(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ダイオードが、前記ゲートと前記ソースまたはエミッタ領域の間に印加される電圧を、当該ソースまたはエミッタ領域を基準として、正の第1制限電圧と、負の第2制限電圧との間に制限するように構成されており、前記第1制限電圧の絶対値が前記第2制限電圧の絶対値よりも大きく定められている、請求項1または2に記載の半導体素子。
前記ダイオードが、前記ゲートと前記ソースまたはエミッタ領域の間に印加される電圧を、当該ソースまたはエミッタ領域を基準として、正の第1制限電圧以下に制限するように構成されており、前記第1制限電圧が、前記ソースまたはエミッタ領域およびドレインまたはコレクタ領域間を導通させるための閾値電圧よりも高く、かつ、前記ゲート絶縁膜の耐圧よりも低く定められている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体素子。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1Aおよび
図1Bは、本発明の第1の実施形態に係る半導体素子の模式的な平面図である。
図1Aは全体図、
図1Bは内部構成の拡大図をそれぞれ示す。
図2は、
図1Bの切断線II−IIでの切断面を示す断面図である。
半導体素子1は、SiCを用いたプレーナゲート型MOSFETであり、たとえば、
図1Aに示すように、平面視正方形のチップ状である。この半導体素子1は、たとえば、
図1Aの紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ数mm程度である。
【0016】
半導体素子1の表面には、ソースパッド2が形成されている。ソースパッド2は、4隅が外方に湾曲した平面視略正方形状であり、半導体素子1の表面のほぼ全域を覆うように形成されている。このソースパッド2には、その一辺の中央付近に、平面視略正方形状の除去領域3が形成されている。除去領域3は、ソースパッド2が形成されていない領域である。
【0017】
この除去領域3には、ゲートパッド4が配置されている。ゲートパッド4とソースパッド2との間には間隔があけられており、これらは互いに絶縁されている。
次に、半導体素子1の内部構造について説明する。
半導体素子1は、n
+型(たとえば、n型不純物濃度が1×10
18cm
−3〜1×10
22cm
−3)のSiC基板5を備えている。SiC基板5は、この実施形態では、半導体素子1のドレイン領域として機能し、その表面6(上面)がSi面(シリコン面)であり、その裏面7(下面)がC面(カーボン面)である。SiC基板5の表面6は、オフ角が0度〜10度(好ましくは0度〜5度)のSi面である。
【0018】
SiC基板5上には、SiC基板5よりも低濃度のn
−型(たとえば、n型不純物濃度が1×10
15cm
−3〜1×10
17cm
−3)のSiCからなるエピタキシャル層8が積層されている。半導体層としてのエピタキシャル層8は、SiC基板5に、いわゆるエピタキシャル成長によって形成されている。Si面である表面6上に形成されるエピタキシャル層8は、Si面を成長主面として成長させられる。したがって、エピタキシャル成長により形成されるエピタキシャル層8の表面9は、SiC基板5の表面6と同様、Si面である。より具体的には、SiC基板5と同様に、たとえば、オフ角が0度〜10度(好ましくは0度〜5度)のSi面である。
【0019】
半導体素子1には、
図1Aに示すように、平面視でエピタキシャル層8上の中央部に配置され、電界効果トランジスタとして機能する活性領域10が形成されている。エピタキシャル層8には、この活性領域を取り囲むように、活性領域10から間隔を開けてガードリング11が複数本(この実施形態では、2本)形成されている。活性領域10とガードリング11との間隔は、全周にわたっていたるところでほぼ一定である。
【0020】
各ガードリング11は、エピタキシャル層8にp型不純物をインプランテーションすることにより形成されるp
+型の高濃度領域である。具体的には、活性領域10の外側の領域において、エピタキシャル層8の表面9側(Si面側)には、平面視略正方形環状のp型ウェル領域13が間隔をおいて2つ形成されている。そして、各p型ウェル領域13の表層部に平面視略正方形環状のガードリング11が形成されている。
【0021】
活性領域10において、エピタキシャル層8の表面9側(Si面側)には、多数のp型のボディ領域12が、行方向および列方向に一定のピッチで行列状(マトリクス状)に配置されている。各ボティ領域12は、たとえば、平面視正方形状であり、たとえば、
図1Bの紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ7.2μm程度である。ボディ領域12の深さは、たとえば、0.65μm程度である。また、ボディ領域12のp型不純物濃度は、たとえば、1×10
16cm
−3〜1×10
17cm
−3(1×10
17cm
−3以下)である。このような低い不純物濃度は、キャリア移動度の高いデバイスの実現に寄与する。
【0022】
p型不純物は、たとえば、Alであってもよい。一方、エピタキシャル層8における、ボディ領域12よりもSiC基板5側(C面側)の領域は、エピタキシャル成長後のままの状態が維持された、n
−型のドリフト領域14となっている。
各ボディ領域12の表層部には、その中央部にp
+型ボディコンタクト領域15が形成されており、このボディコンタクト領域15を取り囲むようにn
+型ソース領域16が形成されている。ボディコンタクト領域15は、平面視正方形状であり、たとえば、
