(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
設置面に略平行に延在する基部と、前記基部から前記設置面に対して略垂直な第1正方向に向かって突出しておりコアによって挿通される第1貫通孔が内部に形成されている第1中空筒部と、を有するボビンと、
前記第1中空筒部に巻回される一次主巻線と、
前記設置面に略平行に延在し前記第1貫通孔に通じる第2貫通孔が形成されている上鍔部と、前記上鍔部から前記第1正方向の反対方向である第1負方向に向かって突出して内部に前記一次主巻線を収納しており、前記設置面に略平行に突出する中間鍔部によって分割される第1及び第2セクションが外周面に形成された第2中空筒部と、前記第2中空筒部における前記上鍔部とは反対側の端部に接続しており、前記設置面に略平行に延在して前記基部に対向する下鍔部と、を有するケースと、
前記第1セクションに巻回される一次補助巻線と、
前記第2セクションに巻回される二次主巻線と、を有し、
前記基部の一方の端部であって前記設置面に略平行な第2正方向の端部である第1端部には、前記一次主巻線及び前記一次補助巻線の両端部が接続される4以上の一次端子が設けられており、
前記基部の他方の端部である第2端部には、前記二次主巻線の両端部が接続される複数の二次端子が設けられていることを特徴とするトランス。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るトランス10は、コア12と、ケース50と、ボビン40とを有する。また、
図1の断面図である
図3に示すように、一次主巻線20と、一次補助巻線24及び二次主巻線30が、ケース50とボビン40に巻回されている。
【0015】
図1に示すコア12は、例えばフェライト等の軟磁性材料によって構成されており、後述する一次主巻線20、一次補助巻線24及び二次主巻線30により発生する磁束を通過させる磁路を形成する。コア12は、中脚15と、側脚16,18と第1接続部13と、第2接続部14(
図2参照)とを有する。コア12の中脚15は、設置面90に対して垂直な第1方向(図面におけるZ軸方向)に沿って延在しており、一次主巻線20、一次補助巻線24及び二次主巻線30の内周側を挿通する。側脚16,18は、中脚15と同様にZ軸方向に沿って延在しており、中脚15と略同様の長さを有する。側脚16,18は、中脚15をY軸方向の両側から挟むように配置されている。
【0016】
図1および
図2に示すように、コア12の第1接続部13は、設置面90に平行な方向であって中脚15と側脚16,18とを接続する方向である第3方向(図面におけるY軸方向)に略平行に延在し、中脚15の一方の端部と側脚16,18の一方の端部とを接続する。これに対して、コア12の第2接続部14は、
図2に示すように、第1接続部13と同様にY軸方向に略平行に延在し、中脚15の他方の端部と側脚16,18の他方の端部とを接続する。本実施形態では、中脚15と側脚16,18とを接続する接続部13,14のうち、トランス10の設置面90(
図1参照)から離間している側を第1接続部13と規定し、第1接続部13より設置面90に近接する側を第2接続部14と規定する。ただし、これとは逆に、トランス10の設置面90から離間している側を第2接続部と規定し、第2接続部より設置面90に近接する側を第1接続部と規定する態様も、本発明の実施形態に含まれる。なお、トランス10の設置面90とは、トランス10を基板に設置した際に、基板と対向するトランス10の底面を意味する。
図1に示すように、設置面90は、XY平面に平行な面である。
【0017】
コア12は、
図2に示すように、別々に成形された2つの部品である第1コア12aと第2コア12bとを、組み立てることによって形成される。第1コア12aと第2コア12bとは、対称な形状を有しており、ケース50およびボビン40を上下方向(図面のZ軸方向)から挟むようにして互いに接合される。第1コア12aおよび第2コア12bは、それぞれ縦断面(
図1においてY軸およびZ軸を含む切断面)が略E字形状を有する。
【0018】
なお、図面において、Z軸(第1方向)は、トランス10の高さ方向であり、トランス10におけるZ軸方向の高さが短くなるほど、トランスの低背化が可能となる。また、X軸とY軸は、相互に垂直であり、しかもZ軸に垂直であり、この実施形態では、Y軸が、一次端子70及び二次端子72の配列方向および中脚15と側脚16,18との接続方向(第3方向)と一致し、X軸が、ボビン40の基部42における第1端部42aと第2端部42bとを結ぶ方向(第2方向、
