【実施例】
【0156】
前述の組成物及び方法を、以下の非限定的な実施例においてさらに例証することとする。本実施例は、多様な実施形態を例証するものであるにすぎず、特許請求の対象となる本発明を、本実施例に記載する材料、条件、重量比、プロセスパラメーターなどに関して限定するものではない。
[実施例1]
【0157】
微生物の単離及び同定
1.1 微小生物の単離
当技術分野に公知の確立された手法を用いて、輪王寺(栃木県日光市、日本)所在の常緑樹の下で採取した土壌試料から微生物を単離する。単離は、Lorchら、1995により詳細に記載されている手順を用い、ポテトデキストロース寒天(PDA)を使用して行う。この手順では、まず土壌試料を滅菌水で希釈し、その後、これを固体寒天培地、例えばポテトデキストロース寒天(PDA)で平板培養する。このプレートを、25℃で5日間生育し、その後、個々の微生物コロニーを、別々のPDAプレート中に単離する。単離された細菌は、グラム陰性菌であり、丸い不透明なクリーム色のコロニーを形成するが、このコロニーは、時間が経つと、色はピンク及びピンクがかった褐色に、また、粘液状又はぬるぬるした状態に、変化する。
【0158】
1.2.微小生物の同定
微生物は、細菌のユニバーサルプライマーを用いて16S rRNA領域を増幅させる遺伝子シークエンシングに基づいて同定する。以下のプロトコールを用いる:ブルクホルデリア属(Burkholderia)のA396種をポテトデキストロース寒天プレート上で培養する。24時間が経過したプレートで成長したものを滅菌済の白金耳で剥がし、DNA抽出緩衝液に再懸濁させる。DNAは、MoBio Ultra Clean Microbial DNA抽出キットを用いて抽出する。DNA抽出物5μlを1%アガロースゲルに展開することにより、定性/定量を行う。
【0159】
PCR反応液を、以下のように用意する:2μlのDNA抽出物、5μlのPCR緩衝液、1μlのdNTP(各10mM)、1.25μlの順方向プライマー(27F、(配列番号1)、1.25μlの逆方向プライマー(907R、(配列番号2))、及び0.25μlのTaq酵素。反応液の体積は、滅菌済のヌクレアーゼフリー水を使用して、50μlとする。PCR反応には、95℃で10分間の最初の変性段階、続いて、94℃/30秒、57℃/20秒、72℃/30秒を30サイクル、及び、72℃で10分間の最終的な伸張段階が含まれる。
【0160】
生成物のおよその濃度及びサイズは、1%アガロースゲル上に5μlの量を展開し、生成物のバンドをmass ladderと比較することにより算出する。
【0161】
過剰なプライマー、dNTP、及び酵素を、MoBioのPCRクリーンアップキットを用いてPCR生成物から除去する。浄化されたPCR生成物は、プライマー27F(先述のものと同じ)、530F(配列番号3))、1114F(配列番号4))、及び1525R(配列番号5))、1100R(配列番号6))、519R(配列番号7)を用いて、ダイレクトシークエンシングする。
【0162】
BLASTを用いて、A396株の16S rRNA遺伝子配列を、β−プロテオバクテリアを代表する入手可能な16S rRNA遺伝子配列と比較する。A395 A396株は、ブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)菌群の構成菌と極めて近縁であり、ブルクホルデリア・マルチボランス(Burkholderia multivorans)、ブルクホルデリア・ベトナメンシス(Burkholderia vietnamensis)、及びブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)のいくつかの単離菌と99%以上の類似性を有する。B.セパシア(B. cepacia)菌群を除外したBLASTサーチでは、B.プランタリイ(B. plantarii)、B.グラジオリ(B. gladioli)、及びブルクホルデリア属(Burkholderia)の種のいくつかの単離菌との98%の類似性が示された。
【0163】
近隣結合法を用い、結果を用いて作製した距離系統樹(distance tree)から、A396はブルクホルデリア・マルチボランス(Burkholderia multivorans)及び他のブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)菌群の単離菌と近縁であることが示された。ブルクホルデリア・プランタリイ(Burkholderia plantarii)及びブルクホルデリア・グルメ(Burkholderia glumae)は、距離系統樹の別の枝に属していた。
【0164】
単離されたブルクホルデリア(Burkholderia)株は、以下の配列を含有することが見出された。順方向配列、27Fのプライマーを用いたDNA配列、815ヌクレオチド(配列番号8);逆方向配列、1453bp、プライマーは1525R、1100R、519Rを使用(配列番号9);逆方向配列、824bp、プライマーは907Rを使用(配列番号10);順方向配列、1152bp、プライマーは530Fを使用(配列番号11);順方向配列、1067bp、プライマーは1114Fを使用(配列番号12);逆方向配列、1223bp、プライマーは1525Rを使用(配列番号13);逆方向配列、1216bp、プライマーは1100Rを使用(配列番号14);逆方向配列、1194bp、プライマーは519Rを使用(配列番号15)。
【0165】
1.3.ブルクホルデリア(Burkholderia)A396がブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)菌群に属さないことの証明
1.3.1 特異的なPCRプライマーを使用した分子生物学的研究
ブルクホルデリア(Burkholderia)A396がブルクホルデリア・マルチボランス(Burkholderia multivorans)であるとの同定を確認するために、ハウスキーピング遺伝子の追加的なシークエンシングを実施する。ブルクホルデリア・マルチボランス(Burkholderia multivorans)は、ブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)菌群の既知の構成菌である。Mahenthiralingamら、2000により記載されているように、recA遺伝子のPCRに重点を置く。以下のプライマー、すなわち、(a)B.セパシア(B. cepacia)菌群の一致の確認用には、Mahenthiralingamら、2000に記載されているBCR1及びBCR2を、また、(b)B.マルチボランス(B. multivorans)の一致の確認用には、Mahenthiralingamら、2000に記載されているBCRBM1及びBCRBM2を、使用する。第1のプライマーセットを用いた場合にPCR反応で産物が得られれば、その微生物はB.セパシア(B. cepacia)菌群に属することが確認されるであろう。第2のプライマーセットを用いた場合にPCR反応で産物が得られれば、その微生物は確かにB.マルチボランス(B. multivorans)であることが確認されるであろう。
【0166】
いずれのプライマー対についてもPCR生成物は得られない。ブルクホルデリア・マルチボランス(Burkholderia multivorans)ATCC17616(陽性対照)及びシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)(陰性対照)を用いて、PCR反応及びプライマーの能力を試験する。両方のプライマーセットを用いると、B.マルチボランス(B. multivorans)の場合は、どちらも強いバンドが見られる。シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)の場合は、バンドは見られない。この結果から、A396は、ブルクホルデリア属(Burkholderia)ではあるが、B.セパシア(B. cepacia)菌群の構成菌でもブルクホルデリア・マルチボランス(Burkholderia multivorans)でもないことが示される。このことは、A396と基準培養物であるB.マルチボランス(B. multivorans)の両方を振盪培養にて並べて生育し、600nmでの光学密度測定を用いてその成長を毎日モニタリングする比較培養実験においても、実証される。設定した条件下では、A396種は、B.マルチボランス(B. multivorans)の基準株よりはるかに速く成長した(
図1)。
【0167】
1.3.2 DNA−DNA ハイブリダイゼーション
A396単離株がブルクホルデリア属(Burkholderia)の新種であることを確認するために、ブルクホルデリア・マルチボランス(Burkholderia multivorans)(16S rRNA配列が最もよく似ている)を用いたDNA−DNAハイブリダイゼーション実験を実施する。A396とB.マルチボランス(B. multivorans)の両方についてのバイオマスをISP2ブロス中で作製し、フェルンバッハフラスコ中にて200rpm/25℃で48時間かけて生育する。バイオマスは、遠心分離により無菌的に回収する。ブロスをデカントし、細胞ペレットを水:イソプロパノールの1:1溶液に再懸濁させる。DNA−DNAハイブリダイゼーション実験は、ドイツのDSMZ、German Collection of Microorganisms and Cell Culturesにより実施する。DNAは、Cashionら、1977により記載されているとおり、フレンチプレス細胞破砕機(Thermo Spectronic)を用いて分離し、ヒドロキシアパタイトを用いたクロマトグラフィーにより精製する。DNA−DNAハイブリダイゼーションは、De Leyら、1970の記載に従い、Hussら、1983により記載されている変更を考慮しながら、Peltierのサーモスタット付き6×6マルチセルチェンジャーと、in−situ温度プローブ付きの温度制御装置とが装備された、型式名Cary 100 Bio UV/VIS−分光光度計(Varian)を用いて実施する。DSMZからは、A396とブルクホルデリア・マルチボランス(Burkholderia multivorans)との間のDNA−DNA類似率(%)(similarly)は37.4%であると報告された。この結果から、細菌種を明確に特徴付けるためのDNA−DNA類似率の閾値は70%であるとの特別委員会による勧告(Wayneら、1987)を考慮すると、ブルクホルデリア属(Burkholderia)の種であるA396株はブルクホルデリア・マルチボランス(Burkholderia multivorans)種に属さないことが示される。
