(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態である衛生マスク1は、
図1及び
図2に示すように、マスク本体2と、マスク本体2の左右両側に設けられた耳掛け部3とを備えている。マスク本体2は、横長の矩形状の形状を有している。本実施形態の衛生マスク1は、マスク本体2の横方向の両端部分を除く中央部分が、
図2に示すように、着用者の顔面を被覆する顔面被覆部分21となっており、その顔面被覆部分21が、基材層11とナノファイバ層17とが積層された積層シート10Aから構成されている。マスク本体2の横方向の両端部分には、積層シート10Aをその両面から挟み込むようにサイドシート22が取り付けられており、サイドシート22によって補強された両端部分に、耳掛け部3を形成するための耳掛け紐31が固定されている。顔面被覆部分21は、
図2に示すように、着用者の顔面の少なくとも口許及び鼻の穴の周辺を覆うことが好ましい。サイドシート22としては、例えば、幅狭の短冊状の縦長シートをその縦中心線に沿って二つ折りしたものが用いられる。サイドシート22及び耳掛け紐31は、それぞれ、ヒートシールや超音波シールによる融着、接着剤を用いた接着、縫合などの公知の方法により取り付けられている。
【0011】
本実施形態の衛生マスク1に用いた積層シート10Aは、
図3に示すように、基材層11とナノファイバ層17とが積層された構成を有しており、より具体的には、基材層11がナノファイバ層17の片面のみに積層された構成を有している。本実施形態の衛生マスク1においては、マスクの着用時に、積層シート10Aのナノファイバ層17側が外側を向き、基材層11側が内側を向くように設計されているが、これに代えて、基材層11側が外側を向き、ナノファイバ層17側が内側を向くように設計することもできる。
図4には、本発明において使用し得る積層シートの他の例が示されている。
図4に示す積層シート10Bにおいては、基材層11がナノファイバ層17の両面に積層されている。積層シート10Bは、例えば、
図1及び
図2に示す衛生マスク1の積層シート10Aに代えて用いることができる。
【0012】
以下、積層シート10A及び積層シート10Bについて説明するが、共通する点については、両者を積層シート10と総称して説明する。
積層シート10における基材層11は、顔面被覆部分21の光透過性を高めて着用者の表情の視認性を高める観点から、規則的に形成された貫通孔を有しており、ナノファイバ層17の片面又は両面に基材層11を有する積層シート10としての平行光線透過率(JIS K7105)が10%以上である。
基材層11は、強度や剛性が低くなり易いナノファイバ層17を支持し、積層シート10に、必要な強度及び適度な剛性の一方又は双方を付与する目的で用いられるものであるが、基材層11が、規則的に形成された貫通孔を有し、積層シート10としての平行光線透過率(JIS K7105)が10%以上であることによって、マスク1の顔面被覆部分21に、必要な強度や適度な剛性と共に、着用者の表情の高い視認性を得るための高い光透過性を得やすくなる。顔面被覆部分21に、高い光透過性や着用者の表情の高い視認性を得る観点から、積層シート10の平行光線透過率(JIS K7105)は、好ましくは15%以上、より好ましくは16%以上である。積層シート10の平行光線透過率は高ければ高い程良く100%でも良いが、現実的には70%程度が上限となる。
規則的に形成された貫通孔とは、例えば、網目または開孔の孔が、基材層の縦方向、横方向、又は斜め方向に複数列をなして等間隔に配置されているものをいう。例えば、縦横方向に等間隔に複数列をなしている場合は、碁盤の目のような配置となる。また基材層11に形成された貫通孔が規則的に貫通しているか否かは、顕微鏡で数十倍に拡大して観察し目視で判断することができる。
【0013】
積層シート10の基材層11は、衛生マスクに優れた着用者の表情の視認性を得る観点から、トータルでの平行光線透過率(JIS K7105)が30%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上、更に好ましくは60%以上である。この平行光線透過率の上限値は100%である。
また、同様の観点から、積層シート10は、個々の基材層11の平行光線透過率(JIS K7105)が、好ましくは40%以上、更に好ましくは60%以上である。この平行光線透過率の上限値は100%である。
【0014】
基材層11のトータルでの平行光線透過率は、積層シート10Aのように、基材層11がナノファイバ層17の片面のみにある場合は、その基材層11を構成する単層又は多層のシート材料を測定用サンプルとして、JIS K7105に規定される方法に従い平行光線透過率を測定する。他方、積層シート10Bのように、基材層11がナノファイバ層17の両面にある場合は、一方の基材層11を構成する単層又は多層のシート材料と、他方の基材層11を構成する単層又は多層のシート材料のみを、それぞれ別々に取り出し、それらを重ね合わせたものを測定用サンプルとして、JIS K7105に規定される方法に従い平行光線透過率を測定する。
【0015】
基材層11がナノファイバ層17の片面のみにある場合は、基材層11のトータルでの平行光線透過率は、個々の基材層11の平行光線透過率と同じである。他方、基材層11がナノファイバ層17の両面にある場合は、一方の基材層11を構成する単層又は多層のシート材料と、他方の基材層11を構成する単層又は多層のシート材料とを、それぞれ別々に測定用サンプルとして測定した値が、個々の基材層11の平行光線透過率となる。
【0016】
前述した各平行光線透過率は下記条件にて測定した。
〔測定条件〕サンプルを23℃、50%RHの環境下に4時間以上静置したのち、サンプルを80mm角の大きさに切りだし、株式会社 村上色彩技術研究所製ヘーズメータHM−150を使用して平行光線透過率を測定した。
【0017】
基材層11の構成材料としては、規則的に形成された貫通孔を有し、平行光線透過率が10%以上である各種のシート材料を用いることができるが、顔面被覆部分21に、必要な強度及び適度な剛性とともに、フィラメントや繊維に起因する界面での光拡散性を減少させ高い光透過性を得る観点から、基材層11を構成する材料(シート材料)は、合成樹脂製のメッシュシート、合成樹脂製の開孔シート、又は合成樹脂製の編み物若しくは織物であることが好ましい。また、基材層11を構成する材料(シート材料)は、これらの1種若しくは2種以上を2枚以上積層したものであっても良い。
