特許第5961772号(P5961772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5961772
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】バイオフィルムの形成抑制方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 1/00 20060101AFI20160719BHJP
   C02F 1/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   E02B1/00 301Z
   C02F1/00 U
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-559344(P2015-559344)
(86)(22)【出願日】2015年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2015059803
【審査請求日】2015年12月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507030863
【氏名又は名称】株式会社セシルリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柳川 敏治
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 伸介
(72)【発明者】
【氏名】山下 桂司
(72)【発明者】
【氏名】神谷 享子
(72)【発明者】
【氏名】林 義雄
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/027402(WO,A1)
【文献】 特開2010−207278(JP,A)
【文献】 特表2009−507525(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3111579(JP,U)
【文献】 特開平07−265867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00
C02F 1/00
C02F 1/30
A01M 29/10
B08B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の構造物におけるバイオフィルムの形成を抑制する方法であって、
前記構造物に対し、409〜412nmの波長を含み、409〜412nmの波長域においてピークを有する光を照射する方法。
【請求項2】
前記光が400〜440nmの波長域のうち一部の波長を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光は、409〜412nmの波長域に、前記構造物に対する照射強度が1.4μWcm−2nm−1以上の波長を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記光が400〜420nmの波長を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記光の照射強度が、3Wm−2以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記光がレーザー光でない、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記光がLED光である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記水が海水である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の構造物におけるバイオフィルムの形成を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水として海水を利用する火力発電所や原子力発電所などの発電プラントにおいては、復水器細管の熱交換器内などに、バイオフィルムが形成し易い。形成されたバイオフィルムの量が多くなると、熱交換器の熱交換効率が低下するなどの不具合を招くおそれがある。
【0003】
そこで、従来から、次亜塩素酸ナトリウム溶液や二酸化塩素などの塩素系薬剤を冷却水に注入することが行われている(例えば、非特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】海生生物汚損対策マニュアル.電気化学会・海生生物汚損対策懇談会 編,技報堂出版,1991.
【非特許文献2】発電所海水設備の汚損対策ハンドブック.火力原子力発電技術協会 編,恒星社厚生閣,2014.
