(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
排ガスダクトのプローブ挿入用の貫通孔内に挿脱可能な外径を有し、両端開口の外管及び内管からなる二重管構造として、上記内管と上記外管との間に円筒状空間を形成した金属製の排ガス採取用プローブを形成し、
当該排ガス採取用プローブの上記内管の先端部から該内管内の奥部方向の一定範囲にアンモニア分解用の小型脱硝触媒を固設し、
上記外管の後端開口部と上記内管の外周との間の空間を閉鎖すると共に、該外管に上記円筒状空間に連通する分岐管を設け、
上記分岐管の開口部にフレキシブルな第1チューブの一端を着脱し得る接続部を設けると共に、上記内管の後端開口部にフレキシブルな第2チューブの一端を着脱し得る接続部を設け、
上記排ガス採取用プローブの上記小型脱硝触媒を含む先端部領域を上記貫通孔から上記排ガスダクト内に挿入及び抜き取り可能に構成したものであり、
上記小型脱硝触媒はその先端の位置が上記内管の先端開口部の位置に一致又は略一致するように当該内管内において固定されており、上記小型脱硝触媒を通過した排ガスを上記内管の上記第2チューブに導入し得るものであり、
上記外管の環状の先端開口部は、上記内管の上記先端開口部と同一位置に位置し、上記円筒状空間に吸引された排ガスは上記小型脱硝触媒を通過することなく、そのままの状態で上記第1チューブに導入し得るように構成されたものであることを特徴とする排ガス採取用プローブ。
上記分岐管の上記開口部に接続された上記第1チューブの他端に吸引ポンプを介して第1NOx計を接続し、上記内管の上記後端開口部に接続された上記第2チューブの他端に吸引ポンプを介して第2NOx計を接続し、
上記先端部領域が上記排ガスダクト内に挿入された上記排ガス採取用プローブから排ガスを採取することにより、上記小型脱硝触媒を通過しない排ガスの第1NOx濃度と、上記小型脱硝触媒を通過してアンモニアの分解された排ガスの第2NOx濃度とを各別に測定可能とし、
上記第1NOx濃度と上記第2NOx濃度の差を求めることにより、リークアンモニアの濃度を演算し得る演算装置を設けたものであることを特徴とする請求項1記載の排ガス採取用プローブを使用したリークアンモニア測定装置。
上記両吸引ポンプの上流側の上記第1及び第2チューブに各々流量調整手段を接続すると共に、上記各流量調整手段を通過した各排ガスの酸素濃度を測定可能な酸素濃度計を設け、
上記流量調整手段により上記排ガスの流量を調整することにより、上記両チューブにて採取した排ガスの酸素濃度を均一化し得るように構成したものである請求項2〜4の何れかに記載の排ガス採取用プローブを使用したリークアンモニア測定装置。
上記両吸引ポンプの上流側の上記第1及び第2チューブに各々流量調整手段を接続すると共に、上記各流量調整手段を通過した各排ガスの酸素濃度を測定可能な酸素濃度計を設け、
上記流量調整手段により上記排ガスの流量を調整することにより、上記両チューブにて採取した排ガスの酸素濃度を均一化することを特徴とする請求項6又は7記載のリークアンモニア測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記吸収光度計を用いる方法は、サンプリングした排ガスを吸収液に吸収すると共に、発電設備とは別の分析施設にてさらに加熱蒸留等の処理が必要であるため、リークアンモニアの測定値を得るために長時間を要し、リアルタイムでの測定は困難であった。このため測定値に異常が出ても、異常値に対する原因究明や再測定等を迅速に行うことができないという課題があった。
【0006】
一方、特許文献1,2の方法は、排ガスダクトから排ガスをサンプリングし、排ガスダクト外の採取用配管に配置した脱硝触媒内を通過させる構成であるため、サンプリングした排ガスの温度の低下を防ぐため、採取用配管全域に排ガスを370℃前後に加熱するためのヒータを設ける必要がある。
【0007】
よって、かかる従来の測定装置は装置構成が大型となるし、上記加熱の必要性からプローブと脱硝触媒との間の距離を長くとることができないという課題がある。これら従来の測定装置は、排ガスダクトに測定用プローブを固定的に配置し、かつ排ガスダクトの近接位置に、加熱装置付採取用配管、NOx計等を固定的に設置して、当該燃料燃焼設備専用の据え置き型のリークアンモニア測定装置として設計されているものである。従って、各種の燃料燃焼設備にリークアンモニア測定装置自体を持ち込んで、リークアンモニアを測定することはできないという課題もある。
【0008】
本発明は、火力発電所等の燃料燃焼設備における排ガスダクトに挿抜可能であって、排ガス中に含まれるリークアンモニアをリアルタイムに測定可能な排ガス採取用プローブを提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、上記排ガス採取用プローブを使用することにより、発電設備等の排煙脱硝触媒から排出されるリークアンモニアをリアルタイムに測定でき、かつ持ち運びが可能であって、複数の発電設備等において持ち回って汎用的に使用可能なリークアンモニア測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明は、
第1に、排ガスダクトのプローブ挿入用の貫通孔内に挿脱可能な外径を有し、両端開口の外管及び内管からなる二重管構造として、上記内管と上記外管との間に円筒状空間を形成した金属製の排ガス採取用プローブを形成し、当該排ガス採取用プローブの上記内管の先端部から該内管内の奥部方向の一定範囲にアンモニア分解用の小型脱硝触媒を固設し、上記外管の後端開口部と上記内管の外周との間の空間を閉鎖すると共に、該外管に上記円筒状空間に連通する分岐管を設け、上記分岐管の開口部にフレキシブルな第1チューブの一端を着脱し得る接続部を設けると共に、上記内管の後端開口部にフレキシブルな第2チューブの一端を着脱し得る接続部を設け、上記排ガス採取用プローブの上記小型脱硝触媒を含む先端部領域を上記貫通孔から上記排ガスダクト内に挿入
