特許第5961936号(P5961936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961936
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20160721BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   B60C11/00 F
   B60C11/03 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-149040(P2011-149040)
(22)【出願日】2011年7月5日
(65)【公開番号】特開2013-14247(P2013-14247A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年7月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 健人
【審査官】 柳楽 隆昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−285056(JP,A)
【文献】 特開2007−050718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向溝を2本以上有する空気入りタイヤにおいて、センター部のブロックとショルダー部のブロックで、そのピッチ配列が異なり、かつ接地幅がタイヤ周上で変化しているトレッドパターンを有し、センター部のブロックのピッチ長が短いほど、そのピッチにおけるトレッド円弧線とサイドウォール円弧線との仮想交点の位置をタイヤ幅方向の外側に位置させることで接地幅が大きく構成され、タイヤ周上で最大接地幅と最小接地幅の長さ比率が1.03〜1.06であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
ショルダー部またはセンター部の少なくとも一方のブロックのピッチ配列にランダム配列を採用していることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤに関し、各ブロックの大きさをタイヤ周方向で変えているピッチバリエーションを採用している空気入りタイヤであって、コーナリングパワーの変動が小さく応答性が向上された空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤでは、パターンノイズの抑制のために上述したピッチバリエーションを採用してブロックを構成している。
【0003】
しかし、小ピッチと大ピッチでブロックの大きさが異なるために、タイヤ周上でのコーナリングパワーに変化が生じ、操舵時の入力タイミング(接地面にあるブロック剛性を通じて入力される)によって応答性にわずかながらであるが差異が生じていた。
【0004】
こうしたトレッド部での剛性的な不連続部に起因して発生する車軸力等の変動を、該トレッドの不連続部に対応させてタイヤのサイド部に剛性の変化部分を形成することにより打ち消すという提案がある(特許文献1)。
【0005】
しかし、この提案のようにタイヤのサイド部に剛性の変化部分を形成することは、タイヤの転動時、サイド部には非常に大きな負荷がかかるものなので、耐久性のバランスなどの点で新たな問題を招くおそれがあるものであり、採用することはむずかしい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−237317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、各ブロックの大きさをタイヤ周方向で変えているピッチバリエーションを採用しているに関わらず、コーナリングパワーの変動が小さく応答性が向上された空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的は、以下の(1)空気入りタイヤとすることにより達成することができる。
(1)周方向溝を2本以上有する空気入りタイヤにおいて、センター部のブロックとショルダー部のブロックで、そのピッチ配列が異なり、かつ接地幅がタイヤ周上で変化しているトレッドパターンを有し、センター部のブロックのピッチ長が短いほど、そのピッチにおけるトレッド円弧線とサイドウォール円弧線との仮想交点の位置をタイヤ幅方向の外側に位置させることで接地幅が大きく構成され、タイヤ周上で最大接地幅と最小接地幅の長さ比率が1.03〜1.06であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【0009】
