【文献】
HE HUAZHONG,IDENTIFICATION OF POTENT WATER SOLUBLE PURINE-SCAFFOLD INHIBITORS OF THE HEAT SHOCK PROTEIN 90,JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,米国,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2006年 1月12日,V49 N1,P381-390
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
がん、または神経変性障害を、処置または予防するための組成物であって、治療上有効な量の、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を含む、組成物。
がん、または神経変性障害の処置または予防のための薬学的組成物を製剤化することにおける、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩の使用。
【発明を実施するための形態】
【0016】
3.詳細な説明
本発明は、以下を含む:
(1)式(1):
【0017】
【化3】
(式中、
(a)Z
1、Z
2、およびZ
3の各々は、独立してCHまたはNであり;
(b)YはSであり;
(c)XaおよびXbは、Oであり;
(d)Xcは、−CH
2−であり;
(e)X
2は、−NR
1R
2またはそのプロトン化形態であり、ここでR
1およびR
2は、それぞれ独立して、H、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、またはアルキルヘテロアリールアルキルであり;
(f)X
4は、水素またはハロゲンであり;そして
(g)Rは、−R
10−NH−R
11であり、ここでR
10は、エチレンまたはプロピレンであり、R
11は、分枝鎖状アルキルである)
の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【0019】
【化4】
に示されるように、Z
1、Z
2、およびZ
3が全てNである(1)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【0020】
(3)R
11は、ネオペンチル、イソプロピル、またはt−ブチルである(1)もしくは(2)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【0021】
(4)X
2は、ジメチルアミンである、上の(1)〜(3)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【0022】
(5)上の(1)〜(5)のうちの1つにおけるような化合物またはその薬学的に受容可能な塩、および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物。
【0023】
(6)がん、または神経変性障害を、処置または予防するための方法であって、上記方法は、治療上有効な量の、上の(1)〜(5)のうちの1つにおけるような化合物またはその薬学的に受容可能な塩を、それを必要としている患者に投与することを含む、方法。
【0024】
(7)がん、または神経変性障害の処置または予防のための薬学的組成物を製剤化することにおける、上の(1)〜(5)のうちの1つにおけるような化合物またはその薬学的に受容可能な塩の使用。
【0025】
(8)Hsp90の阻害のための方法であって、上記方法は、Hsp90を、Hsp90の機能を阻害する量の、上の(1)〜(5)のうちの1つにおけるような化合物またはその薬学的に受容可能な塩に接触させることを含む、方法。
【0026】
(9)Hsp90の阻害のための薬学的組成物を製剤化することにおける、上の(1)〜(5)のうちの1つにおけるような化合物またはその薬学的に受容可能な塩の使用。
【0027】
上に言及されるように、本開示は、式(1):
【0028】
【化5】
(式中、
(a)Z
1、Z
2、およびZ
3の各々は、独立してCHまたはNであり;
(b)YはSであり;
(c)XaおよびXbは、Oであり;
(d)Xcは、−CH
2−であり;
(e)X
2は、−NR
1R
2またはそのプロトン化形態であり、ここでR
1およびR
2は、それぞれ独立して、H、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、またはアルキルヘテロアリールアルキル、であり;
(f)X
4は、水素またはハロゲンであり;そして
(g)Rは、−R
10−NH−R
11であり、ここでR
10は、エチレンまたはプロピレンであり、R
11は、分枝鎖状アルキルである)
の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を包含する。
【0029】
定義
本開示との関連において使用される場合、本明細書中で使用される用語は、以下の意味を有する。
【0030】
用語「アルキル」および「置換されたアルキル」は、別段特に言及されない限り交換可能であり、置換および非置換のC
1〜C
10直鎖飽和脂肪族炭化水素基、すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の炭素原子を有する基、ならびに置換および非置換のC
3〜C
10分枝鎖飽和脂肪族炭化水素基、すなわち、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の炭素原子を有する基を指す。例えば、「アルキル」としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(Pr)、イソプロピル、ブチル(Bu)、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、アルキルは、C
1〜C
6アルキル、すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有する基である。アルキルは、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換され得るか、または必要に応じて、1個、2個、または3個の置換基で置換され得る。置換されたC
1〜C
6アルキル基の例示的な例としては、−CH
2OH、−CF
2OH、−CH
2C(CH
3)
2C(O)OCH
3、−CF
3、−C(O)CF
3、−C(O)CH
3、−(CH
2)
4SCH
3、−CH(C(O)OH)CH
2CH
2C(O)N(CH
3)
2、−(CH
2)
5NHC(O)NH
2、−CH
2CH
2−(4−フルオロフェニル)、−CH(OCH
3)CH
2CH
3、−CH
2SO
2NH
2、および−CH(CH
3)CH
2CH
2OC(O)CH
3が挙げられる。用語「分枝鎖状アルキル」は、非末端炭素原子を介して結合する直鎖アルキル基、ならびに定義される分岐点を含むアルキル基であるアルキル基を包含する。従って、分枝鎖状アルキル基の例示的な例としては、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、sec−ペンチル、t−ペンチル、およびネオペンチル基が挙げられる。用語「アルケニル」および「置換されたアルケニル」は、別段特に言及されない限り交換可能であり、1個、2個、または3個の炭素−炭素二重結合を有する置換および非置換のC
2〜C
10直鎖脂肪族炭化水素基、すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の炭素原子を有する基、ならびに1個、2個、または3個の炭素−炭素二重結合を有する置換および非置換のC
3〜C
10分枝鎖脂肪族炭化水素基、すなわち、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の炭素原子を有する基を指す。例えば、「アルケニル」としては、エテニル、1−プロパ−1−エニル、1−プロパ−2−エニル、2−プロパ−1−エニル、1−ブタ−3−エニル、2−ペンタ−2−エニル、1−ヘキサ−6−エニル、1−ヘプタ−7−エニル、1−オクタ−8−エニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、アルケニルは、C
2〜C