及び抜き取り可能に構成したものであ
り、上記小型脱硝触媒はその先端の位置が上記内管の先端開口部の位置に一致又は略一致するように当該内管内において固定されており、上記小型脱硝触媒を通過した排ガスを上記内管の上記第2チューブに導入し得るものであり、上記外管の環状の先端開口部は、上記内管の上記先端開口部と同一位置に位置し、上記円筒状空間に吸引された排ガスは上記小型脱硝触媒を通過することなく、そのままの状態で上記第1チューブに導入し得るように構成されたものであることを特徴とする排ガス採取用プローブにより構成される。
【0011】
上記第1チューブは樹脂製チューブ(6)、上記第2チューブは樹脂製チューブ(5)により構成することができる。このように構成すると、排ガス採取用プローブの先端部領域を排ガスダクト内に挿入することにより、排ガスダクト内を流れる高温の排ガスを直ちに内管内の小型脱硝触媒に導くことができ、当該小型脱硝触媒は、排ガスダクト内における排ガスにより排ガス温度近く(例えば約350℃)まで加熱されるため、小型脱硝触媒において効率的に排ガス中のアンモニアの分解を行うことができる。従って、リークアンモニアをリアルタイムで測定することができるし、上記小型脱硝触媒を通過した後の排ガスは、既にアンモニアが効率的に分解されており、その後にNOx、SO
3と反応することがないため、当該プローブの分岐管に接続された第2チューブを例えば数十メートル離れた測定部(NOx計)まで引き回しても、測定値に影響を与えることはない。
【0012】
第2に、上記分岐管の上記開口部に接続された上記第1チューブの他端に吸引ポンプを介して第1NOx計を接続し、上記内管の上記後端開口部に接続された上記第2チューブの他端に吸引ポンプを介して第2NOx計を接続し、上記先端部領域が上記排ガスダクト内に挿入された上記排ガス採取用プローブから排ガスを採取することにより、上記小型脱硝触媒を通過しない排ガスの第1NOx濃度と、上記小型脱硝触媒を通過してアンモニアの分解された排ガスの第2NOx濃度とを各別に測定可能とし、上記第1NOx濃度と上記第2NOx濃度の差を求めることにより、リークアンモニアの濃度を演算し得る演算装置を設けたものであることを特徴とする上記第1記載の排ガス採取用プローブを使用したリークアンモニア測定装置により構成される。
【0013】
上記第1NOx計はNOx計(10)、上記第2NOx計はNOx計(8)により構成することができる。このように構成すると、排ガスダクト内に挿入されたプローブ内の小型脱硝触媒にて効率的にアンモニアの分解が行われるため、従来技術のような加熱装置は必要としない。よって、例えば燃料燃焼設備の建屋の上層階における排ガスダクトの既設の貫通孔内に排ガス採取用プローブを挿入し、当該プローブに接続した第1及び第2チューブを建屋の地上階まで例えば数十メートルに亘って引き回し、当該地上階にて上記第1及び第2チューブにて採取した排ガスのNOx濃度を測定し、地上階の演算装置によりリークアンモニアの濃度を測定することが可能となる。よって、各種の火力発電所等の燃料燃焼設備において持ちまわって汎用的に使用可能なリークアンモニア測定装置を実現することができる。
【0014】
第3に、少なくとも上記両NOx計、及び上記演算装置
が車両の内部に配置
されると共に、上記排ガス採取用プローブ、上記第1及び第2チューブ及び上記両吸引ポンプ
が上記車両内に収納可能と
されたものである上記第2記載の排ガス採取用プローブを使用したリークアンモニア測定装置により構成される。
【0015】
上記車両は例えばワゴン車等をいう。このように構成すると、車両によって燃料燃焼設備の建屋近傍の地上階に乗り付けて、当該車両から排ガス採取用のプローブ及び第1及び第2チューブを取り出して、当該建屋の上層階の排ガスダクトに上記プローブを挿入し、当該プローブから第1、第2チューブを地上階まで引き回して他端をポンプに接続することにより、当該車両内の測定機材によって排ガス中のリークアンモニアをリアルタイムで測定することが可能となる。
【0016】
第4に、上記車両は上記排ガスダクトを有する燃料燃焼設備の建屋近傍の地上階に駐車可能
なものであり、上記排ガスダクトは上記建屋の上層階又は地上階に設置されたものであり、上記排ガス採取用プローブは上記排ガスダクトの上記貫通孔内に上記先端部領域を挿入されるものであり、上記排ガス採取用プローブに接続された上記第1チューブ及び上記第2チューブ
は上記上層階又は上記地上階から上記車両まで引き回し
可能な長さを有し、それらの他端を上記両吸引ポンプに各々接続し得るように構成
されたものであることを特徴とする上記第3記載の排ガス採取用プローブを使用したリークアンモニア測定装置により構成される。
【0017】
このように構成すると、当該車両を移動することにより、複数の燃料燃焼設備において、汎用的に使用可能なリークアンモニア測定装置を実現することができる。
【0018】
第5に、上記両吸引ポンプの上流側の上記第1及び第2チューブに各々流量調整手段を接続すると共に、上記各流量調整手段を通過した各排ガスの酸素濃度を測定可能な酸素濃度計を設け、上記流量調整手段により上記排ガスの流量を調整することにより、上記両チューブにて採取した排ガスの酸素濃度を均一化し得るように構成したものである上記第2〜4の何れかに記載の排ガス採取用プローブを使用したリークアンモニア測定装置により構成される。
【0019】
上記流量調整手段は流量調整コック(19a,19b)により構成することができる。上記酸素濃度計は、上記第1、第2NOx計として、NOx濃度と共に酸素濃度も測定可能なNOx計・O
2計一体型のNOx計を使用することができる。このように構成すると、同一タイミングで採取した排ガスに基づいて、正確なリークアンモニア量の計測が可能となる。
【0020】
