(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を備えて、交流電源(6)から供給された交流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換し、接続されたモータ(7)に供給する電力変換装置であって、
前記スイッチング素子のスイッチングを制御する制御部(5)と、
交流電源(6)の電源電圧(vin)を全波整流するコンバータ回路(2)と、
前記コンバータ回路(2)の出力に並列接続されたコンデンサ(3a)を有し、脈動する直流電圧(vdc)を出力する直流リンク部(3)と、
前記直流リンク部(3)の出力をスイッチングして交流に変換し、接続されたモータ(7)に供給するインバータ回路(4)とを備え、
前記制御部(5)は、前記モータ(7)の電流を制御する電流制御部(53)と、前記電流制御部(53)へ入力される高調波成分を低減する高調波成分除去部(52)とを備え、前記モータ(7)の電流(iu,iv,iw)が、前記電源電圧(vin)の脈動に同期して脈動するように、前記スイッチングを制御することを特徴とする電力変換装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3の例では、モータの高速回転時など低減すべきリプルの周波数が高い場合には、汎用的な制御CPUでは十分な制御帯域が得られず、逆に高調波成分を増加させてしまうといった問題が生じる可能性がある。高性能なCPUを用いることも考えられるが、これではコストが増大してしまう。
【0007】
本発明は前記の問題に着目してなされたものであり、電力変換装置において、モータ電圧歪みに起因する電源高調波を増大させないようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため、第1の発明は、
スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を備えて、交流電源(6)から供給された交流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換し、接続されたモータ(7)に供給する電力変換装置であって、
前記スイッチング素子のスイッチングを制御する制御部(5)
と、
交流電源(6)の電源電圧(vin)を全波整流するコンバータ回路(2)と、
前記コンバータ回路(2)の出力に並列接続されたコンデンサ(3a)を有し、脈動する直流電圧(vdc)を出力する直流リンク部(3)と、
前記直流リンク部(3)の出力をスイッチングして交流に変換し、接続されたモータ(7)に供給するインバータ回路(4)とを備え、
前記制御部(5)は、前記モータ(7)の電流を制御する電流制御部(53)と、前記電流制御部(53)へ入力される高調波成分を低減する高調波成分除去部(52)とを備え
、前記モータ(7)の電流(iu,iv,iw)が、前記電源電圧(vin)の脈動に同期して脈動するように、前記スイッチングを制御することを特徴とする。
【0009】
この構成では、高調波成分除去部(52)が電流制御部(53)へ入力される高調波成分を低減させるので、高調波成分を低減した信号が電流制御部(53)へ入力されることになる
。
【0010】
この構成では、いわゆるコンデンサレスインバータ回路において、高調波成分を低減した信号が電流制御部(53)へ入力されることになる。
【0011】
また、第
2の発明は、
第
1の発明の電力変換装置において、
前記高調波成分除去部(52)は、入力電流(iin)、前記モータ(7)の実電流値(id,iq)、モータ(7)の電流指令値(id
*,iq
*)、及び前記実電流値(id,iq)と前記電流指令値(id
*,iq
*)の偏差の少なくとも1つに対して機能することを特徴とする。
【0012】
この構成では、前記入力電流(iin)、前記実電流値(id,iq)、電流指令値(id
*,iq
*)、及び前記実電流値(id,iq)と前記電流指令値(id
*,iq