6アルケニル、すなわち、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子、および1個または2個の炭素−炭素二重結合を有する基である。アルケニルは、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換され得るか、または必要に応じて、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換され得る。置換されたC
2〜C
6アルケニル基の例示的な例としては、−C(H)=CHCH
2OH、−C(H)=CF
2、−CH
2C(H)=CH(CH
2)
2CF
2OH、−CH
2C(=CH
2)C(O)OCH
3、−C(H)=CHCF
3、−CH
2CH
2C(H)=CHC(O)CH
3、−C(H)=C(CH
3)SCH
3、−C(H)=CHC(H)=C(CH
3)C(O)OCH
3、および−C(H)=C=CHOC(O)CH
3が挙げられる。
【0031】
用語「アルキニル」および「置換されたアルキニル」は、別段特に言及されない限り交換可能であり、1個、2個、または3個の炭素−炭素三重結合を有する置換および非置換のC
2〜C
10直鎖脂肪族炭化水素基、すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の炭素原子を有する基、ならびに1個、2個、または3個の炭素−炭素三重結合を有する置換および非置換のC
3〜C
10分枝鎖脂肪族炭化水素基、すなわち、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の炭素原子を有する基を指す。例えば、「アルキニル」としては、エチニル、1−プロパ−1−イニル、1−プロパ−2−イニル、2−プロパ−1−イニル、3−プロパ−1−イニル、1−ブタ−3−イニル、2−ペンタ−2−イニル、1−ヘキサ−6−イニル、1−ヘプタ−7−イニル、1−オクタ−8イニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、アルキニルは、C
2〜C
6アルキニル、すなわち、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子、および1個、または2個の炭素−炭素三重結合を有する基である。アルキニルは、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換され得るか、または必要に応じて、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換され得る。置換されたC
2〜C
6アルキニル基の例示的な例としては、−C≡CCH
2OH、−C≡CF、−CH
2C≡C(CH
2)
2CF
2OH、−C≡CCH
2C(O)OCH
3、−CH
2C≡CCF
3、−CH
2CH
2C≡CC(O)CH
3、−C≡CSCH
3、および−C≡CC(O)OC(O)CH
3が挙げられる。
【0032】
用語「シクロアルキル」および「置換されたシクロアルキル」は、別段特に言及されない限り交換可能であり、単環または複数環の炭素環を指し、ここで各環は、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の炭素原子を含み、任意の環は、1個、2個、または3個の炭素−炭素二重結合または三重結合を含み得る。例えば、「シクロアルキル」としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、およびシクロヘプチルが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキルは、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換され得るか、または必要に応じて、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換され得る。
【0033】
用語「アリール」および「置換されたアリール」は、別段特に言及されない限り交換可能であり、安定な共有結合を形成することが可能な任意の環位置において、共有的に結合される単環式、多環式、ビアリール芳香族基を指す。特定の好ましい結合点は、当業者に明らかである(例えば、3−フェニル、4−ナフチルなど)。アリールは、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換され得るか、または必要に応じて、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換され得る。「アリール」の定義には、ヘテロアリールが含まれるが、これに限定されない。アリール基の例示的な例としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、インデニル、インダニル、アズレニル、アントリル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル、アントラセニル、ピリジル、ピリミジル、ピリジジニル、チアジアゾリルなどが挙げられる。
【0034】
用語「ヘテロアルキル」は、存在する炭素原子または水素原子のうちの1つ以上が、独立して、窒素、酸素、硫黄、またはハロゲンヘテロ原子で置き換えられるアルキル基を指す。ヘテロ原子が、それが置き換わる炭素原子と同じ数の価部位を有さない場合、置き換えられたヘテロ原子に結合する水素の数は、ヘテロ原子の価部位の数と合うように増加または減少させられることを必要とし得る。例えば、炭素原子(四価を有する)が窒素原子(三価)によって置き換えられる場合、置き換えられた炭素にもともと結合していた水素原子のうちの1つは、削除される。同様に、炭素原子がハロゲン原子(一価)によって置き換えられる場合、置き換えられた炭素にもともと結合していた水素原子のうちの3個は、削除される。用語「ヘテロアルキル」はまた、(1)炭素に結合している水素原子のうちの少なくとも1つが、以下:アルキル、アリール、およびヘテロアルキルのうちの少なくとも1つで置換され得るアルキル基、または(2)ヘテロアルキルのヘテロ原子に結合している水素原子のうちの少なくとも1つが、以下:アルキル、アリール、およびヘテロアルキルのうちの少なくとも1つで置換され得るヘテロアルキル基を指す。
【0035】
用語「ヘテロアリール」および「置換されたヘテロアリール」は、別段特に言及されない限り交換可能であり、用語「ヘテロシクロ」および「置換されたヘテロシクロ」は、別段特に言及されない限り交換可能であり、これらの用語は、単環または複数縮合環を有し、環内に1個〜8個の炭素原子、および1個〜4個のヘテロ原子を有する一価の不飽和基を指し、各ヘテロ原子は、独立して、窒素、硫黄、または酸素から選択される。ヘテロアリールまたはヘテロシクロのいずれかにおいて、分子への結合点は、環内のヘテロ原子または任意の場所におけるものであり得る。ヘテロアリールまたはヘテロシクロは、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換され得るか、または必要に応じて、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換され得る。
【0036】
ヘテロアリール基の例示的な例としては、チエニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、2,3−ジヒドロベンゾチエニル、フリル、ピラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、ピロリル、ピロール−3−イル、ピロール−1−イル、インドリル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリニル、インドリジニル、インダゾリル、イミダゾリル、イミダゾール−4−イル、2H−イミダゾリニル、ベンゾイミダゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピラダジニル、ピリミジニル、ピリミジン−2−イル、トリアジニル、キノリル、イソキノリル、4H−キノリジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、1,8−ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、クロマニル、ベンゾジオキソリル、ピペロニル、プリニル、ピラゾリル、ピラゾール−3−イル、トリアゾリル、1,2,4−トリアゾール−1−イル、テトラゾリル、テトラゾール−1−イル、チアゾリル、チアゾール−4−イル、イソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、オキサゾール−2−イル、イソオキサゾリル、イソオキサゾール−3−イル、ベンゾオキサゾリル、オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、チアジアゾリル、ピリダジン−4−イル、ピラジン−2−イル、チオフェン−2−イル、フラン−2−イル、ピリジン−2−イル、ピリジン−4−イル、ピリミジン−2−イルなどが挙げられる。
