(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混練物が、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、ワラストナイト、チタン酸カリウム及びホウ酸アルミニウムからなる群より選択される一種以上であり、
前記鱗片状物質は、ガラス、白雲母、アルミナ及びシリカからなる群より選択される一種以上であり、
前記テトラポット状物質は、酸化亜鉛であり、
前記三次元針状物質は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、ワラストナイト、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム及びベーマイトからなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項7に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チタン酸化物触媒をハニカム型に成形する場合は、以下の問題を有する。すなわち、チタン酸化物の中でも、自動車排ガス用に使用されるものはアナターゼ型と呼ばれる高い比表面積を有するものである。このアナターゼ型酸化チタンを得る工業的方法として硫酸法が採用されるが、硫酸法の場合、チタン酸化物中に不純物として酸化硫黄が残留するという問題がある。そして、このような酸化硫黄が残留したチタン酸化物を用いて成形する場合、成形坏土中の水分と酸化硫黄とが反応して硫酸が生成し、この硫酸によって、成形機のスクリューや口金などの金属が腐食することとなる。そのため、交換などのメンテナンスが必要となり、製造コストや製造効率の点で問題があった。特に、チタン酸化物の製造において、残留酸化硫黄と比表面積とはトレードオフの関係があり、比表面積が高いものを得ようとすると酸化硫黄が十分に除去されずに残留してしまい、材料製造時に酸化硫黄を完全に除去するのは困難である。従って、成形機の金属の腐食を防止するためには、酸化硫黄を除去する以外の手段を講ずる必要がある。
また、成形機の金属の腐食により、成形されるハニカム構造体にも腐食した金属の付着などの悪影響が及ぶことがあった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、硫酸法で合成されたチタン酸化物を用いてハニカム形状に成形する場合に、成形機や口金の金属の腐食を防止することができるハニカム構造体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は以下の通りである。
(1)チタン酸化物及び無機バインダを少なくとも含み、長手方向に沿って、一方の端面から他方の端面に延伸する複数のセルが、セル壁によって区画された形状のハニカムユニットを備えたハニカム構造体であって、
少なくとも、硫酸法により合成されたチタン酸化物と、無機バインダと、アルカリ性材料とを混合・混練して得た、pHが5以上の複合材料を前記形状に成形し、焼成してなることを特徴とするハニカム構造体。
【0007】
(2)前記アルカリ性材料が、沸点が500℃以下のアルカリ性物質を含む溶液であることを特徴とする前記(1)に記載のハニカム構造体。
【0008】
(3)前記アルカリ性材料が、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、およびアンモニア水から選ばれる1種以上、又はジエタノールアミン、モノエタノールアミン、およびジメチルアミノエタノールから選ばれる1種以上を含む溶液であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のハニカム構造体。
【0009】
(4)前記混練物が、さらにバナジウム原料を含むことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のハニカム構造体。
【0010】
(5)前記バナジウム原料がメタバナジン酸アンモニウムであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0011】
(6)前記無機バインダが、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベントナイト及びベーマイトからなる群より選択される一種以上に含まれる固形分であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0012】
(7)前記混練物が、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上をさらに含むことを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0013】
(8)前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、ワラストナイト、チタン酸カリウム及びホウ酸アルミニウムからなる群より選択される一種以上であり、
前記鱗片状物質は、ガラス、白雲母、アルミナ及びシリカからなる群より選択される一種以上であり、
前記テトラポット状物質は、酸化亜鉛であり、
