(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酵母細胞由来でない1つ以上のペントース代謝経路の1つ以上の外因性遺伝子を含む酵母細胞であって、前記酵母細胞由来のhxk1、hxk2、glk1およびgal1の破壊を有する酵母細胞。
ペントース発酵酵母細胞を調製する方法であって、ペントース代謝経路の1つ以上の外因性遺伝子を含む酵母細胞を、前記酵母細胞由来の遺伝子hxk2の破壊に供し、得られた破壊体株を、前記酵母細胞が単独の炭素源としてのペントース上で0.05h−1以上の生育速度を有するまで進化工学に供してペントース消費を改善し、得られたペントース発酵酵母細胞を単離し、得られた酵母細胞において、hxk1、hxk2、glk1およびgal1遺伝子の1つ以上を導入してそのグルコース消費能を回復する方法。
請求項5に記載のペントースおよびグルコース発酵酵母細胞をペントースおよびグルコース含有材料中で、好適な発酵条件下でペントースおよびグルコースの発酵生成物への発酵を可能とするために十分な期間培養する工程を含む、ペントースの発酵から発酵生成物を生成する方法であって、前記酵母細胞は、ペントースを発酵して発酵生成物を対応する野性型酵母と比べて高いレベルにおいて生成する方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】株DS62504(
図1(a))、IMK307(
図1(b))およびIMK311(
図1(c))の振とうフラスコ培養の間のグルコース(◆)、アラビノース(▲)およびエタノール(■)濃度ならびに660nmにおける光学密度(OD660、●)を示す。
【
図2】株DS62504(
図2(a))、IMK307(
図2(b))およびIMK311(
図2(c))の嫌気的培養の間のグルコース(◆)、アラビノース(▲)およびエタノール(■)濃度ならびに排ガス中のCO
2百分率(黒色実線)を示す。発酵物にグルコースにより生育させた振とうフラスコ培養物を植菌した。
【
図3】2%のアラビノースおよび種々の濃度のグルコース(0、0.11、0.23、0.65、1.3および2.5%)を含有するMY尿素中の株IMK318の振とうフラスコ培養物についての660nmにおける光学密度(OD660)を計測することにより決定された生育プロファイルを示す。
【
図4】表3に従って継代された株IMK318(系列A:SF1、SF2およびSF5);この系列の振とうフラスコから選択された単一コロニー単離物IMW018の振とうフラスコ培養の間のグルコース(◆)、アラビノース(▲)およびエタノール(■)濃度ならびに660nmにおける光学密度(OD660、●)。
【
図5】表3に従って継代された株IMK318(系列B:SF1、SF2およびSF3);この系列の振とうフラスコから選択された単一コロニー単離物IMW017の振とうフラスコ培養の間のグルコース(◆)、アラビノース(▲)およびエタノール(■)濃度ならびに660nmにおける光学密度(OD660、●)を示す。
【
図6】株IMW017の連続嫌気的培養の間のグルコース(◆)、アラビノース(▲)およびエタノール(■)濃度ならびに排ガス中のCO
2百分率(灰色実線)を示す。
【
図7】株IMW017の連続嫌気的培養の間の排ガス中のCO
2百分率(灰色実線)および生育速度を示す。比生育速度は、グルコースおよびアラビノースの混合物(●)またはアラビノース単独(◆)のいずれかに対するバッチ培養の間のCO
2生成プロファイルから導かれる。
【
図8】株IMW017の嫌気的連続バッチ培養の間の、アラビノース(A)ならびにグルコースおよびアラビノースの混合物(B)を補給した培地における個々のバッチのCO
2生成プロファイルを示す。CO
2生成プロファイルは、等しい初期CO2生成レベルを想定してアラインされる。説明文中の数字は、連続バッチ数を示す。
【
図9】株IMW017の連続嫌気的バッチ培養のバッチ24および25の間のグルコース(◆)、アラビノース(▲)およびエタノール(■)濃度ならびに排ガス中のCO
2百分率(灰色実線)を示す。
【
図10】株DS62504、IMK307、IMK311、IMK318、IMW017およびIMW018のヘキソキナーゼ酵素活性を示す。
【
図11】2%のグルコースおよび2%のアラビノースを補給したMY培地中での株IMW023の振とうフラスコ培養の間のOD660(●)、アラビノース濃度(▲)、およびグルコース濃度(◆)を示す。
【
図12】2%のグルコースおよび2%のアラビノースを補給したMY培地中の株IMW023の継代された培養物の1代目(SF1)および24代目(SF24)の振とうフラスコ培養の間のOD660(●)、アラビノース濃度(▲)、およびグルコース濃度(◆)を示す。
【
図13】2%のグルコースおよび2%のアラビノースを補給したMY培地中の株IMW023の継代された培養物の個々の振とうフラスコ培養において決定された推定比生育速度を示す。
【
図14】20g/リットルのグルコースおよび20g/リットルのアラビノースを補給したMY培地中の株IMW023の連続嫌気バッチ培養の間の排ガス中のCO
2百分率(灰色実線)および比生育速度、ならびに個々のバッチ培養の比生育速度(●)を示す。灰色陰影は、窒素の代わりに空気を補給した箇所を示す。矢印は、新たな連続バッチの開始を示す。
【
図15】20g/リットルのグルコースおよび20g/リットルのアラビノースを補給したMY培地中の株IMW023の連続的嫌気バッチ培養の間の排ガス中のCO
2百分率(灰色実線)、アラビノース濃度(▲)およびグルコース濃度(◆)を示す。
【
図16】20g/リットルのグルコースおよび20g/リットルのアラビノースを補給したMY培地中の株IMW023の嫌気的連続バッチ培養の間の個々のバッチのアラインされたCO
2生成プロファイルを示す。CO
2生成プロファイルは、等しい初期CO
2生成レベルを想定してアラインされる。説明文中の数字は、連続バッチ数を示す。
【
図17】株DS62504(
図17(a))、IMK307(
図17(b)、IMK311(
図17(c))、IMW017(
図17(d))、IMW018(
図17(e))およびIMW058(
図17(f))、IMW024(
図17(g))、IMW025(
図17(h))、IMW047(
図17(i))、IMW059(
図17(j))、IMW060(
図17(k))、IMW061(l))の振とうフラスコ培養の間のグルコース(◆)、アラビノース(▲)およびエタノール(□)濃度ならびに660nmにおける光学密度(OD660、●)を示す。
【
図18】株IMW047の振とうフラスコ培養の間のグルコース(◆)およびアラビノース(▲)濃度を示す。
【
図19】株CEN.PK113−7D、IMK318、IMW017およびIMW018のGAL1アミノ酸アラインメントを示す。
【
図20】株CEN.PK113−7D、IMK318、IMW017およびIMW018のGAL2アミノ酸アラインメントを示す。
【
図21】20g l
−1のグルコースおよび20g l
−1のアラビノースを補給したMY培地中の株IMW059の嫌気的培養の間のグルコース(◆)、アラビノース(▲)、エタノール(□)濃度、バイオマス乾燥重量(●)およびCO2生成(灰色実線)を示す。
【
図22】20g l
−1のグルコースおよび20g l
−1のアラビノースを補給したMY培地中の株IMW060の嫌気的培養の間のグルコース(◆)、アラビノース(▲)、エタノール(□)濃度、バイオマス乾燥重量(●)およびCO2生成(灰色実線)を示す。
【
図23】20g l
−1のグルコースおよび20g l
−1のアラビノースを補給したMY培地中の株IMW061の嫌気的培養の間のグルコース(◆)、アラビノース(▲)、エタノール(□)濃度、バイオマス乾燥重量(●)およびCO
2生成(灰色実線)を示す。
【
図24】20g l
−1のグルコースおよび20g l
−1のアラビノースの混合物中の嫌気的培養の間の株DS62504のCO
2生成プロファイル(黒色点線)、IMW059(黒色実線)、IMW060(黒色実線)およびIMW061(黒色ストライプ線)を示す。
【
図25】培地CFMM2M上での株DS62504の振とうフラスコ培養の間のグルコース(◆)、マンノース(◇)、アラビノース(▲)およびエタノール(□)濃度を示す。
【
図26】培地CFMM2M上での株IMW060の振とうフラスコ培養の間のグルコース(◆)、マンノース(◇)、アラビノース(▲)およびエタノール(□)濃度を示す。
【
図27】培地CFMM2M上での株IMW061の振とうフラスコ培養の間のグルコース(◆)、マンノース(◇)、アラビノース(▲)およびエタノール(□)濃度を示す。
【
図28】培地CFMM1M上での株DS62504の振とうフラスコ培養の間のグルコース(◆)、マンノース(◇)、アラビノース(▲)およびエタノール(□)濃度を示す。
【
図29】培地CFMM1M上での株IMW060の振とうフラスコ培養の間のグルコース(◆)、マンノース(◇)、アラビノース(▲)およびエタノール(□)濃度を示す。
【
図30】培地CFMM1M上での株IMW061の振とうフラスコ培養の間のグルコース(◆)、マンノース(◇)、アラビノース(▲)およびエタノール(□)濃度を示す。
【0019】
[配列表の簡単な説明]
遺伝子破壊カセットの構築に使用されるオリゴヌクレオチド:
配列番号1は、オリゴヌクレオチドHXK2−disAの配列を説明する
配列番号2は、オリゴヌクレオチドHXK2−disBの配列を説明する
配列番号3は、オリゴヌクレオチドHXK1−disAの配列を説明する
配列番号4は、オリゴヌクレオチドHXK1−disBの配列を説明する
配列番号5は、オリゴヌクレオチドGLK1−disAの配列を説明する
配列番号6は、オリゴヌクレオチドGLK1−disBの配列を説明する
診断目的に使用されるオリゴヌクレオチド:
配列番号7は、オリゴヌクレオチドKanAの配列を説明する
配列番号8は、オリゴヌクレオチドKanBの配列を説明する
配列番号9は、オリゴヌクレオチドHXK2−FWの配列を説明する
配列番号10は、オリゴヌクレオチドHXK2−RVの配列を説明する
配列番号11は、オリゴヌクレオチドHXK1−FWの配列を説明する
配列番号12は、オリゴヌクレオチドHXK1−RVの配列を説明する
配列番号13は、オリゴヌクレオチドGLK1−FWの配列を説明する
配列番号14は、オリゴヌクレオチドGLK1−RVの配列を説明する
配列番号15は、HXK1のDNA配列を説明する
配列番号16は、HXK2のDNA配列を説明する
配列番号17は、GLK1のDNA配列を説明する
配列番号18は、GAL1のDNA配列を説明する
配列番号19は、YDR516CのDNA配列を説明する
配列番号20は、YLR446WのDNA配列を説明する
配列番号21は、HXK1のアミノ酸配列を説明する
配列番号22は、HXK2のアミノ酸配列を説明する
配列番号23は、GLK1のアミノ酸配列を説明する
配列番号24は、GAL1のアミノ酸配列を説明する
配列番号25は、YDR516Cのアミノ酸配列を説明する
配列番号26は、YLR446Wのアミノ酸配列を説明する
配列番号27は、オリゴヌクレオチドGAL1−DisAの配列を説明する
配列番号28は、オリゴヌクレオチドGAL1−DisBの配列を説明する
配列番号29は、オリゴヌクレオチドGAL1−FW2の配列を説明する
配列番号30は、オリゴヌクレオチドGAL1−RV2の配列を説明する
配列番号31は、オリゴヌクレオチドHXK2−FW2の配列を説明する
配列番号32は、オリゴヌクレオチドHXK2−RV2の配列を説明する
配列番号33は、オリゴヌクレオチドHXK2−FW3の配列を説明する
配列番号34は、オリゴヌクレオチドHXK2−RV3の配列を説明する
配列番号35は、オリゴヌクレオチドHXK1−FW2の配列を説明する
配列番号36は、オリゴヌクレオチドHXK1−RV2の配列を説明する
配列番号37は、オリゴヌクレオチドHXK1−FW3の配列を説明する
配列番号38は、オリゴヌクレオチドHXK1−RV3の配列を説明する
配列番号39は、オリゴヌクレオチドGLK1−FW4の配列を説明する
配列番号40は、オリゴヌクレオチドGLK1−RV4の配列を説明する
配列番号41は、オリゴヌクレオチドGLK1−FW5の配列を説明する
配列番号42は、オリゴヌクレオチドGLK1−RV5の配列を説明する
配列番号43は、GAL1(CEN.PK113−7D)のDNA配列を説明する
配列番号44は、GAL1(IMK318)のDNA配列を説明する
配列番号45は、GAL1(IMW017)のDNA配列を説明する
配列番号46は、GAL1(IMW018)のDNA配列を説明する
配列番号47は、GAL2(CEN.PK113−7D)のDNA配列を説明する
配列番号48は、GAL2(IMK318)のDNA配列を説明する
配列番号49は、GAL2(IMW017)のDNA配列を説明する
配列番号50は、GAL2(IMW018)のDNA配列を説明する
配列番号51は、GAL1(CEN.PK113−7D)のアミノ酸配列を説明する
配列番号52は、GAL1(IMK318)のアミノ酸配列を説明する
配列番号53は、GAL1(IMW017)のアミノ酸配列を説明する
