(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シート幅方向と交差する断面で見た場合、前記シートが前記当接面に当接する際に前記シートの先端部と前記当接面とがなす角度をθ1、前記リブ部材の前記傾斜面と前記パッド面とがなす角度をθ2とした場合、θ1>θ2の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
前記シート幅方向と交差する断面で見た場合、前記傾斜面は、前記パッド面と交差するとともに、前記搬送方向下流側に向かって前記パッド面よりも更に先下がりに延設されることを特徴とする請求項1または2に記載の給紙装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された給送装置では、シートがニップ部に進入する際に、シートの先端が捌きパッドに衝突しシートが座屈することを防止するために、ガイド機能を備えた可撓性のフィルム部材が配置される。シートはフィルム部材に沿って、ニップ部に進入される。この場合、フィルム部材が配置される分だけ、給紙装置の部品点数が増加され、給紙装置のコストアップがもたらされる。また、給紙装置の組立時に、給紙装置にフィルム部材を取付ける作業が必要とされる。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成でシートを安定して給送することが可能な給紙装置、およびこれを備える画像読取装置、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る給紙装置は、シートが積載されるシート積載部と、前記シート積載部から延設され、前記シートが所定の搬送方向に搬送されるシート搬送路と、前記シート積載部に対向して前記シート搬送路に配置され、回転される周面を備え、前記シートを搬送する給紙ローラーと、前記給紙ローラーの前記周面に対向して配置され、前記シートの搬送方向と交差するシート幅方向に沿って前記周面に連続的に接触し、前記周面との間で前記シートが進入されるニップ部を形成するパッド面を備える給紙パッドと、前記給紙パッドよりも前記搬送方向上流側に配置され、前記パッド面よりも隆起した平面であって、前記シート積載部から送り出された前記シートの先端部が当接する当接面を備えた支持部材と、前記シート幅方向において、前記給紙パッドの両端部に配置され、かつ、前記当接面から前記搬送方向下流側に向かって先下がりに延設される傾斜面を備えた一対のリブ部材と、を有し、前記支持部材は、前記当接面よりも前記搬送方向下流側に前記当接面に対して段差をもって配置され、前記給紙パッドが固定される支持面を備え、前記シート幅方向において前記支持面は前記給紙パッドよりも広幅であり、前記当接面の前記シート幅方向の両端部は、前記給紙パッドの前記搬送方向上流側端部よりも前記搬送方向下流側に延びるように配置され、前記一対のリブ部材の前記傾斜面は、前記当接面と前記支持面とを連設するように延設され、前記ニップ部よりも前記搬送方向上流側において前記支持面に接続されていることを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、シート積載部から送り出されたシートの先端部は、まず支持部材の当接面に当接される。更に、シートの先端部は、リブ部材の傾斜面に案内されながら、給紙パッドのパッド面に当接される。リブ部材の傾斜面は、当接面からシート搬送方向下流側に向かって先下がりに延設される。このため、シートの先端部がパッド面にスムーズに誘導される。また、シート積載部から送り出されたシートの先端部が直接パッド面に衝突することが抑止され、シートが座屈することが抑制される。
【0009】
上記の構成において、前記シート幅方向と交差する断面で見た場合、前記シートが前記当接面に当接する際に前記シートの先端部と前記当接面とがなす角度をθ1、前記リブ部材の前記傾斜面と前記パッド面とがなす角度をθ2とした場合、θ1>θ2の関係を満たすことが望ましい。
【0010】
本構成によれば、当接面に進入角度θ1をもって当接したシートの先端部が、θ1よりも小さな進入角度θ2をもってパッド面に当接される。このため、パッド面に当接する際にシートに加わる負荷が好適に低減される。また、ニップ部に向かってシートが安定して搬送される。
【0011】
上記の構成において、前記シート幅方向と交差する断面で見た場合、前記傾斜面は、前記パッド面と交差するとともに、前記搬送方向下流側に向かって前記パッド面よりも更に先下がりに延設されることが望ましい。
【0012】