【0037】
任意の基が1個、2個、もしくは3個の置換基で置換されるか、または必要に応じて、1個、2個、もしくは3個の置換基で置換される場合、各置換基は、独立して、ハロ、−OH、−SH、−CN、−NO
2、−NH
2、トリハロメチル、ペンタハロエチル、C
1〜C
10アルキル、アリールC
0〜C
10アルキル、C
0〜C
10アルキルオキシC
0〜C
10アルキル、アリールC
0〜C
10アルキルオキシC
0〜C
10アルキル、C
0〜C
10アルキルチオC
0〜C
10アルキル、アリールC
0〜C
10アルキルチオC
0〜C
10アルキル、C
0〜C
10アルキルアミノC
0〜C
10アルキル、アリールC
0〜C
10アルキルアミノC
0〜C
10アルキル、N−アリール−N−C
0〜C
10アルキルアミノC
0〜C
10アルキル、C
1〜C
10アルキルカルボニルC
0〜C
10アルキル、アリールC
1〜C
10アルキルカルボニルC
0〜C
10アルキル、C
1〜C
10アルキルカルボキシC
0〜C
10アルキル、アリールC
1〜C
10アルキルカルボキシC
0〜C
10アルキル、C
1〜C
10アルキルカルボニルアミノC
0〜C
10アルキル、アリールC
1〜C
10アルキルカルボニルアミノC
0〜C
10アルキル、−C
0〜C
10アルキルC(O)OR
X、および−C
0〜C
10アルキルC(O)NR
YR
Zを含む基から選択され、ここで、R
X、R
Y、およびR
Zは、独立して、水素、アルキル、およびアリールから選択されるか、またはR
YおよびR
Zは、上に定義されるように、少なくとも1つの置換基を有する3個、4個、5個、6個、7個、または8個の炭素原子を有する飽和環式系または不飽和環式系を形成するために、それらが結合する窒素と一緒にされる。C
0〜C
10アルキルにおけるような「C
0アルキル」は、共有結合である。
【0038】
用語「C
0〜C
10アルキルオキシ」は、指示された数の炭素原子を有し、酸素原子を介して分子に結合するアルキル基を指す。1つの実施形態において、C
0〜C
10アルキルオキシは、C
1〜C
6アルキルオキシ、すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有する基である。アルキルオキシ基の例示的な例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、およびイソプロピルオキシが挙げられる。従って、用語「C
0〜C
10アルキルオキシC
0〜C
10アルキル」は、酸素原子を介してC
0〜C
10アルキルに結合するC
0〜C
10アルキルオキシを指し、C
0〜C
10アルキルは、分子に結合される。同様に、用語「アリールC
0〜C
10アルキルオキシC
0〜C
10アルキル」とは、アリールによって置換されて、酸素原子を介してC
0〜C
10アルキルに結合するC
0〜C
10アルキルオキシを指し、C
0〜C
10アルキルは、分子に結合される。「C
0アルキルオキシ」は、−OHである。
【0039】
用語「C
0〜C
10アルキルチオ」は、指示された数の炭素原子を有し、硫黄原子を介して分子に結合するアルキル基を指す。1つの実施形態において、C
0〜C
10アルキルチオは、C
1〜C
6アルキルチオ、すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有する基である。アルキルオキシ基の例示的な例としては、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、およびイソプロピルチオが挙げられる。従って、用語「C
0〜C
10アルキルチオC
0〜C
10アルキル」は、硫黄原子を介してC
0〜C
10アルキルに結合するC
0〜C
10アルキルチオを指し、C
0〜C
10アルキルは、分子に結合される。同様に、用語「アリールC
0〜C
10アルキルチオC
0〜C
10アルキル」とは、アリールによって置換されて、硫黄原子を介してC
0〜C
10アルキルに結合するC
0〜C
10アルキルチオを指し、C
0〜C
10アルキルは、分子に結合される。「C
0アルキルチオ」は、−SHである。
【0040】
用語「C
1〜C
10アルキルカルボニル」は、指示された数の炭素原子を有し、カルボニル基の炭素原子を介して分子に結合するアルキル基を指す。1つの実施形態において、C
1〜C
10アルキルカルボニルは、C
1〜C
6アルキルカルボニル、すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子(カルボニル炭素原子を含めて)を有する基である。従って、用語「C
1〜C
10アルキルカルボニルC
0〜C
10アルキル」は、カルボニル基の炭素原子を介してC
0〜C
10アルキルに結合するC
1〜C
10アルキルカルボニルを指し、C
0〜C
10アルキルは、分子に結合される。同様に、用語「アリールC
1〜C
10アルキルカルボニルC
0〜C
10アルキル」とは、アリールによって置換されて、カルボニル基の炭素原子を介してC
0〜C
10アルキルに結合するC
1〜C
10アルキルカルボニルを指し、C
0〜C
10アルキルは、分子に結合される。
【0041】
用語「C
1〜C
10アルキルカルボキシ」は、指示された数の炭素原子(カルボキシの炭素原子を含めて)を有し、カルボキシ基を介して分子に結合するアルキル基を指し、ここでカルボキシ基は、−C(=O)−O−配向または−O−C(=O)−配向のいずれかを有する。1つの実施形態において、C
1〜C
10アルキルカルボキシは、C
1〜C
6アルキルカルボキシ、すなわち、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子(カルボキシの炭素原子を含めて)を有する基である。従って、用語「C
1〜C
10アルキルカルボキシC
0〜C
10アルキル」は、カルボキシ基を介してC
0〜C
10アルキルに結合するC
1〜C
10アルキルカルボキシを指し、C
0〜C
10アルキルは、分子に結合される。同様に、用語「アリールC
1〜C
10アルキルカルボキシC
0〜C
10アルキル」とは、アリールによって置換されて、カルボキシ基を介してC
0〜C
10アルキルに結合するC
1〜C
10アルキルカルボキシを指し、C
0〜C
10アルキルは、分子に結合される。
【0042】
用語「C
0〜C
10アルキルアミノ」は、指示された数の炭素原子を有し、アミノ基−N(R
W)−の窒素原子を介して分子に結合するアルキル基を指し、ここでR
Wは、H、C
1〜C
6アルキル、またはアリールである。「C
0アルキルアミノ」は、−NHR
Wである。1つの実施形態において、C
0〜C
10アルキルアミノは、C
1〜C
6アルキルアミノ、すなわち、アルキル基において1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有し、そしてR
W基において0個、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有する基である。従って、用語「C
0〜C
10アルキルアミノC
0〜C
10アルキル」は、アミノ基の窒素原子を介してC
0〜C
10アルキルに結合するC
0〜C
10アルキルアミノを指し、C
0〜C
10アルキルは、分子に結合される。同様に、用語「アリールC
0〜C
10アルキルアミノC
0〜C
10アルキル」とは、アリールによって置換されて、アミノ基の窒素原子を介してC
0〜C
10アルキルに結合するC
0〜C
10アルキルアミノを指し、C
0〜C
10アルキルは、分子に結合される。用語「N−アリール−N−C
0〜C
10アルキルアミノC
0〜C
10アルキル」は、アリールおよびC
0〜C
10アルキルによって置換されたアミン窒素原子であって、C
0〜C
10アルキルにさらに結合した窒素原子を指し、後者のC
0〜C
10アルキルは、分子に結合される。
【0043】
用語「C
1〜C
10アルキルカルボニルアミノ」は、指示された数の炭素原子(カルボニルアミノの(すなわち、アミドの)炭素原子を含めて)を有し、アミド基を介して分子に結合するアルキル基を指し、ここでアミド基は、−C(=O)N(R