*)の偏差等から高調波成分が低減されて、電流制御部(53)へ入力される。
【0013】
また、第
3の発明は、
第1
又は第
2の発明
の電力変換装置において、
前記高調波成分除去部(52)は、該高調波成分除去部(52)への入力信号から所定の周波数領域の信号を除去して出力することを特徴とする。
【0014】
この構成では、所定の周波数領域の信号(例えばある周波数以上の信号)が、電流制御部(53)への入力から除去される。
【0015】
また、第
4の発明は、
第1
又は第
2の発明
の電力変換装置において、
前記高調波成分除去部(52)は、該高調波成分除去部(52)への入力信号に含まれる予め定められた周波数の信号を、低減すべき除去成分として抽出し、該入力信号から前記除去成分を減算することを特徴とする。
【0016】
この構成では、予め定められた周波数の信号(例えばモータ(7)の電圧の6次成分など)が、電流制御部(53)への入力から除去される。
【0017】
また、第
5の発明は、
第
4の発明の電力変換装置において、
前記高調波成分除去部(52)は、フーリエ変換によって前記除去成分を抽出することを特徴とする。
【0018】
この構成では、フーリエ変換によって除去成分を抽出するので、目的の除去成分を正確に抽出できる。
【0019】
また、第
6の発明は、
第
4又は第
5の発明の電力変換装置において、
前記高調波成分除去部(52)は、前記減算が行われた減算信号に含まれる高調波成分が低減するように除去成分を修正することを特徴とする。
【0020】
この構成では、減算結果に応じて除去成分が修正される。
【0021】
また、第
7の発明は、
第1
又は第
2の発明
の電力変換装置において、
前記高調波成分除去部(52)は、該高調波成分除去部(52)に入力される状態量をフーリエ変換することによって前記高調波成分を低減することを特徴とする。
【0022】
この構成では、高調波成分をフーリエ変換によって抽出するので、目的の周波数成分を正確に抽出できる。
【0023】
また、第
8の発明は、
第
5又は第
7の発明の電力変換装置において、
前記高調波成分除去部(52)は、前記交流電源(6)の半周期の整数倍の期間に基づいて、フーリエ変換を行うことを特徴とする。
【0024】
この構成では、フーリエ変換を交流電源(6)の半周期の整数倍の期間行うことで、目的周波数の高調波成分の大きさを正確に把握できる。
【0025】
また、第
9の発明は、
第1から第
8の発明のうちの何れか1つの電力変換装置において、
前記高調波成分には、前記モータ(7)の電圧の基本周波数を6n倍(nは整数)した周波数成分が含まれることを特徴とする。
【0026】
この構成では、比較的高い周波数成分を前記高調波成分として抽出することができる。
【0027】
また、第
10の発明は、
第1から第
9の発明のうちの何れか1つの電力変換装置において、
前記高調波成分除去部(52)は、前記モータ(7)の回転数、トルク、及び電力の何れかに応じて前記高調波成分の除去量を変化させることを特徴とする。
【0028】
この構成では、運転状態に追従させて前記高調波成分の除去量を変化させることが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
第1の発明によれば、高調波成分が低減された信号が電流制御部(53)へ入力されるので、電力変換装置において、モータ電圧歪みに起因する電源高調波を増大させないようにすることが可能になる。
【0030】
また、第
1の発明によれば、いわゆるコンデンサレスインバータ回路において、モータ電圧歪みに起因する電源高調波を増大させないようにすることが可能になる。
【0031】
また、第
2の発明によれば、前記入力電流(iin)、前記実電流値(id,iq)、電流指令値(id
*,iq
*)、及び前記実電流値(id,iq)と前記電流指令値(id
*,iq
*)の偏差の少なくとも1つから高調波成分が除去されるので、モータ電圧歪みに起因する電源高調波を増大させないようにすることが可能になる。
