特許第5961948号(P5961948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961948
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】冷却装置およびそれを用いた電子機器
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20160721BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   F28D15/02 102B
   F28D15/02 M
   F28D15/02 101K
   F28D15/02 102C
   H01L23/46 A
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-190606(P2011-190606)
(22)【出願日】2011年9月1日
(65)【公開番号】特開2013-53766(P2013-53766A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2014年8月21日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト(グリーンITプロジェクト)/エネルギー 利用最適化データセンタ基盤技術の研究開発/最適抜熱方式の検討とシステム構成の開発/集熱沸騰冷却システムの開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】千葉 正樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 実
(72)【発明者】
【氏名】坂本 仁
(72)【発明者】
【氏名】小路口 暁
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 賢一
(72)【発明者】
【氏名】松永 有仁
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−122887(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/050129(WO,A1)
【文献】 特開平09−102691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
H01L 23/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒と、
前記冷媒を液相状態から気相状態に相変化させて吸熱を行う沸騰部と、
前記冷媒を気相状態から液相状態に相変化させて放熱を行う凝縮部と、
前記沸騰部と前記凝縮部とを接続する配管と、
を備え、
前記沸騰部を構成する沸騰部容器は、
上面部と、前記上面部の上に配置された所定方向に延伸した配置部材と、を備え、
前記凝縮部を冷却する冷却風が前記上面部の一部と前記配置部材の表面とによって形成された第1の面に沿って流動することによって、前記冷却風を流動させる流路を構成
前記配置部材は、上方に傾斜する面を備える、
冷却装置。
【請求項2】
前記配管は、前記沸騰部から前記凝縮部へ前記冷媒を輸送する蒸気管と、前記凝縮部から前記沸騰部へ前記冷媒を輸送する液体管を含み、
前記上面部は、前記蒸気管との接続部側を上方として傾斜している面を含む、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記沸騰部は、前記沸騰部容器の内部に配置された複数のフィンを備え、
前記フィンの上端と前記上面部との距離は、前記複数のフィンの配置間隔よりも大きい、請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記凝縮部は、
前記冷媒が流動する管状体と、
前記管状体の周囲に配置された複数の放熱体と、
を備える、請求項1乃至のいずれか1項記載の冷却装置。
【請求項5】
動作に伴って発熱する第1の発熱部材と、冷却装置と、ファンとを備え、
前記冷却装置は、
冷媒と、
前記冷媒を液相状態から気相状態に相変化させて吸熱を行う沸騰部と、
前記冷媒を気相状態から液相状態に相変化させて放熱を行う凝縮部と、
前記沸騰部と前記凝縮部とを接続する配管と、
を備え、前記沸騰部を構成する沸騰部容器は上面部と、前記上面部の上に配置された所定方向に延伸した配置部材と、を備え、前記凝縮部を冷却する冷却風が前記上面部の一部と前記配置部材の表面とによって形成された第1の面に沿って流動することによって、前記冷却風を流動させる流路を構成し、前記配置部材は、上方に傾斜する面を備え、
前記ファンは、前記凝縮部に対向して配置され、前記冷却風を出力する、
電子機器。
【請求項6】
動作に伴って発熱する第2の発熱部材をさらに備え、
前記第2の発熱部材は、前記流路内に配置される、
請求項記載の電子機器。
【請求項7】
前記凝縮部は、
前記冷媒が流動する管状体と、
前記管状体の周囲に配置された複数の放熱体と、
を備える、請求項または記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器内において発熱部材を冷却する冷却装置およびそれを用いた電子機器に関し、特に、1Uサーバ等の低背の電子機器内おいて、冷媒の相変化を利用して発熱部材を冷却する冷却装置およびそれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置や電子機器などの高性能化、高機能化等に伴い、それらの発熱量も増加している。例えば、CPUを搭載したコンピュータ等の電子機器は、情報量や処理速度の増大に伴って、CPU等の半導体素子の発熱量が増大している。半導体素子から発せられる熱により、半導体素子自身が破損する可能性があるため、半導体素子を用いるコンピュータ等の電子機器は、半導体等の発熱体を冷却する冷却装置を備えている。