V)−配向または−N(R
V)C(=O)−配向のいずれかを有し、R
Vは、HまたはC
1〜C
6アルキルである。1つの実施形態において、C
1〜C
10アルキルカルボニルアミノは、C
1〜C
6アルキルカルボニルアミノ、すなわち、アルキル基において2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子(アミドの炭素原子を含めて)を有し、そしてR
V基において0個、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有する基である。従って、用語「C
1〜C
10アルキルカルボニルアミノC
0〜C
10アルキル」は、アミド基を介してC
0〜C
10アルキルに結合するC
1〜C
10アルキルカルボニルアミノを指し、C
0〜C
10アルキルは、分子に結合される。同様に、用語「アリールC
1〜C
10アルキルカルボニルアミノC
0〜C
10アルキル」とは、アリールによって置換されて、アミド基を介してC
0〜C
10アルキルに結合するC
1〜C
10アルキルカルボニルアミノを指し、C
0〜C
10アルキルは、分子に結合される。
【0044】
用語「アルキルアリール」は、上に定義されるような1個、2個、または3個のアルキル基で置換された、上に定義されるようなアリール基を指し、トリル基は、例示的なアルキルアリールである。1つの実施形態において、アルキルアリール基は、アリール基に結合する1個、2個、または3個のアルキル基を有する「低級アルキルアリール」基であり、各アルキル基は、独立して、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有する。
【0045】
用語「アリールアルキル」は、上に定義されるような1個、2個、または3個のアリール基で置換された、上に定義されるようなアルキル基を指し、ベンジル基は、例示的なアリールアルキルである。1つの実施形態において、アリールアルキル基は、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有するアルキル基に結合する1個、2個、または3個のアリール基を有する「低級アリールアルキル」基である。
【0046】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、上に定義されるような1個、2個、または3個のヘテロシクロ基で置換された、上に定義されるようなアルキル基を指す。1つの実施形態において、ヘテロシクロアルキル基は、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有するアルキル基に結合する1個、2個、または3個のヘテロシクロ基を有する「低級ヘテロシクロアルキル」基である。
【0047】
用語「アルキルヘテロアリール」は、上に定義されるような1個、2個、または3個のアルキル基で置換された、上に定義されるようなヘテロアリール基を指す。1つの実施形態において、アルキルヘテロアリール基は、ヘテロアリール基に結合する1個、2個、または3個のアルキル基を有する「低級アルキルヘテロアリール」基であり、各アルキル基は、独立して、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有する。
【0048】
用語「ヘテロアリールアルキル」は、上に定義されるような1個、2個、または3個のヘテロアリール基で置換された、上に定義されるようなアルキル基を指す。1つの実施形態において、ヘテロアリールアルキル基は、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有するアルキル基に結合する1個、2個、または3個のヘテロアリール基を有する「低級ヘテロアリールアルキル」基である。
【0049】
用語「アルキルヘテロアリールアルキル」は、上に定義されるような1個、2個、または3個のアルキル基で置換された、上に定義されるようなヘテロアリールアルキル基を指す。1つの実施形態において、アルキルヘテロアリールアルキル基は、各アルキル部分が、独立して、1個、2個、3個、4個、5個、または6個の炭素原子を有する「低級アルキルヘテロアリールアルキル」基である。
【0050】
用語「ハロゲン」および「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を指す。
【0051】
万一、示される化学構造と化学名称との一致に関して疑いがある場合、示される化学構造が適用される。
【0052】
用語「薬学的に受容可能な塩」は、式(1)の「遊離」化合物の生物学的有効性および特性を保持する塩を指す。薬学的に受容可能な塩は、式(1)の化合物の遊離塩基と、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、または有機酸、例えば、スルホン酸、カルボン酸、有機リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸、乳酸、酒石酸(例えば、(+)−酒石酸もしくは(−)−酒石酸、またはそれらの混合物)などとの反応から得られ得る。式(1)の特定の化合物は、酸性置換基を有し、薬学的に受容可能な塩基との薬学的に受容可能な塩として存在し得る。本開示は、そのような塩を含む。そのような塩の例としては、金属対イオン塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、スズ塩、銀塩、またはアルミニウム塩、および有機アミン塩、例えば、メチルアミン塩、ジメチルアミン塩、トリメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、n−プロピルアミン塩、2−プロピルアミン塩、またはジメチルイソプロピルアミン塩などが挙げられる。用語「薬学的に受容可能な塩」は、単塩、および複数の塩(例えば、二塩および/または三塩)が存在する化合物を含む。薬学的に受容可能な塩は、当業者に公知である方法によって調製され得る。
【0053】
式(1)の特定の化合物ならびに/またはそれらの薬学的に受容可能な塩は、1つより多くの結晶形で存在し得、本開示は、各結晶形およびそれらの混合物を包含する。これらの結晶形は、当業者に公知である方法によって調製され得る。
【0054】
用語「溶媒和物」は、溶質(例えば、式(1)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩)の1つ以上の分子、および化学量論量または非化学量論量で存在する溶媒の1つ以上の分子によって形成される複合体または凝集体を指す。適切な溶媒としては、水、酢酸、エタノール、メタノール、イソプロパノール、およびn−プロパノールが挙げられるが、これらに限定されない。溶媒が水である場合、溶媒和物は、水和物である。例示的な水和物としては、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、および四水和物が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、溶媒は、薬学的に受容可能である。別の実施形態において、複合体または凝集体は、結晶性形態である。別の実施形態において、複合体または凝集体は、非結晶性形態である。本開示は、各溶媒和物およびそれらの混合物を包含する。これらの溶媒和物は、当業者に公知である方法によって調製され得る。
【0055】
式(1)の特定の化合物は、異なる互変異性体形態で存在し得るか、または異なる幾何異性体として存在し得、本開示は、式(1)の化合物の各互変異性体および/または幾何異性体、ならびにそれらの混合物を含む。
【0056】
式(1)の特定の化合物は、1つ以上のキラル中心を含み得、種々の光学活性形態で存在し得、本開示は、式(1)の化合物の各光学活性形態、ならびにそれらの混合物を含む。式(1)の化合物が1つのキラル中心を含む場合、化合物は、2つの鏡像異性体形態で存在し、本開示は、鏡像異性体および鏡像異性体の混合物(例えば、ラセミ混合物)の両方を含む。鏡像異性体は、当業者に公知の方法によって(例えば、例えば結晶化または液体クロマトグラフィーによって分離され得るジアステレオ異性体塩の形成によって)分割され得る。あるいは、特定の鏡像異性体は、光学活性の試薬、基質、触媒、もしくは溶媒を用いて不斉合成によって、または不斉転換により1つの鏡像異性体を他方に変換することによって合成され得る。式(1)の化合物が1つより多くのキラル中心を含む場合、それは、ジアステレオ異性体形態で存在し得る。ジアステレオ異性体化合物は、当業者に公知の方法によって(例えば、クロマトグラフィーまたは結晶化によって)分離され得、個々の鏡像異性体は、上に記載されるように分離され得る。本開示は、式(1)の化合物の各ジアステレオ異性体、ならびにそれらの混合物を含む。
