特許第5961705号(P5961705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5961705気圧式高度計および屋内対応型気圧式高度計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961705
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】気圧式高度計および屋内対応型気圧式高度計
(51)【国際特許分類】
   G01C 5/06 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   G01C5/06
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-550902(P2014-550902)
(86)(22)【出願日】2013年11月21日
(86)【国際出願番号】JP2013006844
(87)【国際公開番号】WO2014087598
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2015年1月29日
(31)【優先権主張番号】特願2012-265111(P2012-265111)
(32)【優先日】2012年12月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 裕之
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−281741(JP,A)
【文献】 特開平01−307614(JP,A)
【文献】 特開2010−038895(JP,A)
【文献】 特開2011−117818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力センサと、
一の高度における前記圧力センサの気圧測定値を基準気圧として記憶する基準気圧測定記憶部と、
数の気圧高度変換係数と前記複数の気圧高度変換係数を用いる演算式とを記憶する気圧高度変換係数記憶部と、
高度計測月日情報が入力され、前記基準気圧と、前記複数の気圧高度変換係数のうちの前記高度計測月日情報に対応する気圧高度変換係数を含む前記演算式とを用いて、屋内測定地点における前記圧力センサの気圧測定値に基づき前記屋内測定地点の高度乃至は高度の変化値を演算する高度演算部と、を備え
前記複数の気圧高度変換係数は、前記圧力センサの気圧測定値を高度に変換するための係数であり、月日に応じた屋内における空気の温度に基づいて予め演算された係数であることを特徴とする気圧式高度計。
【請求項2】
前記演算式は、次式(1)で表されることを特徴とする請求項1に記載の気圧式高度計。
H=−Psens×P0×loge(P/Pref) ……(1)
ここで、式(1)中の「loge」は自然対数の底を底とする自然対数を表し、式(1)中の各文字は以下を表す。
H:高度
P:屋内測定地点での気圧
Pref:基準気圧
Psens:気圧高度変換係数
P0:国際標準大気の海抜0mでの基準気圧値
【請求項3】
前記気圧高度変換係数は、次式(2)で表されることを特徴とする請求項2に記載の気圧式高度計。
Psens=(R×T)/(M0×G×P0) ……(2)
ここで、式(2)中の各文字は以下を表す。
R:気体乗数
T:屋内測定地点での絶対温度
M0:屋内測定地点での空気の分子量
G:屋内測定地点での重力加速
【請求項4】
前記圧力センサが屋内に存在することを検出する屋内判定部を、さらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の気圧式高度計。
【請求項5】
前記屋内判定部は、屋内と屋外とで信号強度が異なる無線信号に基づき、前記圧力センサが屋内に存在するか否かを検出することを特徴とする請求項記載の気圧式高度計。
【請求項6】
前記無線信号は、WiFi信号またはGPS信号であることを特徴とする請求項記載の気圧式高度計。
【請求項7】
入力される、屋内における空気の温度に基づき前記気圧高度変換係数を演算する気圧高度変換係数演算部をさらに備え、
前記気圧高度変換係数演算部は、屋内における空気の温度と、屋内における空気の分子量または湿度とから前記気圧高度変換係数を演算することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の気圧式高度計。
【請求項8】
入力される、屋内における空気の温度に基づき前記気圧高度変換係数を演算する気圧高度変換係数演算部と、
屋内における湿度を測定する湿度センサと、をさらに備え、
前記気圧高度変換係数演算部は、屋内における空気の温度と、前記湿度センサで測定した屋内における湿度とから前記気圧高度変換係数を演算することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の気圧式高度計。
【請求項9】
屋内における空気の温度を測定する温度センサをさらに備え、
前記気圧高度変換係数演算部は、前記温度センサの測定値を用いて前記気圧高度変換係数を演算することを特徴とする請求項または請求項記載の気圧式高度計。