図1Bの紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ1.6μm程度である。ボディコンタクト領域15の深さは、たとえば、0.35μm程度である。
【0023】
n
+型ソース領域16は、平面視正方形環状であり、たとえば、
図1Bの紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ5.7μm程度である。ソース領域16の深さは、たとえば、0.25μm程度である。ソース領域16のn型不純物濃度は、1×10
19cm
−3以上であり、好ましくは1×10
20cm
−3以上である。より具体的には、1×10
19cm
−3〜1×10
22cm
−3、より好ましくは1×10
20cm
−3〜1×10
21cm
−3であってもよい。n型不純物は、P(燐)であってもよい。
【0024】
また、活性領域10において、一定のピッチで行列状に配列されたボディ領域12の各間の領域(隣り合うボディ領域12の側面により挟まれるボティ間領域17)は、一定(たとえば、2.8μm)幅を有する格子状である。
エピタキシャル層8の表面9上には、ボディコンタクト領域15およびその周辺領域を除く領域に、格子状のゲート絶縁膜19(
図1Bでは図示を省略)が形成されている。ゲート絶縁膜19は、酸化膜(たとえば酸化シリコン膜)からなっていてもよいし、窒素を含有する酸化膜(たとえば窒化酸化シリコン膜)からなっていてもよい。
【0025】
ゲート絶縁膜19上には、ボティ間領域17にほぼ対応する位置に、ゲート電極20が形成されている。ゲート電極20は、格子状のゲート絶縁膜19に沿って格子状に形成されている。ゲート電極20は、ゲート絶縁膜19を挟んで、ボティ領域12外のエピタキシャル層8、ボティ領域12およびソース領域16に跨る領域に対向している。したがって、ゲート電極20は平面視において、ソース領域16とオーバーラップしている。
【0026】
また、ゲート絶縁膜19上には、平面視において、ゲート電極20を取り囲むように、ゲート保護ダイオード30の第1のp型領域31が形成されている。この実施形態では、ゲート電極20と第1のp型領域31とは、一体的に形成されている。つまり、ゲート電極20の外周縁は第1のp型領域31に繋がっている。第1のp型領域31は、内側のp型ウェル領域13に沿って、平面視略正方形環状に形成されている。第1のp型領域31は、
図2に示される断面において、ゲート絶縁膜19を挟んで、内側のp型ウェル領域13の内周縁部、内側のp型ウェル領域13と最も外側のボティ領域12との間のエピタキシャル層8、最も外側のボティ領域12およびそのソース領域16に跨る領域に対向している。ゲート電極20および第1のp型領域31は、たとえば、ポリシリコンからなり、p型不純物が高濃度に導入されている。また、ゲート電極20および第1のp型領域31の厚さは、たとえば、6000Å程度である。
【0027】
ゲート絶縁膜19上には、
図1Bに示すように、内側のp型ウェル領域13にほぼ対応する領域に、第1のp型領域31を含む平面視略正方形環状のゲート保護ダイオード30が形成されている。ゲート保護ダイオード30は、平面視略正方形環状の第1のp型領域31と、第1のp型領域31の周囲に形成された平面視略正方形環状のn型領域32と、n型領域32の周囲に形成された平面視略正方形環状の第2のp型領域33とを含む。第2のp型領域33は、ゲート絶縁膜19を挟んで、内側のガードリング11および内側のp型ウェル領域13に対向している。n型領域32は、ゲート絶縁膜19を挟んで、内側のp型ウェル領域13に対向している。n型領域32および第2のp型領域33の厚さは、第1のp型領域31の厚さ(ゲート電極20の厚さ)と等しい。
【0028】
第1のp型領域31とn型領域32とにより、第1のダイオード30Aが構成され、n型領域32と第2のp型領域33とにより、第2のダイオード30Bが構成されている。第2のp型領域33は、第1のp型領域31と同様に、たとえば、ポリシリコンからなり、p型不純物が高濃度に導入されている。n型領域32は、たとえば、ポリシリコンからなり、n型不純物が高濃度に導入されている。第1のp型領域31の幅は、1μm〜10μm程度であってもよい。n型領域32の幅は、1μm〜10μm程度であってもよい。第2のp型領域33の幅は、1μm〜10μm程度であってもよい。
【0029】
この半導体素子1では、ボディ間領域17の幅方向中央に単位セル間の境界が設定されている。各単位セルは、たとえば、
図1Bの紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ10μm程度である。各単位セルでは、ゲート電極20に印加する電圧を制御することにより(たとえば6V以上の電圧を印加することにより)、各単位セルのボディ領域12の周縁部に環状のチャネルが形成される。この環状のチャネルを介して、ドリフト領域14において各ボディ領域12の4つの側面に沿ってエピタキシャル層8の表面9側へ流れるドレイン電流を、ソース領域16に流すことができる。チャネル長Lは、ゲート電極20の直下のボディ領域12の幅によって規定され、0.3μm以上(たとえば、0.65μm程度)であってもよい。
【0030】
エピタキシャル層8上には、ゲート電極20の露出面と、第1のp型領域31の露出面と、n型領域32の露出面と、第2のp型領域33の上面における内側周縁部とを覆うように、たとえば、SiO
2からなる層間絶縁膜25が積層されている。層間絶縁膜25には、コンタクトホール26が形成されている。コンタクトホール26内には、ソース領域16の中央部およびボディコンタクト領域15の全体が露出している。