【0057】
用語「同位体富化された」は、化合物を構成する原子のうちの1つ以上において、非天然割合の同位体を含む式(1)の化合物を指し、本開示は、式(1)の化合物の各同位体富化された形態、ならびにそれらの混合物を含む。特定の実施形態において、同位体富化された化合物は、非天然割合の1つ以上の同位体を含み、それには、水素(
1H)、ジュウテリウム(
2H)、トリチウム(
3H)、炭素−11(
11C)、炭素−12(
12C)、炭素−13(
13C)、炭素−14(
14C)、窒素−13(
13N)、窒素−14(
14N)、窒素−15(
15N)、酸素−14(
14O)、酸素−15(
15O)、酸素−16(
16O)、酸素−17(
17O)、酸素−18(
18O)、フッ素−17(
17F)、フッ素−18(
18F)、硫黄−32(
32S)、硫黄−33(
33S)、硫黄−34(
34S)、硫黄−35(
35S)、硫黄−36(
36S)、塩素−35(
35Cl)、塩素−36(
36Cl)、塩素−37(
37Cl)、臭素−79(
79Br)、臭素−81(
81Br)、ヨウ素−123(
123I)、ヨウ素−125(
125I)、ヨウ素−127(
127I)、ヨウ素−129(
1299I)、およびヨウ素−131(
131I)が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態において、同位体富化された化合物は、非天然割合の1つ以上の同位体を含み、それには、
1H、
2H、
12C、
13C、
14N、
15N、
16O、
17O、
18O、
17F、
32S、
33S、
34S、
36S、
35Cl、
37Cl、
79Br、
81Br、および
127Iが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態において、同位体富化された化合物は、放射性である。別の実施形態において、同位体富化された化合物は、非天然割合の1つ以上の同位体を含み、それには、
3H、
11C、
4C、
13N、
14O、
15O、
18F、
35S、
36Cl、
123I、
125I、
129I、および
131Iが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態において、同位体富化された化合物は、
123I、
124I、または
131Iの非天然割合ならびに
3H、
11C、
4C、
13N、
14O、
15O、
18F、
35S、および
36Clから選択される別の同位体を含む。別の実施形態において、同位体富化された化合物は、非天然割合の
123I、
124I、および/または
131Iを含む。別の実施形態において、同位体富化された化合物は、非天然割合の
123Iを含む。別の実施形態において、同位体富化された化合物は、非天然割合の
124Iを含む。別の実施形態において、同位体富化された化合物は、非天然割合の
131Iを含む。
【0058】
用語「同位体富化された」は、その元素のより主要な同位体(例えば、水素について、
1H)の代わりに、分子中の所与の場所において、元素のより主要ではない同位体(例えば、水素について、ジュウテリウム)の組み込みの百分率を指す。分子中の特定の場所における原子が特定のより主要ではない同位体として示される場合、その場所におけるその同位体の存在度は、その天然の存在度よりも実質的に大きいことが理解される。
【0059】
用語「治療上有効な量」は、処置される状態の進行を完全にまたは部分的に阻害するか、あるいはその状態の症状のうちの1つ以上を少なくとも部分的に緩和するような、式(1)の化合物、または2つ以上の化合物の組み合わせの量を指す。治療上有効な量はまた、予防上有効である量であり得る。治療上有効である量は、患者の性およびサイズ、処置されるべき状態、状態の重症度、ならびに求められる結果に依存する。所与の患者について、治療上有効な量は、当業者に公知である方法によって決定され得る。
【0060】
用語「患者」は、動物を指し、それには、哺乳動物、霊長類の動物(例えば、ヒト)、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、またはマウスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
用語「がん」または「新生物障害」は、異常または制御されていない細胞増殖からもたらされる腫瘍を指す。がんの例としては、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、前立腺がん、卵巣がん、膵がん、肺がん、胃がん、食道がん、神経膠腫がん、および血液悪性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。新生物障害の例としては、造血障害、例えば、骨髄増殖性障害、本態性血小板増加症、血小板血症、血管新生骨髄様化生(angiogenic myeloid metaplasia)、真性赤血球増加症、骨髄線維症、骨髄様化生を伴う骨髄線維症、慢性特発性骨髄線維症、血球減少症、および前悪性骨髄異形成症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
用語「血液悪性疾患」は、骨髄およびリンパ組織(身体の血液形成および免疫系)のがんを指す。血液悪性疾患の例としては、骨髄形成異常症(myelodysplasia)、リンパ腫、白血病、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)、ホジキン病(ホジキンリンパ腫としても公知)、および骨髄腫、例えば、急性リンパ球性白血病(ALL)、成人T細胞ALL、急性骨髄性白血病(AML)、3系統骨髄形成異常症を伴うAML、急性前骨髄球性白血病、急性未分化型白血病、未分化型大細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性好中球性白血病、若年性骨髄性単球性白血病、混合系統系白血病、骨髄増殖性障害、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、および前リンパ球性白血病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
用語「白血病」は、血液形成組織の悪性新生物を指し、それには、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、および慢性骨髄性白血病が挙げられるが、これらに限定されない。白血病は、再発し得るか、難治性であり得るか、または従来の治療に対して耐性があり得る。
【0064】
用語「神経変性障害」は、ニューロンの進行性の損失が末梢神経系または中枢神経系のいずれかにおいて起こる障害を指す。神経変性障害の例としては、慢性神経変性疾患、例えば、糖尿病性末梢神経障害、アルツハイマー病、ピック病、びまん性レヴィー小体病、進行性核上性麻痺(スティール−リチャードソン症候群)、多系統変性(multisystem degeneration)(シャイ−ドレーガー症候群)、運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症(「ALS」)が挙げられる)、変性運動失調症(degenerative ataxias)、大脳皮質基底変性症(cortical basal degeneration)、グアムのALS−パーキンソン−認知症複合、亜急性硬化性汎脳炎、ハンティングトン病、パーキンソン病、多発性硬化症、シヌクレイン病、原発性進行性失語症、線条体黒質変性症、マシャド−ジョセフ病/脊髄小脳失調症3型およびオリーブ橋小脳変性症、ジルドラトゥーレット病、延髄および仮性球麻痺、脊髄性および球脊髄性筋萎縮症(ケネディ病)、原発性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、ウェルニッケ−コルサコフ関連認知症(アルコールによる認知症)、ウェルドニッヒ−ホフマン病、クーゲルベルク−ヴェランデル病、テイ−サックス病、ザントホフ病、家族性痙性病、ヴォールファルト−クーゲルベルク−ヴェランデル病、痙性対麻痺、進行性多巣性白質脳症、およびプリオン疾患(クロイツフェルト−ヤコブ、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病、クールー、および致死性家族性不眠症が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。また本開示の方法に含まれる他の状態としては、加齢性認知症および他の認知症、ならびに記憶喪失を伴う状態が挙げられ、それには、血管性認知症、びまん性白質疾患(ビンスヴァンガー病)、内分泌または代謝を起源とする認知症、頭部外傷およびびまん性脳損傷の認知症、パンチドランカー、ならびに前頭葉認知症が挙げられる。また、大脳の虚血または梗塞からもたらされる他の神経変性障害としては、塞栓性閉塞および血栓性閉塞、ならびにあらゆるタイプの頭蓋内出血(硬膜外、硬膜下、クモ膜下、および大脳内が挙げられるが、これらに限定されない)、ならびに頭蓋内および脊椎内損傷(lesion)(挫傷、貫通、ずれ、圧縮、および裂傷が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。従って、用語「神経変性障害」はまた、急性神経変性障害、例えば、脳卒中、外傷性脳傷害、精神分裂病、末梢神経損傷、低血糖症、脊髄傷害、てんかん、無酸素症、および低酸素症に関与するものを包含する。