第6に、上記第1記載の排ガス採取用プローブを使用したリークアンモニア測定方法であって、上記分岐管の上記開口部に接続された上記第1チューブの他端に吸引ポンプを介して第1NOx計を接続し、上記内管の上記後端開口部に接続された上記第2チューブの他端に吸引ポンプを介して第2NOx計を接続し、上記先端部領域が上記排ガスダクト内に挿入された上記排ガス採取用プローブから排ガスを採取することにより、上記両NOx計により、上記小型脱硝触媒を通過しない排ガスの第1NOx濃度と、上記小型脱硝触媒を通過してアンモニアの分解された排ガスの第2NOx濃度とを各別に測定し、演算装置にて、上記第1NOx濃度と上記第2NOx濃度の差を求めることにより、リークアンモニアの濃度を算出することを特徴とするリークアンモニア測定方法により構成される。
【0021】
第7に、上記第6記載のリークアンモニア測定方法であって、少なくとも上記両NOx計、及び上記演算装置を車両の内部に配置すると共に上記排ガス採取用プローブ、上記第1及び第2チューブ及び上記両吸引ポンプを上記車両内に収納可能とし、リークアンモニアの測定は、上記車両を上記排ガスダクトを有する燃料燃焼設備の建屋近傍の地上階に駐車し、上記排ガス採取用プローブを上記建屋の上層階又は地上階の上記排ガスダクトのプローブ挿入用の上記貫通孔内にその上記先端部領域を挿入し、上記排ガス採取用プローブに接続された上記第1チューブ及び第2チューブを上記上層階又は上記地上階から上記車両まで引き回して、それらの他端を上記両吸引ポンプに各々接続することにより行うものであることを特徴とするリークアンモニアの測定方法により構成される。
【0022】
第8に、上記両吸引ポンプの上流側の上記第1及び第2チューブに各々流量調整手段を接続すると共に、上記各流量調整手段を通過した各排ガスの酸素濃度を測定可能な酸素濃度計を設け、上記流量調整手段により上記排ガスの流量を調整することにより、上記両チューブにて採取した排ガスの酸素濃度を均一化することを特徴とする上記第6又は7記載のリークアンモニア測定方法により構成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、排ガスダクト内を流れる高温の排ガスを直ちに排ガス採取用プローブの内管の小型脱硝触媒に導くことができ、当該小型脱硝触媒
及びプローブは、排ガスダクト内における排ガスにより排ガス温度近くまで
急速に加熱されるため、上記プローブ内の小型脱硝触媒において効率的に排ガスのアンモニアの分解を行うことができる。従って、リアルタイムで排ガス中のリークアンモニアを測定することができ、かつ上記プローブに接続された第2チューブを例えば数十メートル離れた測定部(NOx計)まで引き回しても、測定値に影響を与えることはない高性能な排ガス採取用プローブを実現することができる。
【0024】
また、プローブ内の小型脱硝触媒にて効率的にアンモニアの分解が行われるため、従来技術のような加熱装置は必要としない。よって、例えば燃料燃焼設備の排ガスダクトの既設の貫通孔内に排ガス採取用プローブを挿入し、当該プローブに接続した第1及び第2チューブを例えば数十メートルに亘って引き回し、上記両チューブの他端のNOx計により排ガスのNOx濃度を測定し、演算装置によりリークアンモニアの濃度を測定することが可能となる。よって、各種の火力発電所等の燃料燃焼設備において持ち回って汎用的かつリアルタイムに測定可能なリークアンモニア測定装置を実現することができる。
【0025】
また、車両によって燃料燃焼設備の建屋近傍の地上階に乗り付けて、当該車両から排ガス採取用のプローブ及び第1及び第2チューブを取り出して、例えば当該建屋の上層階の排ガスダクトに上記プローブを挿入し、当該プローブから第1、第2チューブを地上階まで引き回して他端を車両内のポンプに接続することにより、当該車両によって排ガス中のリークアンモニアをリアルタイムで測定することが可能となる。
【0026】
また、第1、第2チューブにて採取した排ガスのO
2補正を行うことで、同一タイミングで採取した排ガスに基づいて、正確なリークアンモニア量の計測が可能となる。
【0027】
従って、当該車両を移動することにより、複数の燃料燃焼設備において、汎用的に使用可能なリークアンモニア測定装置及び測定方法を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る排ガス採取用プローブ、リークアンモニア測定装置及び測定方法について詳細に説明する。
【0030】
図1は、上記リークアンモニア測定装置の全体構成を示すものであり、同上装置は、内部を排ガスが矢印A方向に流れる排ガスダクト1、該排ガスダクト1の測定用プローブ挿入管2に挿入され、内管3aの先端にアンモニア分解用の小型脱硝触媒4を具備する二重管構造の排ガス採取用プローブ3、該プローブ3の上記内管3aの後端部に接続され、当該排ガス測定用プローブ3で採取した排ガスであって上記小型脱硝触媒4を通過した排ガスを採取する折曲自在のフレキシブルな樹脂製チューブ5、上記プローブ3の外管3bの後端部(分岐管3b’)に接続され、上記二重管構造の外管3bから採取した上記小型脱硝触媒4を通過しない排ガスを採取する折曲自在なフレキシブルな樹脂製チューブ6、上記樹脂製チューブ5の他端に接続され、上記樹脂製チューブ5を介してアンモニア分解後の排ガスを吸引してNOx計8に送出するための吸引ポンプ7、当該ポンプ7に接続され、上記樹脂製チューブ5を介して採取した排ガスのアンモニア分解後のNOx濃度を測定するNOx計8、上記樹脂製チューブ6の他端に接続され、上記樹脂製チューブ6を介して外管3bからの排ガスを吸引するための吸引ポンプ9、該ポンプ9に接続され、上記樹脂製チューブ6を介して採取した排ガスのNOx濃度を測定するNOx計10、上記NOx計10で測定したNOx濃度(X1(ppm))と、上記NOx計8で測定したNOx濃度(X2(ppm))の差(X3=X1−X2(ppm))を演算し、当該NOx濃度の差より、リークアンモニアの濃度X3を演算により求める演算装置11を具備しているものである。
【0031】
