特許第5961857号(P5961857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社明電舎の特許一覧

<>
  • 特許5961857-軸受潤滑油路構造 図000002
  • 特許5961857-軸受潤滑油路構造 図000003
  • 特許5961857-軸受潤滑油路構造 図000004
  • 特許5961857-軸受潤滑油路構造 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961857
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】軸受潤滑油路構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/173 20060101AFI20160719BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20160719BHJP
【FI】
   H02K5/173 A
   F16H57/04 J
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-257236(P2012-257236)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-107887(P2014-107887A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】永田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】有上 智和
(72)【発明者】
【氏名】新川 直哉
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−032914(JP,A)
【文献】 実開昭62−046857(JP,U)
【文献】 実開平05−089958(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/101911(WO,A1)
【文献】 米国特許第4262224(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/173
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有する回転子と、前記回転子に間隙を介して外周側に配置された固定子と、前記固定子を固定したフレームと、前記フレームの端部に結合されたブラケットと、前記ブラケットの中心に配置され、前記回転軸を回転自在に支持する軸受とからなり、前記ブラケット内面には放射状に凸状リブが配置されると共に前記軸受に潤滑油を供給する油通し溝を備えた軸受リブが形成される一方、前記ブラケットの上部には、潤滑油を導入するための上部突出孔が形成され、前記上部突出孔の周方向左右に位置する前記凸状リブは、潤滑油を前記軸受リブへ誘導するガイドとして機能する上部凸状リブであることを特徴とする軸受潤滑油路構造。
【請求項2】
前記上部凸状リブは、径方向の回転軸側への途中で終了し、その他の前記凸状リブよりも長さが短いことを特徴とする請求項1記載の軸受潤滑油路構造。
【請求項3】
前記上部凸状リブを中心として前記上部突出孔の反対側に隣接する前記凸状リブは、潤滑油を前記軸受リブへ誘導するガイドであり、前記軸受リブまで連接することを特徴とする請求項2記載の軸受潤滑油路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受潤滑油路構造に関する。詳しくは、油冷式回転機の軸受部の油路構造において、軸受け支持剛性を高めるために設けたリブに油誘導機能を持たせたリブ構造に関し、特に軸受まで油を誘導することができる機能を兼ね備えたリブ構造である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図3に示すように、電気モータ5の外側ケース3aの内壁にあるリブ36b,36cが掻き上げたオイルを導くオイルガイドを構成し、環状の鍔部29に開口37a,37bを形成することで、リブ36b,36cがオイルガイドとなり、リブ36b,36cに導かれたオイルが開口37a,37bから空部Cに導入される(段落0029)。
【0003】
また、特許文献1は、図4に示すように、シャフト20を支持するベアリング22用のボス41が形成されており、該ボス41はその上部が一部切欠かれてオイル導入用の開口41aが形成され、ボス41内はシャフト20の端面との間で油溜りDとなっているが、該油溜りはシャフト20に形成される潤滑孔43に素早くオイルを導入するため、比較的小さく形成されていると共に、その下方はベアリング22からオイルが逃げないように、ケース壁がベアリングのインナレースに近接した構造となっている(段落0031)。そして、内側ケース3bの外径部分に形成される2本のリブ46にオイルを当て導入用リブ42に滴下することでオイルを油溜りDに導入できる(段落0032)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001‐032914号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される従来技術は、空部Cにオイルを導入することやシャフト20に形成される潤滑孔43に素早くオイルを導入することを目的としている。
