(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961686
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】寸法安定化小孔を有する外科用メッシュ
(51)【国際特許分類】
A61L 27/00 20060101AFI20160719BHJP
A61F 2/02 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
A61L27/00 F
A61L27/00 Z
A61F2/02
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-510527(P2014-510527)
(86)(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公表番号】特表2014-522264(P2014-522264A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】US2012037718
(87)【国際公開番号】WO2012158590
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年4月17日
(31)【優先権主張番号】61/485,669
(32)【優先日】2011年5月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509244260
【氏名又は名称】エイテックス テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ベイヤー、 サラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェサップ、 マーク
【審査官】
佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−535949(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/086515(WO,A1)
【文献】
特表2001−519677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/18
A61F 2/00− 4/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱可塑性ポリマー糸から構成され、第1の周囲部を有する第1の小孔を有する、メッシュ編み生地を提供する工程、
前記小孔を包囲する前記生地の少なくとも一部分を、一時的にぴんと張って保持する工程、
支持体外周部を有する支持体を提供する工程、
先細りした前記支持体を、前記第1の小孔に挿入し、前記第1の小孔の周囲部が前記支持体外周部に接触するようにする工程、および
前記ぴんと張った生地および支持体を、定められた温度にて定められた時間オーブン内に置くことにより、前記第1の小孔の周囲部が恒久的に前記支持体外周部の形状を帯びる工程
を含む、メッシュ生地内の小孔を安定化する方法。
【請求項2】
前記メッシュ編み生地は直径3ミルのポリプロピレン糸から作られたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メッシュ編み生地は、
第1バーパターン鎖が1/0 - 2/3 - 2/1 - 2/3 - 2/1 - 2/3 - (1/0 - 1/2) x 3;
第2バーパターン鎖が2/3 - 1/0 - 1/2 - 1/0 - 1/2 - 1/0 - (2/3 - 2/1) x 3;および
第3バーパターン鎖が0/0 - 1/1
である編みパターンを使用して作られたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メッシュ編み生地において1インチあたり26コースある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
編み機が14ゲージのものである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記定められた時間が5〜10分間である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記定められた温度が290°F〜310°Fである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の小孔の周囲が20 mmである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
小孔周囲部を有する少なくとも1つの小孔を有するメッシュ生地、
支持体外周部を有する支持体であって、前記支持体は、前記小孔周囲部が前記支持体外周部と接触するように前記小孔中に受け入れられ、これによって、前記生地が定められた温度にて定められた時間ヒートセットされる際に、前記第1の小孔が恒久的に前記支持体外周部の寸法を帯びる、支持体
を含む、メッシュ生地内に安定化小孔を形成するためのシステム。
【請求項10】
前記メッシュ生地が編み生地である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
編みパターンが、
第1バーパターン鎖が1/0 - 2/3 - 2/1 - 2/3 - 2/1 - 2/3 - (1/0 - 1/2) x 3;