【請求項10】
前記気圧高度変換係数は四季に応じて設定され、
前記高度計測月日情報として高度計測時の季節が入力されるようになっていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の気圧式高度計。
【請求項11】
一の高度における圧力センサの気圧測定値を基準気圧として記憶する基準気圧測定記憶ステップと、
前記圧力センサの気圧測定値を高度に変換するための複数の気圧高度変換係数を、月日に応じた屋内における空気の温度に基づいて予め演算する係数演算ステップと、
前記複数の気圧高度変換係数と前記複数の気圧高度変換係数を用いる演算式とを記憶する気圧高度変換係数記憶ステップと、
前記基準気圧と、前記複数の気圧高度変換係数のうちの高度計測月日情報に対応する気圧高度変換係数を含む前記演算式とを用いて、屋内測定地点における前記圧力センサの気圧測定値に基づき前記屋内測定地点の高度乃至は高度の変化値を演算する高度演算ステップと、
を備えることを特徴とする気圧式高度演算方法。
【請求項12】
前記演算式は、次式(1)で表されることを特徴とする請求項11に記載の気圧式高度演算方法。
H=−Psens×P0×loge(P/Pref) ……(1)
ここで、式(1)中の「loge」は自然対数の底を底とする自然対数を表し、式(1)中の各文字は以下を表す。
H:高度
P:屋内測定地点での気圧
Pref:基準気圧
Psens:気圧高度変換係数
P0:国際標準大気の海抜0mでの基準気圧値
【請求項13】
前記気圧高度変換係数は、次式(2)で表されることを特徴とする請求項12に記載の気圧式高度演算方法。
Psens=(R×T)/(M0×G×P0) ……(2)
ここで、式(2)中の各文字は以下を表す。
R:気体乗数
T:屋内測定地点での絶対温度
M0:屋内測定地点での空気の分子量
G:屋内測定地点での重力加速
【請求項14】
前記圧力センサが屋内に存在することを検出する屋内判定ステップを、さらに備えることを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の気圧式高度演算方法。
【請求項15】
前記屋内判定ステップでは、
屋内と屋外とで信号強度が異なる無線信号に基づき、前記圧力センサが屋内に存在するか否かを検出することを特徴とする請求項14記載の気圧式高度演算方法。
【請求項16】
前記無線信号は、WiFi信号またはGPS信号であることを特徴とする請求項15記載の気圧式高度演算方法。
【請求項17】
入力される、屋内における空気の温度に基づき前記気圧高度変換係数を演算する気圧高度変換係数演算ステップをさらに備え、
前記気圧高度変換係数演算ステップでは、屋内における空気の温度と、屋内における空気の分子量または湿度とから前記気圧高度変換係数を演算することを特徴とする請求項11から請求項16のいずれか1項に記載の気圧式高度演算方法。
【請求項18】
入力される、屋内における空気の温度に基づき前記気圧高度変換係数を演算する気圧高度変換係数演算ステップと、
屋内における湿度を測定する湿度測定ステップと、をさらに備え、
前記気圧高度変換係数演算ステップでは、屋内における空気の温度と、前記湿度測定ステップで測定した屋内における湿度とから前記気圧高度変換係数を演算することを特徴とする請求項11から請求項16のいずれか1項に記載の気圧式高度演算方法。
【請求項19】
屋内における空気の温度を測定する温度測定ステップをさらに備え、
前記気圧高度変換係数演算ステップでは、前記温度測定ステップで測定した温度を用いて前記気圧高度変換係数を演算することを特徴とする請求項17または請求項18記載の気圧式高度演算方法。
【請求項20】
前記気圧高度変換係数は四季に応じて設定される係数であり、
前記高度計測月日情報は、高度計測時の季節であることを特徴とする請求項11から請求項19のいずれか1項に記載の気圧式高度演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気圧式高度計および屋内対応型気圧式高度計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気圧式高度計によって、標高乃至は高度(海抜0mからの鉛直方向高さ)を計測する技術が知られている。この計測技術は、たとえば登山時の現在地標高計測のように地上で用いられることもあれば、航空機の高度計測のように大気圏内の地上からかなり離れた上空で用いられることもある。
この気圧式高度計は以下のような原理に基づいて計測される。
すなわち、地球上のある部分に存在する空気は、地球の引力(重力)によって、その空気の鉛直上方(上空)から、上空部分にある空気の重さに相当する力を受ける。したがって、空気の量乃至空気密度は、地表側のほうが上空側に比べ常に多く(大きく)なり、その結果として、空気の圧力すなわち気圧も地表側のほうが上空側に比べ常に高くなる。もし空気を理想気体と仮定すれば、上空に行くにつれて(高度が高くなるにつれて)気圧が指数関数的に減少していくことは、流体力学の理論としてよく知られている。
【0003】