【0065】
特定の実施形態において、神経変性障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、加齢性記憶喪失、老衰、および加齢性認知症から選択される。別の実施形態において、神経変性障害は、アミロイドーシスとしても特徴付けられるアルツハイマー病である。従って、本開示の他の実施形態は、特徴を共有する他のアミロイドーシス障害の処置または予防に関し、それには、遺伝性大脳血管症(hereditary cerebral angiopathy)、非神経障害性遺伝性アミロイド(normeuropathic hereditary amyloid)、ダウン症候群、マクログロブリン血症、続発性家族性地中海熱、マックル−ウェルズ症候群、多発性骨髄腫、膵臓および心臓関連アミロイドーシス、慢性血液透析関節症、フィンランド型アミロイドーシス、ならびにアイオワ型アミロイドーシスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、薬学的に受容可能な材料、組成物、またはビヒクル(例えば、リガンドもしくは固体フィラー、希釈剤、溶媒、またはカプセル化する材料)を指す。1つの実施形態において、各構成要素は、薬学的製剤の他の成分と適合し、過剰な毒性、刺激、アレルギー性応答、免疫原性、または他の問題もしくは合併症なく、妥当な利益/リスク比に見合って患者の組織または器官と接触して使用するために適しているという点で「薬学的に受容可能」である。薬学的に受容可能なキャリアは、当該分野において公知である。例えば、Pharmaceutical Preformulation and Formulation(Gibson,ed.,2
nd Ed.,CRC Press,Boca Raton,FL,2009);Handbook of Pharmaceutical Additives(Ash and Ash,eds.,3
rd Ed.,Gower Publishing Co.,Aldershot,UK,2007);Remington’s Pharmaceutical Sciences(Gennaro,ed.,19
th Ed.,Mack Publishing,Easton,PA,1995);およびHandbook of Pharmaceutical Excipients(Amer.Pharmaceutical Ass’n,Washington,DC,1986)を参照のこと。
【0067】
別の実施形態において、薬学的組成物は、当該分野において公知である方法によって、式(1)の化合物および薬学的に受容可能なキャリアから形成される。従って、別の実施形態は、式(1)の化合物および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物に関する。そのような組成物は、がん、または神経変性障害を処置または予防するために、例えば、それを必要としている患者において有用である。
【0068】
別の実施形態は、がん、または神経変性障害を処置または予防するための方法に関し、上記方法は、治療上有効な量の、式(1)の化合物を、それを必要としている患者に投与することを含む。別の実施形態は、がん、または神経変性障害を処置または予防するための方法に関し、上記方法は、治療上有効な量の、式(1)の化合物を含む薬学的組成物を、それを必要としている患者に投与することを含む。別の実施形態は、がん、または神経変性障害を処置するための方法に関し、上記方法は、治療上有効な量の、式(1)の化合物を、それを必要としている患者に投与することを含む。別の実施形態は、がん、または神経変性障害を処置するための方法に関し、上記方法は、治療上有効な量の、式(1)の化合物を含む薬学的組成物を、それを必要としている患者に投与することを含む。別の実施形態は、がん、または神経変性障害を予防するための方法に関し、上記方法は、治療上有効な量の、式(1)の化合物を、それを必要としている患者に投与することを含む。別の実施形態は、がん、または神経変性障害を予防するための方法に関し、上記方法は、治療上有効な量の、式(1)の化合物を含む薬学的組成物を、それを必要としている患者に投与することを含む。別の実施形態は、がん、もしくは神経変性障害を処置するために、またはがん、もしくは神経変性障害を予防するために有用である医薬の製造における式(1)の化合物の使用に関する。
【0069】
別の実施形態は、Hsp90の阻害のための方法に関し、上記方法は、Hsp90を、Hsp90の機能を阻害する量の、式(1)の化合物に接触させることを含む。Hsp90の機能を阻害する量の例示的な決定は、下の「Hsp90結合アッセイ」という題の実施例において提供される。1つの実施形態において、本明細書中に提供される「Hsp90結合アッセイ」によって決定されるIC
50は、10μMよりも小さい。別の実施形態において、本明細書中に提供される「Hsp90結合アッセイ」によって決定されるIC
50は、1μMよりも小さい。別の実施形態において、本明細書中に提供される「Hsp90結合アッセイ」によって決定されるIC
50は、≦0.1μMである。別の実施形態は、Hsp90の阻害のための薬学的組成物を製剤化することにおける式(1)の化合物の使用に関する。
【0070】
以下の実施例は、本発明を理解することを助けるために明記され、本明細書中に記載され、特許請求される場合、本発明を特に限定すると解釈されるべきではない。当業者の範囲内である現在公知であるか、もしくは後に開発される全ての等価物の置換を含む本発明のバリエーション、および製剤化における変更、または実験的デザインにおける変更は、本明細書中に組み込まれる本発明の範囲内に入ると考えられるべきである。
【実施例】
【0071】
4.実施例
下の特定の実施例は、本開示の例示的な化合物の合成に関する。
【0072】
スキーム1. DZ4−132、DZ4−134、DZ4−135、および関連する化合物の合成
【0073】
【化6】
試薬および条件:(a)Ac
2O、AcOH、室温;(b)ICl、CH
2Cl
2、AcOH、室温;(c)NaOH、EtOH、H
2O、還流;(d)パラホルムアルデヒド、NaBH
3CN、MeOH、50℃;(e)8−メルカプトアデニン、ネオクプロイン、CuI、NaOtBu、DMF、115℃;(f)1,2−ジブロモエタン/1,3−ジブロモプロパンまたは対応するブロミド、Cs
2CO
3、DMF、室温;(g)アミン、DMF、室温。
【0074】
N−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)アセトアミド(B):
AcOH(75mL)中、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン(5.0g、36.5mmol)の溶液に、無水酢酸(30mL)を加えた。反応混合物を約25℃の温度で約16時間撹拌し、次に、飽和NaHCO
3溶液の中に注ぎ、濾過した。濾液を酢酸エチルで抽出し、定量的収率でBを得、これをさらなる精製なしで使用した。
1H NMR (500 MHz, DMSO−d
6, δ): 9.82 (s, 1H), 7.29 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 6.93 (dd, J = 8.3, 1.4 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 5.97 (s, 2H), 1.99 (s, 3H).