【0032】
また、第
3の発明によれば、所定周波数領域の成分が低減された信号が電流制御部(53)へ入力されるので、電力変換装置において、モータ電圧歪みに起因する、当該周波数領域における電源高調波を増大させないようにすることが可能になる。
【0033】
また、第
4の発明によれば、予め定められた周波数成分が低減された信号が電流制御部(53)へ入力されるので、電力変換装置において、モータ電圧歪みに起因する、当該周波数における電源高調波を増大させないようにすることが可能になる。
【0034】
また、第
5の発明によれば、目的の周波数成分を正確に抽出できるので、電源高調波を増大をより確実に抑制することがきる。
【0035】
また、第
6の発明によれば、前記除去成分が修正されるので、より確実に前記高調波成分を低減することが可能になる。
【0036】
また、第
7の発明によれば、目的の周波数成分を正確に抽出できるので、電源高調波を増大をより確実に抑制することがきる。
【0037】
また、第
8の発明によれば、目的周波数の高調波成分の大きさを正確に把握できるので、電源高調波を増大をより確実に抑制することがきる。
【0038】
また、第
9の発明によれば、比較的高い周波数成分を前記高調波成分として抽出することができるので、電源高調波を増大をより確実に抑制することがきる。
【0039】
また、第
10の発明によれば、運転状態が変化しても、電源高調波を増大をより確実に抑制することがきる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0042】
《全体構成》
図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置(1)の構成を示すブロック図である。同図に示すように電力変換装置(1)は、コンバータ回路(2)、直流リンク部(3)、インバータ回路(4)、及び制御部(5)を備え、単相の交流電源(6)から供給された交流の電力を所定の周波数の電力に変換して、モータ(7)に供給するようになっている。なお、本実施形態のモータ(7)は、三相交流モータであり、空気調和機の冷媒回路に設けられた圧縮機を駆動するためのものである。より具体的には、モータ(7)は、4極6スロットの集中巻モータである。このモータ(7)では、誘起電圧の高調波成分として、基本波の5,7次成分が多く含まれる傾向にある。このモータ電圧歪みに基づく高調波成分は電源電流や直流リンク電圧(後述)にも現れる。
【0043】
〈コンバータ回路(2)〉
コンバータ回路(2)は、リアクトル(L)を介して交流電源(6)に接続され、交流電源(6)が出力した交流を直流に全波整流する。この例では、コンバータ回路(2)は、複数(本実施形態では4つ)のダイオード(D1〜D4)がブリッジ状に結線されたダイオードブリッジ回路である。これらのダイオード(D1〜D4)は、交流電源(6)の交流電圧を全波整流して、直流電圧に変換する。
【0044】
〈直流リンク部(3)〉
直流リンク部(3)は、コンデンサ(3a)を備えている。コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)の出力に並列接続され、該コンデンサ(3a)の両端に生じた直流電圧(直流リンク電圧(vdc))がインバータ回路(4)の入力ノードに接続されている。コンデンサ(3a)は、例えばフィルムコンデンサによって構成されている。このコンデンサ(3a)は、インバータ回路(4)のスイッチング素子(後述)がスイッチング動作する際に、スイッチング周波数に対応して生じるリプル電圧(電圧変動)のみを平滑化可能な静電容量を有している。すなわち、コンデンサ(3a)は、コンバータ回路(2)によって整流された電圧(電源電圧に起因する電圧変動)を平滑化するような静電容量を有さない小容量のコンデンサである。そのため、直流リンク部(3)が出力する直流リンク電圧(vdc)は、その最大値がその最小値の2倍以上となるような大きな脈動を有している。
【0045】
〈インバータ回路(4)〉