図3及び
図4参照)に一致する。
【0019】
図2に示すように、ボビン40は、設置面90に略平行に延在しており、略矩形平板状の基部42を有する。基部42の下方表面の一部には、トランス10の設置面90が形成されている。
【0020】
基部42の一方の端部であって、X軸正方向(第2正方向)の端部である第1端部42aには、4以上(図示する例では6つ)の一次端子70が、Y軸方向に沿って所定間隔で固定してある。また、基部42の他方の端部(X軸負方向、第2負方向)である第2端部42bには、複数(図示する例では8つ)の二次端子72がY軸方向に沿って所定間隔で固定してある。
【0021】
これらの一次端子70および二次端子72は、たとえば金属端子で構成され、合成樹脂などの絶縁材料で構成される基部42に対してインサート成形などにより一体成形される。後述するように、一次端子70には、一次主巻線20の両端部である一次巻線端部20aと、一次補助巻線24の両端部である補助巻線端部24aが接続され、二次端子72には、二次主巻線30の両端部である二次巻線端部30aが接続される(
図4参照)。このように、基部42は、巻線20,24,30に電気的に接続される端子70,72が設置される端子設置部としての役割を有する。
【0022】
基部42の略中央位置には、第1中空筒部44(
図3参照)が、基部42からZ軸正方向(第1正方向)に向かって突出している。基部42と第1中空筒部44には、これらをZ軸方向に貫通する第1貫通孔44aが形成してある。第1貫通孔44aの開口形状は、後述するケース50に形成してある第2貫通孔54aの形状とも一致する楕円形状であり、
図3に示すように、コア12(第1コア12a,第2コア12b)における中脚15(15a,15b)によって挿通される。
【0023】
図2に示すように、第1中空筒部44の外周面には、設置面90に略平行に突出する第1ボビン鍔部47と第2ボビン鍔部48が設けられている。第1ボビン鍔部47は、第1中空筒部44における下方の端部付近に設けられており、第2ボビン鍔部48は、第1中空筒部44における上方の端部に接続されている。第1ボビン鍔部47及び第2ボビン鍔部48は、一次主巻線20を上下方向(Z軸方向)に保持する機能を有する。基部42と第1中空筒部44とボビン鍔部47,48とは、射出成形などにより一体成形してあることが好ましい。
【0024】
図3に示すように、第1中空筒部44の外周には、一次主巻線20が巻回してある。したがって、第1中空筒部44は、一次主巻線20のボビン本体として機能する。
【0025】
一次主巻線20は、
図2及び
図3に示すように、第1中空筒部44の外周形状に沿った形状を有し、第1中空筒部44の外周と同様に、楕円形状を有する。一次主巻線20は、
図2及び
図3に示すように、後述するケース50の第2中空筒部54の内部に収まるようになっており、第2中空筒部54の外周に巻回されている一次補助巻線24、二次主巻線30の内周側に配置される。
【0026】
図2に示すように、基部42のY軸方向の両側面には、第2コア12bの側脚16b,18bを通過させるための凹部43が形成されている。凹部43は、第1中空筒部44とX軸方向の位置が同じになるように配置されている。また、基部42のY軸方向の両側面には、凹部43のX軸方向両側位置に、後述するケース50の係合孔59aに着脱自在に係合する係合突起49が形成されている。
【0027】
図1及び
図2に示すように、ケース50は、一次補助巻線24及び二次主巻線30(
図3等参照)を保持するとともに、トランス10の外形状の一部を規定する。ケース50は、
図2に示すように、上鍔部52と、二次主巻線30が巻回される第2中空筒部54と、下鍔部58とを有する。第2中空筒部54は、一次補助巻線24及び二次主巻線30のボビン本体として機能する。
【0028】
図1に示すように、上鍔部52は、設置面90に略平行に延在している。また、
図3に示すように、上鍔部52は、第2中空筒部54の上方の端部に接続している。
図2に示すように、上鍔部52には、ボビン40の第1貫通孔44aに通じる第2貫通孔54aが形成してあり、第2貫通孔54aには、第1コア12aの中脚15aが挿通される。
【0029】
図1に示すように、上鍔部52の上方表面には、設置面90と略平行に延在するコア搭載面53が形成されている。コア搭載面53は、
