(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記耐火性合板を構成する燃え代層の薄板材の厚みが1〜5mmの範囲内であり、耐火材層の厚みが1〜5mmの範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の耐火被覆構造体。
前記耐火性合板における耐火材層の積層数を2層〜6層とすることにより、ISO834の標準加熱温度曲線の加熱による45分耐火の性能の要求に対応させたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の耐火被覆構造体。
前記耐火性合板における耐火材層の積層数を3層〜8層とすることにより、ISO834の標準加熱温度曲線の加熱による60分耐火の性能の要求に対応させたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の耐火被覆構造体。
前記積層体が内層側の1層の前記耐火材層と外層側の1層の前記燃え代層からなり、燃え代層を構成する薄板材の目地部には耐火材層側へ開口する溝状スペースを当該目地部に沿って形成したことを特徴とする請求項1に記載の耐火被覆構造体。
前記耐火材層の裏面側では燃え代層の薄板材の目地部に沿って木質構造材に切欠き状スペースを設け、この切欠き状スペースに発泡耐火材を充填したことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の耐火被覆構造体。
前記耐火材層を構成する発泡耐火材が発泡耐火塗料を塗布・乾燥させたものであり、又は発泡耐火材の薄い成形体であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の耐火被覆構造体。
前記発泡耐火材が水溶性アルカリ珪酸塩を含有するものであり、あるいは炭化剤、熱発泡性の発泡剤及び合成樹脂を含有するものであることを特徴とする請求項9に記載の耐火被覆構造体。
【背景技術】
【0002】
建築物における木質の柱等の構造材の表面に燃え代を設け、燃え代の分だけ断面を大きくして構造材中心部の炭化を遅らせることができる耐火設計は「燃え代設計」と呼ばれる。燃え代設計では、燃え代の分だけ断面が大きな木材を構造材として用いても良く、あるいは、柱の芯となる芯材の表面に燃え代に必要な厚みの木板を取り付けたものを構造材として用いても良い。燃え代設計では、住宅等で失火が生じて火炎が柱に及んだ際、燃え代部の木が燃焼し断熱性の炭化層を形成して芯材(柱本体)の類焼を遅延させ、又は防止することが期待されている。
【0003】
しかし、上記燃え代設計では、燃え代部の分だけ断面を大きくするが、木材のみからなる燃え代部には相当な厚みを持たせる必要があるため、構造材の重量が増し、建築物の重量が増加するといった問題点があった。
【0004】
下記の特許文献1に係る耐火被覆構造では、木質の構造体本体の表面側周囲に、特定種類の合成樹脂、熱膨張性層状無機物及び無機充填剤を所定の含有する熱膨張性の樹脂組成物である耐火被覆材を被覆すると共に、耐火被覆材の付け合わせ部である目地部には、接着剤による接着やビス又はタッカー等の止め具による止着等の保護処理を施した耐火被覆構造を開示している。
【0005】
しかし、特許文献1に開示された耐火被覆構造では、木質構造体の表面周囲に単に耐火被覆材のみを被覆するものであるため、必ずしも十分な耐火性能が得られないという不具合があった。
【0006】
(着想1)
以上の従来技術の不具合に対して、次のような構成の耐火被覆構造体を提案することができる。例えば木質構造材が断面4角形の柱である場合、
図1に示すように耐火被覆構造体1における木質構造材2の4面の表面を発泡性の耐火材層3で被覆し、この耐火材層3を更に薄板材4で被覆している。薄板材4は目地部5で付け合わされている。なお、
図1や後述する
図3、
図6等においては、図示の便宜上、耐火材層や薄板材の厚みを誇張して示している。
【0007】
図1に示す耐火被覆構造体では、火災時には薄板材4が燃焼して断熱性炭化層を形成し、併せて内側の耐火材層3が発泡して断熱層を形成するため、耐火材層3と薄板材4との相乗効果により良好な耐火・耐熱シーリングが構成されて燃焼熱が木質構造材2に伝わり難く、耐火材層3における燃え止まりも期待できる。なお、薄板材4によって木質材の美麗な外観や香り、調湿性、肌触り等の長所が確保されるという効果もある。
【0008】
(着想2)
更に、上記の着想1の改良として、上記した各1層の耐火材層3及び薄板材4に代えて、下記の特許文献2に開示された集成木造部材を耐火被覆構造体に用いることが考えられる。
図2において示すように、この集成木造部材16は、複数の木製の単板17と発泡性の耐火材からなる接着剤層18を交互に積層させた耐火性合板であり、着想1における耐火材層3と板材4との厚みを低減させて繰り返し積層させた構成に相当する。
【0009】
木質構造材2に対して耐火性合板である集成木造部材16を用いることにより、火災時に集成木造部材16の表面側(火災側)の接着剤層18から順次断熱性を連続的に発現させることができるので、より高度な耐火性能を持つ耐火被覆構造体を構成することができる。又、単板17及び接着剤層18の積層数を増減させることにより、耐火被覆構造体に要求される耐火性能の程度に対応させることもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、
図1に示す耐火被覆構造体1においては、火災時に薄板材4が燃焼・炭化して脆い断熱性炭化層を形成すると共に耐火材層3が発泡する。