【非特許文献3】大型付着生物対策技術総覧.川邊允志 著,電気化学会・海生生物汚損対策懇談会,1998.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水中の構造物におけるバイオフィルムの形成を抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様は、水中の構造物におけるバイオフィルムの形成を抑制する方法であって、前記構造物に対し、409〜412nmの波長を含む光を照射する方法である。前記光が400〜440nmの波長域のうち一部の波長を含んでもよい。前記光が409〜412nmの波長域においてピークを有してもよい。前記光は、409〜412nmの波長域に、前記構造物に対する分光照射強度が1.4μWcm−2nm−1以上の波長を有することが好ましい。前記光が400〜420nmの波長を含んでもよい。前記光の照射強度が、3Wm−2以上であることが好ましい。前記光がレーザー光でないことが好ましい。前記光がLED光であってもよい。前記水が海水であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例において、空気中で測定した光量子束密度と放射照度の関係を示したグラフである。
図2】本発明の一実施例において、各付着板の分光放射照度を示したグラフである。
図3】本発明の一実施例において、LED光が海水中を伝わる際の、放射照度の減衰を示したグラフである。
図4】本発明の一実施例において、付着板に取り付けられたクレモナ網を示す写真である。
図5A】本発明の一実施例において、海水中に設置後、1週後に付着板に形成されるバイオフィルムの様子を示した写真である。
図5B】本発明の一実施例において、海水中に設置後、2週後に付着板に形成されるバイオフィルムの様子を示した写真である。
図5C】本発明の一実施例において、海水中に設置後、3週後に付着板に形成されるバイオフィルムの様子を示した写真である。
図5D】本発明の一実施例において、海水中に設置後、16週後に付着板に形成されるバイオフィルムの様子を示した写真である。
図6】本発明の一実施例において、付着板の間に設置し5〜7日で回収したスライドグラスに対し、DAPI染色によって細菌数を計測したグラフである。
図7】本発明の一実施例において、付着板の間に設置し5〜7日で回収したスライドグラスに付着した細菌密度とLED光照射面中央からの距離の関係を示したグラフである。
図8】本発明の一実施例において、付着板の間に設置して5〜7日で回収し、クリスタルバイオレット染色したスライドグラスに対し、イルミネーターを用いて被覆率を計測したグラフである。
図9】本発明の一実施例において、付着板の間に設置して5〜7日で回収し、クリスタルバイオレット染色したスライドグラスに対し、実体顕微鏡を用いて被覆率を計測したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0009】
本発明にかかる、水中の構造物におけるバイオフィルムの形成を抑制する方法は、構造物に対し、409〜412nmの波長を含む光を照射する工程を含む。
【0010】
ここで、構造物は水中にあれば特に限定されないが、火力発電所、原子力発電所、潮流発電所、波力発電所、海流発電所、海洋温度差発電所、水力発電所、海水揚水発電所、LNGプラント、石油精製プラント、海水淡水化プラントにおける取水管路、ロータリースクリーン、バースクリーン、ドラムスクリーン、除貝装置、マッセルフィルター、ネットスクリーン、取水ポンプ、循環水ポンプ、循環水管、熱交換器、復水器、軸受冷却水冷却器、潤滑油冷却器、LNG気化器、発電機、スポンジボール洗浄装置、放水管路、海水水温計、残留塩素計、水質計測器、クラゲ防止網、水車、インペラ、バルブ、回転軸、導水管路、ろ過槽、膜、ダム、船舶、造船所における船体、スクリュー、バラスト水タンク、バラスト水導入・排出管、ポンプ類、水産養殖設備、水産試験場、水産設備、水族館、魚介類飼育水槽における水槽、配管、ポンプ類、砂ろ過槽、網イケス、ロープ、ノリ養殖網、ブイ、浮き桟橋、フロート、定置網、家屋における洗濯機、風呂場、洗面所、浄水場、温泉、銭湯、水耕栽培工場における水利用設備などが例示できる。また、水自体や、養殖生物、例えば魚類、カキ類、ホタテ貝など表面も構造物の一例として挙げられる。
【0011】
バイオフィルムとは、水中の構造物の表面に、微生物によって形成される構造体であり、通常は膜状であって、微生物が分泌した多糖等の細胞外高分子物質(EPS, extracellular polymeric substance)を含む。また、バイオフィルムには、微生物の遺骸、排泄物、糞、棲管などが含まれてもよい。ここで微生物とは、細菌類、真菌類、藍藻類、原生動物などに属する生物が例示できる。また、付着珪藻類、緑藻類、褐藻類、紅藻類などの微小藻体、カイメン類、ヒドロ虫類、クラゲ類、管棲多毛類、コケムシ類、ヨコエビ類などの幼生もこれに含まれる。
【0012】
