特許第5961712号(P5961712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 安福 規之の特許一覧 ▶ 一般財団法人土木研究センターの特許一覧

<>
  • 特許5961712-変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法 図000002
  • 特許5961712-変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法 図000003
  • 特許5961712-変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法 図000004
  • 特許5961712-変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法 図000005
  • 特許5961712-変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法 図000006
  • 特許5961712-変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法 図000007
  • 特許5961712-変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法 図000008
  • 特許5961712-変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法 図000009
  • 特許5961712-変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5961712
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/18 20060101AFI20160719BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20160719BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20160719BHJP
   E02D 31/10 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   E02D5/18 102
   E02D3/12 102
   E02D17/18 Z
   E02D31/10
   E02D5/18 101
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-16878(P2015-16878)
(22)【出願日】2015年1月30日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】515028849
【氏名又は名称】安福 規之
(73)【特許権者】
【識別番号】512334833
【氏名又は名称】一般財団法人土木研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100080056
【弁理士】
【氏名又は名称】西郷 義美
(72)【発明者】
【氏名】安福 規之
(72)【発明者】
【氏名】了戒 公利
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−064657(JP,A)
【文献】 特開2010−138581(JP,A)
【文献】 特開2000−212949(JP,A)
【文献】 特開2008−303581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/18
E02D 5/46
E02D 3/12
E02D 17/18
E02D 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固い層からなる支持層上に設計水準に応じて未改良層を残し、この未改良層上に盛土縦断方向に対して直交するように所定間隔毎に複数の壁を配置して壁式改良層を形成し、この壁式改良層上に浅層改良層を形成した後に、この浅層改良層上に盛土を行う壁式地盤改良工法において、前記壁を連続壁構造とする一方、この連続壁構造とした前記壁の盛土横断方向の外端部には、この外端部に対峙させ、かつ、構成する部材間に隙間を有する少なくとも1列以上の変位抑止壁を配置することを特徴とする変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法に係り、特に壁式地盤改良工法の改良工法であって、変位抑止壁を備えることによって、構築物の盛土及び周辺部位の沈下を抑制して軟弱地盤の改良を図る変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路や堤防などの構築物を構築する際に、例えば壁式地盤改良工法を使用するものがある。