一方、この気圧式高度計における気圧の測定には、一般に絶対圧力センサと呼ばれるセンサが用いられることが多い。この絶対圧力センサは、真空(0気圧乃至は0ヘクトパスカル)に対する大気圏内の気圧を測定することが可能なセンサである。俗に、高気圧・低気圧と言われるように、気圧の変化は天候の変化に基づいたり、逆に気圧の変化から天候の変化を予測したりするのに重要な指標となる。この指標となる気圧を測定するのが絶対圧力センサであり、気圧式高度計も同様のセンサが用いられる。
これまで述べたように、気圧式高度計は、絶対圧力センサ等により気圧を測定することによって標高乃至は高度を求めるものである。したがって、絶対圧力センサ等により測定した気圧から標高乃至は高度を求めるためには、気圧と高度との間に何らかの関数関係を見出す必要がある。たとえば、前述した理想気体におけるように、指数関数的に減少していく、という定性的関係だけでは実際の運用には不充分であり、もっと定量的な関数関係を見出さねばならない。
【0004】
この関数関係として開示されている技術としては、特許文献1に示すような技術がある。この技術では、標高と気圧と温度との間の関係を示す国際基準で規定された以下の関係式において、気候帯(温帯性気候、熱帯性気候、極地気候等)と日付とに基づき、海抜0mにおける基準温度T0を選択するとともに、海抜0mにおける気圧P0、および測定地点における気圧Pから、標高Hを求めるようになっている。
H=15385×T0×[1−(P/P0)0.190255
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−309941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の発明は、標高Hの求め方から容易に推測できるように、気圧式高度計を屋外で利用することを前提条件としたものである。なぜなら、標高Hを求めるために気候帯の情報が必要であるということは、とりもなおさず気温、すなわち屋外の温度を対象としたものである。さらに、海抜0mでの気圧値が必要であるということは、海抜0mが明確に示される場所、すなわち海岸線のように屋外でなければならないということが導かれるからである。
それに対し、近年、特に都市部において高層ビル乃至は超高層ビルと呼ばれる建築物が多く建設されるようになり、「今何階にいるか」を知りたい状況が頻繁に生じるようになってきている。すなわち、屋内においても、屋外で利用されることを前提にした気圧式高度計の原理を適用することにより、「今何階にいるか」を測定する状況が生じるようになってきている。
【0007】
一般に、特許文献1で対象としているような屋外の高度は、GPS(Global Positioning System)を用いれば計測可能である場合が多い。
しかしながら、屋内の場合にはGPS電波が届かないために、ほとんどの場合高度計測が不可能となる。つまり、気圧式高度計は、屋外よりも、むしろGPSによる高度計測のできない屋内での高度計測において必要とされている、というのが現状である。
そこで、本発明はかかる点に鑑み、従来とは異なる前提条件である、気圧式温度計を屋内で用いることにより、高度を的確に検出することの可能な気圧式高度計および屋内対応型気圧式高度計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、圧力センサ(例えば図1に示す絶対圧力センサ3a)と、一の高度における前記圧力センサの気圧測定値を基準気圧として記憶する基準気圧測定記憶部(例えば図1に示す基準気圧測定記憶部1)と、複数の気圧高度変換係数と前記複数の気圧高度変換係数を用いる演算式とを記憶する気圧高度変換係数記憶部(例えば図1に示す気圧高度変換係数記憶部2)と、高度計測月日情報が入力され、前記基準気圧と、前記複数の気圧高度変換係数のうちの前記高度計測月日情報に対応する気圧高度変換係数を含む前記演算式とを用いて、屋内測定地点における前記圧力センサの気圧測定値に基づき前記屋内測定地点の高度乃至は高度の変化値を演算する高度演算部(例えば図1に示す高度演算部5)と、を備え、前記複数の気圧高度変換係数は、前記圧力センサの気圧測定値を高度に変換するための係数であり、月日に応じた屋内における空気の温度に基づいて予め演算された係数であることを特徴とする気圧式高度計、である。
前記演算式は、次式(1)で表されていてよい。
H=−Psens×P0×loge(P/Pref) ……(1)
ここで、式(1)中の「loge」は自然対数の底を底とする自然対数を表し、式(1)中の各文字は以下を表す。
H:高度
P:屋内測定地点での気圧
Pref:基準気圧
Psens:気圧高度変換係数
P0:国際標準大気の海抜0mでの基準気圧値
前記気圧高度変換係数は、次式(2)で表されていてよい。
Psens=(R×T)/(M0×G×P0) ……(2)
ここで、式(2)中の各文字は以下を表す。
R:気体乗数
T:屋内測定地点での絶対温度
M0:屋内測定地点での空気の分子量
G:屋内測定地点での重力加速
【0009】
前記圧力センサが屋内に存在することを検出する屋内判定部(例えば図3に示すステップS11およびステップS12の処理)を、さらに備えていてよい。
