【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、アルミニウム合金の成形限界を広げること、特に自動車の建造で注目されるAA6xxxおよびAA5xxxアルミニウム合金の成形限界を広げること、および大型表面の厳しく成形されたアルミニウム合金の板金部品の製造を特に外皮品質においても可能にする成形方法を提供することである。さらに、アルミニウム複合材料の使用を提案し、それに従い製造された板金部品も提供する。
【0008】
本発明の第1の教示によれば、前述の目的は、軟化焼鈍または溶体化焼鈍状態で芯のアルミニウム合金と少なくとも1つの外層との流動応力の比に
k
f,Aussen/k
f,Kern<0.5、好ましくはk
f,Aussen/k
f,Kern<0.4
が適用され、接触面における工具とアルミニウム複合材料との間の摩擦剪断応力τ
Rが、アルミニウム複合材料の成形中の成形工具の少なくとも1つの局所的な位置で外側アルミニウム合金層の剪断流動応力k
Aussenに達することで、アルミニウム複合材料から作られた金属シートを成形するための方法により解決される。
【0009】
クーロンの摩擦則により、成形工具とアルミニウム複合材料の外側アルミニウム層との接触面の摩擦剪断応力には、
|τ
R|=min(k,μ・|p
N|) …(1)
が適用され、式中、τ
Rは摩擦剪断応力、μは摩擦係数、およびp
Nは基準接触圧、すなわち摩擦を発生させる表面圧力、およびkはアルミニウム複合材料のより軟質な外層の剪断流動応力を表す。
【0010】
上記の関数(1)により、摩擦剪断応力の絶対値に下記の2つの範囲が得られる。
[1] τ
R=μ・|p
N| この場合、μ・|p
N|<k
[2] τ
R=k この場合、μ・|p
N|≧k
最も単純な場合、μは成形を通じて一定のままであるため、表面圧力が増加する場合、摩擦剪断応力τ
Rも直線的に増加する。しかしながら、成形工具と接触している材料の剪断流動応力kにτ
Rが達する場合、摩擦剪断応力は剪断流動応力kまでに限られる。
【0011】
さらにフォン・ミーゼス(von Mises)の理論によれば、成形対象の材料の剪断流動応力kおよび流動応力k
fには、
k=k
f/√3
が適用され、式中、k
fは0.2%塑性歪み時の引張試験において決定された降伏強度R
p0.2に対応する。
【0012】
流動応力k
f,Aussenが、したがって剪断流動応力k
Aussenも、アルミニウム芯合金k
f,Kernのそれよりかなり低い外側の軟質アルミニウム合金層は、成形工具に接触している。このため、少なくとも1つの局所的な位置で、成形中に接触している成形工具とアルミニウム複合材料との間の摩擦剪断応力には、
τ
R=k
Aussen
が適用される。
【0013】
これから、外側アルミニウム合金層の流動応力k
f,Aussenに対して剪断流動応力の値k
Aussenが小さくなるほど、工具における材料の移動方向と反対の摩擦力は小さくなることは明らかである。その結果、この場合、アルミニウム複合材料から作られた板金を深絞り加工工具に挿入しやすくすることができる。これは、片面に外側アルミニウム合金層を設けたアルミニウム複合材料にも言える。ただし、より軟質な外側アルミニウム合金層は、成形工具と実質的に接触しているものとする。
【0014】
芯合金用のAA5xxx系またはAA6xxx系のアルミニウム合金と、芯合金に対する流動応力の比が0.5より小さい、好ましくは0.4より小さい、片面または両面に設けられた軟質アルミニウム合金層とからなる、特許請求の範囲に記載された材料の組み合わせを用いると、アルミニウム複合材料の摩擦剪断応力τ
Rが、アルミニウム複合材料の成形中の少なくとも1つの局所的な位置で外側アルミニウム合金層の剪断流動応力k
Aussenに達し、そこで剪断流動応力までに限られることが発見された。これにより、芯合金から作られた一体金属シートと比較してアルミニウム複合材料の成形性のかなりの改善が達成される。
【0015】
出願人自身の出願である特許文献1と異なり、本発明は、技術的教示において成形度を達成するため成形中の摩擦剪断応力の影響を含むので、完全に新しい方針が採られている。これまでのアプローチに反して、ここでは、より軟質な外側アルミニウム合金層の剪断流動応力により摩擦剪断応力が限定されるという作用が使用される。
【0016】
実験室規模の十字工具を用いた成形試験では、関連するアルミニウム合金の流動応力の上記の比k
f,Aussen/k
f,Kernに従う条件で、同一の工具形状で同様の潤滑条件の場合に、押し付けクランプ力が少なくとも2.6倍増加し得ることが示された。十字工具試験における押し付けクランプ力が高まる可能性があることから、特に深絞り加工プロセスにおいて対応するアルミニウム複合材料の成形性がかなり完全することが示唆される。より軟質な外層の剪断流動応力は、アルミニウム芯合金の剪断流動応力と比較して相対的に低いので、成形中の摩擦剪断応力が著しく減少し、プロセスウィンドウを拡大することができる。これにより、たとえばAA6xxxアルミニウム合金を用いて外皮品質のアルミニウムから自動車の単一部側壁を製造できる可能性が広がり、それによって多部アルミニウムの解決策と比較してコスト削減の可能性が大きくなる。