図5に、合成樹脂製のメッシュシートの一例を示し、
図6に、合成樹脂製の開孔シートの一例を示した。なお、
図4に示す積層シート10Bのように、ナノファイバ層17の両面に基材層11を設ける場合、一方の基材層11と他方の基材層11とで、基材層11の構成材料が同じでも異なっていても良い。また、基材層11とナノファイバ層17を複数枚重ねて積層シート10を形成しても良い。
【0018】
基材層11の構成材料として好ましく用いられる合成樹脂製のメッシュシートは、例えば
図5に示すメッシュシート11Aのように、合成樹脂製のフィラメント糸からなる縦線12と横線13とが、それぞれ間隔を保ちながら一本ずつ相互に交わるものである。また、合成樹脂製のメッシュシートとしては、縦線12と横線13とが平織状に一本ずつ相互に交わるものに代えて、縦線12と横線13とが綾織状に相互に交わるもの(図示せず)等を用いることもできる。
また、合成樹脂製のメッシュシートは、積層されたナノファイバの保護の観点や透明性の観点から、メッシュ数(線数/インチ)が、好ましくは30以上200以下、より好ましくは50以上150以下である。メッシュの線径は、適度な剛性の観点から、好ましくは20μm以上500μm以下、より好ましくは30μm以上200μm以下である。メッシュの開口率(%)は、通気抵抗を少なくする観点から、好ましくは30%以上90%以下、より好ましくは50%以上80%以下である。
メッシュシートの構成材料(フィラメント糸の構成材料)としては、例えば、ポリオレフィン系の樹脂、ポリエステル系の樹脂、ポリアミド系の樹脂を始めとする各種の合成樹脂が好ましく用いられる。また、縦線12と横線13との交点は、熱融着等により融着されていても良いし融着されていなくても良いが、カット面のほつれを防止する点から融着されていることが好ましい。交点融着に優位なフィラメントとしては、複数の融点の異なる樹脂から形成され、その断面が芯鞘型に配置されていることが好ましい。特に融点の低い樹脂が鞘側に配置されていることが好ましい。
また、縦線12及び横線13を構成するフィラメント糸は、マルチフィラメントでもモノフィラメントでも良く、また好ましくは中実の繊維である。
【0019】
基材層11の構成材料として好ましく用いられる開孔シートは、例えば
図6に示す開孔シート11Bのように、合成樹脂製のシートに規則的なパターンで開孔16を形成したものである。開孔16の形成方法は、パンチング加工等の打ち抜き加工が挙げられる。また、開孔シートとしては、
図6に示すように、互いに交叉する2方向それぞれに列を形成するように開孔16が配列されたものに代えて、開孔16が千鳥状に配置されたもの(図示せず)等を用いることもできる。
また、開孔シートは、強度と柔らかさを両立する観点から、厚みが、好ましくは30μm以上700μm以下、より好ましくは50μm以上500μm以下である。開孔シートの構成材料としては、例えば、上述したメッシュシートを構成する材料と同様のものを特に制限なく用いることができる。
【0020】
また、基材層11の構成材料として好ましく用いられる合成樹脂製の編み物又は織物は、例えば、合成樹脂製のフィラメント糸を、平織、綾織、ゴム編み、パール編み等によりシート状にしたものである。フィラメント糸としては、メッシュシートに用いたフィラメント糸と同様のフィラメント糸を用いることができる。
【0021】
基材層11の構成材料(シート材料)は、顔面被覆部分21に、必要な強度及び適度な剛性とともに高い光透過性を得る観点から、メッシュシートの網目14や開孔シートの開孔16等の貫通孔の1個当たりの面積が、好ましくは0.02mm
2以上、より好ましくは0.04mm
2以上であり、また、好ましくは25mm
2以下、より好ましくは20mm
2以下であり、また、好ましくは0.02mm
2以上25mm
2以下、より好ましくは0.04mm
2以上20mm
2以下である。
【0022】
積層シート10の基材層11は、マスク装着時の呼吸による通気抵抗で変形しにくい程度の適度な剛性を積層シート10に付与する観点から、トータルでのテーバーこわさが、好ましくは0.03mN・m以上、より好ましくは0.3mN・m以上であり、また、好ましくは3.0mN・m以下であり、また、好ましくは0.03mN・m以上3.0mN・m以下、より好ましくは0.3mN・m以上3.0mN・m以下である。テーバーこわさは、JIS P8125−2000に規定される「こわさ試験方法」により測定される。
【0023】
基材層11のトータルでのテーバーこわさは、積層シート10Aのように、基材層11がナノファイバ層17の片面のみにある場合は、その基材層11を構成する単層又は多層のシート材料を測定用サンプルとして、JIS P8125−2000に規定される方法に従いテーバーこわさを測定する。他方、積層シート10Bのように、基材層11がナノファイバ層17の両面にある場合は、一方の基材層11を構成する単層又は多層のシート材料と、他方の基材層11を構成する単層又は多層のシート材料とを、それぞれ別々に取り出し、それらを重ね合わせたものを測定用サンプルとして、JIS P8125−2000に規定される方法に従いテーバーこわさを測定する。
【0024】
次に、積層シート10のナノファイバ層17について説明すると、ナノファイバ層17は、繊維径が所定値以下のナノファイバを含んで構成されている。即ち、ナノファイバ層17を構成するナノファイバは、繊維径が350nm以下であり、好ましくは繊維径が250nm以下、より好ましくは繊維径が220nm以下である。積層シート10は、斯かるナノファイバ層17を所定の坪量で含むことにより、光透過性が高く着用者の表情の視認性に優れるとともに、細菌や花粉に対するバリア性にも優れたものとなる。
【0025】