図2に示す集成木造部材16を用いた耐火被覆構造体においても、火災時に木製の単板17が燃焼・炭化して脆い断熱性炭化層を形成すると共に接着剤層18が発泡する。従って、これらの耐火被覆構造体においては、常識的には、木質構造材2に対して良好な耐火・耐熱シーリングが構成されるものと考えられる。
【0012】
しかし本願発明者が更に研究を重ねたところ、火災時において、木質構造材2がその炭化温度の近傍あるいは炭化温度を超える温度域まで昇温する場合があることを見出した。この点は、上記の着想1や着想2の構成が更に改良の余地を残すことを意味する。
【0013】
そこで本発明は、このような更なる改良の具体策を提供することを、解決すべき技術的課題とする。
【0014】
本願発明者は、上記課題の解決手段を追求する過程で、着想1や着想2の構成において、木材である板材4や単板17の炭化温度域が250〜270℃程度であるのに対し、耐火材層3や接着剤層18を構成する発泡性耐火材の発泡温度域が通常は260℃前後であるという事実に注目した。そして、木材の炭化温度域と発泡性耐火材の発泡温度域が互いに近く、又は重複することから、板材4や単板17が十分に炭化して脆くなる前に発泡性耐火材が発泡するため、その発泡・膨張のためのスペースが、覆い被さっている板材4や単板17によって制約され、十分に発泡・膨張できなくなることを突き止めた。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための第1発明の構成は、建築物の木質構造材の表面を、木質の薄板材からなる燃え代層と発泡耐火材からなる耐火材層とを用いて構成される積層体で被覆しており、かつ、燃え代層を構成する薄板材が単数又は複数の割れ若しくは切り込みを備える、耐火被覆構造体である。
【0016】
上記第1発明において、「割れ」とは薄板材の乾燥収縮等に基づいて自然的に生じた切れ目を言い、「切り込み」とは薄板材に加工して人為的に形成させた切れ目を言う。
【0017】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための第2発明の構成は、前記第1発明に係る耐火被覆構造体において、積層体が木質の薄板材からなる燃え代層と発泡耐火材からなる耐火材層とを合計で3層以上交互に積層した耐火性合板であり、かつ、前記耐火性合板を構成する少なくとも1層の薄板材が単数又は複数の割れ若しくは切り込みを備える、耐火被覆構造体である。
【0018】
上記第2発明において、耐火性合板における最外層は耐火材層であっても燃え代層であっても良く、その最内層も耐火材層であっても燃え代層であっても良い。
【0019】
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための第3発明の構成は、前記第2発明に係る耐火被覆構造体において、耐火性合板を構成する燃え代層の薄板材の厚みが1〜5mmの範囲内であり、耐火材層の厚みが1〜5mmの範囲内である、耐火被覆構造体である。
【0020】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための第4発明の構成は、前記第2発明又は第3発明に係る耐火被覆構造体において、耐火性合板における耐火材層の積層数を2層〜6層とすることにより、ISO834の標準加熱温度曲線の加熱による45分耐火の性能の要求に対応させた、耐火被覆構造体である。
【0021】
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための第5発明の構成は、前記第2発明又は第3発明に係る耐火被覆構造体において、耐火性合板における耐火材層の積層数を3層〜8層とすることにより、ISO834の標準加熱温度曲線の加熱による60分耐火の性能の要求に対応させた、耐火被覆構造体である。
【0022】
(第6発明の構成)
上記課題を解決するための第6発明の構成は、前記第1発明に係る耐火被覆構造体において、積層体が内層側の1層の前記耐火材層と外層側の1層の前記燃え代層からなり、燃え代層を構成する薄板材の目地部には耐火材層側へ開口する溝状スペースを当該目地部に沿って形成した、耐火被覆構造体である。
【0023】
(第7発明の構成)
上記課題を解決するための第7発明の構成は、前記第6発明に係る耐火被覆構造体において、薄板材の目地部に形成した溝状スペースの一部又は全部に発泡耐火材を充填した、耐火被覆構造体である。
【0024】
上記第7発明において、「溝状スペースの一部に発泡耐火材を充填する」とは、「溝状スペースの長手方向に沿う一部の部分に発泡耐火材を充填する」という意味ではなく、「溝状スペースの長手方向の全長部分にわたり、スペースの断面積の一部を占める程度に発泡耐火材を充填する」という意味である。
【0025】
(第8発明の構成)
上記課題を解決するための第8発明の構成は、前記第6発明又は第7発明に係る耐火被覆構造体において、耐火材層の裏面側では燃え代層の薄板材の目地部に沿って木質構造材に切欠き状スペースを設け、この切欠き状スペースに発泡耐火材を充填した、耐火被覆構造体である。
【0026】
(第9発明の構成)
上記課題を解決するための第9発明の構成は、前記第1発明〜第8発明のいずれかに係る耐火被覆構造体において、耐火材層を構成する発泡耐火材が発泡耐火塗料を塗布・乾燥させたものであり、又は発泡耐火材の薄い成形体である、耐火被覆構造体である。
【0027】
上記第9発明において、発泡耐火塗料と発泡耐火材とは、発泡耐火塗料が水又は有機溶剤である溶剤を含み液状塗料の形態である点を除いては、実質的に同じものである。