配列番号54は、GAL1(IMW018)のアミノ酸配列を説明する
配列番号55は、GAL2(CEN.PK113−7D)のアミノ酸配列を説明する
配列番号56は、GAL2(IMK318)のアミノ酸配列を説明する
配列番号57は、GAL2(IMW017)のアミノ酸配列を説明する
配列番号58は、GAL2(IMW018)のアミノ酸配列を説明する
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲全体にわたり、用語「含む(comprise)」および「含む(include)」ならびに変形、例えば「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」および「含む(including)」は、包括的なものと解釈すべきである。すなわち、これらの語は、文脈が許容すれば具体的に引用されていない他の要素または整数の考えられる包含を伝えるものとする。
【0021】
冠詞「a」および「an」は、本明細書において、冠詞の文法的目的語の1つまたは2つ以上(すなわち、1つまたは少なくとも1つ)を指すものとして使用される。例として、「要素」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味し得る。例として、細胞は、本明細書において、1つの細胞であり得るが、細胞の集団または株も指す。
【0022】
本明細書に記載の本発明の種々の実施形態は、相互に組み合わせることができる。
【0023】
破壊は、本明細書において、活性の任意の破壊を意味するものと理解され、それには、限定されるものではないが、欠失、突然変異、破壊される遺伝子の親和性の低減およびヘキソキナーゼmRNAに相補的なアンチセンスRNAの発現が含まれる。遺伝子破壊体は、それぞれの遺伝子の1つ以上の破壊を有する細胞である。酵母由来は、本明細書において、遺伝子が破壊前に酵母細胞中に存在することとして理解される。それには、酵母由来の遺伝子が野性型酵母細胞、実験室酵母細胞または工業酵母細胞中に存在する状況が含まれる。酵母細胞は、本明細書において、酵母株または酵母株の一部とも命名することもできる。
【0024】
一実施形態において、エタノールを対応する野生型株よりも高い全体速度において生成し、より短い発酵時間を有し、ならびに/またはペントースおよびグルコースを同時消費し、好ましくは、それらを、ペントースを嫌気的に連続的ではなく同時に同時消費するペントースおよびグルコース発酵酵母細胞。
【0025】
一実施形態において、酵母は、外因性ヘキソキナーゼを含む。好ましくは、外因性ヘキソキナーゼは、細胞中にヘキソキナーゼ活性を導入する。
【0026】
外因性は、本明細書において、ヘキソキナーゼの導入前に酵母細胞中に存在しないものと理解される。外因性ヘキソキナーゼには、限定されるものではないが、酵母由来の遺伝子または破壊されたヘキソキナーゼと同一の配列を有する遺伝子が含まれ得る。
【0027】
本発明の一実施形態において、酵母細胞は、酵母変異体におけるヘキソキナーゼ発現の低減が、ヘキソキナーゼ遺伝子の破壊およびヘキソキナーゼmRNAに相補的なアンチセンスRNAの発現からなる群から選択される手段により行われる株である。
【0028】
本発明の一実施形態において、酵母細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のヘキソキナーゼ破壊体である。
【0029】
別の実施形態において、酵母細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)IMW017、IMW018、IMK306、IMK307および/またはIMK318である。
【0030】
一実施形態において、酵母細胞は、対応する野生型酵母よりも少なくとも約20%高い、少なくとも約50%または少なくとも約100%高い全体エタノール生成速度を有する。
【0031】
本発明はさらに、本発明による酵母細胞をペントース含有糖組成物中で、好適な発酵条件下でペントースのエタノールへの発酵を可能とするために十分な期間培養する工程を含む、ペントースの発酵からエタノールを生成する方法であって、酵母細胞は、ペントースを発酵してエタノールを対応する野性型酵母と比べて高いレベルにおいて生成し、酵母細胞は、対応する野生型酵母と比べて機能性ヘキソキナーゼの低減された発現を有する方法に関する。
【0032】
本方法の一実施形態において、発酵時間は、対応する野性型酵母の発酵と比べて低減され、好ましくは、発酵時間は40%以上低減される。
【0033】
本方法の一実施形態において、ペントースおよびグルコースを同時発酵する。本方法の別の実施形態において、全体エタノール生成速度は、対応する野生型酵母を用いる方法のそれよりも少なくとも約20%、少なくとも約50%または約100%高い。
【0034】
本方法の一実施形態において、酵母細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)IMW017、IMW018、IMK306、IMK307および/またはIMK318である。
【0035】
本方法の一実施形態において、ペントース含有材料は、リグノセルロース材料の加水分解物を含む。
【0036】
本方法の一実施形態において、加水分解物は、リグノセルロース材料の酵素加水分解物である。
【0037】
本発明はさらに、進化工学の方法および/または酵母の株改善の方法における酵母における1つ以上のヘキソキナーゼの破壊の使用に関する。これらは公知の方法である。進化工学は、微生物、本明細書においては酵母の工業関連の表現型を、比生育速度および/または栄養素についての親和性に、合理的に設定された自然淘汰の方法により結びつけ得る方法である。進化工学は、例えば、Kuijper,M,et al,FEMS Yeast Research 5(2005)925−934,国際公開第2008041840号パンフレットおよび国際公開第2009112472号パンフレットに詳細に記載されている。進化工学の後、得られたペントース発酵酵母細胞を単離する。単離は、任意の公知の様式で、例えば、例えば細胞試料の採取または濾過もしくは遠心分離による、進化工学において使用された酵母細胞ブロスからの細胞の分離により行うことができる。
【0038】
本発明は、グルコースも含有する糖混合物中のペントースを対応する野性型酵母よりも高い速度において発酵する酵母細胞であり、この酵母細胞は、1つ以上の天然ヘキソキナーゼ遺伝子の発現の低減を特徴とする。
【0039】
本発明の範囲を限定するものではなく、理論に拘束されるものではないが、この現象は、グルコースによるペントース輸送の競合阻害の結果である可能性が最も高く、またはペントース発酵に重要な遺伝子のグルコース抑制に起因し、もしくは関与するタンパク質の不活性化もしくは分解もしくはグルコースの存在下での親和性の低減に起因する。グルコースの存在下、グルコースをもはや利用し(得)ない株のペントース上での生育についての進化工学は、グルコース非感受性表現型をもたらすはずである。グルコースをもはや消費し得ないそのような株は、例えば、全ての3つのヘキソ/グルコキナーゼの欠失(hxk1Δ hxk2Δ glk1Δ)により得ることができる。本明細書において、三重破壊体においてグルコース消費をさらに減少させるためにgal1の欠失(gal1Δ)も有利であることが示され、こうして四重破壊体が作出される。
【0040】
本発明はまた、酵母細胞をペントース含有材料中で、好適な発酵条件下でペントースのエタノールへの発酵を可能とするために十分な期間培養する工程を含む、ペントースの発酵からエタノールを生成する方法であって、酵母変異体は、ペントースを対応する野性型酵母と比べて高い速度において発酵し得、機能性ヘキソキナーゼの低減された発現を有する方法である。
【0041】
本発明の酵母細胞は、ヘキソキナーゼ破壊体である。ヘキソキナーゼ破壊体は、天然遺伝子の一部もしくは全部が除去されており、または発現が天然ヘキソキナーゼの任意の機能を有する発現生成物をもたらさないDNAにより置き換えられている変異体を意味する。
【0042】
破壊体の代替的実施形態において、ヘキソキナーゼの発現は、ヘキソキナーゼをコードするアンチセンス鎖の一部または全部が酸素の低下に応答するプロモーターの調節下で発現されるアンチセンス構築物の使用を介して下方調節することができる。この実施形態において、ヘキソキナーゼについてのアンチセンスmRNAは、酸素制限条件下で発現され、それにより機能性ヘキソキナーゼを不活性化する。
【0043】
破壊体の別の代替的実施形態において、機能性ヘキソキナーゼについてのプロモーター領域は、ヘキソキナーゼ遺伝子の発現を下方調節することにより酸素の低下に応答するプロモーターにより置き換えられている。
【0044】
「野性型」酵母は、本発明の酵母細胞が由来する、通常レベルの機能性ヘキソキナーゼを有するペントース発酵酵母株を意味する。ある場合において、本特許出願において定義される「野性型酵母」には、突然変異酵母が含まれ得る。例えば、IMW017、IMW018、IMK306、IMK307およびIMK318が開発されたサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株DS62504は、それ自体、突然変異酵母株である。しかしながら、DS62504は、本明細書において定義される野性型酵母でもある。それというのも、それは本発明の酵母細胞を開発するために使用された、通常レベルの機能性ヘキソキナーゼを有するペントース発酵酵母であるためである。
【0045】
ヘキソキナーゼ(hxk)は、本明細書において、六炭糖のヘキソースをヘキソースリン酸にリン酸化する任意の酵素である。ほとんどの組織および生物において、グルコースはヘキソキナーゼの最も重要な基質であり、グルコース−6−リン酸は最も重要な生成物である。
【0046】
ヘキソキナーゼは、細菌、酵母、ならびに植物からヒトおよび他の脊椎動物に及ぶ確認されたほとんどの生物に見出されている。これらは、基質親和性および他の特性を決定するより可変性の配列により包囲される共通のATP結合部位コアを共有するアクチン折り畳みタンパク質としてカテゴリー化される。異なる機能を提供するいくつかのヘキソキナーゼアイソフォームまたはアイソザイムが、単一種において生じ得る。
【0047】
[ヘキソキナーゼの反応:]
ヘキソキナーゼにより介在される細胞内反応は、以下のとおり類型化することができる:
ヘキソース+ATP→ヘキソース−P+ADP
【0048】
[酵母細胞]
本発明によれば、天然ヘキソキナーゼ活性の破壊は、C5/C6発酵におけるより短い発酵時間および/またはペントースおよびグルコースの酵母細胞による同時消費をもたらす。
【0049】
得られた酵母細胞は、IMW017、IMW018、IMK306、IMK307および/またはIMK318と命名され、以下に詳細に記載のとおり得、特性決定した。機能性ヘキソキナーゼ遺伝子の発現の低減および全体エタノール収率の増加を特徴とするS.セレビシエ(S.cerevisiae)の酵母細胞は、破壊カセットを使用する1工程部位特異的統合によりヘキソキナーゼ遺伝子を排除する以外の手段により得ることができることが予想される。例えば、機能性ヘキソキナーゼを欠き、またはヘキソキナーゼを低減されたレベルにおいて発現する変異体は、当該技術分野において公知のいくつかの手段のいずれか、例えば、酵母細胞をDNAインターカレート剤に曝露することまたは酵母細胞に紫外線光を照射することにより得ることができる。ヘキソキナーゼ欠損細胞は、コロニーサイズおよび他の形態学的パターン(すなわち、小サイズ、皺外観を有する黄色のコロニー)に基づき野性型細胞から区別することができる可能性が高い。この特有の表現型に基づき仮同定された推定ヘキソキナーゼ欠損コロニーのヘキソキナーゼ状態は、例えば単独の炭素源としてのグルコースを含有する培地上での生育不能により、またはヘキソキナーゼ活性測定により確認することができる。
【0050】
酵母細胞は、典型的には、酵母由来でないペントース代謝経路の遺伝子および/または酵母細胞のペントースの変換を可能とする遺伝子を含有する。一実施形態において、酵母細胞は、酵母細胞のキシロースの変換を可能とする、1つ以上のキシロースイソメラーゼの1または2つ以上のコピーならびに/または1つ以上のキシロースレダクターゼおよびキシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子の1または2つ以上のコピーを含み得る。この一実施形態において、これらの遺伝子は、酵母細胞ゲノム中に統合することができる。別の実施形態において、酵母細胞は、遺伝子araA、araBおよびaraDを含む。その場合、それはアラビノースを発酵し得る。本発明の一実施形態において、酵母細胞は、酵母細胞のキシロースの発酵を可能とするためにxylA遺伝子、XYL1遺伝子およびXYL2遺伝子ならびに/またはXKS1遺伝子;アルドースレダクターゼ(GRE3)遺伝子の欠失;細胞中のペントースリン酸経路を経る流束の増加を可能とするためにPPP遺伝子TAL1、TKL1、RPE1およびRKI1の過剰発現、ならびに/またはGAL2の過剰発現および/またはGAL80の欠失を含む。したがって、上記遺伝子の包含にかかわらず、(野性型)酵母細胞由来でない好適なペントースまたは他の代謝経路を酵母細胞中に導入することができる。