インバータ回路(4)は、入力ノードが直流リンク部(3)のコンデンサ(3a)に並列に接続され、直流リンク部(3)の出力をスイッチングして三相交流に変換し、接続されたモータ(7)に供給するようになっている。本実施形態のインバータ回路(4)は、複数のスイッチング素子がブリッジ結線されて構成されている。このインバータ回路(4)は、三相交流をモータ(7)に出力するので、6個のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)を備えている。詳しくは、インバータ回路(4)は、2つのスイッチング素子を互いに直列接続してなる3つのスイッチングレグを備え、各スイッチングレグにおいて上アームのスイッチング素子(Su,Sv,Sw)と下アームのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)との中点が、それぞれモータ(7)の各相のコイル(図示は省略)に接続されている。また、各スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)には、還流ダイオード(Du,Dv,Dw,Dx,Dy,Dz)が逆並列に接続されている。インバータ回路(4)は、これらのスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のオンオフ動作によって、直流リンク部(3)から入力された直流リンク電圧(vdc)をスイッチングして三相交流電圧に変換し、モータ(7)へ供給する。なお、このオンオフ動作の制御は、制御部(5)が行う。
【0046】
〈制御部(5)〉
制御部(5)は、モータ(7)に流れる電流(モータ電流(iu,iv,iw))が、電源電圧(vin)の脈動に同期して脈動するように、インバータ回路(4)におけるスイッチング(オンオフ動作)を制御する。すなわち、電力変換装置(1)は、いわゆるコンデンサレスインバータの一例である。
図2は、制御部(5)の構成例を示すブロック図である。この例では、制御部(5)は、速度制御部(50)、電流指令生成部(51)、高調波成分除去部(52)、dq軸電流制御部(53)、電圧歪み補正部(54)及びPWM演算部(55)を備えている。
【0047】
−速度制御部(50)−
速度制御部(50)は、モータ(7)の機械角の回転角周波数(ωm)と、機械角の指令値(ωm
*)との偏差を求めるとともに、該偏差に比例・積分演算(PI演算)を行ってトルク指令値(T
*)を電流指令生成部(51)に出力する。
【0048】
−電流指令生成部(51)−
図3は、電流指令生成部(51)の構成例を示すブロック図である。同図に示すように、この電流指令生成部(51)は、基本波成分演算部(51a)、絶対値演算部(51b)(
図3ではabsと略記)、入力電流制御部(51c)、dq電流指令値生成部(51d)、乗算器(51e,51f)、及び加算器(51g)を備え、トルク指令値(T
*)、電源電圧(vin)の位相角(θin)の正弦値(sin(θin))、及び入力電流(iin)の絶対値(|iin|)が入力されている。
【0049】
この電流指令生成部(51)では、基本波成分演算部(51a)は、交流電源(6)の半周期の整数倍の期間、フーリエ変換を行って入力電流(iin)の絶対値から、電源電圧の基本波成分を抽出するようになっている。このように、フーリエ変換を交流電源(6)の半周期の整数倍とすることで、所望の周波数成分を適切に抽出することが可能になる。この例では、具体的には、基本波成分演算部(51a)は、sin(θin)と入力電流(iin)との積を平均化した値の2倍を、第1の値(iin_1st)として求めている。
【0050】
絶対値演算部(51b)は、sin(θin)の絶対値を求めるようになっている。また、乗算器(51e)は、sin(θin)の絶対値に第1の値(iin_1st)を乗じて入力電流の絶対値の指令値(|iin
*|)を求めるようになっている。
【0051】
入力電流制御部(51c)は、入力電流(iin)の絶対値の指令値(|iin