第2バーパターン鎖が2/3 - 1/0 - 1/2 - 1/0 - 1/2 - 1/0 - (2/3 - 2/1) x 3;および
第3バーパターン鎖が0/0 - 1/1
である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記生地がポリプロピレンで構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記定められた時間が5〜10分間である、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記定められた温度が290°F〜310°Fである、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1の小孔の周囲が20 mmである、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
編みパターン中の編まれた糸間に小孔周囲部を有する複数の小孔を有する熱可塑性ポリマーのニット、および
編まれた糸間に膨張した小孔周囲部を有する少なくとも1つのヒートセットされた膨張小孔
を含み、
前記ヒートセットされた小孔の周囲部は恒久的に固定されており途切れがない、
生地。
【請求項17】
編みパターンが、
第1バーパターン鎖が1/0 - 2/3 - 2/1 - 2/3 - 2/1 - 2/3 - (1/0 - 1/2) x 3;
第2バーパターン鎖が2/3 - 1/0 - 1/2 - 1/0 - 1/2 - 1/0 - (2/3 - 2/1) x 3;および
第3バーパターン鎖が0/0 - 1/1
である、請求項16に記載の生地。
【請求項18】
1インチあたり26コースある、請求項17に記載の生地。
【請求項19】
前記編みパターンが14ゲージのものである、請求項17に記載の生地。
【請求項20】
前記ヒートセットされた小孔の周囲が20 mmである、請求項19に記載の生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2011年5月13日に出願された米国仮特許出願第61/485669号に基づく利益を主張するものであり、その米国仮特許出願は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
本明細書に記載される実施態様は、少なくとも1つの寸法安定化小孔を有するシステムおよび生地、ならびにそれらを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
外科用メッシュ生地は多様な用途を有する。特に、外科用メッシュ生地は、骨盤底または腹壁の補強を含む様々な処置において使用され得る。外科用ニットメッシュは、異なる大きさの小孔ならびに異なる引張強度および柔軟特性を有する最終製品が作られるように多様なやり方で製造して、具体的な応用に適合させることができる。骨盤底または腹壁の補強処置において外科用メッシュが使用される場合には、細胞内殖を促進するために小孔サイズを可能な限り大きくすることが望ましい。しかしながら、小孔サイズが大きくなりすぎると引張強度が損なわれ得る。従って、骨盤底または腹壁の補強処置における使用のために有効な材料とするためには、小孔サイズは、材料において必要な引張強度を維持することと、細胞内殖を促進させるために開いた構造を達成するという欲求との妥協点となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある種の応用においては、外科用メッシュを医療装置の一部分として組み入れることが望まれる。従って、メッシュをその医療装置の他の部品または層に結合または固定させる必要性が生じ得る。多くの場合、メッシュは、リベットまたはその他の結合手段により装置に固定させることにより、装置または部品に結合される。リベットが使用される場合には、そのリベットを受け入れるためにメッシュは十分に大きな開口を有していなければならない。リベットまたはその他の結合機構へのメッシュの取り付けを可能にするために、メッシュに適切な大きさの穴を切り抜く、あるいは打ち抜くことは、単純な製造工程であろう。しかしながら、メッシュを形成する繊維が切断されると、メッシュの引張強度が減少する。それに加えて、切断された繊維は、移植式装置の一部として使用される場合には刺激物として作用し得る。さらに、その切断末端は、遊離した末端または繊維が外れたり緩んだりして装置から分離し、患者にさらなる合併症を引き起こす危険性を加える。従って、生地において必要とされる穴を切断以外の手段により形成し、メッシュの強度ひいては構築物の全体的性能を維持することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載される実施態様の好ましいメッシュ生地は、メッシュの無欠性(integrity)を損なうことなくメッシュ生地に小孔を形成する様式を組み入れるものである。具体的には、本明細書に記載される好ましい実施態様のシステム、方法、および生地は、寸法安定化小孔を作製するものであり、これは製造過程における好ましい有利点である。「寸法安定化」という用語は、生地内の標的小孔であってアニーリング処理の際に恒久的な形付けがされるものを表すために使用される。好ましい実施態様ならびにそれを製造するための方法およびシステムを下記において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、外科用メッシュ生地の正面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施態様のシステムの斜視分解図である。