【0051】
一実施形態において、酵母細胞は、工業酵母からヘキソキナーゼの破壊により誘導する。工業細胞および工業酵母細胞は、以下のとおり定義することができる。工業プロセスにおける(酵母)細胞の生存環境は、実験室のそれとは顕著に異なる。工業酵母細胞は、プロセスの間に変動し得る複数の環境条件下で十分に機能し得なければならない。そのような変動には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の細胞生育およびエタノール生成に対する潜在的影響を一緒に及ぼす栄養源、pH、エタノール濃度、温度、酸素濃度などの変化が含まれる。有害な工業条件下で、環境耐性株は堅牢な生育および生成を可能とすべきである。工業酵母株は、一般に、それらが使用される用途において、例えば製パン工業、醸造工業、ワイン生産およびエタノール工業において生じ得るそれらの環境条件の変化に対してより堅牢である。一実施形態において、工業酵母細胞は、工業宿主細胞を基礎として構築され、その構築は、以下に記載のとおり実施される。工業酵母(S.セレビシエ(S.cerevisiae))の例は、Ethanol Red(登録商標)(Fermentis)Fermiol(登録商標)(DSM)およびThermosacc(登録商標)(Lallemand)である。
【0052】
一実施形態において、酵母細胞は阻害剤耐性である。阻害剤耐性は、阻害化合物に抵抗性である。リグノセルロース中の阻害化合物の存在およびレベルは、原料、前処理方法加水分解プロセスの変動により広範に変動し得る。阻害剤のカテゴリーの例は、カルボン酸、フランおよび/またはフェノール化合物である。カルボン酸の例は、乳酸、酢酸またはギ酸である。フランの例は、フルフラールおよびヒドロキシ−メチルフルフラールである。例またはフェノール化合物は、バニリン、シリンガ酸、フェルラ酸およびクマル酸である。阻害剤の典型的な量は、カルボン酸については、原料、前処理および加水分解条件に応じて1リットル当たり数グラム、最大で1リットル当たり20グラム以上である。フランについては、原料、前処理および加水分解条件に応じて1リットル当たり数百ミリグラム、最大で1リットル当たり数グラムである。フェノール化合物については、原料、前処理および加水分解条件に応じて1リットル当たり数十ミリグラム、最大で1リットル当たり1グラムである。
【0053】
本発明による酵母細胞は、好ましくは阻害剤耐性であり、すなわち、それらは、酵母細胞を幅広く適用することができ、すなわち、それが異なる原料、異なる前処理方法および異なる加水分解条件についての高い適用性を有するように、それらが一般的な前処理および加水分解条件について典型的に有するレベルの一般的な阻害剤に耐え得る。
【0054】
一実施形態において、工業酵母細胞は、阻害剤耐性宿主細胞を基礎として構築され、その構築は以下の記載のとおり実施される。阻害剤耐性宿主細胞は、阻害剤耐性S.セレビシエ(S.cerevisiae)株ATCC26602が選択された、Kadar et al,Appl.Biochem.Biotechnol.(2007),Vol.136−140,847−858に説明されるような阻害剤含有材料上での生育について株をスクリーニングすることにより選択することができる。
【0055】
一実施形態において、酵母細胞はマーカーフリーである。本明細書において使用される用語「マーカー」は、マーカーを含有する宿主細胞の選択、またはスクリーニングを可能とする形質または表現型をコードする遺伝子を指す。マーカーフリーは、マーカーが酵母細胞中に本質的に不存在であることを意味する。マーカーフリーであることは、抗生物質マーカーが酵母細胞の構築に使用され、その後に除去される場合に特に有利である。マーカーの除去は、任意の好適な先行技術、例えば分子内組換えを使用して行うことができる。マーカー除去の好適な方法は、実施例に説明する。
【0056】
酵母細胞は、ピルビン酸の所望の発酵生成物、例えばエタノール、ブタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、イタコン酸、アミノ酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、β−ラクタム、抗生物質またはセファロスポリンへの変換に要求されるそれらの酵素活性をさらに含み得る。
【0057】
一実施形態において、酵母細胞は、天然にアルコール発酵、好ましくは、嫌気的アルコール発酵し得る細胞である。酵母細胞は、好ましくは、エタノールに対する高い耐性、低pHに対する高い耐性(すなわち、約5、約4、約3、または約2.5よりも低いpHにおいて生育し得る)および有機物に対する高い耐性ならびに/または高温に対する高い耐性を有する。
【0058】
酵母細胞の上記の特徴または活性のいずれかは、細胞において天然に存在し得、または遺伝子改変により導入もしくは改変することができる。
【0059】
[酵母細胞の構築]
一実施形態によれば、
a)場合により強力な構成性プロモーターの制御下のPPP遺伝子TAL1、TKL1、RPE1およびRKI1からなるクラスター;
b)強力な構成性プロモーターの制御下下のxylA遺伝子からなるクラスター;
c)強力な構成性プロモーターの制御下のXKS1遺伝子を含むクラスター;
d)強力な構成性プロモーターの制御下の遺伝子araA、araBおよびaraDからなるクラスター
e)アルドースレダクターゼ遺伝子の欠失;
f)酵母由来の1つ以上のヘキソキナーゼ遺伝子の破壊;
g)a)からe)から得られた株の進化工学;
ならびに場合により
h)1つ以上の外因性ヘキソキナーゼ遺伝子の、進化工学から得られた細胞中への導入
を宿主細胞中に導入することにより遺伝子を酵母細胞に導入して酵母細胞を生成することができる。
【0060】
上記の細胞は、公知の組換え発現技術を使用して構築することができる。
【0061】
[組換え発現]
酵母細胞は、組換え細胞である。すなわち、酵母細胞は、当該細胞中で天然に生じないヌクレオチド配列を含み、またはその配列により形質転換もしくは遺伝子改変されている。
【0062】
細胞中の酵素の組換え発現のための技術、および酵母細胞の付加的遺伝子改変のための技術は、当業者に周知である。典型的には、そのような技術は、関連配列を含む核酸構築物による細胞の形質転換を含む。そのような方法は、例えば、標準的な教本、例えばSambrook and Russel(2001)“Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press、またはF.Ausubel et al.,eds.,“Current protocols in molecular biology”,Green Publishing and Wiley Interscience,New York(1987)から公知である。真菌宿主細胞の形質転換および遺伝子改変の方法は、例えば欧州特許出願公開第A−0635574号明細書、国際公開第98/46772号パンフレット、国際公開第99/60102号パンフレット、国際公開第00/37671号パンフレット、国際公開第90/14423号パンフレット、欧州特許出願公開第A−0481008号明細書、欧州特許出願公開第A−0635574号明細書および米国特許第6,265,186号明細書から公知である。
【0063】
[配列同一性]
アミノ酸またはヌクレオチド配列は、あるレベルの類似性を示す場合に相同性であると考えられる。相同性である2つの配列は、共通の進化的起源を示す。2つの相同配列が近縁であるかより遠縁であるかは、それぞれ高いかまたは低い「同一性パーセント」または「類似性パーセント」により示される。議論されているが、「同一性パーセント」または「類似性パーセント」を示すため、「相同性のレベル」または「相同性パーセント」が互換的に使用されることが多い。
【0064】
用語「相同性」、「相同性パーセント」、「同一性パーセント」または「類似性パーセント」は、本明細書において互換的に使用される。本発明の目的のため、本明細書において、2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために完全配列が最適比較目的のためにアラインされることが定義される。2つの配列間のアラインメントを最適化するため、ギャップを比較される2つの配列のいずれかに導入することができる。そのようなアラインメントは、比較されている配列の全長にわたり実施される。あるいは、アラインメントは、より短い長さにわたり、例えば約20、約50、約100以上の核酸/ベースまたはアミノ酸にわたり実施することができる。同一性は、報告されるアラインされた領域にわたる2つの配列間の同一合致の百分率である。
【0065】
配列の比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。当業者は、いくつかの異なるコンピュータプログラムが2つの配列のアラインメントおよび2つの配列間の相同性の決定に利用可能である事実を認識する(Kruskal,J.B.(1983)An overview of sequence comparison In D.Sankoff and J.B.Kruskal,(ed.),Time warps,string edits and macromolecules:the theory and practice of sequence comparison,pp.1−44 Addison Wesley)。2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、2つの配列のアラインメントのためのNeedlemanおよびWunschアルゴリズムを使用して決定することができる。(Needleman,S.B.and Wunsch,C.D.(1970)J.Mol.Biol.48,443−453)。このアルゴリズムは、アミノ酸配列およびヌクレオチド配列をアラインする。Needleman−Wunschアルゴリズムは、コンピュータプログラムNEEDLEに実装されている。本発明の目的のため、EMBOSSパッケージからのNEEDLEプログラムを使用した(バージョン2.8.0以上、EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite(2000)Rice,P.Longden I.and Bleasby,A.Trends in Genetics 16,(6)pp276−277,http://emboss.bioinformatics.nl/)。タンパク質配列については、置換マトリックスにEBLOSUM62が使用される。ヌクレオチド配列については、EDNAFULLが使用される。他のマトリックスを規定することができる。アミノ酸配列のアラインメントに使用される任意選択のパラメータは、10のギャップオープンペナルティおよび0.5のギャップエクステンションペナルティである。当業者は、これらの全ての異なるパラメータがわずかに異なる結果をもたらすが、2つの配列の全体の同一性パーセントは、異なるアルゴリズムを使用した場合に顕著には変化しないことを認識する。
【0066】
[全体的相同性の定義]
相同性または同一性は、任意のギャップまたはエクステンションを含むアラインされた全領域にわたる2つの完全配列間の同一合致の百分率である。2つのアラインされた配列間の相同性または同一性は、以下のとおり算出される:両配列中の同一アミノ酸を示すアラインメント中の対応位置の数を、ギャップを含むアラインメントの全長により割る。本明細書に定義の同一性は、NEEDLEから得ることができ、プログラムの出力において「IDENTITY」とラベルすることができる。
【0067】
[最長同一性の定義]
2つのアラインされた配列間の相同性または同一性は、以下のとおり算出される:両配列中の同一アミノ酸を示すアラインメント中の対応位置の数を、アラインメント中のギャップの総数を引いた後のアラインメントの全長により割る。本明細書に定義の同一性は、NOBRIEFオプションを使用することによりNEEDLEから得ることができ、プログラムの出力において「longest−identity」とラベルすることができる。本発明の目的のため、2つの配列(アミノ酸またはヌクレオチド)間の同一性(相同性)のレベルは、プログラムNEEDLEを使用することにより実施することができる「最長同一性」の定義に従って算出される。
【0068】
本発明において使用されるタンパク質配列をさらに「クエリー配列」として使用して、例えば他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定するために配列データベースの検索を実施することができる。そのような検索は、BLASTプログラムを使用して実施することができる。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)を介して一般に入手可能である。BLASTPは、アミノ酸配列について、BLASTNはヌクレオチド配列について使用される。BLASTプログラムはデフォルトとして以下を使用する:
−オープンギャップに対するコスト:デフォルト=ヌクレオチドについて5/タンパク質について11