*|)と、入力電流(iin)の絶対値(|iin|)との偏差が小さくなるように指令値を生成する。
【0052】
乗算器(51f)は、sin(θin)の絶対値とトルク指令値(T
*)とを乗算する。この乗算結果は、電源周波数の2倍の周波数で脈動する。この乗算結果は、加算器(51g)に入力される。加算器(51g)は、乗算器(51f)の出力と、入力電流制御部(51c)が出力した指令値とを加算する。加算結果は、電流指令値(idq
*)としてdq電流指令値生成部(51d)に入力される。
【0053】
dq電流指令値生成部(51d)は、電流指令値(idq
*)と、後述の電流位相指令値(β
*)とから、d軸電流指令値(id
*)とq軸電流指令値(iq
*)を求めて、高調波成分除去部(52)に出力するようになっている。詳しくは、dq電流指令値生成部(51d)は、電流指令値(idq
*)に対して所定値(β
*)の負の正弦値(−sinβ
*)と余弦値(cosβ
*)とを乗じて、それぞれd軸電流指令値(id
*)とq軸電流指令値(iq
*)とを生成する。ここで、β
*は、モータ(7)に流す電流の位相βの指令値である。
【0054】
−高調波成分除去部(52)−
高調波成分除去部(52)は、入力された信号から、モータ電流歪みに基づく高調波成分を低減する。
図2に示すように、高調波成分除去部(52)は2箇所に設けられている。
図2等では両者を区別するため、符号に枝番(-1,2)を付してある。
図4は、高調波成分除去部(52)の構成例を示すブロック図である。
図4では、電流指令生成部(51)に接続された高調波成分除去部(52-1)を例示してある。高調波成分除去部(52-1)には、電流指令値(id
*,iq
*)が入力されている。なお、高調波成分除去部(52-2)は、入力される信号が電流指令値(id’
*,iq’
*)と実電流値(id,iq)の偏差である点が高調波成分除去部(52-1)と異なる。
【0055】
高調波成分除去部(52-1)では、交流電源(6)の半周期の整数倍の期間に基づいて、フーリエ変換を行って電流指令値(id
*,iq
*)から、モータ(7)の電圧の6次成分を抽出するようになっている。具体的には高調波成分除去部(52-1)は、d軸電流指令値(id
*)とsin(6θ)の積とd軸電流指令値(id
*)とcos(6θ)の積を平均化した値の2倍の値を求め、その値とsin(6θ)、cos(6θ)の積を加算し、d軸電流指令値(id
*)の6次成分(id_6th
*)として求める。ここで、θは、モータ(7)の電圧の基本波成分の位相である。高調波成分除去部(52-1)は、d軸電流指令値(id
*)から6次成分(id_6th
*)を減算した値を出力する。すなわち、id
*×sin6θを平均化した値の2倍の値をid_sin6θとし、id
*×cos6θを平均化した値の2倍の値をid_cos6θとすると、id_6th
*は以下のように表せる。
【0056】
id_6th
*=id_sin6θ×sin6θ+id_cos6θ×cos6θ
また、高調波成分除去部(52-1)は、q軸電流指令値(iq
*)とsin(6θ)の積とq軸電流指令値(iq
*)とcos(6θ)の積を加算し、平均化した値の2倍の値を求め、その値とsin(6θ)、cos(6θ)の積を加算し、q軸電流指令値(iq
*)の6次成分(iq_6th
*)として求める。高調波成分除去部(52-1)は、q軸電流指令値(iq
*)から6次成分(iq_6th
*)を減算した値を出力する。
【0057】
なお、モータ電流歪みに基づく高調波成分は、モータ(7)の電圧の基本波の周波数(基本周波数位相(θ))の6n倍(nは整数)の周波数成分を有している。
【0058】
−dq軸電流制御部(53)−
dq軸電流制御部(53)は、本発明の電流制御部の一例である。dq軸電流制御部(53)は、モータ電流(iu,iv,iw)の指令値(id’
*,iq’
*)と実電流値(id,iq)との偏差が小さくなるように、電圧指令値(vd
*,vq
*)を生成する。