この壁式地盤改良工法によって構築物101を構築する際には、図9に示す如く、先ず固い層からなる支持層102を確保する。
このとき、この「支持層102」は、一般的な「固い地盤」と解釈することができる。
そして、前記支持層102を確保した後に、この支持層102上に所定深さの未改良層103を残している。
この未改良層103は、設計水準により残さない場合もある。
この未改良層103上には、盛土縦断方向Aに対して直交するように所定間隔毎に深層混合処理でセメント系の複数の壁104を配置して壁式改良層105を形成している。
なお、参考までに説明すると、上記の「深層混合処理」としては、例えばバケットを使用して土砂を掘削し、その後、土砂内にセメントミルクと撹拌混合させて埋設し、直線的な複数の壁104を作り、これらの壁104と壁104間に位置する土砂とによって一体的な壁式改良層105を形成する処理方策を想定している。
また、前記壁式改良層105上に浅層改良層106を形成した後に、この浅層改良層106上に盛土107を行って前記構築物101を構築している。
更に、この構築物101上には、道路や堤防などを形成している。
なお、上記「盛土縦断方向A」は、前記構築物101上に形成される道路や堤防などの長手方向に合致する方向を指している。
【0003】
また、地盤改良工法に関しては、以下の特許文献1〜特許文献3などのように多数の技術内容が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−317307号公報
【特許文献2】特開2010−37831号公報
【特許文献3】特開2014−196614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の壁式地盤改良工法においては、図9から明らかなように、前記構築物101を構築した際に、前記壁式改良層105を構成する複数の壁104間に土砂が位置している。
このとき、前記未改良層103上方に位置する盛土107の重量によって圧密沈下が発生する。
なお、この圧密沈下の発生時には、盛土107の周辺部位をも引きずり込んでしまい、構築物101の盛土107の周辺部位に沈下が発生するという不都合がある。
【0006】
また、上述した不都合を防止する構造としては、前記壁式改良層を構成する複数の壁の外端部に一体的なシートパイルを配置する方式のものが考えられる。
しかし、このシートパイル方式のものは、一体的な構成を備えていることにより、盛土107の周辺部位に沈下が発生することは防止できるものの、材料費が嵩み、コストが上昇してしまうという不都合があるとともに、シートパイルによって地下水の流れが遮断されてしまうという不都合がある。
【0007】
この発明は、変位抑止壁によって構築物の盛土及び周辺部位の沈下を抑制して軟弱地盤の改良を効果的に果たし得る変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、固い層からなる支持層上に設計水準に応じて未改良層を残し、この未改良層上に盛土縦断方向に対して直交するように所定間隔毎に複数の壁を配置して壁式改良層を形成し、この壁式改良層上に浅層改良層を形成した後に、この浅層改良層上に盛土を行う壁式地盤改良工法において、前記壁を連続壁構造とする一方、この連続壁構造とした前記壁の盛土横断方向の外端部には、この外端部に対峙させ、かつ、構成する部材間に隙間を有する少なくとも1列以上の変位抑止壁を配置することを特徴とする。

【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)前記変位抑止壁によって構築物の盛土及び周辺部位の沈下を抑制して軟弱地盤の改良を効果的に行うことができる。
(2)また、前記変位抑止壁を構成する部材間の隙間を利用して壁式改良層の横断方向の地下水の流れが阻害されず、かつ、壁で壁間の地盤を高速しているため液状化対策にも著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、この発明の実施例1を示す変位抑止壁の配置状態の概略断面平面図である。(実施例1)
図2図2は、変位抑止壁の配置状態の概略断面正面図である。(実施例1)
図3図3は、変位抑止壁の有無による地表面沈下を示す図である。(実施例1)
図4図4は、この発明の実施例2を示す変位抑止壁の配置状態の概略断面平面図である。(実施例2)
図5図5は、この発明の実施例3を示す変位抑止壁の配置状態の概略断面平面図である。(実施例3)
図6図6は、この発明の実施例4を示す変位抑止壁の配置状態の概略断面平面図である。(実施例4)
図7図7は、この発明の実施例5の壁式改良層の壁の概略断面平面図を示し、(a)は一体成形の壁の概略断面平面図、(b)は複数本の不連続な杭部材からなる壁の概略断面平面図、(c)は複数本の一部が重複するように連続する杭部材からなる壁の概略断面平面図、(d)は一体成形部分と複数本の不連続な杭部材からなる部分とを有する壁の概略断面平面図である。(実施例5)
図8図8は、この発明の実施例6を示す複数本の一部が重複するように連続する杭部材からなる壁の要部説明図である。(実施例6)