−エクステンドギャップに対するコスト:デフォルト=ヌクレオチドについて2/タンパク質について1
−ヌクレオチドミスマッチについてのペナルティ:デフォルト=−3
−ヌクレオチドマッチについてのリワード:デフォルト=1
−期待値:デフォルト=10
−ワードサイズ:デフォルト=ヌクレオチドについて11/megablastについて28/タンパク質について3
【0069】
さらに、アミノ酸配列クエリーまたは核酸配列クエリーおよび検索された相同性配列間の局所的な同一性(相同性)の程度が、BLASTプログラムにより決定される。しかしながら、ある閾値を超える合致を与えるそれらの配列セグメントのみが比較される。したがって、このプログラムは、同一性をそれらの一致セグメントについてのみ算出する。したがって、このように算出された同一性は局所同一性と称される。
【0070】
[バイオ製品生成]
長年にわたり、作物糖からバイオエタノールを生成するために、種々な生物の導入が提案されてきた。しかしながら、実際、全ての主要なバイオエタノール生成プロセスは、エタノール生成菌としてサッカロマイセス(Saccharomyces)属の酵母を使用し続けている。これは工業的プロセスのための、サッカロマイセス(Saccharomyces)種の多くの魅力的な特徴、すなわち高い酸、エタノールおよび浸透圧耐性、嫌気的生育能、ならびにもちろんその高いアルコール発酵能に起因する。宿主細胞として好ましい酵母種には、S.セレビシエ(S.cerevisiae)、S.ブルデリ(S.bulderi)、S.バルネッチ(S.barnetti)、S.エクシグウス(S.exiguus)、S.ウバラム(S.uvarum)、S.ディアスタティカス(S.diastaticus)、K.ラクチス(K.lactis)、K.マルキシアヌス(K.marxianus)またはK.フラギリス(K.fragilis)が含まれる。
【0071】
酵母細胞は、エタノールの生成に好適な細胞であり得る。しかしながら、酵母細胞は、エタノール以外の発酵生成物の生成に好適であり得る。
【0072】
そのような非エタノール発酵生成物には、原則的には、真核微生物、例えば酵母または糸状菌により生成可能な任意のバルクまたはファインケミカルが挙げられる。
【0073】
非エタノール発酵生成物の生成に好ましい酵母細胞は、アルコールデヒドロゲナーゼ活性の減少をもたらす遺伝子改変を含有する宿主細胞である。
【0074】
[リグノセルロース]
潜在的な再生可能原料とみなすことができるリグノセルロースは、一般に、多糖セルロース(グルカン)およびヘミセルロース(キシラン、ヘテロキシランおよびキシログルカン)を含む。さらに、例えば木材由来原料中に、一部のヘミセルロースがグルコマンナンとして存在し得る。例えばこれらの多糖の、可溶性糖、例としてモノマーおよびマルチマーの両方、例えばグルコース、セロビオース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、ラムノース、リボース、ガラクツロン酸、グルクロン酸ならびに他のヘキソースおよびペントースへの酵素加水分解は、協調して作用する異なる酵素の作用下で生じる。
【0075】
さらにペクチンおよび他のペクチン物質、例えばアラビナンが、典型的には非木本組織からの細胞壁の乾燥質量のかなりの比率を構成し得る(乾燥質量の約4分の1から2分の1がペクチンであり得る)。
【0076】
[前処理]
酵素処理前に、リグノセルロース材料を前処理することができる。前処理は、リグノセルロース材料を酸、塩基、溶媒、熱、過酸化物、オゾン、機械的破砕、研削、粉砕もしくは急速減圧、またはそれらの任意の2つ以上の組合せに曝露することを含み得る。この化学的前処理は、熱前処理、例えば1〜30分間の150〜220℃の処理と組み合わされることが多い。
【0077】
[酵素加水分解]
前処理された材料は、一般に、酵素加水分解に供して本発明により発酵することができる糖を放出させる。これは、慣用の方法を用いて、例えばセルラーゼ、例えばセロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ、β−グルコシダーゼおよび場合により他の酵素と接触させることにより行うことができる。セルラーゼによる変換は、周囲温度においてまたはより高温において、十分量の糖を放出させるための反応時間において行うことができる。酵素加水分解の結果は、本明細書において糖組成物として命名されるC5/C6糖を含む加水分解生成物である。
【0078】
[糖組成物]
本発明により使用される糖組成物は、グルコース、および例えばアラビノースおよび/またはキシロースなどの1つ以上のペントースを含む。それらの基準を満たす任意の糖組成物を本発明において使用することができる。糖組成物中の任意選択の糖は、ガラクトースおよびマンノースである。好ましい実施形態において、糖組成物は、1つ以上のリグノセルロース材料の加水分解物である。本明細書におけるリグノセルロースには、ヘミセルロースおよびバイオマスのヘミセルロース部分が含まれる。リグノセルロースには、バイオマスのリグノセルロース画分も含まれる。好適なリグノセルロース材料は、以下の列記に見出すことができる:果樹園のプライミング処理物、シャパラル、ミル廃棄物、都市木材廃棄物、一般廃棄物、伐採廃棄物、森林間伐材、短期輪作木質作物、工業廃棄物、コムギ藁、オートムギ藁、イネ藁、オオムギ藁、ライムギ藁、アマ藁、ダイズ殻、籾殻、イネ藁、トウモロコシグルテン飼料、オートムギ殻、サトウキビ、トウモロコシ茎葉、トウモロコシ茎、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ外皮、スイッチグラス、ススキ、サトウモロコシ、キャノーラ茎、ダイズ茎、プレリーグラス、ガマグラス、エノコログサ;サトウダイコンパルプ、柑橘果実パルプ、種子殻、セルロース性家畜排泄物、刈り取った芝草、ワタ、海藻、樹木、針葉樹、広葉樹、ポプラ、マツ、灌木、草、コムギ、コムギ藁、サトウキビバガス、トウモロコシ、トウモロコシ外皮、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ穀粒、穀粒からの繊維、穀物の湿式または乾式粉砕からの製品および副産物、一般固形廃棄物、古紙、庭ごみ、草質材料、農業残渣、林業残渣、一般固形廃棄物、古紙、パルプ、製紙工場残渣、枝、低木、トウ、トウモロコシ、トウモロコシ外皮、エネルギー作物、森林、果実、花、穀物、草、草本作物、葉、樹皮、針葉、原木、根、苗木、灌木、スイッチグラス、木、野菜、果皮、蔓植物、サトウダイコンパルプ、コムギ製粉物、オートムギ殻、広葉樹もしくは針葉樹、農業プロセスから生じる有機廃材、林業木材廃棄物、またはそれらの任意の2つ以上の組合せ。
【0079】
リグノセルロースから誘導される一部の好適な糖組成物およびその加水分解物の糖組成物の概要を表1に挙げる。列記されるリグノセルロースには、トウモロコシ穂軸、トウモロコシ繊維、籾殻、メロン皮、サトウダイコンパルプ、コムギ藁、サトウキビバガス、木材、草およびオリーブ圧搾物が含まれる。
【0080】
【表1】
【0081】
これらのリグノセルロースに豊富な量の糖がグルコース、キシロース、アラビノースおよびガラクトースの形態で存在することは、表1から明白である。したがって、グルコース、キシロース、アラビノースおよびガラクトースの、発酵生成物への変換は非常に経済的に重要である。マンノースも一部のリグノセルロース材料中に存在し、通常、上記の糖よりも少ない量で存在する。したがって、有利には、マンノースも形質転換宿主細胞により変換される。
【0082】
本発明の酵母細胞をさらに操作して他の所望の特徴、またはいっそうより高い全体エタノール収率を達成することができると予期される。
【0083】
加水分解物を含有する培地上で酵母細胞をパッセージすることによる改善された酵母細胞の選択は、向上された発酵速度を有する改善された酵母をもたらした。本発明の教示を使用して、そのような改善された株を容易にすることができる。
【0084】
ペントース含有材料は、液体か固体かにかかわらずペントースを含む任意の培地を意味する。好適なペントース含有材料には、多糖またはリグノセルロースバイオマス、例えばトウモロコシ外皮、木材、紙、農業副生物などの加水分解物が含まれる。
【0085】
本明細書において使用される「加水分解物」は、水の添加を介して脱重合されて単糖およびオリゴ糖を形成する多糖を意味する。加水分解物は、多糖含有材料の酵素または酸加水分解により生成することができる。
【0086】
好ましくは、酵母細胞は、ペントースの工業源に見出される条件と同様の条件下で生育し得る。本発明の方法は、ペントース含有材料に酵母変異体を過剰な操作なしで植菌することができる場合に最も経済的である。例として、パルプ化工業は、大量のセルロース廃棄物を生成する。酸加水分解によるセルロースの糖化は、発酵反応において使用することができるヘキソースおよびペントースを生じさせる。しかしながら、加水分解物または亜硫酸廃液は、ほとんどの微生物の生育を阻害または妨害する木材中に天然に存在する高濃度の亜硫酸塩およびフェノール阻害剤を含有する。以下の実施例は、本発明の酵母細胞による広葉樹および針葉樹の酸加水分解物(または亜硫酸廃液)中でのペントースの発酵を記載する。亜硫酸廃液中で生育し得る酵母株が、実質的に他のいかなるバイオマス加水分解物中でも生育し得ることが合理的に予期される。
【0087】
[発酵]
発酵プロセスは、好気的または嫌気的発酵プロセスであり得る。嫌気的発酵プロセスは、本明細書において、酸素不存在下で実行される発酵プロセス、または実質的に酸素が消費されず、好ましくは約5、約2.5または約1mmol/L/h未満、より好ましくは0mmol/L/h未満が消費され(すなわち酸素消費が検出可能でない)、有機分子が電子供与体および電子受容体の両方として機能する発酵プロセスと定義される。酸素の不存在下で、解糖およびバイオマス形成中に生成されたNADHは、酸化的リン酸化により酸化され得ない。この問題を解決するため、多くの微生物は、電子および水素受容体としてピルビン酸またはその誘導体の1つを使用し、それによりNAD
+を再生する。
【0088】
したがって、好ましい嫌気的発酵プロセスにおいて、ピルビン酸が電子(および水素受容体)として使用され、発酵生成物、例えばエタノール、ブタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸およびエチレンに還元される。
【0089】
発酵プロセスは、好ましくは細胞に最適の温度において実行される。したがってほとんどの酵母または真菌宿主細胞について、発酵プロセスは、約42℃未満、好ましくは約38℃未満の温度において実施される。酵母または糸状菌宿主細胞について、発酵プロセスは好ましくは約35、約33、約30または約28℃よりも低い温度および約20、約22、または約25℃よりも高い温度において実施される。
【0090】
プロセスにおけるキシロースおよび/またはグルコースに対するエタノール収率は、好ましくは少なくとも約50、約60、約70、約80、約90、約95または約98%である。エタノール収率は、本明細書で理論的最大収率の百分率と定義される。
【0091】
本発明はまた、発酵生成物を生成する方法にも関する。
【0092】
本発明による発酵プロセスは、好気的および嫌気的条件下で実行することができる。一実施形態において、このプロセスは微好気的または酸素制限条件下で実施される。
【0093】
嫌気的発酵プロセスは、本明細書において、酸素不存在下で進行し、または実質的に酸素が消費されず、好ましくは約5、約2.5または約1mmol/L/h未満が消費され、有機分子が電子供与体および電子受容体の両方として機能する発酵プロセスと定義される。
【0094】
酸素制限発酵プロセスは、気体から液体への酸素移動により、酸素消費が制限されるプロセスである。酸素制限の程度は、流入ガス流の量および組成ならびに使用される発酵装置の実際の混合/質量移動特性により決定される。好ましくは、酸素制限条件下のプロセスにおいて、酸素消費速度は、少なくとも約5.5、より好ましくは少なくとも約6、例えば少なくとも7mmol/L/hである。本発明の方法は、発酵生成物の回収を含み得る。
【0095】
好ましい方法において、細胞はキシロースおよびグルコースの両方を好ましくは同時に発酵し、その場合、好ましくはジオーキシー生育を妨害するグルコース抑制に非感受性の細胞が使用される。炭素源としてのキシロース(およびグルコース)の源に加えて、発酵培地は、細胞の生育に要求される適切な成分をさらに含む。微生物、例えば酵母の生育のための発酵培地の組成物は、当該技術分野において周知である。
【0096】
発酵プロセスは、バッチ、流加または連続様式で実施することができる。加水分解・発酵分離(SHF)プロセスまたは並行復発酵(SSF)プロセスを適用することもできる。最適生産性のために、これらの発酵プロセス様式の組合せも可能であり得る。これらのプロセスを以下により詳細に記載する。
【0097】
[SSF様式]