ナノファイバの繊維径に下限は特にないが、現実的に繊維として作成する観点から、ナノファイバの繊維径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上である。ナノファイバ層17は、繊維径が350nm以下のナノファイバのみから構成されていることが好ましく、繊維径が250nm以下又は220nm以下のナノファイバのみから構成されていることが一層好ましい。尤も、本発明の効果を損なわない限りにおいて、ナノファイバ層17が、ナノファイバに加えて、繊維径が350nm、250nm又は220nm以下のナノファイバよりも太い他の繊維を含むことや、ナノファイバ以外の成分を含むことは妨げられない。ナノファイバの繊維径は、その太さを、直径又は円相当直径で表したものであり、ナノファイバの太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって測定することができる。
【0026】
本発明で用いる積層シート10においては、ナノファイバ層を構成するナノファイバの繊維径に加えて、ナノファイバ層17の坪量も重要である。ナノファイバ層17の坪量を所定値以下とすることで、積層シート10に、高い光透過性と細菌や花粉に対する優れたバリア性とを付与することができる。高い光透過性と優れたバリア性とを両立させる観点から、ナノファイバ層17の坪量は、0.50g/m
2以下であり、好ましくは0.40g/m
2以下であり、また、好ましくは0.05g/m
2以上、より好ましくは0.10g/m
2以上であり、より具体的には、好ましくは0.05g/m
2以上0.50g/m
2以下、より好ましくは0.10g/m
2以上0.40g/m
2以下である。
【0027】
積層シート10中のナノファイバ層17の坪量は、下記方法により測定可能である。
積層シートを10cm角の大きさに切りだし、質量を測定したのち、ナノファイバ層を完全に除去した基材層のみの質量を測定して、積層シートの質量から差し引いてナノファイバ層17の質量とする。なお坪量は面積換算(得られた数字を100倍)して算出する。
【0028】
ナノファイバの長さは本発明において臨界的でなく、ナノファイバの製造方法に応じた長さのものを用いることができる。また、ナノファイバは、ナノファイバ層17において、一方向に配向した状態で存在していてもよく、あるいはランダムな方向を向いていてもよいが、積層シート10の光透過率の向上の観点から、ナノファイバ層17は、ナノファイバの配向度が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.06以上であり、また、好ましくは1.00以下であり、より好ましくは0.90以下であり、より具体的には、好ましくは0.05以上1.00以下、より好ましくは0.06以上0.90以下である。
【0029】
ナノファイバの配向度は、下記方法により測定する。
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して任意の場所のナノファイバのみの1000倍の画像を3枚撮影する。その画像を画像処理ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製 A像くん)を使用して画像解析し、モーメント法にて算出した数値を配向度として定義する。
【0030】
ナノファイバ層17においては、ナノファイバは、それらの交点において結合しているか、又はナノファイバどうしが絡み合っていることが好ましい。ナノファイバどうしが結合しているか、あるいは絡み合っているかは、ナノファイバ層17の製造方法によって相違する。
【0031】
ナノファイバは、高分子化合物を原料とするものである。高分子化合物としては、天然高分子及び合成高分子のいずれをも用いることができる。この高分子化合物は、水溶性のものでもよく、水不溶性のものでもよいが、唾液や呼気による膨潤や溶解を防ぐ観点から水不溶性のものが好ましい。天然高分子としては、例えばキチン、キトサン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、等を用いることができる。
【0032】
本明細書において「水溶性高分子化合物」とは、1気圧・常温(20℃±15℃)の環境下において、高分子化合物を、該高分子化合物に対して10倍以上の質量の水に浸漬し、十分な時間(例えば24時間以上)が経過したときに、浸漬した高分子化合物の50質量%以上が溶解する程度に水に溶解可能な性質を有する高分子化合物をいう。また、本明細書において「水不溶性高分子化合物」とは、1気圧・常温(20℃±15℃)の環境下において、高分子化合物を、該高分子化合物に対して10倍以上の質量の水に浸漬し、十分な時間(例えば24時間以上)が経過したときに、浸漬した高分子化合物の80質量%以上が溶解しない程度に水に溶解しづらい性質を有する高分子化合物をいう。
【0033】
合成高分子としては、例えば、ポリビニルブチラール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸グリコール、ポリ酢酸ビニル等を用いることができる。
【0034】
積層シート10において、基材層11とナノファイバ層17との間には、何らの層も介在していないことが好ましい。また、基材層11とナノファイバ層17とは一体化されていることが好ましい。
【0035】
図3に示す積層シート10Aのように、ナノファイバ層17の片面に基材層11を有する積層シートは、基材層11の表面に、公知の電界紡糸法によりナノファイバ層17を形成することにより製造することができる。電界紡糸法によるナノファイバ層の具体的な形成方法としては、例えば、特開2008−179629号公報、特開2010−168722号公報、特開2013−28552号公報、又は特開2013−119676号公報等に記載の方法を採用することができる。また、基材層を移動させつつ、ナノファイバ層を形成し、その基材層の移動速度を調整することで、ナノファイバの配向度を所望の値に変更することができる。
【0036】
積層シート10は、基材層11と、細い繊維径のナノファイバを含む所定の坪量のナノファイバ層17が積層されていることによって、必要な強度及び適度な剛性とともに、高い光透過性を有している。また、積層シート10は、通気性にも優れている。
【0037】
本発明の衛生マスクは、顔面被覆部分にこのような積層シート10を用いることにより、光透過性が高く着用者の表情の視認性に優れるとともに、細菌や花粉に対するバリア性にも優れている。