【0168】
1.4.Biolog GN2プレートを用いた生化学的プロファイル
炭素源利用プロファイルを得るために、A396をポテトデキストロース寒天(PDA)上で一晩生育する。メーカー(Biolog、Hayward、CA)の推奨に従い、培養物をBUG寒天に移し、Biolog実験に適した培養物を産生させる。
【0169】
微小生物の生化学的プロファイルは、Biolog GN2プレート上に播種し、MicroLog 4−自動マイクロステーションシステムを用いて24時間のインキュベーションの後にプレートを読み取ることにより決定する。未知の細菌の同定は、その細菌の炭素利用パターンをMicroLog 4のグラム陰性菌データベースと比較することにより試みる。
【0170】
Biologのプロファイルとの明らかな決定的な一致は見出されない。最もよく似ているもの同士、すなわち、シュードモナス・スピノサ(ブルクホルデリア)(Pseudomonas spinosa (Burkholderia))、ブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、及びブルクホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)は、すべて、A396との類似率が35%未満であった。結果を表1に示す。
【0171】
【表1】
【0172】
1.5.脂肪酸組成
28℃で24時間インキュベーションの後、良好に生育された細胞を1白金耳量収集して、脂肪酸メチルエステルを調製し、単離し、記載されているとおり(Vandammeら、1992を参照のこと)にSherlock Microbial Identification System(MIDI)を用いて同定する。ブルクホルデリア(Burkholderia)A396中に存在する主な脂肪酸は、16:0(24.4%)、シクロ17:0(7.1%)、16:0 3−OH(4.4%)、14:0(3.6%)、19:0ω8c(2.6%)シクロ、18:0(1.0%)である。summed feature8(18:1ω7cを含む)及びsummed feature3(16:1ω7c及び16:1ω6cで構成される)は、それぞれ、全ピーク面積の26.2%及び20.2%に相当した。summed feature2(12:0 ALDE、16:1 iso I、及び14:0 3−OHを含む)は全ピーク面積の5.8%に相当し、18:0 ANTE及び18:2ω6,9cを含むsummed feature5は、0.4%に相当した。A396中で少量検出された他の脂肪酸は、13:1 at 12−13(0.2%)、14:1ω5c(0.2%)、15:0 3−OH(0.13%)、17:1ω7c(0.14%)、17:0(0.15%)、16:0 iso 3−OH(0.2%)、16:0 2−OH(0.8%)、18:1ω7c 11−メチル(0.15%)、及び18:1 2−OH(0.4%)を含んでいた。
【0173】
A396の脂肪酸組成と、MIDIデータベースにある既知の微生物株の脂肪酸組成との比較から、新規のA396株中の脂肪酸はブルクホルデリア・セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)の脂肪酸と最も類似していることが示唆された。
【0174】
1.6 抗生物質に対する抵抗性
ブルクホルデリア(Burkholderia)A396の抗生物質感受性は、PML Microbiologicalの技術データシート#535の記載に従い、Muller−Hinton培地上での抗生物質ディスク法を用いて試験する。25℃で72時間のインキュベーション後に得られた結果を、以下の表2に示す。
【0175】
【表2】
【0176】
この結果から、ブルクホルデリア(Burkholderia)A396の抗生物質感受性スペクトルは、病原性のB.セパシア(B. cepacia)菌群の株とは全く異なることが示される。ブルクホルデリア(Burkholderia)A396は、カナマイシン、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、ピペラシリン、イミペネム、及びスルファメトキサゾールとトリメトプリムとの組合せに対して感受性がある。対照的に、Zhouら、2007は、嚢胞性線維症患者から単離されたB.セパシア(B. cepacia)菌群の2,621種類の異なる株の感受性を試験し、すべての株のうち、イミペネムに対しては7%、シプロフロキサシンに対しては5%が感受性であるにすぎないことを見出した。Zhouらは、また、すべての株のうち85%がクロラムフェニコールに抵抗性(15%が感受性)であり、95%がスルファメトキサゾールとトリメトプリムとの組合せに抵抗性(5%が感受性)であることを見出した。Zhouら、2007の結果は、366種類のB.セパシア(B. cepacia)単離菌の間で抗生物質抵抗性を決定し、その大半が、シプロフロキサシン、セフロキシム、イミペネム、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、及びスルファメトキサゾール(sulphametoxacole)に抵抗性であると報告した、Pittら、1996の結果と類似している。
[実施例2]
【0177】
ブルクホルデリア(Burkholderia)製剤、及び、製剤化された製品からの画分の単離
ブルクホルデリア属(Burkholderia)の種の培養物の全細胞ブロスを含有する、製剤化された製品MBI−206から抽出される化合物の精製には、以下の手順を用いる:
Hy soy成長培地中の10−L発酵ブルクホルデリア(Burkholderia)(A396)に由来し、メチル0.1%及びプロピルパラベン0.1%、ヘキサノール0.67%、及びGlycosperse 0−20 0.67%を使用して製剤化された培養ブロスを、Amberlite XAD−7樹脂(Asolkarら、「Weakly cytotoxic polyketides from a marine-derived Actinomycete of the genus Streptomyces strain CNQ-085.」、J. Nat. Prod.、69、1756-1759、2006)で抽出するが、この抽出は、細胞懸濁液を該樹脂と共に室温にて225rpmで2時間振盪することにより行った。樹脂及び細胞塊を、チーズクロスを通したろ過により回収し、脱イオン水で洗浄して塩を除去する。次いで、樹脂、細胞塊、及びチーズクロスをアセトンに2時間浸漬し、その後アセトンをろ過し、回転式蒸発装置を用いて真空下で乾燥させて、粗抽出物(MBI−206−FP−CE)を得る。次いで、逆相C18真空液体クロマトグラフィー(H
2O/CH
3OH;グラジエント80:20から0:100%へ)を用いることによりこの粗抽出物を分画して、10画分を得る(概略図については
図1を参照のこと)。次いで、回転式蒸発装置を用いてこれらの画分を濃縮乾燥させ、その結果得られる乾燥残留物の生物活性を、植物体全体に対する殺草アッセイを用いてスクリーニングする。次いで、活性のある画分、すなわち、画分3、4、5、及び6で、それぞれMBI−206−FP−3、MBI−206−FP−4、MBI−206−FP−5、及びMBI−206−FP−6と表示されたものを、逆相HPLC分離(Spectra System P4000(Thermo Scientific)に繰り返しかけて純粋化合物を得、次いでこれを、前述のバイオアッセイでスクリーニングして、活性化合物を位置付ける/同定する(
図2を参照のこと)。
【0178】
2.1 製剤の画分の分析
これらの画分を、Finnigan Surveyor PDAプラスディテクター、オートサンプラープラス、MSポンプ、及び4.6mm×100mmのLuna C18 5μmカラム(Phenomenex)が装備されたThermo高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置で分析する。溶媒系は、水(溶媒A)及びアセトニトリル(溶媒B)からなっていた。移動相は、10%溶媒Bで始めて、20分かけて100%溶媒Bまで直線的に増加させてから4分間保ち、最後に、3分かけて10%溶媒Bに戻して3分間保つ。流速は、0.5mL/分である。注入体積は10μLであり、試料は、オートサンプラー中で室温に保つ。
【0179】
化合物の同一性を明らかにするために、追加的な分光学的データ、例えばLC/MS及びUVを記録する。画分5に対応する保持時間17.45分の化合物は、出発物質のいずれにおいても見出されず、このことから、この化合物は、該微生物発酵ブロス中の天然産物と、該製剤の作用剤中で見出される化合物のうち1つ又は複数との間で生じた化学反応の生成物であることが示される。特に、この画分は、LCQ DECA XP