本構成によれば、給紙パッドよりもシート幅方向外側の領域において、シートの先端部が、パッド面よりも下方の領域に進入することが可能となる。このため、シートの先端部に負荷がかかることが抑止される。
【0013】
上記の構成において、前記リブ部材は前記段差部よりも前記搬送方向下流側に、前記支持部材に一体的に配置されることが望ましい。
【0014】
本構成によれば、当接面に当接したシートの先端部は、リブ部材によって、給紙パッドの上流側端部と段差部との隙間の上方を超えるように、パッド面に向かって誘導される。このため、シートの先端部が、給紙パッドと段差部との隙間に進入することが抑止される。この結果、シートが座屈することが好適に抑制される。
【0015】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、上記に記載の給紙装置と、前記給紙ローラーによって搬送された前記シート上に画像を形成する画像形成部と、を有することを特徴とする。
【0016】
本構成によれば、リブ部材の傾斜面によって、シートの先端部がパッド面にスムーズに誘導される。また、シート積載部から送り出されたシートの先端部が直接パッド面に衝突することが抑止され、シートが座屈することが抑制される。この結果、画像形成部にシートが安定して搬送され、シート上に好適に画像が形成される。
【0017】
上記の構成において、前記シート積載部は、手差しトレイであることが望ましい。
【0018】
本構成によれば、手差しトレイに積載されたシートが、画像形成部に向かって安定して搬送される。
【0019】
また、本発明の他の局面に係る画像読取装置は、上記に記載の給紙装置と、前記シート搬送路に対向して配置され、前記シート上の原稿画像を読み取る読取手段と、を有する。
【0020】
本構成によれば、原稿シートが安定して給紙され、読取手段によって原稿画像が好適に読み取られる。
【0021】
また、本発明の他の局面に係る画像形成装置は、上記に記載の画像読取装置と、前記読取手段によって読み取られた前記原稿画像に基づいて、シート上に画像を形成する画像形成部と、を有する。
【0022】
本構成によれば、原稿シートが安定して給紙され、読取手段によって原稿画像が好適に読み取られる。また、原稿画像に応じた画像がシートに安定して形成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シートをニップ部に向かってガイドするために可撓性のフィルム部材を備えることなく、簡易な構成でシートを安定して給送することが可能な給紙装置、およびこれを備える画像読取装置、画像形成装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の内部構造を示す断面図である。ここでは、画像形成装置1として、プリンター機能と複写機能とを備えた複合機を例示するが、画像形成装置は、プリンター、複写機、ファクシミリ装置であってもよい。
【0026】
<画像形成装置の説明>
画像形成装置1は、略直方体形状の筐体構造を有する装置本体10と、装置本体10上に配置される自動原稿給送装置20と、を備える。装置本体10の内部には、複写する原稿画像を光学的に読み取る読取ユニット25と、シートにトナー像を形成する画像形成部30と、前記トナー像をシートに定着させる定着部60と、画像形成部30へ搬送される定型シートを貯留する給紙部40と、定型シートを給紙部40又は手差し給紙部46から画像形成部30及び定着部60を経由してシート排出口10Eまで搬送する搬送経路50と、この搬送経路50の一部を構成するシート搬送路を内部に有する搬送ユニット55とが収容されている。
【0027】
自動原稿給送装置(ADF)20は、装置本体10の上面に回動自在に取り付けられている。ADF20は、装置本体10における所定の原稿読取位置に向けて、複写される原稿シートを自動給送する。一方、ユーザーが手置きで原稿シートを所定の原稿読取位置に載置する場合は、ADF20は上方に開かれる。ADF20は、原稿シートが載置される原稿トレイ21と、自動原稿読取位置を経由して原稿シートを搬送する原稿搬送部22と、読取後の原稿シートが排出される原稿排出トレイ23とを含む。
【0028】
読取ユニット25は、装置本体10の上面のADF20から自動給送される原稿シートの読取用のコンタクトガラス、又は手置きされる原稿シートの読取用のコンタクトガラス(不図示)を通して、原稿シートの画像を光学的に読み取る。読取ユニット25内には、光源、移動キャリッジ、反射ミラー等を含む走査機構と、撮像素子とが収容されている(図略)。走査機構は、原稿シートに光を照射し、その反射光を撮像素子に導く。撮像素子は、前記反射光をアナログ電気信号に光電変換する。前記アナログ電気信号は、A/D変換回路でデジタル電気信号に変換された後、画像形成部30に入力される。なお、自動原稿給送装置(ADF)20と読取ユニット25とによって、画像読取装置が構成される。