図9図9は、この発明の従来技術を示す壁式地盤改良工法の概略斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1図3はこの発明の実施例1を示すものである。
図1及び図2において、1はこの発明の壁式地盤改良工法によって構築される構築物である。
この構築物1は、従来技術部分で説明したように、固い層からなる支持層2を確保した後に、この支持層2上に所定深さの未改良層3を形成する。
そして、この未改良層3上に盛土縦断方向Aに対して直交するように所定間隔毎に深層混合処理でセメント系の複数の壁4を配置して壁式改良層5を形成する。
また、この壁式改良層5上に浅層改良層6を形成した後に、この浅層改良層6上に盛土7を行って構築するという壁式地盤改良工法に基づいている。
【0013】
そして、この発明の実施例1における前記構築物1において、前記壁4の盛土横断方向Bの外端部近傍には、構成する部材間に隙間を有する少なくとも1列以上の変位抑止壁8を配置する構成とする。
詳述すれば、前記壁4を、例えば3個の第1壁4−1、第2壁4−2、第3壁4−3として説明すると、図1に示す如く、夫々の第1〜第3壁4−1、4−2、4−3を所定間隔毎、かつ、前記盛土縦断方向Aに対して直交するように、つまり、夫々の第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の長手方向を盛土横断方向Bに合致させるように配置して前記壁式改良層5を形成する。
【0014】
その後、夫々の第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の外端部4a−1、4a−2、4a−3に、この外端部4a−1、4a−2、4a−3から所定距離Sだけ離間させて前記変位抑止壁8を配置する。
このとき、この変位抑止壁8を、例えば3列の第1の変位抑止壁列8A、第2の変位抑止壁列8B、第3の変位抑止壁列8Cとする(なお、この構成は、図3における「変位抑止壁3列」と換言することが可能である。)。
【0015】
上記「所定距離S」に関しては、地盤状況に応じて任意に設定変更可能である。
そして、3列の第1の変位抑止壁列8A、第2の変位抑止壁列8B、第3の変位抑止壁列8Cを配置する際の夫々の離間寸法を、変更させることが可能であるが、この発明の実施例1においては、変更させずに「所定距離S」を使用する構成とする。
【0016】
追記すれば、前記第1壁4−1の外端部4a−1には、図1から明らかなように、第1壁4−1の長手方向を盛土横断方向Bに対して直交するように、つまり、長方形状からなる断面形状の長手方向を前記盛土縦断方向Aに合致させるとともに、第1壁4−1の外端部4a−1から所定距離Sだけ離間するように、第1の変位抑止壁列8Aの第1変位抑止壁8A−1を配置する。
また、前記第2壁4−2の外端部4a−2には、上述の前記第1壁4−1と同様に、第2壁4−2の外端部4a−2から所定距離Sだけ離間するように第1の変位抑止壁列8Aの第2変位抑止壁8A−2を配置する。
更に、前記第3壁4−3の外端部4a−3には、上述の前記第1壁4−1及び前記第2壁4−2と同様に、第3壁4−3の外端部4a−3から所定距離Sだけ離間するように第1の変位抑止壁列8Aの第3変位抑止壁8A−3を配置する。
そして、第1の変位抑止壁列8Aの外側に、この第1の変位抑止壁列8Aから所定距離Sだけ離間するように、前記第2の変位抑止壁列8Bの第1〜第3変位抑止壁B−1、8B−2、8B−3を夫々配置する。
また、前記第2の変位抑止壁列8Bの外側には、この第2の変位抑止壁列8Bから所定距離Sだけ離間するように、前記第3の変位抑止壁列8Cの第1〜第3変位抑止壁8C−1、8C−2、8C−3を夫々配置するものである。
【0017】
そして、前記第1〜第3の変位抑止壁列8A、8B、8Cの構成する部材である各第1〜第3変位抑止壁8A−1、8A−2、8A−3及び第1〜第3変位抑止壁8B−1、8B−2、8B−3、第1〜第3変位抑止壁8C−1、8C−2、8C−3を配置した際に、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3によって現出される第1及び第2間隙部9−1、9−2に対峙するように、かつ、これらの第1及び第2間隙部9−1、9−2よりも小さくなるように、構成する部材間の隙間である所定の第1及び第2隙間10−1、10−2を確保する。
つまり、前記第1壁4−1と前記第2壁4−2によって現出される前記第1間隙部9−1に対しては、図1に示す如く、第1変位抑止壁列8Aの第1変位抑止壁8A−1と第2変位抑止壁8A−2との間、及び、第2の変位抑止壁列8Bの第1変位抑止壁8B−1と第2変位抑止壁8B−2との間、そして、第3の変位抑止壁列8Cの第1変位抑止壁8C−1と第2変位抑止壁8C−2との間に、盛土横断方向Bに延びる前記第1隙間10−1を夫々確保する。