また、排ガス採取プローブ3の内管3aと外管3bの排ガスの通過断面の違いによるNOx計8,10までの到達ガス量を調整するため、樹脂製チューブ5,6の吸引ガス量を調整するための流量調整コック19a,19bを、上記車両14近傍の樹脂製チューブ5,6に接続している。具体的には、NOx計8,10に内蔵するO
2濃度計を見ながら両排ガスのO
2濃度が均一となるように、上記コック19a,19bを以って排ガスの流量を調整し、樹脂製チューブ5から送られてくる排ガスと、樹脂製チューブ6から送られてくる排ガスの各O
2濃度を均一に保持する、いわゆるO
2補正を行う。
【0032】
このO
2補正を行うことで、上記プローブ3の内管3aと外管3bの排ガスの通過断面が異なり、また、上記樹脂製チューブ5,6を各々数十メートルの長さに亘って引き回したとしても、上記プローブ3の上記内管3aと上記外管3bにおいて、各々同一のタイミングで採取した排ガスの濃度を、上記NOx計8,10にて測定していることを担保することができる。
【0033】
尚、12は上記ポンプ7と上記NOx計8の間の樹脂製チューブ5に接続され、吸引された排ガス量を測定するためのガスメータ、13は上記ポンプ9と上記NOx計10との間の上記樹脂製チューブ6に接続され、吸引された排ガス量を測定するためのガスメータである。
【0034】
上記排ガスダクト1は、
図10に示すように、火力発電所等の燃料燃焼機関である例えばボイラ設備25から排出された排ガスのダクトであり、設備にもよるが、例えば幅約12m、高さ約7mの角型ダクトであり、該ダクト1の右側端部に煙突26が接続されている。この排ガスダクト1の上流側(
図1中左側)には、アンモニア注入装置28及び排煙脱硝触媒(大型)29が設置されており、該排煙脱硝触媒29を通過した後の排ガスが当該排ガスダクト1を下流側(矢印A方向)に流れていくものである。本発明は、上記排煙脱硝触媒29を通過後の排ガスに含まれるアンモニアNH
3(リークアンモニア)を、上記排ガス採取用プローブ3により上記ダクト1内の排ガスを採取して測定するものである。
【0035】
また、
図10に示すように、当該設備の排ガスダクト1の外周面における上記アンモニア注入装置28の上流側(入口側)及び脱硝触媒29の下流側(出口側)には、上記測定用プローブ挿入管2が1個又は複数個、ダクト1の軸方向に沿って予め設けられており、これらの挿入管2に設けられた既存の貫通孔2b(
図2参照)から上記プローブ3を排ガスダクト1内に挿入する。
【0036】
上記車両14は、上記流量調整コック19a,19b及びポンプ7,9から下流側の測定装置であって上記演算装置11までの測定機材を収納するものであり、例えば商用のワゴン車により構成されている。そして、
図1に示すように、当該車両14の荷台には上記ポンプ7,9、上記ガスメータ12,13、上記NOx計8,10及び上記演算装置11が格納配置されている。尚、上記ポンプ7,9は上記車両内に固定せずに単に収納可能とし、使用時は車両14外に出して設置し得るように構成しても良い。
【0037】
通常は上記樹脂製チューブ5,6、上記排ガス採取用プローブ3及び上記コック19a,19bも上記車両14の荷台内に収納し、当該車両14にて測定対象となる火力発電所等に乗り付け、当該車両14から上記排ガス採取用プローブ3及び樹脂製チューブ5,6を取り出し、測定対象となる排ガスダクト1に上記プローブ3を挿入し、樹脂製チューブ5,6を介して上記排ガスを採取することにより、上記車両14内において、上記排ガスダクト1のリークアンモニアをリアルタイムで測定可能としたものである。
【0038】
発電所等の規模にもよるが(
図10参照)、上記排ガスダクト1の全長は100mを超えるものもあり、該ダクト1の測定場所(上記測定用プローブ挿入管2)の位置が、発電所等の建屋30の上層階31(例えば4階から6階部分)に位置している場合もある。この場合、地上階G(1階)に上記車両14を乗り付けて、上記排ガス測定用プローブ3を発電所等の建屋の4階〜6階(上層階31)の上記挿入管2に設置し、当該プローブ3から地上階の上記車両14の上記ポンプまで階段R等を使用して樹脂製チューブ5,6を引き回す必要がある。従って、樹脂製チューブは数十メートルの長さが必要となる。
【0039】
以下、各部について詳細に説明する。
図2に上記排ガス採取用プローブ3の縦断面図を示す。同図において、排ガスダクト1内においては、上流側の排煙脱硝触媒29を通過した後の排ガスが下流側(矢印A方向)に流れており、当該排煙脱硝触媒29を通過後の排ガスを当該プローブ3にて採取する。
上記排ガスダクト1の周側面にはダクトの軸方向に直交する測定用プローブ挿入用の上記測定用プローブ挿入管2が設けられており、当該挿入管2の上面は円形フランジ2aにて閉鎖されている。上記フランジ2aには上記排ガス採取用プローブ3を挿入するための既設の貫通孔2bが設けられており、当該貫通孔2bから上記プローブ3を上記排ガスダクト1内に当該排ガスダクト1の軸方向に直交する方向に挿入し得るように構成されている。この貫通孔2bの直径は例えば約14mmであり、上記プローブ3(外管3bの直径は例えば10mm〜12mm)が挿入可能な大きさを有している。尚、プローブ3の外管3bの直径は、10mm〜25mm等とすることができ、上記貫通孔2bの直径は、当該プローブ3が挿入し得る直径となる。
【0040】
上記排ガス採取用プローブ3は、
図3(a)にその横断面を示すように、内管3aと外管3bの二重管構造となっており、上述のように上記外管3bの直径は上記フランジ2aの貫通孔2bの直径よりも若干小であり、当該プローブ3自体を上記貫通孔2b内に挿入及び抜脱可能に構成されている。
【0041】
上記内管3aは、先端開口部aから後端開口部bまで内部が貫通した両端開口の金属製の円筒管であり、その全長さは例えば1500mm〜2000mmである。この内管3a内において、先端開口部aから後端部方向の例えば長さ100mm〜200mmの範囲には、横断面正方形の直方体形状のアンモニア分解用の小型脱硝触媒4が固定状態で嵌合装着されている。当該小型脱硝触媒4の内管3aにおける固定は、例えば先端部近傍の内管3aを若干絞ることにより当該小型脱硝触媒4を抜止固定してもよい。また、
