線引きし、その後定常被覆状態での樹脂供給圧力まで樹脂供給圧力を低下させて定常被覆を行うことを特徴とするものである。
【0020】
ここで、定常被覆状態とは、前述のように線引き開始から線速を増速させて、定常線速に至っており、しかも樹脂供給圧力が定常線速に応じた所定の圧力(定常圧力)となっている状態を意味する。したがって、上記の高圧力期間は、基本的には、線速を増速させている期間(増速期間)を過ぎた後まで及ぶことが許容される。但し、より良品歩留まりを向上させるためには、後述するように、増速期間中に前記高圧力期間を設けることが望ましい。
【0021】
また定常被覆状態とは、上述のように、線速が良品部(製品部)を製造するための目標線速に維持されており(定常線速)、しかもその目標線速に応じた樹脂供給圧力(定常圧力)に維持されている状態を意味するが、これは厳密な意味での一定線速、一定樹脂圧力に維持されていることを意味するのではなく、線速が、目標線速に対してある許容範囲内、例えば±50m/minの範囲内に維持され、かつ目標線速に応じた樹脂圧力に対してある許容範囲内、例えば±0.05Paの範囲内にある状態を意味する。
【0022】
このような第1の態様の光ファイバ素線製造方法においては、定常被覆状態に至る以前の段階で、定常圧力よりも高い圧力で樹脂を供給する期間(高圧力期間)を設けておくことによって、その高圧力によりコーティング装置内の液体樹脂中に存在する気泡を圧縮して、気泡をより小径に潰すことができる。そしてこのように高圧力によって圧縮されて小径(微細)となった気泡は、コーティング装置のダイス孔から、液体樹脂の流れにともなって液体樹脂とともに容易に追い出され、その結果、定常被覆が開始されるまでに、コーティング装置内の液体樹脂中に残留する気泡を少なくすることができる。したがって、定常被覆状態で、樹脂被覆層中に気泡が混入するおそれを少なくすることができる。なおこの場合、定常被覆が開始される前の高圧力期間においては、コーティング装置から引き出される光ファイバ裸線上の樹脂被覆層内に、比較的多量の気泡が混入することになるが、その部分は、もともと線引き立ち上げ時の不良部分として切り捨てられる部分であるから、その部分の気泡は特に問題とはならない。
そしてまた、上述のように定常被覆状態となった後には、気泡がほとんど混入しないため、良品部(製品部)として得られた部分についても、被覆層中の気泡に起因する偏肉や外径変動、あるいは機械的特性の低下などのない、高品質の光ファイバ素線を得ることができる。
【0023】
また本発明の第2の態様による光ファイバ素線の製造方法は、前記第1の態様の光ファイバ素線の製造方法において、
前記高圧力期間が、線引き開始の立ち上げ時から、定常線速に至るまでの増速期間内とされることを特徴とするものである。
【0024】
このような第2の態様の光ファイバ素線の製造方法においては、コーティング装置内の液体樹脂中に残留する気泡を追い出すための高圧力期間が、定常線速に至るまでの増速期間内とされているため、定常線速となった時点では、既に高圧力によってコーティング装置内の液体樹脂中の気泡がほとんど追い出されていることになる。したがって、定常線速となった時点、あるいはそれ以前に、樹脂圧力を定常圧力まで低下(減圧)させることによって、定常線速となった時点から、定常被覆状態とすることができる。言い換えれば、定常線速となった時点から、良品部(製品部)の製造を開始することができる。
このことは、増速期間中の気泡の混入を含む不良部分の切り捨てるべき部分の長さが、従来の一般的な製造方法の場合と変わらないことを意味する。したがって高圧力期間を設けることによって歩留まりの低下を招くような事態を回避することができる。
【0025】
また本発明の第3の態様による光ファイバ素線の製造方法は、前記第2の態様の光ファイバ素線の製造方法において、
前記高圧力期間における最大圧力となるタイミングが、定常線速の30〜50%の線速となる期間内にあり、かつ最大圧力到達後の線速の増速量が、最大圧力到達時の線速から定常線速に至るまでの増速量の50〜100%となる期間内に、定常被覆状態での樹脂供給圧力に到達するように、最大圧力到達後に、樹脂供給圧力を減圧することを特徴とするものである。
【0026】