【0028】
(第10発明の構成)
上記課題を解決するための第10発明の構成は、前記第9発明に係る耐火被覆構造体において、発泡耐火材が水溶性アルカリ珪酸塩を含有するものであり、あるいは炭化剤、熱発泡性の発泡剤及び合成樹脂を含有するものである、耐火被覆構造体である。
【発明の効果】
【0029】
着想1、着想2に係る耐火被覆構造体では前記したように火災時に発泡耐火材が260℃前後の温度域に達したときに発泡・膨張が始まる。しかし、その時点では、炭化温度域が250〜270℃程度である薄板材は十分に炭化して脆くなってはいない。そのため、発泡耐火材の発泡・膨張のためのスペースが、覆い被さっている薄板材の拘束力により制約される。その結果、
図3(a)に示すように発泡耐火材3が十分に発泡・膨張できず、その耐火・耐熱シーリングが不足して、保護すべき木質構造材2の炭化・燃焼を十分に防止できない。
【0030】
しかし、第1発明においては、燃え代層を構成する薄板材が十分に炭化していなくても、発泡耐火材の発泡・膨張の圧力により、薄板材が割れや切り込みに沿って容易に分割され、分割された薄板材の間隔も発泡耐火材の膨張に伴い拡張する。そのため、薄板材が発泡耐火材の発泡・膨張のスペースを制約するという拘束力を持たない。従って、
図3(b)に示すように、発泡耐火材3が十分に発泡・膨張することができる。
【0031】
その結果、薄板材4が燃焼して断熱性炭化層を形成すると言う作用と、耐火材層3が発泡して断熱層を形成すると言う作用とが同時に十分に発現される。そのため、耐火材層3と薄板材4との良好な相乗効果により、保護すべき木質構造材に対する十分な耐火・耐熱シーリングが構成されて、木質構造材の炭化・燃焼を有効かつ十分に防止できる。
【0032】
第2発明によれば、火災時において積層体である耐火性合板の外層側から順次に燃焼する際、耐火材層が繰り返し現れて断熱性を発現するので、特に耐火性能が高く、火災が積層体において燃え止まることを十分に期待できる。
【0033】
又、このような効果が得られる関係から、従来の通常の燃え代用板材に比較して、耐火性合板に用いる薄板材を特に薄く形成することができる。従って、耐火性合板を構成する全ての薄板材が割れや切り込みを備えていても良いが、薄板材の少なくとも1層が割れや切り込みを備えている限り、第1発明と同様の「発泡耐火材の発泡・膨張の圧力により薄板材が分割され、発泡耐火材が十分に発泡・膨張する」と言う効果も確保される。
【0034】
なお、耐火性合板の最外層が燃え代層である場合には、通常時において耐火被覆構造体における木質材の美麗な外観や香り、調湿性、肌触り等の長所も確保される。
【0035】
第3発明のように、積層体である耐火性合板を構成する薄板材と耐火材層との厚みがそれぞれ1〜5mmの範囲内であると、耐火性合板を全体として薄く形成しつつ、その効果を確保できる。具体的には、薄板材の厚みが1mm以上であると、香り、見た目、肌触り等の木質材の良さを確保することができ、厚みを5mm以下にすることで、燃焼する部分の厚み及び構造強度の低下を最小限に抑えることが可能になる。又、耐火材層の厚みが1mm以上であると、火災時に発泡耐火材が良好に発泡して十分な断熱性能(遮熱性能、耐火性能)を得ることができ、厚みを5mm以下にすることで、耐火性合板全体の厚みを小さくでき、火災時において耐火材層が発泡した際に自重により薄板材から脱落することを防止できる。
【0036】
第4発明及び第5発明に関して、耐火材層の積層数を増やすほど耐火性合板の耐火性能が向上するが、その分だけ耐火性合板が厚くなるため、耐火材層の積層数は、必要な性能が得られる最小限の範囲に留めることが望ましい。第4発明においては、耐火材層の積層数を2層〜6層にして耐火性合板を構成することにより、ISO834の標準加熱温度曲線の加熱による45分耐火の性能を得ることが可能になる。第5発明においては、耐火材層の積層数を3層〜8層にして耐火性合板を構成することにより、ISO834の標準加熱温度曲線の加熱による60分耐火の性能を得ることが可能になる。
【0037】
第6発明によれば、第1発明と同様の効果を確保したもとで、燃え代層を構成する薄板材の目地部に沿って耐火材層側へ開口する溝状スペースを形成したので、火災時において発泡耐火材の発泡物の一部が溝状スペース内へ誘導的に導入される。従って、薄板材の目地部に開き部分が発生しても、この開き部分が耐火性の発泡物によって迅速に閉塞され、芯材である木質構造体が強力に耐火・耐熱シーリングされる。
【0038】
更に、外層側が燃え代層であるため、通常時において耐火被覆構造体における木質材の美麗な外観や香り、調湿性、肌触り等の長所も確保される。
【0039】
第7発明によれば、第6発明と同様に形成された溝状スペースの一部又は全部に発泡耐火材が充填されているので、火災時において薄板材の目地部沿いに耐火性の発泡物が多量に生成する。そのため、薄板材の目地部に発生した開き部分が迅速に、かつ、より十分に閉塞される。その結果、芯材である木質構造体が強力に耐火・耐熱シーリングされる。
【0040】
第8発明によれば、薄板材の目地部に沿って木質構造材に設けた切欠き状のスペースに発泡耐火材を充填したので、このように充填された発泡耐火材が、火災時において発泡しつつある耐火材層の発泡耐火材を薄板材の目地部の開き部分に向かって押し出すように発泡する。そのため、目地部に発生した開き部分が迅速に、かつ、より十分に閉塞され、第7発明の場合と同様に、芯材である木質構造体が強力に耐火・耐熱シーリングされる。