図3(a)に示すように、当該小型脱硝触媒4と上記内管3a内周面との隙間には、例えばセラミックウール24を充填して上記隙間を閉鎖する。尚、当該プローブ3の上記小型脱硝触媒4を含む先端部側の一定範囲を先端部領域3’という(
図2参照)。
【0042】
このアンモニア分解用の小型脱硝触媒4は、
図3(b)に示すように、触媒内部を縦横の仕切板で区切ることにより、内部空間が、横断面正方形の細長直方体形状の複数のセル4aによって碁盤の目状に仕切られており、上記先端開口部aから吸引した排ガスは直ちに当該小型脱硝触媒4の複数のセル4a内部を通過してアンモニア成分が分解された後、上記内管3a内を上記後端開口部b方向に流出するように構成されている。
【0043】
この小型脱硝触媒4は、
図3(a)に示すように、その横断面の対角線L1の長さが、上記内管3aの内径と略同様に形成された(例えばL1=8mm〜10mm、L2=100mm〜200mm)の極めて小型の脱硝触媒であり、上記内管3aの先端部に挿入嵌合され、
図5に示すように、当該小型脱硝触媒4の先端4’の位置が上記内管3bの上記先端開口部aの位置に一致又は略一致するように、当該内管3a内において固定されている。従って、
図2に示すように、当該排ガス採取用プローブ3の少なくとも上記先端部領域3’を排ガスダクト1内に、当該ダクト1の軸方向(排ガスの流れる矢印A方向)に直交する方向に挿入して、上記ポンプ7にて排ガスを吸引することにより、排ガスダクト1内において当該内管3a内に吸引された排ガスは、高温状態のまま(例えば約350℃)直ちに当該小型脱硝触媒4の複数のセル4a内に導入され、当該触媒4内を通過することによりアンモニア成分が分解されるように構成される。
【0044】
このように、排ガスは高温状態を保ったまま直ちに上記小型脱硝触媒4内を通過し、当該小型脱硝触媒4と共にプローブ3自体が排ガスダクト3内に挿入されるので、小型脱硝触媒4及びプローブ3自体も350℃近くまで排ガスにより急速に加熱され、上記内管3a内において、効率的に排ガス中のアンモニアを分解することができる。よって、従来装置のような加熱装置は必要としない。
【0045】
このアンモニア分解用の小型脱硝触媒4は、上記排煙脱硝触媒29と同じ成分、例えばバナジウム化合物、タングステン化合物等により構成されており、リークアンモニアを含む排ガスが内部を通過することにより、以下(式(1))の脱硝反応が起こり、排ガス中に含まれるリークアンモニア(NH
3)の消費量に見合うNOx濃度(窒素酸化物濃度)の低下が生じる。
2NO+2NH
3+1/2O
2→2N
2+3H
2O (1)
【0046】
このリークアンモニア(NH
3)とNOは当モルで反応するため、上記小型脱硝触媒4を通った排ガス中のNOx濃度はリークアンモニア(NH
3)の濃度の分だけ減少し、当該NOx濃度の減少した排ガスが当該内管3aから排出されることになる。
【0047】
図4(a)(b)に示すものは、アンモニア分解用の小型脱硝触媒4の他の実施形態であり、
図3(b)に示す小型脱硝触媒4の直方体形状の四隅の角を落した形状を有し、全体として円筒形状に近い形状となっている。このように構成すると、上記内管3a内に挿入嵌合したとき、小型脱硝触媒4と上記内管3a内面との隙間を極力少なくすることができる。
【0048】
これらの小型脱硝触媒4は、
図3(b)、
図4(b)に示すように、セラミック又は可撓性のあるガラス繊維からなるハニカム基体又はコルゲート基体に、上記バナジウム化合物及びタングステン化合物等を含浸することにより形成することができる。
【0049】
上記外管3bは、上記内管3aの外側に同心的に位置している金属製の円筒管であり、上記内管3aの外周面と上記外管3bの内周面との間に半径方向距離Hの円筒状空間Sが形成されている(
図3(a)参照)。
図5に示すように、この外管3bの環状の先端開口部a’は、上記内管3aの上記先端開口部aと同一位置に位置し、環状の後端開口部b’は、上記内管3aの上記後端開口部bより若干先端部寄りに位置しており(
図2、
図6参照)、当該後端開口部b’と上記内管3aの周側面(外周)との間の空間はシリコンキャップ15により密閉状態に閉鎖されている。従って、上記外管3bの全長は上記内管3aより短く形成されている(例えば外管3bの先端開口部a’から後端開口部b’までの長さは例えば1000mm)。
【0050】
さらに、上記外管3bの上記後端開口部b’より若干先端部側であって、上記フランジ2aより後端部寄りの外側位置に、上記外管3bの軸方向と直交し、上記円筒状空間Sに連通する分岐管3b’が水平方向に突出形成されており、当該分岐管3b’の先端は開口部cが形成されている。
【0051】
従って、上記環状円筒空間S内に吸引された排ガスは、上記小型脱硝触媒4を通過することなく、そのままの状態で上記円筒空間S内を上昇し、上記分岐管3b’からサンプリングすることができるように構成されている。
【0052】
上記分岐杆3b’を含む部分は、上記外管3aと一体に構成しても良いが、
図6に示すように、上記外管3bとは別部品のT字管18により構成することもできる。このT字管18は、上記外管3bと同一の直径の両端開口の円筒状の本体管18aと、該本体管18aの中央部より本体管18aに直交する方向に分岐開口する上記分岐管3b’により構成されており、上記本体管18aの一端部には雄螺子を有する接続部18bが形成されている。この場合、上記外管3bは、上記T字管18の長さ分短く形成し、その後端部には上記雄螺子と螺合可能な雌螺子を有する接続部3b”を形成する。
【0053】