このような第3の態様による光ファイバ素線の製造方法においては、高圧力期間における最大圧力となるタイミングが、定常線速の30〜50%の線速となる期間内に設定することによって、残留気泡の圧縮を行うと同時に、ある程度の樹脂流速を得ることができるため、残留気泡の排出も効率よく行われる。また最大圧力到達時の線速から、最大圧力到達後の線速の増速量が、最大圧力到達時の線速から定常線速に至るまでの増速量の50〜100%となる期間内に、定常被覆状態での樹脂供給圧力に到達するように、樹脂供給圧力を減圧する間は、樹脂圧力を減圧させながらも、定常被覆状態よりも高い圧力が維持されるため、最大圧力到達後も、さらに残留気泡の排出時間を稼ぐことができ、そのため残留気泡の排出をより確実に行うことができる。またその減圧に引き続いて最終的な定常圧力とすることによって、定常被覆状態での製品部の製造にスムーズに移行することができる。
【0027】
また本発明の第4の態様による光ファイバ素線の製造方法は、前記第1の光ファイバ素線の製造方法において、
前記高圧力期間における最大圧力となるタイミングが、定常線速の30〜50%の線速となっている期間内にあり、かつ最大圧力到達後の線速の増速量が、最大圧力到達時の線速から定常線速に至るまでの増速量の50〜95%となる期間内に、定常被覆状態の目標定常線速に応じた圧力より低くかつ定常線速の許容範囲下限に対応する圧力以上の圧力まで、最大圧力到達後に樹脂供給圧力を減圧し、更に定常線速に至るまでの期間内に定常被覆状態の目標定常線速に応じた樹脂供給圧力に達するように、樹脂供給圧力を増圧することを特徴とするものである。
【0028】
このような第4の態様による光ファイバ素線の製造方法においては、第3の態様として記載した前述の手段に加えて、最大圧力到達後の減圧過程で、定常被覆状態の目標定常線速に応じた圧力より低くかつ定常線速の許容範囲下限に対応する圧力以上の圧力まで減圧することによって、定常被覆状態前の被覆外径が、定常被覆状態での被覆径に近づき、さらにその後の定常被覆状態直前の区間で改めて増圧することによって、被覆外径径定常被覆状態での被覆外径に、より近づけることができ、そのため、よりスムーズに製品部製造に移行することができる。
【0029】
また本発明の第5の態様による光ファイバ素線の製造方法は、前記第1の態様の光ファイバ素線の製造方法において、
前記高圧力期間が、線引き開始の立ち上げ時から、定常線速に至るまでの増速期間を過ぎた期間を含むことを特徴とすることを特徴とするものである。
【0030】
ここで、“増速期間を過ぎた期間を含む”とは、定常線速に至った時点から、もしくはその直後から高圧力期間を設定する場合と、定常線速に至るよりも前に増圧を開始して、増速期間を跨いで高圧力期間を設定する場合との両者を含むことを意味する。また後者の場合の高圧力期間の最大圧力となるタイミングは、定常線速に至る前でも、また定常線速に至った後のいずれでもよい。
このような第5の態様による光ファイバ素線の製造方法においても、既に述べたと同様に、高圧力期間中に、コーティング装置内の液体樹脂中に存在する気泡を液体樹脂とともに追い出すことができる。またこの場合、定常線速に至るまでの増速期間を過ぎた期間を含むように高圧力期間を設定することによって、増速期間を過ぎた樹脂の流れが速い期間でも高圧力が加えられるため、高速の樹脂の流れに乗って短時間で多量の気泡を排出することができる。なおこの態様では、定常線速に至った後にも気泡が樹脂に乗って排出され、したがってその部分は気泡の多い不良部分(切り捨てるべき部分)となるが、上述のように短時間で多量の気泡を排出することができるから、高圧力期間は短時間で済み、したがって歩留まりへの影響は少ない。
【0031】
さらに本発明の第6の態様による光ファイバ素線の製造方法は、前記第1〜第5のいずれかの態様の光ファイバ素線の製造方法において、
前記高圧力期間における最大の樹脂供給圧力を、定常線引き状態で線速に応じて設定される設定圧力の上限値の1.05倍以上、1.2倍の範囲内とすることを特徴とするものである。
【0032】
コーティング時の樹脂供給圧力は、定常被覆状態での最高圧力より高ければ高いほど、残留気泡の圧縮効果が大きくなり、ダイス孔からの気泡の排出がより効率的に行われる。但し、樹脂供給圧力が高すぎれば、ダイス孔出口から液体樹脂が噴出してコーティング不良が生じたり、またニップル孔から上部に樹脂が溢れる場合がある。したがって高圧力期間の樹脂供給圧力は、これらの異常が生じない範囲内に設定することが望ましい。本発明者等が鋭意検討した結果、第6の態様として記載したように、高圧力期間での樹脂供給圧力は、定常線引き状態で線速に応じて設定される設定圧力の上限値の1.05倍以上、1.2倍の範囲内とすることによって、これらの異常の発生を防止できることが判明している。
【0033】