同様に、前記第2壁4−2と前記第3壁4−3によって現出される前記第2間隙部9−1に対しては、第1変位抑止壁列8Aの第2変位抑止壁8A−2と第3変位抑止壁8A−3との間、及び、第2の変位抑止壁列8Bの第2変位抑止壁8B−2と第3変位抑止壁8B−3との間、そして、第3の変位抑止壁列8Cの第2変位抑止壁8C−2と第3変位抑止壁8C−3との間に、盛土横断方向Bに延びる前記第2隙間10−2を確保するものである。
【0018】
なお、この発明の実施例1においては、図1に開示して前記第1、第2隙間10−1、10−2を直線状態となるように、第1〜第3の変位抑止壁列8A、8B、8Cの構成を説明したが、これらの第1〜第3の変位抑止壁列8A、8B、8Cの配置位置をずらした特別構成とすることも可能である。
例えば、第1の変位抑止壁列8Aに対して、第2の変位抑止壁列8Bの配置位置を盛土縦断方向Aにずらし、前記第1、第2隙間10−1、10−2とが直線状態とならないようにするものである。
さすれば、特別構成として直線状態ではなくても、繋がった状態の第1、第2隙間を確保することができるため、地下水の流れが阻害されない。
【0019】
また、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の外端部4a−1、4a−2、4a−3に前記第1〜第3の変位抑止壁列8A、8B、8Cを形成する際に、これらの第1〜第3の変位抑止壁列8A、8B、8Cの深さを任意に設定することが可能である。
この発明の実施例1においては、図2に示す如く、前記第1の変位抑止壁列8Aから前記第2の変位抑止壁列8B、前記第3の変位抑止壁列8Cに向かって漸次深さを大とする設定とする。
このとき、最も外側部位に位置し、かつ、最も深い第3の変位抑止壁列8Cの下端を、前記支持層2まで到達する構成とする。
【0020】
更に、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の外端部4a−1、4a−2、4a−3に前記第1〜第3の変位抑止壁列8A、8B、8Cを形成した後には、前記第1壁4−1、第2壁4−2、第3壁4−3の前記壁式改良層5上に前記浅層改良層6を形成するとともに、この浅層改良層6を第1〜第3の変位抑止壁列8A、8B、8C上にも延長させて、一体的に形成する。
このとき、この浅層改良層6は、ジオテキスタイルでも対応可能である。
そして、前記浅層改良層6を形成した後に、この浅層改良層6上に盛土7を行う際には、前記壁式改良層5側から第1〜第3の変位抑止壁列8A、8B、8C側に向かって前記盛土7の上面の高さ位置が漸次減少するように傾斜させて前記構築物1を構築する。
【0021】
次に作用を説明する。
【0022】
「変位抑止壁3列」の前記第1〜第3の変位抑止壁列8A、8B、8Cを備える前記構築物1を構築すると、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3と、これらの第1〜第3壁4−1、4−2、4−3によって現出される前記第1及び第2間隙部9−1、9−2の土砂とによって前記壁式改良層5が形成される。
このとき、この壁式改良層5よりも下方の前記未改良層3は未改良領域となっており、経年使用によって盛土107などの重量により圧密沈下が発生する。
そして、前記未改良層3などの圧密沈下の発生時に、前記盛土107の周辺部位の引きずり込みが防止される。
また、壁式改良層5の横断方向の地下水の流れも阻害されない。
【0023】
ここで、構築物1の盛土7及び周辺部位の沈下状態について説明する。
従来のように、第1〜第3の変位抑止壁列8A、8B、8Cを有しない構築物、つまり、「変位抑止壁無し」の構築物の場合には、図3に実線で示す如く、例えば道路境界(着目位置)における法尻からの距離が5(m)で、約−25(cm)程度の地盤面沈下が発生している。
これに対して、この発明の実施例1である前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の外端部4a−1、4a−2、4a−3に前記第1〜第3の変位抑止壁列8A、8B、8Cを備える「変位抑止壁3列」の前記構築物1の場合には、図3に破線で示す如く、殆ど地盤面沈下が発生しておらず、あえて数値で開示すると、道路境界(着目位置)における法尻からの距離が5(m)で、約−2(cm)程度の地盤面沈下が発生している。
なお、前記第1〜第3の変位抑止壁列8A、8B、8Cは、前記構築物1の法尻から天端までの間で2/3までの範囲を標準としている。
【0024】
これにより、この発明の実施例1においては、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の盛土横断方向Bの外端部4a−1、4a−2、4a−3には、この外端部4a−1、4a−2、4a−3に対峙させ、かつ、構成する部材間の隙間である所定の第1及び第2隙間10−1、10−2を有する前記変位抑止壁8、例えば3列の前記第1の変位抑止壁列8A、第2の変位抑止壁列8B、第3の変位抑止壁列8Cを配置する構成とすることによって、以下の効果を奏することができる。