【
図3】
図3は、第1の実施態様のピンフレームアセンブリの正面、側面、および斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3のピンフレームアセンブリのピン断片の正面、平面、側面、および斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2のシステムのペグプレートの正面、側面、および斜視図である。
【
図6】
図6は、
図2のシステムのテーパーの正面、側面、背面、および斜視図である。
【
図7】
図7は、寸法安定化小孔を有する外科用メッシュ生地の正面図である。
【
図9】
図9は、
図8と同様に示された、寸法安定化小孔を有する外科用メッシュ生地の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
第1の好ましい実施態様10は、14ゲージ編み機を使用して作られる外科用メッシュ編み生地14を含む。メッシュ編み生地14を構成する糸は直径3ミル(0.003インチ)のポリプロピレンである。しかしながら、あらゆる熱可塑性ポリマーが本応用において使用され得ることが予想される。具体的な熱可塑性ポリマーの選択は、望まれる製品の品質に依存するであろう。手近な事例において、第1の実施態様は、
第1バーパターン鎖が1/0 - 2/3 - 2/1 - 2/3 - 2/1 - 2/3 - (1/0 - 1/2) x 3;
第2バーパターン鎖が2/3 - 1/0 - 1/2 - 1/0 - 1/2 - 1/0 - (2/3 - 2/1) x 3;および
第3バーパターン鎖が0/0 - 1/1
である編みパターンを有するメッシュ編み生地14である。
【0008】
そこでは1インチあたり26コースある。得られる経編み生地14は、その編み生地内に一連の小孔あるいは穴を生じる。標的小孔12は本発明のシステムおよび方法の標的となる小孔であり、下記においてより詳細に説明する。上述したメッシュ編み生地14の典型的なサンプルを
図1に示す。ヒートセットする前には、メッシュ編み生地14は六角形の小孔あるいは開口の列で構成されていることに留意すべきである。
図1のサンプルにおいて、より大きい六角形小孔およびより小さい六角形小孔の交互の列が存在している。より大きい六角形小孔の列において、その小孔は典型的には幅約2 mm、長さ約7 mmに満たない大きさである。
【0009】
好ましい実施態様10の寸法安定化小孔を作製するために、
図2において概略が示されているように、ピンフレームアセンブリ16およびペグプレート32が使用される。第1の好ましい実施態様10のピンフレームアセンブリ16は、
図3にさらに詳細に示されているが、長方形フレーム18を含む。長方形フレーム18は一対の平行垂直部分19および一対の平行水平部分21を含む。垂直部分19および水平部分21が長方形の形状のフレームを形成する。長方形フレーム18は上表面20および下表面22も有する。上方に伸びた複数のピン24がフレーム18の上表面20に固定されている。好ましい実施態様10において、ピン24は、
図4に詳細に示されているように、ピン断片42に固定されている。各ピン断片42は断片凹部44を含む。凹部44は、例えばネジ(図示していない)のような留め具を受け入れて、ピン断片42を長方形フレーム18に固定する。ピン24は角度θにて断片42に固定されている。θが75°であることが好ましい。ピン角度θは、垂直から約25°ずれた角度から完全な垂直(すなわちθが90°)までの範囲に渡り得ることに留意すべきである。使用の際には、ピン24は、フレームの中心から離れていく角度で長方形フレーム18に固定される。この構成は、メッシュ生地14をより効果的に保持し生地の滑りあるいは動きを最小限にすることを助けるが、このことは下記においてさらに詳細に説明する。
【0010】
第1の好ましい実施態様10において、ピン断片42は、ずらして並べられたピン24の列を有する。各列は、断片42あたり約10個か11個ほどのピンを含む。長方形フレーム18の長さに沿って約9個のピン断片があり、幅に沿って約4.5個のピン断片がある。さらに、好ましい実施態様10において、ピン24は約7 mmの長さで、約1 mmの直径を有する。ピンの先端はとがっている。ピンの鋭くとがった先端はメッシュ編み生地14を掴むことを助ける。ピン24はピン断片42に固定されている。
【0011】
ピン24は、製造過程においてメッシュ生地14とかみ合ってそれをぴんと張って保持するように設計されており、このことは下記においてさらに詳細に説明する。
図3に戻って、ピンフレームアセンブリ16は一対の取っ手23を含む。1つの取っ手23は垂直部分19に隣接して位置し、もう1つは水平部分21に隣接して位置する。取っ手23は、製造過程においてピンフレームアセンブリ16の取扱いの容易さを提供するが、このことは下記においてさらに詳細に論ずる。第1の好ましい実施態様10のピンフレームアセンブリ16はまた、フレーム18の下表面22に固定されておりそのフレームの全長および全幅に渡って広がる、穴あきプレート26を含む。穴あきプレート26は、プレート全体に渡って広がる一連の穴28を有する。各々の穴28の直径および位置は、下記においてより詳細に説明するペグプレート32と揃うように設計される。穴あきプレート26は、長方形フレーム18の下表面22に結合される穴あきプレート上表面27を有する。
【0012】