前記三次元針状物質は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、ワラストナイト、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム及びベーマイトからなる群より選択される一種以上であることを特徴とする前記(7)に記載のハニカム構造体。
【0014】
(9)チタン酸化物及び無機バインダを少なくとも含み、長手方向に沿って、一方の端面から他方の端面に延伸する複数のセルが、セル壁によって区画された形状のハニカムユニットを備えたハニカム構造体の製造方法であって、
少なくとも、硫酸法により合成されたチタン酸化物と、無機バインダと、アルカリ性材料とを混合・混練して、pHが5以上の複合材料を得る工程と、
前記複合材料を前記形状に成形した成形体を得る工程と、
前記成形体を焼成する工程と、
を含むことを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【0015】
(10)前記アルカリ性材料が、沸点が500℃以下のアルカリ性物質を含む溶液であることを特徴とする前記(9)に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0016】
(11)前記アルカリ性材料が、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、およびアンモニア水から選ばれる1種以上、又はジエタノールアミン、モノエタノールアミン、およびジメチルアミノエタノールから選ばれる1種以上を含む溶液であることを特徴とする前記(9)又は(10)に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、硫酸法で合成されたチタン酸化物を用いてハニカム形状に成形する場合に、成形機や口金の金属の腐食を防止することができるハニカム構造体及びその製造方法を提供することができる。従って、連続した成形性を保つことができ、生産性を飛躍的に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のハニカム構造体は、チタン酸化物及び無機バインダを少なくとも含み、長手方向に沿って、一方の端面から他方の端面に延伸する複数のセルが、セル壁によって区画された形状のハニカムユニットを備えたハニカム構造体であって、少なくとも、硫酸法により合成されたチタン酸化物と、無機バインダと、アルカリ性材料とを混合・混練して得た、pHが5以上の複合材料を前記形状に成形し、焼成してなることを特徴としている。
また、本発明のハニカム構造体の製造方法は、チタン酸化物及び無機バインダを少なくとも含み、長手方向に沿って、一方の端面から他方の端面に延伸する複数のセルが、セル壁によって区画された形状のハニカムユニットを備えたハニカム構造体の製造方法であって、少なくとも、硫酸法により合成されたチタン酸化物と、無機バインダと、アルカリ性材料とを混合・混練して、pHが5以上の複合材料を得る工程と、前記複合材料を前記形状に成形した成形体を得る工程と、前記成形体を焼成する工程と、を含むことを特徴としている。
【0020】
本発明においては、成形機を用いてハニカム構造体の形状の成形体を得る工程において、硫酸法により合成されたチタン酸化物、すなわち酸化硫黄が残留したチタン酸化物を含む複合材料を用いるにもかかわらず、pHを5以上となるように調整することにより、成形機および口金の金属の腐食を防止するものである。
このように、酸化硫黄が残留したチタン酸化物を用いた複合材料であっても、pHを5以上に調整して成形機に投入することで成形機の金属の腐食を防止できるのは、例えば、以下の議論から明らかである。
金属の各pHによる状態を示す図として電位−pH図(Pourbaix diagram)が知られている。電位−pH図は、水中における化学種、特に金属の存在領域を電極電位とpHの2次元座標上に図示したものである。電位−pH図は熱力学的データに基づいて計算して作成され、現在ではほとんどの金属の電位−pH図が存在する(例えば、M. Pourbaix, Atlas of Electrochemical Equilibria in Aqueous Solutions, Pergamon Press, London(1966)参照)。電位−pH図は腐食領域図としても使われ、金属種の腐食領域、不感域、不動態を作る不動態域の3つで図示される。また、合金の場合、含有金属種の腐食領域図を重ね合わせることで、一方の金属の腐食領域または不感域に、他方の金属の不動態域が重なった場合、不動態膜が生成し不動態域となることで、金属腐食の進行を抑制できることが知られている。
以上より、酸化硫黄が残留したチタン酸化物を用いた複合材料を成形機に投入した場合であっても、成形機の金属(合金)の電位−pH図に基づき、複合材料を不動態領域となるpHに調整すれば成形機の金属の腐食を防止することができる。
【0021】
成形機の金属として一般的に使われている鉄とクロムの合金の電位−pH図を
図1に示す。
図1において、点線内は水の存在領域であるが、水が存在する場所で酸化硫黄が反応し硫酸が生成されると考えられるため、硫酸の存在領域も同様の領域となる。この鉄とクロムの合金の腐食領域図(