従って、当該T字管18を使用する場合は、上記外管3b内部に上記内管3aを挿通して上記内管3aの後端開口部bを上記外管3bの上記接続部3b”から突出させた後、突出する上記内管3aに上記T字管18をその接続部18bから被覆し、当該T字管18の上記接続部18bを上記外管3bの上記接続部3b”に螺合することにより、
図6に示すように、上記外管3bの後端部に上記T字管18を一体に接続し、当該T字管18の後端開口部b’を上記シリコンキャップ15によって閉鎖する。
【0054】
上記内管3aの後端開口部b及び上記外管3bの上記分岐管3b’の開口部cにはフレキシブルな上記樹脂製チューブ5,6が接続されている。この樹脂製チューブ5,6は、フレキシブルな樹脂製のチューブの表面をフッ素樹脂で加工したフッ素樹脂製チューブ(例えばテフロン(登録商標)チューブ)を使用することが好ましい。これらの樹脂製チューブ5,6と上記後端開口部b、上記開口部cとの接続は、まず、上記後端開口部b及び上記開口部cにシリコン製のチューブ16,16の一端を接続し、これらシリコン製チューブ16,16の開放端側に上記樹脂チューブ5,6の端部を接続することにより行われる。ここで、上記後端開口部b、上記シリコン製チューブ16により構成される樹脂製チューブ5の接続部分を接続部17a、上記開口部c、上記シリコン製チューブ16により構成される樹脂製チューブ6の接続部分を接続部17bという。
【0055】
上記排ガス採取用プローブ3と上記測定用プローブ挿入管2との接続は、具体的には、
図7に示すように、フランジ2aの上蓋を外して、プローブ挿入用の貫通孔2bを有するガイドパイプ27aが中心に設けられたガイドパイプ付フランジ27を設け、当該フランジ27を上記フランジ2a上に載置して挿入管2を閉鎖し、複数のクランプ32により当該フランジ27を上記フランジ2a上に固定する。その後、上記ガイドパイプ27aの貫通孔2b内に当該排ガス採取用プローブ3を挿入し、先端部領域3’が排ガスダクト1内の所定位置に到達した時点で、固定ボルト33を螺合して当該プローブ3の位置を固定し得るように構成されている。尚、上記プローブ3と上記ガイドパイプ27aの貫通孔2bとの隙間は、セラミックウール24等を詰めてシールする。
【0056】
また、上記樹脂製チューブ5,6と上記ポンプ7,9との接続は、図
8に示すように、ポンプ7(ポンプ9も同様)の入力部7a(9a)及び出力部7b(9b)に上記シリコン製チューブ16の一端を接続し、これらシリコン製チューブ16の他端に上記樹脂製チューブ5又は6を接続することにより行う。
【0057】
排ガスの測定は、上記内管3a内において上記小型脱硝触媒4を通過してアンモニアが分解された排ガスを上記樹脂チューブ5を介してサンプリングし、上記車両14内のNOx計8まで導いて当該NOx計8にてNOx濃度を測定する。また、上記外管3b内の円筒状空間Sを通過して小型脱硝触媒4を通過しない排ガスを上記分岐管3b’を介して樹脂製チューブ6よりサンプリングし、上記車両14内のNOx計10まで導いて当該NOx計10にてNOx濃度を測定する。
【0058】
ところで、内管3aにおける上記アンモニア分解用の小型脱硝触媒4において、式(1)の還元反応が生じるが、上述のようにリークアンモニア(NH
3)とNOは当モルで反応するため、上記小型脱硝触媒4を通った排ガス中のNOx濃度はリークアンモニア(NH
3)の濃度の分だけ減少し、当該NOx濃度の減少した排ガスが当該内管3aからサンプリングされる。
【0059】
従って、NOx計8で測定したNOx濃度データX2(ppm)(第2NOx濃度)を演算装置11に送出し、NOx計10で測定したNOx濃度データX1(ppm)(第1NOx濃度)を上記演算装置11に送出し、上記演算装置11にて、X1−X2の演算を行うことにより、リークアンモニアの濃度X3を計測することができる。
【0060】
上記NOx計8,10は、上記樹脂製チューブ5,6を介してサンプリングされた排ガスが入力しているので、測定を開始すると、現在入力している排ガスのNOx濃度(ppm)をリアルタイムで測定し、測定データ(X1(ppm)及びX2(ppm))を次段の演算装置11に継続的に送出する。
【0061】
上記演算装置11は、
図9に示すように、上記NOx計8から入力するNOx濃度データX2とNOx計10から入力するNOx濃度データX1に基づいて、データX1からデータX2を減算処理し、減算処理した結果(X3=X1−X2)及び上記データX1,X2をデータロガー21に継続的に送出する加減算器20と、該加減算器20に接続され該加減算器20から入力する上記減算データX3、及びデータX1,X2を内部メモリ(図示せず)に継続的に記憶していくと共に、当該記憶した減算データX3、及び上記データX1,X2をパーソナルコンピュータ22に送出するデータロガー(データレコーダー)21、上記データロガー21から入力する減算データX3、及び上記データX1,X2を記憶すると共に、表計算ソフト等により当該減算データX3、及び上記データX1,X2を画面上にグラフ表示するパーソナルコンピュータ22を具備している。
【0062】
上記パーソナルコンピュータ22は、上記NOx濃度データX1、X2と上記減算データX3に基づいて各NOx濃度データと、データX3に基づくリークアンモニアの濃度の時間経過を画面上にグラフ表示(
図11参照)するものである。尚、上記データロガー21に記憶されたデータはUSBメモリ23に記録することができ、当該データに基づいて他のパーソナルコンピュータにて汎用表計算ソフトによりグラフ表示等を行うことができる。
【0063】
本発明は上述のよう構成されるので、次に本発明の動作及び方法を説明する。
上記車両14にて測定対象となる火力発電所の建屋30(通常1階)に乗り付ける。その後、リークアンモニア測定装置の組み立てを行う。即ち、車両14から排ガス測定用プローブ3及び樹脂製チューブ5,6を取り出して測定対象の排ガスダクト1(例えば発電所建屋4階)に持ち込む。
【0064】