また本発明の衛生マスクは、軽量化が容易で、従来の市販されている不織布製のマスクに比べて軽く、装着しているのが気にならない衛生マスクを提供することもできる。更に、少ない坪量のナノファイバでバリア性を発現できるため、息苦しくなりにくいという点でも有利である。本発明の衛生マスクは、装着していることを感じさせにくくする観点から、総質量を2g未満にすることが好ましく、1.5g以下にすることが更に好ましく、また、0.7g以上にすることが好ましく、より具体的には0.7g以上2.0g未満とすることが好ましく、0.7g以上1.5g以下にすることが更に好ましい。なお、バリア性は繊維径が細く、かつ坪量が大きいほど良好になる。
【0038】
また、本発明の衛生マスクは、基材層11とナノファイバ層17との合計坪量が、基材層11がナノファイバ層17の片面のみに積層された構成の場合(例えば、積層シート10Aの場合)、好ましくは8g/m
2以上、より好ましくは15g/m
2以上、また、好ましくは30g/m
2以下、より好ましくは25g/m
2以下、より具体的には、好ましくは8g/m
2以上30g/m
2以下、より好ましくは15g/m
2以上25g/m
2以下である。基材層11がナノファイバ層17の両面に積層された構成の場合(例えば、積層シート10Bの場合)、好ましくは16g/m
2以上、より好ましくは30g/m
2以上、また、好ましくは60g/m
2以下、より好ましくは50g/m
2以下、より具体的には、好ましくは16g/m
2以上60g/m
2以下、より好ましくは30g/m
2以上50g/m
2以下である。
【0039】
本発明の衛生マスクは、細菌バリア性を有するものであり、風邪などの感染症の予防や感染症の拡散対策を主目的とするマスクや、外科手術を始めとする医療分野で用いられるマスクとして好ましく用いられる。その他、花粉やハウスダストの吸い込み防止を主目的とするマスク、食品の製造、調理、弁当の製造を始めとする食品分野で用いられるマスク、半導体製造用のクリーンルームで用いられるマスク、各種製造業の分野などで防塵に用いられるマスク等としても好適に用いられる。
【0040】
次に、本発明の他の実施形態である衛生マスク1Cについて説明する。衛生マスク1Cは、マスク本体の形状及び構成が上述した衛生マスク1と相違する。以下においては、衛生マスク1Cについて、衛生マスク1と相違する点、即ちマスク本体の形状及び構成を中心に説明し、衛生マスク1と同様の構成については、衛生マスク1と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0041】
衛生マスク1Cは、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、マスク本体2Cと、マスク本体2Cの左右両側に設けられた耳掛け部3とを備えている。
マスク本体2Cは、横長の形状を有しており、横方向の両端部を除く中央部分が、着用者の顔面を被覆する顔面被覆部分21になっている。マスク本体2Cは、
図7(a)に示すように、立体形状の衛生マスクを展開した状態(切欠き部の相対向する縁部どうしを接合する前の状態に同じ)においては、横方向の中央部分における上下それぞれにV字状の切欠き部20a,20bを有している。他方、完成した衛生マスク1Cにおいては、
図7(b)に示すように、切欠き部20a,20bそれぞれの相対向する側縁どうしが接合されており、それによって、マスク本体2Cの幅方向の中央部分に、鼻の稜線に沿う上方接合部20a’、及び下方接合部20b’が形成されている。マスク本体2Cの幅方向の中央部分に、斯かる構成の上方接合部20a’及び下方接合部20b’を有することで、着用時における衛生マスク1Cが、着用者の顔の立体形状に沿う立体形状を形成し易くなる。
【0042】
また、衛生マスク1Cは、接合部20a’,20b’が形成された略中央部分で二つ折り可能に形成されており、持ち運び等する際に小型化可能になっている。なお、二つ折りする際は、着用した際に着用者の肌に当接する側の面(以下、肌当接面ともいう)が内側になるように二つ折りされる。さらに、マスク本体
2Cの横方向の両端部には、耳掛け紐31が固定される紐固定部20cが設けられている。本実施形態においては、紐固定部20cは、横方向に延出するように形成されており、耳掛け紐31は、紐固定部20cにおいて、肌当接面と反対側の面(以下、非肌当接面ともいう)に、前述した公知の方法により取り付けられる。
【0043】
図8(a)に示すように、マスク本体2Cは、積層シート10Bと、積層シート10Bの肌当接面側の少なくとも周縁部に配設された不織布シート23とを有して構成されている。
不織布シート23は、
図8(b)に示すように、外形が積層シート10Bを拡大した相似形を有しており、積層シート10Bの周縁部の内側に配される部分に開口23aを有する枠形状(例えば、中央部分がくり抜かれた枠形状)に形成されている。不織布シート23を枠形状に形成することで、積層シート10Bの周縁部より内側の部分、例えば、口許や鼻の周辺を被覆する部分における積層シート10Bに高い透過性が保持される。
また、不織布シート23は、積層シート10Bの肌当接面側において、基材層11の周縁端の内側から外側に延出しており、基材層11の周縁端が着用者の肌に直接触れないようになっている。不織布シート23を基材層11の周縁端の内側から外方に延出した状態で積層シート10Bの肌当接面側に配設することで、衛生マスク1Cを着用した際に、積層シート10Bが着用者の肌に直接接触しなくなり、例えば、
図8(c)に示すように基材層11に合成樹脂製のメッシュシートを用いた場合においても、メッシュシートの端縁によって肌当たりが悪くなる(例えば、チクチクする等)ことが防止される。基材層11の周縁端の肌当たりは、例えば、切断端縁を超音波溶着する等により改善されるが、超音波溶着のみでは不十分な場合があり、このような場合や超音波溶着等の端部処理を行わない場合等に特に有効となる。
【0044】
不織布シート23が基材層11の周縁端の内側から外方に延出する延出長さは、着用者に対する積層シート10Bの端部の肌当たりの改善の観点から、1mm以上10mm以下であることが好ましい。延出する長さが1mm以上とすることにより、着用者の肌に基材層11が接触しにくくなり、着用者の肌当たりが悪くなることが防止される。一方、延出する長さが10mm以下とすることにより、不織布シート23が捲れるおそれを軽減することができる。不織布シート23が捲れると、基材層11の周縁端が露出することで着用者の肌に接触し、肌当たりが悪くなったり、使用感が低下したりしやすくなる。