(1)前記変位抑止壁8である前記第1の変位抑止壁列8A、第2の変位抑止壁列8B、第3の変位抑止壁列8C間において、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3によって現出される第1及び第2間隙部9−1、9−2よりも小さくなるように前記第1及び第2隙間10−1、10−2を設定することにより、前記変位抑止壁8によって前記構築物1の盛土7及び周辺部位の沈下を抑制して軟弱地盤の改良を効果的に行うことができる。
(2)また、前記変位抑止壁8である前記第1の変位抑止壁列8A、第2の変位抑止壁列8B、第3の変位抑止壁列8C間に設けた前記第1及び第2隙間10−1、10−2を利用して壁式改良層5の第1〜第3壁4−1、4−2、4−3間の下方に位置する前記未改良層3などの地下水の流れが阻害されず、かつ、第1〜第3壁4−1、4−2、4−3で液状化対策にも著効を奏する。
(3)更に、たとえ前記構築物1の支持層2が傾斜している状態であっても、変位抑止壁8である前記第1の変位抑止壁列8A、第2の変位抑止壁列8B、第3の変位抑止壁列8Cが未改良層3などに位置する土砂全体を保持するように抵抗となるため、支持層2の傾斜状態に拘わらず、軟弱地盤の改良を十分に遂行し得る。
【実施例2】
【0025】
図4はこの発明の実施例2を示すものである。
この実施例2において、上述実施例1のものと同一機能を果たす箇所には、同一符号を付して説明する。
【0026】
上述実施例1においては、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の外端部4a−1、4a−2、4a−3に前記第1〜第3の変位抑止壁列8A、8B、8Cを備える「変位抑止壁3列」の前記構築物1としたが、この実施例2の特徴とするところは、「変位抑止壁1列」からなる変位抑止壁8を備える構築物11とした点にある。
【0027】
すなわち、前記変位抑止壁8は、長方形状からなる断面形状の第1〜第3変位抑止壁8−1、8−2、8−3を有している。
また、上述した実施例1と同様に、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3によって現出される第1及び第2間隙部9−1、9−2に対峙するように、所定の第1及び第2隙間10−1、10−2を確保するものである。
このため、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の外端部4a−1、4a−2、4a−3に前記変位抑止壁8を備える「変位抑止壁1列」の前記構築物11の場合には、図3に1点鎖線で示す如く、道路境界(着目位置)における法尻からの距離が5(m)で、約−15(cm)程度の地盤面沈下が発生している。
【0028】
さすれば、上述した案施例1と同様に、以下の効果を奏することができる。
(1)前記変位抑止壁8間において、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3によって現出される第1及び第2間隙部9−1、9−2よりも小さくなるように前記第1及び第2隙間10−1、10−2を設定することにより、前記変位抑止壁8によって前記構築物11の盛土及び周辺部位の沈下を抑制して軟弱地盤の改良を効果的に行うことができる。
(2)また、前記変位抑止壁8間に設けた前記第1及び第2隙間10−1、10−2を利用して壁式改良層5の第1〜第3壁4−1、4−2、4−3間の下方に位置する前記未改良層3などの地下水の流れが阻害されず、かつ、第1〜第3壁4−1、4−2、4−3で液状化対策にも著効を奏する。
(3)更に、たとえ前記構築物11の支持層が傾斜している状態であっても、前記変位抑止壁8が未改良層3などに位置する土砂全体を保持するように抵抗となるため、支持層の傾斜状態に拘わらず、軟弱地盤の改良を十分に遂行し得る。
【実施例3】
【0029】
図5はこの発明の実施例3を示すものである。
【0030】
この実施例3の特徴とするところは、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の外端部4a−1、4a−2、4a−3に変位抑止壁28を備える「変位抑止壁1列」の前記構築物21を構築するとともに、前記変位抑止壁28の第1〜第3変位抑止壁28−1、28−2、28−3の長手方向を、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の長手方向に合致させる構成とした点にある。
【0031】
すなわち、前記構築物21を構築する際に、図5に示す如く、「変位抑止壁1列」の前記変位抑止壁28である長方形状からなる断面形状の前記第1〜第3変位抑止壁28−1、28−2、28−3を設ける一方、これらの第1〜第3変位抑止壁28−1、28−2、28−3の長手方向を、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の長手方向である盛土横断方向Bに合致させるものである。
このとき、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の幅寸法と第1〜第3変位抑止壁28−1、28−2、28−3の幅寸法とは任意に設定する構成とすることも可能であるが、この発明の実施例3においては、ほぼ同一の幅寸法として接触面積を大としている。