MS (ESI): m/z = 180.1 [M+H]
+。
【0075】
N−(6−ヨードベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)アセトアミド(C):
塩化メチレン(46.5mL)中、1.0Mの一塩化ヨウ素の溶液を、塩化メチレン(42mL)および酢酸(7mL)中、B(6.4g、35.8mmol)の溶液に滴下して加えた。反応混合物を約16時間撹拌し、次に、飽和チオ硫酸ナトリウムおよびブラインで洗浄した。塩化メチレン溶液をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、残留物を提供し、これをクロマトグラフィー(CH
2Cl
2:EtOAc、20:1)によって精製して、C(6.0g、55%の収率)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO−d
6, δ): 9.33 (s, 1H), 7.37 (s, 1H), 6.96 (s, 1H), 6.07 (s, 2H), 2.01 (s, 3H).
MS (ESI): m/z = 328.0 [M+Na]
+。
【0076】
6−ヨードベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−アミン(D):
エタノール(420mL)および水(96mL)中、C(3.2g、10.5mmol)およびNaOH(21g、525mmol)の溶液を4時間還流した。反応混合物を冷却し、減圧下で濃縮して、残留物を提供し、これを塩化メチレンと水との間に分配した。有機層を水で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、残留物を提供し、これをクロマトグラフィー(ヘキサン:CH
2Cl
2、7:3)によって精製して、D(2.1g、76%の収率)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3, δ): 7.05 (s, 1H), 6.38 (s, 1H), 5.87 (s, 2H), 3.85 (br s, 2H).
MS (ESI): m/z = 264.0 [M+H]
+。
【0077】
6−ヨード−N,N−ジメチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−アミン(E):
塩化メチレン(4mL)およびAcOH(0.435mL、7.604mmol)中、D(200mg、0.7604mmol)、パラホルムアルデヒド(228mg、7.604mmol)、および分子ふるい(2g)の混合物に、NaBH
3CNを加えた。混合物を50℃まで2時間加熱した。反応混合物に水を加え、有機層を分離し、水層を塩化メチレンで数回、さらに抽出した。有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、E(181mg、82%の収率)を得、これをさらなる精製なしで使用した。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3, δ): 7.25 (s, 1H), 6.74 (s, 1H), 5.95 (s, 2H), 2.65 (s, 6H).
MS (ESI): m/z = 292.1 [M+H]
+。
【0078】
8−(6−(ジメチルアミノ)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イルチオ)−9H−プリン−6−アミン(F):
8−メルカプトアデニン(160mg、0.978mmol)、ネオクプロイン水和物(40.7mg、0.196mmol)、CuI(36.4mg、0.196mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(0.184mg、1.91mmol)、E(370mg、1.27mmol)、およびDMF(4mL)の混合物を115℃で32時間加熱した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を分取TLC(CH
2Cl
2:MeOH−NH
3(7N)、10:1)によって精製して、F(123mg、39%の収率)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3/MeOH−d
4, δ): 8.15 (s, 1H), 6.86 (s, 1H), 6.81 (s, 1H), 5.97 (s, 2H), 2.72 (s, 6H).
MS (ESI): m/z = 331.3 [M+H]
+。
【0079】
9−(2−ブロモエチル)−8−(6−(ジメチルアミノ)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イルチオ)−9H−プリン−6−アミン(G):
DMF(0.6mL)中、F(29mg、0.0878mmol)、Cs
2CO
3(42.9mg、0.1317mmol)、1,2−ジブロモエタン(82.5mg、37.8μL、0.439mmol)を約25℃の温度で1.5時間撹拌した。次に、さらなるCs
2CO
3(14mg、0.043mmol)を加え、混合物をさらに20分間撹拌した。混合物を減圧下で乾燥させ、残留物を分取TLC(CH
2Cl
2:MeOH:AcOH、15:1:0.5)によって精製して、G(24mg、63%の収率)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3/MeOH−d
4, δ): 8.24 (s, 1H), 6.81 (s, 1H), 6.68 (s, 1H), 5.96 (s, 2H), 4.62 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 3.68 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.70 (s, 6H).
MS (ESI): m/z = 437.2/439.1 [M+H]
+。
【0080】
8−(6−(ジメチルアミノ)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イルチオ)−9−(2−(ネオペンチルアミノ)エチル)−9H−プリン−6−アミン(DZ4−132):
DMF(0.50mL)中、G(24mg、0.0549mmol)およびネオペンチルアミン(239mg、2.7mmol)を約25℃の温度で約16時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物を分取TLC(CH
2Cl
2:MeOH−NH
3(7N)、20:1)によって精製して、20.6mg(85%の収率)のDZ4−132を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3/MeOH−d
4, δ): 8.16 (s, 1H), 6.73 (s, 1H), 6.55 (s, 1H), 5.88 (s, 2H), 4.27 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.91 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.61 (s, 6H), 2.28 (s, 2H), 0.79 (s, 9H).
13C NMR (125 MHz, CDCl
3/MeOH−d
4, δ): 154.8, 152.9, 151.8, 149.4, 149.2, 148.7, 145.2, 120.0, 118.7, 111.6, 102.9, 102.3, 62.4, 50.1, 45.7, 44.1, 31.9, 28.1.
MS (ESI): m/z = 444.3 [M+H]
+。
【0081】
9−(3−ブロモプロピル)−8−(6−(ジメチルアミノ)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イルチオ)−9H−プリン−6−アミン(H):
DMF(2mL)中、F(60mg、0.1818mmol)、Cs
2CO
3(88.8mg、0.2727mmol)、1,3−ジブロモプロパン(184mg、93μL、0.909mmol)を約25℃の温度で40分間撹拌した。混合物を減圧下で乾燥させ、残留物を分取TLC(CH
2Cl
2:MeOH:AcOH、15:1:0.5)によって精製して、H(60mg、73%の収率)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3, δ): 8.26 (s, 1H), 6.84 (br s, 2H), 6.77 (s, 1H), 6.50 (s, 1H), 5.92 (s, 2H), 4.35 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 3.37 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.68 (s, 6H), 2.34 (m, 2H).
MS (ESI): m/z = 451.1/453.1 [M+H]
+。
【0082】
8−(6−(ジメチルアミノ)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イルチオ)−9−(3−(イソプロピルアミノ)プロピル)−9H−プリン−6−アミン(DZ4−134):
DMF(1mL)中、H(30mg、0.0665mmol)およびイソプロピルアミン(196mg、283μL、3.3mmol)を約25℃の温度で約16時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物を分取TLC(CH
2Cl
2:MeOH−NH
3(7N)、20:1)によって精製して、21.8mg(78%の収率)のDZ4−134を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3, δ): 8.24 (s, 1H), 6.69 (s, 1H), 6.39 (s, 1H), 5.98 (br s, 2H), 5.83 (s, 2H), 4.23 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.68 (septet, J = 6.3 Hz, 1H), 2.61 (s, 6H), 2.48 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 1.95 (m, 2H), 0.99 (d, J = 6.3 Hz, 6H).
13C NMR (125 MHz, CDCl
3, δ): 155.3, 153.6, 152.3, 148.7, 147.7, 147.0, 145.4, 121.1, 120.8, 109.7, 103.1, 102.3, 49.6, 45.9, 44.2, 42.1, 30.5, 23.1.