【0031】
層間絶縁膜25上には、ソース電極27が形成されている。ソース電極27は、各コンタクトホール26を介して、すべての単位セルのボディコンタクト領域15およびソース領域16に一括して接触している。つまり、ソース電極27は、すべての単位セルに対して共通の配線となっている。また、ソース電極27は、ゲート保護ダイオード30の第2のp型領域33の上面にも接触している。したがって、ゲート保護ダイオード30の第1のp型領域31は、ゲート電極20に電気的に接続され、第2のp型領域33は、ソース電極27に電気的に接続されている。つまり、すべての単位セルのゲートとソースとの間にゲート保護ダイオード30が接続されている。
【0032】
ソース電極27上には層間絶縁膜(図示せず)が形成されており、その層間絶縁膜(図示せず)を介して、ソース電極27がソースパッド2(
図1A参照)に電気的に接続されている。一方、ゲートパッド4(
図1A参照)は、当該層間絶縁膜(図示せず)上に引き回されたゲート配線(図示せず)を介して、ゲート電極20に電気的に接続されている。
ソース電極27は、エピタキシャル層8との接触側から順にTi/TiN層28と、Al層29とが積層された構造を有していてもよい。Ti/TiN層28は、密着層としてのTi層をエピタキシャル層8側に有し、このTi層にバリア層としてのTiN層を積層した積層膜である。バリア層は、Al層29の構成原子(Al原子)がエピタキシャル層8側へと拡散することを防ぐ。
【0033】
SiC基板5の裏面7には、その全域を覆うようにドレイン電極40が形成されている。このドレイン電極40は、すべての単位セルに対して共通の電極となっている。ドレイン電極40としては、たとえば、SiC基板5側から順にTi、Ni、AuおよびAgが積層された積層構造(Ti/Ni/Au/Ag)を適用することができる。
図3は、
図1に示される半導体素子の電気回路図である。
【0034】
半導体素子1は、MOSFET51と、MOSFET51のゲートG(ゲート電極20)とソースS(ソース電極27)との間に接続されたゲート保護ダイオード30とを備えている。MOSFET41のドレインD(ドレイン電極40)とソースS(ソース電極27)との間には、寄生ダイオード52が接続されている。寄生ダイオード52は、MOSFET41のドレイン電極40とソース電極27との間に配置された、p型のボディ領域12とn
−型のドリフト領域14およびn
+型の基板5とによって、形成されている。
【0035】
ゲート保護ダイオード30は、逆直列接続された第1のダイオード30Aおよび第2のダイオード30Bを含む。第1のダイオード30AのアノードはMOSFET51のゲートGに接続されている。第1のダイオード30Aのカソードは第2のダイオード30Bのカソードに接続されている。第2のダイオード30Bのアノードは、MOSFET51のソースSに接続されている。
【0036】
第1のダイオード30Aの逆方向ブレークダウン電圧をV
BR1(V
BR1>0)で表し、第2のダイオード30Aの逆方向ブレークダウン電圧をV
BR2(V
BR2>0)で表することにする。第1のダイオード30Aに逆方向ブレークダウン電圧V
BR1以上の逆方向電圧が印加されると、第1のダイオード30Aはブレークダウンする。つまり、第1のダイオード30Aは、それに印加される逆方向電圧を逆方向ブレークダウン電圧V
BR1以下に制限する機能を有している。したがって、ソース電位を0Vとすると、第1のダイオード30Aは、MOSFET51のゲートGとソースSの間に印加される電圧を、その逆方向ブレークダウン電圧V
BR1に負の符号を付けた値(以下、「負の第2制限電圧−V
BR1」という)以上に制限する。
【0037】
第2のダイオード30Bに逆方向ブレークダウン電圧V
BR2以上の逆方向電圧が印加されると、第2のダイオード30Bはブレークダウンする。つまり、第2のダイオード30Bは、それに印加される逆方向電圧を逆方向ブレークダウン電圧V
BR2以下に制限する機能を有している。したがって、ソース電位を0Vとすると、第2のダイオード30Bは、MOSFET51のゲートGとソースSの間に印加される電圧を、その逆方向ブレークダウン電圧V
BR2(以下、「正の第1の制限電圧V
BR2」という)以下に制限する。したがって、ゲート保護ダイオード30は、MOSFET41のゲートGとソースSの間に印加される電圧を、負の第2制限電圧(−V
BR1)と正の第1の制限電圧V
BR2との間に制限する。
【0038】
第1のダイオード30Aは、ゲートGとソースSの間に印加される負電圧を、MOSFET51のゲート閾値が大きく変化する負電圧より大きな電圧に制限するように、設計されている。つまり、第1のダイオード30Aは、その逆方向ブレークダウン電圧V
BR1に負の符号を付けた値(負の第2制限電圧−V
BR1)が、MOSFET51のゲート閾値が大きく変化する前記負電圧より大きな値となるように設計されている。具体的には、第1のダイオード30Aは、その逆方向ブレークダウン電圧V
BR1に負の符号を付けた値(負の第2制限電圧−V
BR1)が、−7V以上(たとえば、−7V)となるように設計されている。
【0039】
第2のダイオード30Bは、その逆方向ブレークダウン電圧(正の第1制限電圧V
BR2)が、MOSFET51のソースSとドレインDの間を導通させるための閾値電圧よりも高く、かつ、ゲート絶縁膜19(
図2参照)の耐圧よりも低くなるように、設計されている。MOSFET51のソースSとドレインDの間を導通させるための閾値電圧は、1V〜5V程度である。ゲート絶縁膜19の耐圧は、10MV/cmであり、たとえば、ゲート絶縁膜19の厚さが40nmでは、40V程度である。