図3に示すように、第2中空筒部54における第1接続部13に近接する側の端部(第2中空筒部54の上方の端部)に接続されている。コア搭載面53は、コア12の第1接続部13に対向しており、トランス10の組み立て状態において、コア12の第1接続部13は、コア搭載面53に搭載された状態となる(
図2参照)。
【0030】
図1〜
図3に示すように、ケース50のコア搭載面53のX軸方向両側には、傾斜面61が形成されている。
図1に示すように、組み立て後のトランス10において、傾斜面61は、X軸方向にコア12の第1接続部13を挟んで、両側に配置される。
図1及び
図3に示すように、傾斜面61は、コア搭載面53から、上方(Z軸正方向)にせり上がる斜面となっている。
【0031】
傾斜面61は、コア搭載面53から斜め上方に向かって傾斜する面によって構成されており、コア12をケース50に対して固定する接着剤の接着面として機能する。
図3に示すように、コア12の第1接続部側面13aと傾斜面61の間には、接着剤硬化部82が形成される。接着剤硬化部82は、ケース50の傾斜面61とコア12の第1接続部側面13aとを接続し、コア12をケース50に対して固定する。なお、第1接続部側面13aは、第1接続部13におけるコア搭載面53と交差する方向に延在する面であり、本実施形態では、コア搭載面53に対して略垂直な方向に延在する。
【0032】
また、
図1及び
図2に示すように、ケース50のコア搭載面53のX軸方向両側には、傾斜面61に加えて、コア12の第1接続部13の位置決めを行う位置決め部60が形成されている。位置決め部60は、コア搭載面53からZ軸正方向(第1正方向)に突出している。
図1に示すように、位置決め部60は、第1接続部13を挟んで両側に形成されている。
【0033】
位置決め部60は、第1接続部13に接触するか、あるいは位置決め部60の中で最も第1接続部13に近接する部分である位置決め面60aを備える。
図1に示すように、位置決め面60aは、コア搭載面53から略垂直に立ち上がるように形成されており、第1接続部13の側面である第1接続部側面13aに対向し、第1接続部側面13aのX軸方向に関する位置決めを行うことができる。
【0034】
位置決め面60aは、Y軸方向(第3方向)に略平行な方向に沿って所定の間隔を空けて複数配置されることが好ましい。本実施形態では、コア搭載面53におけるY軸方向の両端部に2箇所、合計4箇所に配置されており、両端部に配置された位置決め面60aの間には、先述した傾斜面61が挟まれている。傾斜面61は、両端部に配置された位置決め部60を接続するように形成されており、上鍔部52及びケース50の強度を向上させる役割も有する。
【0035】
図1に示す位置決め部60、傾斜面61及び第1接続部側面13aに囲まれる領域(点線矢印Aで示す領域)には、接着剤硬化部82が形成される。
図3に示す接着剤硬化部82は、コア12の第1接続部13とケース50とを接着する接着剤が硬化したものである。接着剤硬化部82は、傾斜面61及び第1接続部側面13aに沿ってY軸方向に伸びており、接着剤硬化部82が第1接続部側面13aと傾斜面61を接続していることは、中脚15(15a,15b)を通る断面(
図3)だけでなく、中脚15と側脚16,18の間を通る断面で見ても、同様である。なお、
図1及び
図4では、ケース50の傾斜面61等の形状を表すために、接着剤硬化部82を図示していない。
【0036】
図1では図示されていないが、
図3に示すように、ケース50の第2中空筒部54は、上鍔部52からZ軸正方向の反対方向であるZ軸負方向(第1負方向)に向かって突出している。第2中空筒部54は、
図2に示す第1及び第2ボビン鍔部47,48を外周から覆うような形状を有しており、
図3に示すように、一次主巻線20および中脚15(15a,15b)を、内部に収納する。
【0037】
図2に示すように、第2中空筒部54の外周面には、設置面90に略平行に突出する第1中間鍔部55と第2中間鍔部56が設けられている。
図3に示すように、第2中空筒部54の外周面には、これらの第1中間鍔部55及び第2中間鍔部56によって分割される第1セクション63、第2セクション64及び第3セクション65が形成されている。各セクション63,64,65は、Z軸方向に沿って順番に配置されている。
【0038】
