(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材層及び粘着剤層を含む積層体からなり、前記基材層及び前記粘着剤層のうちの少なくとも一方がヘッドライトカバーの表面を溶解する溶剤を含有するヘッドライト用貼付シートを、ヘッドライトカバーの表面に貼り付けることを特徴とするヘッドライトカバーのクリーニング方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等に記載されたような液状の薬剤を使用してヘッドライトカバーの表面をクリーニングした場合、ヘッドライトカバーの透明性の回復効果は一時的であり、長期間に渡ってヘッドライトカバーの透明性を維持することが難しいとの課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような実情の鑑み、ヘッドライトカバーの黄ばみやくもりを除去して、ヘッドライトカバーの透明性を回復させることができるとともに、回復したヘッドライトカバーの透明性を長期間に渡って維持することができるヘッドライト用貼付シートを提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明のヘッドライト用貼付シートは、樹脂製の基材層と、上記基材層の一方に面に形成された溶剤含有層と、上記基材層の他方の面に積層された粘着剤層と、上記溶剤含有層の上記基材層と反対側に積層されたオーバーコート層とを有し、上記溶剤含有層は、ヘッドライトカバーの表面を溶解する溶剤を含有しており、ヘッドライトカバーの表面に貼り付けて使用することを特徴とする。
【0008】
このようなヘッドライト用貼付シートは、基材層の一方の面にヘッドライトカバーの表面を溶解する溶剤を含有する溶剤含有層が形成されているため、上記ヘッドライト用貼付シートをヘッドライトカバーの表面に貼り付けることにより、ヘッドライトカバーの表面の黄ばみやくすみを除去し、透明性を回復させるクリーニングを行うことができる。
この理由については次のように推測している。
上記ヘッドライト用貼付シートにおいて、基材層の一方の面に形成された溶剤含有層はその一部又は全部が基材層に含浸しており、このようなヘッドライト用貼付シートをヘッドライトカバーの表面に貼り付けた場合、上記溶剤含有層に含まれた溶剤は、徐々に基材層及び粘着剤層を通り抜けてヘッドライトカバーの表面まで浸透し、ヘッドライトカバーの表面を溶解する。そして、ヘッドライトカバーの表面が溶解されること、及び、ヘッドライトカバーの表面にヘッドライト用貼付シートが貼り付けられていることによって、ヘッドライトカバーの表面に劣化によって生じた、黄ばみやくすみを引き起こしている凹凸が解消されるともに、ヘッドライトカバーの表面形状に柔軟な粘着剤層が追従するため、ヘッドライトカバーの透明性が回復し、ヘッドライトカバーの表面がクリーニングされると推測している。
【0009】
また、上記ヘッドライト用貼付シートでは、上記溶剤含有層の外側(ヘッドライトカバーに貼り付けた際にヘッドライトカバーと反対側)にオーバーコート層が積層されている。
そのため、上記ヘッドライト用貼付シート(溶剤含有層)に含有される溶剤は、上記ヘッドライト用貼付シートの外側に拡散しにくく、上記ヘッドライト用貼付シートは、長期間に渡って溶剤を含有しつづけることができ、上述した作用効果によるクリーニング性能を長期間に渡って維持し続けることができる。
【0010】
上記ヘッドライト用貼付シートにおいて、上記ヘッドライトカバーは、ポリカーボネート樹脂製のヘッドライトカバーであることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂は、ヘッドライトカバーの材質として汎用されており、かつ、上記ヘッドライト用貼付シートによって、ヘッドライトカバーに生じた黄ばみやくもりをクリーニングするのに特に適した材質である。
【0011】
上記ヘッドライト用貼付シートにおいて、上記溶剤含有層が含有する溶剤は、イソホロンであることが好ましい。
イソホロンは、ヘッドライトカバーの表面を適度に溶解することができる溶剤として好適であり、特にポリカーボネート樹脂製のヘッドライトカバーの表面を溶解する溶剤として適している。また、上記イソホロンは、沸点が高いためヘッドライト用貼付シートから拡散しにくく、長期間に渡って本発明の効果を持続することができる。
【0012】
上記ヘッドライト用貼付シートにおいて、上記基材層は、塩化ビニル系樹脂組成物からなることが好ましい。