図5は第1の実施態様10のペグプレート32を示す。ペグプレート32は全体的に平坦であって長方形フレーム18と同様の形を有する。ペグプレート32は、その平面から垂直に伸びる、上方に突き出た一連のペグ34を有する。ペグ34の配置は、ピンフレームアセンブリ16を上からペグプレートに降ろした場合に穴あきプレート26の穴28にペグが受け入れられるようになっており、このことは下記においてより詳細に説明する。ペグ34の数および配置は、標的小孔12の数および位置が変わるのに合わせて変動させ得ることに留意すべきである。ペグ34はネジ部品(図示されていない)によってペグプレート32に固定され得る。このようにして、ペグ34は、寸法安定化小孔が望まれる位置においてペグプレート32上に位置付けられる。ペグ34は穴あきプレート26の穴28の中に受け入れられるので、ペグの外径は穴28の直径を超えることはできない。
【0013】
工程の際には、ペグ34は穴あきプレート26に受け入れられてテーパー30(
図6に詳細に示す)に位置的サポートを提供する。第1の好ましい実施態様10において、各テーパー30は好ましくは約0.778インチの長さである。各テーパー30は中空であって内径31および最大外径33を有する。テーパー30の内径は約0.136インチであることが好ましく、最大外径33は好ましくは約0.258インチである。テーパー30は先細部分36および円筒状部分38を有する。先細部分36は、好ましくは0.258インチの直径から中心方向に向かって0.136インチの直径となるように角度が付いていることが好ましい。先細部分36は好ましくは長さ約0.109インチである。好ましい実施態様のテーパー30はカラー40も有する。カラー40は、テーパー30の先細部分36とは反対の端に位置する。カラー40は円筒状部分38に固定されていて放射状に外側に広がっている。第1の好ましい実施態様10において、カラー40は、約0.375インチの外径および約0.039インチの厚さを有する。カラーの外径は、下記において詳細に述べる理由のために、穴あきプレート26の穴28の直径よりも大きくすべきことに留意することが重要である。
【0014】
寸法安定化小孔を作製するために、ピンフレームアセンブリ16をペグプレート32上に配置して、ペグ34が穴あきプレート26の穴28と揃うようにする。いったんこれが起こったら、ピンフレームアセンブリ16をペグプレート32上に降ろし、ペグは、穴あきプレート26から上向きに、そして長方形フレーム18により囲まれた領域内に突き出る。それから、寸法安定化小孔が望まれる位置におけるペグ34上にテーパー30を設置する。それぞれのテーパー30はペグ34の上部に設置され、テーパーの内径31がペグの外径により受け入れられる。次に、メッシュ編み生地14をピンフレームアセンブリ16上に配置して、生地がフレーム18の長さおよび幅に渡ってぴんと引っ張られるようにする。これは、まずメッシュ編み生地14の一縁が長方形フレーム18の片側上にある複数のピン24により受け留められるようにして、それから生地を反対の縁の方に引っ張ってそちら側にあるピンにより受け留められるようにすることにより達成される。それから、残された一対の縁部が長方形フレームの対応する側にあるピンにより受け留められる。寸法安定化される標的小孔12が、ピンフレームアセンブリ16上において、先立ってペグ34に設置されたテーパー30の真上に正確に位置するように、生地14を適切に揃えるよう注意を払わなければならない。
【0015】
生地14がピンフレームアセンブリ16内で適切に位置付けられると、テーパー30の真上に位置する生地内の標的小孔12は、生地が長方形フレーム18上のピン24に移される際にテーパー30を覆って下方に押し下げられる。これにより、標的小孔12は、テーパー30の先細部分36に接触した状態からそのテーパーの円筒状部分38へと移動させられる。編まれた状態における標的小孔の直径は、テーパー30の円筒外径33よりもわずかに小さい。このことによって標的小孔12の拡張がもたらされ、さらに、その拡張の結果として標的小孔の周辺領域の糸が小孔の方向に引っ張られる。結果として、標的小孔12がテーパー30の円筒状部分38を完全に受け入れて、その状態を達成するために周囲の糸部分がいくらか幅を失うので、標的小孔12は膨張状態となる。換言すれば、膨張した小孔が、隣接する小孔からいくらか幅を奪い取る。生地14をテーパー30に合わせるプロセスは、寸法安定化される小孔の各々にテーパー30が完全挿入されて小孔12がテーパー30の円筒状部分38を受け入れているようになるまで続く。
【0016】
テーパー30の全てが標的小孔12内に受け入れられた後、取っ手23によりピンフレームアセンブリ16をペグプレート32から持ち上げる。テーパー30のカラー40は穴あきプレート26の穴28の直径よりも大きい外径を有するので、テーパー30は生地14内で正しい位置を保つ。各テーパー30のカラー40は、穴あきプレート26の上表面27上に乗っている。メッシュ生地14がカラー40の重みによりわずかに動く際に、穴あきプレート26の上表面に乗ったカラー40が生地14を安定化することを助け、従って生地がテーパー30の重みによって弛まない。
【0017】
それから、標的小孔12内にテーパー30が入った状態のピンフレームアセンブリ16を、アニーリングオーブンに入れる。第1の好ましい実施態様10について、メッシュ生地14の製造にポリプロプレン糸が使用される場合には、好ましいアニーリング温度は290°F〜310°Fであるが、好ましくは304°Fであり、アニール時間は5〜10分間であるが、好ましくは9分間である。