前記屋内判定部は、屋内と屋外とで信号強度が異なる無線信号に基づき、前記圧力センサが屋内に存在するか否かを検出するものであってよい。
前記無線信号は、WiFi信号またはGPS信号であってよい。
入力される、屋内における空気の温度に基づき前記気圧高度変換係数を演算する気圧高度変換係数演算部(例えば図1に示す気圧高度変換係数演算部4)をさらに備え、前記気圧高度変換係数演算部は、屋内における空気の温度と、屋内における空気の分子量または湿度とから前記気圧高度変換係数を演算するものであってよい。
【0010】
入力される、屋内における空気の温度に基づき前記気圧高度変換係数を演算する気圧高度変換係数演算部(例えば図1に示す気圧高度変換係数演算部4)と、屋内における湿度を測定する湿度センサと、をさらに備え、前記気圧高度変換係数演算部は、屋内における空気の温度と、前記湿度センサで測定した屋内における湿度とから前記気圧高度変換係数を演算するものであってよい。
屋内における空気の温度を測定する温度センサをさらに備え、前記気圧高度変換係数演算部は、前記温度センサの測定値を用いて前記気圧高度変換係数を演算するようになっていてよい。
前記気圧高度変換係数は四季に応じて設定され、前記高度計測月日情報として高度計測時の季節が入力されるようになっていてよい。
【0011】
本発明の他の態様は、一の高度における圧力センサの気圧測定値を基準気圧として記憶する基準気圧測定記憶ステップと、前記圧力センサの気圧測定値を高度に変換するための複数の気圧高度変換係数を、月日に応じた屋内における空気の温度に基づいて予め演算する係数演算ステップと、前記複数の気圧高度変換係数と前記複数の気圧高度変換係数を用いる演算式とを記憶する気圧高度変換係数記憶ステップと、前記基準気圧と、前記複数の気圧高度変換係数のうちの高度計測月日情報に対応する気圧高度変換係数を含む前記演算式とを用いて、屋内測定地点における前記圧力センサの気圧測定値に基づき前記屋内測定地点の高度乃至は高度の変化値を演算する高度演算ステップと、を備えることを特徴とする気圧式高度演算方法、である。
前記演算式は、次式(1)で表されていてよい。
H=−Psens×P0×loge(P/Pref) ……(1)
ここで、式(1)中の「loge」は自然対数の底を底とする自然対数を表し、式(1)中の各文字は以下を表す。
H:高度
P:屋内測定地点での気圧
Pref:基準気圧
Psens:気圧高度変換係数
P0:国際標準大気の海抜0mでの基準気圧値
前記気圧高度変換係数は、次式(2)で表されていてよい。
Psens=(R×T)/(M0×G×P0) ……(2)
ここで、式(2)中の各文字は以下を表す。
R:気体乗数
T:屋内測定地点での絶対温度
M0:屋内測定地点での空気の分子量
G:屋内測定地点での重力加速
記圧力センサが屋内に存在することを検出する屋内判定ステップを、さらに備えていてよい。
前記屋内判定ステップでは、屋内と屋外とで信号強度が異なる無線信号に基づき、前記圧力センサが屋内に存在するか否かを検出するようになっていてよい。
前記無線信号は、WiFi信号またはGPS信号であってよい。
入力される、屋内における空気の温度に基づき前記気圧高度変換係数を演算する気圧高度変換係数演算ステップをさらに備え、前記気圧高度変換係数演算ステップでは、屋内における空気の温度と、屋内における空気の分子量または湿度とから前記気圧高度変換係数を演算するものであってよい。
入力される、屋内における空気の温度に基づき前記気圧高度変換係数を演算する気圧高度変換係数演算ステップと、屋内における湿度を測定する湿度測定ステップと、をさらに備え、前記気圧高度変換係数演算ステップでは、屋内における空気の温度と、前記湿度測定ステップで測定した屋内における湿度とから前記気圧高度変換係数を演算するものであってよい。
屋内における空気の温度を測定する温度測定ステップをさらに備え、前記気圧高度変換係数演算ステップでは、前記温度測定ステップで測定した温度を用いて前記気圧高度変換係数を演算するものであってよい。
前記気圧高度変換係数は四季に応じて設定される係数であり、前記高度計測月日情報は、高度計測時の季節であってよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、屋内で用いる気圧式高度計において、屋内での気圧と高度との定量的関数関係に基づいて、より正確な高度を計測することができる。
具体的には、仮にこれまでの登山等で用いられる気圧式高度計をそのまま屋内で適用すると高々数階程度で誤検知してしまうが、本発明の気圧式高度計を用いることにより、高層ビルでの現在高度(階数)検出を高精度で実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る気圧式高度計の実施形態の構成例を示すブロック図である。
図2図1の実施形態において、処理順序を示したフローチャートである。
図3図2のフローチャートにおいて、基準気圧測定記憶部1の前段階の処理例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(実施形態の構成)
図1は、本発明に係る気圧式高度計100の実施形態の構成例を示すブロック図である。この気圧式高度計100は、ユーザが今、建物内の何階に居るのかを計測するものである。