plus質量分析計(Thermo Electron Corp.、San Jose、CA)で陽イオン化モードと陰イオン化モードの両方をフルスキャンモード(m/z100〜1500Da)にて使用する、Thermo Finnigan LCQ Deca XP Plusエレクトロスプレー(ESI)装置でのESI−LCMSを用いて分析した。質量分析法による分析は、以下の条件下で実施する:窒素ガスの流速は、シースガス及びaux/スイープガスの流速について、それぞれ30arb及び15arbで固定した。エレクトロスプレーイオン化は、スプレー電圧を5000V、キャピラリー電圧を35.0Vにセットして、実施した。キャピラリー温度は400℃にセットした。データは、Xcaliburソフトウェアで分析した。画分5中で見出された追加的な新たな化合物は、分子量(MW)が194(RT=14.74分)及び222(RT=17.43分)であることが見出された。
【0180】
2.2 バイオアッセイ
2〜3枚の本葉をつけた健康なラディッシュ植物を、試験用に選抜した。このラディッシュ植物は、処理時点で発芽後13日のものである。植物は、すべての処理が茎葉の表面積及び植物の高さにおいて等価であるように選び出す。ポットには、処理番号及び反復番号を書いたラベルを貼る。1処理当たり3本の反復を試験する。
【0181】
MBI−206の製剤化された製品の10画分を試験する。この画分は、濃度が10mg/mlである。この製剤化された製品の粗抽出物及びブロスも試験する。本試験には、未処理対照(脱イオン水で処理したもの)、及び陽性対照(1ガロン当たり2.5液量オンスの比率のRoundUp Super Concentrate)が含まれる。
【0182】
表3に示すように、以下の処理を試験した:
【0183】
【表3】
【0184】
すべての製品及び処理は、よく振ってから、施用する。処理は、2オンスのスプレーボトルから、ノズルを用いて施用する。各処理について、別々のスプレーノズルを用いた。植物の茎葉に、中等度の体積で(すなわち、軽く吹き付けるのでもなく、流出するほど多く施用するのでもなく)均等にスプレーする。2ミリリットルの各処理を、各植物がおよそ0.67ミリリットルの処理溶液で処理されるように、各処理の3本の反復に同時にスプレーする。
【0185】
植物を風乾させ、次いで、収納トレイ中でランダム化する。各トレイは、実験名及び処理日を書いたラベルを貼り、実験用温室の棚の上に置いた。実験用温室は、温度70〜80°F、相対湿度30〜40%を維持する。バイオアッセイの期間を通じて、植物は、収納トレイに適切な量の水を満たすことにより下から灌水して、植物の茎葉が乾燥したままとなるようにした。
【0186】
結果は、処理の3日後、8日後、及び14日後時点で記録する。症状としては、茎葉の焼け、及び植物の発育阻害が挙げられる。表4に示す以下の評点尺度を用いて、有効性を定量化する。植物の全体的な健康、植物の高さの平均値、及び茎葉の健康、という因子を、未処理対照である植物との比較で観察することにより、評点を決定する。影響を受けた植物の症状としては、茎葉の変色/斑点/焼け/退色、葉の歪み/ねじれ/巻き、側枝(頂端分裂組織が損傷することによる)、植物の枝枯れ、又は枯れを挙げ得る。
【0187】
【表4】
【0188】
3つの読み取りの平均値を
図2に示す。植物体全体に対する殺草試験において、画分4及び5は、良好な殺草活性を示している(
図2を参照のこと)。
【0189】
2.3 製剤からの殺有害生物化合物の分離
この画分を、HPLC C−18カラム(Phenomenex、Luna 10u C18(2)100A、250×30)、水:アセトニトリルのグラジエント溶媒系(0〜10分は80%水性CH
3CN、10〜25分は80〜65%水性CH
3CN、25〜50分は65〜50%水性CH
3CN、50〜60分は50〜70%水性CH
3CN、60〜80分は70〜0%水性CH
3CN、80〜85分は0〜20%水性CH
3CN)を流速8L/分及びUV検出210nmの条件で用いてさらに精製すると、保持時間59.15分でブチルパラベン(MBI206−FP−F5H32)、保持時間74.59分でヘキシルパラベン(MBI206−FP−F5H40)が、それぞれ得られた。
【0190】
2.3.1 化合物のNMR分光分析
NMRスペクトルは、Brukerの600MHzのグラジエントフィールド分光計で測定した。基準は、内部標準であるテトラメチルシラン(TMS、0.00ppm)に設定する。
【0191】
2.3.1.1 ヘキシルパラベン(MBI206−FP−F5H40)の構造解明
活性化合物が無色の固体として分離され、UV吸収は248nmで見られた。(−)ESIMSでは、221(M−H)に、分子量222に対応する分子イオンを示した。この化合物は、7.90、6.85、4.28、1.76、1.46、1.38、1.37、0.94で
1H NMR δシグナルを呈しており、
13C NMRの値は、166.84、162.12、131.34(2C)、121.04、114.83(2C)、64.32、31.25、28.43、25.45、22.18. 12.93である。分子式C
13H
18O
3(不飽和度は5)は、NMRとESI質量分析のデータを組み合わせることにより割り当てた。
1H NMRスペクトルは、δ7.90,2H d,J=8.5Hz、及び6.85,2H d,J=8.5Hzで、A
2B
2型の芳香族のシグナルについてのシグナルを呈した。さらに、
1H NMRスペクトルから、δ4,28,2H,t,J=7.3Hz;1,76,2H,m;1.46,2H,m;1.38,2H.m;1.37,2H,m、及び0.94,3H,t,J=7.3Hzでの−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CH
3基の存在が明らかになった。前述のスペクトルデータの分析から、芳香族ポリケチドの構造をヘキシルパラベンと確定し、COSY実験、HMQC実験、及びHMBC実験の詳細な分析によりこれを確認した。文献検索により、この化合物が合成化合物として報告されていることが明らかになった。
【0192】
2.3.1.2 ブチルパラベン(MBI206−FP−F5H32)の構造解明
この化合物は、無色の固体として得られ、UV最大値は248nmで見られた。陰イオン化モードでのLCMS分析により、分子式194に対応するm/z193に分子イオンが示された。UV、MS、及びNMRのデータを分子量222のヘキシルパラベンのデータと比較することにより、この化合物はヘキシルパラベンの類似体であることが見出された。それらの間の唯一の差は、側鎖にあるだけであった。したがって、ブチルパラベンの構造を、分子量194のこの化合物に割り当てた。文献での検索により、この化合物も合成化合物として既知であることが示唆された。
【0193】
2.3.2 殺草活性
画分5から得られた純粋化合物(ブチルパラベン[MBI206−FP−F5H32]及びヘキシルパラベン[MBI206−FP−F5H40])を、濃度10mg/mlで試験した。本試験には、未処理対照(脱イオン水で処理したもの)、製剤ブランク(濃度は3%v/v及び10%v/v)、及び陽性対照(1ガロン当たり2.5液量オンスの比率のRoundUp Super Concentrate)が含まれる。
【0194】
表5に示すように、以下の処理を試験した:
【0195】
【表5】
得られた結果を表6に記載する。
【0196】
【表6】
前表に示したデータに基づき、ヘキシルパラベンは最も強力な殺草化合物であることが見出された。
【0197】
2.3.3 殺虫活性
ブチルパラベン(MBI206−FP−F5H32)及びヘキシルパラベン(MBI206−FP−F5H40)の殺虫活性を実験室アッセイで試験した。このアッセイでは、シロイチモジヨトウ幼虫(スポドプテラ・エクシグア(Spodoptera exigua)の一齢幼虫を対象とし、各ウェルに200μlの固形のシロイチモジヨトウ幼虫用人工餌を入れたマイクロタイタープレートを使用した、96ウェルのダイエットオーバーレイアッセイ(diet overlay assay)を用いた。100マイクロリットルの各試験試料(40μgの試料を含有する)を、餌の上にピペットで載せ(各ウェルに1つの試料)、表面が乾燥するまで試料を気流下で乾燥させる。各試料は複製を6つずつ用いて試験し、水及び市販のDipel製品を、それぞれ、陰性対照及び陽性対照として使用する。試験昆虫(シロイチモジヨトウ幼虫、すなわちスポドプテラ・エクシクア(Spodoptera exiqua))の一齢幼虫を1匹ずつ各ウェル中に置き、このプレートを、通気孔をあけたプラスチックのカバーで覆った。昆虫の入ったプレートを26℃で6日間インキュベートし、致死率を毎日評価した。表7に示す結果に基づけば、ヘキシルパラベンは71%、ブチルパラベンは9%の致死率となった。
【0198】
【表7】
【0199】
2.3.4 殺線虫アシティビティー:ブチルパラベン(MBI206−FP−F5H32)及びヘキシルパラベン(MBI206−FP−F5H40)のin vitro試験:
in vitroでの96ウェルプラスチック細胞培養プレートを用いたバイオアッセイでは、ブチルパラベン及びヘキシルパラベンの純粋な試料を使用した。50μlの水溶液に入った15〜20匹の線虫を、3μlの20mg/mlピーク濃縮物に25℃で24時間曝露させた。インキュベーション期間が終了したらすぐに、化合物で処理した各ウェルに入った若齢の線虫(J2)の不動率の目視採点に基づいて結果を記録した。各処理を、4つのウェルの複製を用いて試験した。結果を表8に示すが、この表は、化合物の、96ウェルプレートでの2つの異なる抽出物バイオアッセイの結果を示すものである。各試行には3つの対照、すなわち、1つの陽性対照(1% Avid)及び2つの陰性対照(DMSO及び水)が含まれる。試行(T1)は、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)という線虫を用いて実施し、試行(trail)(T2)は、キタネコブセンチュウ(M. hapla)という線虫を用いて実施し、試料は100%DMSOに溶解した。ヘキシルパラベン(MBI206−FP−F5H40)は、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)に対して不動率93.75%という優れた制御を示し、一方、ブチルパラベンでは不動率は81.25%であった。