【0029】
画像形成部30は、フルカラーのトナー画像を生成しこれをシート上に転写する処理を行うもので、タンデムに配置されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の各トナー像を形成する4つのユニット32Y、32M、32C、32Bkを含む画像形成ユニット32と、該画像形成ユニット32の上に隣接して配置された中間転写ユニット33と、中間転写ユニット33上に配置されたトナー補給部34とを含む。
【0030】
各画像形成ユニット32Y、32M、32C、32Bkは、感光体ドラム321と、この感光体ドラム321の周囲に配置された、帯電器322、露光器323、現像装置324、一次転写ローラー325及びクリーニング装置326とを含む。
【0031】
感光体ドラム321は、その軸回りに回転し、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。感光体ドラム321としては、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。帯電器322は、感光体ドラム321の表面を均一に帯電する。露光器323は、レーザー光源とミラーやレンズ等の光学系機器とを有し、感光体ドラム321の周面に、原稿画像の画像データに基づく光を照射して、静電潜像を形成する。
【0032】
現像装置324は、感光体ドラム321上に形成された静電潜像を現像するために、感光体ドラム321の周面にトナーを供給する。現像装置324は、2成分現像剤用のものであり、スクリューフィーダー、磁気ローラー、及び現像ローラーを含む。
【0033】
一次転写ローラー325は、中間転写ユニット33に備えられている中間転写ベルト331を挟んで感光体ドラム321と一次転写ニップ部を形成し、感光体ドラム321上のトナー像を中間転写ベルト331上に一次転写する。クリーニング装置326は、クリーニングローラー等を有し、トナー像転写後の感光体ドラム321の周面を清掃する。
【0034】
中間転写ユニット33は、中間転写ベルト331、駆動ローラー332及び従動ローラー333を備える。中間転写ベルト331は、駆動ローラー332及び従動ローラー333に架け渡された無端ベルトであって、該中間転写ベルト331の外周面には、複数の感光体ドラム321からトナー像が、同一箇所に重ねて転写される(一次転写)。
【0035】
駆動ローラー332の周面に対向して、二次転写ローラー35が配置されている。駆動ローラー332と二次転写ローラー35とのニップ部は、中間転写ベルト331に重ね塗りされたフルカラーのトナー像をシートに転写する二次転写ニップ部となる。駆動ローラー332又は二次転写ローラー35のいずれか一方のローラーに、トナー像と逆極性の二次転写バイアス電位が印加され、他方のローラーは接地される。
【0036】
トナー補給部34は、イエロー用トナーコンテナ34Y、マゼンタ用トナーコンテナ34M、シアン用トナーコンテナ34C、及びブラック用トナーコンテナ34Bkを含む。これらトナーコンテナ34Y、34C、34M、34Bkは、それぞれ各色のトナーを貯留するものであり、YMCBk各色に対応する画像形成ユニット32Y、32M、32C、32Bkの現像装置324に、図略の供給経路を通して各色のトナーを供給する。各トナーコンテナ34Y、34C、34M、34Bkには、当該コンテナ内のトナーを図略のトナー排出口へ搬送する搬送スクリュー341が備えられている。この搬送スクリュー341が不図示の駆動部によって回転駆動されることで、現像装置324内へトナーが補給される。
【0037】
給紙部40は、画像形成処理が施されるシートのうち、定型シートS1を収容する2段の第1給紙カセット40A、第2給紙カセット40Bを備える。これらの給紙カセットは、装置本体10の前方から手前方向に引出可能である。
【0038】
第1給紙カセット40Aは、定型シートS1が積層されてなるシート束を収納するシート収容部41と、給紙のために前記シート束をリフトアップするリフト板42とを備える。給紙カセット40Aの右端側の上部には、ピックアップローラー43と、給紙コロ44とリタードローラー45とのローラー対とが配置されている。ピックアップローラー43及び給紙コロ44の駆動により、給紙カセット40A内のシート束の最上層のシートS1が1枚ずつ繰り出され、搬送経路50の上流端へ搬入される。なお、第2給紙カセット40Bも、第1給紙カセット40Aと同様の構成を備える。