【0041】
第9発明に規定するように、発泡耐火材からなる耐火材層として、発泡耐火塗料を塗布・乾燥させたもの、又は発泡耐火材の薄い成形体を用いたもの(木質構造材に適用できるサイズに調整したもの)を好ましく用いることができる。
【0042】
第10発明に規定するように、発泡耐火材としては、(1)水溶性アルカリ珪酸塩を含有するもの、又は、(2)炭化剤、熱発泡性の発泡剤及び合成樹脂を含有するものが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0045】
次に本発明の実施形態を、その最良の形態を含めて説明する。
【0046】
〔耐火被覆構造体〕
本発明に係る耐火被覆構造体は、建築物の木質構造材の表面を、木質の薄板材からなる燃え代層と発泡耐火材からなる耐火材層とを用いて構成される積層体で被覆しており、かつ、燃え代層を構成する薄板材が単数又は複数の割れ若しくは切り込みを備えるものである。
【0047】
木質構造材と耐火材層又は燃え代用薄板材との間、あるいは耐火材層と燃え代用薄板材の相互間は、耐火材層自体の接着作用により、又は接着剤による接着により、あるいは釘、ビス、ネジ等の留め具による固定等の適宜な接合手段を用いて接合することができる。
【0048】
このような耐火被覆構造体の具体的な実施形態は限定されないが、代表的な実施形態として、後述する耐火性合板を用いた耐火被覆構造体と、各1層の燃え代層と耐火材層を用いた耐火被覆構造体とを挙げることができる。
【0049】
〔木質構造材〕
耐火被覆構造体における木質構造材とは、木造住宅その他の建築物における各種の木質構造材を言う。代表的な木質構造材として角柱状や円柱状の柱が例示される。柱としては、周面が全て露出した状態の柱の他に、建築物の壁部等に一部が埋設されると共に一部が露出した状態の柱もその露出部分が耐火被覆の対象となる。又、いわゆる「梁」等の構造材も対象となる。更に、これらの柱状(棒状)の構造材の他に、壁面、床面、天井面等を構成する板状ないし平面状や曲面状の構造材も耐火被覆の対象となる。なお、本発明は、柱、梁などの柱状(棒状)の構造材に対して特に有効である。
【0050】
〔積層体を構成する燃え代層〕
積層体を構成する燃え代層は木質の薄板材からなる。木質構造材の外観上からは燃え代層が耐火被覆構造体の最外層を構成することが好ましいが、木質構造材の耐火性能の面からは、耐火被覆構造体の最外層が燃え代層であっても耐火材層であっても良い。薄板材は、従来の燃え代設計における燃え代用の板材に比較して薄く形成することができるが、その好ましい厚さは、耐火性合板を用いた耐火被覆構造体と、各1層の薄板材及び耐火材層を用いた耐火被覆構造体とでは必ずしも一致しない。
【0051】
各1層の薄板材と耐火材層を用いた耐火被覆構造体においては、薄板材による耐火・耐熱シーリングの効果を考慮して、5mm以上、例えば6〜12mm程度の厚さの薄板材を用いることが好ましい。又、この耐火被覆構造体においては薄板材を最外層とするので、耐火被覆構造体の外観上の配慮から、薄板材の片側面から反対側の面まで達する割れ若しくは切り込みを設けることは好ましくない。
【0052】
これに対して、耐火性合板を用いた耐火被覆構造体においては、燃え代層(薄板材)と発泡耐火材からなる耐火材層とを合計で3層以上交互に積層するという構成上、個々の薄板材を1〜5mm程度の厚さにとどめることが可能であり、かつ好ましい。そして、個々の薄板材をこのように薄く設定できることから、2層以上の薄板材を含む耐火性合板において、少なくとも1層の薄板材が単数又は複数の割れ若しくは切り込みを備えていれば、特に好ましくは、後述の実施例に示すように、積層体の内層側の薄板材が割れ若しくは切り込みを備えていれば、外層側の薄板材が割れ若しくは切り込みを備えていなくても、第1発明で述べたような「発泡耐火材の発泡・膨張の圧力による薄板材の分割と分割された薄板材の間隔の拡張」という効果を確保できる。
【0053】
(割れ若しくは切り込み)
燃え代層を構成する薄板材は、第1発明に関して前記した単数又は複数の割れ若しくは切り込みを備える。薄板材における単数又は複数の割れや切り込みの形態は限定されないが、火災時に発泡・膨張した発泡耐火材の圧力によって薄板材が容易に分割されるような、深さ、長さ、方向及び平面形状を備えることが好ましい。割れ若しくは切り込みの形成方向は、薄板材の表裏面に対して垂直方向であっても良いが、薄板材の表裏面に対して斜め方向であっても良い。
【0054】
割れ若しくは切り込みの深さは、薄板材の片側面から反対側の面まで達するものであっても良く、薄板材の片側面から始まって反対側の面までは達しないものであっても良い。割れや切り込みは薄板材の全長にわたり連続したものであっても良く、薄板材の全長にわたり破線状に(間欠的に)断続するものであっても良く、薄板材の全長に達しない長さのものでも良い。「薄板材の片側面から反対側の面まで達する割れ若しくは切り込みが薄板材の全長にわたる」場合は、実質的に、分割された複数の薄板材が並列されていることを意味する。割れや切り込みの平面形状としては、直線的なものが好ましく、かつ割れや切り込みを複数に備える場合はそれらが平行であることが好ましいが、このような実施形態に限定されない。割れや切り込みは薄板材の縦方向、横方向又は斜め方向等の任意の方向に備えることができる。発泡耐火材の発泡・膨張の圧力に基づく薄板材の分割を容易にするためには、薄板材の木目、特に柾目に沿う方向に備わった割れや切り込みが好ましい。
【0055】
