(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5961824
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】EFG法用育成炉の断熱構造
(51)【国際特許分類】
C30B 15/34 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
C30B15/34
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-180760(P2015-180760)
(22)【出願日】2015年9月14日
【審査請求日】2015年9月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】並木精密宝石株式会社
(72)【発明者】
【氏名】樋口 数人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 次男
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 一彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 忠
【審査官】
村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04335081(US,A)
【文献】
特開2001−322892(JP,A)
【文献】
特表2014−502952(JP,A)
【文献】
特開2011−057482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EFG法用育成炉内に設けられ、ヒーター外側を覆うヒーター用断熱構造であって、ヒーター側面に配置された側面部断熱材及び底面に配置された底面部断熱材に対し、当該側面部断熱材の上面、側面及び、両断熱材の底部のみを別体の断熱材によって包み、当該側面部断熱材の上面及び側面と、別体の断熱材との間に空隙を挟んだEFG法用断熱構造。
【請求項2】
前記各断熱材について、ヒーター側面及び底面に配置された断熱材をグラファイト又はカーボンフェルトで、別体の断熱材を成形断熱材によってそれぞれ構成した請求項1記載の断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EFG法(Edge−defined Film−fed Growth法)を用いてサファイアリボンを育成するEFG法用育成炉の断熱構造に関する。
【0002】
近年、LD及びLED等に用いられる半導体基板用単結晶材料は、育成炉内で溶融された結晶材料に種結晶を接触させ、当該種結晶を引き上げることによって同じ結晶を成長させるエピタキシャル成長によって製造されている。この様な育成炉のうち、代表的なものとして特開昭63−242994(以下特許文献1として記載)及び特許4245856(以下特許文献2として記載)に記載の育成炉がそれぞれ公開及び登録されている。これらの育成炉について、特許文献1ではGaAs等の低融点材料に係わる育成炉を用いており、ヒーター全体を断熱材で覆い、更に当該ヒーターの外周側面を材料の異なる断熱材で2重にカバーした断熱構造によって耐熱性及び耐劣化性を向上したことをその技術的特徴としている。また、特許文献2では、毛細管現象によって坩堝内のダイに構成された板状の微小空隙に充填された融液を種結晶によって引き上げ、単結晶サファイアリボンを結晶成長させるEFG法を用いており、一体化された断熱材によってヒーター及び坩堝を包んだ断熱構造が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−242994
【特許文献2】特許4245856
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した断熱構造について、前記サファイアの育成には2000℃以上の高温を長時間安定して維持することが必要となっている。この為、育成炉内に設けた断熱材の消耗は激しく、特に特許文献2に記載された様な一体化された断熱材では、結晶面毎に異なる育成条件、課題等に合わせた温度調整が難しく、一部が劣化した時点で全体を交換しなければならないという課題を有していた。また、特許文献1記載の断熱構造は融点1200℃程度の低融点材料に用いる事を前提としている為、前記高温に耐え、断熱効果を保つことができない。
【0005】