【0039】
装置本体10の右側面10Rには、手差し給紙部46(給紙装置)が配置される。手差し給紙部46は、手差し給紙用の手差しトレイ46A(シート積載部)と、給紙ローラー461とを備える。給紙トレイ46は、その下端部において装置本体10に対して開閉自在に取り付けられている。ユーザーは、手差し給紙を行う場合、図示の通り給紙トレイ46を開き、その上にシートを載置する。給紙トレイ46に載置されたシートは、給紙ローラー461及び搬送ローラー対462の駆動によって、手差しトレイ46Aから延設される手差しシート搬送路460(シート搬送路)へ搬入される。更に、シートは手差しシート搬送路460から搬送経路50に搬入される。
【0040】
搬送経路50は、給紙部40から画像形成部30を経由して定着部60の出口までシート(定型シートS1)を搬送する主搬送路50Aと、シートに対して両面印刷を行う場合に片面印刷されたシートを画像形成部30に戻すための反転搬送路50Bと、主搬送路50Aの下流端から反転搬送路50Bの上流端へシートを向かわせるためのスイッチバック搬送路50Cと、主搬送路50Aの下流端から装置本体10の左側面10Lに設けられたシート排出口10Eまでシートを水平方向に搬送する水平搬送路50Dとを含む。この水平搬送路50Dの大半は、搬送ユニット55の内部に備えられているシート搬送路で構成されている。
【0041】
主搬送路50Aの、二次転写ニップ部よりも上流側には、レジストローラー対51が配置されている。シートは、停止状態のレジストローラー対51にて一旦停止され、スキュー矯正が行われる。その後、画像転写のための所定のタイミングで、レジストローラー対51が駆動モーター(図略)で回転駆動されることで、シートは二次転写ニップ部に送り出される。この他、主搬送路50Aには、シートを搬送するためのシート搬送ローラー52が複数配置されている。
【0042】
搬送経路50の最下流端には、排紙ローラー53が配置されている。排紙ローラー53は、装置本体10の左側面10Lに配置される図略の後処理装置に、シート排出口10Eを通してシートを送り込む。なお、後処理装置が取り付けられない画像形成装置では、シート排出口10Eの下方にシート排出トレイが設けられる。
【0043】
搬送ユニット55は、定着部60から搬出されるシートを、シート排出口10Eまで搬送するユニットである。本実施形態の画像形成装置1は、定着部60が装置本体10の右側面10R側に配置され、シート排出口10Eは、右側面10Rと対向する装置本体10の左側面10L側に配置されている。従って、搬送ユニット55は、装置本体10の右側面10Rから左側面10Lに向けて、シートを水平方向に搬送する。
【0044】
定着部60は、シートにトナー像を定着させる定着処理を施す誘導加熱方式の定着装置であって、加熱ローラー61、定着ローラー62、加圧ローラー63、定着ベルト64及び誘導加熱ユニット65を含む。定着ローラー62に対して加圧ローラー63が圧接され、定着ニップ部が形成されている。加熱ローラー61及び定着ベルト64は誘導加熱ユニット65によって誘導加熱され、その熱を前記定着ニップ部に与える。シートが定着ニップ部を通過することで、シートに転写されたトナー像が当該シートに定着される。
【0045】
<手差し給紙部46について>
次に、
図2乃至
図4を参照して、本実施形態に係る手差し給紙部46について詳述する。
図2は、本実施形態に係る手差し給紙部46の斜視図である。
図3は、手差し給紙部46の一部を示した拡大斜視図である。
図4は、捌きパッド部7の斜視図である。
【0046】
図2を参照して、手差し給紙部46は、前述の手差しトレイ46Aと、手差しリフト板46Bと、幅寄せガイド46Cと、給紙ローラー461と、ハウジング46Hと、を備える。
【0047】
手差しトレイ46Aは、装置本体10の右側面10R(
図1)に対して開閉可能とされる板状部材である。手差しトレイ46Aは、支点部46A1を中心に上方部分が回動可能とされる。手差しトレイ46Aの上には複数のシートが積載される。手差しトレイ46Aからシートが搬送される手差しシート搬送路460は、
図2の矢印DP方向に向かって延設される。
【0048】
手差しリフト板46Bは、手差しトレイ46Aの上面部の一部を形成し、手差しトレイ46Aの左方(シート搬送方向下流側)に配置される。手差しリフト板46Bの左端部は不図示の駆動機構によって、上下に移動可能とされる。手差しリフト板46Bの移動によって、手差しトレイ46A上に積載されたシート束の先端部(左端部)が上方に移動される。この結果、シートの先端部が給紙ローラー461に当接される。