【0045】
また、不織布シート23の坪量は、着用者に対する肌当たりを向上させる観点から、好ましくは10g/m
2以上、また、好ましくは60g/m
2以下、より具体的には、好ましくは10g/m
2以上60g/m
2以下である。
また、不織布シート23の構成材料は、特に限定されないが、着用者の肌当たり等の観点から、PE、PP等のポリオレフィン繊維、PET等のポリエステル繊維を単独、芯鞘型の複合繊維などとして用いることができる。
また、不織布シート23のテーバーこわさは、好ましくは0.01mN・m以上、また、好ましくは1.0mN・m以下、より具体的には、好ましくは0.01mN・m以上1.0mN・m以下である。
また、不織布シート23の平均繊維径は、好ましくは0.5μm以上、また、好ましくは30μm以下、より具体的には、好ましくは0.5μm以上30μm以下である。
【0046】
なお、本実施形態においては、肌当接面側において、不織布シート23を基材層11の周縁端の内側から外方に延出させて着用者に対する肌当たりを改善させる構成を用いて説明したが、例えば、不織布シート23を積層シート10Bの周縁端から延出させた後、不織布シート23の延出部分を積層シート10Bの非肌当接面側に折り曲げて、積層シート10Bの周縁端部を不織布シート23で被覆する構成としてもよい。積層シート10Bの外縁端を不織布シート23で被覆することで、確実に、積層シート10Bの外縁端が着用者の肌に直接触れることを防止することができる。この場合、不織布シートの肌当接面側が皺にならないように折り返し処理することが好ましい。また、見栄えの観点から、折り返した不織布シートの非肌当接面側も皺にならないように折り返し処理することが好ましい。
【0047】
図9に衛生マスク1Cの変形例を示す。積層シートの肌当接面側の少なくとも周縁部に、基材層の周縁端の内側から外方に延出した状態に設けることで、着用者への基材層の肌当たりを改善させる不織布シートは、積層シートの肌当接面側の周縁部の内側に配される開口23aを有しない形状であっても良く、
図9に示すように、積層シートを拡大した相似形としてもよい。例えば、積層シートを拡大した相似形のシート形状としてもよい。不織布シート24の形状を、積層シートを拡大した相似形のシート形状にすることで、不織布シート24が着用者の肌当接面側の全体に位置し、着用者の肌当たりを向上させることができる。この場合、衛生マスクにおける顔面被覆部分の光透過性を高めて着用者の表情の視認性を担保する観点から、不織布シート24の坪量を20g/m
2以下にすることが好ましい。
また、衛生マスクにおける顔面被覆部分の光透過性を高めて着用者の表情の視認性を担保する観点から、
図9に示すように、積層シート10Aを用いると良い。この場合、不織布シート24は、積層シート10Aにおけるナノファイバ層17側に配設しても良く、基材層11側に配設しても良い。つまり、ナノファイバ層17を最外層とする構成にしても良く、ナノファイバ層17を基材層11と不織布シート24とで挟む構成にしても良い。
【0048】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、マスク本体に、積層シート10を使用する際には、特許文献1の
図1に示されたマスクのように、積層シート10に単数又は複数の折り込み部(襞)を形成しても良い。また、積層シート10からなる左右のパネル部を形成し、それらのパネル部を顔の幅方向中央の位置で非直線状に接合して立体的な形状の顔面被覆部分を形成しても良い。また、耳掛け部が、耳掛け紐に代えて、開口やスリットを形成したシート材から形成されていても良い。
【0049】
また、耳掛け紐31を、光透過性を有する部材で構成しても良い。光透過性を有する部材で耳掛け紐31を構成することで、衛生マスク1全体の透過性や外観の印象を更に向上させることができる。耳掛け紐31に用いられる光透過性を有する部材としては、ポリウレタンやポリオレフィン等のエラストマー等を用いることができる。耳掛け紐31の全光光線透過率は、例えば、好ましくは60%以上、また、好ましくは99%以下、より具体的には、好ましくは60%以上99%以下であり、この範囲の中で高ければ高い程好ましい。
【0050】
また、前述した衛生マスク1Cにおいては、
図7(a)に示すように、枠形状の不織布シート23が、切欠き部20a,20bの縁部と重なる部分を有するものであったが、枠形状の不織布シート23は、切欠き部20a,20bの縁部と重なる部分を有しないものであっても良い。
【0051】
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記(衛生マスク)を開示する。
<1>
顔面被覆部分が、基材層とナノファイバ層とが積層された積層シートから構成された衛生マスクであって、
前記基材層は、前記ナノファイバ層の片面又は両面に積層され、規則的に形成された貫通孔を有しており、
前記積層シートの平行光線透過率(JIS K7105)が10%以上であり、
前記ナノファイバ層は、繊維径350nm以下のナノファイバを含み、坪量が0.50g/m
2以下である、衛生マスク。
【0052】
<2>
前記積層シートの平行光線透過率(JIS K7105)が、15%以上、より好ましくは16%以上である、前記<1>記載の衛生マスク。
<3>
前記ナノファイバ層は、ナノファイバの配向度が0.05以上1.00以下である、前記<1>又は<2>に記載の衛生マスク。
<4>
前記積層シートの前記基材層は、トータルでの平行光線透過率(JIS K7105)が30%以上である、前記<1>〜<3>の何れか1に記載の衛生マスク。
<5>
前記積層シートの前記基材層は、トータルでの平行光線透過率(JIS K7105)がより好ましくは40%以上、更に好ましくは60%以上である、前記<1>〜<4>の何れか1に記載の衛生マスク。
【0053】
<6>
前記基材層が、合成樹脂製のメッシュシート、合成樹脂製の開孔シート、又は合成樹脂製の編み物若しくは織物から構成されている、前記<1>〜<5>の何れか1に記載の衛生マスク。