【0018】
一般的に、あらゆる熱可塑性ポリマーの糸または繊維のアニーリング温度は、その糸の製造温度と融解温度との間のどこかになる。示差走査熱量測定解析は、試験される繊維、糸、または生地の融解点およびその他のあらゆるヒートセット活性を表示する。その糸または繊維が以前にヒートセットされていた場合には、2度目に繊維または生地を効果的にアニールするためには、以前のヒートセット温度を超える必要がある。しかしながら、その繊維または糸が以前にヒートセットされていない場合には、最も効果的なアニーリング温度を見出すことは試行錯誤の問題である。もしアニール温度が融解温度に近すぎると、メッシュ生地が熱分解し始める可能性がある。もしその温度が製造温度に近すぎると、不十分なレベルのアニーリングが起こりヒートセットの効果が得られない。アニーリング処理は時間だけでなく温度の因子でもあることにも留意すべきである。アニーリング処理においてはある程度の熱蓄が起こる。蓄熱の程度は、アニールの時間、温度、およびその他の製造因子(例えば処理に用いられる材料)に依存して変動するであろう。
【0019】
第1の好ましい実施態様10の製造に関し、アニール時間が経過したら、ピンフレームアセンブリ16をオーブンから取り出して冷ます。ピンフレームアセンブリ16をペグプレート32上に再配置する。ピンフレームアセンブリ16をペグプレート32上に降ろして、テーパー30が再びペグ34に受け入れられるようにする。十分な冷却時間(好ましくは少なくとも5分間)が経過した後に、長方形フレーム18の縁に沿ったピン24から生地14を外す。冷却により、標的小孔12がテーパー30の円筒状部分38との接触を断つことも引き起こされる。生地14を取り除く際には、標的小孔12は恒久的に拡大されており、恒久的にテーパー30の円筒状部分38の形となっている。寸法安定化小孔12を組み入れた生地14は、この時点でさらなる製造過程に供することができる。得られた外科用メッシュ生地の寸法安定化小孔12の線描を
図7に、そしてその詳細を
図8に示し、
図9においてはその写真も示す。
【実施例】
【0020】
上記で説明した好ましいメッシュ編み生地を使用し、そこに安定化小孔を形成した後に、本明細書に記載される好ましい実施態様のサンプルについて破裂強度試験を行なった。破裂強度試験は以下のように記述される。
【0021】
本発明の好ましい実施態様は、医療装置の他の構成要素に結合または固定させるために生地に小孔または穴を提供しながら、生地の強度を維持するように設計されている。本出願人は、第1の好ましい実施態様10の生地の強度を、穴または小孔を有さない生地(列A)および切り抜きにより穴を作った生地(列C)との比較において試験した。結果を下記の表1に提示する。列Aは、本明細書に記載された経編み生地を使用して作られたメッシュサンプルであるが、ただし小孔12の形成を追加しなかったものである。列Bは、小孔12を含め上記詳細な説明に従って作られたメッシュサンプルである。列Cは、本明細書に記載された経編み生地を使用して作られたメッシュサンプルであるが、ただし、小孔12を作製する代わりに、この経編み生地は、第1の実施態様10の経編み生地の小孔12と同じ位置において穴を切り抜いたものである。この試験は、ASTM D 3786-06に準拠して、トゥルーバースト2・モデル810・インテリジェント破裂強度試験機を用いて実施した。各試験サンプルは、切り抜き、寸法安定化、またはニットの小孔の中心が試験領域内の中央にくるように配置された。試験領域は7.3 cm
2の円形であった。結果において見出されるように、寸法安定化小孔を有するメッシュ生地の強度は、小孔が切り抜かれた生地よりも全般的に高かった。さらに、寸法安定化小孔を有するメッシュ生地は、小孔を有さない生地とほとんど同等の強度の高さを示した。
【表1】
【0022】
上記説明は円形小孔周囲に焦点を合わせたが、他の形状(例えば楕円、正方形、長方形等)の小孔も同じ様式で寸法安定化し得ることが予測されることに留意すべきである。第1の好ましい実施態様において示され説明された小孔の配列は、異なる装置に適合するように変化させ得ることにも留意すべきである。さらに、テーパーの直径および小孔の直径も、他の装置または他の応用に適応させるために改変し得る。
【0023】
上記説明は腹部組織修復において使用するためのニットメッシュ生地に焦点を合わせたが、織られた、または編まれた材料の分野において本発明の他の応用をすることができることにもさらに留意すべきである。例えば、本発明に従って、1つまたは複数の寸法安定化小孔を有するように織物生地を作ることができる。そのような寸法安定化小孔は、縫合ガイダンスまたは補強を提供するために使用され得る。さらに、本発明に従って寸法安定化小孔を作製して、医療装置に取り付けるための部位を提供し、または縫合糸等を受け入れさせることができる。
【0024】
本明細書で用いられる場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈に明らかに反しない限り、複数への言及を含む。従って、例えば「a yarn(糸)」あるいは「a pore(小孔)」という用語は、1本の糸もしくは1個の小孔、または2つ以上の糸もしくは小孔を意味することが意図される。さらに、本明細書内における「上方」、「下方」、「垂直」、「水平」等のような用語の使用は、本明細書に記載される実施態様の構成部分の構造および機能を互いに対して相対的に説明するために用いられる便宜上の言葉であり、限定的用語として解することを意図するものではない。