【0017】
内部部品および構造部品に実質的に使用されるAA5xxx系のAlMgアルミニウム芯合金にも同じことが言えるため、高度の成形が求められる大型表面の内部部品および構造部品でさえも製造することができる。
【0018】
本方法のさらなる実施形態によれば、成形は深絞り加工プロセスおよび/または張出し成形プロセスを含む。これらの成形プロセスでは、摩擦剪断応力τ
Rが板金材料と成形工具との間の相対移動を複雑にする。既に記載したように、摩擦剪断応力τ
Rがより軟質な外側アルミニウム合金層の剪断流動応力k
Aussenの低値に限られると、深絞り加工または張出し成形の性能が改善される。このため、成形用の成形工具の力を低くして材料を絞ることができるので、かなりより高度の成形を達成することができる。
【0019】
本発明による方法のさらなる実施形態によれば、少なくとも1つの外側アルミニウム合金層が、好ましくはアルミニウム複合材料全体の厚さの5%〜15%を有する場合、外層、およびアルミニウム複合材料の全厚さに対する外層の割合によりアルミニウム複合材料の強度をあまり低下させることなく、本発明による方法の技術的効果を使用することができる。
【0020】
好ましくは、摩擦剪断応力τ
Rは、成形工具内の少なくとも1つの局所的な位置で外側アルミニウム合金層の剪断流動応力k
Aussenに達するまで表面圧力の増加により成形中に増大する。表面圧力が工具内でしわが生じないほど大きくなるように選択される以前の成形方法に反して、たとえば、成形限界の拡大に関してアルミニウム複合材料の有利な作用を達成することを目的として、表面圧力を増大させることができる。さらに、それでも摩擦値がより高く、よりコスト効率の高い表面トポグラフィを有する複合材料の成形に成功できることも考えられる。よりコスト効率の高い表面トポグラフィは、たとえば、板金の「ミル仕上げ」表面トポグラフィにより得ることができ、通常成形度の大きい場合に設けられる潤滑剤ポケットを有するトポグラフィと比較して、特定のトポグラフィを利用するための追加の圧延ステップ形態の作業ステップが省かれる。
【0021】
本方法のさらなる実施形態により、溶体化焼鈍状態のAA6xxx系または軟化状態のAA5xxxのアルミニウム合金が少なくとも20%、好ましくは少なくとも22%の均一歪みA
gを有することで、特に優れた成形結果が達成された。この例には、T4状態のAA6016系のアルミニウム合金またはO状態のアルミニウム合金AA5182がある。
【0022】
さらに、圧延方向と直角方向に少なくとも24%、好ましくは少なくとも26%の破断伸びA
80mmを有するAA6xxx系のアルミニウム合金もアルミニウム芯合金の材料として好適である。これらは、特に外観に視感度要求がある自動車の外皮要素用のローピングを含まないまたはローピングが少ない一実施形態においても好適である。
【0023】
さらに、少なくとも21%、好ましくは少なくとも22%の均一歪みA
gのほか、圧延方向と直角方向に少なくとも25%、好ましくは少なくとも26%の破断伸びA
80mmを有するAA5xxx系のAlMgアルミニウム芯合金も、自動車の目に見える要素を形成しない構造部品、したがって、たとえば、フレーム構造部品、内部ドア部品、ツイストビームアクスル等として好適である。
【0024】
上記に言及したアルミニウム芯合金は、本発明による方法を用いてさらに一段と相当増強し得るこれまでの非常に優れた成形能力と、非常に高い強度を組み合わせたものである。
【0025】
AA6xxx系の合金をアルミニウム芯合金として使用し、AA8xxx系のアルミニウム合金を少なくとも1つの外側アルミニウム合金層として使用する場合、またはAA5xxx系の合金をアルミニウム芯合金として使用し、AA8xxx系、AA1xxx系、AA5005系、AA5005A系のアルミニウム合金を少なくとも1つの外側アルミニウム合金層として使用する場合、アルミニウム複合材料は、極めて優れた成形特性を有する確立された合金を用いて製造することができる。
【0026】
特に好ましい実施形態では、アルミニウム芯合金はAA6016系の合金であり、少なくとも1つの外側合金層はAA8079系の合金である。この組み合わせであれば、上記に言及した十字工具試験において、一体のAA6016変形例を10倍超上回る押し付けクランプ力が可能になる。これらの成形特性の改善は、押し付けクランプ力の増加の場合だけでなく、円形ブランク直径の拡大の場合にも十字工具において達成される。
【0027】
0.5mm〜2.0mm、好ましくは0.8mm〜1.5mmの厚さを有するAA6xxx系のアルミニウム芯合金を有するアルミニウム複合材料が、本方法のさらなる実施形態により成形される場合、自動車の建造において起こる外皮部品の強度要求は、成形性に対して高まる要求と共に満たすことができる。