図1に示す気圧式高度計100は、基準気圧測定記憶部1と、気圧高度変換係数記憶部2と、現在気圧測定部3と、気圧高度変換係数演算部4と、高度演算部5と、を備える。
基準気圧測定記憶部1は、ある地点で絶対圧力センサによって測定された気圧を基準値(以下、基準気圧ともいう)として記憶するブロックである。基準気圧測定記憶部1は、例えば、後述の現在気圧測定部3に含まれる絶対圧力センサ3aの測定結果を、基準気圧として所定の記憶領域に記憶する。また、前記ある地点とは、気圧式高度計100により、現在階の認識を行う対象となる建物の屋内および屋外のいずれの地点でもよいが、現在階の認識を行う対象となる建物に近い地点ほど好適である。
【0016】
一般に、気圧そのものの絶対値と標高乃至は高度とは、これら間で常時同じ関数関係のもとにあることはなく、関数関係は時間が経過するにつれて変化する。その主な変化要因は、高気圧乃至は低気圧の発生といった気象の変化によるものである。しかしながら、比較的短い時間であれば、関数関係は、気象の変化の影響を受けにくい。
したがって、基準気圧測定記憶部1は、前述の気象の変化による気圧の変化を受けないような時間間隔で動作することが望ましい。一般的には、数10分以下の時間間隔で基準気圧が測定されることが推奨される。
気圧高度変換係数記憶部2は、高度演算に用いる気圧と高度との関数関係と、その関数内に存在するパラメータ(係数)とを予め記憶しておくブロックである。本ブロックの詳細は後述する。
【0017】
現在気圧測定部3は、測定したい屋内地点(以下、屋内測定地点ともいう)における階数を求めるために、その屋内測定地点での気圧を測定するブロックである。本ブロックにおける気圧の測定は、基準気圧測定記憶部1における気圧の測定と同様に、絶対圧力センサによって測定されるものとする。例えば、現在気圧測定部3は、絶対圧力センサ3aを備えており、この絶対圧力センサ3aにより屋内測定地点での気圧を測定する。
気圧高度変換係数演算部4は、気圧高度変換係数記憶部2に記憶される関数関係および係数を演算するブロックである。この気圧高度変換係数演算部4は、前記関数関係および係数の演算に用いる温度情報および湿度情報を入力するための入力部4aを備えている。本ブロックの詳細は後述する。
【0018】
高度演算部5は、基準気圧測定記憶部1で記憶する基準気圧、気圧高度変換係数記憶部2で記憶する係数、および現在気圧測定部3で測定した気圧を用いて、この現在気圧測定部3で気圧測定を行った、高度を測定したい地点(以後、屋内測定地点ともいう。)の高度を演算するブロックである。例えば、高層ビル内であれば階数まで演算することができる。また、単に高度を演算することもでき、また、基準気圧を測定した地点からの高度の変化量を演算することもできる。なお、高度演算部5は、当該高度演算部5での演算結果を表示するための表示部5aを備える。
【0019】
次に、図1の各ブロックの処理動作を図2のフローチャートに基づいて説明する。なお、以下で明示する関数および係数等の数値はあくまで一例であり、屋内測定地点等で最適に設定すればよい。
図2に示すように、まず、初めにステップS1の処理として、気圧高度変換係数演算部4において、気圧と高度との間の関数関係と、この関数内に含まれる係数とを計算する。
一例として、気圧と高度との間の関数関係を次式(1)のように定めるものとする。
H=−Psens×P0×loge(P/Pref) ……(1)
ここで、式(1)中の「loge」は自然対数の底(e=2.71828)を底とする自然対数を表す。
さらに、式(1)中の各文字は以下のような意味を持つ。
H:高度(高度演算部5で得られる値)
P:測定したい地点(屋内測定地点)での気圧(現在気圧測定部3で得られる値)
Pref:基準気圧(基準気圧測定記憶部1で得られる値)
Psens:気圧高度変換係数(気圧高度変換係数演算部4で得られる値)
【0020】
また、式(1)中の、P0は、P0=1013.25hPaであり、固定値とする。なお、P0=1013.25hPaとは、1976年に制定された国際標準大気の海抜0mでの基準気圧値である。また、前記(1)式から得られる高度Hは、基準気圧Prefを測定した地点を基準とする、屋内測定地点の高度、すなわち、高度の変化量を表す。
本発明を実施するためには、前記「P0」は固定値でありさえすればよいが、より具体的には、海抜0mでの基準気圧値1013.25hPaをP0として用いることが好ましい。
なお、式(1)式は、空気を理想気体としたときに得られる定量的関係式をもとに、本発明に適用するために式の変形を施したものである。
【0021】
続いて、上記式(1)中の、係数である気圧高度変換係数Psensの計算式を以下のように定めるものとする。
Psens=(R×T)/(M0×G×P0) ……(2)
ここで、式(2)中の各文字は以下のような意味を持つ。
R:気体定数
T:屋内測定地点での絶対温度
M0:屋内測定地点での空気の分子量
G:屋内測定地点での重力加速度
P0=1013.25hPa(国際標準大気の海抜0mでの基準気圧値)
【0022】