塩化ビニル系樹脂組成物からなるフィルム(シート)は、透明性に優れるためヘッドライトからの光の透過を阻害することが無く、柔軟性に優れるためヘッドライトカバーの表面形状に対する追従性に優れるとともに、良好な耐候性を有する。
【0013】
本発明のヘッドライトユニットは、本発明のヘッドライト用貼付シートが貼り付けられたヘッドライトカバーを備えることを特徴とする。
本発明のヘッドライトユニットでは、ヘッドライトカバーの表面に上記のヘッドライト用貼付シートが貼り付けられているため、ヘッドライトカバーの透明性を長期間に渡って維持することができる。
【0014】
本発明に係る第1のヘッドライトカバーのクリーニング方法は、ヘッドライトカバーの表面に、本発明のヘッドライト用貼付シートを貼り付けることを特徴とする。
上記第1のヘッドライトカバーのクリーニング方法によれば、本発明のヘッドライト用貼付シートをヘッドライトカバーの表面に貼り付けるため、ヘッドライトカバー表面の黄ばみやくすみを除去し、ヘッドライトカバーの透明性を回復し、更には回復した透明性を長期間に渡って維持することができる。
【0015】
本発明に係る第2のヘッドライトカバーのクリーニング方法は、基材層及び粘着剤層を含む積層体からなり、上記基材層及び上記粘着剤層のうちの少なくとも一方がヘッドライトカバーの表面を溶解する溶剤を含有するヘッドライト用貼付シートを、ヘッドライトカバーの表面に貼り付けることを特徴とする。
上記第2のヘッドライトカバーのクリーニング方法では、上記ヘッドライト用貼付シートをヘッドライトカバーの表面に貼り付けることによりヘッドライトカバーの表面をクリーニングすることができる。
この理由については、上記と同様、上記基材層及び/又は粘着剤層が含有する溶剤によってヘッドライトカバーの表面が溶解されること、及び、ヘッドライトカバーの表面にヘッドライト用貼付シートを貼り付けることによって、ヘッドライトカバーの表面に劣化によって生じた、黄ばみやくすみを引き起こしている凹凸が解消されるともに、ヘッドライトカバーの表面形状に柔軟な粘着剤層が追従するためと推測している。
また、上記第2のヘッドライトカバーのクリーニング方法では、基材層がヘッドライトカバーの表面に貼り付けられるため、長期間に渡ってクリーニングされた状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヘッドライトカバーの表面をクリーニングしてヘッドライトカバーの透明性を確保し、性能及び美観を向上させるとともに、その状態を長期間渡って維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明のヘッドライト用貼付シートの一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、ヘッドライト用貼付シート10は、樹脂製の基材層11と、基材層11の一方の面(図中、上面)に形成された溶剤含有層12と、基材層11の他方の面(図中、下面)に積層された粘着剤層13と、溶剤含有層12の基材層11と反対側(図中、上側)に積層されたオーバーコート層14と、粘着剤層13の基材層11と反対側(図中、下側)に積層された剥離紙15とを備える。
また、オーバーコート層14は、第2基材層14aと第2粘着剤層14bとからなる。
【0019】
基材層11は、樹脂製のフィルムであり、透明であればその材質は特に限定されない。
基材層11の材質としては、例えば、塩化ビニル系樹脂組成物、PET等を含有するポリエステル系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物等が挙げられる。
これらのなかでは、塩化ビニル系樹脂組成物が好ましい。その理由は、上述した通りである。
【0020】
上記塩化ビニル系樹脂組成物としては、例えば、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有する樹脂組成物が挙げられる。上記塩化ビニル系樹脂組成物は、更に必要に応じて、紫外線吸収材、安定剤、滑剤、改質剤、充填剤等の塩化ビニル系樹脂組成物に一般的に配合される各種添加剤を基材層11の透明性を損ねない範囲で含有していてもよい。
上記塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルとこれと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。