<7>
前記基材層を構成する材料(シート材料)は、合成樹脂製のメッシュシート、合成樹脂製の開孔シート、及び合成樹脂製の編み物若しくは織物のうちの1種又は2種以上を2枚以上積層したものである、前記<1>〜<6>の何れか1に記載の衛生マスク。
<8>
前記基材層は、前記ナノファイバ層の片側の基材層又は前記ナノファイバ層の両側の両基材層が、合成樹脂製のメッシュシートから形成されている前記<1>〜<7>の何れか1に記載の衛生マスク。
【0054】
<9>
前記メッシュシートは、合成樹脂製のフィラメント糸からなる縦線と横線とが、それぞれ間隔を保ちながら一本ずつ相互に交わるものである、前記<6>〜<8>の何れか1に記載の衛生マスク。
<10>
前記メッシュシートは、縦線と横線とが綾織状に相互に交わるものである、前記<9>に記載の衛生マスク。
<11>
前記メッシュシートは、メッシュ数(線数/インチ)が、30以上200以下であり、好ましくは50以上150以下である、前記<6>〜<10>の何れか1に記載の衛生マスク。
<12>
前記メッシュシートは、メッシュの線径が、20μm以上500μm以下であり、好ましくは30μm以上200μm以下である、前記<6>〜<11>の何れか1に記載の衛生マスク。
<13>
前記メッシュシートは、開口率(%)が30%以上90%以下であり、好ましくは50%以上80%以下である、前記<6>〜<12>の何れか1に記載の衛生マスク。
【0055】
<14>
前記メッシュシート又は該メッシュシートを構成するフィラメント糸が、ポリオレフィン系の樹脂、ポリエステル系の樹脂及びポリアミド系の樹脂から選択される何れか1種若しくは2種以上から構成されているからなるである、前記<6>〜<13>の何れか1に記載の衛生マスク。
<15>
前記メッシュシートは、複数の縦線と複数の横線とが互いの交点において熱融着により融着されている、前記<6>〜<14>の何れか1に記載の衛生マスク。
<16>
前記メッシュシートは、複数の縦線と複数の横線とが互いの交点において融着することなく交差している、前記<6>〜<14>の何れか1に記載の衛生マスク。
<17>
前記メッシュシートは、何れもフィラメント糸からなる縦線及び横線を有し、該フィラメント糸は、マルチフィラメント、モノフィラメント、又は中実の繊維からなる、前記<6>〜<16>の何れか1に記載の衛生マスク。
【0056】
<18>
前記貫通孔は、1個当たりの面積が0.02〜25mm
2である、前記<1>〜<17>の何れか1に記載の衛生マスク。
<19>
前記基材層の構成材料は、貫通孔の1個当たりの面積が、好ましくは0.02mm
2以上、より好ましくは0.04mm
2以上であり、また、好ましくは25mm
2以下、より好ましくは20mm
2以下であり、また、好ましくは0.02mm
2以上25mm
2以下、より好ましくは0.04mm
2以上20mm
2以下である、前記<1>〜<18>の何れか1に記載の衛生マスク。
<20>
前記積層シートは、トータルでの基材層11のテーバーこわさが、好ましくは0.03mN・m以上、より好ましくは0.3mN・m以上である、前記<1>〜<19>の何れか1に記載の衛生マスク。
【0057】
<21>
前記ナノファイバ層を構成するナノファイバは、繊維径が350nm以下であり、好ましくは繊維径が250nm以下、より好ましくは繊維径が220nm以下であり、また好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上である、前記<1>〜<20>の何れか1に記載の衛生マスク。
<22>
前記ナノファイバ層は、繊維径が350nm以下のナノファイバ、繊維径が250nm以下のナノファイバ、又は繊維径が220nm以下のナノファイバを、90質量%以上含んでいる、前記<1>〜<21>の何れか1に記載の衛生マスク
<23>
前記ナノファイバ層は、繊維径が350nm以下のナノファイバのみから構成されていることが好ましく、繊維径が250nm以下又は220nm以下のナノファイバのみから構成されていることが一層好ましい、前記<1>〜<22>の何れか1に記載の衛生マスク。
<24>
前記ナノファイバ層の坪量は、0.50g/m
2以下であり、好ましくは0.40g/m
2以下であり、また、好ましくは0.05g/m
2以上、より好ましくは0.10g/m
2以上であり、より具体的には、好ましくは0.05g/m
2以上0.50g/m
2以下、より好ましくは0.10g/m
2以上0.40g/m
2以下である、前記<1>〜<23>の何れか1に記載の衛生マスク。
<25>
前記ナノファイバ層は、ナノファイバの配向度が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.06以上であり、また、好ましくは1.00以下であり、より好ましくは0.90以下であり、より具体的には、好ましくは0.05以上1.00以下、より好ましくは0.06以上0.90以下である、前記<1>〜<24>の何れか1に記載の衛生マスク。
【0058】
<26>
前記ナノファイバは、高分子化合物を原料とするものであり、好ましくは天然高分子化合物又は合成高分子化合物である、前記<1>〜<25>の何れか1に記載の衛生マスク。
<27>
前記ナノファイバは、水不溶性の高分子化合物からなる、前記<1>〜<26>の何れか1に記載の衛生マスク
<28>
前記積層シートにおいて、前記基材層と前記ナノファイバ層とは、前記基材層と前記ナノファイバ層との間には何らの層も介在させることなく一体化されている、前記<1>〜<27>の何れか1に記載の衛生マスク
<29>
前記衛生マスクの総質量が2g未満であり、好ましくは1.5g以下であり、また、0.7g以上であり、より具体的には0.7g以上2.0g未満とすることが好ましく、0.7g以上1.5g以下にすることが更に好ましい、前記<1>〜<28>の何れか1に記載の衛生マスク。
<30>
前記積層シートの肌当接面側の少なくとも周縁部に、不織布シートが、前記基材層の周縁端の内側から外方に延出した状態に設けられている、前記<1>〜<29>の何れか1に記載の衛生マスク。
<31>
前記不織布シートは、前記積層シートの前記周縁部の内側に配される部分に開口を有する枠形状に形成されている、前記<30>に記載の衛生マスク。
<32>