【0040】
さらに好ましくは、第2のダイオード30Bは、MOSFET51のゲートGとソースSの間に印加される正電圧を、MOSFET51のゲート閾値が大きく変化する正電圧より小さな電圧に制限するように、設計されている。つまり、第2のダイオード30Bは、その逆方向ブレークダウン電圧(正の第1制限電圧V
BR2)が、MOSFET51のゲート閾値が大きく変化する前記正電圧より小さな値となるように設計されている。具体的には、第2のダイオード30Bは、逆方向ブレークダウン電圧(正の第1制限電圧V
BR2)が20V以上でかつ33V以下(たとえば、33V)となるように設計されている。
【0041】
第2のダイオード30Bは、正の第1制限電圧V
BR2が、MOSFET51のソースSとドレインDの間を導通させるための閾値電圧よりも高くなるように設計されているので、ゲートGとソースSの間に正の第1制限電圧V
BR2より低い所定のゲート電圧を印加することにより、MOSFET51のソースSとドレインDの間を導通させることができる。また、第2のダイオード30Bは、正の第1制限電圧V
BR2が、ゲート絶縁膜19の耐圧よりも低くなるように設計されているので、ゲート絶縁膜19が破壊されるのを防止できる。
【0042】
また、第1のダイオード30Aは、負の第2制限電圧−V
BR1が、MOSFET51のゲート閾値が大きく変化するゲート−ソース間の負電圧より大きな値となるように設計され、第2のダイオード30Bは、正の第1制限電圧V
BR2が、MOSFET51のゲート閾値が大きく変化するゲート−ソース間の正電圧より小さな値となるように設計されている。したがって、この半導体素子1では、MOSFET51のゲートGとソースSとの間に、MOSFET51のゲート閾値が大きく変化するような電圧が印加されるのを防止できる。これにより、MOSFET51のゲート閾値が変動するのを抑制または防止できる。これにより、ゲートに閾値以上の電圧を印加してもMOSFET51がオンとならなくなったり、ゲートに閾値以上の電圧を印加していないときにMOSFET51がオンとなったりするのを回避できる。
【0043】
図4Aおよび
図4Bと
図5Aおよび
図5Bは、前記半導体素子1と同様な構造のMOSFETを有するがゲート保護ダイオード30が設けられていない半導体素子(比較例)の試料を作成し、その試料のゲートーソース間に2種類の負の電圧を印加して、閾値電圧V
thおよび閾値電圧の変化量ΔV
thの経時的変化を調べる実験を行った結果を示す。閾値電圧の変化量ΔV
thは、電圧を印加する前の閾値電圧を基準とした場合の、閾値電圧の変化量である。MOSFETのドレイン−ソース間への印加電圧V
dsは1Vであり、MOSFETのドレイン−ソース間の電流I
dsは1mAである。また、雰囲気温度は150℃である。
【0044】
図4Aおよび
図4Bは、前記試料のゲートーソース間に−10Vの負電圧を印加した場合の実験結果を示し、
図5Aおよび
図5Bは、前記試料のゲートーソース間に−7Vの負電圧を印加した場合の実験結果を示す。MOSFETのドレイン−ソース間に負の電圧が印加されると、ホールがゲート絶縁膜に注入されるため、ある一定時間が経過するまでは時間経過とともに閾値電圧V
thが下がる。閾値電圧V
thは、その後、ほぼ一定となる。電圧を印加する前の閾値電圧V
thは、2.0V程度である。
【0045】
試料のゲートーソース間に−10Vの負電圧を印加した場合には、
図4Aおよび
図4Bに示すように、電圧印加後、100時間が経過した時点では、閾値電圧V
thは1.4V程度となり、その変化量ΔV
thは−0.5V以上となる。つまり、閾値電圧V
thが大きく低下する。一方、試料のゲートーソース間に−7Vの負電圧を印加した場合には、
図5Aおよび
図5Bに示すように、電圧印加後、200時間が経過した時点では、閾値電圧V
thは1.8V程度なり、その変化量ΔV
thは−0.2Vとなる。その後は、閾値電圧V
thは、ほとんど変化しない。つまり、ゲートーソース間への印加電圧が−7Vである場合には、しきい値電圧V
thは大きくは低下しない。
【0046】
これらの実施結果から、ゲート−ソース間の負の印加電圧を−7V以上に制限すれば、
閾値電圧V
thの大きな変動を抑制または防止できることが分かる。したがって、本実施形態の半導体素子1において、負の第1制限電圧−V
BR1を−7V以上とすれば、閾値電圧V
thの大きな変動を抑制または防止できることがわかる。
図6は、前記半導体素子1と同様な構造なMOSFETを有するがゲート保護ダイオード30が設けられていない半導体素子(比較例)の試料を作成し、その試料のゲートーソース間に複数種類の正電圧を印加して、閾値電圧V
thの経時的変化を調べる実験を行った結果を示す。MOSFETのドレイン−ソース間への印加電圧V
dsは1Vであり、MOSFETのドレイン−ソース間の電流I
dsは1mAである。また、雰囲気温度は150℃である。ゲートーソース間に印加される電圧の種類は、24V、33V、34V、35V、36V、37Vおよび38Vの7種類である。
【0047】
MOSFET51のドレイン−ソース間に正の電圧が印加されると、ホールおよび電子の両方がゲート絶縁膜19に注入される。この際、最初は、ホールの方が注入されやすいため、閾値電圧V
thが下がる。
図6からわかるように、ゲートーソース間への印加電圧が大きいほど、閾値電圧V
thは急激にかつ大きく低下する。その後、電子の注入が進むため、閾値電圧V
thが徐々に上がる。
【0048】