【0059】
−電圧歪み補正部(54)−
制御部(5)では、電源側に含まれる、モータ電圧歪みに基づく高調波成分(後述)が低減するように、インバータ回路(4)への電圧指令値(vd
*,vq
*)に、補償値(後述の補償電圧(vd_h,vq_h))を調整する。電圧歪み補正部(54)は、この補償電圧(vd_h,vq_h)を生成する。
【0060】
図5は、電圧歪み補正部(54)の構成例を示すブロック図である。同図に示すように、電圧歪み補正部(54)は、位相調整部(54a)、ゲイン調整部(54b)、乗算器(54c)を備えている。電圧歪み補正部(54)は、直流リンク電圧(vdc)に含まれる誘起電圧の基本波成分の6倍の周波数(すなわち、前記基本周波数の6倍の周波数)の信号(モータ電圧歪みに基づく高調波成分)を抽出している。具体的には、電圧歪み補正部(54)は、直流リンク電圧(vdc)をフーリエ変換して前記基本周波数の6倍の周波数成分を得ている。また、電圧歪み補正部(54)には、ωφが入力されている。このωφは、無負荷誘起電圧である。
【0061】
ゲイン調整部(54b)では、ωφのゲインを調整している(以下、電圧振幅(Vh)とよぶ)。
【0062】
位相調整部(54a)は、直流リンク電圧(vdc)に含まれるモータの電圧の基本波成分の6倍周波数成分の位相(δ)を検出し、その位相を調整(後述)して出力する。位相調整部(54a)の出力は、6θと加算される。これにより、(6θ+δ)が算出される。
【0063】
そして、電圧歪み補正部(54)では、-sin(6θ+δ)と電圧振幅(Vh)の積を求めて、d軸電圧指令値(vd
*)を補正するd軸補償電圧(vd_h)を生成する。また、電圧歪み補正部(54)は、-cos(6θ+δ)と電圧振幅(Vh)の積を求めて、q軸電圧指令値(vq
*)を補正するq軸補償電圧(vq_h)を生成する。この例では、それぞれの補償電圧(vd_h,vq_h)は、モータ(7)の電圧の基本波の周波数(基本周波数位相(θ))の6n倍(nは整数)の周波数成分を有している。d軸補償電圧(vd_h)、q軸補償電圧(vq_h)は、dq軸電流制御部(53)が出力したd軸電圧指令値(vd
*)、q軸電圧指令値(vq
*)とそれぞれ加算され、新たなd軸電圧指令値(vd’
*)、q軸電圧指令値(vq’
*)としてPWM演算部(55)に出力される。すなわち、PWM演算部(55)に出力される電圧指令値(vd’
*,vq’
*)は、前記高調波成分に応じて補償されることになる。本実施形態では、電源側に含まれる、モータ電圧歪みに基づく高調波成分が低減するように、補償電圧(vd_h,vq_h)が変更される。より具体的には、後述のように、前記位相(δ)の値が調整される。
【0064】
−PWM演算部(55)−
PWM演算部(55)は、d軸電圧指令値(vd’
*)、q軸電圧指令値(vq’
*)、直流リンク電圧(vdc)、及び、モータ(7)の回転子(図示は省略)の回転角(電気角(θe))が入力されている。PWM演算部(55)は、これらの値に基づいて、各スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のオンオフ動作を制御するゲート信号(G)を生成する。
【0065】
〈電力変換装置(1)の動作〉
〈概要〉
本実施形態では、直流リンク部(3)に小容量のコンデンサ(3a)を設けているため、直流リンク電圧(vdc)がより大きく脈動する。直流リンク電圧(vdc)の脈動により、コンバータ回路(2)のダイオード(D1〜D4)の電流導通幅が広くなり、その結果力率が改善する。また制御部(5)は、モータ電流(iu,iv,iw)が、電源電圧(vin)の脈動に同期して脈動するように、インバータ回路(4)におけるスイッチングを制御する。
【0066】
〈制御部(5)の動作〉
本実施形態では、制御部(5)の高調波成分除去部(52)は、dq軸電流制御部(53)へ入力される、モータ電流歪みに基づく高調波成分を低減する。具体的には、高調波成分除去部(52-1)は、交流電源(6)の半周期の整数倍の期間、フーリエ変換を行って電流指令値(id