耐火性合板を用いた耐火被覆構造体においては、耐火性合板を構成する複数の燃え代層の各薄板材の内、少なくとも1層の薄板材が上記の実施形態に係る割れや切り込みを備える必要があり、特に最も内層側の薄板材について上記の実施形態に係る割れや切り込みを備えることが好ましいが、耐火性合板を構成する各薄板材が割れや切り込みを備えることがより好ましい。耐火性合板の最外層を構成する薄板材については、薄板材の片側面から反対側の面まで達する割れ若しくは切り込みを設けない方が、外観上は好ましい。
【0056】
(割れ若しくは切り込みの特に好ましい実施形態)
(1)薄板材の割れや切り込みは、耐火材層と接する裏側面、即ち発泡耐火材の発泡・膨張の圧力を受ける側の面に備わることが好ましい。
【0057】
(2)木質構造材が柱状の部材である場合には、縦方向、即ち柱状部材の軸方向と平行な方向の割れや切り込みが好ましい。
【0058】
(3)薄板材の厚みが1.6mm以上である場合には、割れや切り込み深さ(薄板材の表裏面に対する垂直方向の深さ)は0.8mm以上であり、薄板材の厚みが1.6mm未満である場合には割れや切り込み深さは薄板材の厚みの半分以上である。特に好ましくは、薄板材の厚みが1.6mm以上であり、割れや切り込みの深さが1mm以上である。
【0059】
(4)薄板材が裏側面に複数の割れ若しくは切り込みを備える場合におけるそれらの合計長さは、薄板材の面積1m
2当たり20m以上、より好ましくは、25m以上である。
【0060】
(5)薄板材が平行ないしほぼ平行に複数の割れ若しくは切り込みを備えることが特に好ましく、その場合において、隣接する割れ若しくは切り込みとの相互間隔は、5mm〜50mm程度であることが好ましい。
【0061】
(6)割れ若しくは切り込み自体の幅は限定されないが、5mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましい。
【0062】
〔積層体を構成する耐火材層〕
積層体を構成する耐火材層の構成材料である発泡耐火材としては、発泡耐火塗料の塗布層、又は発泡耐火材の薄い成形体が好ましく例示される。「発泡耐火塗料の塗布層」とは、発泡耐火塗料を塗布して乾燥させたものをいう。「発泡耐火材の薄い成形体」とは、シート状やボード状等の形態の発泡耐火材の薄い成形材料であって、予め好適なサイズに切断調整したもとで用いるものをいう。
【0063】
耐火材層の好ましい厚さは、耐火性合板を用いた耐火被覆構造体と、各1層の燃え代層と耐火材層を用いた耐火被覆構造体とでは異なる。
【0064】
発泡耐火材(発泡耐火塗料や発泡耐火材の成形体)は、常温時にはその形態が変化しないが、火災時等の加熱により発泡し断熱層を形成する材料であって、この発泡断熱層が火炎を遮断すると共に、発泡断熱層の断熱効果によって木質構造材の温度上昇を抑え、防火性能を発揮する。
【0065】
発泡耐火材としては公知の各種材料を用いることができ、その種類や組成は必ずしも限定されないが、炭化剤、熱発泡性の発泡剤及び合成樹脂を含有するものが好ましい。
【0066】
(炭化剤、熱発泡性の発泡剤、合成樹脂)
上記の炭化剤、熱発泡性の発泡剤及び合成樹脂を含有する発泡耐火材においては、加熱によって炭化剤が炭化層を形成すると共に、熱発泡性の発泡剤がその炭化層を発泡させる。合成樹脂は結合材(バインダー)である。
【0067】
炭化剤とは、火災時などの加熱により反応して炭化質骨格を形成するものである。このような炭化剤としては、多価アルコール、水溶性多糖類、フェノール類、膨張性黒鉛等の炭素、酸素、水素のみからなるものが挙げられる。
【0068】
なお、炭化剤の中でも膨張性黒鉛は自己発泡性があり、発泡剤を用いなくても断熱層を形成できるので、特に好ましい。膨張性黒鉛は、加熱すると黒鉛層間に存在する化合物が熱分解して、全体が膨張する性質を持つ。膨張性黒鉛を添加された発泡性耐火材は、火災時などの加熱により膨張して発泡断熱層を形成する。このような膨張性黒鉛としては、黒鉛酸性硫酸塩、ナトリウム黒鉛、カリウム黒鉛、ハロゲン化黒鉛、黒鉛酸化物、塩化アルミニウム黒鉛化合物、塩化第二鉄黒鉛などが例示される。
【0069】
発泡剤とは、加熱によって分解され、窒素、アンモニア、炭酸ガス等の不燃性ガスを発生するものであって、発生したガスによって炭化層を発泡させる。また、発生した不燃性ガスによって、炭化層の表面に不燃性ガス層が形成され、燃焼熱の伝導を抑制することも期待できる。
【0070】
このような発泡剤としては、ジシアンジアミド、アゾジカルボンアミド、ヘキサメトキシメチルメラミンとその誘導体、尿素、メラミン、ブチルメラミンおよびトリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ウレア、ジメチルウレア、グアニルウレアフォスフェート、アミノグアニルウレア、尿素ホルムアルデヒド、アミノ酢酸、グアニジン等の有機発泡剤、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機発泡剤等が例示される。
【0071】
又、上記の発泡剤以外にも、前記炭化剤と共に加熱されることによって、炭化剤と反応してガスを発生するものも発泡剤として使用できる。このような発泡剤としては、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アルミニウム、ポリリン酸マグネシウムリン酸塩、等のリン酸塩、スルファミン酸塩(スルファミンアンモニウム等)、ホウ酸塩(ホウ酸アンモニウム等)等が例示される。
【0072】