図1)から、鉄とクロムの合金は、硫酸存在下でもpHが5以上であれば不動態領域、すなわち腐食の起きない状態になると考えられる。
実際に成形機に使用されている合金の電位−pH図を2例示す。
図2において、(A)はSUS304の電位−pH図であり、(B)はDPS450R(大同特殊鋼(株)製合金)の電位−pH図である。また、表1に、それぞれの合金の組成を示す。
図2より、いずれの場合も、pHが5以上で不動態領域であることが分かる。
【0023】
以上の知見により、複合材料のpHを5以上にすることで、当該複合材料が成形機の金属と接触しても腐食が発生しないと考えられる。また、成形機の金属の腐食が発生しないため、上記複合材料を用いて作製したハニカム構造体には腐食した金属が付着することがない。
【0024】
図3に、本発明のハニカム構造体の一例を示す。ハニカム構造体10は、チタン酸化物及び無機バインダとを少なくとも含み、複数の貫通孔11aが隔壁11bを隔てて長手方向に並設されている単一のハニカムユニット11を有する。また、ハニカムユニット11の両端面を除く外周面に外周コート層12が形成されている。
このようなハニカム構造体を製造し得る本発明の製造方法について以下に説明する。
【0025】
本発明のハニカム構造体においては、まず、硫酸法により合成されたチタン酸化物と、無機バインダと、アルカリ性材料とを混合・混練して、pHが5以上の複合材料を得る。
【0026】
チタン酸化物としては、硫酸法により合成された、比表面積が高いアナターゼ型の二酸化チタンを用いる。
また、触媒源として、チタン酸化物の他、バナジウム原料、タングステン原料を含有してもよい。
バナジウム原料としては、メタバナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸カリウム、シュウ酸バナジル、酢酸バナジル等が挙げられ、中でも、取り扱いが容易であることから、メタバナジン酸アンモニウムであることが好ましい。メタバナジン酸アンモニウム(NH
4VO
3)、NH
4VO
3→V
2O
5+2NH
3+H
2Oといった分解反応によって、V
2O
5を生成し、SCRシステムにおける触媒としての役割を果たす。
【0027】
複合材料中、チタン酸化物の含有量は、60〜90質量%とすることが好ましく、75〜85質量%とすることがより好ましい。
【0028】
アルカリ性材料としては、沸点が500℃以下のアルカリ性物質を含む溶液であることが好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属は、チタン−バナジウムに添加するとNOxの浄化性能を低下させてしまうが、沸点が500℃以下のアルカリ性物質を含む溶液であれば、ハニカムユニットの焼成時に揮発により除去されるため、ハニカム構造体とした時に、NOx浄化性能を低下させることがないためである。
【0029】
前記アルカリ性材料としては、具体的には、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、およびアンモニア水から選ばれる1種以上、又はジエタノールアミン、モノエタノールアミン、およびジメチルアミノエタノールから選ばれる1種以上を含む溶液であることが好ましい。ハニカムユニットの焼成時に揮発により除去されるため、ハニカム構造体とした時に、NOx浄化性能を低下させることがないためである。
【0030】
前記アルカリ性溶液の濃度及びその添加量は、特に制限はないが、チタン酸化物及び無機バインダ等を含む複合材料のpHが5以上となるように濃度及び添加量を設定する。
【0031】
前記無機バインダとしては、特に限定されないが、ハニカム構造体としての強度を保つという観点から、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト、アタパルジャイト、ベントナイト、ベーマイト等に含まれる固形分が好適なものとして挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0032】
無機バインダの含有量は、ハニカムユニット11中、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%がより好ましい。ハニカムユニット11中の無機バインダの含有量が5質量%未満であると、ハニカム構造体の強度が低下する。一方、ハニカム構造体中の無機バインダの含有量が30質量%を超えると、ハニカム成形体を押出成形することが困難になる。
【0033】
強度を向上させるために、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質からなる群より選択される一種以上を複合材料中に添加することが好ましい。
【0034】
前記無機繊維は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、ワラストナイト、チタン酸カリウム及びホウ酸アルミニウムからなる群より選択される一種以上であり、前記鱗片状物質は、ガラス、白雲母、アルミナ及びシリカからなる群より選択される一種以上であり、前記テトラポット状物質は、酸化亜鉛であり、前記三次元針状物質は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、ワラストナイト、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム及びベーマイトからなる群より選択される一種以上であることが好ましい。