並行復発酵(SSF)様式について、液化/加水分解または前糖化工程のための反応時間は、所望の収率、すなわちセルロースからグルコースへの変換収率を実現する時間に依存する。そのような収率は、好ましくは可能な限り高く、好ましくは60%以上、65%以上、70%以上、75%以上80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、さらには99.5%以上または99.9%以上である。
【0098】
本発明によれば、SHF様式における極めて高い糖濃度、およびSSF様式における極めて高い生成物濃度(例えばエタノール)が実現される。SHF操作では、グルコース濃度は、25g/L以上、30g/L以上、35g/L以上、40g/L以上、45g/L以上、50g/L以上、55g/L以上、60g/L以上、65g/L以上、70g/L以上、75g/L以上、80g/L以上、85g/L以上、90g/L以上、95g/L以上、100g/L以上、110g/L以上、120g/L以上であり、または例えば25g/L〜250g/L、30gl/L〜200g/L、40g/L〜200g/L、50g/L〜200g/L、60g/L〜200g/L、70g/L〜200g/L、80g/L〜200g/L、90g/L〜200g/Lであり得る。
【0099】
[SSF様式における生成物濃度]
SSF操作において、生成物濃度(g/L)は生成されるグルコースの量に依存するが、糖はSSFにおいて生成物に変換され、生成物濃度は、基礎グルコース濃度に理論的最大収率(Yps maxは、1グラムのグルコース当たりの生成物のグラムである)を掛けたものに関連し得るため、これは可視的でない。
【0100】
発酵生成物の理論的最大収率(Yps maxは、1グラムのグルコース当たりの生成物のグラムである)は、教本による生化学から導くことができる。エタノールについて、1モルのグルコース(180グラム)は、酵母中の通常解糖発酵経路に従って、2モルのエタノール(=2×46=92グラムのエタノール)を生じる。したがってグルコースに対するエタノールの理論的最大収率は、92/180=0.511グラムのエタノール/1グラムのグルコースである。
【0101】
ブタノール(MW74グラム/モル)またはイソブタノールについて、理論的最大収率は1モルのグルコース当たり1モルのブタノールである。したがって(イソ−)ブタノールのYps max=74/180=0.411グラムの(イソ−)ブタノール/1グラムのグルコースである。
【0102】
乳酸について、ホモ乳酸発酵の発酵収率は、1モルのグルコース当たり2モルの乳酸(MW=90グラム/モル)である。この化学量論によれば、Yps max=1グラムの乳酸/1グラムのグルコースである。
【0103】
他の発酵生成物について、同様の計算を行うことができる。
【0104】
[SSF様式]
SSF操作において、生成物濃度は、25g
*Yps g/L/L以上、30
*Yps g/L以上、35g
*Yps/L以上、40
*Yps g/L以上、45
*Yps g/L以上、50
*Yps g/L以上、55
*Yps g/L以上、60
*Yps g/L以上、65
*Yps g/L以上、70
*Yps g/L以上、75
*Yps g/L以上、80
*Yps g/L以上、85
*Yps g/L以上、90
*Yps g/L以上、95
*Yps g/L以上、100
*Yps g/L以上、110
*Yps g/L以上、120g/L
*Yps以上であり、または例えば25
*Yps g/L〜250
*Yps g/L、30
*Yps gl/L〜200
*Yps g/L、40
*Yps g/L〜200
*Yps g/L、50
*Yps g/L〜200
*Yps g/L、60
*Yps g/L〜200
*Yps g/L、70
*Yps g/L〜200
*Yps g/L、80
*Yps g/L〜200
*Yps g/L、90
*Yps g/L、80
*Yps g/L〜200
*Yps g/Lであり得る。
【0105】
したがって、本発明は発酵生成物を調製する方法であって、
a.本明細書に記載の方法を使用してリグノセルロースを分解すること;および
b.得られた材料を発酵すること
を含み、それにより発酵生成物を調製する方法を提供する。
【0106】
[発酵生成物]
本発明の発酵生成物は、任意の有用な生成物であり得る。一実施形態において、これは、エタノール、n−ブタノール、イソブタノール、乳酸、3−ヒドロキシ−プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、イタコン酸、マレイン酸、クエン酸、アジピン酸、アミノ酸、例えばリジン、メチオニン、トリプトファン、スレオニン、およびアスパラギン酸、1,3−プロパン−ジオール、エチレン、グリセロール、β−ラクタム抗生物質およびセファロスポリン、ビタミン、医薬品、動物飼料補助剤、特殊化学薬品、化学原料、プラスチック、溶媒、燃料、例としてバイオ燃料およびバイオガスまたは有機ポリマー、ならびに工業酵素、例えばプロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、グルカナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リアーゼ、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼまたはキシラナーゼからなる群から選択される生成物である。
【0107】
[発酵生成物の回収]
発酵生成物の回収のため、既存の技術が使用される。異なる発酵生成物について、異なる回収プロセスが適切である。水性混合物からエタノールを回収する既存の方法は、一般に分留および吸着技術を使用する。例えばビール蒸留器を使用して、エタノールを水性混合物中に含有する発酵生成物を処理して濃縮エタノール含有混合物を生成し、次いで分留(例えば分別蒸留または他の同様の技術)に供することができる。次に最高濃度のエタノールを含有する留分を吸収材に導通させ、エタノールから残りの水の全部ではないが大部分を除去することができる。
【0108】
以下の非限定的な実施例は、単なる説明的なものを意図する。
【0109】
[実施例]
[株および維持]
本試験において使用される株(表1)の貯蔵のため、振とうフラスコ培養を10g l
−1の酵母抽出物(BD Difco)および20g l
−1のペプトン(BD Difco)からなり、2%のグルコース(YPD)、2%のエタノール+1.5%のグリセロール(YP−EtOH/Glyc)または2%のアラビノース(YP−Ara)のいずれかを補給した複合培地(YP)中で実施した。培養物を、静止生育期までオービタルシェーカー(200rpm)中で30℃においてインキュベートした。30%(v/v)のグリセロールの添加後、振とうフラスコ培養物からの試料を2mlのアリコートで−80℃において貯蔵した。
【0110】
[振とうフラスコ培養]
振とうフラスコ中での培養を、2.3g l
−1の尿素、6.6g l
−1のK
2SO
4、3g l
−1のKH
2PO
4、0.5g l
−1のMgSO
4.7H
2O、および微量元素を含有する合成培地(MY尿素)[7]中で30℃において実施した。振とうフラスコ培養のため、培地pHを滅菌前に2MのKOHにより4.7に調整した。加熱滅菌(121℃、20分)後、フィルター滅菌ビタミン溶液[7]および糖を添加した。振とうフラスコ培養物は、500mlの振とうフラスコ中の適切な糖を含有する100mlの培地に凍結ストック培養物を植菌することにより調製し、オービタルシェーカー(200rpm)中で30℃においてインキュベートした。
【0111】
[嫌気的バッチ培養]
嫌気的バッチ培養は、1lの作業容積を有する2リットルの発酵槽(Applikon,Schiedam,the Netherlands)中で30℃において実施した。培養は、5g l
−1の(NH
4)
2SO
4、3g l
−1のKH
2PO
4、0.5g l
−1のMgSO
4.7H
2Oおよび微量元素を含有する合成培地[7]中で実施した。加熱滅菌(121℃、20分)後、培地にエタノール中に溶解した0.01g
−1のエルゴステロールおよび0.42g
−1のTween80[1,2]、ケイ素消泡剤、微量元素、フィルター滅菌ビタミン溶液[7]、ならびに適切な炭素源を補給した。培養物を800rpmにおいて撹拌し、0.5l min
−1の窒素ガス(<10ppmの酸素)によりスパージし、2MのKOHの自動添加によりpH5.0において維持した。酸素拡散を最小化するため、発酵槽にNorpreneチューブ(Cole Palmer Instrument Company,Vernon Hills,USA)を備えた。酸素の不存在は、酸素電極(Applisens,Schiedam,the Netherlands)により確認した。バッチ培養は、100mlのグルコースにより生育させた振とうフラスコ培養物の植菌により開始した。
【0112】
[生育速度決定]
振とうフラスコ培養物について、660nmにおける光学密度(OD660)を経時的に計測することにより生育プロファイルを作製した。発酵槽中の嫌気的培養について、比生育速度を排ガス中のCO
2濃度に基づき決定した。比生育速度は、データ点を指数曲線にフィットすることにより決定した。
【0113】
[二酸化炭素および細胞外代謝産物分析]
嫌気的発酵槽からの排ガスを、凝縮器(2℃)中で冷却し、Permapure乾燥器型MD−110−48P−4(Permapure,Toms River,USA)により乾燥させた。二酸化炭素濃度は、NGA2000分析器(Rosemount Analytical,Orrville,USA)により測定した。排ガス流速および比二酸化炭素生成速度は、上記のとおり測定した[6,8]。
【0114】
グルコース、アラビノース、酢酸、乳酸、コハク酸、グリセロールおよびエタノールを、BioRad HPX87Hカラム(BioRad,Hercules,USA)、Waters2410屈折率検出器およびWaters2487UV検出器を搭載したWaters Alliance2690HPLC(Waters,Milford,USA)を使用するHPLCにより分析した。カラムは、60℃において0.5g l
−1の硫酸により0.6ml min
−1の流速において溶出させた。
【0115】
[ヘキソキナーゼ活性測定]
本試験において使用された株の細胞抽出物中のヘキソキナーゼ活性は、グルコースのグルコース−6−リン酸(反応1)への変換率を、形成されたグルコース−6−リン酸を酵素グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼにより6−ホスホグルコン酸に変換する連結酵素反応(反応2)を使用して計測することにより測定した。この連結反応において形成されるNADPHの速度は、ヘキソキナーゼ活性と等しく、340nmにおける吸光度を計測することにより測定する。
【数1】
【0116】
[実施例1]
[遺伝子欠失]
本実施例において、遺伝子欠失は、標的遺伝子を置き換えるG418耐性カセットの統合により達成した。HXK2、HXK1およびGLK1の欠失のため、pUG6からのKanMXカセットを、表2に示されるオリゴヌクレオチドを使用してPCRにより増幅した[4]。
【0117】
【表2】
【0118】
PCR生成物の精製後(GenElute PCR Clean−up Kit,Sigma,Steinheim,Germany)、一晩培養物を遺伝子破壊カセットにより形質転換[3]した。形質転換細胞は、100μg ml
−のG418(InvivoGen,San Diego,USA)を含有するYPD寒天上で選択した。KanMXカセットの正確な統合は、KanMXカセットならびに標的遺伝子の上流および下流領域に結合する診断オリゴヌクレオチドを使用して単一コロニーに対するPCRにより確認した(表1)。
【0119】
複数の遺伝子欠失のため、隣接遺伝子の欠失前にKanMXマーカーをレスキューした。この目的のため、細胞を、誘導性Creリコンビナーゼを発現し、フレオマイシン耐性遺伝子ble
rを有するpSH65により形質転換した[5]。形質転換細胞を、フレオマイシンを含有するYPDプレート上にスプレッドし、コロニーが現れるまで30℃においてインキュベートした。7.5μg/mlのフレオマイシンを含有する液体YP−ガラクトース(InvivoGen,San Diego,USA)に、いくつかのフレオマイシン耐性コロニーを植菌し、Creリコンビナーゼの誘導のために30℃において一晩インキュベートし、フレオマイシンを有する固体YPDに植継ぎした。CreリコンビナーゼによるKanMXカセットの除去は、YPDおよびYPD−G418上のフレオマイシン耐性酵母コロニーのレプリカプレーティングにより、およびG418耐性を失った単一コロニーに対する診断PCRにより確認した。続いて、pSH65の損失を、細胞をフレオマイシンを有さないYPD中で非選択的に5〜10世代生育させることにより達成し、その後、フレオマイシン耐性の損失を、フレオマイシンを有し、または有さない固体YPD上の単一コロニーのレプリカプレーティングにより確認した。HXK2、HXK1およびGLK1の後続の欠失、ならびにそれぞれの欠失後のKanMX遺伝子の除去は、株IMK306、IMK307、IMK311、IMK312およびIMK318をもたらした(表3)。
【0120】
【表3】
【0121】