【0049】
幅寄せガイド46Cは、手差しリフト板46B上に配置される。幅寄せガイド46Cは前後方向に一対配置され、シートの幅方向の位置を規制する。幅寄せガイド46Cは、手差しリフト板46Bに形成されたガイド溝46B1に沿って前後方向に移動可能とされる。
【0050】
給紙ローラー461は、手差しトレイ46Aに対向して手差しシート搬送路460に配置される。給紙ローラー461は、回転される周面461A(
図3、
図5参照)を備え、シートをシート搬送方向(
図3の矢印DP方向)に搬送する。ハウジング46Hは、前後方向に延伸される箱型形状からなる。ハウジング46Hは、前後方向の中央部分において、給紙ローラー461を回転可能に支持する。また、ハウジング46Hの後端部には駆動ギア462が配置される。駆動ギア462は不図示のシャフトによって給紙ローラー461と連結されている。不図示の駆動モーターによって駆動ギア462が回転されると、前記シャフトを介して、給紙ローラー461が回転される。
【0051】
図3および
図4を参照して、手差し給紙部46は更に捌きパッド部7を備える。捌きパッド部7は、手差しトレイ46Aに積載されたシート束のうち、最も上方に位置するシート以外のシートがニップ部Nに向かって搬送されることを防ぐ機能を備える。捌きパッド部7は、捌きパッド72(給紙パッド)と、パッドホルダ71とを備える。
【0052】
捌きパッド72は、給紙ローラー461の周面461Aに対向して配置される。捌きパッド72は、周面461Aとの間でシートが進入されるニップ部Nを形成する捌き面72A(パッド面)を備える。捌きパッド72は、板状の弾性部材からなる。一例として、捌きパッド72はゴム部材から構成される。捌きパッド72の捌き面72Aは、シートとの間で高い摩擦係数を備える。シートと捌き面72Aとの間の摩擦力によって、シート束のうち、最も上方に位置するシート以外のシートがシート搬送方向下流側に搬送されることが防止される。
【0053】
パッドホルダ71は、ハウジング46Hの前後方向の中央部分に配置される。パッドホルダ71は、捌きパッド72を支持する。パッドホルダ71は、対向面711と、当接面712と、側面部713と、支持面714と、リブ715(リブ部材)と、を備える。
【0054】
対向面711は、パッドホルダ71の右側部分において略上下方向に延設される壁部である。対向面711は、手差しリフト板46Bの左端部と交差するように配置される。なお、前述のように手差しリフト板46Bが上下に移動する際、手差しリフト板46Bの先端部(左端部)は、対向面711に対向しながら上下に移動される。
【0055】
当接面712は、対向面711の上端部において、対向面711と交差するように配置される。シートの幅方向(
図4の矢印DH方向)と交差する断面視において、当接面712は、右方かつ下方から左方かつ上方に向かって延設される。当接面712は、捌きパッド72よりもシートの搬送方向上流側において、捌き面72Aよりも上方に隆起して配置される。当接面712には、手差しトレイ46Aから送り出されたシートの先端部が当接する。
【0056】
側面部713は、パッドホルダ71の前後方向の側面を形成する一対の側壁である。
図3および
図4には側面部713のうち前側の側壁が現れている。
【0057】
支持面714は、当接面712よりもシート搬送方向下流側において、当接面712に対して段差をもって配置される。なお、当接面712と支持面714との間には、段差部71Dが形成される(
図6参照)。支持面714には捌きパッド72が固定される。本実施形態では、捌きパッド72は支持面714に接着固定される。この際、捌きパッド72の上流側端部72Bが段差部71Dに対向する(
図6)。
【0058】
リブ715は、シート幅方向(
図4の矢印DH)において、捌きパッド72の両端部に配置される。リブ715は、当接面712と支持面714とを連設する。リブ715は、当接面712からシート搬送方向(
図4の矢印DP方向)下流側に向かって先下がりに延設される傾斜面715Aを備える。リブ715(傾斜面715A)は、段差部71D(
図6)よりもシート搬送方向下流側に配置される。なお、以後の説明において、シート搬送方向に向かって先下がりとは、シート搬送方向に向かって進むにつれて、シート搬送方向から離間するように傾斜していることを意味する。すなわち、本実施形態では、給紙ローラー461と捌きパッド72との間に形成されるニップ部Nを通過するシートSは、左方かつ上方に向かって(シート搬送方向に向かって)搬送される。このため、シート搬送方向下流側に向かって先下がり形状の傾斜面715Aは、実際には、僅かな傾斜角度をもって左方かつ上方に向かって傾斜している。換言すれば、上記の先下がり形状とは、シート搬送方向に対する相対的な形状を示すものであり、傾斜面715Aの傾斜角度を限定するものではない。