いずれも耐熱性が高く、SCRシステムにおける触媒担体として使用した時でも、溶損などがなく、補強材としての効果を持続することができるためである。
【0035】
前記無機繊維のアスペクト比は、2〜1000であることが好ましく、5〜800がより好ましく、10〜500がさらに好ましい。ハニカムユニット11に含まれる無機繊維のアスペクト比が2未満であると、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなる。一方、ハニカムユニット11に含まれる無機繊維のアスペクト比が1000を超えると、ハニカムユニット11を押出成形する際に金型に目詰まり等が発生したり、無機繊維が折れて、ハニカムユニット11の強度を向上させる効果が小さくなったりする。
【0036】
前記鱗片状物質は、平たい物質を意味し、厚さが0.2〜5.0μmであることが好ましく、最大長さが10〜160μmであることが好ましく、厚さに対する最大長さの比が3〜250であることが好ましい。
【0037】
前記テトラポット状物質は、針状部が三次元に延びている物質を意味し、針状部の平均針状長さが5〜30μmであることが好ましく、針状部の平均径が0.5〜5.0μmであることが好ましい。
【0038】
前記三次元針状物質は、針状部同士がそれぞれの針状部の中央付近でガラス等の無機化合物により結合されている物質を意味し、針状部の平均針状長さが5〜30μmであることが好ましく、針状部の平均径が0.5〜5.0μmであることが好ましい。
【0039】
また、三次元針状物質は、複数の針状部が三次元に連なっていてもよく、針状部の直径が0.1〜5.0μmであることが好ましく、長さが0.3〜30.0μmであることが好ましく、直径に対する長さの比が1.4〜50.0であることが好ましい。
【0040】
無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の含有量は、ハニカムユニット11中、3〜50質量%であることが好ましく、3〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。ハニカム構造体中の無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の含有量が3質量%未満であると、ハニカム構造体の強度を向上させる効果が小さくなる。一方、ハニカム構造体中の無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の含有量が50質量%を超えると、ハニカム構造体中のTiO
2/V
2O
5/WO
3触媒の含有量が低下して、NOxの浄化性能が低下する。
【0041】
また、複合材料には、有機バインダ、分散媒、成形助剤等を、必要に応じて、適宜添加してもよい。
【0042】
有機バインダとしては、特に限定されないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。なお、有機バインダの添加量は、チタン酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物、無機バインダ、無機繊維、鱗片状物質、テトラポット状物質及び三次元針状物質の総質量に対して、1〜10%であることが好ましい。
【0043】
分散媒としては、特に限定されないが、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0044】
成形助剤としては、特に限定されないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0045】
複合材料を調製する際には、混合混練することが好ましく、ミキサー、アトライタ等を用いて混合してもよく、ニーダー等を用いて混練してもよい。
【0046】
次いで、以上のようにして得られた複合材料を押出成形し、複数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設されているハニカム成形体を得る。当該押出成形は、特に限定はなく、定法に従って行うことができる。
【0047】
次に、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等の乾燥機を用いて、ハニカム成形体を乾燥する。
【0048】
次いで、以上のようにして得られたハニカム成形体を焼成する。焼成温度は450〜750℃とすることが好ましく、550〜650℃とすることがより好ましい。
焼成時間は、焼成が完結するまでの時間を適宜設定すればよく、例えば、1〜4時間とすることができる。
【0049】
以上の焼成工程の後に、外周コート層を形成する工程など、その他の工程を設けることができる。
外周コート層を形成する工程においては、円柱状のハニカムユニット11の両端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布する。
【0050】
外周コート層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0051】