上記可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物に一般的に配合される可塑剤を用いることができる。
【0021】
粘着剤層13としては、透明性を有し、基材層11をヘッドライトカバーに貼り付けることができるものであれば特に限定されることなく従来公知の粘着剤からなるものを用いることができる。粘着剤層13の具体例としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤等からなるものが挙げられる。
【0022】
本発明では、粘着剤層13が片面に積層された基材層11として、透明樹脂フィルム及び粘着剤層の積層体の市販品を用いることもできる。
上記市販品の具体例としては、例えば、アイケーシー社製の商品名「ルミガード」、リンテック社製、商品名「LAGプロテクト」等が挙げられる。これらのなかでは、ルミガード L−250(アイケーシー社製)、LAGプロテクト G−011PV50E(リンテック社製)が好適である。
その他、例えば、インクジェットメディア用オーバラミネートフィルムとして使用されている商品を用いることもできる。
【0023】
溶剤含有層12は、例えば、溶剤を含有するインキ組成物を用いて形成することができる。
上記インキ組成物としては、例えば、主剤及び溶剤を含有し、更に必要に応じて、柔軟剤、紫外線吸収剤、硬化剤、増白剤(ブルーイング剤)等の各種添加を含有するものが挙げられる。
【0024】
上記主剤としては、例えば、透明な溶剤型インキが挙げられ、特にスクリーン印刷用の透明な溶剤型グロスインキが好ましい。このような溶剤型インキとしては、各種市販品を使用することができる。
上記市販品の具体例としては、例えば、SHメジウム(十条ケミカル社製、ビニールインキ H型ハーフトーン)、SG700メジウム(セイコーアドバンス社製)等が挙げられる。
【0025】
上記溶剤としては、ヘッドライトカバーの表面を溶解することができるものであれば特に限定されず、ヘッドライトカバーの材質を考慮して適宜選択すればよい。
上記溶剤としては、沸点の高い溶剤が好ましい。沸点の高い溶剤は、シート外へ拡散しにくく、上記ヘッドライト用貼付シートがより長期間に渡って効果を持続することができるからである。
【0026】
上記溶剤の具体例としては、上記ヘッドライトカバーがポリカーボネート樹脂製又はアクリル樹脂製のヘッドライトカバーである場合には、例えば、イソホロン、酢酸メチル、酢酸ブチル、トルエン、アセトン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサン、高沸点エステル系溶剤等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
これらのなかではイソホロンが好ましい。イソホロンは、溶剤型インキにおいてリターダーとしても使用される溶剤であり、沸点が高く、本発明の効果を長期間に渡って確保することができるからである。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂製のヘッドライトカバーとは、ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹脂組成物を用いて製造されたヘッドライトカバーをいい、アクリル樹脂製のヘッドライトカバーとは、アクリル樹脂を主成分とする樹脂組成物を用いて製造されたヘッドライトカバーをいう。
【0027】
上記インキ組成物において、上記溶剤の配合量は、上記主剤100重量部に対して、10〜50重量部が好ましく、20〜40重量部がより好ましい。
この範囲であれば、溶剤含有層を形成しやすく、また、長期間に渡ってヘッドライト用貼付シートが溶剤を含有するのに適しているからである。
【0028】
上記柔軟剤及び上記紫外線吸収剤としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、スクリーン印刷用の溶剤型インキに使用される柔軟剤や紫外線吸収剤を好適に使用することができる。
上記硬化剤としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、スクリーン印刷用の溶剤型インキに使用される硬化剤を主剤の種類に応じて適宜選択して使用すればよい。
上記増白剤としては、例えば、青色系顔料を使用した光学的増白剤や蛍光増白剤等の従来公知の増白剤を用いることができる。
【0029】