なお、式(2)も式(1)と同様に、空気を理想気体としたときに得られる定量的関係式をもとに、本発明に適用するために式の変形を施したものである。
この式(2)を鑑みると、気体定数Rは不変である(R=8.31441J/mol/K)。また、重力加速度Gは、地球全体に対して赤道で最大値を取り、北極と南極で最小値を取るが、それらの間でも差は0.5%程度であり、ほぼ定数とみてよい。ここでは、1901年に定められた国際標準値G=9.80665m/s/sを用いる。
【0023】
残る分子量M0と絶対温度Tは実際に測定することにより求めることもできるが、本発明に適用するには両者ともこの方法から導くこと、すなわち実際に測定することは困難であることがわかる。
すなわち、まず、分子量M0の測定については、測定そのものがそもそも非常に困難である。また、分子量に最も影響を及ぼすのは湿度であるが、その湿度の測定についても、測定すること事態はさほど困難ではないものの、厳密には屋内測定地点での平均の湿度を必要とするため、やはり測定は難しい。絶対温度についても湿度とほぼ同様の事情となり、結論として測定は困難と言わざるを得ない。
【0024】
ところで、本発明の前提条件である屋内、さらに高層ビルを対象とする場合、分子量M0に最も影響を及ぼす湿度、および温度については、居住者の快適性を維持するための基準が定められている。例として、日本の建築物衛生法による室内環境基準によれば、湿度が40%RH以上70%RH(相対湿度)以下、温度は17℃以上28℃以下と定められている。これら室内環境基準として定められた湿度および温度を用いれば、空気の分子量M0は、28.680以上28.882以下の任意の値、絶対温度は290.15以上301.15以下の任意の値、であることが導かれる。すなわち、式(2)にはこれらの範囲内の数値を代入すればよい。
【0025】
なお、これらの温度等の範囲はあくまで日本国内法令による居住者の存在する屋内部屋における基準である。したがって、全世界で適用する場合、あるいは居住者の存在しない屋内部屋(機械室や倉庫等)まで考慮する場合、等であれば、温度範囲を17℃以上28℃以下よりも広げ、さらに湿度範囲も40%RH以上70%RHよりも広げて適用するほうが望ましい。たとえば、温度範囲を15℃以上30℃以下とし、湿度範囲を30%RH以上80%RHとしてもかまわない。本発明に係る気圧式高度計はこのように温度範囲や湿度範囲を広げても同様に適用できるため、従来よりも気圧高度変換係数Psensがさらに精度高く補正され、その結果として高度の測定もさらに精度が高くなる。
【0026】
一例として、もっとも標準的な温度25℃、湿度50%RHのときの分子量はM0=28.795である。このM0をはじめ、他の値をそれぞれ代入すると、気圧高度変換係数Psensは、Psens=8.6639となる。
前記気圧高度変換係数Psensの演算に用いる湿度、あるいは温度は、気圧高度変換係数演算部4に含まれる入力部4aから入力すればよい。例えば、室内環境基準として定められている湿度40%RH以上70%RH以下、温度17℃以上28℃以下を満足する値をユーザが選択して入力設定するようにすればよい。あるいは、室内環境基準として定められた湿度および温度に基づき演算した空気の分子量M0は、28.680以上28.882以下の任意の値および室内環境基準として定められた温度を満足する空気の分子量および温度をユーザが選択して入力設定するようにしてもよい。
【0027】
さらに、入力部4aとして、温度を測定する温度センサと、湿度を測定する湿度センサとを設け、これら温度センサおよび湿度センサで測定した温度および湿度を、気圧高度変換係数Psensの演算に用いる湿度および温度として設定するようにしてもよい。
上記のようにして演算される気圧高度変換係数Psensの数値の数学的意味は、X軸(横軸)に気圧、Y軸(縦軸)に高度をプロットしたグラフにおいて、X軸が1013.25hPaでの接線の傾きがPsens=8.6639であることを意味する。また、この数値の物理的意味は、気圧1013.25hPaの地点において、8.6639m鉛直上方に移動するにつれて1hPa気圧が下がる、乃至は8.6639m鉛直下方に移動するにつれて1hPa気圧が上がることを意味する。
【0028】
なお、上記で示した通り、これまでの議論は空気が理想気体であることを前提条件として、気圧高度変換係数Psensを求める演算方法であるが、他の条件、たとえば実在気体の、圧力と体積との関係を近似するためのVan Der Waals(ファンデルワールス)の状態方程式に従って、気圧高度変換係数Psensを演算してもよい。
詳細は省略するが、この場合には理想気体の場合とは異なり、与えられた微分方程式が解析的に解けないため、数値計算法などで解くことになる。
【0029】
以上の手順で、気圧高度変換係数Psensを演算し、式(1)に示す関数関係の係数を特定したならば、ステップS2に移行し、気圧高度変換係数演算部4は、演算した関数関係および気圧高度変換係数Psensを、気圧高度変換係数記憶部2に記憶する。