そして、上記プローブ3の内管3aの後端開口部bと分岐管3b’の開口部cに各々シリコンチューブ16,16を接続して接続部17a,17bを形成し、これらシリコンチューブ16,16の各他端に樹脂製チューブ5の一端開口部及び樹脂製チューブ6の一端開口部を接続する。
【0065】
その後、上記両樹脂製チューブ5,6の他端を、当該建屋30の4階から階段R等の通路を使用して、1階の上記車両14の停車位置まで引き回して持って来る。尚、この場合、樹脂製チューブ5,6の全長は各々数十メートルとなる。そして、上記樹脂製チューブ5の他端を吸引ポンプ7の入力部7aにシリコンチューブ16を介して接続する。同様に、上記樹脂製チューブ6の他端を上記吸引ポンプ9の入力部9bにシリコンチューブ16を介して接続する。尚、上記コック19a,19bの接続、上記車両14内における上記ポンプ7,9以降の各種装置間の接続は予め行っておく。
【0066】
次に、排ガス採取用プローブ3を排ガスダクト1の測定用プローブ挿入管2の貫通孔2bからダクト1内に挿入する。このとき、例えば測定用プローブ3の先端開口部aが上記排ガスダクト1内の半径方向の中心位置(排ガスダクト1の中心軸上)に位置するように、上記プローブ3の少なくとも先端部領域3’が排ガスダクト1内に位置するように、上記排ガスダクト1に垂直にセットする。尚、当該プローブ3は、先端開口部aが当該位置に留まるように、固定ボルト33にてガイドパイプ27aに固定する。
【0067】
その後、吸引ポンプ7,9を作動して排ガスの採取を開始すると共に、NOx計8,10を濃度測定可能状態にセットする。尚、NOx計8,10は何れもNOx濃度と共に酸素濃度も測定可能なNOx計・O
2計一体型のNOx計(市販)を使用することができる。上記ポンプ7の作動により、上記排ガスダクト1内の排ガスは内管3a内に吸引される。このとき、上記プローブ3及び小型脱硝触媒4は何れも高温の排気ガスにより略350℃近くに加熱されている。高温の排ガスは、プローブ3の先端開口部aから小型脱硝触媒4内に吸引され、当該触媒4内において式(1)の脱硝反応が生じ、リークアンモニアが含まれる場合は当該アンモニアが分解され、リークアンモニアの分解に相当するNOx濃度の低下が生じる。かかるアンモニア分解後の排ガスは、内管3a内、上記樹脂製チューブ5を介して車両14内のNOx計8に導入され、当該NOx計8において上記排ガスのアンモニア分解後のNOx濃度(X2ppm)が測定される。このNOx濃度は演算装置11に送出される。
【0068】
上記小型脱硝触媒4を通過した後の排ガスは、既にアンモニアが効率的に分解されており、その後の経路(樹脂製チューブ5)においてNOx、SO
3(三酸化硫黄)と反応することがないため、当該プローブ3に接続された樹脂製チューブ5を例えば数十メートル離れた測定部(NOx計)まで引き回しても、測定値に影響を与えることはない。
【0069】
また、当該プローブ3内の上記小型脱硝触媒4にてアンモニアの分解を行うため、上記触媒4通過後の経路(樹脂製チューブ5)において硫安(固形物)の生成がないので、硫安生成によるアンモニアの測定誤差を回避することができる。
【0070】
一方、上記ポンプ10の作動により、上記排ガスダクト1内の高温の排ガスは外管3b内の円筒状空間S内にも同時に吸引され、該円筒状空間Sを介して上記アンモニア分解触媒4を介することなく上記分岐管3b’から上記樹脂製チューブ6に導入され、当該排ガスは上記樹脂製チューブ6を介して上記車両14内のNOx計10に導入され、該NOx計10において上記排ガスのNOx濃度(X1ppm)が測定される。尚、外管3bを通って採取される排ガスは、単にNOx濃度を測定するだけなので、樹種製チューブ6が長距離となってもNOx計10の測定値には影響を与えない。
【0071】
勿論、上記NOx計8,10での濃度測定に際して、NOx計8,10内臓のO
2濃度計を見ながら上記流量調整コック19a,19bにおいて排ガス流量を調整し、両樹脂製チューブ5,6を介して送られてくる各々の排ガスの上記O
2濃度が均一になるように補正を行い、両排ガスの上記プローブ3における採取タイミングを合わせる作業を行う。このO
2濃度補正を行うことで、上記排ガス採取プローブ3の先端にて、内管3aと外管3bの先端部にて同一タイミング(即ち、同一酸素濃度)で採取した排ガスの濃度を測定可能となる。これにより、二重管構造のプローブ3にて異なる経路(内管3aと外管3b)を介し、しかも非常に長い樹脂製チューブ5,6を通過した後の排ガスであっても、同一タイミングで採取した排ガスの正確な濃度測定が可能となり、延いては正確なリークアンモニア量の計測が可能となる。
【0072】
上記演算装置11では、加減算器20は、上記両NOx計8,10から継続的に入力するNOx濃度データX1,X2をデータロガー21に送出すると共に、これらNOx濃度データの差(X3=X1−X2)の演算(減算)を行い、当該減算データX3をデータロガー21に継続的に送出する。
【0073】
上記データロガー21は、上記加減算器20から入力するNOx濃度データX1,X2及び減算データX3(=X1−X2)を所定間隔で内部メモリに記憶していくと共に、記憶したNOxデータX1,X2及び減算データX3(=X1−X2)の各データをリアルタイムで順次パーソナルコンピュータ22に出力する。尚、データロガー21に記憶した上記各データはいつでも取り出すことができるし、USBメモリ23に出力することもできる。
【0074】
上記パーソナルコンピュータ22は、上記データロガー21から入力する上記各NOx濃度データX1,X2を、横軸を時間軸、縦軸のNOx濃度(ppm)として画面上にてグラフ表示すると共に、縦軸をリークアンモニアの濃度(ppm)、横軸を上記時間軸と同一時間軸上に減算データX3(=X1−X2)をリークアンモニアの濃度データ(ppm)として、画面上にグラフ表示する。
【0075】
これにより、測定者は、上記排ガスダクト1のリークアンモニアをリアルタイムで目視しながら測定することが可能となる。勿論、上記各データはパーソナルコンピュータ22内のメモリに記憶することができる。