【0003】
しかし、大型の電子機器においては、冷却装置の実装スペースが十分に取れるが、パーソナルコンピュータや1Uサーバなどの小型電子機器においては、実装スペースが十分に取れないため、冷却装置の小型化、特に高さを低く抑えることが必須となる。なお、1Uサーバは、ラック高さが、米国電子工業界(Electronic Industries Alliance)で定めたラック高さの最小単位である1U(1.75インチ)に形成されたサーバである。
【0004】
特許文献1には、冷却装置を搭載した薄型の電子機器として、冷媒循環式の冷却装置を搭載した電子機器(1Uサーバ)が開示されている。特許文献1の冷却装置は、CPUを冷却する蒸発器と凝縮器とを配管によって接続し、CPUの熱により冷媒を気化させると共にファンで凝縮器を冷却することにより冷媒を凝縮させ、CPUから発生した熱の移送および放熱を行う。この電子機器は、冷却装置の凝縮器を主凝縮器と副凝縮器に分割し、副凝縮器を蒸発器の上に設置することにより、冷却装置を薄型の電子機器(1Uサーバ)に搭載する。
【0005】
特許文献2には、冷却装置を搭載した薄型の電子機器として、CPUを冷媒循環式の冷却装置を用いて冷却すると共に、その他の発熱部材をファンを用いて冷却する電子機器(1Uサーバ)が開示されている。特許文献2の冷却装置は、ラジエタ(凝縮器)とジャケット(蒸発器)の間を結ぶ高温側配管と低温側配管とを熱的接合部を介して接触させることによってラジエタの性能を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-12875号公報
【特許文献2】特開2007-10211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の冷却装置は、蒸発器の上に配置した副凝縮器を冷却することができないため、冷却装置の冷却効率が低下する。また、特許文献2の冷却装置は、CPUを冷却するために冷却装置を配置することにより、その他の発熱部材を冷却するための電子機器のファンから出力された冷却風の流れが妨げられる。従って、CPU以外のその他の発熱部材の冷却効率が低下し、結果的に、電子機器全体の冷却効率が低下する。このように、特許文献1および特許文献2に開示された冷却装置は、薄型の電子機器に実装すると、電子機器全体の冷却効率が低下してしまうという課題がある。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題である、相変化を用いた冷却装置においては、薄型の電子機器に実装すると電子機器全体の冷却効率が低下してしまうという課題を解決する、冷却装置およびそれを用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る冷却装置は、冷媒と、冷媒を液相状態から気相状態に相変化させて吸熱を行う沸騰部と、冷媒を気相状態から液相状態に相変化させて放熱を行う凝縮部と、沸騰部と凝縮部とを接続する蒸気管および液体管と、を備える。ここで、沸騰部を構成する沸騰部容器は、凝縮部を冷却する冷却風を流動させる流路を構成する。
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係る電子機器は、動作に伴って発熱する第1の発熱部材と、冷却装置と、ファンとを備える。ここで、冷却装置は、冷媒と、冷媒を液相状態から気相状態に相変化させて吸熱を行う沸騰部と、冷媒を気相状態から液相状態に相変化させて放熱を行う凝縮部と、沸騰部と凝縮部とを接続する配管と、を備えると共に、沸騰部を構成する沸騰部容器は凝縮部を冷却する冷却風を流動させる流路を構成する。また、ファンは、凝縮部に対向して配置され、冷却風を出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る冷却装置およびそれを用いた電子機器は、薄型の電子機器に実装した場合であっても、電子機器全体の冷却効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電子機器10の内部構成を示す断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る沸騰部50の(a)上面図、(b)(a)のX−X線断面図、(c)(a)のY−Y線断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る沸騰部50の概略斜視図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る電子機器10において、ファン40から出力される冷却風の流れを示す概略図である。
図5】本発明の第1の実施形態において、その他の形状の切欠部を形成した(a)沸騰部50B、(b)沸騰部50C、(c)沸騰部50D、(d)沸騰部50Eの斜視図である。
図6】本発明の第1の実施形態において、その他の位置に蒸気管および液体管を配置した(a)沸騰部50F、(b)沸騰部50G、(c)沸騰部50H、(d)沸騰部50Iの断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係るサーバ100の内部構成を示す断面図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係るチャンバー310の(a)上面図、(b)(a)のX−X線断面図、(c)(a)のY−Y線断面図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係るチャンバー310の概略斜視図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係るサーバ100において、ファン500から出力される冷却風の流れを示す(a)断面図、(b)上面図である。