*,iq
*)から、モータ(7)の電圧の6次成分を抽出する。そして、高調波成分除去部(52-1)は、電流指令値(id
*,iq
*)から抽出した6次成分(id_6th
*,iq_6th
*)を減じて新たな電流指令値(id’
*,iq’
*)を生成する。これにより、モータ電流歪みに基づく高調波成分を低減した信号がdq軸電流制御部(53)へ入力されることになる。
【0067】
また、本実施形態では、電圧歪み補正部(54)が補償電圧(vd_h,vq_h)を求めて、その補償電圧(vd_h,vq_h)で電圧指令値(vd
*,vq
*)を補償する。そのため、インバータ回路(4)の出力電圧は、モータ電圧歪みに基づく高調波成分に応じて補償されることになる。本実施形態では、モータ電圧歪みに基づく高調波成分を検出しつつ前記補償の量を調整している。
図6は、制御部(5)が行う補償電圧動作を説明するフローチャートである。制御部(5)は、補償電圧(vd_h,vq_h)を変化させた前後の、モータ電圧歪みに基づく高調波成分の増減に応じて補償電圧(vd_h,vq_h)を調整する。具体的には、制御部(5)では、いわゆる山登り法で前述の位相(δ)を調整する。
【0068】
まず、ステップ(S01)では、電圧歪み補正部(54)がモータ電圧歪みに基づく高調波成分を抽出する。ステップ(S02)では、制御部(5)が、ステップ(S01)で抽出した、モータ電圧歪みに基づく高調波成分と、従前に抽出された、モータ電圧歪みに基づく高調波成分とを比較して、モータ電圧歪みに基づく高調波成分の増減を判断する。モータ電圧歪みに基づく高調波成分が増加した場合にステップ(S03)に進み、増加していない場合にはステップ(S04)に進む。制御部(5)は、ステップ(S03)では、位相調整部(54a)を制御して位相(δ)を遅らせ、ステップ(S04)では、位相(δ)を進める。その後、制御部(5)は、ステップ(S05)に進み、位相(δ)を遅らせる。ステップ(S05)での位相の変化量は、ステップ(S03)やステップ(S04)における変化量よりも大きい。
【0069】
ステップ(S06)では、電圧歪み補正部(54)が再び、モータ電圧歪みに基づく高調波成分を抽出する。また、ステップ(S07)では、制御部(5)が、ステップ(S06)で抽出した高調波成分と、位相(δ)調整前に抽出された、モータ電圧歪みに基づく高調波成分とを比較して、モータ電圧歪みに基づく高調波成分の増減を判断する。モータ電圧歪みに基づく高調波成分が増加した場合にステップ(S08)に進み、増加していない場合にはステップ(S09)に進む。制御部(5)は、ステップ(S08)では、位相調整部(54a)を制御して位相(δ)を進め、ステップ(S09)では位相(δ)を遅らせる。その後、制御部(5)は、ステップ(S10)に進み、位相(δ)を進める。このように位相(δ)を変動させることで、モータ電圧歪みに基づく高調波成分が減少する位相(δ)を探索することができる。
【0070】
〈本実施形態における効果〉
図7(A)及び
図7(B)は、電圧歪み補正部(54)による補正の効果を説明する波形図である。
図7(A)は、補償電圧(vd_h,vq_h)を重畳しなかった場合の、モータの入力電力(p)、U相の相電圧(vu)、U相の相電流(iu)(モータ電流)を示す波形図である。また、
図7(B)は、補償電圧(vd_h,vq_h)を重畳した場合の、入力電力(p)、相電圧(vu)、モータ電流(iu)を示す波形図である。
図7(A)と
図7(B)を比較すると、
図7(B)のモータ電流(iu)は波形が歪んでおり、モータ電圧歪みに基づく高調波成分が含まれていることが分かる。このように、補償電圧(vd_h,vq_h)を重畳することで、モータ電流(iu)には高調波成分が含まれるのである。そして、モータ電流(iu)に高調波成分が含まれると、
図7(B)に示すように、モータの入力電力、電源側の電流、電力、直流リンク電圧の歪みを低減できる。
【0071】