【0076】
このように、操作者は、パーソナルコンピュータ22の画面上で、当該発電設備の排ガスダクト1のリークアンモニアの濃度をリアルタイムで目視して把握することができる。従って、当該リークアンモニアを測定しながら、上記発電設備のアンモニア注入装置28のアンモニア分散調整を行うこともできる。
【0077】
測定が終了すると、上記車両14内において、上記ポンプ7,9の駆動を停止すると共に、上記発電所建屋30の4階において、上記排ガスダクト1に挿入していた上記排ガス採取用プローブ3を抜き取り、当該プローブ3を上記樹脂製チューブ5,6と共に回収して1階まで下し、上記車両14の荷台に収納することにより、リークアンモニア測定装置を当該車両14内に収納することができる。
【0078】
従って、当該車両14により、別の火力発電所等に移動して、当該他の火力発電所において、上記と同様にリークアンモニアの測定を行うことができる。
【実施例】
【0079】
本実施形態におけるリークアンモニア測定装置を使用し、上記方法にて、石炭火力発電所(出力700MW)の排ガスの上記NOx濃度X1(O
2補正値)、上記NOx濃度X2(O
2補正値)を測定し、演算装置11にてX3(=X1−X2)(O
2補正値)を演算処理し、パーソナルコンピュータ22にてグラフ化したものを
図11に示す。排ガス採取用プローブ3は発電所建屋4階の排ガスダクト1に挿入し、当該プローブ3から約15mの樹脂製チューブ5,6を使用して地上階まで引き回し、地上階で駐車している車両14内にてリークアンモニア(NH
3濃度)の測定を行った。
【0080】
尚、O
2補正(O
2濃度補正)は、NOx計8,9に内蔵するO
2濃度計を見ながら上記コック19a,19bを開閉調整し、樹脂製チューブ5からの排ガスと、樹脂製チューブ6からの排ガスの各O
2濃度を均一に保持することにより、単一の上記排ガス採取用プローブ3にて、同一タイミングで採取した排ガスの濃度を測定した。
【0081】
図10によると、樹脂製チューブ5,6を長距離引き回してもリークアンモニアの濃度(NH
3濃度)を的確に測定できることが確認できた。
【0082】
本発明は上述のように、排ガスダクト1内を流れる高温の排ガスを直ちに排ガス採取用プローブ3の内管3aの小型脱硝触媒4に導くことができ、当該小型脱硝触媒4は、排ガスダクト1内における排ガスにより排ガス温度近くまで加熱されるため、上記プローブ3内の小型脱硝触媒4において効率的に排ガスのアンモニアの分解を行うことができる。従って、リアルタイムで排ガス中のリークアンモニアを測定することができ、かつ上記プローブ3に接続された樹脂製チューブ5(第2チューブ)を例えば数十メートル離れた測定部(NOx計8)まで引き回しても、測定値に影響を与えることはない高性能な排ガス採取用プローブを実現することができる。
【0083】
また、プローブ3内の小型脱硝触媒4にて効率的にアンモニアの分解が行われるため、従来技術のような加熱装置は必要としない。よって、例えば燃料燃焼設備の排ガスダクト1の既設の貫通孔2b内に排ガス採取用プローブ3を挿入し、当該プローブ3に接続した樹脂製チューブ5,6(第2及び第1チューブ)を例えば数十メートルに亘って引き回し、上記両チューブ5,6の他端のNOx計8,10により排ガスのNOx濃度を測定し、演算装置11によりリークアンモニアの濃度を測定することが可能となる。よって、各種の火力発電所等の燃料燃焼設備において持ち回って汎用的かつリアルタイムに測定可能なリークアンモニア測定装置を実現することができる。
【0084】
また、車両14にリークアンモニア測定装置に係る測定機材を収納し、この車両14によって燃料燃焼設備の建屋30近傍の地上階Gに乗り付けて、当該車両14から排ガス採取用のプローブ3及び樹脂製チューブ5,6を取り出して、例えば当該建屋30の上層階31の排ガスダクト1に上記プローブ3を挿入し、当該プローブ3から樹脂製チューブ5,6を地上階まで引き回して他端を吸引ポンプ7,9に接続することにより、当該車両14によって排ガス中のリークアンモニアをリアルタイムで測定することが可能となる。
【0085】
従って、当該車両14を移動することにより、複数の燃料燃焼設備において、汎用的に使用可能なリークアンモニア測定装置を実現することができる。
【0086】
また、排ガス採取用プローブ3はその外径が20mm前後(例えば10mm〜25mm)と細いので、既設の測定プローブ挿入管2の貫通孔2bが細い場合であってもプローブ3の貫通孔2bへの挿入及び抜脱が可能である。
【0087】
また、排ガス採取用プローブ3の外径が20mm前後(例えば10mm〜25mm)と細いので、排ガスダクト1内に挿入した場合、当該プローブ3及び内部の小型脱硝触媒4が排ガス温度近くまで素早く加熱され、従って、当該プローブ3内において効率的なアンモニアの分解を行うことができる。
【0088】
また、当該プローブ3内の上記小型脱硝触媒4にてアンモニアの分解を行うため、上記触媒4通過後の経路において硫安(固形物)の生成を抑止できるので、硫安生成によるアンモニアの測定誤差を回避することができる。
【0089】
また、測定プローブ挿入管2の位置が排ガスダクト1に対して水平であっても垂直であっても問題なく、排ガス採取用プローブ3を挿入して、排ガスをサンプリングすることができる。
【0090】
また、排ガス採取用プローブ3、樹脂製チューブ5,6、吸引ポンプ7,9以降の測定機器類は容易に分離し持ち運ぶことができるため、他の測定点、或いは他の発電設備等に車両14により移動して、迅速かつ自在にリークアンモニアの測定を行うことができる。
【0091】
また、NOx計8,10、演算装置11等の測定器具は、地上階の車両14内に収納しており、上層階31に持ち込むものは排ガス採取用プローブ3と樹脂製チューブ5,6だけで良いため、細々とした多くの資機材を上層階の測定現場に持ち込む必要がなく、作業負担を軽減することができる。