【0200】
【表8】
【0201】
2.3.5 製品の製剤化中のパラベンの形成についての試験
これらのパラベンの形成を理解するために、製剤中のアルコールの変化の効果を検討した。LCMSを用い、製剤中の異なる炭素鎖アルコールを用いて新たなパラベンの形成をモニタリングした。
【0202】
ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、及びセチルアルコールを用いて4つの別々の製剤化実験を実施し、他の成分(ingradient)はすべて同じに保った。3週間+2日の期間をかけて製剤の生成物を抽出した。これらの製剤から得られた粗抽出物をLCMSにより分析した。セチルアルコールを除くすべてのアルコールについて、対応するパラベンが形成された。パラベンの収量は、1日経過した製剤の生成物については、ブチルパラベンが最も高く、続いてヘキシルパラベン、次いでオクチルパラベンであることが見出された。3週間後でも分析結果は同じ順序のまま、すなわち、ブチルパラベン>ヘキシルパラベン>オクチルパラベンであった。したがって、これらのパラベン、例えばブチルパラベン、ヘキシルパラベン、及びオクチルパラベンの形成速度は、製剤中で使用される対応するアルコールの、溶媒(アルコール)の炭素鎖(炭素の数)によって決まる(ブタノール(C4)>ヘキサノール(C6)>オクタノール(C8)など)ことが見出された。セチルパラベンの形成は、3週目まで検出されなかった。これらのパラベンの収量は、時間が経つにつれ向上することが見出された。
【0203】
新たなパラベン類似体の形成における全細胞ブロス(WCB)の役割を理解するために、別の一連の実験を実施した。4つの異なる実験は、製剤中で以下の変化をつけて実施した。
実験1:プロピルパラベン(メチルパラベンなし)+WCB+他の原料
実験2:メチルパラベン(プロピルパラベンなし)+WCB+他の原料
実験3:パラベンなし(両方とも)+WCB+他の原料。
実験4:メチルパラベン+プロピルパラベン+他の原料+WCBなし。
LCMSを用い、前記の製剤を別々に抽出し、次いで、得られた粗抽出物を分析した。ヘキシルパラベンの形成は、最初の2つの実験においてのみ観察された。したがって、これらの実験から、これらのパラベンの形成においてWCBは非常に重要な役割を果たすことが示唆された。
[実施例3]
【0204】
テンプラゾールA及びBの分離
方法及び材料
ブルクホルデリア属(Burkholderia)の種の細胞培養物から抽出されたテンプラゾールA及びBの精製には、以下の手順を用いる(
図3を参照のこと):
【0205】
Hy soy成長培地中の10−L発酵ブルクホルデリア(Burkholderia)(A396)に由来する培養ブロスを、Amberlite XAD−7樹脂(Asolkarら、2006)で抽出するが、この抽出は、細胞懸濁液を該樹脂と共に室温にて225rpmで2時間振盪することにより行った。樹脂及び細胞塊を、チーズクロスを通したろ過により回収し、脱イオン水で洗浄して塩を除去する。次いで、樹脂、細胞塊、及びチーズクロスをアセトンに2時間浸漬し、その後アセトンをろ過し、回転式蒸発装置を用いて真空下で乾燥させて、粗抽出物を得る。次いで、逆相C18真空液体クロマトグラフィー(H
2O/CH
3OH;グラジエント90:10から0:100%へ)を用いることによりこの粗抽出物を分画して、11画分を得る。次いで、回転式蒸発装置を用いてこれらの画分を濃縮乾燥させ、その結果得られる乾燥残留物の生物活性を、96ウェルプレートでのレタス播種アッセイ(lettuce seeding assay)を用いてスクリーニングする。次いで、活性のある画分を、逆相HPLC(Spectra System P4000(Thermo Scientific)にかけて純粋化合物を得、次いでこれを、前述のバイオアッセイでスクリーニングして、活性化合物を位置付ける/同定する。化合物の同一性を確認するために、追加的な分光学的データ、例えばLC/MS及びNMRを記録する。
【0206】
活性のある画分5を、HPLC C−18カラム(Phenomenex、Luna 10u C18(2)100A、250×30)、水:アセトニトリルグラジエント溶媒系(0〜10分は80%水性CH
3CN、10〜25分は80〜65%水性CH
3CN、25〜50分は65〜50%水性CH
3CN、50〜60分は50〜70%CH
3CN、60〜80分は70〜0%水性CH
3CN、80〜85分は0〜20%水性CH
3CN)を流速8mL/分及び、UV検出210nmの条件で用いることによりさらに精製すると、保持時間46.65分でテンプラゾールBが得られる。同様に、他の活性のある画分7を、HPLC C−18カラム(Phenomenex、Luna 10u C18(2)100A、250×30)、水:アセトニトリルグラジエント溶媒系(0〜10分は80%水性CH
3CN、10〜25分は80〜60%水性CH
3CN、25〜50分は60〜40%水性CH
3CN、50〜60分は40%CH
3CN、60〜80分は40〜0%水性CH
3CN、80〜85分は0〜20%水性CH
3CN)を流速8mL/分及びUV検出210nmの条件で用いて精製すると、保持時間70.82分でテンプラゾールAが得られる。
【0207】
純粋化合物の質量分析法による分析を、LCQ DECA XP
plus質量分析計(Thermo Electron Corp.、San Jose、CA)で陽イオン化モードと陰イオン化モードの両方をフルスキャンモード(m/z100〜1500Da)にて使用する、Thermo Finnigan LCQ Deca XP Plusエレクトロスプレー(ESI)装置で実施する。Finnigan Surveyor PDAプラスディテクター、オートサンプラープラス、MSポンプ、及び4.6mm×100mmのLuna C18 5μmカラム(Phenomenex)が装備されたThermo高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置。溶媒系は、水(溶媒A)及びアセトニトリル(溶媒B)からなる。移動相は、10%溶媒Bで始めて、20分かけて100%溶媒Bまで直線的に増加させてから4分間保ち、最後に、3分かけて10%溶媒Bに戻して3分間保つ。流速は、0.5mL/分である。注入体積は10μLであり、試料は、オートサンプラー中で室温に保つ。化合物は、LC及び逆相クロマトグラフィーを利用したLC−MSにより分析する。本化合物の質量分析法による分析を、以下の条件下で実施する:窒素ガスの流速は、シースガス及びaux/スイープガスの流速について、それぞれ30arb及び15arbで固定した。エレクトロスプレーイオン化は、スプレー電圧を5000V、キャピラリー電圧を35.0Vにセットして、実施した。キャピラリー温度は400℃にセットした。データは、Xcaliburソフトウェアで分析した。活性化合物テンプラゾールAは、分子量が298であり、陰イオン化モードにおいて297.34でm/zイオンを示した。テンプラゾールBについてのLC−MSクロマトグラムから、分子量は258であり、陰イオン化モードにおいて257.74でm/zイオンを呈したことが示唆される。
【0208】
1H、
13C、及び2D NMRスペクトルを、Brukerの500MHz及び600MHzのグラジエントフィールド分光計で測定した。基準は、内部標準であるテトラメチルシラン(TMS、0.00ppm)に設定する。
【0209】
テンプラゾールAの構造解明のために、分子量298の精製化合物を、500MHzのNMR装置を用いてさらに分析すると、
1H NMRのδ値は、8.44、8.74、8.19、7.47、7.31、3.98、2.82、2.33、1.08であり、
13C NMRのδ値は、163.7、161.2、154.8、136.1、129.4、125.4、123.5、123.3、121.8、121.5、111.8、104.7、52.2、37.3、28.1、22.7、22.7である。テンプラゾールAは、UV吸収帯が226nm、275nm、327nmにあり、このことから、インドール環及びオキサゾール環の存在が示唆された。分子式C
17H
18N
2O
3は、
1H、
13C NMRの解釈、及びHRESI MSのデータであるm/z299.1396(M+H)
+(Calcd for C
17H
19N
2O
3、299.1397)により決定されたものであり、DBE値が10であることにより示される高度の不飽和を伴う。
13C NMRスペクトルから、2個のメチル、1個のメトキシ、1個のメチレン炭素、1個の脂肪族メチン、1個のエステルカルボニル、及び11個の芳香族炭素を含む全17個の炭素シグナルが明らかになった。
1H−
1H COSY及びHMBCのスペクトルデータから、3’−置換インドールの存在が明らかになった。
1H−
1H COSY及びHMBCから、カルボン酸メチルエステル基及び−CH
2−CH−(CH
3)
2側鎖の存在も示された。
1H−
1H COSY、
13C、及びHMBCのデータの詳細な分析から、この化合物はオキサゾール核を含有することが導かれた。2D分析から、イソブチル側鎖がC−2位、カルボン酸メチルエステルがC−4位、インドール単位がC−5位に結び付いてテンプラゾールAとなっていることが見出された。
【0210】
500MHzのNMR装置を用いて、第2の殺草活性化合物である分子量258のテンプラゾールBをさらに分析すると、