外周コート層用ペーストに含まれる無機バインダは、特に限定されないが、シリカゾル、アルミナゾル等として添加されており、二種以上併用してもよい。中でも、シリカゾルとして添加されていることが好ましい。
【0052】
外周コート層用ペーストに含まれる無機粒子としては、特に限定されないが、炭化ケイ素粒子等の炭化物粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、熱伝導性に優れることから、炭化ケイ素粒子が好ましい。
【0053】
外周コート層用ペーストに含まれる無機繊維としては、特に限定されないが、シリカアルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナ繊維が好ましい。
【0054】
外周コート層用ペーストは、有機バインダをさらに含んでいてもよい。
【0055】
外周コート層用ペーストに含まれる有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0056】
外周コート層用ペーストは、酸化物系セラミックスの微小中空球体であるバルーン、造孔剤等をさらに含んでいてもよい。
【0057】
外周コート層用ペーストに含まれるバルーンとしては、特に限定されないが、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、ムライトバルーン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナバルーンが好ましい。
【0058】
外周コート層用ペーストに含まれる造孔剤としては、特に限定されないが、球状アクリル粒子、グラファイト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0059】
次に、外周コート層用ペーストが塗布されたハニカムユニット11を乾燥固化し、円柱状のハニカム構造体10を作製する。このとき、外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合は、脱脂することが好ましい。脱脂条件は、有機物の種類及び量によって適宜選択することができるが、700℃で20分間であることが好ましい。
【0060】
以上のようにして作製されるハニカムユニット11は、気孔率が30〜60%であることが好ましい。ハニカムユニット11の気孔率が30%未満であると、ハニカムユニット11の隔壁11bの内部まで排ガスが侵入しにくくなって、TiO
2/V
2O
5/WO
3触媒がNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、ハニカムユニット11の気孔率が60%を超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分となる。
【0061】
なお、ハニカムユニット11の気孔率は、水銀圧入法を用いて測定することができる。
【0062】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の開口率が50〜75%であることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の開口率が50%未満であると、TiO
2/V
2O
5/WO
3触媒がNOxの浄化に有効に利用されなくなる。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の開口率が75%を超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分となる。
【0063】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が31〜155個/cm
2であることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が31個/cm
2未満であると、TiO
2/V
2O
5/WO
3触媒と排ガスが接触しにくくなって、NOxの浄化性能が低下する。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が155個/cm
2を超えると、ハニカム構造体10の圧力損失が増大する。
【0064】
ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さは、0.1〜0.4mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましい。ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さが0.1mm未満であると、ハニカムユニット11の強度が低下する。一方、ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さが0.4mmを超えると、ハニカムユニット11の隔壁11bの内部まで排ガスが侵入しにくくなって、TiO
2/V
2O
5/WO
3触媒がNOxの浄化に有効に利用されなくなる。
【0065】