水中の構造物に対して照射する光は、409〜412nmの波長を含む光である。400〜440nmの波長域のうち一部(ここで、「一部」とは、「全部」を含まないものとする)の波長を含む光であってもよい。その光は、400〜420nmの全波長を含むことが好ましく、紫外線(400nmより小さい波長)、可視光(400〜830nm)及び赤外線(830nmより大きい波長)を含んでもよい。400nm〜420nmの波長の光は、海水中での透過性が紫外線より高いので、本発明は紫外線のみを含む光を用いる方法よりも広範囲に光の効果を及ぼすことができる。また、実施例で示すように、光が409〜412nmの波長域においてピークを有することが好ましい。なお、この光はレーザー光でなくてもよい。
【0013】
光の照射強度は特に限定されず、照射する環境(例えば、水質、水の深さ、透明度など)によって、当業者が適切に、且つ容易に決めることができるが、照射強度が約3Wm−2以上である光が好ましく、約200Wm−2以上の波長を有する光がより好ましい。そして、409〜412nmの波長域において、付着生物に対する分光照射強度が約1.4μWcm−2nm−1以上の波長を有する光が好ましく、約500μWcm−2nm−1以上の波長を有する光がより好ましい。光の照射時間も特に限定されず、照射する環境によって、当業者が適切に、且つ容易に決めることができるが、例えば、3秒以上、10秒以上、30秒以上、100秒以上または5分以上の照射時間を設定することができる。照射は、持続的であっても、間欠的であっても構わないが、間欠的である場合、光の総照射時間を上記のような時間とするのが好ましい。
【0014】
照射方法は、特に限定されないが、例えば、光照射装置として、LED照射装置,水銀ランプ,蛍光管等の装置などを用いることができるが、LED照射装置を用いることが好ましく、特にLEDを照射する光ファイバーであることが好ましい。
【実施例】
【0015】
<1>モデル水路の設置
本実施例では、広島県水産海洋技術センターの海上施設上の敷地内に、長さ7mx幅10cmx深さ10cmのモデル水路を設置し、0.1m/秒の流速で海水を流した。水路の一方の壁に、LED照射装置(シーシーエス社製SMD素子実装型、LEDパネルの型式:ISL−150X150−VV−TPHI?BTFN、照射面:15cmx15cm、SMD素子数:120(8x15)個、SMD素子サイズ:5x5mm、ピーク波長:409〜412nm、指向角特性:半角値58.6°、半値幅14nm)を設置し、拡散板と石英ガラス(厚さ5mm)を通して水路内に光を水平に照射した。パネルと石英ガラスの間には、楕円拡散タイプ(拡散角60°×1°)のレンズ拡散板(株式会社オプティカルソリューションズ、LSD60×1PC10−F5、厚み1.25mm、基盤;ポリカーボネイト)を装着し、この拡散板により照射光を拡散させながら、LED光を水路内に照射した。なお、LED光を照射する水路壁面の開口部は10cm×10cm(正方形)とした。
【0016】
次に、水路の他方の壁に、複数の付着板(幅10cmx高さ15cm)を並列に設置した。まず、LEDパネルの真正面に付着板(E)を配置し、両側に4枚ずつ、25cmごとに付着板(上流から下流方向に、Eを挟んでA〜DとF〜I)を配置し(板同士の隙間は15cm)、下流側にさらに4枚(J〜M)、100cmごとに配置し(板同士の隙間は90cm)、最終的に付着板が上流から下流方向にA〜Mの順で並ぶようにした。
【0017】
試験中、水路では光を遮り、LEDパネルと対面に位置する付着板E(基点)の中心における放射照度を約200Wm−2となるように、LED光を調節した。試験開始時(2014年3月6日15:00)における光の測定結果を表1に示す。なお、対象としては、LED光を照射せず、光を遮った水路(付着板はA’〜M’)を用いた。
【0018】
【表1】
【0019】
ここで、海水中の放射照度は、海水中における光量子束密度を測定し、予め空気中で測定した光量子束密度と放射照度の関係から得られた、以下の換算式(I)を用いて算出した(図1)。
放射照度(Wm−2)=0.112884×光量子束密度(μmols−1cm−2)+0.051842・・・(I)
試験期間中は、観察日毎に付着板Eにおける放射照度を200Wm−2に調整する作業を行なったが、その際、海水中における光量子束密度を1768.5μmols−1cm−2に設定することによりこの調整を行なった。
【0020】
なお、測定には以下の計測器を使用した。
(1)光量子束密度;メイワフォーシス株式会社製光量子計LI−192SA(400〜700nm)
(2)分光放射照度;株式会社オプトリサーチ社製多目的分光放射計MSR−7000N(200〜2500nm)
(3)照度;コニカミノルタセンシング株式会社製照度計T−10WL(測定波長;400〜700nm)
また各付着板におけるLED光の波長と分光放射照度の関係を図2に示したが、どの付着板でもピーク波長は409〜412nmにあった。
【0021】
表1の海水中において、LED光の放射照度は、パネルからの距離5cmにおいて73.2%にまで減衰し、10cmでは44.43%に減衰した(図3)。したがって、付着板Eにおける放射照度を200Wm−2と規定した場合、パネルからの距離0cmにおける放射照度は450Wm−2となり、水路中央(距離5cm)における放射照度は325Wm−2となる。