上記課題に対して本願記載の発明では、2000℃以上の高温に耐えることが可能で、炉内の温度調整及び断熱材交換が容易なEFG法用サファイア育成炉の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的のために本発明に於ける第1の態様記載の発明は、ヒーターから発生する熱をその放射方向毎に対応して保温している。より具体的には、ヒーター側面及び底面のみを覆うヒーター用断熱材に於いて、当該断熱材の上面、側面及び、底部のみを別体の断熱材によって包んだことをその技術的特徴としている。
【0007】
また、本発明に於ける第2の態様記載の発明では、前記側面部の断熱材について、内側をグラファイト又はカーボンフェルトで、外側を成形断熱材によってそれぞれ構成したことをその技術的特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上述した技術的特徴によって本発明に於ける第1の態様記載の発明は、炉内に於ける余分な放熱を抑え、熱効率の向上と炉内温度の安定化という効果とを得ることができる。加えて、当該熱効率の向上によりヒーターの出力を抑えて従来の温度条件を維持することが可能となっている。これは、前記側面部の断熱材について、断熱材外側となる上面、側面、及び底面のみに追加の断熱材を設けた二重構造とした事による効果となっている。即ち、本願記載の発明に於いて、当該側面部内側の断熱材は2000℃以上という高温状況下でヒーターからの放熱を抑える一方、断熱材それ自体が赤熱する。ここで、本願記載の発明では当該赤熱する断熱材のみを前記外側の断熱材によって覆うことで、前記赤熱した断熱材からの放熱を防ぎ、断熱材内周に於ける均熱性を確保すると共に、ヒーター上端部からの放射熱を利用することで、サファイアの結晶育成条件を整え、安定した結晶育成を可能にしている。加えて、当該放射熱によって、引き上げ時に於ける急激な温度変化を防ぎ、急冷による割れ及び脱落といった不良を抑えつつ、前記熱効率の向上という効果をも得ている。また、当該二重構造としたことで、前記断熱材の交換時についても、劣化が速くなる内側部材のみの交換にて容易に対応することができる。
【0009】
上記第1の態様記載の効果に加えて、本発明に於ける第2の態様記載の発明を用いることで、育成炉内に於ける温度条件について更なる向上を図ると共に、育成炉内に於いて用いる断熱材を減らし、より大きな結晶の育成に対応させることが可能となる。これは、内側の断熱材であるグラファイト、カーボンフェルトに対し、より断熱効果の高い成形断熱材にて外側の断熱材を構成したことによる。
【0010】
即ち、本願の対象とする育成炉ではEFG法を用いており、育成開始時、坩堝に満たされたアルミナ融液の液面にサファイアリボンの素となる種結晶を浸し、当該浸した種結晶を上に引き上げていくことで、サファイア結晶を育成している。この為、当該育成に際しては、坩堝や種結晶付近の温度環境が重要となっており、育成用の溶融炉の中にホットゾーンを構成することで、サファイアを育成する最適な温度条件を整えていく。一方、育成炉の構造上、断熱材は間隔を設けてヒーター周辺に配置する必要があり、使用される断熱材の量が増えるに従って育成炉内に配置可能な坩堝の径は減少していく。加えて、単に断熱材全体の性能を向上するだけでは前記断熱材の赤熱によってヒーター内側及びその周辺に形成されるホットゾーンを育成に適した状態にすることが難しい。ここで、本願記載の育成炉では、前記赤熱した断熱材の外側のみを、更に別の断熱材によって覆った構造を用いている。この為、当該断熱材の性能を向上させると共に、前記赤熱した断熱材の断熱材と組み合わせた事によって均熱性を確保する本願記載の構造を設けることで、ホットゾーン及び当該ホットゾーン内で使用可能な坩堝の径を広げ、育成するサファイアリボンの幅及び枚数を増加することが可能となる。
【0011】
以上述べたように、本願記載の発明を用いることで、2000℃以上の高温に耐えることが可能で、炉内の温度調整及び断熱材交換が容易なEFG法用サファイア育成炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の最良の実施形態に於いて用いる育成炉全体の概略図
【
図2】
図1に於いて示した育成炉内の断熱構造に係わる全体斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、
図1、
図2、
図3を用いて、本発明に於ける最良の実施形態を示す。尚、図中の記号及び部品番号について、同じ部品として機能するものには共通の記号又は番号を付与している。
【0014】