ゲートーソース間への印加電圧が34Vである場合には、20時間以上の時間が経過すると、閾値電圧V
thは0.5V程度低下する。ゲートーソース間への印加電圧が34Vより大きい場合には、ゲートーソース間への印加電圧が34Vである場合に比べて、閾値電圧V
thの変化量はさらに大きくなる。ゲートーソース間への印加電圧が33Vである場合には、20時間以上の時間が経過したとしても、閾値電圧V
thは少ししか変化しない。
【0049】
この実施結果から、ゲートーソース間への正の印加電圧を33V以下に制限すれば、閾値電圧V
thの大きな変動を抑制または防止できることが分かる。したがって、本実施形態の半導体素子1において、正の第2制限電圧V
BR2を33V以下とすれば、閾値電圧V
thの大きな変動を抑制または防止できることがわかる。
図7A〜
図7Kは、半導体素子1の製造方法を説明するため模式的な断面図である。
【0050】
半導体素子1を製造するには、まず、
図7Aに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法、LPE(Liquid Phase Epitaxy:液晶エピタキシ)法、MBE(Molecuiar Beam Epitaxy:分子線エピタキシ)法などのエピタキシャル成長法により、SiC基板5の表面6(Si面)上にn型不純物(たとえば、N(窒素))を導入しながらSiC結晶が成長させられる。これにより、SiC基板5上に、n
−型のエピタキシャル層8が形成される。n型不純物濃度は、たとえば、1×10
15cm
−3〜1×10
16cm
−3とされる。
【0051】
続いて、
図7Bに示すように、ボディ領域12およびp型ウェル領域13を形成すべき部分に開口を有するSiO
2マスク61を用いて、p型不純物(たとえばAl(アルミニウム)が、エピタキシャル層8の表面9からエピタキシャル層8の内部にインプランテーション(注入)される。このときの注入条件は、p型不純物の種類により異なるが、たとえば、ドーズ量が6×10
13cm
−2程度、加速エネルギーが380keV程度であってもよい。これにより、エピタキシャル層8の表層部に、ボディ領域12およびp型ウェル領域13が形成される。ボディ領域12およびp型ウェル領域13のp型不純物濃度は、たとえば、1×10
16cm
−3〜1×10
17cm
−3(1×10
17cm
−3以下)とされる。また、エピタキシャル層8の基層部には、エピタキシャル成長後のままの状態を維持するドリフト領域14が形成される。
【0052】
次いで、
図7Cに示すように、ソース領域16を形成すべき領域に開口を有するSiO
2マスク62を用いて、n型不純物(たとえばP(リン))が、エピタキシャル層8の表面9からエピタキシャル層8の内部にインプラテーション(注入)される。具体的には、n型不純物の種類により異なるが、たとえば、ドーズ量を2.0×10
13cm
−2〜1.0×10
14cm
−2の範囲、加速エネルギーを30keV〜160keVの範囲として、エピタキシャル層8をたとえば、室温に保持しながら、多段(たとえば4段)イオン注入を行ってもよい。ソース領域16のn型不純物濃度は、たとえば、1×10
19cm
−3〜1×10
22cm
−3、より好ましくは1×10
20cm
−3〜1×10
21cm
−3とされる。
【0053】
次いで、
図7Dに示すように、ボディコンタクト領域15およびガードリング11を形成すべき領域に開口を有するSiO
2マスク63を用いて、p型不純物(たとえばAl)が、エピタキシャル層8の表面9からエピタキシャル層8の内部にインプランテーション(注入)される。より具体的には、p型不純物の種類により異なるが、たとえば、ドーズ量を3.7×10
15cm
−2程度とし、加速エネルギーを30keV〜180keVの範囲とした多段注入(4段注入)を行ってもよい。これにより、ボディコンタクト領域15およびガードリング11が形成される。
【0054】
次いで、たとえば、1400℃〜2000℃で2〜10分間、エピタキシャル層8がアニール処理(熱処理)される。これにより、エピタキシャル層8の表層部に注入されたn型不純物およびp型不純物のイオンが活性化する。エピタキシャル層8のアニール処理は、たとえば、抵抗加熱炉、高周波誘導加熱炉を適当な温度で制御することによって行うことができる。
【0055】
次いで、
図7Eに示すように、エピタキシャル層8の表面9が熱酸化されることにより、エピタキシャル層8の表面9の全域を覆うゲート絶縁膜19が形成される。より具体的には、窒素および酸素を含有する雰囲気中での熱酸化(たとえば、1100℃〜1400℃程度で半日〜2日間)によって、窒化酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜19が形成されてもよい。
【0056】
次いで、
図7Fに示すように、CVD法により、ポリシリコン材料64がエピタキシャル層8上に堆積される。
その後、
図7Gに示すように、堆積したポリシリコン材料64の不要部分(ゲート電極20およびゲート保護ダイオード30を形成すべき領域以外の部分)がドライエッチングにより除去される。これにより、ポリシンコン材料64のうち、ゲート電極20およびゲート保護ダイオード30を形成すべき領域が残される。
【0057】
次いで、
図7Hに示すように、ゲート電極20ならびにゲート保護ダイオード30の第1のp型領域31および第2のp型領域33を形成すべき領域に開口を有するSiO
2マスク65を用いて、p型不純物(たとえばB(ホウ素))が、ポリシンコン材料64にインプランテーション(注入)される。これにより、ゲート電極20と、ゲート保護ダイオード30における第1のp型領域31および第2のp型領域33とが形成される。