外周コート層12は、厚さが0.1〜2.0mmであることが好ましい。外周コート層12の厚さが0.1mm未満であると、ハニカム構造体10の強度を向上させる効果が不十分になる。一方、外周コート層12の厚さが2.0mmを超えると、ハニカム構造体10の単位体積当たりのTiO
2/V
2O
5/WO
3触媒の含有量が低下して、NOxの浄化性能が低下する。
【0066】
ハニカム構造体10の形状としては、円柱状に限定されず、角柱状、楕円柱状、長円柱状、丸面取りされている角柱状(例えば、丸面取りされている三角柱状)等が挙げられる。
【0067】
貫通孔11aの形状としては、四角柱状に限定されず、三角柱状、六角柱状等が挙げられる。
【0068】
図4に、本発明のハニカム構造体を有する排ガス浄化装置の一例を示す。排ガス浄化装置100は、ハニカム構体10の外周部に保持シール材20を配置した状態で、金属容器(シェル)30にキャニングすることにより作製することができる。また、排ガス浄化装置100には、排ガスが流れる方向に対して、ハニカム構造体10の上流側の配管(不図示)内に、アンモニア又は分解してアンモニアを発生させる化合物を噴射する噴射ノズル等の噴射手段(不図示)が設けられている。これにより、配管を流れる排ガス中にアンモニアが添加されるため、ハニカムユニット11に含まれるTiO
2/V
2O
5/WO
3触媒により、排ガス中に含まれるNOxが還元される。
【0069】
分解してアンモニアを発生させる化合物としては、配管内で排ガスにより加熱されて、アンモニアを発生させることが可能であれば、特に限定されないが、貯蔵安定性に優れるため、尿素水が好ましい。
【0070】
尿素水は、配管内で排ガスにより加熱されて、加水分解し、アンモニアが発生する。
【0071】
図5に、本発明のハニカム構造体の他の例を示す。なお、ハニカム構造体10'は、複数の貫通孔11aが隔壁11bを隔てて長手方向に並設されているハニカムユニット11'(
図6参照)が接着層13を介して複数個接着されている以外は、ハニカム構造体10と同一の構成である。
【0072】
ハニカムユニット11'は、長手方向に垂直な断面の断面積が10〜200cm
2であることが好ましい。ハニカムユニット11'の長手方向に垂直な断面の断面積が10cm
2未満であると、ハニカム構造体10'の圧力損失が増大する。一方、ハニカムユニット11'の長手方向に垂直な断面の断面積が200cm
2を超えると、ハニカムユニット11'に発生する熱応力に対する強度が不十分になる。
【0073】
なお、ハニカムユニット11'は、長手方向に垂直な断面の断面積以外は、ハニカムユニット11と同一の構成である。
【0074】
接着層13は、厚さが0.5〜2.0mmであることが好ましい。接着層13の厚さが0.5mm未満であると、ハニカムユニット11'の接着強度が不十分になる。一方、接着層13の厚さが2.0mmを超えると、ハニカム構造体10'の圧力損失が増大する。
【0075】
次に、ハニカム構造体10'の製造方法の一例について説明する。まず、ハニカム構造体10と同様にして、四角柱状のハニカムユニット11'を作製する。次に、ハニカムユニット11'の両端面を除く外周面に接着層用ペーストを塗布して、ハニカムユニット11'を順次接着させ、乾燥固化することにより、ハニカムユニット11'の集合体を作製する。
【0076】
接着層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0077】
接着層用ペーストに含まれる無機バインダは、特に限定されないが、シリカゾル、アルミナゾル等として添加されており、二種以上併用してもよい。中でも、シリカゾルとして添加されていることが好ましい。
【0078】
接着層用ペーストに含まれる無機粒子としては、特に限定されないが、炭化ケイ素粒子等の炭化物粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等の窒化物粒子等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、熱伝導性に優れることから、炭化ケイ素粒子が好ましい。
【0079】
接着層用ペーストに含まれる無機繊維としては、特に限定されないが、シリカアルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナ繊維が好ましい。
【0080】
また、接着層用ペーストは、有機バインダを含んでいてもよい。
【0081】
接着層用ペーストに含まれる有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0082】
接着層用ペーストは、酸化物系セラミックスの微小中空球体であるバルーン、造孔剤等をさらに含んでいてもよい。
【0083】
接着層用ペーストに含まれるバルーンとしては、特に限定されないが、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、ムライトバルーン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナバルーンが好ましい。
【0084】
接着層用ペーストに含まれる造孔剤としては、特に限定されないが、球状アクリル粒子、グラファイト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0085】