基材層とナノファイバ層との合計坪量は、基材層がナノファイバ層の片面のみに積層された構成の場合、好ましくは8g/m
2以上、より好ましくは15g/m
2以上、また、好ましくは30g/m
2以下、より好ましくは25g/m
2以下、より具体的には、好ましくは8g/m
2以上30g/m
2以下、より好ましくは15g/m
2以上25g/m
2以下であり、基材層がナノファイバ層の両面に積層された構成の場合、好ましくは16g/m
2以上、より好ましくは30g/m
2以上、また、好ましくは60g/m
2以下、より好ましくは50g/m
2以下、より具体的には、好ましくは16g/m
2以上60g/m
2以下、より好ましくは30g/m
2以上50g/m
2以下である、前記<1>〜<31>の何れか1に記載の衛生マスク。
<33>
耳掛け紐は、光透過性を有する部材で構成され、該光透過性を有する部材として、ポリウレタンやポリオレフィン等のエラストマーが用いられており、該耳掛け紐の全光光線透過率は、好ましくは60%以上であり、また、好ましくは99%以下であり、より具体的には、好ましくは60%以上99%以下である、前記<1>〜<32>の何れか1に記載の衛生マスク。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0060】
〔実施例1〕
水不溶性高分子化合物としてポリビニルブチラール(エスレック(登録商標)BM−1、積水化学工業株式会社)を用いた。1.15gのポリビニルブチラールを8.85gの溶媒(エタノール:1−ブタノール=8:2)に溶解したのち、花王株式会社製の4級塩系界面活性剤(サニゾールC)を0.5部添加して水不溶性ナノファイバ形成液を得た。
基材層には、ポリエステル樹脂製のメッシュシート(ティーロード(登録商標)シャープ4817、山中産業株式会社)を用いた。メッシュシートは、メッシュ数100、開口率65%、線径50μmであった。また、メッシュシートの、平行光線透過率(JIS K7105)、貫通孔1個当たりの面積(孔面積)及びテーバーこわさ(JIS P8125−2000)を表1に示した。
電界紡糸装置を用い、基材層の表面に向けて、水不溶性ナノファイバ形成液を噴霧して水不溶性のナノファイバ層を形成した。印加電圧は35kV、電極間距離は280mm、液吐出量は1mL/hとした。また、ナノファイバ層の形成は、基材層を直径200mmのドラム型コレクターに巻き付け、ドラムの線速度が200m/minになるよう調整しながら行った。得られた積層シートのナノファイバ層は、繊維(ナノファイバ)の繊維径、坪量、及び繊維(ナノファイバ)の配向度が、表1に示す通りであった。
【0061】
〔実施例2〜4〕
実施例1において、ナノファイバ層を形成する際の基材層の線速度を、それぞれ100m/min(実施例2)、63m/min(実施例3)、12m/min(実施例4)に代えた以外は、実施例1と同様にして、ナノファイバ層の片面に基材層が積層された構成の積層シートを得た。得られた積層シートのナノファイバ層は、繊維(ナノファイバ)の繊維径、坪量、及び繊維(ナノファイバ)の配向度が、表1に示す通りであった。
【0062】
〔実施例5〕
水不溶性高分子化合物としてポリウレタン(エラストラン(登録商標)1198A BASFジャパン株式会社)を用いた。ポリウレタン1.2gを溶媒8.8g(DMF:アセトン=84:16)に溶解した後、花王株式会社製の4級塩系界面活性剤(サニゾールC)を0.5部添加して水不溶性ナノファイバ形成液を得た。
基材層には、実施例1で用いたものと同じメッシュシートを用いた。
電界紡糸装置を用い、基材層の表面に向けて、水不溶性ナノファイバ形成液を噴霧して水不溶性のナノファイバ層を形成した。印加電圧は34kV、電極間距離は300mm、液吐出量は2mL/hとした。また、ナノファイバ層の形成は、直径200mmのドラム型コレクターに巻き付け、ドラムの線速度が200m/minになるよう調整しながら行った。得られた積層シートのナノファイバ層は、繊維(ナノファイバ)の繊維径、坪量、及び繊維(ナノファイバ)の配向度が、表1に示す通りであった。
〔実施例6〕
実施例1と同様に作成した積層シートのナノファイバ層の上に、実施例1で使用した基材層を更に積層し、サンドイッチ構造の積層シートを作成した。実施例6で得られた積層シートにおける基材層は、ナノファイバ層の両側の2枚のメッシュシートを重ねて測定したトータルでの平行光線透過率(JIS K7105)が表1に示す通りであった。なお、実施例1〜5及び比較例1〜4においては、個々の基材層11の平行光線透過率と、積層シートの基材層のトータルでの平行光線透過率とが同じである。
【0063】
〔実施例7〕
実施例1で使用した高分子化合物を使用した。1.0gのポリビニルブチラールを9.0gの溶媒(エタノール:1−ブタノール=8:2)に溶解して水不溶性ナノファイバ形成液を得た。また坪量が0.09g/m
2となるよう吹付時間を調整してサンプルを得た。それ以外は、実施例1と同様にして、ナノファイバ層の片面に基材層が積層された構成の積層シートを得た。得られた積層シートのナノファイバ層は、繊維(ナノファイバ)の繊維径、坪量、及び繊維(ナノファイバ)の配向度が、表2に示す通りであった。
〔実施例8〕
実施例7において、基材への吹付時間調整して坪量を、0.21g/m
2に調整した以外は、実施例7と同様にして、ナノファイバ層の片面に基材層が積層された構成の積層シートを得た。得られた積層シートのナノファイバ層は、繊維(ナノファイバ)の繊維径、坪量、及び繊維(ナノファイバ)の配向度が、表2に示す通りであった。
〔実施例9〕
実施例1において、基材への吹付時間調整して坪量を、0.40g/m
2に調整した以外は、実施例1と同様にして、ナノファイバ層の片面に基材層が積層された構成の積層シートを得た。得られた積層シートのナノファイバ層は、繊維(ナノファイバ)の繊維径、坪量、及び繊維(ナノファイバ)の配向度が、表2に示す通りであった。
【0064】
〔実施例10〕
実施例7と同様に作成した積層シートのナノファイバ層の上に、実施例7で使用した基材層を更に積層し、サンドイッチ構造の積層シートを作成した。作成した積層シートの外縁端部のみに、枠状に形成した下記の不織布Bを配設した。実施例10で得られた積層シートにおける基材層は、ナノファイバ層の両面の2枚のメッシュシートを重ね合わせて測定したトータルでの平行光線透過率(JIS K7105)が表2に示す通りであった。