グルコースおよびアラビノース消費に対するhxk2およびhxk2 hxk1欠失の効果。グルコースおよびアラビノース消費に対するHXK2およびHXK1欠失の効果を決定するため、株DS62504、IMK307(hxk2Δ)およびIMK311/IMK312(hxk2Δ hxk1Δ)を振とうフラスコ(
図1)および嫌気的発酵槽(
図2)の両方の中で30℃において2%のアラビノースおよび2%のグルコースの混合物を補給したMY中で培養した。
【0122】
振とうフラスコ培養は、MY−glc中で生育させた振とうフラスコ培養物の植菌により約0.05の初期OD660において開始した。株DS62504(
図1)は、グルコースを21時間内に消費し、グルコース枯渇時、アラビノース消費が開始した。両方の糖は、50時間超の合計時間内に消費された。株IMK307(
図1)の培養物において、グルコースは、25時間で全部消費され、アラビノースはその後15時間未満で枯渇した。全IMK307は、DS62504と比較して合計発酵時間の少なくとも20%の低減を実証した。株IMK311(
図1)は、2%のグルコースを約30時間内で消費した。培養物中に依然として約10mMのグルコースが残り、アラビノース消費が観察された。アラビノースは、48時間内に消費が完了した。IMK307よりも緩慢であったが、IMK311の全発酵時間はDS62504のそれよりも依然として短かった。
【0123】
嫌気的培養(
図2)は、MY−glc中で生育させた振とうフラスコ培養物による植菌により約1の初期OD660において開始した。CO
2生成プロファイルに基づき、株DS64205がグルコースを15時間未満内で完全に消費したことが推定することができた。グルコース消費の間の比生育速度は、0.29h
−1であった。しかしながら、アラビノースは、かなり低い速度において消費された。80時間後、アラビノースの約90%が発酵ブロス中に依然として存在する。株IMK307(hxk2Δ)についてのグルコース消費はより緩慢であった。CO
2生成プロファイルおよびグルコース計測の両方は、全てのグルコースが20時間内に消費されることを示した。グルコース消費の間の比生育速度は、0.20h
−1であった。アラビノース消費はグルコース枯渇時に開始し、アラビノースの92%が66時間内に消費され、それは株DS62504と比較した場合に明白な改善である。HXK2に加えてHXK1の欠失(株IMK312)は、グルコース上での比生育速度に対して甚大な効果を有した。株IMK312についての生育速度0.05h
−1は、株IMK307のそれよりも75%低かった。グルコースは46時間内に枯渇した。これらの46時間内で、132mMのアラビノースの合計の約10%が消費された。アラビノースは、112時間未満内で完全に消費された。
【0124】
[実施例2]
[グルコースの存在下でアラビノース上で生育するIMK318の選択]
グルコース上での振とうフラスコ中の450時間の培養により、ヘキソキナーゼ/グルコキナーゼ欠失株IMK318(hxk1Δ hxk2Δ glk1Δ)がグルコース単独上で生育し得ないことを確認した。したがって、この株をYP−EtOH/Glyc中で培養し、続いてグリセロールの添加後に−80℃において貯蔵した。続いてIMK318を、2%のアラビノースを含有する100mlのMY中で培養した。3日後、約1のOD660において、2mlの培養物を、2%のアラビノースを含有する100mlの新たなMYに植継ぎした。約12日後、培養物のOD660は>5であり、試料を−80℃においてグリセロールストックとして貯蔵した。株IMK318は、30℃においてMY−ara中で数日間培養した。約5のOD660において、2mlの培養物を、2%のアラビノースを補給し、グルコース濃度が0、0.11、0.23、0.65、1.3および2.5(w/v)%で変動する100mlのMY尿素を含有する6つの別個の振とうフラスコに植継ぎした。これら6つの並行培養物の生育を、OD660計測により記録した(
図3)。グルコースの存在下、生育が遅延することが観察された。グルコースの量の増加は、アラビノース上での次第に遅延する生育をもたらした。これらの並行培養物の2つ(系統A、0.65w/v%のグルコースにおいて開始;系統B、2.5w/v%のグルコースにおいて開始)を、表4に示される植継ぎスキームに従ってアラビノースおよびグルコースを補給した100mlのMYに継代した。
【0125】
【表4】
【0126】
培養物を、増加濃度のグルコースを有する培地に植継ぎした系列Aにおいて(表3)、アラビノースは完全に消費された一方、グルコースの10%未満が消費された(
図4)。SF7から、試料を、100μg ml
−1のG418を補給した固体YP−ara上にスプレッドし、コロニーが現れるまで30℃においてインキュベートした。別々のコロニーを固体YP−araに植継ぎした。単一コロニー単離物をYP−ara中で培養し、−80℃において貯蔵した。継代された振とうフラスコのこの系列の2つの単一コロニー単離物を試験し、混合培養物と質的に類似することが見出された。これらの単離物の1つを株IMW018と命名した。
【0127】
系列B(表3)において、振とうフラスコ培養物を、2%のアラビノースおよび2%のグルコースの固定濃度を有するMY培地中に植継ぎした(
図5)。驚くべきことに、アラビノースおよびグルコースの同時消費は、第1の植継ぎ(SF1→SF2)後に観察された。SF3から、試料を、100μg ml
−1のG418を補給した固体YP−ara上にスプレッドし、コロニーが現れるまで30℃においてインキュベートした。別々のコロニーを固体YP−araに植継ぎした。単一コロニー単離物をYP−ara中で培養し、グリセロールストックとして−80℃において貯蔵した。継代された振とうフラスコのこの系列の2つの単一コロニー単離物を試験し、混合培養物と質的に類似することが見出された。これらの単離物の1つを株IMW017と命名した。
【0128】
単一コロニー単離物株IMW017およびIMW018の両方のグルコースおよびアラビノース消費を、振とうフラスコ培養物中で試験した(
図4および5)。単一コロニー単離物は、それらが由来する継代された振とうフラスコ培養物に類似するグルコースおよびアラビノース濃度プロファイルを示した。興味深いことに、ヘキソキナーゼ/グルコキナーゼ欠失株IMK318(hxk1Δ hxk2Δ glk1Δ)に基づくこの進化工学戦略において適用されたグルコース濃度レジームは、2つの異なる表現型をもたらした:(i)株IMW018によるグルコース非感受性アラビノース消費、および(ii)株IMW017によるアラビノースおよびグルコースの同時消費。
【0129】
[実施例3]
[アラビノースおよびグルコースの嫌気的同時発酵]
株IMW017を、連続バッチ発酵槽設定を使用してグルコースおよびアラビノースの混合物中で嫌気的に培養した。グルコース/アラビノース混合物中の3つの連続バッチを実施した(
図6)。それぞれのバッチにおいて、グルコースおよびアラビノースは同時に消費され、エタノールに発酵された。CO
2生成プロファイルから推定すると、グルコース/アラビノース混合物上での比生育速度が、第1のバッチにおける0.05h
−1から第3のバッチにおける0.07h
−1に増加することが観察された。
【0130】
さらなる連続バッチ発酵の間、生育速度はいっそうさらに増加する。最終バッチから採取された単一コロニー単離物株は、グルコースおよびアラビノース同時消費をIMW017と比較して増加した比消費速度において示す。
【0131】
[実施例4]
[ヘキソキナーゼ活性]
株DS62504、IMK307、IMK312、IMK318、IMW017およびIMW018の細胞抽出物中のヘキソキナーゼ活性を測定する。IMK307(hxk2Δ)の細胞抽出物中のヘキソキナーゼ活性は、株DS62504のそれよりも低い。IMK312(hxk2Δ hxk1Δ)のヘキソキナーゼ活性はIMK307のそれよりも低い一方、IMK318(hxk2Δ hxk1Δ glk1Δ)は、ヘキソキナーゼ活性を示さず/最低のヘキソキナーゼ活性を示す。株IMW018中のヘキソキナーゼ活性はIMK318について観察されるヘキソキナーゼ活性と類似する一方、IMW017はIMK318よりも高いヘキソキナーゼ活性を有する。
【0132】
[実施例5]
[IMW017における未知ヘキソキナーゼの同定]
進化させたhxkl hxk2 glkl株における計測されたヘキソキナーゼ活性に基づくと、ゲノム中に存在する糖キナーゼをコードする潜在性を有する別の遺伝子が活性になり、またはグルコースに対するその基質特異性を変えたことが予期される。この活性をコードする遺伝子をゲノム分析により同定する。この遺伝子の付加的欠失は、ヘキソキナーゼ活性の減少をもたらす。この四重ノックアウト株は、グルコースの存在下でのアラビノース消費の進化工学についてかなり強いプラットフォームを提供する。
【0133】
[実施例6]
[IMK318におけるヘキソキナーゼまたはグルコキナーゼ活性の再導入]
グルコース上での生育を回復させるため、HXK1、HXK2またはGLK1のいずれかをIMK318中に再導入する。活性計測は、IMK318におけるこれらの遺伝子の1つの再導入がヘキソ/グルコキナーゼ活性の増加をもたらすことを示す。単独の炭素源としてのグルコース上での生育が回復される。
【0134】
[実施例7]
[IMW018におけるヘキソキナーゼまたはグルコキナーゼ活性の再導入]
活性計測は、IMW018におけるHXK1、HXK2またはGLK1のいずれかの再導入が株IMW018と比較してヘキソ/グルコキナーゼ活性の増加をもたらすことを示す。単独の炭素源としてのグルコース上での生育が回復される。HXK1、HXK2またはGLK1のいずれかの再導入は、単独の炭素源としてのグルコースおよびアラビノースの両方の上での生育をもたらす。得られた株は、グルコースおよびアラビノースの混合物中で生育し、グルコースおよびアラビノースの同時消費を示す。
【0135】
[実施例8]
[IMW017およびIMW018のグルコース非感受性表現型の基礎をなす突然変異の同定]
株IMW017およびIMW018のグルコース非感受性表現型は、グルコースおよびアラビノースを含有する培地中の株IMK318の選択的生育の間に蓄積した突然変異により説明することができることが予測される。これらの突然変異を同定するため、株IMK318、IMW017およびIMW018のゲノムをシーケンシングする。IMW017とIMK318およびIMW018とIMK318のゲノム配列を比較することにより、例えば単一ヌクレオチド多型などのゲノム改変を同定する。DS62504におけるこれらの単一ヌクレオチド多型の導入は、アラビノース上での生育がグルコースに対して非感受性である表現型をもたらす。
【0136】
[実施例9]
[GAL1の欠失]
ヘキソキナーゼ活性の維持を担うタンパク質を決定するための別のアプローチは、hxk1 hxk2 glk1株においてヘキソキナーゼ活性を潜在的にコードする遺伝子を欠失させることである。この目的のため、GAL1遺伝子をhxk1 hxk2 glk1株において欠失させる。得られた株は、親hxk1 hxk2 glk1株よりも低いヘキソキナーゼ活性を示し、または親hxk1 hxk2 glk1株と比較して単独の炭素源としてのグルコース上で生育する能力の減少を示す。この四重ノックアウト株は、グルコースの存在下でのアラビノース消費の進化工学についてかなり強いプラットフォームを提供する。
【0137】
[実施例10]
[YDR516cの欠失]
ヘキソキナーゼ活性の残留を担うタンパク質を決定するための別のアプローチは、hxk1 hxk2 glk1株においてヘキソキナーゼ活性を潜在的にコードする遺伝子を欠失させることである。この目的のため、YDR516c遺伝子をhxk1 hxk2 glk1株において欠失させる。得られた株は、親hxk1 hxk2 glk1株よりも低いヘキソキナーゼ活性を示し、または親hxk1 hxk2 glk1株と比較して単独の炭素源としてのグルコース上で生育する能力の減少を示す。この四重ノックアウト株は、グルコースの存在下でのアラビノース消費の進化工学についてかなり強いプラットフォームを提供する。
【0138】
[実施例11]
[YLR446wの欠失]
ヘキソキナーゼ活性の残留を担うタンパク質を決定するための別のアプローチは、hxk1 hxk2 glk1株においてヘキソキナーゼ活性を潜在的にコードする遺伝子を欠失させることである。この目的のため、YLR446w遺伝子をhxk1 hxk2 glk1株において欠失させる。得られた株は、親hxk1 hxk2 glk1株よりも低いヘキソキナーゼ活性を示し、または親hxk1 hxk2 glk1株と比較して単独の炭素源としてのグルコース上で生育する能力の減少を示す。この四重ノックアウト株は、グルコースの存在下でのアラビノース消費の進化工学についてかなり強いプラットフォームを提供する。
【0139】
[実施例12]
[アラビノースおよびグルコースの嫌気的同時発酵]
株IMW017のグルコースおよびアラビノースの同時消費を改善するため、株IMW017を、20g/リットルのグルコースおよび20g/リットルのアラビノースの混合物を補給したMY中で、連続バッチ発酵槽設定を使用して嫌気的に培養した。最初に、グルコース/アラビノース混合物中の4つの連続バッチを実施した。それぞれのバッチにおいて、グルコースおよびアラビノースは同時に消費され、エタノールに発酵された(