図11】本発明の第2の実施形態において、その他の形状の切欠部を形成した(a)チャンバー310B、(b)チャンバー310C、(c)チャンバー310Dの斜視図である。
図12】本発明の第3の実施形態に係るチャンバー370の(a)上面図、(b)(a)のX−X線断面図、(c)(a)のY−Y線断面図である。
図13】本発明の第3の実施形態に係るチャンバー370の概略斜視図である。
図14】本発明の第3の実施形態に係るサーバ100Bにおいて、ファン500から出力される冷却風の流れを示す上面図である。
図15】本発明の第4の実施形態に係るチャンバー390の(a)上面図、(b)(a)のX−X線断面図、(c)(a)のY−Y線断面図、(d)(a)のZ1−Z1線断面図、(e)(a)のZ2−Z2線断面図である。
図16】本発明の第4の実施形態に係るチャンバー390の概略斜視図である。
図17】本発明の第4の実施形態に係るサーバ100Cにおいて、ファン500から出力される冷却風の流れを示す(a)断面図、(b)上面図である。
図18】本発明の第4の実施形態において、その他の配置部材を配置した(a)チャンバー390B、(b)チャンバー390C、(c)チャンバー390Dの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。本実施形態に係る電子機器の内部構成図を図1に示す。図1において、本実施形態に係る電子機器10は、内部に冷却装置20、発熱部材30、ファン40、および、図示しないその他の電子部品や配線等が配置されている。
【0014】
冷却装置20は、発熱部材30と熱的に接続され、発熱部材30を冷却する。発熱部材30は、基板の上に複数の回路が配置されている電子部品等であり、動作に伴って熱を発生する。ファン40は、冷却装置20の後述する凝縮部60に向かって冷却風を出力する。
【0015】
冷却装置20についてさらに説明する。図1において冷却装置20は、沸騰部50、凝縮部60、蒸気管70、液体管80および冷媒90を備える。
【0016】
沸騰部50は、発熱部材30の上に配置され、発熱部材30の熱を内部に溜まっている液相状態の冷媒90へ吸熱させることにより、発熱部材30を冷却する。また、本実施形態において、沸騰部50を構成する沸騰部容器は、冷却風を流動させる流路を構成している。
【0017】
凝縮部60は、気相状態の冷媒90を冷却する。凝縮部60は、例えば、図示しない複数の管状体およびこの管状体の長手方向に沿って配置された放熱体を備える。凝縮部60は、気相状態の冷媒90が管状体内を通過することにより、気相状態の冷媒90の熱を放熱体を介して外気へ放熱させる。なお、本実施形態において、凝縮部60は放熱体として金属製の平板状のフィンを用いる。
【0018】
蒸気管70は、沸騰部50と凝縮部60とを接続する。沸騰部50内で気相状態となった冷媒90は、蒸気管70を通過して凝縮部60まで輸送される。
【0019】
液体管80は、凝縮部60と沸騰部50とを接続する。凝縮部60内で液相状態となった冷媒90は、液体管80を通過して沸騰部50まで輸送される。
【0020】
冷媒90は、低沸点を有する媒体である。冷媒90は、沸騰部50内において発熱部材30の熱を吸熱し、液相状態から気相状態へと相変化する。気相状態の冷媒90は、蒸気管70を介して凝縮部60へ輸送される。さらに、冷媒90は、凝縮部60内において熱が外気へ放熱されることによって凝縮し、気相状態から液相状態へと相変化する。液相状態の冷媒90は液体管80を介して再び沸騰部50へ輸送される。
【0021】
上記のように構成された冷却装置20は、液体ポンプなどを使用することなく冷媒90が冷却装置20内を循環し続け、発熱部材30で発生した熱を外気へ放熱し、発熱部材30を冷却する。さらに、上記のように構成された冷却装置20は、沸騰部50の沸騰部容器が冷却風を流動させる流路を構成していることから、ファン40から放出された冷却風は、この流路を通過して冷却装置20の後ろ側まで流動する。従って、本実施形態に係る冷却装置20を薄型の電子機器に実装した場合、電子機器全体の冷却効率を向上させることができる。
【0022】
本実施形態に係る冷却装置20の沸騰部50についてさらに説明する。沸騰部50の上面図を図2(a)に、図2(a)の沸騰部50をX−X線で切断した断面図を図2(b)に、図2(a)の沸騰部50をY−Y線で切断した断面図を図2(c)に示す。また、沸騰部50の概略斜視図を図3に示す。図3において、蒸気管70が接続される位置を一点鎖線で示す。
【0023】
本実施形態に係る沸騰部50を構成する沸騰部容器は、図2および図3に示すように、底面51、上面52、前面53、後面54および2つの側面55a、55bから成る。底面51の上にはフィン56が配置され、底面51は発熱部材30の上に配置される。また、沸騰部50内の下部に液相状態の冷媒90が溜まっている。この構造により、発熱部材30とフィン56とが底面51を介して熱的に接続され、フィン56に伝わった熱によって液相状態の冷媒90が加熱されて気相状態に相変化する。
【0024】
また、本実施形態に係る沸騰部50は、図2および図3に示すように、上面52上および側面55b上の線分を含む面で切断することにより形成される切欠部57を備える。すなわち、沸騰部50の上面52は、前面53側から所定方向に伸びる三角柱状の切欠部57を備える。沸騰部50の上面52は、切欠部57と接しない、底面51と平行な上面52aと、切欠部57と接する、側面55b側に下方傾斜する上面52bと、から構成される。ここで、上面52aおよび上面52bが請求項の上面部を構成し、上面52bが請求項の第1の面に相当する。この第1の面は、上面52に前面53側から所定方向に延伸した三角柱状の切欠部57を形成することによって形成され、切欠部57が上述の流路を構成する。
【0025】