なお、上記発泡剤であるリン酸アンモニウムやポリリン酸アンモニウムは分解温度が260℃前後であって、前記した多価アルコール(炭化剤)であるペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトールとほぼ同一温度において分解する。
【0073】
従って、発泡剤として上記のリン酸アンモニウム及び/又はポリリン酸アンモニウムを用いると共に、炭化剤としてこれらの多価アルコールを用いると、発泡耐火材を容易に、かつ大きな発泡倍率で発泡させることができる。
【0074】
更に、このような組成の発泡耐火材に着色顔料として二酸化チタンを使用すると、二酸化チタンが加熱時の多価アルコールとリン酸アンモニウム及び/又はポリリン酸アンモニウムとの反応において触媒として作用するため、発泡反応を一層促進することができる。
【0075】
上記のような発泡耐火材の発泡倍率をより大きくする効果は、有機発泡剤の中でも分解温度が360℃前後であるメラミン等を用いると、炭化剤が炭化質骨格を形成した後に更に発泡させることができ、より大きな効果となる。
【0076】
合成樹脂は常温時においては発泡耐火材の結合材となるものであって、発泡耐火材が加熱されて合成樹脂が溶融あるいは焼失するまでの間、発泡耐火材の形状を維持するために用いられる。
【0077】
合成樹脂としては、メラミン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は単独にて用いても良くあるいは共重合したものにして、またこれらを混合して用いることもできる。更に、これらの樹脂の形態として、溶媒に溶解させたものあるいはエマルションとして分散させたものが利用される。
【0078】
(発泡耐火材におけるその他の添加材及び添加剤)
前記した炭化剤と発泡剤と合成樹脂とを含む発泡耐火材には、前記した成分以外の、従来の耐火塗料や耐火シート材に用いられる公知の各種添加材や添加剤を添加することもできる。これらの添加材や添加剤は、発泡耐火材が発泡して発泡断熱層を形成するという機能を阻害しない範囲において添加すればよい。
【0079】
このような添加材や添加剤として、例えば炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、シリカ、セラミック粉などの無機充填材、発泡プラスチック粉などの有機充填材、ロックウール、スラグウール、グラスウール、セラミックファイバー、シリカ繊維などの無機繊維、セルロース繊維、合成繊維などの有機繊維、ハロゲン系、リン系、三酸化アンチモン系などの難燃剤、消泡剤、分散剤、湿潤剤などの界面活性剤、造膜助剤、防凍剤などの溶剤、着色顔料、体質顔料、金属石鹸、安定剤、増粘剤、防腐剤、防黴剤などを用いることができる。
【0080】
上記した発泡耐火材の中でも、炭化剤として多価アルコールを含有し、発泡剤としてリン酸アンモニウム及び/又はポリリン酸アンモニウムを含有し、更に合成樹脂を含有するものがより好ましい。これらに加えて、更に前記有機発泡剤を含有するものが、特に好ましい。このような組成のものは、「発泡後の発泡耐火材の容積/発泡前の発泡耐火材の容積」を意味する発泡倍率が大きく、より断熱性に優れた発泡断熱層を形成する。また、発泡倍率が大きいため、燃え代用板材の収縮や反りによって発生した目地部の開き部分を閉塞する性能に優れる。
【0081】
(発泡耐火材の好ましい組成例)
上記の発泡耐火塗料や成形体である発泡耐火材における各成分の好ましい配合割合の一例として、多価アルコールの配合量を100質量部としたときに、合成樹脂が固形分換算で200〜500質量部、有機発泡剤が80〜150質量部、リン酸アンモニウム及び/又はポリリン酸アンモニウムの合計量が280〜450質量部である場合を挙げることができる。各成分の配合割合が上記の範囲内であると、耐火性能に特に優れた発泡耐火材を得ることができる。
【0082】
また、二酸化チタンを配合する場合は、その配合割合は、多価アルコールの配合量を100質量部としたときに、100〜300質量部であることが好ましい。二酸化チタンの配合量が少なすぎると触媒としての効果が十分ではなく、逆に多すぎると断熱層が脆弱なものになってしまう。
【0083】
〔耐火性合板を用いた耐火被覆構造体〕
耐火被覆構造体における積層体として、木質の薄板材からなる燃え代層と発泡耐火材からなる耐火材層とを合計で3層以上交互に積層した耐火性合板を用いることができる。この場合、耐火材層を構成する発泡耐火材が燃え代層同士の接着剤となっている。燃え代層を構成する薄板材は、例えば間伐材などから製材した木材で、それ自体も薄い合板であることが多い。この場合の薄板材の厚みは数mm程度、好ましくは1〜5mmの範囲内、特に好ましくは3〜4mmの範囲内である。耐火材層の厚みは1〜5mmの範囲内にすることが好ましく、1.5〜3mmの範囲内にすることがより好ましい。従って、耐火性合板の全体の厚みも余り大きくはならない。
【0084】
耐火性合板における耐火材層の積層数は、30分耐火の性能を得るためには2層〜5層であることが好ましく、3層〜4層であることがより好ましい。45分耐火の性能を得るためには2層〜6層であることが好ましく、3層〜5層であることがより好ましい。又、60分耐火の性能を得るためには3層〜8層であることが好ましく、4層〜6層であることがより好ましい。
【0085】
耐火材層の積層数を増やすほどに耐火性合板の耐火性能は上がるが、耐火性合板の厚みも大きくなるので、耐火材層の積層数は、必要な性能が得られる最小限の範囲、すなわち上記の範囲にすればよい。
【0086】
〔各1層の燃え代層と耐火材層を用いた耐火被覆構造体〕