1H NMRのδ値は、7.08、7.06、6.75、3.75、2.56、2.15、0.93、0.93であり、
13C NMRのδ値は、158.2、156.3、155.5、132.6、129.5、129.5、127.3、121.8、115.2、115.2、41.2、35.3、26.7、21.5、21.5である。分子式は、
1H、
13C NMR及び質量データの解釈により決定されるC
15H
18N
2O
2を割り当てる。
13C NMRスペクトルから、2個のメチル、2個のメチレン炭素、1個の脂肪族メチン、1個のアミドカルボニル、及び9個の芳香族炭素を含む全15個の炭素シグナルが明らかになった。この構造の一般的な性質は、
1H及び
13C NMRスペクトルから、パラ置換芳香環を示すと推定された[δ7.08(2H,d,J=8.8Hz)、6.75(2H,d,J=8.8Hz)、及び、132.7、129.5、115.2、127.3、115.2、129.5]。この構造の
1H NMRスペクトルは、
1H−
1H COSY及びHSQCスペクトルと一緒に、イソブチル部分の特徴的なシグナルを示した[δ0.93(6H,d,J=6.9Hz),2.15(1H,sept.,J=6.9Hz),2.57(2H,d,J=6.9Hz)。加えて、
1H及び
13C NMRスペクトルにおいて、さらに、オレフィンプロトン/芳香族プロトンが(δ7.06、s)に、また、カルボニル炭素基が(δ158.9)に、見出された。HMBCスペクトルを検査したところ、イソブチル部分におけるH−1’シグナルはオレフィン炭素(C−2、δ156.3)と相関があり、オレフィンプロトンH−4は、(C−5、δ155.5;C−2、156.3;及びC−1”、41.2)と相関があった。δ3.75に見られるメチレンシグナルは、パラ置換芳香族部分のC−5、C−4、並びにC−2”と相関があった。これらの観察された相関はすべて、示したとおりの構造の骨格のイソブチル部分とパラ置換ベンジル部分の間に連結があることを示唆した。加えて、カルボキサミド基は、H−4”位及びH−6”位にある芳香族プロトンからのHMBC相関に基づき、ベンジル部分のパラ位に割り当てられる。したがって、前述のデータに基づき、この構造をテンプラゾールBと命名した。
[実施例4]
【0211】
FR901228の単離
組成未知の成長培地中のブルクホルデリア属(Burkholderia)の種の発酵に由来する全細胞ブロスを、Amberlite XAD−7樹脂(Asolkarら、2006)で抽出するが、この抽出は、細胞懸濁液を該樹脂と共に室温にて225rpmで2時間振盪することにより行った。樹脂及び細胞塊を、チーズクロスを通したろ過により回収し、脱イオン水で洗浄して塩を除去する。次いで、樹脂、細胞塊、及びチーズクロスをアセトンに2時間浸漬し、その後アセトンをろ過し、回転式蒸発装置を用いて真空下で乾燥させて、粗抽出物を得る。次いで、逆相C18真空液体クロマトグラフィー(H
2O/CH
3OH;グラジエント90:10から0:100%へ)を用いることによりこの粗抽出物を分画して、11画分を得る。次いで、回転式蒸発装置を用いてこれらの画分を濃縮乾燥させ、その結果得られる乾燥残留物の生物活性を、昆虫バイオアッセイ(insect bioassay)と殺草バイオアッセイの両方を用いてスクリーニングする。次いで、活性のある画分を、逆相/順相HPLC(Spectra System P4000;Thermo Scientific)にかけて純粋化合物を得、次いでこれを、以下に記載する殺草バイオアッセイ、殺虫バイオアッセイ、及び殺線虫バイオアッセイでスクリーニングして、活性化合物を位置付ける/同定する。化合物の同一性を確認するために、追加的な分光学的データ、例えばLC/MS及びNMRを記録する。
【0212】
アクティブなピークの質量分析法による分析を、LCQ DECA XP
plus質量分析計(Thermo Electron Corp.、San Jose、CA)で陽イオン化モードと陰イオン化モードの両方をフルスキャンモード(m/z100〜1500Da)にて使用する、Thermo Finnigan LCQ Deca XP Plusエレクトロスプレー(ESI)装置で実施する。Finnigan Surveyor PDAプラスディテクター、オートサンプラープラス、MSポンプ、及び4.6mm×100mmのLuna C18 5μmカラム(Phenomenex)が装備されたThermo高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置。溶媒系は、水(溶媒A)及びアセトニトリル(溶媒B)からなる。移動相は、10%溶媒Bで始めて、20分かけて100%溶媒Bまで直線的に増加させてから4分間保ち、最後に、3分かけて10%溶媒Bに戻して3分間保つ。流速は、0.5mL/分である。注入体積は10μLであり、試料は、オートサンプラー中で室温に保つ。化合物は、LC及び逆相クロマトグラフィーを利用したLC−MSにより分析する。本化合物の質量分析法による分析を、以下の条件下で実施する:窒素ガスの流速は、シースガス及びaux/スイープガスの流速について、それぞれ30arb及び15arbで固定する。エレクトロスプレーイオン化は、スプレー電圧を5000V、キャピラリー電圧を35.0Vにセットして、実施する。キャピラリー温度は400℃にセットする。データは、Xcaliburソフトウェアで分析する。LC−MS分析に基づけば、陰イオン化モードにおいて、画分6由来の、活性のある殺虫化合物の分子量は、540である。
【0213】
構造解明のために、500MHzのNMR装置を用いて、分子量540の画分6由来の精製された殺虫化合物をさらに分析すると、
1H NMRの値は、6.22、5.81、5.69、5.66、5.65、4.64、4.31、3.93、3.22、3.21、3.15、3.10、2.69、2.62、2.26、2.23. 1.74、1.15、1.12、1.05、1.02であり、
13C NMRの値は、172.99、172.93、169.57、169.23、167.59、130.74、130.12、129.93、128.32、73.49、62.95、59.42、57.73、38.39、38.00、35.49、30.90、30.36、29.26、18.59、18.38、18.09、17.93、12.51である。NMRデータから、この化合物は、アミノ基、エステル基、カルボン酸基、脂肪族メチル基、エチル基、メチレン基、オキシメチレン基、メチン基、オキシメチン基、及びイオウ基を含有することが示される。詳細な1D及び2D NMR分析から、この化合物の構造は、既知の化合物と同じFR901228と確認される。
[実施例5]
【0214】
テンプラアミドA、B、FR901465、及びFR901228の単離
方法及び材料
Hy soy成長培地中の10−L発酵ブルクホルデリア(Burkholderia)(A396)に由来する培養ブロスを、Amberlite XAD−7樹脂(Asolkarら、2006)で抽出するが、この抽出は、細胞懸濁液を該樹脂と共に室温にて225rpmで2時間振盪することにより行った。樹脂及び細胞塊を、チーズクロスを通したろ過により回収し、脱イオン水で洗浄して塩を除去する。次いで、樹脂、細胞塊、及びチーズクロスをアセトンに2時間浸漬し、その後アセトンをろ過し、回転式蒸発装置を用いて真空下で乾燥させて、粗抽出物を得る。次いで、逆相C18真空液体クロマトグラフィー(H
2O/CH
3OH;グラジエント90:10から0:100%へ)を用いることによりこの粗抽出物を分画して、11画分を得る。次いで、回転式蒸発装置を用いてこれらの画分を濃縮乾燥させ、その結果得られる乾燥残留物の生物活性を、96ウェルプレートでのレタス播種アッセイ(殺草性)及び三齢初期のシロイチモジヨトウ幼虫(殺虫性)アッセイを用いてスクリーニングする。次いで、活性のある画分を、逆相HPLC分離(Spectra System P4000(Thermo Scientific)に繰り返しかけて純粋化合物を得、次いでこれを、前述のバイオアッセイでスクリーニングして、活性化合物を位置付ける/同定する。化合物の同一性を確認するために、追加的な分光学的データ、例えばLC/MS、HRMS、及びNMRを記録する。
【0215】
活性のある画分6を、HPLC C−18カラム(Phenomenex、Luna 10u C18(2)100A、250×30)、水:アセトニトリルグラジエント溶媒系(0〜10分は80%水性CH
3CN、10〜25分は80〜65%水性CH
3CN、25〜50分は65〜50%水性CH
3CN、50〜60分は50〜70%水性CH
3CN、60〜80分は70〜0%水性CH
3CN、80〜85分は0〜20%水性CH
3CN)を流速8mL/分及びUV検出210nmの条件で用いることによりさらに精製すると、保持時間55.64分でテンプラアミドA、保持時間63.59分でFR901465、保持時間66.65分でFR90128が、それぞれ得られる。同様に、他の活性のある画分6を、HPLC C−18カラム(Phenomenex、Luna 10u C18(2)100A、250×30)、水:アセトニトリルグラジエント溶媒系(0〜10分は70〜60%水性CH
3CN、10〜20分は60〜40%水性CH
3CN、20〜50分は40〜15%水性CH
3CN、50〜75分は15〜0%CH
3CN、75〜85分は0−70%水性CH
3CN)を流速8mL/分及びUV検出210nmの条件で用いて精製すると、保持時間38.55分でテンプラアミドBが得られる。
【0216】
純粋化合物の質量分析法による分析を、LCQ DECA XP