【0058】
次いで、
図7Iに示すように、ゲート保護ダイオード30のn型領域32を形成すべき領域に開口を有するSiO
2マスク66を用いて、n型不純物(たとえばP(リン))が、ポリシンコン材料64にインプランテーション(注入)される。これにより、ゲート保護ダイオード30におけるn型領域32が形成される。これにより、第1のp型領域31、n型領域32および第2のp型領域33を含むゲート保護ダイオード30が形成される。前述したように、第1のp型領域31とn型領域32とによって、第1のダイオード30Aが構成され、n型領域32と第2のp型領域33とによって、第2のダイオード30Bが構成される。
【0059】
次いで、
図7Jに示すように、CVD法により、エピタキシャル層8上にSiO
2からなる層間絶縁膜25が積層される。
そして、
図7Kに示すように、層間絶縁膜25およびゲート絶縁膜19が連続してパターニングされることにより、コンタクトホール26が形成される。
その後は、たとえば、層間絶縁膜25上に、Ti、TiNおよびAlが順にスパッタされて、ソース電極27が形成される。また、たとえば、SiC基板5の裏面7に、Ti、Ni、AuおよびAgが順にスパッタされて、ドレイン電極40が形成される。
【0060】
この後、層間絶縁膜(図示略)、ソースパッド2、ゲートパッド4などが形成されることにより、
図1A、
図1Bおよび
図2に示す半導体素子1が得られる。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る半導体素子の模式的な断面図である。第2の実施形態に係る半導体素子の平面図は、
図1Aおよび
図1Bとほぼ同様である。
図8は、
図2の断面図に対応する断面図である。
図8において、
図2の各部に対応する部分には、
図2と同じ参照符号を付して示す。
【0061】
この半導体素子1Aは、
図1A、
図1Bおよび
図2に示す半導体素子1と比べて、ゲート保護ダイオードの構造が異なっている。
エピタキシャル層8の表面9上には、ボディコンタクト領域15およびその周辺領域に対応する部分を除く領域に、格子状のゲート絶縁膜19が形成されている。ゲート絶縁膜19上には、ボティ間領域17にほぼ対応する位置にゲート電極20が形成されている。ゲート電極20は、格子状のゲート絶縁膜19に沿って格子状に形成されている。ゲート電極20は、ゲート絶縁膜19を挟んで、ボティ間領域17に対応するエピタキシャル層8、ボティ領域12およびソース領域16に跨る領域に対向している。したがって、ゲート電極20は平面視において、ソース領域16とオーバーラップしている。
【0062】
また、ゲート絶縁膜19上には、平面視において、ゲート電極20を取り囲むように、ゲート保護ダイオード130の第1のp型領域131が形成されている。ゲート電極20と第1のp型領域131とは、一体的に形成されている。つまり、ゲート電極20の外方端は第1のp型領域131に繋がっている。第1のp型領域131は、内側のp型ウェル領域13に沿って、平面視略正方形環状に形成されている。第1のp型領域31は、
図8の断面において、ゲート絶縁膜19を挟んで、内側のガードリング11、内側のp型ウェル領域13、内側のp型ウェル領域13と最も外側のボティ領域12との間のエピタキシャル層8、最も外側のボティ領域12およびそのソース領域16に跨る領域に対向している。ゲート電極20および第1のp型領域31は、たとえば、ポリシリコンからなり、p型不純物が高濃度に導入されている。また、ゲート電極20および第1のp型領域31の厚さは、たとえば、6000Å程度である。
【0063】
p型領域131上には、ゲート保護ダイオード130のn型領域132が全周にわたって形成されている。n型領域132は、たとえば、ポリシリコンからなり、n型不純物が導入されている。また、n型領域131の厚さは、たとえば、6000Å程度である。
n型領域132上には、ゲート保護ダイオード130の第2のp型領域133が全周にわたって形成されている。第2のp型領域133は、たとえば、ポリシリコンからなり、p型不純物が導入されている。また、第2のp型領域133の厚さは、たとえば、6000Å程度である。第1のp型領域131、n型領域132および第2のp型領域133の幅は、たとえば、1μm〜10μm程度である。第1のp型領域131、n型領域132および第2のp型領域133によってゲート保護ダイオード130が構成されている。
【0064】
また、第1のp型領域131とn型領域132とによって第1のダイオード131Aが構成され、n型領域132と第2のp型領域133によって第2のダイオード131Bが構成されている。第1のダイオード130Aは、その逆方向ブレークダウン電圧V
BR1に負の符号を付した値(負の第2制限電圧−V
BR1)が、−7V以上(たとえば、−7V)となるように設計されている。第2のダイオード130Bは、その逆方向ブレークダウン電圧V
BR2(正の第1制限電圧)が20V以上でかつ33V以下(たとえば、33V)となるように設計されている。
【0065】
この半導体素子1Aでは、ボディ間領域17の幅方向中央に単位セル間の境界が設定されている。各単位セルでは、ゲート電極20に印加する電圧を制御することにより(たとえば6V以上の電圧を印加することにより)、各単位セルのボディ領域12の周縁部に環状のチャネルが形成される。この環状のチャネルを介して、ドリフト領域14において各ボディ領域12の4つの側面に沿ってエピタキシャル層8の表面9側へ流れるドレイン電流を、ソース領域16に流すことができる。