【0022】
実際の対面パネルに対し、LED光の放射範囲は幅30cmの範囲に及んでいた。通水海水の流速は0.1m/secであることから、海水中の幼生はこの照射領域を1〜3秒を要して通過し、この間、(少なくとも1秒間は)200〜450Wm−2の放射照度光を浴びることになる。
【0023】
各付着板には、クレモナ網(日東製網株式会社製無結節網;糸太さ1mm、目合い5mm)を取り付けた(図4)。付着板は、幅が10cmであり、水路内において水深10cmまで浸漬するが、付着生物は海水外の高さ13cmにまで付着したので、水深13cmまで評価対象とし、従って付着板の評価面積は130cmとなる。この評価面における糸数は、縦糸16本、横糸20本である。目合い(5mm×5mm)の数は、評価面当たり300個(縦列15個×横列20個)となる。
<2>LED光照射によるバイオフィルム形成の抑制
こうして配置した付着板に形成されるバイオフィルムの観察を、1、2、16週後に行った。その時の付着板の外観を図5に示すが、2週間後からすでに明らかなように、付着板(E)でバイオフィルムの形成が抑制されており、16週後でも、付着板(E)にはバイオフィルムの形成が見られなかった。付着板(D)(F)では、(E)より弱いが、バイオフィルムの形成抑制が観察された。
【0024】
この間、付着板の隙間に、中央にスライドグラス(76mmx26mm)を縦に(長軸を垂直方向に)設置した。5〜7日後に回収したスライドグラスに対し、以下の試験を行った。スライドグラスの名称は、両側にある付着板のイニシャルを並べることで表すものとする(例えば、AとBの間にあれば、ABとする)。
(1)DAPI(4’,6−diamidino−2−phenylindole)染色による細菌数の計数
乾燥保存したスライドグラスを、TBS中に5分間浸した後、0.05mg/mlDAPI染色溶液200μlを滴下し、暗所で10分間反応させた。染色後、余分なDAPI染色液をTBSで洗浄除去し、カバーグラスを乗せ、落射型蛍光顕微鏡カメラシステム(Olympus BX51&C3040Z)により撮影した(対物×100油浸、WU励起)。スライドグラスの中央付近を一方向に、撮影面が重複しないように十分移動させながら5回撮影した。同時に対物ミクロメーターを撮影し、撮影面積を算出した(0.12mm×0.09mm)。撮影画像は、PCのモニター上で目視で確認しながら、細菌数を計数した。その結果、図6に示すように、DEとEFにあるスライドグラスが著しく低い細菌数を示した。
【0025】
また、スライドグラスに付着した細菌密度とLED光照射面中央からの距離の関係を図7に示した。負側の相関係数が有意ではないものの、上下流方向に光源から遠ざかるにしたがって付着細菌密度が高くなる傾向を示した。
(2)クリスタルバイオレットによる染色
スライドグラスを、0.5%クリスタルバイオレット溶液(2%EtOHを含む)に1分間浸した後、精製水で10分間洗浄し、乾燥させた。
【0026】
クリスタルバイオレット染色したスライドグラスをイルミネーター(HAKUBA KLV−7000 あるいはSINKOHSHA SV540A)に乗せ、デジタルカメラ(Olympus BX51)で全体を撮影した。撮影画像は写真編集ソフト(Photoshop 5.0LE, Adobe)により、中央部に固定した40mm×10mmの領域を切り出し、評価面とした。評価面は2値化し、画像解析ソフト(ImageJ 1.48v, National Institutes of Health)により暗色部(バイオフィルム)の画素数を計数し、被覆率(%)を算出した。その結果の一例を図8に示すが、DEとEFについては常に低い値を示した。
(3)実体顕微鏡撮影
試験法2と同様にクリスタルバイオレット染色したスライドグラスを、実体顕微鏡撮影システム(Olympus SZX & C3040Z)により透過光で撮影した。その際、スライドグラスをランダムに5つ配置した窓開きプレートに乗せ、窓の中央を撮影した。同時に対物ミクロメーターを撮影し、撮影面積を算出した(1.35mm×1.01mm)。そして、(2)と同様に、画像の解析を行った。その結果の一例を図9に示すが、(2)と同様、DEとEFについては常に低い値を示した。
【0027】
以上のように、強弱はあるものの、付着板(D)から(F)の場所で、バイオフィルムの形成抑制が観察された。効果が強い場合、バイオフィルムの形成を防止することができた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によって、水中の構造物におけるバイオフィルムの形成を抑制する方法を提供することが可能になった。
【要約】
本発明は、水中の構造物におけるバイオフィルムの形成を抑制する方法であって、バイオフィルムの形成を抑制する構造物に対し、409〜412nmの波長を含む光を照射することを特徴とする。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9