上記のように構成された沸騰部50を備える冷却装置20において、ファン40から出力された冷却風の流れについて説明する。図4に、沸騰部50において、ファン40から出力された冷却風の流れを矢印で示す。図1に示した電子機器10において、ファン40から出力された冷却風は、冷却装置20の凝縮部60を冷却した後、沸騰部50へ達する。そして、図4に示すように、沸騰部50の前面53によって遮られた冷却風は、上面52bの切欠部57を通過し、沸騰部50の後側に流動する。
【0026】
以上のように、本実施形態に係る電子機器10は、冷却装置20の沸騰部50の上面52に切欠部57を形成することによって流路が構成される。この構成により、ファン40から出力された冷却風を切欠部57によって構成された流路を通過させて所定方向に流動させることができる。従って、冷却装置20の凝縮部60を冷却する冷却風を用いて冷却装置20の所定方向に配置されている他の発熱部材等を副次的に冷却することができ、薄型の電子機器に実装した場合でも、電子機器全体の冷却効率を向上させることができる。
【0027】
なお、本実施形態では、上面52上および側面55b上の線分を含む面で切断することにより、沸騰部50の上面部に三角柱状の切欠部57を形成したが、これに限定されない。切欠部57は、上面52において前面53側から所定方向に形成されれば良い。その他の形状の切欠部を形成した沸騰部の例を図5(a)〜(d)に示す。
【0028】
図5(a)に示した沸騰部50Bは、沸騰部50Bの前面と上面とのみに接する切欠部を備える。図5(b)に示した沸騰部50Cは、三角柱状の二つの切欠部を備える。また、図5(c)に示した沸騰部50Dは、沸騰部50Dを上面およびそれぞれ二つの側面上の線分を含む2つの曲面で切断することにより、円柱の一部を形成する二つの切欠部を形成した。さらに、図5(d)に示した沸騰部50Eは、直方体状の二つの切欠部を形成した。
【0029】
図5(a)〜(d)に示した沸騰部50B、50C、50D、50Eは、いずれも前面側から所定方向に伸びる切欠部を備えることから、沸騰部50B、50C、50D、50Eに達したファン40から出力された冷却風を、沸騰部50B、50C、50D、50Eの切欠部を通過させて所定方向に送ることができる。
【0030】
ここで、本実施形態では沸騰部50の前面53の上方に蒸気管70を、後面54の下方に液体管80を接続したが、これに限定されない。蒸気管70および液体管80は、電子機器10内の各部品の配置等に応じて適宜、沸騰部50の所望の面に接続させることができる。沸騰部50の様々な位置に蒸気管70および液体管80を配置した例を、図6(a)〜(d)に示す。
【0031】
図6(a)に示した沸騰部50Fは、沸騰部50Fの上面の前方に蒸気管70Fが、後面の下方に液体管80Fが接続されている。図6(b)に示した沸騰部50Gは、蒸気管70Gと液体管80Gとが同じ方向を向くように接続されている。図6(c)に示した沸騰部50Hは、同じく蒸気管70Hと液体管80Hとが同じ方向を向くように接続したものである。この沸騰部50Hは、内部のフィンの端部のうち蒸気管70Hおよび液体管80Hが接続されない側に、大きな空間が形成されている。さらに、図6(d)に示した沸騰部50Iは、蒸気管70Iと液体管80Iとが同じ方向を向くように接続したものであるが、この沸騰部50Iは、内部のフィンの端部のうち蒸気管70Iと液体管80Iが接続されている側に、大きな空間が形成されている。
【0032】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る電子機器であるサーバの内部構成図を図7に示す。本実施形態に係るサーバ100は1Uサーバであり、図7において、発熱部材200、冷却装置300、電子部品400、冷却用ファン500および図示しないその他の電子部品や配線等が内部に配置されている。
【0033】
発熱部材200は、基板の上に複数の回路等が配置されている電子部品である。本実施形態において、発熱部材200は基板の上に半導体等で形成されたCPU210が配置されている。CPU210は、動作に伴って熱を発生する。
【0034】
冷却装置300は、図7に示すように、沸騰部を構成するチャンバー310およびフィン360、蒸気管320、液体管330、凝縮部340および冷媒350を備え、CPU210を冷却する。
【0035】
チャンバー310は、CPU210の上に配置され、内部に冷媒350および間隔dで配置された複数のフィン360を備える。CPU210の熱を、複数のフィン360を介して液相状態の冷媒350へ伝熱させることにより、CPU210を冷却する。また、本実施形態において、チャンバー310は、上面部に切欠部を形成することによって、冷却を流動させる流路を構成している。チャンバー310については後述する。
【0036】
蒸気管320は、チャンバー310と凝縮部340とを接続する。チャンバー310内で気相状態となった冷媒350は、蒸気管320を通過して凝縮部340まで輸送される。
【0037】
液体管330は、凝縮部340とチャンバー310とを接続する。凝縮部340内で液相状態となった冷媒350は、液体管330を通過して再びチャンバー310まで輸送される。
【0038】
凝縮部340は、気相状態の冷媒350を冷却する。本実施形態において、凝縮部340は、図示しない複数の管状体およびこの管状体の長手方向に沿って積層された放熱体を備える。凝縮部340は、気相状態の冷媒350が管状体内を通過することにより、気相状態の冷媒350の熱を、放熱体を介して外気へ放熱させる。本実施形態において、凝縮部340は、放熱体として金属製の平板状のフィンを用いる。
【0039】
冷媒350は、低沸点を有する媒体である。冷媒350は、チャンバー310内においてCPU210の熱を吸熱して液相状態から気相状態へと相変化する。気相状態の冷媒350は、蒸気管320を介して凝縮部340へ輸送される。さらに、冷媒350は、凝縮部340内において熱が外気へ輸送されることによって凝縮し、気相状態から液相状態へと相変化する。液相状態の冷媒350は重力によって液体管330内を降下し、再びチャンバー310内へ輸送される。