このステップS1およびステップS2の処理を行う場所は不問であり、屋外や屋内、屋内測定地点など、いずれの場所で行ってもよい。しかしながら、気圧高度変換係数Psensの演算に用いる、温度および湿度として、温度センサ、湿度センサの計測値を用いる場合には、温度センサ、湿度センサの計測値を取得する必要があるため、屋内で行う必要がある。より好ましくは、屋内測定地点が存在する建物内で行うことが好ましい。
【0030】
次いで、ステップS3に移行し、基準気圧測定記憶部1において、絶対圧力センサ3aによりある地点で測定した圧力を、基準気圧として記憶する。
例えば、ユーザが、今建物内の何階のフロアに居るのかを認識することを目的として、気圧式高度計100での計測を行う場合には、ユーザは、建物の基準階、例えば、1階で、建物内に入った時点で気圧の計測を行う。
次いで、ステップS4に移行し、例えば上層階などの屋内測定地点において、現在気圧測定部3により絶対圧力センサ3aによる気圧測定を行う。
次いで、ステップS5に移行し、高度演算部5において、ステップS1〜ステップS4により取得した各種情報に基づき、高度を演算する。すなわち、ステップS1で演算した気圧高度変換係数Psensと、ステップS3で取得した基準気圧と、ステップS4で取得した、屋内測定地点における圧力とを用いて、ステップS1で演算した前記式(1)に示す関数関係から、高度Hを演算する。
【0031】
そして、この場合、建物の何階にいるかを認識したいため、例えば既知の建物の各階高度情報に、演算した高度Hを照らし合わせて、現在の階数を得る。つまり、式(1)から得られる高度Hは基準気圧を測定した地点からの高度の変化量であり、基準気圧は1階で測定している。したがって、測定地点の階数を、既知の、建物の各階の高さをもとに演算する。すなわち各階の高さで高度Hを割り算することにより、屋内測定地点の階数を得ることができる。このようにして演算した演算結果は、表示部5aにより表示される。これにより、ユーザは、高度あるいはユーザが存在する階数を認識することができる。
【0032】
なお、前述のように基準気圧は、10分間隔程度で最新の値に更新する必要がある。例えば、建物の1階などの基準階において基準気圧を取得した後は、10分程度間隔で、屋内測定地点とは高度の異なる地点において基準気圧を取得する(ステップS3)。その後ステップS4、ステップS5の処理を行って、高度Hを取得し、基準気圧を測定した階からの高度の変化量を求め、これに基づき屋内測定地点の高度を取得するようにすればよい。
【0033】
以上説明したように、屋内での、気圧と高度との間の関数関係を式(1)のように定め、この関数関係に基づいて、高度を演算するようにしたため、気圧式高度計を用いて屋内での高度を測定する場合であっても、的確に高度を計測することができる。また、屋内での、気圧と高度との間の関数関係を用いて高度演算するため、従来の屋外用の気圧式高度計を用いて測定する場合に比較して、検出精度を向上させることができる。具体的には、数10階の分解能を持たせることができ、高層ビルでの現在高度(階数)であっても高精度に検出することができる。
【0034】
(変形例1)
上述のように、基準気圧測定記憶部1での基準気圧の測定間隔は、長くとも数10分程度が望ましい。上記では、ユーザが基準気圧の測定操作を行う構成とした場合について説明したがこれに限るものではない。
前述のように、本発明は、気圧式高度計100を屋内で使用することを前提としている。
ここで、屋外であればGPS(Global Positioning System)によって3次元測位が可能な場合が多い。一方で、高層ビルのような屋内では、ほぼ確実にGPS電波は届かない。したがって、GPS電波からの信号を解析することにより、屋外から屋内への侵入のタイミングを知ることができる。
たとえば、GPS電波のうち、民生機器に対して使用される1575.42MHzの電波信号強度を観測できる観測機器(スペクトルアナライザ乃至は専用の半導体部品)と、この観測機器から観測信号を処理する観測信号処理部とを、気圧式高度計100に搭載する。
【0035】
そして、図3のフローチャートに示すように、まずステップS11で、観測機器により取得した観測信号に基づき、観測信号処理部において、電波信号強度を測定する。そして、ステップS12に移行し、測定した電波信号強度が、急に小さくなった場合に屋外から屋内に侵入したと判定する。この判定は、例えば、建物に進入した前後の電波信号強度の差を予め検出しておき、この差相当の値を、電波信号強度の変動の差のしきい値として設定する。そして、電波信号強度が前記しきい値以上減少したとき、気圧式高度計100を保持するユーザが建物の外部から内部に移動したと判断する。
そして、このユーザが建物の外部から内部に移動したときの、ユーザが存在する階を基準階とし、この地点において基準気圧測定記憶部1において絶対圧力センサにより、基準気圧を取得する。そして、この基準気圧を所定の記憶領域に記憶する。
【0036】
以後、関数関係および気圧高度変換係数の演算を行っていなければ、この時点で図2のステップS1およびステップS2の処理を行い、これらステップS1およびS2の処理を行っていれば、ステップS4およびステップS5の処理を実行するようにすればよい。このような構成とすることによって、ユーザは基準階での基準気圧情報の取得を意識することなく自動的に基準階で基準気圧を取得することができる。