【0059】
更に、手差し給紙部46は付勢ばね80(
図5)を備える。
【0060】
付勢ばね80は、パッドホルダ71と装置本体10内の壁部101との間に配置される。付勢ばね80は、パッドホルダ71を上方かつ右方に向かって付勢する。この結果、捌きパッド72が給紙ローラー461の周面461Aに向かって押圧され、ニップ部Nが形成される。
【0061】
図3を参照して、矢印DBで示されるように、手差しリフト板46Bが上方に移動されると、手差しトレイ46A上に積載されたシート束のうち、最も上方に位置するシートが給紙ローラー461の周面461Aに当接される。そして、給紙ローラー461が矢印DR方向に回転されると、前記シートが給紙ローラー461と捌きパッド72との間のニップ部N(
図5)に向かって搬送される。
【0062】
次に、本実施形態に係る手差し給紙部46と比較される手差し給紙部46Xおよび手差し給紙部46Yにおける課題について説明する。
図7および
図8は、手差し給紙部46Xおよび手差し給紙部46Yのニップ部N周辺の断面図である。
【0063】
図7を参照して、手差し給紙部46Xは、本実施形態に係る捌きパッド72と同様に、捌きパッド72Xを備える。捌きパッド72Xは、パッドホルダ71Xに支持される。不図示のシート積載部に積載されたシート束のうち、最も上方に位置するシートSXが、給紙ローラー461Xの回転(矢印DR)に伴って、シート搬送方向下流側に搬送される(矢印DS)。この際、シートSXの先端部が、捌きパッド72Xの上流側端部72X1とパッドホルダ71Xの壁面71H1との間の隙間に進入することがあった(領域Z)。この結果、シートSXの先端部が座屈し、シートの搬送不良が生じるという課題があった。
【0064】
一方、
図8に示される手差し給紙部46Yは、捌きパッド72Y、パッドホルダ74に加え、フィルムシート75を備える。フィルムシート75は、PETフィルムから構成されるシート部材である。フィルムシート75の下端部751は、パッドホルダ74の側面部741に接着固定され、フィルムシート75の固定端を形成する。フィルムシート75の上端部752は、フィルムシート75の自由端を形成する。フィルムシート75の上端部752は、捌きパッド72Yの上流側端部72Y1と、パッドホルダ74の壁面74H1との隙間を覆うように延伸される。このような手差し給紙部46Yにおいては、給紙ローラー461Yによって搬送されたシートSYの先端部が、フィルムシート75の上端部752によってニップ部Nに向かって案内される。このため、シートSYの先端部が、捌きパッド72Yの上流側端部72Y1と、パッドホルダ74の壁面74H1との隙間に進入することが抑止される。
【0065】
しかしながら、上記のような手差し給紙部46Yでは、フィルムシート75が配置される分だけ、手差し給紙部46Yの部品点数が増大される。この結果、手差し給紙部46Yのコストアップがもたらされてしまう。また、手差し給紙部46Yの製造段階で、パッドホルダ74にフィルムシート75が接着固定されるために、組み立て工数が増加してしまう。
【0066】
上記のような課題を解決するために本実施形態に手差し給紙部46では、リブ715によってシートが安定してニップ部Nに向かって搬送される。次に、本実施形態に係る手差し給紙部46の作用について、
図5および
図6を参照して説明する。
図5および
図6は、手差し給紙部46のニップ部Nの周辺の拡大断面図である。
【0067】
前述のように、手差しリフト板46B(
図3)が上方に移動され、給紙ローラー461が回転されると(
図5の矢印DR)、シートSが矢印DS1方向に向かって搬送される。なお、この際、シート同士の摩擦力によって、数枚のシートSが矢印DS1方向に搬送されることがある。給紙ローラー461によって搬送されたシートSの先端部は、
図5に示されるように、パッドホルダ71の当接面712に当接される。この際、シートSの先端部と当接面712とがなす角度がθ1と定義される。当接面712に当接したシートS(
図6のシートS(1))は、給紙ローラー461の回転力によって、当接面712に摺擦しながら、ニップ部Nに向かって搬送される(
図6のシートS(2))。その後、シートSは、リブ715の傾斜面715Aに沿って、捌き面72Aに向かって搬送される(