plus質量分析計(Thermo Electron Corp.、San Jose、CA)で陽イオン化モードと陰イオン化モードの両方をフルスキャンモード(m/z100〜1500Da)にて使用する、Thermo Finnigan LCQ Deca XP Plusエレクトロスプレー(ESI)装置で実施する。Finnigan Surveyor PDAプラスディテクター、オートサンプラープラス、MSポンプ、及び4.6mm×100mmのLuna C18 5μmカラム(Phenomenex)が装備されたThermo高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置を用いる。溶媒系は、水(溶媒A)及びアセトニトリル(溶媒B)からなる。移動相は、10%溶媒Bで始めて、20分かけて100%溶媒Bまで直線的に増加させてから4分間保ち、最後に、3分かけて10%溶媒Bに戻して3分間保つ。流速は、0.5mL/分である。注入体積は10μLであり、試料は、オートサンプラー中で室温に保つ。化合物は、LC及び逆相クロマトグラフィーを利用したLC−MSにより分析する。本化合物の質量分析法による分析を、以下の条件下で実施する:窒素ガスの流速は、シースガス及びaux/スイープガスの流速について、それぞれ30arb及び15arbで固定する。エレクトロスプレーイオン化は、スプレー電圧を5000V、キャピラリー電圧を45.0Vにセットして、実施する。キャピラリー温度は300℃にセットする。データは、Xcaliburソフトウェアで分析する。活性化合物テンプラアミドAは、陽イオン化モードにおけるm/zピークが556.41[M+H]
+及び578.34[M+Na]
+にみられることに基づき、分子量が555である。テンプラアミドBについての陽イオン化モードにおけるLC−MS分析からは、m/zイオンが538.47[M+H]
+及び560.65[M+Na]
+にみられることに基づき、分子量は537であることが示唆される。化合物FR901465及びFR901228の分子量は、LCMS分析に基づいて、それぞれ523及び540として割り当てられる。
【0217】
1H、
13C及び2D NMRスペクトルを、Brukerの600MHzのグラジエントフィールド分光計で測定する。基準は、内部標準であるテトラメチルシラン(TMS、0.00ppm)に設定する。
【0218】
テンプラアミドAの構造解明のために、600MHzのNMR装置を用いて、分子量555の精製化合物をさらに分析すると、
1H NMRのδ値は、6.40、6.39、6.00、5.97、5.67、5.54、4.33、3.77、3.73、3.70、3.59、3.47、3.41、2.44、2.35、2.26、1.97、1.81、1.76、1.42、1.37、1.16、1.12、1.04であり、
13C NMRのδ値は、173.92、166.06、145.06、138.76、135.71、129.99、126.20、123.35、99.75、82.20、78.22、76.69、71.23、70.79、70.48、69.84、60.98、48.84、36.89、33.09、30.63、28.55、25.88、20.37、18.11、14.90、12.81、9.41である。
13C NMRスペクトルは、6個のメチル、4個のメチレン炭素、及び、5つのsp
2を含む13個のメチン、4個の第四級炭素に起因すると考えられる28個の別個の炭素シグナルを呈する。
1H、
13C NMR及びHRESI MSのデータの解釈により、分子式C
28H
45NO
10が決定される。
1H−
1HCOSY、HMBC、及びHMQCのスペクトルデータの詳細な分析から、以下の下部構造(I〜IV)及び2個の離れたメチレン基及び一重項のメチル基が明らかになる。これらの下部構造を、後で、キーとなるHMBC相関を用いて結び合わせて化合物の平面(planer)構造を得るが、この化合物は、文献でこれまでに報告されておらず、テンプラアミドAと命名する。このポリケチド分子は、2個のテトラヒドロピラノース環及び1個の共役アミドを含有する。
【0219】
【化37】
下部構造I〜IVは、1D及び2D NMRの分光学的データの分析により割り当てられる。
【0220】
第2の殺草化合物についての(+)ESIMS分析では、m/zイオンは、分子量537に対応する538.47[M+H]
+及び560.65[M+Na]
+に示される。ESIMS及びNMRのデータ分析の解釈により、分子式C
28H
43NO
9が決定される。この化合物の
1H及び
13C NMRは、テンプラアミドAのデータに似ているが、但し、テンプラアミドAにある結合していないメチレン基の代わりに、新たな単独の−CH
2−が現れる。4.3Hzという小さいジェミナル(germinal)結合定数は、エポキシドメチレン基が存在する場合の特徴である。このエポキシドの存在は、テンプラアミドAでの60.98から分子量537の化合物での41.07への
13C NMRシフトにより、さらに確認される。これらの2種類の化合物間の分子式の違いは、水分子の脱離に続いてエポキシドが形成されることにより合理的に説明される。したがって、ベースとなるNMR及びMS分析に基づいて新たな化合物の構造を割り当て、テンプラアミドBと命名した。
【0221】
構造の解明のために、600MHzのNMR装置を用いて、分子量523の、画分6由来の精製化合物をさらに分析すると、
1H NMRの値は、6.41、6.40、6.01、5.98、5.68、5.56、4.33、3.77、3.75、3.72、3.65、3.59、3.55、3.50、2.44、2.26、2.04、1.96、1.81、1.75、1.37、1.17、1.04であり、
13C NMRの値は、172.22、167.55、144.98、138.94、135.84、130.14、125.85、123.37、99.54、82.19、78.28、76.69、71.31、70.13、69.68、48.83、42.52、36.89、33.11、30.63、25.99、21.20、20.38、18.14、14.93、12.84である。化合物の詳細な
1H及び
13C NMR分析から、この化合物は、化合物テンプラアミドBとかなり類似していることが示唆された。唯一の差はエステル側鎖にあり、側鎖中には、プロピオナート部分の代わりにアセタート部分が存在した。詳細な1D及び2D NMR分析から、この化合物の構造は、既知の化合物と同じFR901465と確認される。
【0222】
LC−MS分析に基づけば、画分6由来の他の化合物の分子量は、陰イオン化モードでは540である。構造の解明のために、500MHzのNMR装置を用いて、分子量540の、画分5由来の精製化合物をさらに分析すると、
1H NMRの値は、6.22、5.81、5.69、5.66、5.65、4.64、4.31、3.93、3.22、3.21、3.15、3.10、2.69、2.62、2.26、2.23、1.74、1.15、1.12、1.05、1.02であり、
13C NMRの値は、172.99、172.93、169.57、169.23、167.59、130.74、130.12、129.93、128.32、73.49、62.95、59.42、57.73、38.39、38.00、35.49、30.90、30.36、29.26、18.59、18.38、18.09、17.93、12.51である。NMRデータから、この化合物は、アミノ基、エステル基、カルボン酸基、脂肪族メチル基、エチル基、メチレン基、オキシメチレン基、メチン基、オキシメチン基、及びイオウ基を含有することが示される。詳細な1D及び2D NMR分析から、この化合物の構造は、既知の化合物と同じFR901228と確認される。
【0223】
画分F8由来の他の活性化合物(F8H17)の分子量は、陽イオン化ESIモードでは分子イオンピークが1081.75(M+H)に見られたことに基づいて1080と割り当てられ、ベースピークが1079.92に見られた陰イオン化ESIMSにより、さらに確認された。この化合物は、234nmでUV吸収を示した。
[実施例6]
【0224】
殺藻剤としてのブルクホルデリア属(Burkholderia)の種
ブルクホルデリア属(Burkholderia)のA396種を、組成未知のミネラル培地中で5日間(25℃、200rpm)生育する。細胞を8,000gでの遠心分離により上清から分離し、この無細胞上清を使用して、単細胞藻の種(P.サブカピタータ(P. subcapitata))及びラン藻の種(アナベナ属(Anabaena)の種)に対する殺藻(algaicidal)活性を試験する。特定の増加量の上清を、750マイクロリットルのGorham培地中で成長している特定の藻類が入っている24ウェルのポリスチレンプレートのウェル中に加えて、各藻類のタイプについて試験上清の用量応答曲線を決定する。各処理は、複製を2つずつ用いて行い、ブランク成長培地を陰性対照として用いる。プレートは、蓋を閉め、一定した生育光下で室温にて48時間インキュベートした。48時間後、SpectraMax Gemini XSプレートリーダーを用いて各ウェル中の懸濁液の蛍光(700nmで)を測定し、未処理対照に対する蛍光減少率を、藻類成長の制御率(%)に変換させる。以下の表9に記載する結果から、単細胞藻の優れた制御、及び、ラン藻に対する良好な制御又は静藻効果が示される。
【0225】
【表9】
[実施例7]
【0226】
ブルクホルデリア属(Burkholderia)の種の粗抽出物及び画分によるコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)の制御。