溶剤含有層12は、例えば、上記インキ組成物を基材層11の片面に印刷することにより形成することができる。
ここで、インキ組成物を印刷する方法としては特に限定されないが、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷方法を採用することができる。
これらのなかでは、スクリーン印刷が好ましい。基材層11中に溶剤含有層12の一部又は全部が含浸するように印刷するのに適した印刷方法であり、また、溶剤型インキを繰り返し重ねて印刷するのも容易だからである。
なお、
図1において、溶剤含有層12は、基材層11上に積層されたように描画されているが、本発明のヘッドライト用貼付シート10では、通常、溶剤含有層12の少なくとも一部が基材層11に含浸(吸収)された状態で形成されている。
【0030】
オーバーコート層14は、第2基材層14aと第2粘着剤層14bとからなる。
第2基材層14aとしては、基材層11に使用できる透明樹脂フィルムと同様のものを用いることができる。
第2粘着剤層14bとしては、粘着剤層13と同様のものを用いることができる。
よって、オーバーコート層14としては、アイケーシー社製の「ルミガード」、リンテック社製、「LAGプロテクト」等の透明樹脂フィルム及び粘着剤層の積層体の市販品を使用することもできる。
ヘッドライト用貼付シート10において、基材層11及び第2基材層14aは同一の材料からなるものであっても良いし、異なる材料からなるものであっても良い。また、粘着剤層13及び第2粘着剤層14bは同一の材料からなるものであっても良いし、異なる材料からなるものであっても良い。
更に、上記オーバーコート層は必ずしも第2粘着剤層を備えている必要はなく、例えば、熱圧着可能な透明樹脂フィルムが、溶剤含有層12が形成された基材層11に熱圧着されてなる層や、硬化性樹脂組成物を塗布した後、硬化させて形成された層であってもよい。
【0031】
このような構成を備えたヘッドライト用貼付シート10は、剥離紙15を剥離した後、粘着剤層13側をヘッドライトカバー(図示せず)に貼り付けて使用する。
上記ヘッドライトカバーは、アクリル樹脂製やポリカーボネート樹脂製等の透明樹脂製のヘッドライトカバーである。本発明のヘッドライト用貼付シートによってクリーニングされるヘッドライトカバーとしては、ポリカーボネート樹脂製のヘッドライトカバーが好ましい。
ヘッドライト用貼付シート10の厚さ(剥離紙15を剥離した状態での厚さ)は、特に限定されないが、150〜200μm程度が好ましい。
【0032】
上記ヘッドライト用貼付シートが貼り付けられたヘッドライトカバーは、ヘッドライトカバーがクリーニングされることにより透明性を回復し、その状態が長期間に渡って維持される。そのため、ヘッドライト用貼付シートが貼り付けられたヘッドライトカバーは性能及び美観ともに良好となる。
【0033】
上記ヘッドライト用貼付シートが貼り付けられたヘッドライトカバーを備えたヘッドライトユニットも本発明の1つである。
また、上記ヘッドライト用貼付シートをヘッドライトカバーに表面に貼り付けることによるヘッドライトカバーのクリーニング方法も本発明の1つ(第1のヘッドライトカバーのクリーニング方法)である。
【0034】
次に、上記ヘッドライト用貼付シートを製造する方法について図面を参照しながら説明する。ここでは、インキ組成物をスクリーン印刷で印刷して上記溶剤含有層を形成する場合を例に説明する。
図2(a)〜(c)は、本発明のヘッドライト用貼付シートの製造工程の一例を説明するための断面図である。
図3(a)〜(c)は、
図2に示した製造工程の一部を説明するための斜視図である。
【0035】
(1)まず、
図2(a)に示すような、基材層11の片面に粘着剤層13及び剥離紙15が積層された積層体21を作製する。
具体的には、例えば、カレンダー成形や押出成形等の公知の方法で樹脂フィルム(基材層11)を作製するとともに、これとは別に剥離紙15上に粘着剤層13を形成しておき、この粘着剤層13を剥離紙15ごと樹脂フィルム(基材層11)に貼り付けることにより作製することができる。
また、積層体21としては、上述した通り、市販品を用いることもできる。
【0036】
(2)次に、
図2(b)に示すように、積層体21を構成する基材層11の粘着剤層13が積層された側と反対側の面に溶剤含有層12を形成する。
溶剤含有層12の形成は、まず、
図3(a)に示すように、積層体21(基材層11、粘着剤層13、剥離紙15)の上面にスクリーン28を有する刷版29をセットし、