【0040】
以上のように構成された冷却装置300は、液体ポンプなどを使用することなく冷媒350が冷却装置300内を循環し続け、CPU210で発生した熱を外気へ放熱し、CPU210を冷却する。
【0041】
図7の説明に戻る。電子部品400は、冷却装置300の冷却用ファン500と反対側の下方に配置され、動作に伴って発熱する。以下、冷却装置300に対して冷却用ファン500が配置されている側を「前側」、冷却装置300に対して電子部品400が配置されている側を「後側」と記載する。
【0042】
冷却用ファン500は、冷却装置300の凝縮部340に対向配置され、凝縮部340に向かって冷却風を出力することにより、主に凝縮部340を空冷する。また、本実施形態において、冷却用ファン500から放出された冷却風は、冷却装置300のチャンバー310に形成された切欠部によって構成された流路を通過して、冷却装置300の後側に配置された電子部品400を冷却する。
【0043】
冷却装置300のチャンバー310について、図7図9を用いてさらに説明する。図8(a)は冷却装置300のチャンバー310の上面図、図8(b)は図8(a)のチャンバー310をX−X線で切断した断面図、図8(c)は図8(a)のチャンバー310をY−Y線で切断した断面図である。また、図9は、チャンバー310の概略斜視図である。
【0044】
チャンバー310は、図8および図9に示すように、底面311、上面312、前面313、後面314および2つの側面315a、315bからなる沸騰部容器である。前面313の上方には、蒸気管320が接続される排出口317が形成されている。一方、後面314の下方には、液体管330が接続される流入口318が形成されている。
【0045】
また、底面311の上にはチャンバー310の側面315a、315bと平行に間隔dで複数のフィン360が配置され、底面311はCPU210の上面に配置されている。さらに、チャンバー310内の下部に液相状態の冷媒350が溜まっている。この構成により、CPU210とフィン360とが底面311を介して熱的に接続され、フィン360に伝わった熱によって液相状態の冷媒350が加熱されて気相状態に相変化する。
【0046】
なお、液体管330の接続方向がフィン360の長手方向と平行になるように液体管330を接続すると共に、液体管330の中心軸がフィン360と対向しないようにフィン360を配置することが望ましい。また、図8(b)に示すように、フィン360の最上部から上面312までの距離Lは、フィン360間距離dよりも大きいことが望ましい。具体的には、フィン360の最上部から上面312までの距離Lは、フィン360間距離dの1.1〜5倍程度に設定することが望ましい。冷媒350は、フィン360間において気相に相変化することによって圧力が上昇するが、フィン360の最上部から上面312までの距離Lが、フィン360間距離dよりも大きく構成されていることから、体積が大きい上面312側へと移動する。
【0047】
また、本実施形態に係るチャンバー310は、図8および図9に示すように、チャンバー310の上面312上の線分と、それぞれ2つの側面315a、315b上の線分と、を含む面で切断することにより、三角錐状の2つの切欠部316aおよび切欠部316bが形成されている。上面312は、排出口317から後面314端部まで下方傾斜した上面312aと、排出口317から2つの側面315a、315b端部側へそれぞれ下方傾斜した上面312b、312cと、から成る。
【0048】
ここで、上面372が請求項の上面部に相当し、上面312a、312b、312cがそれぞれ請求項の第1の面に相当する。また、上面312aの上方空間および切欠部316a、316bが、上述の流路を構成する。さらに、図9に示すように、本実施形態において、上面部を構成している上面312a、312b、312cはそれぞれ、排出口317に向かって上方傾斜している。
【0049】
次に、冷却用ファン500から出力される冷却風について説明する。冷却用ファン500から出力される冷却風の流れを、図10(a)断面図、(b)上面図に矢印で示す。
【0050】
図10(a)に示すように、冷却用ファン500から出力された冷却風は、冷却装置300の凝縮部340を冷却した後、チャンバー310へ達する。そして、図10(a)、(b)に示すように、冷却風はチャンバー310の前面313の上方に形成された切欠部316a、316bおよび上面312aに沿って流動する。
【0051】
この時、チャンバー310の上面312aが後面314側、すなわち、電子部品400側に向かって下方傾斜していることから、流体に関するコアンダ効果により、冷却風の向きは上面312aに沿って下方に曲げられる。同様に、チャンバー310の上面312b、312cが排出口317から2つの側面315a、315b側へそれぞれ下方傾斜していることから、コアンダ効果により、冷却風の向きは上面312b、312cに沿って斜め下方に曲げられる。従って、冷却風は、チャンバー310の後側の下方に配置されている電子部品400まで達する。ここで、コアンダ効果とは、粘性の有る流体の流れの近傍に物体を置いたとき、その物体に沿って流体の流れの向きが変わる性質である。
【0052】
以上のように、本実施形態に係るサーバ100は、冷却装置300のチャンバー310の上面312aを下方傾斜させると共に、切欠部316a、316bを形成することにより、冷却用ファン500から出力された冷却風は、上面312aおよび切欠部316a、316bにより構成される面に沿ってチャンバー310の後側に導かれる。冷却用ファン500から出力された凝縮部340を冷却するための冷却風を、冷却装置300の後ろ側に配置された電子部品400の冷却に応用することができ、従って、冷却装置300を薄型の電子機器に実装した場合でも、電子機器全体の冷却効率を向上させることができる。