図6、実施例3)。CO
2生成プロファイルから推定すると、グルコース/アラビノース混合物上の比生育速度が、第1のバッチにおける0.05h
−1から第4のバッチにおける0.06h
−1に増加することが観察された。第4のバッチ後、連続バッチ培養をグルコースおよびアラビノースの混合物(バッチ番号6、7、9、11、13、15、17、21、23、25、27、29、31、33、35、37および39)またはアラビノース単独(バッチ番号5、8、10、12、14、16、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38および40)の中で実施した。MY−アラビノースおよびMY−グルコース/アラビノースそれぞれにおける19および21のバッチ後、嫌気的生育速度は単独の炭素源としてのアラビノース上で0.09h
−1に増加し、グルコース/アラビノース混合物上で0.10h
−1に増加した(
図7)。個々のバッチ培養のCO
2生成プロファイルの比較は、反復バッチレジームがアラビノース単独またはグルコース/アラビノース混合物のいずれについても約120時間から約80時間に発酵時間の減少をもたらしたことを示し、それぞれのバッチについて等しい初期植菌材料サイズが想定される(
図8)。グルコース/アラビノース混合物中のバッチ培養について観察されたCO
2生成の単一ピークは、グルコースおよびアラビノースが連続的にではなく同時に消費されることを示す(
図8および9)。
【0140】
[実施例13]
[ヘキソキナーゼ活性]
株DS62504、IMK307、IMK312、IMK318、IMW017およびIMW018のヘキソキナーゼ活性を、アラビノースを補給したYP中で生育させた振とうフラスコ培養物の細胞抽出物において測定した。ヘキソキナーゼ反応混合物は、50mMのイミダゾール−HCl、pH7.6、1mMのNADP
+、10mMのMgCl
2、2Uのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、10mmのD−グルコースおよび細胞抽出物からなるものであった。反応は1mMのATPの添加により開始し、NADPHの形成は340nmにおける反応混合物の吸光度を計測することにより測定した。株DS62504およびIMK307(hxk2Δ)の細胞抽出物におけるヘキソキナーゼ活性は、それぞれ1.2および1.3μmol.min
−1.mg
−1タンパク質であった(
図10)。IMK312(hxk2Δ hxk1Δ)の細胞抽出物における0.4μmol.min
−1.mg
−1タンパク質のヘキソキナーゼ活性は、IMK307のそれよりも低かった。株IMK318およびIMW018(hxk2Δ hxk1Δ glk1Δ)は、0.2μmol.min
−1.mg
−1タンパク質未満のヘキソキナーゼ活性を示した。三重のhxk2 hxk1およびglk1の欠失にかかわらずグルコースを消費し得る株IMW017は、両方ともグルコースを消費し得ない株IMK318およびIMW018と比較してより高いヘキソキナーゼ活性を有することが予期された。株IMW017についてのヘキソキナーゼ活性は、アッセイ条件下で0.02μmol.min
−1.mg
−1タンパク質未満でもあった。
【0141】
[実施例14]
[IMW017におけるヘキソキナーゼとしてのGAL1の同定]
グルコースおよびアラビノースの混合物上での進化させたhxk1Δ hxk2Δ glk1Δ株IMW017の生育実験に基づくと、ゲノム中に存在する糖キナーゼをコードする潜在性を有する別の遺伝子が活性になり、またはグルコースに対するその基質特異性を変えたことが予期された。未知のヘキソキナーゼ活性がGAL1によりコードされるか調査するため、GAL1遺伝子をIMW017において欠失させた。pSH65(実施例1参照)を使用してglk1遺伝子座からKanMXカセットを除去した後、GAL1欠失を、オリゴヌクレオチドGAL1−DisAおよびGAL1−DisB(表5)を使用するPCRにより増幅させたG418耐性カセットの統合により達成した。形質転換細胞は、100μg ml
−のG418(InvivoGen,San Diego,USA)ならびに炭素源としての1.5%(w/v)のエタノールおよび1.5%(w/v)のグリセロールを含有するYP寒天上で選択した。KanMXカセットの正確な統合は、診断オリゴヌクレオチドGAL1−FW2/KanAおよびGAL1−RV2/KanB(表4)の組合せを使用する単一コロニーに対するPCRにより確認した。得られた株IMW023におけるGAL1の欠失は、単独の炭素源としてのガラクトース上での生育不能により確認した。
【0142】
興味深いことに、IMW023は、グルコースを炭素源として使用し得ず、それは、GAL1がその親hxk1Δ hxk2Δ glk1Δ株IMW017における未知のヘキソキナーゼ活性を担ったことを示す。グルコースおよびアラビノースの混合物中での振とうフラスコ培養の間、IMW023はグルコースを消費しなかった一方、アラビノースは消費された(
図11)。
【0143】
【表5】
【0144】
[実施例15]
[グルコースの存在下でのアラビノースの嫌気的発酵について]
IMW017におけるGAL1pもヘキソキナーゼ活性を示すことが見出されたため、hxk1Δ hxk2Δ glk1Δ gal1Δ株IMW023は、進化工学によりグルコースを消費させずにグルコースの存在下でのアラビノース消費を改善するためのより堅実なプラットフォームを提供する。培地中のグルコースの存在下での改善されたアラビノース消費を選択するため、株IMW023を、振とうフラスコ培養物中で、2%のアラビノースおよび2%のグルコースを補給したMY培地中での継代により培養した。生育はOD660計測によりモニタリングし、比生育速度は培養物当たり2または3つのいずれかのOD660計測から推定した。グルコースおよびアラビノース濃度は、HPLC分析により測定した。63日間におけるアラビノース/グルコース混合物上での24代の継代後、株IMW023の植継ぎされた培養物は、依然としてグルコースを消費せずに2%のグルコースの存在下でアラビノース上で生育し得た(
図12)。アラビノース上での比生育速度は、約0.06h
−1から約0.11h
−1に増加した(
図13)。
【0145】
嫌気的条件下でグルコースの存在下でアラビノースを消費し得る細胞を選択するため、およびグルコースの存在下でアラビノース消費をさらに改善するため、2%のアラビノースおよび2%のグルコースを補給したMY培地中での株IMW023の連続的植継ぎを嫌気的連続バッチ発酵設定中で継続した。このため、株IMW023の継代された培養物の最終振とうフラスコ培養物(SF24)を植菌材料として使用した。培養の最初の1000時間において、発酵槽のヘッドスペースに窒素に代えて空気を補給した場合にCO
2生成の増加が観察されるにすぎなかった(
図14)。第4のバッチの間の培養の約1000時間後、排ガス中のCO
2濃度の増加が観察された。CO
2生成プロファイルから推定すると、嫌気的生育のこの第1のバッチは、約0.03h
−1の比生育速度を示した。さらなる10代の植継ぎ後、比生育速度は約0.06h
−1に増加した(
図14)。連続的に植継ぎされたバッチ培養の間、アラビノースは消費された一方、グルコースは消費されなかった(
図15)。個々のバッチ培養のCO
2生成プロファイルは、CO
2生成の速度、ひいてはアラビノース消費速度が連続的植継ぎの間に増加し、それはアラビノースを完全に消費するために必要とされる発酵時間の減少をもたらしたことを示す(
図16)。
【0146】
最終バッチから採取された単一コロニー単離物は、株IMW058と命名し、IMW023と比較してグルコースの存在下でアラビノース消費速度の増加を示した。
【0147】
[実施例16]
[IMW018におけるヘキソキナーゼまたはグルコキナーゼ活性の再導入]
株IMW018におけるHXK1、HXK2またはGLK1のいずれかの再導入を、グルコース上での生育を回復させるために実施した。このため、HXK2、HXK1およびGLK1を、オリゴヌクレオチド組合せHXK2FW/HXK2RV、HXK1FW/HXK1RVおよびGLK1FW/GLK1RVを使用し、S.セレビシエ(S.cerevisiae)CENPK113−7DのゲノムDNAをテンプレートとして使用するPCRにより増幅した。PCR生成物の精製後((GenElute PCR Clean−up Kit,Sigma,Steinheim,Germany)、IMW018の一晩培養物をこのPCR生成物により形質転換した(Gietz and Woods 2002)。形質転換細胞は、2%のグルコースを含有するMY寒天上のグルコース上での生育について選択した。相同性組換えによるHXK2、HXK1およびGLK1のそれらの元の遺伝子座における正確な統合は、診断プライマーペア(表6)を使用する単一コロニーに対するPCRにより確認した。
【0148】
得られた株IMW024(HXK2)、IMW025(HXK1)およびIMW047(GLK1)を、振とうフラスコ中で30℃において2%のグルコースおよび2%のアラビノースを補給したMY−尿素培地(pH4.7)中で0.05±0.01の初期OD660で、グルコース上で生育させた予備培養物を使用して培養した。比較のため、株DS62504、IMK307およびIMK311を同一条件下で培養した。生育および糖消費は、69時間モニタリングした。株IMW024、IMW025およびIMW047は、全てグルコースおよびアラビノースの両方を利用し得た(
図17)。IMW018におけるGLK1の再導入(IMW047)は、迅速なグルコースおよびアラビノース消費をもたらした。アラビノースおよびグルコースは、培養の43時間内に消費が完了し、それはIMK307(hxk2Δ)およびIMK311(hxk1Δ hxk2Δ)について観察されたものと類似する。IMW024(HXK2)およびIMW025(HXK1)について観察されたアラビノース消費は、両方ともIMK307およびIMK311について観察されたものよりも緩慢であるが、いかなるHXK/GLK欠失も有さない親株DS62504について観察されたものよりも迅速であった(
図17(a))。アラビノースおよびグルコースの同時消費は、株IMW047についてのみ観察された(
図18)。グルコースが22時間において枯渇される前、アラビノースの約7%が消費された。25時間において、グルコースが完全に消費されたとき、アラビノースの19%が利用された。
【0149】
【表6】
【0150】
[実施例17]
[IMW058におけるヘキソキナーゼまたはグルコキナーゼ活性の再導入]
株IMW058におけるHXK1、HXK2またはGLK1のいずれかの再導入を、グルコース上での生育を回復させるために実施した。このため、HXK2、HXK1およびGLK1を、オリゴヌクレオチド組合せXK2FW/HXK2RV、HXK1FW/HXK1RVおよびGLK1FW/GLK1RVを使用し、S.セレビシエ(S.cerevisiae)のCENPK113−7DのゲノムDNAをテンプレートとして使用するPCRにより増幅させた。PCR生成物の精製後(GenElute PCR Clean−up Kit,Sigma,Steinheim,Germany)、IMW058の一晩培養物をこのPCR生成物により形質転換した(Gietz and Woods 2002)。形質転換細胞は、2%のグルコースを含有するMY寒天上のグルコース上での生育について選択した。相同性組換えによるHXK2、HXK1およびGLK1のそれらの元の遺伝子座における正確な統合は、診断オリゴヌクレオチド(表5)を使用する単一コロニーに対するPCRにより確認した。
【0151】
得られた株IMW059(HXK2)、IMW060(HXK1)およびIMW061(GLK1)を、振とうフラスコ中で30℃において2%のグルコースおよび2%のアラビノースを補給したMY−尿素培地(pH4.7)中で0.05±0.01の初期OD660で、グルコース上で生育させた予備培養物を使用して培養した。生育および糖消費は、72時間モニタリングした。株IMW059、IMW060およびIMW061は、全てグルコースおよびアラビノースの両方を利用し得た(
図17)。IMW058におけるHXK2の再導入は、アラビノースおよびグルコースの迅速な連続的消費をもたらした。参照株DS62504は69時間内にアラビノースを完全に消費しなかった一方(
図17(a))、株IMW059はアラビノースの99%超を約46時間内に消費した(
図17(j))。
【0152】
株IMW060(HXK1)およびIMW061(GLK1)について、グルコースおよびアラビノースの同時消費が観察された(
図17(k)および(l))。培養の最初の22時間において、アラビノースの約18%がグルコースの約48%と一緒に同時消費された。培養の50時間内に、アラビノースの99%が消費された。
【0153】
[実施例18]
[株IMK318、IMW017およびIMW018の比較全ゲノムシーケンシング]