【0032】
これにより、上述した実施例2と比較すると、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3によって現出される第1及び第2間隙部9−1、9−2に対峙する所定の第1及び第2隙間30−1、30−2は、第1及び第2間隙部9−1、9−2と同様な寸法まで拡大しているが、第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の外端部4a−1、4a−2、4a−3に前記第1〜第3変位抑止壁28−1、28−2、28−3を配置して接触面積を大としているため、以下の効果を奏することができる。
(1)前記変位抑止壁28間において、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3によって現出される第1及び第2間隙部9−1、9−2と同様な寸法に前記第1及び第2隙間30−1、30−2を設定したことにより、接触面積を大とした前記変位抑止壁28によって前記構築物21の盛土及び周辺部位の沈下を抑制して軟弱地盤の改良を効果的に行うことができる。
(2)また、前記変位抑止壁28間に設けた前記第1及び第2隙間30−1、30−2を利用して壁式改良層5の第1〜第3壁4−1、4−2、4−3間の下方に位置する前記未改良層3などの地下水の流れが阻害されず、かつ、第1〜第3壁4−1、4−2、4−3で液状化対策にも著効を奏する。
(3)更に、たとえ前記構築物21の支持層が傾斜している状態であっても、前記変位抑止壁28が未改良層3などに位置する土砂全体を保持するように抵抗となるため、支持層の傾斜状態に拘わらず、軟弱地盤の改良を十分に遂行し得る。
【実施例4】
【0033】
図6はこの発明の実施例4を示すものである。
【0034】
上述した実施例1〜3においては、変位抑止壁8、28の断面形状を長方形状としたが、この実施例4の特徴とするところは、変位抑止壁38の断面形状を円形状とした点にある。
【0035】
すなわち、前記構築物31を構築する際に、図6に示す如く、「変位抑止壁1列」の前記変位抑止壁38である円形状からなる断面形状の前記第1〜第3変位抑止壁38−1、38−2、38−3を設けるものである。
このとき、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の幅寸法と第1〜第3変位抑止壁38−1、38−2、38−3の径寸法とを任意に設定する構成とすることも可能であるが、この発明の実施例4においては、第1〜第3変位抑止壁38−1、38−2、38−3の径寸法を少し大きい寸法とする。
なお、前記変位抑止壁38の第1〜第3変位抑止壁38−1、38−2、38−3を形成する際には、例えば土砂を掘削しつつ、土砂内にセメント系のセメントミルを注入して撹拌を行い、円柱状杭を作ることによって対応可能である。
【0036】
これにより、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3によって現出される第1及び第2間隙部9−1、9−2に対峙する所定の第1及び第2隙間40−1、40−2を、第1及び第2間隙部9−1、9−2よりも小さな寸法にでき、第1〜第3壁4−1、4−2、4−3の外端部4a−1、4a−2、4a−3に前記第1〜第3変位抑止壁38−1、38−2、38−3を配置しているため、以下の効果を奏することができる。
(1)前記変位抑止壁38間において、前記第1〜第3壁4−1、4−2、4−3によって現出される第1及び第2間隙部9−1、9−2よりも小さくなるように前記第1及び第2隙間40−1、40−2を設定したことにより、前記変位抑止壁38によって前記構築物31の盛土及び周辺部位の沈下を抑制して軟弱地盤の改良を効果的に行うことができる。
(2)また、前記変位抑止壁38間に設けた前記第1及び第2隙間40−1、40−2を利用して壁式改良層5の第1〜第3壁4−1、4−2、4−3間の下方に位置する前記未改良層3などの地下水の流れが阻害されず、かつ、第1〜第3壁4−1、4−2、4−3で液状化対策にも著効を奏する。
(3)更に、たとえ前記構築物31の支持層が傾斜している状態であっても、前記変位抑止壁38が未改良層3などに位置する土砂全体を保持するように抵抗となるため、支持層の傾斜状態に拘わらず、軟弱地盤の改良を十分に遂行し得る。
【実施例5】
【0037】
図7はこの発明の実施例5を示すものである。
【0038】
上述した実施例1〜4においては、図7(a)に示す如く、壁4を連続壁構造として説明したが、この実施例5の特徴とするところは、壁構造を改良した点にある。
【0039】
このとき、壁構造を、例えば図7(b)〜(d)に示すように改良する。
つまり、図7(b)に示す不連続円柱壁41の場合には、断面形状が円形状の円柱部材41を所定間隔を設けて複数本を並べて形成する。
また、図7(c)に示す連続円柱壁51の場合には、断面形状が円形状の円柱部材42を少しの寸法だけオーバラップするように複数本を並べて形成する。