図6の矢印DS2)。本実施形態では、リブ715の傾斜面715Aと捌き面72Aとがなす角度がθ2と定義され、θ1>θ2の関係が満たされている。このため、当接面712に進入角度θ1をもって当接したシートSの先端部が、θ1よりも小さな進入角度θ2をもって捌き面72Aに当接される。このため、捌き面72Aに当接する際にシートSに加わる負荷が好適に低減される。また、捌き面72Aに向かってシートSが大きな角度で衝突することがないため、シートSの先端部が座屈することが抑止される。この結果、シートSが安定してニップ部Nに向かって搬送される。
【0068】
本実施形態では、上記のように、捌きパッド72の両端部にリブ715が配置されることによって、シートSが捌きパッド72の捌き面72Aにスムーズに当接しながら、ニップ部Nに向かって搬送される。このため、シートSを捌き面72Aに安定して当接させるために、先の手差し給紙部46Yのように、フィルムシート75を備える必要がない。このため、手差し給紙部46の部品点数が減少され、手差し給紙部46のコストが低減される。また、手差し給紙部46の組み立て工数が好適に低減される。
【0069】
なお、前述のように、給紙ローラー461の回転力と、シートS同士の摩擦力によって、複数枚のシートSが捌きパッド72に向かって搬送された場合であっても、シートSと捌き面72Aとの間の摩擦力によって、最も上方のシートS(最も給紙ローラー461に近いシート)だけが、給紙ローラー461によってニップ部Nに向かって搬送される。換言すれば、その他のシートSには、捌き面72Aとの摩擦力によって、ブレーキがかかることとなる。
【0070】
更に、本実施形態では、リブ715の傾斜面715Aは、当接面712と支持面714とを連設するように延設される(
図6)。換言すれば、シート幅方向と交差する断面視において、傾斜面715Aは捌き面72Aと交差するとともに、シート搬送方向下流側に向かって捌き面72Aよりも更に先下がりに延設されている。このため、ニップ部Nよりもシート搬送方向上流側において、傾斜面715Aのシート搬送方向下流側部分が、捌き面72Aの下方に配置される。この結果、複数のシートSが搬送された場合であっても、最も上方に位置するシート以外のシートを、捌き面72Aに接触させることが可能となる。
【0071】
また、本実施形態では、
図6に示されるように、捌きパッド72のシート搬送方向上流側の上流側端部72Bは、当接面712と支持面714との間の段差部71Dに配置される。そして、傾斜面715Aは段差部71Dよりもシート搬送方向下流側に配置される。このため、当接面712に当接したシートSの先端部は、リブ715によって、給紙パッドの上流側端部72Bと段差部71Dとの隙間の上方を超えるように、捌き面72Aに向かって誘導される。この結果、シートSの先端部が、捌きパッド72と段差部71Dとの隙間に進入することが抑止される。したがって、シートSが座屈することが好適に抑制される。
【0072】
以上、本発明の実施形態に係る手差し給紙部46およびこれを備えた画像形成装置1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0073】
(1)上記の実施形態では、給紙ローラー461および捌きパッド部7を備える給紙装置として、手差し給紙部46を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。給紙装置は、第1給紙カセット40Aおよび第2給紙カセット40Bを備える給紙部40であってもよい。この場合でも、第1給紙カセット40Aおよび第2給紙カセット40BからシートS1が安定して給紙される。また、給紙装置は、自動原稿給送装置(ADF)20において、読み取り位置に原稿を給送する原稿搬送部22であってもよい。この場合、画像形成装置1は、給紙ローラー461および捌きパッド部7を備える給紙装置と、前記給紙装置のシート搬送路に対向して配置されシート上の原稿画像を読み取る読取ユニット25(読取手段)とを含む画像読取装置と、読取ユニット25によって読み取られた原稿画像に基づいて、シート上に画像を形成する画像形成部30と、を有する。この場合でも、原稿トレイ21から原稿が安定して給送され、シートに安定して画像が形成される。
【0074】
(2)上記の実施形態では、リブ715は、パッドホルダ71の一部である態様をもって説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。リブ715は、パッドホルダ71とは別部材からなり、パッドホルダ71に固定される態様でもよい。