第1セクション63には、一次補助巻線24が巻回され、第2セクション64及び第3セクション65には、二次主巻線30が巻回される。第1セクション63と第2セクション64とを分割する第1中間鍔部55は、一次補助巻線24と二次主巻線30の確実な絶縁を確保する役割を有する。第2セクション64と第3セクション65とを分割する第2中間鍔部56は、二次主巻線30をZ軸方向に沿って分割配置するためのものであり、トランス10の用途等に応じて設けられる。本実施形態では、第2中空筒部54の外周面を3つのセクションに分割しているが、一次補助巻線24と二次主巻線30を別個のセクションに配置できれば、セクションの数は特に限定されない。
【0039】
図1および
図3に示すように、第2中空筒部54における上鍔部52とは反対側の端部には、設置面90に略平行に延在する下鍔部58が接続されている。下鍔部58は、矩形状の平面形状を有し、ボビン40の基部42に対向して、当該基部42の上側表面を覆うように配置される。
【0040】
下鍔部58のY軸方向の両側端部には、下方に向かって張り出す側面部59が形成されている。側面部59には、ボビン40の係合突起49と係合する係合孔59aが形成してある。ケース50とボビン40とは、側面部59の弾性変形を利用して、係合突起49を係合孔59aに係合させることにより組み立てられる。
【0041】
上鍔部52、第2中空筒部54及び下鍔部58等を有するケース50は、射出成形などにより一体成形される。
図3に示すように、第2中空筒部54の第2セクション64及び第3セクション65には、二次主巻線30が巻回されており、トランス10は、コア12の中脚15の周辺を、一次主巻線20と二次主巻線30が2重に周回する2重構造を有している。
【0042】
図2及び
図3に示すように、本実施形態の二次主巻線30は、2つの独立した巻線によって構成されるが、二次主巻線30は1つの巻線で構成されていても良く、3つ以上の巻線で構成されても良い。また、二次主巻線30及び一次補助巻線24は第2中空筒部54に接触しており、二次主巻線30及び一次補助巻線24の巻回形状及び第2中空筒部54の外周形状は、楕円形状である。
【0043】
図1に示すように、第1中間鍔部55及び第2中間鍔部56のX軸負方向(第2負方向)の先端部は、二次端子72が形成してある基部42の端部まで延ばしてあり、二次主巻線30の端部である二次巻線端部30aを二次端子72に案内するリード用溝部55a,56aが形成してある。また、ケース50の下鍔部58も、中間鍔部55,56と同様に基部42のX軸負方向の端部まで延びており二次巻線端部30aを二次端子72に案内するリード用溝部58aが形成してある。なお、本実施形態に係るトランス10は、スタンバイ機能を有する共振用の電源ICと共に使用される共振トランスであり、一次主巻線20は励磁巻線、二次主巻線30は出力巻線、一次補助巻線24は電源ICを駆動させるための巻線である。
【0044】
本実施形態に係るトランス10は、
図2に示す各部材を組み立てると共に、ボビン40およびケース50に巻き線を巻回することによって作製される。以下に、トランス10の製造方法の一例を、
図2及び
図4等を用いて説明する。トランス10の作製においては、まず、一次端子70および二次端子72を取り付けたボビン40を準備する。ボビン40の材質は特に限定されないが、ボビン40は、樹脂等の絶縁材料によって形成され、特にフェノール樹脂等を用いることが、耐熱性等の観点から好ましい。
【0045】
次に、ボビン40の第1中空筒部44に巻き線を巻回し、一次主巻線20(
図3参照)を形成する。一次主巻線20の形成に使用される巻き線としては、特に限定されないが、リッツ線等が好適に使用される。また、
図4に示すように、一次主巻線20の両端部である一次巻線端部20aは、ボビン40の連通路46(
図3参照)を通って一次端子70に絡げられて接続される。なお、一次主巻線端部20aと一次端子70とのはんだ付けは、この時点で行っても良いが、一次補助巻線24が形成された後、隣接する一次端子70と補助巻線端部24aとのはんだ付けと同時に行われることが、作業効率の面で優れている。
【0046】
次に、一次主巻線20が形成されたボビン40に対して、
図2に示すケース50を取り付ける。ケース50とボビン40とは、ケース50の係合孔59aを、ボビン40の係合突起49に係合させることによって組み立てられる。また、ケース50とボビン40とは、必要に応じて接着等により固定される。ケース50の材質も特に限定されず、樹脂等の絶縁材料によって形成されるが、PET(ポリエチレンテレフタラート)等を用いることが、弾性変形が容易である等の観点から好ましい。
【0047】
次に、ケース50の第2中空筒部54に巻き線を巻回し、一次補助巻線24及び二次主巻線30(