また、これら(1)本発明の空気入りタイヤにおいて、さらに好ましくは、以下の(2)の構成を有することである。
(2)ショルダー部またはセンター部の少なくとも一方のブロックのピッチ配列にランダム配列を採用していることを上記(1)記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0010】
請求項1かかる本発明の空気入りタイヤによれば、各ブロックの大きさをタイヤ周方向で変えているピッチバリエーションを採用しているにも関わらず、コーナリングパワーの変動が小さく応答性が向上された空気入りタイヤが提供される。
【0011】
この空気入りタイヤを用いれば、ピッチバリエーションを採用しているのでパターンノイズが抑制され、かつピッチバリエーションを採用しているにも関わらず、コーナリングパワーの変動が極めて小さく、操舵時の応答性が一定レベルで向上されたものとなり、良好な操舵性と好ましい操舵感をもたらす。
【0012】
請求項1の空気入りタイヤは、センター部のブロックとショルダー部のブロックで、そのピッチ配列が異なるトレッドパターンを有する空気入りタイヤに適用できる
【0013】
請求項にかかる本発明の空気入りタイヤによれば、請求項1空気入りタイヤの効果を有するとともに、一層明確に本発明の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1本発明の空気入りタイヤを説明する上で参考例となるトレッドパターンを示した図である。
図2】請求項にかかる本発明の空気入りタイヤを説明するトレッドパターンを示した図である。
図3】本発明の空気入りタイヤを実現するピッチバリエーション・タイヤの1例として、タイヤ周上でのピッチ長さを3種類(ピッチ:大、中、小)に分けた場合で、それぞれのピッチに対応して、空気入りタイヤのトレッド1の円弧線L1とサイドウォール6の円弧線L2の仮想交点P(P1、P2、P3)の位置を相違させてタイヤトレッドパターンを形成している例を示したタイヤショルダー部付近のプロファイル図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、更に詳しく本発明の空気入りタイヤについて、説明する。
【0016】
本発明の空気入りタイヤを説明する上で参考例となる空気入りタイヤは、図1に示したように、トレッド部1が、その接地幅がタイヤ周上で変化しているトレッドパターンを有し、ショルダー部のブロック3のピッチ長が短いほど、そのピッチにおける接地幅が大きく構成されていることを特徴とする。図において、2はタイヤ赤道、5は周方向溝である。
【0017】
請求項1にかかる本発明空気入りタイヤは、図2に示したように、周方向溝5を2本以上有する空気入りタイヤにおいて、トレッド部1が、その接地幅がタイヤ周上で変化しているトレッドパターン1を有し、センター部のブロック4のピッチ長が短いほど、そのピッチにおける接地幅が大きく構成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の空気入りタイヤでは、センター部で、ピッチ長が短いほどそのブロックのピッチにおける接地幅を大きくなるようにしてトレッドパターンを構成し、小ピッチなほど接地幅を大きくして接地面積を稼いでトレッド剛性を確保するものであり、それにより応答性を向上させるものである。
【0019】
本発明は、センター部のブロックとショルダー部のブロックで、そのピッチ配列が異なるトレッドパターンを有する空気入りタイヤに適用できる
【0020】
本発明において、周上での最大接地幅と最小接地幅の長さ比率が1.03〜1.06を満足することが必要である。この周上での最大接地幅と最小接地幅に大きな差がありすぎると、振動を発することが懸念されるため、本発明者らの各種知見によれば、該長さ比率で上限は1.06までと、また、下限は1.03までと、1.03未満であると本発明の効果が小さくなる傾向にある。すなわち、最大と最小の接地幅に大幅な差があると振動の発生が懸念されるため該差には上限を設けることがよく、該上限はRRO(ラジアル・ランアウト)のOE規格で1mm以下を参考にして、子午線断面のタイヤプロファイル上においてショルダー部の高さの変動が1mm付近となるのは最大接地幅と最小接地幅の長さ比率でおよそ1.06倍であるので該長さ比率は1.06までとするこの周上での最大接地幅と最小接地幅の長さ比率が1.03〜1.06であることについて、具体的に例を挙げて説明すると、例えば、185/60R15サイズのタイヤでは、一般にタイヤ接地幅が126mmであるので、最小接地幅を126mmとすると、例えば、上記の長さ比率が1.03〜1.06倍である最大接地幅は130〜134mmとなる。