図3(b)に示すように、インキ組成物30をスクリーン28上に供給してスクリーン印刷を行うことにより、インキ組成物30を基材層11に印刷する。
このとき、スクリーン印刷で用いる刷版29は、このインキ組成物30の標準使用規格よりも粗いメッシュのスクリーン28を具備していることが好ましい。これにより、基材層11上にかなり多めのインキ組成物30が供給される状態となり、その結果、インキ組成物が基材層に含浸されやすくなる。そして、インキ組成物(溶剤)が含浸された基材層は柔軟性に富むこととなる。
なお、標準使用規格とは、溶剤型インキ等に応じて販売会社により推奨されているメッシュサイズをいう。
【0037】
例えば、インキ組成物として、SHメジウム(十条ケミカル社製、ビニールインキH型ハーフトーン)、及び、ビニールリターダー(十条ケミカル社製、イソホロンを含む遅乾剤)を含有するインキ組成物を用いる場合には、目開きが80〜120メッシュのスクリーンを有する刷版を用いてスクリーン印刷を行えば良い。
なお、SHメジウムの標準使用規格は200〜300メッシュ程度が適当とされている。
【0038】
また、インキ組成物30をスクリーン印刷にて基材層11に印刷する場合、インキ組成物30は、1回のみ印刷しても良いし、連続して複数回(例えば、2回)印刷しても良い。
連続して複数回印刷することにより、より多くのインキ組成物30を基材層11上に供給することができる。ただ、インキ組成物30の印刷は、多く繰り返すほどよいというものでもなく、繰り返し回数が多くなると、形成した溶剤含有層12に割れ(クラック)が発生する等の不都合が生じるおそれがある。
このようなことから、インキ組成物30をスクリーン印刷で印刷することにより溶剤含有層12を形成する場合、インキ組成物30の連続塗布回数は2回程度が好ましい。
【0039】
更に、インキ組成物30の塗布後には、所定時間の養生を行ってインキ組成物30の乾燥を待つ。この乾燥は、自然乾燥であってもよいが、
図3(c)に示すように、加熱装置26を用いて加熱を施してもよい。この場合の加熱温度は、基材層やインキ組成物等の組成に応じて適宜設定すればよく、例えば、30〜100℃程度とすることができる。上記加熱温度の好ましい下限は60℃であり、好ましい上限は80℃である。
また、加熱時間も適宜選択すればよく、例えば、15分〜60分程度とするのがよい。
【0040】
本工程において、インキ組成物30を印刷し、乾燥させる処理は、1回のみ行っても良いし、印刷・乾燥処理を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返してもよい。
このように、インキ組成物30の塗布及び乾燥サイクルを複数回繰り返すことで、基材層11へのインキ組成物の塗布量を充分に確保することができる。
【0041】
本工程では、このような方法を用いて溶剤含有層12を基材層11の片面に形成することにより、溶剤含有層の一部又は全部が、基材層11に含浸された状態で形成される。そのため、本発明のヘッドライト用貼付シートは、ヘッドライトカバーの表面を溶解させるための溶剤を基材層内に含有したものとなる。
【0042】
(3)次に、
図2(c)に示すように、溶剤含有層12が形成された基材層11上に、更にオーバーコート層14を積層する。
オーバーコート層14の形成は、粘着剤層14bを介して樹脂フィルム14を貼り付けることにより行えば良く、例えば、上記(1)の工程で使用した積層体21と同様の積層体を、剥離紙を除去した後、溶剤含有層12が形成された基材層11上に貼り付ければ良い。
勿論、上記オーバーコート層は他の方法で積層しても良く、例えば、粘着剤をバーコーターによる塗布等の公知の塗布方法を用いて塗布した後、樹脂フィルムを貼り付けて積層しても良い。
このような工程(1)〜(3)の工程を経ることにより、本発明のヘッドライト用貼付シートを製造することができる。
【0043】
次に、本発明に係る第2のヘッドライトカバーのクリーニング方法について説明する。
上記第2のヘッドライトカバーのクリーニング方法は、上記の通り、基材層及び粘着剤層を含む積層体からなり、上記基材層及び上記粘着剤層のうちの少なくとも一方がヘッドライトカバーの表面を溶解する溶剤を含有するヘッドライト用貼付シートを、ヘッドライトカバーの表面に貼り付けることを特徴とする。
このようなヘッドライト用貼付シート(以下、第2のヘッドライト用貼付シートともいう)は、基材層及び/又は粘着剤層がヘッドライトカバーの表面を溶解する溶剤を含有しているため、既に説明した通り、ヘッドライトの表面をクリーニングし、その状態を維持することができる。