【0053】
さらに、本実施形態に係るサーバ100は、チャンバー310の上面312aを後面314側(電子部品400側)に向かって下方傾斜させると共に、上面312b、312cを2つの側面315a、315b側へそれぞれ下方傾斜させた。この場合、冷却用ファン500から出力された冷却風の向きは、コアンダ効果により、チャンバー310の上面312a、312b、312cに沿って曲げられる。従って、冷却装置300の後側に配置されている電子部品400の高さがチャンバー310の高さよりも低い場合等でも、この電子部品400を効率よく冷却することができる。
【0054】
ここで、チャンバー310の上面312a、312b、312cを下方傾斜させる、すなわち、排出口317に向かって上方傾斜させる場合、気相状態の冷媒350を効率よく排出口317に集めることができる。具体的には、チャンバー310内で気相状態になった冷媒350は、圧力が上昇してフィン360間よりも空間が広い空間へと移動し、上面312a、312b、312cまで達する。そして、上面312a、312b、312cが排出口317に向かって上方傾斜していることから、気相状態の冷媒350は上面312a、312b、312cに沿って上昇し、効率よく排出口317に集められる。排出口317に流れ込んだ気相状態の冷媒350は、圧力差により蒸気管320を通過し、凝縮部340まで流れ込む。従って、チャンバー310の上面312a、312b、312cを排出口317に向かって上方傾斜させることにより、冷媒350の循環をさらにスムーズに行うことができる。
【0055】
なお、本実施形態では、上面312を後方に向かって下方傾斜させたが、これに限定されない。上面312は、電子部品400が配置されている方向に向かって傾斜させればよく、電子部品400の高さがチャンバー310の高さよりも高い場合やサーバ100の天板に配置されている場合には、上面312を電子部品400側に向かって上方傾斜させることもできる。この場合、気相となった冷媒350を排出口317に集めるために、チャンバー310の内部には別途、排出口317に向かって上方傾斜する導板を配置することが望ましい。
【0056】
また、本実施形態において、前面313の上方に排出口317を、後面314の下方に流入口319を形成したが、これに限定されない。排出口317および流入口319は、サーバ100内のレイアウトに応じて、チャンバー310の最適な面に形成することができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、チャンバー310の上面部を三角錐状の二つの切欠部316a、316bによって形成したが、これに限定されない。その他の形状の上面部を備えるチャンバーの一例を図11(a)、(b)、(c)に示す。
【0058】
図11(a)のチャンバー310Bの上面部は、円錐状の二つの切欠部から構成される。また、図11(b)のチャンバー310Cの上面部は、側面315a、315bの途中まで形成された三角錐状の二つの切欠部と、後面314まで達する三角錐状の切欠部と、により構成される。さらに、図11(c)のチャンバー310Dの上面部は、前面313の一部を底面311と平行な面で切断することにより形成した二つの切欠部から構成される。これらのチャンバー310B、310C、310Dは、図9のチャンバー310と同様に、冷却用ファン500から出力された冷却風を、切欠部の面に沿って流動させてチャンバー310の後側に送ることができる。
【0059】
さらに、図11(a)、(b)、(c)のチャンバー310B、310C、310Dは、いずれも上面312が排出口317に向かって上方傾斜している。従って、気相状態の冷媒350を効率よく排出口317に流入させることができる。
【0060】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本実施形態に係るサーバ100Bは、図7に示した第2の実施形態に係るサーバ100とほぼ同様の構成を有する。すなわち、サーバ100Bの内部に、発熱部材200、冷却装置300B、電子部品400、冷却用ファン500および図示しないその他の電子部品や配線等が配置されている。また、本実施形態に係る冷却装置300Bは、沸騰部を構成するチャンバー370およびフィン360、蒸気管320、液体管330、凝縮部340および冷媒350を備える。本実施形態に係るサーバ100Bと、第2の実施形態に係るサーバ100との違いは、サーバ100Bがチャンバー310の代わりにチャンバー370を備えている点である。
【0061】
発熱部材200、電子部品400、冷却用ファン500、蒸気管320、液体管330、凝縮部340、冷媒350およびフィン360は、第2の実施形態で説明したそれらと同様の機能を有するため、詳細な説明を省略する。
【0062】
チャンバー370について説明する。本実施形態に係るチャンバー370の上面図を図12(a)に、図12(a)のチャンバー370をX−X線で切断した断面図を図12(b)に、図12(a)のチャンバー370をY−Y線で切断した断面図を図12(c)に、示す。また、チャンバー370の概略斜視図を図13に示す。
【0063】
チャンバー370は、図12および図13に示すように、底面371、上面372、前面373、後面374および2つの側面375a、375bからなる沸騰部容器である。側面375aの下方には、液体管330が接続される流入口378が形成されている。前面373の前方には、図12(a)に示すように、蒸気管320が接続される排出口377を備える張出部380が配置されている。張出部380は、フィン360が配置されていない空間である。張出部380を形成することにより、フィン360間において気相となった冷媒350は、フィン360間距離よりも体積が大きい張出部380側へ移動し、排出口377へ容易に導かれる。なお、図13ではこの張出部380を省略している。