耐火被覆構造体における積層体としては、内層側の1層の耐火材層と外層側の1層の燃え代層からなり、燃え代層を構成する薄板材の目地部に耐火材層側へ開口する溝状スペースを当該目地部に沿って形成した積層体を用いることもできる。
【0087】
燃え代層の薄板材は耐火材層の表面を被覆し、耐火被覆構造体の最外層を構成する。薄板材の厚さを決めるための設計指針は特に限定されないが、例えば、火災時における燃え代用板材の燃焼に要する時間を考慮して厚さを設計することができる。火災時における板材の厚さ方向への燃焼速度は、一般的に1分間に約0.6mm程度であるとする技術資料がある。この技術資料に基く場合、例えば火災時において薄板材が10分間持ち堪えることを期待するなら薄板材の厚さは6mmとすることが好ましく、薄板材が20分間持ち堪えることを期待するなら厚さは12mmとすることが好ましい。
【0088】
耐火材層は、耐火被覆構造体の芯材である木質構造材の表面を被覆するもので、その外側を更に燃え代層によって被覆される。耐火材層の厚さは、構成材料である発泡耐火材の種類、期待する耐火性能の程度等に応じて任意に設計することができるが、好ましくは1〜4mm程度とされる。
【0089】
〔耐火被覆構造体の付加的な実施形態〕
木質構造材が断面4角形の柱である場合はもちろん、木質構造材が壁面、床面、天井面等を構成する板状の構造材である場合にも、それらの面を単一の薄板材で被覆することは困難である場合が多いため、薄板材を付け合せる目地部ができる。目地部では火災時に薄板材に反りや縮みを生じて開き部分が発生し易く、薄板材の内層の耐火材層が発泡して目地部の開き部分を閉塞することを期待できる。しかし、火災時に目地部に発生した開き部分を迅速かつ十分に閉塞し、木質構造材に対する特に強力な耐火・耐熱シーリングを確保するためには、以下に述べる付加的な実施形態が極めて有効である。
【0090】
(燃え代用板材の目地部に沿う溝状スペース)
薄板材の目地部に沿って、耐火材層側へ開口する溝状スペースを形成しておくと、耐火材層が発泡して発泡物の一部が溝状スペース内へ誘導的に導入されるので、目地部の開き部分での火炎、熱の遮断効果が更に向上する。これらの実施形態を
図4(a)〜(f)に示す。
【0091】
図4(a)では、薄板材4の角部の目地部5に沿って双方の薄板材4の一部を切削してなる溝状スペース6が、耐火材層3側に開口した状態で形成されている。
図4(b)では、角部の目地部5に沿って一方の薄板材4の一部を切削してなる溝状スペース6が耐火材層3側に開口した状態で形成されている。
図4(c)では、断面形状において互いに係合可能な凹部及び凸部を備えた2枚の薄板材4を付け合せて角部の目地部5を構成しており、目地部5に沿って一方の薄板材4の一部を切削してなる溝状スペース6が、耐火材層3側に開口した状態で形成されている。
【0092】
図4(d)では、薄板材4の平面部の目地部5に沿って、双方の薄板材4の一部を切削してなる溝状スペース6が、発泡耐火材からなる耐火材層3側に開口した状態で形成されている。
図4(e)では、薄板材4の平面部の目地部5に沿って、一方の薄板材4の一部を切削してなる溝状スペース6が、発泡耐火材からなる耐火材層3側に開口した状態で形成されている。
図4(f)では、断面形状において互いに係合可能な凹部及び凸部を備えた2枚の薄板材4を付け合せて平面部の目地部5を構成しており、その目地部5に沿って一方の薄板材4の一部を切削してなる溝状スペース6が、耐火材層3側に開口した状態で形成されている。
【0093】
更に、
図4(a)〜(f)に示す実施形態に係る目地部5の溝状スペース6の一部又は全部に、予め発泡耐火材を充填しておくこともできる(図示省略)。この場合、火災時に生じる薄板材の目地部の開きは、溝状スペースに予め充填した発泡耐火塗料又は発泡耐火材によって閉塞される。
【0094】
(木質構造材の切欠き状スペースへの発泡耐火材の充填)
発泡耐火材からなる耐火材層の裏面側では薄板材の目地部に沿って木質構造材に切欠き状スペースを設け、この切欠き状スペースに発泡耐火材を充填しておくと、火災時に発泡耐火材の発泡物が薄板材の目地部の開き部分に押し出されるようにして、目地部の開き部分を閉塞する。従って、木質構造材に対して極めて強力な耐火・耐熱シーリングが確保される。
【0095】
このような実施形態例を
図5に基づいて説明する。
図5(a)の実施形態では、耐火被覆構造体の角部に薄板材4の目地部5が形成され、耐火材層3の裏面側では、目地部5に沿って木質構造材2に切欠き状スペース7を設け、この切欠き状スペース7に発泡耐火材8を充填している。
図3(b)の実施形態では、耐火被覆構造体の平面部に薄板材4の目地部5が形成され、耐火材層3の裏面側では、目地部5に沿って木質構造材2に切欠き状スペース7を設け、この切欠き状スペース7に発泡耐火材8を充填している。
【実施例】
【0096】
次に、本発明の実施例を説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例によって限定されない。
【0097】
〔実施例1:耐火被覆構造体〕
本実施例においては、
図6に断面図を示す耐火被覆構造体11を構成した。この耐火被覆構造体11の木質構造材12は、断面が100mm×100mmの寸法の角柱形の柱である。木質構造材12の表面である4面の周面は、前記
図2に示した集成木造部材16と同様の積層体13で被覆されている。積層体13は、3層の耐火材層14と、3層の薄板材15とを、最内層が耐火材層14であり、最外層が薄板材15であるように、交互に積層した耐火性合板である。