図1に本実施形態に於いて用いる育成炉全体の概略図を、
図2に当該育成炉内の断熱構造に係わる全体斜視図を、そして
図3に当該断熱構造の側断面図を、それぞれ示す。尚、
図2、
図3中、ヒータ配線及び融液、育成されているサファイアリボンについては、図中での記載を省略している。
【0015】
図1に示す様に、本実施形態ではEFG法によるマルチサファイアリボン3の育成を行っている。より具体的には、パイプを介して坩堝内へと供給されるアルミナ粉末をヒーター6によって加熱、溶融し、当該溶融したアルミナを毛細管現象によってダイ5に設けた微小空隙の先端まで運び、種結晶2を介して引き上げていくことで、複数のサファイアリボンが共通の種結晶によって引き上げられたマルチサファイアリボンを育成している。当該マルチサファイアリボン3の育成では、種結晶2の引き上げに従って各サファイアリボンが冷却されていくと共に、前記先端から供給される融液によって連続した結晶育成を行う。これに伴い、本実施形態に於ける断熱構造を用いる事で、ヒーター側面からの放射熱によって当該融液の供給及び結晶育成時の温度条件を安定させつつ、ヒーター上端部からの放射熱によって引き上げ時に於ける急激な温度変化を防ぐことができた。加えて、当該急激な温度変化の抑制により、急冷による割れ及び脱落といった不良の低減という効果をも得ている。
【0016】
上記効果は、本実施形態で用いる前記側面部の断熱材を、二重構造とした事によって付与されている。より具体的には、
図2及び
図3から解るように、ヒーター側面部を覆う側面部断熱材8及び底面部を覆う底面部断熱材9は、別体からなる側面部断熱材カバー10及び底面部断熱材カバー11を設けた構造を用いている。ここで、各断熱材8、9はグラファイトから、前記2つのカバー10、11はピッチ系炭素繊維を基材に高炭化率樹脂を含浸させた成形断熱材からそれぞれ構成されている。この為、当該断熱構造により、本実施形態記載の育成炉1では、炉内に於ける無駄な放熱を抑え、熱効率の向上と炉内温度の安定化という効果とを得ることができた。また、当該熱効率の向上によりヒーター6の出力を抑えて従来の温度条件を維持することが可能となった。尚、本実施形態で用いる育成炉内では、前記坩堝内へと供給するアルミナ粉末を溶融する為、坩堝内部とダイ先端部付近を2000℃以上の高温にて安定させたホットゾーンを形成している。当該ホットゾーンの形成について、本実施形態の育成炉ではヒーター側面外側への放射熱を直接受ける側面部断熱材8は前記高温下にてヒーター6からの放熱を抑える一方、当該断熱材それ自体が赤熱する。
【0017】
当該赤熱に対し、本実施形態では各断熱材カバー10、11によって側面部及び底面部断熱材8、9のみを覆うことで、前記赤熱した断熱材8からの放熱を防ぐと共にホットゾーン内の均熱性を保ち、安定した温度条件と共に前記熱効率を向上することを可能にしている。また、本実施形態では側面部断熱材カバー10と側面部断熱材8との間に空隙を設けることで、ヒーター側面部だけではなく上端部付近の温度をも安定させている。この為、当該上端部の空間に於ける熱勾配によって、前記種結晶を介したアルミナのサファイア単結晶化
という効果を得ることができた。また、
図1にて側面部断熱材カバー上に配置した上部断熱材4による引き上げ部分周辺の保温効果と併せて、単結晶サファイアリボン引き上げ時に於ける急激な温度変化を防ぎ、急冷による割れ及び脱落といった不良を抑えることができた。更に、当該二重構造としたことで、各断熱材の交換に際しても、劣化が速くなる側面部断熱材のみの交換にて容易に対応することが可能となった。
【0018】
以上述べたように、本願実施形態記載の構造を用いることによって、2000℃以上の高温に耐えることが可能で、炉内の温度調整及び断熱材交換が容易なEFG法用サファイア育成炉を提供することができた。
【符号の説明】
【0019】
1 育成炉
2 種結晶
3 マルチサファイアリボン
4 上部断熱材
5 ダイ
6 ヒーター
7 坩堝
8 側面部断熱材
9 底面部断熱材
10 側面部断熱材カバー
11 底面部断熱材カバー
【要約】
【課題】
2000℃以上の高温に耐えることが可能で、炉内の温度調整及び断熱材交換が容易なEFG法用サファイア育成炉を提供する。
【解決手段】
ヒーター側面及び底面に配置された断熱材に対し、当該断熱材の上面、側面及び、底部のみを別体の断熱材によって包むことで、ヒーターによって赤熱する断熱材からの放射熱を坩堝周辺へと対流させ、断熱材内側から上部にかけて安定したホットゾーンを構成すると共に、炉内の温度調整及び断熱材交換が容易な断熱構造を得ることができる。
【選択図】
図2