【0064】
また、底面371の上にはフィン360が配置され、底面371はCPU210の上面に配置されている。さらに、チャンバー370内の下部には図示しない液相状態の冷媒350が溜まっている。この構成により、CPU210とフィン360とが底面371を介して熱的に接続され、フィン360に伝わった熱によって液相状態の冷媒350が加熱されて気相状態に相変化する。
【0065】
さらに、本実施形態に係るチャンバー370は、図12および図13に示すように、上面372の対角線と前面373上および側面375b上の線分とを含む面で切断することにより、三角錐状の切欠部376が形成されている。図13に示すように、チャンバー370の上面372は、底面371と平行な上面372aと、上面372の対角線から前面373および側面375b側に下方傾斜した上面372bと、から成る。
【0066】
ここで、上面372が請求項の上面部を構成し、上面372bが請求項の第1の面に相当する。この第1の面は、上面372に前面373上および側面375b上の線分を含む面で切断することによって形成された三角錐状の切欠部376の斜面であり、この切欠部376により冷却風を流動させる流路が構成される。
【0067】
次に、冷却用ファン500から出力される冷却風について説明する。冷却用ファン500から出力される冷却風の流れを図14中の矢印で示す。図14に示すように、冷却用ファン500から出力された冷却風は、チャンバー370へ到達した後、チャンバー370の前面373側から切欠部376に流れ込み、コアンダ効果により、上面372bに沿って側面375b側下方に導かれる。
【0068】
ここで、本実施形態において、上面372aを底面371と平行に配置したことから、切欠部376に流れ込んだ冷却風は上面372aに当たって側面375b側下方に導かれる。従って、冷却風を所望の方向に集中的に導くことができ、電子部品400を効果的に冷却することができる。
【0069】
以上のように、本実施形態に係るサーバ100Bは、冷却装置300Bのチャンバー370の上面部を切欠部376によって形成することにより、冷却用ファン500から出力された冷却風は切欠部376を通過し、上面372bに沿ってチャンバー310の側面375b側に導かれる。さらに、本実施形態では、上面372aを底面371と平行に配置したことから、冷却風は上面372aに当たって側面375b側下方に導かれる。従って、ターゲットとなる電子部品400に向かって上面372bを傾斜させることにより、電子部品400を効果的に冷却することができる。
【0070】
なお、チャンバー370の上面372bの一部は排出口377に向かって上方傾斜していることから、チャンバー370内で気相となった冷媒350は効率よく排出口377に集まる。従って、冷媒350の循環をスムーズに行うことができる。
【0071】
ここで、切欠部376の形状は、副次的に冷却する電子部品400の配置位置および形状等に応じて適宜設計することができる。また、排出口377および流入口378は、サーバ100B内のレイアウトに応じてチャンバー370の最適な位置に形成することができる。
【0072】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について説明する。本実施形態に係るサーバ100Cは、第2の実施形態に係るサーバ100において、冷却装置300Cはチャンバー310の代わりにチャンバー390を備える。発熱部材200、電子部品400、冷却用ファン500、蒸気管320、液体管330、凝縮部340、冷媒350およびフィン360は、第2の実施形態で説明したそれらと同様の機能を有するため、詳細な説明を省略する。
【0073】
チャンバー390について説明する。本実施形態に係るチャンバー390の上面図を図15(a)に、図15(a)のチャンバー390をX−X線で切断した断面図を図15(b)に、図15(a)のチャンバー390をY−Y線で切断した断面図を図15(c)に、図15(a)のチャンバー390をZ1−Z1線で切断した断面図を図15(d)に、図15(a)のチャンバー390をZ2−Z2線で切断した断面図を図15(e)に示す。また、チャンバー390の概略斜視図を図16に示す。
【0074】
チャンバー390は、図15および図16に示すように、底面391、上面392、前面393、後面394および2つの側面395a、395bからなる沸騰部容器である。前面393の前方には、蒸気管320が接続される排出口397を備える張出部380Bが配置されている。なお、図16ではこの張出部380Bを省略している。後面394の下方には、液体管330が接続される流入口398が形成されている。
【0075】
また、底面391の上にはフィン360が配置され、底面391はCPU210の上面に配置されている。さらに、チャンバー390内の下部には図示しない液相状態の冷媒350が溜まっている。この構成により、CPU210とフィン360とが底面391を介して熱的に接続され、フィン360に伝わった熱によって液相状態の冷媒350が加熱されて気相状態に相変化する。
【0076】
さらに、本実施形態に係るチャンバー390は、図15および図16に示すように、上面392は、前面393側から後面394側へ下方傾斜している。従って、図15(d)、(e)に示すように、本実施形態に係るチャンバー390は、後方に行くに従ってフィン360上端と上面392との距離が小さくなる。
【0077】
さらに、本実施形態に係るチャンバー390は、図15および図16に示すように、下方傾斜している上面392の上に、四角錐状の配置部材399が配置されている。図15(d)、(e)において、チャンバー390の後方に行くに従って上面392上で配置部材399が占める割合が大きくなる。後面394側へ下方傾斜している上面392の上に四角錐状の配置部材399を配置することにより、チャンバー390の上方に、冷却風を流動させる流路を構成する領域396が形成される。なお、上面392が請求項の上面部に相当し、領域396と接する上面392および配置部材399の側面が、請求項の第1の面に相当する。