【0044】
上記第2のヘッドライト用貼付シートにおいて、上記基材層が溶剤を含む場合、溶剤を含有する基材層としては、例えば、上述したような基材層11にスクリーン印刷等の印刷方法を用いて溶剤含有層12が形成された基材層11と同様のもの等が挙げられる。
また、上記第2のヘッドライト用貼付シートにおいて、上記粘着剤層が溶剤を含む場合、溶剤を含有する粘着剤層としては、例えば、ポリマー成分及び溶剤を含有する粘着剤組成物を剥離紙等に塗布し、乾燥させて粘着剤層を形成する際に、溶剤としてヘッドライトカバーの表面を溶解する溶剤(例えば、ポリカーボネート樹脂を溶解する溶剤)を配合し、この溶剤が粘着剤層中に残留するような乾燥条件で上記粘着剤組成物を乾燥させて形成した粘着剤層等を用いることができる。
【0045】
上記第2のヘッドライト用貼付シートにおいて、上記ヘッドライトカバーの表面を溶解する溶剤は、上記基材層と上記粘着剤層のいずれか一方にのみ形成されていても良いし、両方に形成されていても良い。
また、上記第2のヘッドライト用貼付シートは、
図1に示したヘッドライト用貼付シート10のように、基材層の粘着剤層と反対側にオーバーコート層が積層されていても良い。
この場合、第2のヘッドライト用貼付シートに含有された溶剤が外側により拡散しにくくなる。
【0046】
上記第2のヘッドライト用貼付シートを構成する基材層や粘着剤層、オーバーコート層の材質としては、必要に応じて、溶剤を含有している以外は、本発明のヘッドライト用貼付シートと同様のものを用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明について実施例を掲げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
ここでは、本発明のヘッドライト用貼付シートを作製し、そのクリーニング性能を評価した。
【0048】
(実施例1)
(1)インキ組成物Aの調製
SHメジウム(十条ケミカル社製、ビニールインキ H型ハーフトーン)100重量部に対して、硬化剤(十条ケミカル社製、JA−940)及びイソホロンを含有する溶剤(十条ケミカル社製、ビニールリターダー)30重量部を添加し、均一に混合してインキ組成物Aを調製した。
【0049】
(2)ヘッドライト用貼付シートAの作製
まず、基材層11と粘着剤層13と剥離紙15との積層体21である、ルミガード L−250(アイケーシー社製)を用意し、上記基材層11の粘着剤層13が積層された側と反対側の面に、スクリーン印刷によりインキ組成物Aを印刷した。
ここでは、刷版29が有するスクリーン28として目開き100メッシュのスクリーン28を使用し、スキージ24としてパワースキージGを使用してスクリーン印刷を行った。
また、スクリーン印刷は、連続2回印刷で行った。
その後、加熱装置26を用いた80℃、30分間の条件での加熱・乾燥処理を行い、
溶剤含有層12を形成した(
図2(b)、
図3(a)〜(c)参照)。
【0050】
次に、上記の工程で形成した溶剤含有層12上にオーバーコート層14を形成した。
ここでは、剥離紙を剥がしたルミガード L−250(アイケーシー社製)を、溶剤含有層12が形成された基材層11に貼り合わせ、その後、60℃、30分の条件で加熱することにより、ルミガード L−250をなじませオーバーコート層14を形成した(
図2(c)参照)。
このような工程を経ることによりヘッドライト用貼付シートAを完成した。
【0051】
(実施例2)
(1)インキ組成物Bの調製
SHメジウム(十条ケミカル社製、ビニールインキ H型ハーフトーン)100重量部に対して、柔軟剤(十条ケミカル社製、JA−704)10重量部、硬化剤(十条ケミカル社製、JA−940)及びイソホロンを含有する溶剤(十条ケミカル社製、ビニールリターダー)30重量部を添加し、均一に混合してインキ組成物Bを調製した。
【0052】
(2)ヘッドライト用貼付シートBの作製
インキ組成物として、インキ組成物Aに代えてインキ組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様にしてヘッドライト用貼付シートを作製し、ヘッドライト用貼付シートBを作製した。
【0053】
(性能評価1)
実施例1、2で製造したヘッドライト用貼付シートA、Bを自動車(トヨタ製、bB)のヘッドライトカバー(ポリカーボネート樹脂製)の表面に貼り付け、貼り付け前後のヘッドライトカバーの状態を目視観察した。