このため、軸受部分のベアリングへの潤滑油の積極的な誘導は考慮されておらず、負荷側は軸受部分に油が誘導される構造となっておらず、軸受の油供給不足の原因となる。
【0006】
また、反負荷側も潤滑孔43に素早くオイルが導入されてしまうため、油溜りDのオイルレベルhが低く軸受への油供給が十分とはいえなかった。
また、反負荷側は軸受部への油をリブによる誘導は行っているもののシャフト20が存在しない油溜りDへの誘導に限定される構成であった。
【0007】
さらに、オイル誘導用のリブ46を設けてあるが、軸受部分の強度は開口41aが存在するため、軸受強度の低下が問題となる。
これらより、油供給が十分とは言えずにベアリングの不具合(焼付きや摩擦の増加など)が起こることや軸受強度に問題を有している構造であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の請求項1に係る軸受潤滑油路構造は、回転軸を有する回転子と、前記回転子に間隙を介して外周側に配置された固定子と、前記固定子を固定したフレームと、前記フレームの端部に結合されたブラケットと、前記ブラケットの中心に配置され、前記回転軸を回転自在に支持する軸受とからなる油冷式回転機の軸受潤滑油路構造において、前記ブラケット内面には放射状に凸状リブが配置されると共に前記軸受に潤滑油を供給する油通し溝を備えた軸受リブが形成される一方、前記ブラケットの上部には、潤滑油を導入するための上部突出孔が形成され、前記上部突出孔の周方向左右に位置する前記凸状リブは、潤滑油を前記軸受リブへ誘導するガイドとして機能する上部凸状リブであることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する本発明の請求項2に係る軸受潤滑油路構造は、請求項1において、前記上部凸状リブは、径方向の回転軸側への途中で終了し、その他の前記凸状リブよりも長さが短いことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する本発明の請求項3に係る軸受潤滑油路構造は、請求項2において、前記上部凸状リブを中心として前記上部突出孔の反対側に隣接する前記凸状リブは、潤滑油を前記軸受リブへ誘導するガイドであり、前記軸受リブまで連接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
リブの一部に油誘導機能を持たせために、軸受に潤滑油を効率的に導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施例に係る油冷式回転機の横方向断面図である。
図2】本発明の第1の実施例に係る油冷式回転機におけるブラケットの斜視図である。
図3】特許文献1に記載されるドライブユニットの一方のケースの側面図である。
図4】特許文献1に記載されるドライブユニットの他方のケースの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、図面に示す実施例を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の第1の実施例に係る油冷式回転機の概略構造を図1に示す。
油冷式回転機100は、回転力を負荷に伝達する回転軸101を有し、この回転軸101の外周側に固定された回転子102を備える。
【0015】
また、回転子102の外周側には空隙(回転子と固定子間のギャップ)を介して巻線を有する固定子103を備え、固定子103の軸方向端部にはコイルエンド104を有する。
さらに、固定子103の外周部には、油路105が形成されたフレーム106が固定されている。
【0016】
フレーム106の両端面には、ブラケット111が固定されている。ブラケット111の中心には、回転軸101を回転自在に支持するベアリング114及びオイルシール15が配置されている。
フレーム106に形成されている油路105は、油冷式回転機100の外部から油を注入するための注入孔107と、固定子103を冷却する固定子突出孔108、コイルエンド104を冷却するコイルエンド突出孔109、そしてベアリング114を潤滑する油を供給する上部突出孔110を備えている。
【0017】
なお、注入孔107は、図1では、フレーム106の径方向外周上部に設けてあるが、この位置に限定されるものではなく、例えば、回転機100の外部から油供給を受ける以外の一例として、油浴に溜まった油を掻き揚げて循環する構造でもよい。
また、固定子突出孔108も、図1では、フレーム内径側の固定子103に対向する位置に設けてあるが、この位置に限定されず、固定子内部に貫通孔を設けてフレーム106から固定子103まで連通する油路105を設けてもよい。
【0018】
さらに、コイルエンド突出孔109も、図1ではフレーム内径側のコイルエンド104に対向する位置に設けてあるがこの位置に限定されるものではなく、いずれの突出孔の場合も実施形態の一例と示すものである。
上部突出孔110は、フレーム106に形成される油路105からブラケット111側に形成される油路105aに連通し、ブラケット111の上部に内径方向(回転軸方向)に向けて設けられている。但し、他の突出孔と同様に図1の構成に限定されるものではない。
【0019】
ブラケット111の内面には、図2に示すように、放射状に複数のリブ116,117a,117が配置されている。但し、図2中では、複数のリブ116,117a,117については簡略化している。
図2は、図1のブラケット111とフレーム106との接合面の下方向斜視図(ブラケット111を斜め下方向から見た図)である。
【0020】