【0078】
次に、冷却用ファン500から出力される冷却風について説明する。冷却用ファン500から出力される冷却風の流れを図17(a)断面図、(b)上面図に矢印で示す。図17(a)、(b)に示すように、冷却用ファン500から出力され、チャンバー390まで到達した冷却風は、配置部材399の左右側面に沿って分岐し、流動する。
【0079】
ここで、上面392が前面393側から後面394側へ下方傾斜していると共に四角錐状の配置部材399の2つの側面がチャンバー390の中心から左右端部方向に伸びていることから、冷却風は、コアンダ効果により、チャンバー390の右後方側下方および左後方側下方に曲げられる。従って、コアンダ効果により、チャンバー390の右側後方と左側後方とに流れた冷却風は、チャンバー390の右側後方と左側後方に配置されている電子部品400B、400Cを効率よく冷却することができる。
【0080】
さらに、本実施形態において、配置部材399の上側の面は、前側から後側へ向かって上方傾斜している。この場合、配置部材399の上側の面に流れ込んだ冷却風は、サーバ100Cの天板に当たって戻り、配置部材399の側面側下方に流れる。従って、図17(b)に示すように、冷却風は電子部品400B、400C方向に導かれ、電子部品400B、400Cを集中的に冷却することができる。
【0081】
一方、本実施形態では、上面392を前面393側から後面394側へ下方傾斜させ、すなわち、排出口397に向かって上方傾斜させた。この場合、チャンバー390内で気相となった冷媒350は、上方へ移動して上面392の内面まで到達した後、上面392の内面に沿って効率よく排出口397に集められる。排出口397に流れ込んだ気相状態の冷媒350は、圧力差によって蒸気管320を通過し、凝縮部340まで流れ込む。従って、本実施形態に係る冷却装置300Cは、冷媒350の循環をスムーズに行うことができる。
【0082】
以上のように、本実施形態に係るチャンバー390は、前面393側から後面394側へ下方傾斜している上面392の上に、四角錐状の配置部材399を配置することにより、冷却用ファン500から出力された冷却風を配置部材399の側面に沿って流動させることができる。すなわち、上面392および配置部材399の側面を所望の方向に傾斜させることにより、コアンダ効果を利用して、冷却風を所望の方向に誘導することができる。従って、冷却用ファン500から出力された凝縮部340を冷却するための冷却風を用いて、所定位置に配置された電子部品400B、400Cを効率よく冷却することができる。
【0083】
さらに、チャンバー390の上面392を排出口397に向かって上方傾斜させることにより、気相状態の冷媒350は効率よく排出口397に導くことができ、冷媒350の循環をスムーズに行うことができる。
【0084】
従って、本実施形態に係るサーバ100Cは、冷却装置300Cを内部に実装することにより、サーバ100C全体の冷却効率を向上させることができる。
【0085】
なお、本実施形態では、前面393側から後面394側へ下方傾斜している上面392の上に四角錐状の配置部材399を配置することによって領域396を形成したが、これに限定されない。上面392の上に配置する配置部材は、サーバ100Cに配置される電子部品400B、400Cの配置位置や高さ等によって適宜、設計することができる。その他の配置部材を配置したチャンバーの一例を図18(a)、(b)、(c)に示す。
【0086】
図18(a)のチャンバー390Bは、上面の対角線を境とする一方の領域上に、四角錐状の配置部材を配置したものである。図18(b)のチャンバー390Cは、上面の中心部に、台形状の湾曲面を備える配置部材を配置したものである。さらに、図18(c)のチャンバー390Dは、上面の中心部に、断面が台形である四角錐状の配置部材を配置したものである。
【0087】
図18(a)、(b)、(c)に示したチャンバー390B、390C、390Dは、上面392の上に配置部材399を配置することにより、冷却風を通過させるための空間が形成される。また、配置部材399の上面を上方傾斜させることにより、冷却用ファン500から出力された冷却風を所望方向に効率よく導くことができる。さらに、チャンバー390B、390C、390Dの上面392がいずれも排出口397に向かって上方傾斜していることから、チャンバー390B、390C、390D内において気相となった冷媒350を、上面392の内面に沿って効率よく排出口397に集めることができる。従って、冷媒350の循環をスムーズに行うことができる。
【0088】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
10 電子機器
20 冷却装置
30 発熱部材
40 ファン
50 沸騰部
51 底面
52 上面
53 前面
54 後面
55a、55b 側面
56 フィン
57 切欠部
60 凝縮部
70 蒸気管
80 液体管
90 冷媒
100、100B、100C サーバ
200 発熱部材
210 CPU
300、300B、300C 冷却装置
310、370、390 チャンバー
311、371、391 底面
312、372、392 上面
313、373、393 前面
314、374、394 後面
315a、315b、375a、375b、395a、395b 側面
316a、316b、376 切欠部
317、377、397 排出口
318、378、398 流入口
320 蒸気管
330 液体管
340 凝縮部
350 冷媒
360 フィン
380、380B 張出部
396 領域
399 配置部材
400 電子部品
500 冷却用ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18