不織布B:ユニチカ株式会社製スパンボンド不織布(エルベス、坪量15g/m
2)。不織布Bは規則的な孔面積を形成していないため、貫通孔1個当たりの面積(孔面積)は測定できなかった。
〔実施例11〕
実施例8と同様に作成した積層シートのナノファイバ層の上に、実施例8で使用した基材層を更に積層し、サンドイッチ構造の積層シートを作成した。実施例11で得られた積層シートにおける基材層は、ナノファイバ層の両面の2枚のメッシュシートを重ね合わせて測定したトータルでの平行光線透過率(JIS K7105)が表2に示す通りであった。
〔実施例12〕
実施例7において、基材への吹付時間調整して坪量を0.40g/m
2に調整した以外は実施例7と同様にして作成した積層シートのナノファイバ層の上に、実施例7で使用した基材層を更に積層し、サンドイッチ構造の積載シートを作成した。実施例12で得られた積層シートにおける基材層は、ナノファイバ層の両面の2枚のメッシュシートを重ね合わせて測定したトータルでの平行光線透過率(JIS K7105)が表2に示す通りであった。
〔実施例13〕
実施例7において、基材への吹付時間調整して坪量を0.11g/m
2に調整した以外は実施例7と同様にして作成した積層シートのナノファイバ層の上に、下記の不織布Cを更に積層し、サンドイッチ構造の積層シートを作成した。
不織布C:ユニチカ株式会社製スパンボンド不織布(エルベス、坪量15g/m
2)。不織布Bは規則的な孔面積を形成していないため、貫通孔1個当たりの面積(孔面積)は測定できなかった。
【0065】
〔比較例1〕
基材層として、下記の不織布Aを用いるとともに、ナノファイバ層を形成する際の基材層の線速度を、100m/minに代えた以外は、実施例1と同様にして、ナノファイバ層の片面に基材層が積層された構成の積層シートを得た。
不織布A:日本バイリーン株式会社製ポリオレフィン/レーヨン樹脂製のマスク用不織布(EW−605,坪量65g/m
2)。不織布Aの平行光線透過率(JIS K7105)を表1に示した。なお、不織布Aは規則的な孔面積を形成していないため、貫通孔1個当たりの面積(孔面積)は測定できなかった。
得られた積層シートのナノファイバ層は、繊維(ナノファイバ)の繊維径、坪量、及び繊維(ナノファイバ)の配向度が、表1に示す通りであった。
【0066】
〔比較例2〕
実施例1で使用した高分子化合物を使用した。1.2gのポリビニルブチラールを8.8gの溶媒(エタノール:1−ブタノール=8:2)に溶解して水不溶性ナノファイバ形成液を得た。また坪量が0.45g/m
2となるよう吹付時間を調整してサンプルを得た。それ以外は、実施例1と同様にして、ナノファイバ層の片面に基材層が積層された構成の積層シートを得た。得られた積層シートのナノファイバ層は、繊維(ナノファイバ)の繊維径、坪量、及び繊維(ナノファイバ)の配向度が、表1に示す通りであった。
〔比較例3〕
実施例1において、基材への吹付時間調整して坪量を、0.58g/m
2に調整し、基材の線速度を100m/minに代えた以外は、実施例1と同様にして、ナノファイバ層の片面に基材層が積層された構成の積層シートを得た。得られた積層シートのナノファイバ層は、繊維(ナノファイバ)の繊維径、坪量、及び繊維(ナノファイバ)の配向度が、表1に示す通りであった。
〔比較例4〕
実施例1で使用した高分子化合物を使用した。1.2gのポリビニルブチラールを8.8gの溶媒(エタノール:1−ブタノール=8:2)に溶解して水不溶性ナノファイバ形成液を得た。また坪量が1.00g/m
2となるよう吹付時間を調整してサンプルを得た。それ以外は、実施例1と同様にして、ナノファイバ層の片面に基材層が積層された構成の積層シートを得た。得られた積層シートのナノファイバ層は、繊維(ナノファイバ)の繊維径、坪量、及び繊維(ナノファイバ)の配向度が、表1に示す通りであった。
【0067】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた積層シートについて、平行光線透過率(JIS K7105)及びBFE(細菌ろ過効率)を測定した。それらの結果を表1に示した。BFE(細菌ろ過効率)は、JIS L1912付属書2.に規定される方法に従って測定し、細菌ろ過効率が95%超という評価基準(以下、「BFE95%<」の基準という)を満たす場合は「OK」、同基準を満たさない場合は「NG」と評価した。
【0068】
また、実施例及び比較例で得られた積層シートを、成人女性の顔面に、鼻の中央辺りから下の全体を覆うように固定し、その状態においてその成人女性の表情の視認性を室内で評価した。表情の視認性は、積層シートを通じて鼻と口が透けて見えるかどうかを目視で判断した。評価は、3名のモニターに2m離れた場所から目視にて観察させ、鼻と口が明確に認識できる場合を「A」、鼻と口が僅かに認識できる場合を「B」、鼻と口がほとんど認識できない場合を「C」と評価した。それらの評価結果を表1に示した。結果は、多数決とし、3名の評価が3つに分かれる場合はBとする。
また、今回作成した積層シートを使用して、一般的なマスクの大きさである250cm2の面積となるようマスクサンプルを作製し、耳かけ用のゴムひも質量0.4gを足してマスクとしての総質量を求め、表1及び表2に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
表1及び表2に示す結果から明かなとおり、実施例の積層シートを用いると、光透過性が高く着用者の表情の視認性に優れるとともに、細菌等に対するバリア性にも優れることが判る。これに対して、基材層が不織布からなる比較例1の積層シートは、光透過性が低く着用者の表情の視認性にも劣っていた。また、ナノファイバの繊維径が大きい比較例2は、光透過性は高いものの、バリア性は低く「BFE95%<」の基準を満たさなかった。また、ナノファイバ層の坪量が大きい比較例3は、光透過性が低く着用者の表情の視認性にも劣っていた。また、ナノファイバの繊維径が大きく、ナノファイバ層の坪量も大きい比較例4は、ナノファイバ層の坪量が高いことにより「BFE95%<」の基準は満たしたが、その反面、光透過性が低く着用者の表情の視認性に劣っていた。