しかも、本実施形態では、モータ(7)の運転状態(回転数や負荷トルクなど)に応じて位相(δ)を探索するので、電源に流出する、モータ電圧歪みに基づく高調波成分を効果的に低減させることが可能になる。すなわち、本実施形態によれば、いわゆるコンデンサレスインバータにおいて、モータの運転状態に応じて、モータ電圧歪みに起因する電源高調波を低減できる。
【0072】
また、本実施形態では、モータ電流歪みに基づく高調波成分を低減した信号がdq軸電流制御部(53)へ入力される。それゆえ、高調波の外乱で制御が不安定になるのを回避することが可能になる。
【0073】
《その他の実施形態》
なお、モータ電圧歪みに基づく高調波成分は、インバータ回路(4)への入力電流をフーリエ変換したり、インバータ回路(4)への入力電力をフーリエ変換したりすることによって抽出するようにしてもよい。
【0074】
また、補償電圧(vd_h,vq_h)は、位相(δ)の調整に代えて、振幅(電圧振幅(Vh))を変化させて調整してもよいし、位相(δ)と電圧振幅(Vh)の両方を変化させて調整してもよい。
【0075】
また、2つの高調波成分除去部(52-1,2)のうちの何れか一方を省略することも可能である。
【0076】
また、高調波成分除去部(52-1,2)では、モータ(7)の回転数、トルク、及び電力の何れかに応じて、モータ電流歪みに基づく高調波成分の除去量を変化させるようにしてもよい。
【0077】
また、本発明は、いわゆるマトリクスコンバータにも適用できる。
図8は、マトリクスコンバータの構成例を示すブロック図である。この例では、三相の交流電源(6)と接続された9個のスイッチング素子(S1,S2,…,S9)で三相交流をスイッチングしてモータ(7)に三相交流を供給する。
【0078】
また、交流電源(6)として三相の交流電源を採用することも可能である。
図9は、交流電源として三相の交流電源(6)を用いた場合の電力変換装置(1)の構成例を示すブロック図である。同図に示すように、コンバータ回路(2)は、6つのダイオード(D1〜D6)がブリッジ状に結線されたダイオードブリッジ回路である。これらのダイオード(D1〜D6)は、三相の交流電源(6)の交流電圧を全波整流して、直流電圧に変換する。このコンバータ回路(2)の構成では、直流リンク部(3)の電圧脈動の周波数が電源周波数の6倍になる。
【0079】
また、高調波成分除去部(52)は、該高調波成分除去部(52)への入力信号から所定の周波数領域の信号を除去して出力するようにしてもよい。例えばローパスフィルタを採用できる。例えば、高調波成分除去部(52-2)では、電流指令値(id’
*,iq’
*)と実電流値(id,iq)の偏差をローパスフィルタで所定の周波数領域の信号を除去したものをdq軸電流制御部(53)に出力すればよい。
【0080】
また、高調波成分除去部(52)は、該高調波成分除去部(52)への入力信号に含まれる、予め定められた周波数の信号を、低減すべき除去成分として抽出し、該入力信号から前記除去成分を減算するようにしてもよい。予め定められた周波数の信号の抽出は、例えば、該高調波成分除去部(52)への入力信号に対しフーリエ変換を行うことによって実現できる。なお、予め定められた周波数としては、モータ(7)の電圧の基本波の周波数(基本周波数位相(θ))の6n倍(nは整数)の周波数などを採用することが考えられる。
【0081】
また、前記除去成分として予め定められた周波数の信号を求めるように高調波成分除去部(52)を構成した場合には、高調波成分除去部(52)において、前記減算が行われた減算信号に含まれる高調波成分が低減するように除去成分を修正するようにしてもよい。具体的には、高調波成分除去部(52)において、前記減算が行われた減算信号から高調波成分を抽出し、抽出した高調波成分に係数を掛け、除去成分に足し込むことで除去成分を修正し、入力信号から修正された除去成分を減算する。除去成分抽出の実現方法によっては、信号に前記高調波成分が残存する場合があるが、このように除去成分を修正することで、より確実に前記高調波成分を低減することが可能になる。