図3参照)を形成する。一次補助巻線24及び二次主巻線30の形成に使用される巻線としては、特に限定されないが、リッツ線等が好適に使用される。一次補助巻線24の両端部である補助巻線端部24aは、
図4に示すように、下鍔部58の上を通って、一次端子70に絡げられて接続される。
図3に示すように、本実施形態に係るトランス10では、一次補助巻線24は、下鍔部58に近い第1セクション63に配置されるため、補助巻線端部24aと一次端子70との接続が容易である。
【0048】
また、
図4に示すように、ボビン40の基部42における第1端部42aは、ケース50の下鍔部58における下鍔部端部58cより、X軸方向(第2方向)に関して第2端部42bから離間しており、トランス10の上面側から見て、第1端部42aが、下鍔部端部58cよりX軸正方向に飛び出している。したがって、トランス10の組み立てでは、ケース50をボビン40に取り付けた後に、ケース50の第2中空筒部54から一次端子70へ、容易に引き回しを行うことができる。なお、下鍔部端部58cは、下鍔部58のX軸正方向(第2正方向)の端部である。
【0049】
図3に示すように、二次主巻線30は、第2中空筒部54の第2セクション64及び第3セクション65に配置され、
図1及び
図4に示すように、二次主巻線30の両端部である二次巻線端部30aは、リード用溝部55a,56a,58aに係止させて二次端子72に巻き付けられる。一次補助巻線24及び二次主巻線30が形成された後、各巻線端部20a,24a,30aと、一次端子70又は二次端子72とのはんだ付けが行われる。
【0050】
次に、一次主巻線20、一次補助巻線24、二次主巻線30、ケース50およびボビン40が組み合わせられた中間組立品に対して、Z軸方向の上下方向からコア12の第1コア12aと第2コア12bとを取り付け、コア12を形成する。すなわち、第1コア12aおよび第2コア12bの中脚15a,15bの先端同士、側脚16a,16bの先端同士、側脚18a,18bの先端同士を接合する。なお、中脚15a,15bの先端同士の間には、ギャップを持たせても良い。コア12の第1コア12aと第2コア12bは、接着剤を用いて接着される。コア12の材質としては、金属、フェライト等の軟磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。
【0051】
次に、
図1において矢印Aで示される第1接続部側面13aと傾斜面61の間に接着剤を塗布し、
図3に示すような接着剤硬化部82を形成することにより、コア12をケース50に対して固定する。接着剤硬化部82を形成する接着剤は、特に限定されないが、シリコン系接着剤のような比較的粘性の高い接着剤を用いることが、互いに交差する方向に伸びる第1接続部側面13aと傾斜面61の接続に用いる観点から、特に好ましい。また、第1接続部側面13aと傾斜面61の上端部との間に形成される隙間は、接着剤を吐出するノズルが塗布面に適切に接近できる幅に設計される。
【0052】
最後に、外周にテープが巻かれても良く、ワニス含浸処理が施されても良い。以上のような工程により、本実施形態に係るトランス10を製造することができる。
【0053】
従来技術に係る一重構造のトランスでは、二次主巻線が、一次主巻線に対して巻軸方向にずらして配置されているため、二次主巻線の外周に絶縁テープを介して一次補助巻線を巻回し、コアに対して二次主巻線と一次補助巻線を同心状に配置しなければ、二次主巻線と一次補助巻線の間の良好な結合を確保することが困難であった。
【0054】
これに対して、本実施形態に係るトランス10は、
図3に示すように、コア12の中脚15を中心として、一次主巻線20が中脚15の外周を周回し、さらにその外周を二次主巻線30が周回する二重構造を有している。このような二重構造であれば、一次補助巻線24を二次主巻線30に対して巻軸方向(Z軸方向)にずらして配置したとしても、一次補助巻線24と二次主巻線30との良好な結合が実現される。トランス10は、この構造的な利点を利用し、二次主巻線30が配置されるセクション64,65とは第1中間鍔部55によって仕切られた別のセクション63に、一次補助巻線24を巻回することにより、二次主巻線30の外周に絶縁テープを巻いてバリアを形成する作業を不用とし、生産時の作業性を改善した。したがって、トランス10は、一次補助巻線24と二次主巻線30との良好な結合を実現しつつ、一次補助巻線24と二次主巻線30の確実な絶縁性を容易に確保することができ、生産性に優れている。また、二重構造であるトランス10は、巻軸方向の長さを短縮し、縦型でありながら薄型のトランスを実現することができる。