ここでは、
図4に示すように、ヘッドライト用貼付シートA及びヘッドライト用貼付シートBのそれぞれを、適切なサイズに裁断した後、剥離紙を剥がし、自動車の左側(運転席側から見て)のヘッドライトカバーに両者の間に少しの隙間を設けて貼り付けた。
なお、各ヘッドライト用貼付シートを貼り付ける前に、ヘッドライトカバーの表面の汚れを脱脂剤で除去した。但し、ヘッドライトクリーナーを用いた処理を施さなかった。
【0054】
その結果、ヘッドライト用貼付シートAやヘッドライト用貼付シートBを貼り付けることにより、ヘッドライトカバーの黄ばみやくすみが解消され、透明性が回復し、その状態が維持されることが観察された。
図5には性能評価1におけるヘッドライトカバーの写真を示す。
図5において、(a)は、ヘッドライト用貼付シートを貼り付ける直前のヘッドライトカバーの写真であり、(b)は、ヘッドライト用貼付シートを貼り付けた後、30日間経過後のヘッドライトカバーの写真である。
【0055】
(性能評価2)
実施例2で製造したヘッドライト用貼付シートBを自動車(BMW製、5シリーズ、E39ワゴン)のヘッドライトカバー(ポリカーボネート樹脂製)の表面に貼り付け、貼り付け前後のヘッドライトカバーの状態を目視観察した。
ここでは、ヘッドライト用貼付シートBを、適切なサイズに裁断した後、剥離紙を剥がし、自動車の左側(運転席側から見て)のヘッドライトカバーの全体に貼り付けた。
また、本評価では、ヘッドライトカバーの表面を市販のヘッドライトクリーナー(カーメイト社製、ヘッドライト磨き)で一度拭いた後、ヘッドライト用貼付シートを貼り付けた。
【0056】
その結果、ヘッドライト用貼付シートBを貼り付けることにより、ヘッドライトカバーの黄ばみやくすみが解消され、透明性が回復することが観察された。
図6には性能評価2におけるヘッドライトカバーの写真を示す。
図6において、(a)は、ヘッドライト用貼付シートを貼り付ける前(ヘッドライトクリーナーで拭いた後)のヘッドライトカバーの写真であり、(b)は、(a)の部分拡大図であり、(c)は、ヘッドライト用貼付シートを貼り付けた直後のヘッドライトカバーの拡大写真であって、(b)と同じ部分の写真である。
【0057】
(実施例3)
まず、インク組成物Cを下記の方法で調製した。
イソホロンを含有する溶剤(十条ケミカル社製、ビニールリターダー)に代えて、ビニール標準溶剤(十条ケミカル社製)を使用した以外は実施例1と同様にしてインク組成物Cを調製した。
その後、インク組成物Aに代えて、インク組成物Cを使用した以外は実施例1と同様にしてヘッドライト用貼付シートCを作製した。
【0058】
(比較例1)
インク組成物Aの印刷を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてヘッドライト用貼付シートDを作製した。
即ち、2枚のルミガード L−250(アイケーシー社製)同士を直接貼り合わせてヘッドライト用貼付シートDを作製した。
【0059】
(性能評価3)
比較例1、実施例1及び3のそれぞれで製造したヘッドライト用貼付シートをヘッドライトカバー(ポリカーボネート樹脂製)の表面に貼り付け、貼り付け後のヘッドライトカバーの状態を目視観察した。
ここでは、
図7に示したように、適切なサイズに裁断したヘッドライト用貼付シートD、C及びAを各2枚ずつ、左から順にヘッドライト用貼付シート同士の間に少しの隙間を設けつつ、並べて貼り付けた。
その結果、ヘッドライト用貼付シートC、Aを貼り付けることにより、ヘッドライトカバーの黄ばみやくすみが解消され、透明性が回復することが観察された。また、その効果は、ヘッドライト用貼付シートAを貼り付けた場合の方が顕著であることも観察された。
図7には、性能評価3において、ヘッドライト用貼付シートD、C及びAが貼り付けられたヘッドライトカバーの写真を示す。
【課題】 ヘッドライトカバーの表面をクリーニングしてヘッドライトカバーの透明性を確保し、性能及び美観を向上させるとともに、その状態を長期間渡って維持することができるヘッドライト用貼付シートを提供すること。
【解決手段】 樹脂製の基材層と、前記基材層の一方に面に形成された溶剤含有層と、前記基材層の他方の面に積層された粘着剤層と、前記溶剤含有層の前記基材層と反対側に積層されたオーバーコート層と、を有し、前記溶剤含有層は、ヘッドライトカバーの表面を溶解する溶剤を含有しており、ヘッドライトカバーの表面に貼り付けて使用するヘッドライト用貼付シート。