更に、図7(d)に示す併用壁61の場合には、例えば、実施例1〜3に開示される連続壁62の中間部位に不連続円柱壁63を配置する、いわゆる併用した壁構造に形成する。
なお、前記円柱部材41、42、そして、不連続円柱壁63について説明すると、「深層混合処理」によって形成する際に、例えば土砂を掘削しつつ、土砂内にセメント系のセメントミルクを注入して撹拌を行い、複数本の円柱部材を形成するものである。
【0040】
これにより、壁構造を上述した前記不連続円柱壁41や前記連続円柱壁51、前記併用壁61とすることができ、構築物を構築する際に、地層状態に応じて適宜選択することができ、汎用性が大となって作業性の向上やコスト低減などを図ることが可能である。
また、前記変位抑止壁を備える構築物に、この発明の実施例5の構成を有する前記不連続円柱壁41や前記連続円柱壁51、前記併用壁61を使用しても、未改良層などの地下水の流れに何ら不具合が生ずることがない。
【実施例6】
【0041】
図8はこの発明の実施例6を示すものである。
【0042】
この実施例6の特徴とするところは、壁構造を改良する際に、連続円柱壁71の強度を向上させる構成とした点にある。
【0043】
すなわち、前記連続円柱壁71を、断面形状が円形状の円柱部材72を少しの寸法だけオーバラップするように複数本を並べて形成する際に、連続円柱壁71の両端部71aに円柱部材72を複数整列させる。
詳述すれば、前記連続円柱壁71の両端部71aを形成する場合に、中心部分に位置する基礎列部分の第1円柱部材72−1に対して、この第1円柱部材72−1を両側、つまり、盛土縦断方向Aの前後側を挟むように第2、第3円柱部材72−2、72−3を形成するものである。
【0044】
これにより、壁構造を両端部71aが第2、第3円柱部材72−2、72−3によって複数列となった前記連続円柱壁71とすることができ、構築物を構築する際に、連続円柱壁71の周辺部位に位置する軟弱地盤との接触面積を増加させることができ、連続円柱壁71の摩擦力が増加し、沈下が減少する。
しかも、前記連続円柱壁71の全領域を複数列とする必要がないため、作業性の向上やコスト低減などを図ることも可能である。
また、前記変位抑止壁を備える構築物に、この発明の実施例6の前記連続円柱壁71を使用すれば、前記連続円柱壁71の両端部71aが絞りとして機能するため、前記連続円柱壁71間の土砂をより堅固に保持できるとともに、未改良層などの地下水の流れを阻害しない。
【0045】
なお、この発明は上述実施例1〜6に限定されるものではなく、種々の応用改変が可能である。
【0046】
例えば、この発明において、前記壁の外端部に対峙するように配置する少なくとも1列以上の変位抑止壁に関して、実施例1では3列とする一方、実施例2では1列として説明したが、変位抑止壁を2列あるいは4列以上の特別構成とすることも可能である。
さすれば、前記変位抑止壁による上述した著効を奏することが可能である。
【0047】
また、この発明の実施例1においては、変位抑止壁を3列とした際に、第1〜第3の変位抑止壁列の深さを漸次相違させ、外側に位置する第3の変位抑止壁列の下端を支持層まで到達する構成として説明したが、第3の変位抑止壁列の下端が支持層に接触せずに支持層の近傍まで延びる構成や、第3の変位抑止壁列以外の第2および/または第3の変位抑止壁列の下端が支持層に接触する構成、そして、第1〜第3の変位抑止壁列の下端の全てが支持層に接触する構成などの特別構成とすることも可能である。
【0048】
更に、この発明の実施例6においては、壁構造の改良に関して説明したが、説明した構成を変位抑止壁に応用する特別構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 壁式地盤改良工法によって構築される構築物
2 支持層
3 未改良層
4 壁
4−1 第1壁
4a−1 外端部
4−2 第2壁
4a−2 外端部
4−3 第3壁
4a−3 外端部
5 壁式改良層
6 浅層改良層
7 盛土
8 変位抑止壁
8A 第1の変位抑止壁列
8B 第2の変位抑止壁列
8C 第3の変位抑止壁列
9−1 第1間隙部
9−2 第2間隙部
10−1 第1隙間
10−2 第2隙間
A 盛土縦断方向
B 盛土横断方向
S 所定距離
【要約】
【課題】本発明は、変位抑止壁によって構築物の盛土及び周辺部位の沈下を抑制して軟弱地盤の改良を効果的に果たし得る変位抑止壁を備える壁式地盤改良工法を実現することを目的としている。
【解決手段】このため、固い層からなる支持層上に設計水準に応じて未改良層を残し、この未改良層上に盛土縦断方向に対して直交するように所定間隔毎に複数の壁を配置して壁式改良層を形成し、壁式改良層上に浅層改良層を形成した後に、浅層改良層上に盛土を行う壁式地盤改良工法において、壁の盛土横断方向の外端部近傍には、構成する部材間に隙間を有する少なくとも1列以上の変位抑止壁を配置している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9