株IMK318、IMW017およびIMW018についての全ゲノムDNAシーケンシングは、Illumina GAIIx技術(75bpのリード、ペアエンド)を使用して実施した。シーケンスリードは、CLC Genomics Workbenchバージョン4.5を使用してS.セレビシエ(S.cerevisiae)CEN.PK113−7Dの参照ゲノム配列にアラインした。SNP分析は、CLC Genomics Workbenchバージョン4.5を使用して実施した。
【0154】
全体で、SNP分析は、IMK318、IMW017およびIMW018をCEN.PK113−7Dの参照配列と比較した場合にアミノ酸変化をもたらすコード領域中の4つの突然変異を生じた。
【0155】
ガラクトキナーゼをコードするGAL1中のAsp376Valアミノ酸変化をもたらす1つの突然変異。この突然変異は、参照配列と比較した場合にIMK318、IMW017およびIMW018に見出された(
図19)。
【0156】
驚くべきことに、IMW017について2つの特有の突然変異のみが見出された。それらの一方は、GAL1中のTyr274Phe突然変異であり、Thoden et al.(2005)により記載されたガラクトキナーゼのガラクトース結合部位中に局在する。IMW017におけるGAL1の欠失がグルコース上での生育を排除する観察と組み合わせると、この突然変異はIMW017におけるグルコース消費を可能とするGAL1のヘキソキナーゼ活性を担った可能性が高いと考えられる。第2の突然変異は、S.セレビシエ(S.cerevisiae)におけるガラクトースパーミアーゼをコードするGAL2の膜貫通モチーフ5に見出された(Thr219Asn)。GAL2pは、アラビノースを輸送し得ることが公知である(Kou et.al 1970;Becker et al.2003)。アラビノースについての親和性を増加させ、またはグルコースについての親和性を減少させるGAL2における突然変異は、グルコースの存在下でのアラビノース消費の改善をもたらす。
【0157】
驚くべきことに、1つの特有の突然変異のみがIMW018のコード領域に見出された。この突然変異は、S.セレビシエ(S.cerevisiae)におけるガラクトースパーミアーゼをコードするGAL2の膜貫通モチーフ8中に局在した(Asn376Ser)。GAL2pは、アラビノースを輸送し得ることが公知である(Kou et. al 1970;Becker et al.2003)。アラビノースについての親和性を増加させ、またはグルコースについての親和性を減少させるGAL2における突然変異は、グルコースの存在下でのアラビノース消費の改善をもたらす。
【0158】
[実施例19]
[IMW059によるグルコースおよびアラビノースの迅速な嫌気的発酵]
株IMW059を、20gl
−1のグルコースおよび20gl
−1のアラビノースを有するMY培地中で嫌気的に培養した。糖消費は、HPLC計測によりモニタリングした。酵母の生育は、乾燥重量計測およびOD660のモニタリングにより測定した。CO
2生成は、排ガス中のCO
2濃度の計測により測定した。エタノール生成は、CO
2生成に基づき算出した。エタノール蒸発を補正するため、生成されたエタノールの量は、CO
2の計測された累積生成から、バイオマス合成に起因して生じたCO
2生成(1グラムのバイオマス当たり5.85mmolのCO
2)および酢酸形成に伴うCO
2を差し引いたものに等しいと想定した。
【0159】
19時間内に、グルコースは枯渇した。CO
2生成プロファイルおよびアラビノース濃度(
図21)に基づくと、アラビノース消費はグルコースが完全に消費された後に開始した。グルコースおよびアラビノースの同時消費は観察されなかった。嫌気的培養の74時間後、アラビノースの99%が消費された。エタノールは、全糖1グラム当たり0.43gの全体収率で生成された。このCO
2生成プロファイルとDS62504株のそれとの比較(
図24)は、グルコース/アラビノース混合物の嫌気的発酵の間の第1のCO
2生成ピークに基づき、グルコース消費が株IMW059について緩慢であることを示す。しかしながら、アラビノースは、IMW059によりかなり迅速に消費され、それは第2のCO
2生成ピークの間のより高いCO
2生成レベルおよびより短い合計発酵時間により反映される。
【0160】
[実施例20]
[IMW060によるグルコースおよびアラビノースの嫌気的同時消費]
株IMW060を、20g l
−1のグルコースおよび20g l
−1のアラビノースを有するMY培地中で嫌気的に培養した。糖消費は、HPLC計測によりモニタリングした。酵母の生育は、乾燥重量計測およびOD660のモニタリングにより測定した。CO
2生成は、排ガス中のCO
2濃度の計測により測定した。エタノール生成は、CO
2生成に基づき算出した。エタノール蒸発を補正するため、生成されたエタノールの量は、CO
2の計測された累積生成から、バイオマス合成に起因して生じたCO
2生成(1グラムのバイオマス当たり5.85mmolのCO
2)および酢酸形成に伴うCO
2を差し引いたものに等しいと想定した。
【0161】
CO
2生成プロファイルならびにグルコースおよびアラビノース濃度(
図22)に基づくと、アラビノースは最初の約40時間内にグルコースと同時に消費された。最初の43時間内に、グルコースは完全に消費される一方、アラビノースの41%が消費された。嫌気的培養の74時間後、アラビノースの89%が消費された。嫌気的培養の140時間後、アラビノースの98%が消費された。エタノールは、全糖1グラム当たり0.43gの全体収率で生成された。このCO
2生成プロファイルとDS62504株のそれとの比較(
図24)は、グルコース/アラビノース混合物の嫌気的発酵の間の第1のCO
2生成ピークに基づき、グルコース消費が株IMW060について緩慢であることを示す。しかしながら、グルコース/アラビノース混合物を発酵させるための合計時間は、DS62504のそれよりも短い。
【0162】
[実施例21]
[IMW061によるグルコースおよびアラビノースの嫌気的同時消費]
株IMW061を、20g l
−1のグルコースおよび20g l
−1のアラビノースを有するMY培地中で嫌気的に培養した。糖消費は、HPLC計測によりモニタリングした。酵母の生育は、乾燥重量計測およびOD660のモニタリングにより測定した。CO
2生成は、排ガス中のCO
2濃度の計測により測定した。エタノール生成は、CO
2生成に基づき算出した。エタノール蒸発を補正するため、生成されたエタノールの量は、CO
2の計測された累積生成から、バイオマス合成に起因して生じたCO
2生成(1グラムのバイオマス当たり5.85mmolのCO
2)および酢酸形成に伴うCO
2を差し引いたものに等しいと想定した。
【0163】
CO
2生成プロファイルならびにグルコースおよびアラビノース濃度(
図23)に基づくと、アラビノースは最初の43時間内にグルコースと同時に消費された。最初の49時間内に、グルコースは完全に消費される一方、アラビノースの73%が消費された。嫌気的培養の74時間後、アラビノースの95%が消費された。嫌気的培養の140時間後、アラビノースの99%が消費された。エタノールは、全糖1グラム当たり0.44gの全体収率で生成された。このCO
2生成プロファイルとDS62504株のそれとの比較(
図24)は、グルコース/アラビノース混合物の嫌気的発酵の間の第1のCO
2生成ピークに基づき、グルコース消費が株IMW061について緩慢であることを示す。しかしながら、グルコース/アラビノース混合物を発酵させるための合計時間は、DS62504のそれよりも短い。
【0164】
[実施例22]
[BAMにおける性能試験]
株IMW060およびIMW061の性能を試験するため、株を、2%のグルコースを補給したVerduyn培地において植菌した。対照として、株DS62504を含めた。
【0165】
ロータリーシェーカー中で30℃および280rpmにおいて一晩インキュベートした後、細胞を遠心分離により収集し、CO
2生成のための培養をBAM(Biological Activity Monitor)中で33℃において、表7に示される糖を補給した100mlのVerduyn培地中で実施した。細胞を、糖ならびに阻害剤の酢酸、クマル酸、フェルラ酸、フルフラール、HMFおよびギ酸を示された濃度において補給した100mlのVerduyn培地に添加した。第2の実験において、糖を補給したが阻害剤を使用しない100mlのVerduyn培地を使用した。CO
2生成は常にモニタリングし、試料は分析(600nmにおける光学密度、エタノール、および残留糖)のために周期的に採取した。
【0166】
BAM実験の結果を、阻害剤を有する培地については
図25、26、および27に示し、阻害剤を有さない培地については
図28、29および30に示す。IMW060およびIMW061は両方とも、糖グルコースおよびアラビノースを迅速に同時にエタノールに変換し得る一方、株DS62504は変換し得ず、すなわちDS62504は、グルコースが培地から排出された後にアラビノースを消費すると結論づけることができる。同一の結果、すなわちアラビノースおよびグルコースの同時消費は、阻害剤の存在下で得られるが、文献から公知のとおり全ての糖を消費させるためにかかる時間が阻害剤の存在下においてより緩慢である。
【0167】
【表7】
【0168】
[1] A.A. Andreasen, T.J. Stier, Anaerobic nutrition of Saccharomyces cerevisiae. I. Ergosterol requirement for growth in a defined medium, J. Cell Physiol. 41 (1953) 23−36.
[2] A.A. Andreasen, T.J. Stier, Anaerobic nutrition of Saccharomyces cerevisiae. II. Unsaturated fatty acid requirement for growth in a defined medium, J. Cell Physiol. 43 (1954) 271−281.
[3] R.D. Gietz, R.A. Woods, Transformation of yeast by lithium acetate/single−stranded carrier DNA/polyethylene glycol method, Methods Enzymol. 350 (2002) 87−96.
[4] U. Gueldener, S. Heck, T. Fiedler, J. Beinhauer, J.H. Hegemann, A new efficient gene disruption cassette for repeated use in budding yeast, Nucleic Acids Res. 24 (1996) 2519−2524.
[5] U. Gueldener, J. Heinisch, G.J. Koehler, D. Voss, J.H. Hegemann, A second set of loxP marker cassettes for Cre−mediated multiple gene knockouts in budding yeast, Nucleic Acids Research 30(6) (2002) e23.
[6] H. Van Urk, P.R. Mak, W.A. Scheffers, J.P. Van Dijken, Metabolic responses of Saccharomyces cerevisiae CBS 8066 and Candida utilis CBS 621 upon transition from glucose limitation to glucose excess, Yeast 4 (1988) 283−291.
[7] C. Verduyn, E. Postma, W.A. Scheffers, J.P. Van Dijken, Effect of benzoic acid on metabolic fluxes in yeasts: a continuous−culture study on the regulation of respiration and alcoholic fermentation, Yeast 8 (1992) 501−517.
[8] R.A. Weusthuis, W. Visser, J.T. Pronk, W.A. Scheffers, J.P. Van Dijken, Effects of oxygen limitation on sugar metabolism in yeasts − a continuous−culture study of the Kluyver effect, Microbiology 140 (1994) 703−715.
[9] S.C. Kou, et al. (1970). J. Bact. 102, 671−678.
[10] J. Becker et al. (2003). Appl. Environ. Microbiol. 69, 4144−4150.
[11] J.B. Thodenet al. (2005). J. Biol. Chem. 280, 36905−36911