ブルクホルデリア属(Burkholderia)の種の粗抽出物を分画することにより得た画分を、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)に対する殺藻活性について試験した。増加体積の画分(濃度は20mg/mL、エタノール中)を、750マイクロリットルの特定の藻類が成長している透明な48ウェルのポリスチレンプレートに加えた。各処理は、複製を2つずつ用いて行い、溶媒(エタノール)を陰性対照として用いた。プレートは、蓋を閉め、一定した光の下で室温にて72時間インキュベートした。72時間後、各ウェル中の懸濁液の蛍光(680nmで)を、SpectraMax M2プレートリーダーを用いて測定し、陰性対照に対する蛍光減少率を、藻類成長の制御率(%)に変換させた。各試料は、陰性対照と視覚的に比較して、陰性対照より視覚的に透明度の高いウェルは、活性ありと評点付けた。以下の表10に示す結果から、画分5、6、7、8、及び9を用いた場合の特定の藻類の制御が示される。試験は複製を2つずつ用いて行い、制御率(%)は、陰性対照に対する680nmでの蛍光減少率として算出した。各試料は、陰性対照と視覚的に比較して、陰性対照より視覚的に透明度の高いウェルは、活性ありと評点付けた。
【0227】
【表10】
[実施例8]
【0228】
ブルクホルデリア属(Burkholderia)の種から得られた粗抽出物及び多様な画分の、P.サブカピタータ(P. subcapitata)に対する殺藻効果。
ブルクホルデリア属(Burkholderia)の種から得られた粗抽出物並びに画分を、単細胞藻の種(P.サブカピタータ(P. subcapitata))に対する殺藻活性について試験した。既知量の材料(10mg/mLの濃度)を再溶解することにより得られる、各試料に対応する増加体積の純粋エタノール溶液を、750マイクロリットルのGorham培地中で成長している特定の藻類が入っている24ウェルのポリスチレンプレートのウェル中に加えて、単細胞藻類に対する試料(抽出物/画分)の殺藻効果を決定する。各処理は、複製を3つずつ用いて行い、純粋エタノールを陰性対照として用いた。混合した後、プレートは、蓋を閉め、一定した生育光下で室温にて48時間インキュベートした。48時間後、各ウェル中の懸濁液の蛍光(700nmで)を、SpectraMax Gemini XSプレートリーダーを用いて測定し、未処理対照に対する蛍光減少率を、藻類成長の制御率(%)に変換させた。以下の表11に記載する結果から、画分F5、F6、及びF7を用いた場合は単細胞藻の優れた制御が示されるが、他の試料では、実質的な殺藻効果は得られなかった。
【0229】
【表11】
[実施例9]
【0230】
ブルクホルデリア属(Burkholderia)の種の発酵ブロス由来の精製化合物によるコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)の制御
ブルクホルデリア属(Burkholderia)の種の発酵ブロス由来の精製化合物を、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)に対するアルガイシダル活性について試験した。増加体積の該精製化合物(20mg/mL、エタノール中)を、750マイクロリットルの特定の藻類が成長している透明な48ウェルのポリスチレンプレートに加えた。各処理は、複製を2つずつ用いて行い、溶媒を陰性対照として用いた。プレートは、蓋を閉め、一定した光の下にて室温で72時間インキュベートした。72時間後、各ウェル中の懸濁液の蛍光(680nmで)を、SpectraMax M2プレートリーダーを用いて測定し、陰性対照に対する蛍光減少率を、藻類成長の制御率(%)に変換させた。各試料は、陰性対照と視覚的に比較して、陰性対照より視覚的に透明度の高いウェルは、活性ありと評点付けた。以下の表12に記載する結果から、テンプラアミドB(分子量537)、FR901228(分子量540)、テンプラゾールA(分子量298)、及びF8H18(分子量1080)を含有する各試料を用いた場合の特定の藻類の制御が示される。試験は複製を2つずつ用いて行い、制御率(%)は、陰性対照に対する680nmでの蛍光減少率として算出した。各試料は、陰性対照と視覚的に比較して、陰性対照より視覚的に透明度の高いウェルは、活性ありと評点付けた。
【0231】
【表12】
テンプラゾールAは、このバイオアッセイでは2回試験した。
[実施例10]
【0232】
熱処理されたブルクホルデリア属(Burkholderia)の種の発酵上清によるセネデスムス・クアドリカウダ(Scenedesmus quadricauda)の制御。
ブルクホルデリア属(Burkholderia)の種は、前述のとおり、発酵ブロス中で生育した。ブロスは、発酵の終了時点で熱処理して、すべての細胞を不活性化させた。この無細胞上清を、セネデスムス・クアドリカウダ(Scenedesmus quadricauda)に対する殺藻活性について試験した。増加体積の上清を、750マイクロリットルの特定の藻類が成長している透明な48ウェルのポリスチレンプレートに加えた。各処理は、複製を2つずつ用いて行い、ブランク成長培地を陰性対照として用いる。プレートは、蓋を閉め、一定した光の下で室温にて72時間インキュベートする。72時間後、各ウェル中の懸濁液の蛍光(680nmで)を、SpectraMax M2プレートリーダーを用いて測定し、未処理対照に対する蛍光減少率を、藻類成長の制御率(%)に変換させる。以下の表13に記載する結果から、特定の藻類の制御が示される。試験は複製を2つずつ用いて行い、制御率(%)は、未処理対照に対する680nmでの蛍光減少率として算出した。
【0233】
【表13】
[実施例11]
【0234】
熱殺菌されたブルクホルデリア属(Burkholderia)の種の発酵上清によるオシラトリア・テニウス(Oscillatoria tenius)の制御
ブルクホルデリア属(Burkholderia)の種は、前述のとおり、発酵ブロス中で生育した。ブロスは、発酵の終了時点で熱処理して、すべての細胞を不活性化させた。この無細胞上清を、オシラトリア・テニウス(Oscillatoria tenius)に対する殺藻活性について試験した。増加体積の上清を、750μLの特定の藻類が成長している透明な48ウェルのポリスチレンプレートに加えた。各処理は、複製を2つずつ用いて行い、ブランク成長培地を陰性対照として用いる。プレートは、蓋を閉め、一定した光の下で室温にて72時間インキュベートする。72時間後、680nmでの吸光度を、SpectraMax M2プレートリーダーを用いて各ウェル中で測定し、未処理対照に対する吸光度減少率を、藻類成長の制御率(%)に変換させる。以下の表14に記載する結果から、特定の藻類の制御が示される。試験は複製を2つずつ用いて行い、制御率(%)を、未処理対照に対する680nmでの吸光度減少率として算出した。
【0235】
【表14】
[実施例13]
【0236】
マリーゴールド植物を侵襲するナミハダニに対するブルクホルデリア属(Burkholderia)の種の有効性
6”コンテナ中で生育した、マリーゴールドの一種であるセンジュギク(Tagetes erecta)を、宿主植物(綿)から摘み取った葉を試験植物上に置くことにより、ナミハダニ、すなわちテトラニクス・ウルチケ(Tetranychus urticae)に侵襲させた。30〜40匹のハダニが居るおよそ10枚の葉を、試験植物の多様な部位上に14日間置いた。試験植物は、侵襲の後、個々にケージに入れて、ハダニ集団を構築させた。宿主葉を試験植物から除去した。試験植物には、試験剤施用以前には、殺有害生物剤を施用しなかった。100gpaに目盛を調整されたGen3スプレーブースを使用して、スプレー剤施用を行った。各複製は、施用後、直ちに個々にケージに入れた。ケージの説明:ワイヤー製のトマト用ケージ、高さ30”×直径12”、抗ウイルス性の昆虫よけ網で覆ったもの。試験植物には、試行期間にわたり、自然光が当たるようにした。試験植物は、必要に応じ、24時間ごとに土に灌水した。植物を、施用前(事前計数)、施用の3日後、5日後、及び7日後に評価した。各複製から、評価される表面の区域が合計6cm角となる4枚の葉を無作為に選択して採取した。生きているナミハダニ及び死んでいるナミハダニについて、実際の計数値を記録した。ブルクホルデリア属(Burkholderia)の種は、TSSMの若虫と成虫の両方に対して、わずかな活性を示した。この活性は、TSSMに対する生物系殺有害生物剤製剤としての潜在能力を示すものである。この処理により、試料上で観察された生きているダニの数も減少した。このことは、MBI206が、TSSMに対する生物系殺有害生物剤製剤としての潜在能力を示すことの説得力のある証拠である。
[実施例14]
【0237】
ブルクホルデリア属(Burkholderia)の種の発酵上清の、マリーゴールド植物を侵襲するナミハダニに対する有効性
6”コンテナ中で生育した、マリーゴールド植物を、宿主植物(綿)から摘み取った葉を試験植物上に置くことにより、ナミハダニに侵襲させた。およそ30〜40匹のナミハダニが居る8〜10枚の葉を、試験植物の多様な部位上に14日間置いた。試験植物は、侵襲の後、個々にケージに入れて、ダニ集団を構築させた。宿主葉を試験植物から除去した。試験植物には、試験剤施用以前には、殺有害生物剤を施用しなかった。植物は、100%上清又は10%上清(水中)のいずれかで処理した。スプレー剤施用は、使い捨ての手動噴霧器を用いて、流出させずに全体を覆うように施用した。試験植物は、研究用温室の、金網を立ち上げたベンチ上に置き、完全なランダム化されたブロック状のデザインに並べた。研究用温室を、Procom、Micro Grow Greenhouse System温度制御システムによりモニタリングする。環境条件の平均値は、試行日の間、高温が85F〜低温が72Fであった。湿度レベルの平均値の範囲は、40%〜75%であった。試験植物には、試行期間にわたり、自然光が当たるようにした。試験植物は、必要に応じ、24時間ごとに土に灌水した。植物を、施用前(事前計数)、施用の3日後、5日後、7日後、及び14日後に評価した。評価は、1複製当たり合計6cm角の区域について行った。生きている/死んでいるナミハダニ若虫、及び、生きている/死んでいるナミハダニ成虫について、実際の計数値を記録した。