次に、ハニカムユニット11'の集合体を円柱状に切削加工した後、必要に応じて、研磨することにより、円柱状のハニカムユニット11'の集合体を作製する。
【0086】
なお、ハニカムユニット11'の集合体を円柱状に切削加工する代わりに、長手方向に垂直な断面が所定の形状に成形されているハニカムユニット11'を接着させて、円柱状のハニカムユニット11'の集合体を作製してもよい。このとき、ハニカムユニット11'の長手方向に垂直な断面の形状は、中心角が90°の扇形であることが好ましい。
【0087】
次に、円柱状のハニカムユニット11'の集合体の両端面を除く外周面に外周コート層用ペーストを塗布する。
【0088】
外周コート層用ペーストは、接着層用ペーストと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0089】
次に、外周コート層用ペーストが塗布された円柱状のハニカムユニット11'の集合体を乾燥固化することにより、円柱状のハニカム構造体10'を作製する。このとき、接着層用ペースト及び/又は外周コート層用ペーストに有機バインダが含まれている場合は、脱脂することが好ましい。脱脂条件は、有機物の種類及び量によって適宜選択することができるが、700℃で20分間であることが好ましい。
【0090】
なお、ハニカム構造体10及び10'は、外周コート層12が形成されていなくてもよい。
【実施例】
【0091】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
[実施例1]
酸化チタンを主成分とするチタン/バナジウム系粉末59質量%に、酸化バナジウム源のメタバナジン酸アンモニウム2質量%、有機増粘剤としてメチルセルロース4質量%、無機繊維としてアルミナファイバー3質量%、結合剤としてアルミナバインダー4質量%、成形助剤としてソルビタントリオレエート1質量%、イオン交換水25質量%、アルカリ性材料としてジエタノールアミン2質量%を混合混練して得られた複合材料のpHは5.5になり、スクリュー式押し出し成形機と口金を用いて成形したところ、成形体に変色は無く、成形機金属の腐食は発生しなかった。なお、成形機の金属はDPS450Rであった。
【0093】
[実施例2]
酸化チタンを主成分とするチタン/バナジウム系粉末59質量%に、酸化バナジウム源のメタバナジン酸アンモニウム2質量%、有機増粘剤としてメチルセルロース4質量%、無機繊維としてアルミナファイバー3質量%、結合剤としてアルミナバインダー4質量%、成形助剤としてソルビタントリオレエート1質量%、イオン交換水26質量%、アルカリ性材料としてモノエタノールアミン1質量%を混合混練して得られた複合材料のpHは6.0になり、スクリュー式押し出し成形機と口金を用いて成形したところ、成形体に変色は無く、成形機金属の腐食は発生しなかった。なお、成形機の金属はDPS450Rであった。
【0094】
[実施例3]
酸化チタンを主成分とするチタン/バナジウム系粉末59質量%に、酸化バナジウム源のメタバナジン酸アンモニウム2質量%、有機増粘剤としてメチルセルロース4質量%、無機繊維としてアルミナファイバー3質量%、結合剤としてアルミナバインダー4質量%、成形助剤としてソルビタントリオレエート1質量%、イオン交換水25質量%、アルカリ性材料としてジメチルアミノエタノール2質量%を混合混練して得られた複合材料のpHは5.3になり、スクリュー式押し出し成形機と口金を用いて成形したところ、成形体に変色は無く、成形機金属の腐食は発生しなかった。なお、成形機の金属はDPS450Rであった。
【0095】
[比較例1]
酸化チタンを主成分とするチタン/バナジウム系粉末59質量%に、酸化バナジウム源のメタバナジン酸アンモニウム2質量%、有機増粘剤としてメチルセルロース4質量%、無機繊維としてアルミナファイバー3質量%、結合剤としてアルミナバインダー4質量%、成形助剤としてソルビタントリオレエート1質量%、イオン交換水27質量%を混合混練して得られた複合材料のpHは3.0となり、スクリュー式押し出し成形機と口金を用いて成形したところ、成形体が変色し、成形機金属に腐食が発生した。なお、成形機の金属はDPS450Rであった。
【0096】
[比較例2]
酸化チタンを主成分とするチタン/バナジウム系粉末59質量%に、酸化バナジウム源のメタバナジン酸アンモニウム2質量%、有機増粘剤としてメチルセルロース4質量%、無機繊維としてアルミナファイバー3質量%、結合剤としてアルミナバインダー4質量%、成形助剤としてソルビタントリオレエート1質量%、イオン交換水26.5質量%、アルカリ性材料としてモノエタノールアミン0.5質量%を混合混練して得られた複合材料のpHは4.5となり、スクリュー式押し出し成形機と口金を用いて成形したところ、成形体が変色し、成形機金属に腐食が発生した。なお、成形機の金属はDPS450Rであった。
【0097】
以上の実施例1〜3はいずれも複合材料のpHが5以上であり、得られた成形体に変色はなく、かつ成形機金属の腐食は発生しなかった。これに対して、複合材料のpHが3の比較例1、pHが4.5の比較例2では、成形体が変色するとともに、成形機金属に腐食の発生が見られた。従って、複合材料のpHを5以上とすることで成形機や口金の金属の腐食を防止することができることが分かる。