【0066】
エピタキシャル層8上には、ゲート電極20とゲート保護ダイオード130とを覆うように、たとえば、SiO
2からなる層間絶縁膜125が積層されている。層間絶縁膜125には、第1のコンタクトホール126Aと第2のコンタクトホール126Bとが形成されている。第1のコンタクトホール126A内には、ソース領域16の中央部およびボディコンタクト領域15の全体が露出している。第2のコンタクトホール126B内には、ゲート保護ダイオード130の第2のp型領域133の一部が露出している。
【0067】
層間絶縁膜125上には、ソース電極127が形成されている。ソース電極27は、エピタキシャル層8および第2のp型領域133との接触側から順にTi/TiN層128と、Al層129とが積層された構造を有していてもよい。ソース電極127は、第1のコンタクトホール126Aを介して、すべての単位セルのボディコンタクト領域15およびソース領域16に一括して接触している。つまり、ソース電極127は、すべての単位セルに対して共通の配線となっている。また、ソース電極127は、第2のコンタクトホール126Bを介して、ゲート保護ダイオード130の第2のp型領域133にも接触している。したがって、ゲート保護ダイオード130の第1のp型領域131は、ゲート電極20に電気的に接続され、第2のp型領域133は、ソース電極127に電気的に接続されている。つまり、すべての単位セルのゲートとソースとの間にゲート保護ダイオード130が接続されている。
【0068】
図9A〜
図9Iは、半導体素子1Aの製造方法を示している。
前述した半導体素子1の製造方法における
図7A〜
図7Eは、この半導体素子1Aの製造方法においても共通している。そこで、エピタキシャル層8の表面にゲート絶縁膜19が形成された後の工程について説明する。
エピタキシャル層8の表面にゲート絶縁膜19が形成されると、
図9Aに示すように、CVD法により、ポリシリコン材料81がエピタキシャル層8上に堆積される。
【0069】
その後、
図9Bに示すように、堆積したポリシリコン材料81の不要部分(ゲート電極20およびゲート保護ダイオード130の第1のp型領域131を形成すべき領域以外の部分)がドライエッチングにより除去される。これにより、ポリシンコン材料81のうち、ゲート電極20および第1のp型領域131を形成すべき領域が残される。
次いで、
図9Cに示すように、ゲート電極20ならびにゲート保護ダイオード130の第1のp型領域131を形成すべき領域に開口を有するSiO
2マスク82を用いて、p型不純物(たとえばB(ホウ素))が、ポリシンコン材料81にインプランテーション(注入)される。これにより、ゲート電極20と、ゲート保護ダイオード130の第1のp型領域131とが形成される。
【0070】
次いで、
図9Dに示すように、ゲート保護ダイオード130の第1のp型領域131に対応する領域(n型領域132を形成すべき領域)に開口を有するSiO
2マスク83を用いて、CVD法により、ポリシリコン材料84が第1のp型領域131上に堆積される。この際、マスク83上にも、ポリシリコン材料84が堆積される。
この後、
図9Eに示すように、n型不純物(たとえばP(リン))が、第1のp型領域131上に堆積されたポリシンコン材料84にインプランテーション(注入)される。これにより、ゲート保護ダイオード130におけるn型領域132が形成される。
【0071】
次いで、
図9Fに示すように、CVD法により、ポリシリコン材料85がn型領域132上に堆積される。この際、マスク83上にも、ポリシリコン材料85が堆積される。
この後、
図9Gに示すように、p型不純物(たとえばB(ホウ素))が、n型領域132上に堆積されたポリシンコン材料85にインプランテーション(注入)される。これにより、ゲート保護ダイオード130における第2のp型領域133が形成される。これにより、第1のp型領域131、n型領域132および第2のp型領域133を含むゲート保護ダイオード130が形成される。前述したように、第1のp型領域131とn型領域132とによって、第1のダイオード130Aが構成され、n型領域132と第2のp型領域133とによって、第2のダイオード130Bが構成される。
【0072】
次いで、
図9Hに示すように、CVD法により、エピタキシャル層8上にSiO
2からなる層間絶縁膜125が積層される。
そして、
図9Iに示すように、層間絶縁膜125およびゲート絶縁膜19が連続してパターニングされることにより、第1のコンタクトホール126Aおよび第2のコンタクトホール126Bが形成される。
【0073】
その後は、たとえば、層間絶縁膜125上に、Ti、TiNおよびAlが順にスパッタされて、ソース電極127が形成される。また、たとえば、SiC基板5の裏面7に、Ti、Ni、AuおよびAgが順にスパッタされて、ドレイン電極40が形成される。
この後、層間絶縁膜(図示略)、ソースパッド、ゲートパッドなどが形成されることにより、
図2に示す半導体素子1Aが得られる。
【0074】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る半導体素子の模式的な断面図である。
図10において、
図2の各部に対応する部分には、
図2と同じ参照符号を付して示す。
この半導体素子1Bは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。この半導体素子1Bは、
図1A、
図1Bおよび
図2に示す半導体素子1とほぼ同様な構造を有している。この半導体素子1Bでは、基板として、p
+型のSiC基板5Aが用いられている。そして、このSiC基板5A上に、n