また、温度センサあるいは湿度センサの測定値を用いて、気圧高度変換係数Psensの演算を行う構成であるとき、上述のようにユーザが屋外から屋内に移動したことを検出する構成とした場合には、ユーザが屋外から屋内に移動したことを検出したタイミングで、温度センサおよび湿度センサの測定値を取得し、これら測定値を用いて、気圧高度変換係数Psensの演算を行う構成としてもよい。
【0037】
また、屋内でよく利用されるWiFi通信による測位と電波信号強度の測定とによって、上記GPSと同様の手段を実現することもできる。つまり、WiFi測位によって屋内の現在位置を認識することができる。よって、この現在位置を認識することができたタイミングで、基準気圧測定記憶部1において基準気圧を測定し、これを記憶するようにしてもよい。つまり、WiFi通信においては、基地局(ルーター)の設置場所が既知であれば、複数の基地局とのWiFi通信における電波信号強度から、現在位置を認識することができる。現在位置を認識することができたということは、ユーザが屋内に存在することを意味する。したがって、現在位置を認識することができた時点における、ユーザの現在位置を、基準階または基準高さとみなして、基準気圧を測定し、これを記憶するようにしてもよい。
また、この場合、基準気圧を取得した時刻を管理し、基準気圧の測定間隔(例えば数10分)が経過し、かつ、ユーザが引き続き同じ建物内に存在する場合には、自動的に基準気圧を取得し、関数関係式(1)を自動的に更新するように構成してもよい。
【0038】
(変形例2)
上記実施形態では、気圧高度変換係数演算部4における気圧高度変換係数Psensを、式(2)から演算する場合について説明したがこれに限るものではない。
たとえば日本のように四季の明瞭な国においては以下のように簡略化して定めてもよい。
まず夏の場合、昨今のエネルギー事情および省エネ傾向を鑑みれば、前述の建築物衛生法による室内環境基準上限の、温度28℃および湿度70%RHに制御することが望ましい。この場合の気圧高度変換係数Psensは8.7862となる。逆に冬の場合には、同様に室内環境基準の、温度および湿度の下限値をもとに気圧高度変換係数Psensを計算すると8.4060となる。
春と秋にはこれらの平均値として定めるものとすれば、気圧高度変換係数Psensの値は8.5961である。この春と秋の値を基準にすると、夏には2.21%高く、冬には2.21%低くなっている。
したがって、例えば、季節と気圧高度変換係数とを対応付けて気圧高度変換係数記憶部2に記憶しておき、入力部4aにより、季節を指定することにより、この季節に対応付けられた気圧高度変換係数を用いて、高度演算を行う構成としてもよい。
【0039】
この事情は実使用時に以下のような現象をもたらす。
仮に春と秋の気圧高度変換係数Psensだけを記憶して、夏に屋内高層ビル内におけるユーザが存在する階数を測定したとする。高層ビルの各階の高さ(1階と2階の間の高さ、2階と3階の間の高さ、以下同様)がすべて同じとしたときにこの気圧式高度計100により、測定を行うと、簡単な計算によれば、1階から23階まで登ったときに、本来23階であるにも関わらず、22階と誤検知することになる。逆に、冬の場合には24階と誤検知することになる。今の高層ビルに対応するには、50階程度の分解能は必須である。本技術を用いれば、その程度の分解能まで容易に到達する。
【0040】
もちろん、このように、四季に応じて、夏、春と秋、冬の3つの気圧高度変換係数Psensを設定し、季節に応じて気圧高度変換係数Psensを補正する方法に限るものではない。本発明は、例えば2カ月、または3カ月毎、あるいは、月毎、さらには、月日、に応じて連続的(アナログ的に)、気圧高度変換係数Psensを補正することも可能である。
この場合には、入力部4aにより、高度測定時の月情報、あるいは、月日情報を入力することにより、この月情報あるいは月日情報に対応付けられた気圧高度変換係数を用いて高度演算を行う構成としてもよい。また、月情報、あるいは月日情報は、ユーザが入力部4aにより、入力操作を行う構成としてもよく、また、例えばカレンダー機能を備えた気圧式高度計100の場合には、このカレンダー機能により高度測定時の月または月日情報を自動的に取得し、これに対応付けられた気圧高度変換係数を特定するようにしてもよい。
【0041】
さらに付け加えれば、従来の気圧式高度計は、冒頭で示した通り、屋外の気温や海抜0mでの気温や気圧に基づいて構成されていたり、たとえば簡単な海面更正表に基づいて与えられたりしているのみであった。そのため、従来の気圧式高度計を屋内で適用しようとすると、上層階に行くほど階数検出の誤検知が発生していた。しかしながら、本発明のこの技術を用いるだけで、上層階で誤検知される機会が大幅に減少する。
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0042】
1 基準気圧測定記憶部
2 気圧高度変換係数記憶部
3 現在気圧測定部
3a 絶対圧力センサ
4 気圧高度変換係数演算部
4a 入力部
5 高度演算部
5a 表示部
100 気圧式高度計
図1
図2
図3