上部突出孔110は、ブラケット111の内径側で且つ軸方向端部となる斜め方向(図1の場合、左上から右下に向かう方向)の貫通孔である。
上部凸状リブ116は、上部突出孔110に近い周方向左右に設けられ、径方向の内側(回転軸側)途中でリブが終了する形状のリブで、リブの長さが他の凸状リブ117(以下、単に「凸状リブ117」という)に比べて短い。
【0021】
凸状リブ117は、上部凸状リブ116を中心として上部突出孔110とは反対側において放射状に設けられ、径方向の内側(回転軸側)のベアリング114近くまでリブが延びている。
また、上部凸状リブ116を中心として上部突出孔110とは反対側において隣接する凸状リブ(隣接)117aのみ軸受部リブ112と連接している。
【0022】
軸受部リブ112は、内径側がベアリング114の外径側に対向し接しており、外径側は上部突出孔110に対向するように備えられている。
なお、これらのブラケット111に備えられたリブは凸状であればよく、凸状となる形状は限定されるものではない。
【0023】
また、軸受部リブ112のブラケット111内面には、油通し溝113が掘られている構造である。
ベアリング114の外周は軸受剛性を確保するためにブラケット111と軸受リブ112によって埋め込まれて固定されている。油通し溝113は、開口ではないため、軸受強度の低下は起こらない。
【0024】
そして、ベアリング114のオイルシール115側には、ブラケット111に油通し溝113が掘り込まれた油路を構成している。
上記構成を有する本実施例の油冷式回転機は以下の通りの作用・効果を奏する。
【0025】
即ち、注入孔107から入った潤滑油は、図1中に破線の矢印で示すように、油路105を通じて、固定子突出孔108から固定子103に、コイルエンド突出孔109からコイルエンド104に、上部突出孔110からベアリング114に、各々供給される。
ここで、凸状リブ117は、ブラケット剛性および軸支持剛性を高めるために設けられているが、この剛性を高めることに併せて上部突出孔110から突出された油を集中的に把捉してベアリング114に誘導する機能を兼ね備えた上部凸状リブ116も設けられている。
【0026】
そのため、上部凸状リブ116では、把捉した油を軸受部リブ112に効率よく誘導するために、他の凸状リブ117に比べて径方向のリブの長さが短くした構成としている。
また、上部凸状リブ116を中心として上部突出孔110の反対側に隣接する凸状リブ(隣接)117aは、前記のとおりに軸受部リブ112と連接しており、上部凸状リブ116を補足して誘導した潤滑油を軸受部リブ112に誘導するようになっている。
【0027】
そして、凸状リブ(隣接)117aと上部凸状リブ116で捕捉して誘導した潤滑油をブラケット111の内面に掘り込まれている油通し溝113を通じてベアリング114とオイルシール115との間に供給することができると共に、ベアリング114の油通し溝113を通じて供給する潤滑油と分かれた潤滑油が、オイルシール115と反対側の反ブラケット面に滴下し流れることで、ベアリング114全体に潤滑油が潤滑される。
【0028】
これより、剛性を高めるリブは、長さの短い上部凸状リブ116と、この上部凸状リブ116に隣接する凸状リブ(隣接)117aと、軸受部リブ112とを備える構成として、さらに軸受部リブ112のブラケット面に油通し溝113を備えることで、ベアリング114に効率よく潤滑油が供給できるようになり、ベアリング114の不具合(焼付きや摩擦の増加など)を解消することができる。
【0029】
また、コイルエンド突出孔109から流れた潤滑油が回転子102に流れて、回転子102の回転で飛び散った後、上部凸状リブ116、凸状リブ(隣接)117aで誘導される。
ブラケット111の上部突出孔110から出た潤滑油は、大部分がブラケット111の表面を流れ、上部凸状リブ116、凸状リブ(隣接)117a、軸受部リブ112を有することでブラケット上部内面に付着した潤滑油をベアリング114ヘ誘導する。これらのリブが存在することで、ベアリング114ヘ流れる潤滑油の減少を防止できる。リブが存在しないと、ベアリング114に誘導されずに回転機下方に流れ落ちてしまう潤滑油が多くなってしまう。
【0030】
凸状リブ(隣接)117aは、上部突状リブ116と隣接する構成を示したが、隣接することが必須の構成ではない。
また、上部凸状リブ116も2本で示したが、2本に限定されるものではなく、凸状リブ117よりも上部突出孔110側に長さの短いリブがあればよい。
【0031】
さらに、実施形態の説明では、凸状リブ117の一部分のみを簡略して示しているが、放射状に周方向に配置されているものがブラケット111の剛性の観点から好適であれば良く、そのリブ数やリブ幅、リブ間隔は設計に応じて適宜決定すればよい。
以上、実施例に基づいて具体的に説明した通り、本実施例の油冷式回転機によれば、ブラケット剛性を低下させることなく、潤滑油を軸受へ誘導する機能を兼ね備えたリブ構造により、軸受支持剛性を低下させることなく潤滑油を捕捉してベアリングへ誘導する構造となり、軸受支持剛性の向上とベアリングの不具合の抑制を兼ね備えたリブ構造となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の軸受潤滑油路構造は、油冷式回転機の軸受部の油路構造において、軸受け支持剛性を高めるために設けたリブに油誘導機能を持たせたリブ構造にとして広く産業上利用可能なものである。
【符号の説明】
【0033】
110 上部突出孔
111 ブラケット
112 軸受部リブ
113 油通し溝
116 上部凸状リブ
117 凸状リブ
117a 凸状リブ(隣接)
図1
図2
図3
図4