+型のSiCからなるエピタキシャル層5Bが積層されている。そして、このエピタキシャル層5B上に、n
−型のSiCからなるエピタキシャル層8が積層されている。また、この半導体素子1Bでは、SiC基板5Aの裏面に形成された電極40がコレクタ電極となり、層間絶縁膜25上に形成された電極27がエミッタ電極となる。
【0075】
ゲート保護ダイオード30は、ゲート電極20とエミッタ電極27との間に形成されている。ゲート保護ダイオード30は、第1のp型領域31と、n型領域32と、第2のp型領域33とからなる。第1のp型領域31とn型領域32とによって第1のダイオード30Aが構成され、n型領域32と第2のp型領域33とによって第2のダイオード30Aが構成されている。
【0076】
この半導体素子1Bでは、各単位セルにおいて、p
+型のSiC基板201と、n
+型のエピタキシャル層202およびn
−型のエピタキシャル層8と、p型のボディ領域12とによって、npnトランジスタ部が形成されている。各単位セルでは、ゲート電極20に正の電圧を印加することにより、npnトランジスタ部のベースに電流が供給され、npnトランジスタ部がオンとなる。これにより、コレクタ-エミッタ間に電流が流れる。
【0077】
図11は、
図10に示される半導体素子1Bの電気回路図を示している。
半導体素子1Bは、IGBT200と、IGBT200のゲートG(ゲート電極20)とエミッタE(エミッタ電極27)との間に接続されたゲート保護ダイオード30とを備えている。ゲート保護ダイオード30は、逆直列接続された第1のダイオード30Aと第2のダイオード30Bとを含む。第1のダイオード30AのアノードはIGBT200のゲートGに接続され、第1のダイオード30Aのカソードは第2のダイオード30Bのカソードに接続されている。第2のダイオード30Bのアノードは、IGBT200のエミッタEに接続されている。
【0078】
第1のダイオード30Aは、ゲートGとエミッタEの間に印加される負電圧を、IGBT200のゲート閾値が大きく変化する負電圧より大きな電圧に制限するように、設計されている。つまり、第1のダイオード30Aは、その逆方向ブレークダウン電圧V
BR1に負の符号を付けた値(負の第2制限電圧−V
BR1)が、IGBT200のゲート閾値が大きく変化する前記負電圧より大きな値となるように設計されている。具体的には、第1のダイオード30Aは、その逆方向ブレークダウン電圧V
BR1に負の符号を付した値(負の第2制限電圧−V
BR1)が、−7V以上(たとえば、−7V)となるように設計されている。
【0079】
第2のダイオード30Bは、その逆方向ブレークダウン電圧V
BR2(正の第1制限電圧)が、IGBT200のコレクタCとエミッタEの間を導通させるための閾値電圧よりも高く、かつ、ゲート絶縁膜19の耐圧よりも低くなるように設計されている。さらに好ましくは、第2のダイオード30Bは、IGBT200のゲートGとエミッタEの間に印加される正電圧を、IGBT200のゲート閾値が大きく変化する正電圧より小さな電圧に制限するように、設計されている。具体的には、第2のダイオード30Bは、その逆方向ブレークダウン電圧V
BR2(正の第1制限電圧)が20V以上でかつ33V以下(たとえば、33V)となるように設計されている。
【0080】
図12は、本発明の第4の実施形態に係る半導体素子の模式的な断面図である。
図12において、
図8の各部に対応する部分には、
図8と同じ参照符号を付して示す。
この半導体素子1Cは、IGBTである。この半導体素子1Cは、
図8に示す半導体素子1Aとほぼ同様な構造を有している。この半導体素子1Cでは、基板として、p
+型のSiC基板5Aが用いられている。そして、このSiC基板5A上に、n
+型のSiCからなるエピタキシャル層5Bが積層されている。そして、このエピタキシャル層5B上に、n
−型のSiCからなるエピタキシャル層8が積層されている。また、この半導体素子1Cでは、SiC基板201の裏面に形成された電極40がコレクタ電極となり、層間絶縁膜25上に形成された電極127がエミッタ電極となる。
【0081】
ゲート保護ダイオード130は、ゲート電極20とエミッタ電極27との間に形成されている。ゲート保護ダイオード130は、第1のp型領域131と、n型領域132と、第2のp型領域133とからなる。第1のp型領域131とn型領域132とによって第1のダイオード130Aが構成され、n型領域132と第2のp型領域133とによって第2のダイオード130Aが構成されている。
【0082】
第1のダイオード130Aは、その逆方向ブレークダウン電圧V
BR1に負の符号を付した値(負の第2制限電圧−V
BR1)が、−7V以上(たとえば、−7V)となるように設計されている。第2のダイオード130Bは、その逆方向ブレークダウン電圧V
BR2(正の第1制限電圧)が20V以上でかつ33V以下(たとえば、33V)となるように設計されている。
【0083】
以上、本発明の4つの実施形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、逆直列接続された2つのダイオード30A,30B(130A,130B)は、それらのカソードどうしが接続されているが、それらのアノードどうしが接続されていてもよい。
また、前述の実施形態では、各半導体素子1、1A、1B、1Cは、SiCデバイスであるが、Si(シリコン)を半導体材料として用いたSiデバイスであってもよい。
【0084】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。