【0021】
また、ショルダー部またはセンター部の少なくとも一方のブロックのピッチの配列にはランダム配列を採用していることが好ましい。ここで、「ランダム配列」とは、タイヤ周上でピッチ長さを数種類に分けた場合、隣り合うピッチ長さが異なる場所でのピッチ長さ変化が、1段階ではなく2段階以上変化する部分が、周上で少なくとも1ヶ所あるピッチ配列であることをいい、隣り合うピッチ長さが異なる場所でのピッチ長さ変化が、周上どこでも1段階である「周期配列」と相反する概念である。周期配列の場合、小ピッチの連続や大ピッチの連続が生じてしまうために、更なる応答性向上を目的とした場合にはそぐわないが、ランダム配列を採用して接地幅も変動をさせると、より応答性向上の効果が得られるので好ましい。
【0022】
なお、本発明において、「接地幅」とは、JATMAで規定する標準リムにタイヤを装着し、空気圧180kPaを充填して、最大負荷能力の70%の荷重をかけてキャンバ角とトー角それぞれ0°の状態でタイヤを滑らかな平面上で2km/hで転動させた際に、該平面上をタイヤが触れた部分におけるピッチそれぞれの接地幅をいうものである。
【0023】
本発明の空気入りタイヤを製造するには、各種の方法がある。例えば、ブロックのタイヤ幅方向の寸法をタイヤ周上で接地幅が変化しているブロックごとに変える等のトレッドパターンの設計による方法、あるいはトレッドゴムの硬度をタイヤ周上で接地幅が変化しているブロックごとに変える等のゴム材料の設計による方法や、それら方法の複数の組み合わせなどにより本発明の空気入りタイヤを構成することができる。
【0024】
中でも、比較的簡単にかつ確実に実現できる方法は、ブロックのタイヤ幅方向の寸法をタイヤ周上で接地幅が変化しているブロックごとに変えるという方法であり、この概念を図3(a)、(b)、(c)に示す。
【0025】
この図3では、タイヤ周上でのピッチ長さを3種類(ピッチ:大、中、小)に分けた場合で、それぞれのピッチ(大、中、小)に対応して、空気入りタイヤのトレッド1の円弧線L1とサイドウォール6の円弧線L2の仮想交点P(P1、P2、P3)の位置を相違(幅方向に)させてタイヤトレッドパターンを形成している例のショルダー部付近のプロファイル図を示している。2はタイヤ赤道であり、(a)はピッチが小である場合、(b)はピッチが中である場合、(c)はピッチが大である場合を示しており、それぞれの前記仮想交点P1、P2、P3が、その順番でよりタイヤ幅方向の外側(よりタイヤ赤道から離れた位置)に位置しているものである。この仮想交点P1、P2、P3は、直接的にタイヤ接地幅を示すものではないが、その位置は、概ねタイヤ接地幅の大〜中〜小に対応するので、本発明に従いタイヤを製造するときは、この仮想交点P1、P2、P3の位置を適宜に設定することがよい。
【実施例】
【0028】
実施例1〜参考例1〜2、従来例1
応答性の評価は、タイヤサイズ185/60R15の試験タイヤをリムサイズ15×6Jのリムに装着し、空気圧を220kPaにて排気量1500ccのFF乗用車に取り付け、乾燥路面のテストコースを走行し、テストドライバーによる官能評価を実施して、従来例を基準値100として評価点数を指数化した。数値が大きいほど応答性が優れることを表している。
【0029】
振動評価は、上記の実車評価と同じリムと空気圧にて、キャンバ角を2度付けた状態での80km/hユニフォミティで縦振れを、従来例を基準値100として指数化した。数値が大きいほど振動が小さいことを表している。指数が98までは、問題ないレベルである。
【0030】
試験タイヤの詳細と、評価結果を表1に示した。本発明(実施例1〜3、参考例1〜2)によるものは図1図2に示したパターンに準じているものであり、ブロックのピッチ長が短いほど、そのピッチにおける接地幅が大きく構成されているものであり、従来例品は接地幅の周上変動がないものである。
【0031】
表1からわかるように、本発明の空気入りタイヤを使用することにより、ピッチバリエーションを採用しているにも関わらず、大きな振動などの新たな問題を発生させることなく、応答性を向上させることが可能になる。
【0032】
【表1】
【符号の説明】
【0033】
1:トレッド部
2:タイヤ赤道
3:ショルダー部のブロック
4:センター部のブロック
5:周方向溝
6:サイドウォール
P(P1、P2、P3):トレッドの円弧線L1と、サイドウォールの円弧線L2の仮想交点
L1:トレッド1の円弧線
L2:サイドウォール6の円弧線
図1
図2
図3