さらに本発明の第7の態様による光ファイバ素線の製造方法は、前記第1〜第6のいずれかの態様の光ファイバ素線の製造方法において、
前記高圧力期間においては、線引き張力を、定常被覆状態での線引き張力よりも小さく設定することを特徴とするものである。
【0034】
残留気泡をダイス孔出口から液体樹脂被覆層に含ませて排出する際に、残留気泡が小さい場合は問題ないが、高圧力期間を設けて大きな残留気泡を樹脂圧力により圧縮して小さくした気泡を排出する場合、ダイス孔出口から排出された時に、樹脂圧力が解放されて大気圧しか加わらない状態となって、被覆層中の気泡が膨張する。ここで、膨張した気泡サイズが被覆厚よりも大きい場合は、被覆層が破裂したようになる。その部分はコーティング厚が不均一であるため、光ファイバ線引きのコーティング後の硬化や引取り、巻取りの部分で断線する可能性がある。そこで、断線の確率を少しでも下げるため、第7の態様で規定しているように、高圧力期間においては、引取張力を、定常被覆状態での線引き張力より小さい張力に設定することが望ましい。なお張力が低すぎれば、線ブレやコーティングが不安定になるおそれがあるから、高圧力期間における引取張力は、定常張力の50%〜100%未満の範囲内とすることが望ましい。
【0035】
さらに本発明の第8の態様による光ファイバ素線の製造方法は、前記第1〜4、第6、第7のいずれかの態様の光ファイバ素線の製造方法において、
前記高圧力期間で、被覆径を、定常被覆状態での被覆径よりも大きく設定することを特徴とするものである。
【0036】
定常線速に至る前の期間(増速期間)では、線速が遅いため、コーティング装置からの樹脂排出量(排出速度)も小さい。そのため、定常線速に至る前の増速期間中に高圧力期間を設定すれば、気泡の排出速度も遅くなることが懸念される。しかるに、第8の態様で規定しているように、圧力期間で、被覆径を、定常被覆状態での被覆径よりも大きく設定して、その期間での液体樹脂排出量を大きくすれば、気泡の排出を効果的に行うことができる。
【0037】
さらに本発明の第9の態様による光ファイバ素線の製造装置は、
加熱溶融された光ファイバ母材を加熱炉から連続的に線引きして光ファイバ裸線とし、更にその光ファイバ裸線を樹脂被覆用のコーティング装置に連続的に通して保護用樹脂を被覆し、さらに樹脂を硬化させて、光ファイバ素線として引取装置によって連続的に引き取るようにした光ファイバ素線の製造装置において、
前記コーティング装置に供給する樹脂圧力を制御するための圧力制御装置が、
増速前の初期の線速をVi(m/min)、コーティング装置における初期の樹脂圧力をPi(MPa)とし、定常被覆状態での線引き線速をVf(m/min)、樹脂圧力をPf(MPa)としたときに、線引き中の樹脂圧力P(v)を、線引き線速Vfに応じて下記(1)式、(2)式を満たすように制御する構成とされたことを特徴とするものである。
【0038】
【数1】
【0039】
【数2】
【0040】
但し、(1)式及び(2)式において、α、βは、それぞれ、0.3≦α≦0.5、1.05<β≦1.2の範囲内の定数とする。
【0041】
上記の第9の態様による光ファイバ素線の製造装置は、第3の態様として記載した光ファイバ素線の製造方法を実施するための装置である。
【0042】
また本発明の第10の態様による光ファイバ素線の製造装置は、
加熱溶融された光ファイバ母材を加熱炉から連続的に線引きして光ファイバ裸線とし、更にその光ファイバ裸線を樹脂被覆用のコーティング装置に連続的に通して保護用樹脂を被覆し、さらに樹脂を硬化させて、光ファイバ素線として引取装置によって連続的に引き取るようにした光ファイバ素線の製造装置において、
前記コーティング装置に供給する樹脂圧力を制御するための圧力制御装置が、
増速前の初期の線速をVi(m/min)、コーティング装置における初期の樹脂圧力をPi(MPa)とし、定常被覆状態での線引き線速をVf(m/min)、樹脂圧力をPf(MPa)としたときに、線引き中の樹脂圧力P(v)を、線引き線速Vfに応じて下記(3)式、(4)式を満たすように制御する構成とされたことを特徴とするものである。
【0043】
【数3】
【0044】
【数4】
【0045】
但し、(3)式及び(4)式において、α、β、γは、それぞれ、0.3≦α≦0.5、1.05<β≦1.2、0.5≦γ≦0.95の範囲内の定数とする。
【0046】
上記の第10の態様による光ファイバ素線の製造装置は、第4の態様として記載した光ファイバ素線の製造方法を実施するための装置である。