[実施例14]
【0238】
イチゴにおけるナミハダニ(TSM、two spotted spidermite)の制御についてのブルクホルデリア属(Burkholderia)の種の製剤(MBI206)の有効性:圃場データ。
圃場条件下でのTSM制御について、5種類の伝統的な化学由来品及びMBI206の有効性を評価した。「Strawberry Festival」の移植苗を、圃場内の、高さ13インチ、上部の幅27インチで苗床の間隔が4フィートの、プラスチックのマルチングを施された苗床に植えた。植えた後、頭上潅水を10日間施して、移植苗の定着を促した。残りの実験には、点滴潅水を用いた。各12.5フィートの区画は、1床当たり10本の苗の畝が2列で、20本の苗からなっていた。この区画を、1本の苗当たり10〜20匹の運動性を有するTSMに、4回のセッションで、実験室のコロニーから侵襲させた。各セッションで、本実験の1ブロックの侵襲を達成した。実験は、殺ダニ剤の施用の多様な比率及びスケジュールの処理からなっており、いくつかはアジュバントと組み合わせ、1つは非処理の基準とした。処理は、RCBデザインで4回複製された。TSMの密度が閾値レベル(6Jan)に達する前にSavey及びAcramite処理を施し、処理プログラムの残りは、2週間後に始めた。処理は、45度のコア及び4番ディスクを含有するノズルが備えられているスプレー棒付きの手持ちタイプの噴霧器を用いて施した。噴霧器は、CO
2により40psiに加圧し、1エーカー当たり100galを送達するように目盛を調整した。処理前の試料を1日目に採取し、試料採取は、処理の最終施用の2週間後まで週1回継続した。試料は、1区画当たり10枚の無作為に選択した小葉からなり、苗の中間の3分の1の層から採集した。試料は、実験室に運び、そこで、運動性を有するTSM、及びTSMの卵を、小葉から、回転中の粘着性のディスク上にブラシではらい落し、ディスク表面の1/10上で計数して、小葉1枚当たりの平均数を推定した。生存能力のある卵とない卵とを区別することができなかったので、卵の合計数を記録した。最も高率(3gal/エーカー)のMBI206では、卵の数は、化学制御剤のうち少なくとも2つに匹敵するレベルで減少を示す。
【0239】
【表15】
[実施例15]
【0240】
フィールド(filed)条件下での柑橘類におけるミカンハダニ(フィロコプトルタ・オレイボラ(Phyllocoptruta oleivora))の制御
MBI206(ブルクホデリア(Burkhoderia)種の製剤化されたブロス)を、0.25%v/v/のLI−700(表面活性物質)と組み合わせて、1エーカー当たり1ガロン、2ガロン、及び3ガロンでバレンシアスイートオレンジ上にスプレーし、100GPAの体積で送達した。単一の処理を送達させ、未処理試料と比較した。処理前、次いで、処理の1日後、7日後、10日後、及び14日後に、ダニの計数を実施した。ダニの計数値は、1箇所の試料採取時点について1処理当たり果実10個の平均値とした。MBI206処理では、未処理対照(1回の計数当たりダニおよそ16匹)と比較すると、1エーカー当たり1ガロン及び2ガロンのMBI206を用いた処理の14日後時点で、ダニの存在数が減少している(1回の計数当たりダニおよそ6〜8匹)ことが観察された。
[実施例16]
【0241】
ミルクウィードバグに対するテンプラアミド、FR901465、及びFR901228の殺虫(吸汁接触毒性の)活性。
それぞれ純粋化合物であるテンプラアミドB(MBI206、分子量537)、FR901465(MBI206、分子量523)、及びFR901228(MBI206、分子量540)の殺虫活性を、吸汁接触バイオアッセイ系を用いた実験室アッセイで試験した。これらの化合物を100%エタノールに溶解して、濃度を1mg/mLとした。四齢のミルクウィードバグ、すなわち、最後から2番目の若虫である幼虫を1匹ずつ、各タブに2個のヒマワリ種子の入った5C Rubbermaidコンテナ中に置き、水のカップ(水は、綿の芯でカップと接触している(water in contact cup with cotton wick))1個を各タブの中に入れた。Hamiltonマイクロピペットを使用して、1μL(1滴)の化合物をミルクウィードバグ(MWB、milkweed bug)の各幼虫の腹部上に施用する。タブをRubbermaidコンテナ中に置き、メッシュの蓋をかぶせた。1試料当たり8匹の幼虫を処理した。このアッセイを、25℃、12時間明/12時間暗の条件でインキュベートした。幼虫は、施用の4日後及び7日後時点で評点付けした。3種類の化合物はすべて、MWBに対する接触毒性の活性を呈したが、すべての昆虫が死んではおらず、多くは、明らかに影響を受けて動けなくなっていた。MWBの大半は7日目には脱皮しており、このことから、これらの化合物は、脱皮を阻害し得る又はMWBの正常な発達に影響を与え得ることが示唆される。こうして、FR901465は、ミルクウィードバグを、FR901228(分子量540)及びテンプラアミドBより良好(87.5%)に制御した(
図4)。
[実施例17]
【0242】
二齢後期/三齢初期のリグス・ヘスペルス(Lygus hesperus)に対する純粋化合物の殺虫活性
ブルクホルデリア(Burkholderia)から単離された4種類の化合物、すなわち、テンプラアミドA、テンプラアミドB、FR901465、及びFR901228の殺虫活性を、処理されたサヤインゲンを12ウェルプレートに入れたバイオアッセイ系を用いた実験室アッセイで試験した。化合物を100%エタノールに溶解して濃度を1mg/mLとし、500μLのこの試料を3.5mLの水に加えて総体積4mLとした。含有されている化合物の濃度は0.25mg/mLである。サヤインゲンは、漂白剤溶液中で事前に洗浄し、次いで、水中に置いてすすいだ。豆は、使用前に乾燥させ、次いでハサミで切断して、12ウェルプレートのウェルに収めた。ピンセットを利用して、豆を、各処理を含有する15mLのプラスチック製ファルコンチューブ中に浸し、次いで、正確に1分間、処理中に沈めた。1つの豆片を各ウェル中に入れ、次いで、二齢後期/三齢初期のリグス・ヘスペルス(Lygus hesperus)を1匹ずつ、ブラシを利用してウェル中に置いた。プレートシーラーを使用してトレイを覆い、通気のためにプレートシーラーに孔をあけた。1ウェル当たりのリグス(Lygus)の数を計数し、プレートをベンチトップ(brench top)上に置いた。幼虫は、施用24時間後、48時間後、及び120時間後の時点で評点付けした。
図5に示す結果に基づき、化合物FR901465は最も強力で致死率91.2%、続いて、テンプラアミドBが69.2%、FR901228が51.7%であることが見出された。テンプラアミドAは、リグス(Lygus)の摂食バイオアッセイでは不活性であった。この試験に用いた陽性対照は、比率が13μL/10mLのAvid(アベルメクチン(Avemectin))であった。
[実施例18]
【0243】
FR901228の殺線虫活性
FR901228の純粋な試料を、in vitroでの96ウェルのプラスチック細胞培養プレートを用いたバイオアッセイを用いて試験した。50μlの水溶液に入った15〜20匹の線虫を、3μlの20mg/ml FR901228溶液に、25℃で24時間曝露させた。インキュベーション期間が終了したらすぐに、化合物で処理した各ウェルに入った若齢の線虫(J2)の不動率の目視採点に基づいて結果を記録した。各処理を、4つのウェルの複製で試験した。各試行には3つの対照、すなわち、1つの陽性対照(1% Avid)及び2つの陰性対照(DMSO及び水)が含まれる。試行(T1)は、自由生活性線虫(FLN、Free living nematode)を用いて実施し、トレイル(trail)(T2)は、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)という線虫を用いて実施し、試料は100%DMSOに溶解した。FR901228(分子量540)は、自由生活性線虫に対して不動率75%という優れた制御を示し、サツマイモネコブセンチュウ(M. incognita)では不動率は75%であった。
【0244】
微生物の寄託
以下の生物学的材料は、ブダペスト条約の条項に従い、Agricultural Research Culture Collection(NRRL)、1815N.、University Street、Peoria、Illinois、61604、USAに寄託され、以下の番号を与えられている:
寄託 ブルクホルデリア属(Burkholderia)のA396種
受託番号 NRRL B−50319
寄託日 2009年9月15日
【0245】
本株は、本株の培養物の利用は、米国特許規則第1.14条及び米国特許法第112条の下で米国特許商標庁長官によって権利を与えると決定された者に対して本特許出願の係属期間中も認められることが保証されるという条件で寄託されている。寄託物は、寄託株の実質的に純粋な培養物である。寄託物は、本出願の対応出願、又はその子出願が出願される国の外国特許法により、必要に応じて入手可能である。しかし、寄託物が入手可能であるということは、政府の決議により助成された特許権を制限する形での本発明の実行を許可するものではないことは理解されるべきである。
【0246】
特定の実施形態を参照して本発明を記載してきたが、その詳細は、限定的なものと解釈されるべきではなく、その理由は、多様な等価物、変形、及び改変形が使用される可能性があり、それらもやはり本発明の範囲内であることは明白だからである。
【0247】
本明細書を通じて多様な参考文献を引用しているが、各参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0248】
(参考文献)