MS (ESI): m/z = 430.2 [M+H]
+。
【0083】
9−(3−(tert−ブチルアミノ)プロピル)−8−(6−(ジメチルアミノ)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イルチオ)−9H−プリン−6−アミン(DZ4−135):
DMF(1mL)中、H(30mg、0.0665mmol)およびtert−ブチルアミン(243mg、350μL、3.3mmol)を約25℃の温度で約16時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、得られた残留物を分取TLC(CH
2Cl
2:MeOH−NH
3(7N)、20:1)によって精製して、18.5mg(63%の収率)のDZ4−135を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3, δ): 8.25 (s, 1H), 6.69 (s, 1H), 6.40 (s, 1H), 5.88 (br s, 2H), 5.83 (s, 2H), 4.23 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 2.62 (s, 6H), 2.43 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 1.91 (m, 2H), 0.98 (s, 9H).
MS (ESI): m/z = 444.2 [M+H]
+。
【0084】
Hsp90結合アッセイ:
結合研究について、蛍光分極(FP)アッセイを、以前に報告されたのと同様に実施した[Du et al.(2007)「High−throughput screening fluorescence polarization assay for tumor−specific Hsp90」J.Biomol.Screen
12:915−924]。手短に言えば、FP測定をAnalyst GT機器(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)において実施した。測定を、励起および発光の両方がウェルの上部から起こる黒色96ウェルマイクロタイタープレート(Corning # 3650)において行った。10μMのcy3B−GMのストックをDMSO中に調製し、HFBバッファー(0.1mg/mL BGGとともに、20mM Hepes(K)、pH7.3、50mM KCl、2mM DTT、5mM MgCl
2、20mM Na
2MoO
4、および0.01% NP40)で希釈した。試験化合物をDMSO中に溶解させ、いくつかの濃度で、HFBアッセイバッファーに加え、これは、100μLの最終体積中、6nMのcy3B−GM、およびトランスジェニックマウスの脳の溶解産物(6μgのJNPL3の溶解産物)またはヒトがん細胞溶解産物(3μgのSKBr3の溶解産物)の両方を含む。薬物を3連のウェルに加えた。遊離cy3B−GM(6nMのcy3B−GM)、結合cy3B−GM(上に示されるように、6nMのcy3B−GM+溶解産物)、およびバッファーのみを含むウェル(背景)を、対照として各プレートに含んだ。プレートを振とう機上で4℃にてインキュベートし、24時間後に分極値を測定した。阻害率を以下:(対照(%))=100−((mP
c−mP
f)/(mP
b−mP
f))×100(式中、mP
cは、化合物ウェルからの記録されたmPであり、mP
fは、cy3B−GMのみのウェルからの平均の記録されたmPであり、mP
bは、cy3B−GMおよび溶解産物の両方を含むウェルからの平均の記録されたmPである)のように計算し、競合物質濃度の値に対してプロットした。Prism 4.0(GraphPad Software)に実装されるような非線形回帰分析を用いて、データを適合させることによって、50%の結合cy3B−GMが置き換わる阻害物質濃度を得た。
【0085】
これらのアッセイにおいて、以下の簡単にしたHsp90結合格付けを使用した:C
50について、I≧10μM;10μM>II>1μM;1μM>III>0.1μM;IV≦0.1μM。示されるように、試験された化合物の各々は、0.1μM以下のIC
50を示した。これは、高レベルの活性である。
【0086】
表1は、化合物DZ4−132、DZ4−134、およびDZ4−135、ならびに式
【0087】
【化7】
の比較化合物(PU−H71)についての試験の結果を示す。これらの試験結果を解釈することにおいて、がん、または神経変性障害の処置における活性のために、Hsp90に結合することが望ましいことが認識される。対照的に、hERGへの結合は望ましくない心臓への副作用もたらし得るので、hERGへの結合を有することは、一般に望ましくない。従って、2つの測定についての単位が異なることに留意して、Hsp90への結合については低い値、およびhERGへの結合について高い値を有することが望ましい。
【0088】
【表1】
本発明は、本発明のいくつかの局面の例示として意図される実施例において開示される特定の実施形態によって、範囲が限定されるべきではなく、機能的に等価である任意の実施形態は本発明の範囲内である。実際に、本明細書中に示され、記載されたものに加え、本発明の種々の改変は、当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。多くの参照が挙げられ、それらの開示全体は、全ての目的のために、本明細書中で参考として援用される。
(項目1)
式(1):
【0089】
【化8】
(式中、
(a)Z
1、Z
2、およびZ
3の各々は、独立してCHまたはNであり;
(b)YはSであり;
(c)XaおよびXbは、Oであり;
(d)Xcは、−CH
2−であり;
(e)X
2は、−NR
1R
2であり、ここでR
1およびR
2は、それぞれ独立して、H、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、またはアルキルヘテロアリールアルキルであり;
(f)X
4は、水素またはハロゲンであり;そして
(g)Rは、R
10−NH−R
11であり、ここでR
10は、エチレンまたはプロピレンであり、R
11は、分枝鎖状アルキルである)
の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
(項目2)
X
2は、ジメチルアミンである、上記項目に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
(項目3)
R
11は、ネオペンチルである、上記項目のうちのいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
(項目4)
R
11は、イソプロピルである、上記項目のうちのいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
(項目5)
R
11は、t−ブチルである、上記項目のうちのいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
(項目6)
X
2はジメチルアミンであり、YはSであり、R
10はエチレンであり、R
11はネオペンチルであり、X
4はHである、上記項目のうちのいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
(項目7)
Z
1、Z
2、およびZ
3は、それぞれNであり、X
2はジメチルアミンであり、YはSであり、R
10はプロピレンであり、R
11はイソプロピルであり、X
4はHである、上記項目のうちのいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
(項目8)
Z
1、Z
2、およびZ
3は、それぞれNであり、X
2はジメチルアミンであり、YはSであり、R
10はプロピレンであり、R
11はt−ブチルであり、X
4はHである、上記項目のうちのいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
(項目9)
上記項目のうちのいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物。
(項目10)
がん、または神経変性障害を、処置または予防するための方法であって、該方法は、治療上有効な量の、上記項目のうちのいずれか1項に記載の化合物を、それを必要としている患者に投与することを含む、方法。
(項目11)
がん、または神経変性障害の処置または予防のための薬学的組成物を製剤化することにおける、上記項目のうちのいずれか1項に記載の化合物の使用。
(項目12)
Hsp90の阻害のための方法であって、該方法は、Hsp90を、Hsp90の機能を阻害する量の、上記項目のうちのいずれか1項に記載の化合物に接触させることを含む、方法。
(項目13)
Hsp90の阻害のための薬学的組成物を製剤化することにおける、上記項目のうちのいずれか1項に記載の化合物の使用。