【0098】
個々の耐火材層14の厚さは2mm、個々の薄板材15の厚さは2.5mmである。従って、耐火被覆構造体11における木質構造材12まわりの積層体13の厚さは13.5mmである。3層の薄板材15の内、内層側の2層の薄板材15は、2.5mmの幅の隙間15a(切り込み)を隔てて分割されている。しかし、最外層の薄板材15においては、このような切り込み若しくは割れがなく、しかも木質構造材12の4隅においても薄板材15が隙間なく付け合わされているため、木質構造材12の美麗な外観が確保されている。
【0099】
耐火材層14は、以下の配合からなる発泡耐火塗料を塗布・乾燥させてシート状に形成したものである。薄板材15とシート状の耐火材層14は接着剤で接着されている。
【0100】
(発泡耐火塗料の配合)
ペンタエリスリトール:100重量部
メラミン:100重量部
酢酸ビニル/アクリルエマルション(固形分):350重量部
ポリリン酸アンモニウム:450重量部
二酸化チタン:200重量部。
【0101】
〔実施例2:耐火被覆構造体の評価〕
(試験体の準備)
前記実施例1に係る耐火被覆構造体11と比較して、以下の点のみに変更を加えた下記の実施例2−1〜実施例2−3及び比較例に係る耐火被覆構造体を試験体として準備した。これらの柱体の高さは1000mmである。
【0102】
実施例2−1:3層の薄板材15の内、内層側の2層の薄板材15として、木質構造材12の4面の周面において、分割されていない単一の薄板材であって、前記の2.5mmの幅の隙間15aに代えて、同一の部位に深さ約1mmの割れを備える薄板材を用いた。
【0103】
実施例2−2:3層の薄板材15の内、内層側の2層の薄板材15として、木質構造材12の4面の周面において、分割されていない単一の薄板材であって、前記の2.5mmの幅の隙間15aに代えて、同一の部位に薄板材15の片側面から反対側の面まで達する幅のない切り込みを設けた薄板材を用いた。
【0104】
実施例2−3:3層の薄板材15の内、内層側の2層の薄板材15として、実施例1の場合よりも大きな6mmの幅の隙間を備える薄板材を用いた。
【0105】
比較例:3層の薄板材のいずれもが割れや切り込みを備えていない。
【0106】
これらの角柱状の耐火被覆構造体においては、予め、木質構造材12の上下方向の中央部位(下端から500mmの高さ)において、隣り合う2つの周面のセンター部位であるサイトa及びサイトb(
図6参照)に小さな熱電対を埋め込み、リード線を耐火被覆構造体の外側まで導出して、サイトa、サイトbにおける木質構造材の表面温度を常時測定できるようにしておいた。
【0107】
(試験体の昇温評価)
以上の実施例2−1〜実施例2−3及び比較例に係る耐火被覆構造体をそれぞれ加熱炉に入れ、炉内温度がISO834に規定する標準加熱温度曲線に従って昇温するように加熱して、その加熱時における各例に係る耐火被覆構造体のサイトa及びサイトbにおける温度の変化を経時的に測定した。
【0108】
実施例2−1の測定結果を
図7に、実施例2−2の測定結果を
図8に、実施例2−3の測定結果を
図9に、比較例2−1の測定結果を
図10に、それぞれ示す。
図7〜
図10において、「ISO」と表記したグラフはISO834に規定する標準加熱温度曲線であり、「炉内」と表記したグラフは加熱炉内における実際の昇温曲線であり、「a」、「b」と表記したグラフはそれぞれサイトa、サイトbにおいて測定された昇温曲線である。
【0109】
図7及び
図8から分かるように、深さ約1mmの割れを備える薄板材を用いた実施例2−1の耐火被覆構造体では、加熱の開始から45分(図に0:45と表記)経過時(炉内温度900℃到達時)におけるサイトa及びサイトbの昇温は約220℃に止まり、片側面から反対側の面まで達する幅のない切り込みを設けた薄板材を用いた実施例2−2の耐火被覆構造体でも、実施例2−1とほぼ同等の結果が得られた。この温度は、木質材料の炭化温度域である265〜270℃を大きく下回っている。
【0110】
一方、5mmを超える幅である6mmの幅の隙間を備える薄板材を用いた実施例2−3の耐火被覆構造体では、加熱の開始から45分経過時(炉内温度900℃到達時)におけるサイトa及びサイトbの昇温は約260℃であった。この温度は、実施例2−1及び実施例2−2の場合に比較してかなり高いが、木質材料の炭化温度域を僅かに下回っている。
【0111】
これらに対して、3層の薄板材のいずれもが割れや切り込みを備えていない比較例の耐火被覆構造体では、加熱の開始から45分経過時(炉内温度900℃到達時)におけるサイトa及びサイトbの昇温は約300℃に達し、木質材料の炭化温度域を大きく上回っていた。
【0112】
(試験体の耐火材層の発泡・膨張度評価)
実施例2−1〜実施例2−3及び比較例の昇温評価の結果は耐火被覆構造体における耐火材層の発泡・膨張度の相違に起因すると考えられる。そこで上記の昇温試験後、炉を停止して1時間放置した後、実施例2−1〜実施例2−3及び比較例に係る耐火被覆構造体の試験体を炉から取り出して、これらの耐火被覆構造体をサイトa及びサイトbの設定部位において柱体の径方向に切断し、木質構造材12まわりの積層体13の厚さの平均値を求めた。前記のように、積層体13の加熱前の厚さは13.5mmであり、この値からの増大分が耐火材層の発泡・膨張によるものである。
【0113】
昇温評価後の耐火被覆構造体における木質構造材12まわりの積層体13の厚さの平均値は、実施例2−1で約40mm、実施例2−2で約40mm、実施例2−3で約40mm、比較例で約30mmであった。