【0055】
また、本実施形態に係るトランス10では、ケース50の第2中空筒部54に巻回した一次補助巻線24を、一次端子70まで引き回す必要がある。そこで、トランス10では、
図4に示すように、一次端子70が設けられる第1端部42aが、ケース50の下鍔部端部58cよりX軸正方向に飛び出すように設計することにより、補助巻線端部24aを一次端子70に接続する際に、ケース50が邪魔になることを防止できる。また、このような配置とすることによって、一次端子70に補助巻線端部24a等をはんだ付けする際に、ケース50が熱によって損傷することを防止できる。
【0056】
さらに、縦型であるトランス10は、
図1及び
図3に示すように、一次主巻線20および二次主巻線30のZ軸上下方向にコア12の接続部13,14が配置され、これらの接続部13,14が上下方向への漏れ磁束を抑制する効果を奏する。したがって、トランス10は、巻線の上下方向がコアによってほとんど遮蔽されない横型に比べて、トランス10の上下方向への漏れ磁束を抑制することができる。したがって、トランス10は、アルミ製の遮蔽板等を設けなくても、周辺の構造材等における渦電流の発生を防止することができる。また、渦電流の発生を防止することにより、トランス10は、渦電流の発生に伴う熱やノイズの発生を低減することができる。また、トランス10は、漏れ磁束を遮蔽するための遮蔽板を設ける必要がないため、良好な放熱特性を有する。さらに、トランス10は、コア12の中脚15および側脚16,18の長さが短いため、外部からの衝撃等によるコア12の損傷を防止することができる。
【0057】
さらに、トランス10は、
図3に示すように、コア12の第1接続部側面13aと、ケース50の傾斜面61とを接続する接着剤硬化部82を有している。
図3に示すような接着剤硬化部82は、トランス10に発生する振動に対して高い耐久性を有し、ケース50に対してしっかりとコア12を固定することが可能であるため、トランス10は、音鳴りを抑制することができる。
【0058】
また、トランス10における接着剤硬化部82による固定構造は、コア12とケース50の対向面同士を接着する固定構造に比べて、接着剥がれや、ケース50の割れ等の損傷が発生し難く、ケース50の強度が比較的低いような場合にも好適に適用できる。さらに傾斜面61は、組み立て時に注入される接着剤を所望の接着面に誘導する効果と、接着に必要な接着剤の量を減少させる効果を奏する。
【0059】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るトランス10では、コア搭載面53の両側に、第1接続部側面13aを位置決めする位置決め面60aが形成されており、トランス10は、組立時においてケース50に対して第1コア12aを容易に位置決めすることができる。
図1に示すように、位置決め面60aは、傾斜面61を間に挟むように、コア搭載面53におけるY軸方向の両端部に配置することが、コア12の位置決め精度を向上させる観点から好ましい。また、このような配置は、接着剤硬化部82をY軸方向に沿って長く形成することを可能にし、コア12とケース50の接着強度を向上させることができる。
【0060】
さらに、接着剤硬化部82によってコア12に接続される傾斜面61を有するケース50は、二重構造のトランス10に特に好適に用いられる。なぜなら、トランス10では、ケース50とコア12の優れた固定構造により、ケース50として比較的強度の低いPET等の材料を採用することが可能であり、側面部59の弾性変形を利用した嵌め込み構造など、組立を簡易化する構造を採用できる。なお、端子70,72が設けられるボビン40とは異なり、ケース50は、ハンダ処理などのために必要な耐熱性が求められず、このような観点からも材料の選択範囲が広い。
【0061】
その他の実施形態
なお、上述の実施形態において、コア12の中脚15(15a,15b)の断面形状は楕円であるが、中脚15の断面形状は特に限定されず、円、多角形等、その他の形状であっても良い。コア12の形状も、中脚15を挟んで2つの側脚16,18を有する形状に限定されず、側脚を1つだけ有する形状であっても良い。また、一次主巻線20、一次補助巻線24及び二次主巻線30の巻回形状についても、特に限定されず、円、多角形等、その他の形状であっても良い。