【0028】
AlMg6系のアルミニウム芯合金およびAA1050系またはAA5005系もしくはAA5005A系の少なくとも1つの外側アルミニウム合金層にも同じことが言える。言及した合金の組み合わせはすべて、流動応力の比がk
f,Aussen/k
f,Kern<0.5である。
【0029】
本方法のさらなる実施形態により、0.5mm〜3.5mm、好ましくは1.0mm〜2.5mmの厚さを有するAA5xxx系、特にAlMg6の芯合金を有するアルミニウム複合材料を成形する場合、成形性の改善と同時に構造要素に対する強度要求を満たすことができる。
【0030】
アルミニウム合金複合材料の製造には、圧延クラッドおよび同時鋳造の両方を使用することができる。圧延クラッドにおいては、最初にアルミニウム芯合金材料から圧延インゴットを鋳造し、均質化する。次いで芯合金と共にコーティング(単数または複数)をパケットにして、熱間圧延温度に加熱する。あるいは、パケットの作製後にさらに均質化を行ってもよい。その後、加熱したパケットを熱間圧延し、次いで最終厚さに冷間圧延する。
【0031】
AA6xxx材料では、500℃〜600℃、好ましくは550℃〜580℃の温度で1時間超圧延インゴットの均質化を行う。熱間圧延は、出願人自身の出願である特許文献1と異なり、熱ストリップの焼入れを行うことなく、300℃〜400℃の巻き取り温度および5〜10mmの典型的な厚さで行う。外皮部品の場合、次いで3〜4mmに第1の冷間圧延を行い、その後たとえば室炉にて370℃〜450℃の金属温度で少なくとも1時間中間焼鈍を行う。約500℃〜570℃の典型的な温度で最終厚さに最終溶体化焼鈍し、その後焼入れし、ほぼ室温で少なくとも3日間自然時効することにより、ストリップをT4状態で提供することができる。任意に、カソード浸漬塗装における硬化性を促進するため、焼入れ直後にストリップに加熱処理を行う。
【0032】
AA5xxxを用いたアルミニウム複合材料では、300℃〜500℃の中間焼鈍温度および軟化焼鈍温度を使用する。加えて、AA5xxx材料は焼入れ手順を経ずに、最終軟化焼鈍を室炉または連続炉で行うようにしてもよい。あるいは、AA5xxxを用いたアルミニウム複合材料は熱ストリップとして直接使用してもよい。
【0033】
アルミニウム合金AA5182、AA5019、AlMg6、AA6016、AA6014、AA6022、AA6451およびAA6111は、たとえば芯合金層の材料として好適である。AA1xxx系またはAA8xxx系のアルミニウム合金、たとえばAA1050、AA1100、AA1200、AA8011、AA8014、AA8021、特にAA8079は外側アルミニウム合金層として好ましい。
【0034】
本発明の第2の教示によれば、上記の目的は、AA5xxx系またはAA6xxx系のアルミニウム合金から作られた芯合金層、および片面または両面に設けられ、軟化焼鈍状態または溶体化焼鈍状態で25MPa〜60MPaの降伏強度R
p0.2を有する少なくとも1つの外側アルミニウム合金層を有するアルミニウム複合材料の使用であって、本発明による成形方法において使用される軟化焼鈍状態または溶体化焼鈍状態での流動応力の比が
k
f,Aussen/k
f,Kern<0.5、好ましくはk
f,Aussen/k
f,Kern<0.4
である使用により解決される。こうした成形方法におけるアルミニウム複合材料の使用により、AA6xxx芯合金を有する外皮部品としてあるいはAA5xxx芯合金を有する目に見ない構造部品としてとりわけ高度の成形が要求される、特に自動車の建造用の大型表面の単一部板金部品の提供が可能になる。
【0035】
最後に、上記の目的は、本発明の第3の教示に従い、本発明による方法を用いて成形された、特に深絞りされたまたは張出し成形された板金部品により解決される。既に記載したように、本発明による方法により大型表面の板金部品を提供すること、およびさらなる作業ステップ、たとえば、1つのユニットに組み付けることができるより小さな要素の連結ステップを回避することが可能になる。したがって、かなり大型でより複雑に成形された要素を利用可能なものにすることができる。
【0036】
さらなる実施形態によれば、板金部品は、好ましくは自動車の構造部品または外皮部品である。たとえば、板金部品は、たとえばAA5xxx系のアルミニウム芯を使用する場合、フロアアセンブリの複雑なフロアパンまたはサイドドア内部部品であってもよい。外皮部品、たとえば泥よけ、ボンネット、特に側壁またはフレームには、AA6xxx芯合金を有するアルミニウム複合材料を用いてもよい。言及した板金部品はすべて、本発明による成形方法を特定のアルミニウム複合材料と組み合わせて達成される非常に高い成形度が必要とされる。したがって、こうした材料ではこれまで達成されていなかった成形性能が利用可能になるため、自動車においてアルミニウム材料の考えられる用途が拡大し得る。
【0037】
以下、図面と共に例示的な実施形態によって本発明をより詳細に説明する。