(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
積層鋼板と、該積層鋼板の一部を絶縁するインシュレータと、該インシュレータに巻回されたコイルとを有する複数のコア組立体が円環状に並んで形成され、それぞれの前記コイルの一端側を互いに接続する低圧側端子を有するコアユニットと、
前記コアユニットと対向するように円環状に形成されると共に、電力供給線を保持し、前記コアユニットに取り付けられることにより、前記コイルの他端側と前記電力供給線とを接続する高圧側端子を有するバスリングと、
前記バスリングが前記コアユニットに取り付けられた状態で前記バスリングの各前記コア組立体と対向する位置にそれぞれ設けられ、前記コアユニットの前記コイルの反対側及び前記コア組立体側が開口する外周側端子収容箱と、
各前記インシュレータに配置され、前記コアユニットの前記コイルの反対側及び前記外周側端子収容箱側が開口し、該外周側端子収容箱と整列して端子収容箱を形成する内周側端子収容箱と、を備え、
前記電力供給線を介して、前記コイルに通電されることにより回転磁界を発生させる回転電機のステータであって、
各前記インシュレータには、前記コイルを挟んだ前記コアユニットの内周側及び外周側で前記内周側端子収容箱の底部を支持する内周側突出部及び外周側突出部が突設され、
前記内周側端子収容箱には、内周側被係合部が形成されており、前記内周側突出部には、前記内周側端子収容箱が初期装架位置から装着位置まで前記コアユニットの半径方向に回動する間は前記内周側端子収容箱の回動中心となることができ、前記装着位置では前記内周側端子収容箱の前記半径方向の相対移動を許容するように前記内周側被係合部と係合する内周側係合部が形成され、
前記内周側端子収容箱には、外周側被係合部が形成されており、前記外周側突出部には、前記内周側端子収容箱の回動に連れて前記外周側被係合部と係合することにより前記内周側端子収容箱を前記外周側端子収容箱に向かって前記半径方向に移動させる外周側係合部が形成されている回転電機のステータ。
前記内周側端子収容箱の前記内周側被係合部は、該内周側端子収容箱の前記底部から前記コイル側に突設された突出壁と、該突出壁から前記半径方向の前記内周側に突設された係合突部とを有し、
前記内周側突出部の前記内周側係合部は、前記係合突部が係入可能に形成されると共に、前記内周側端子収容箱の前記内周側突出部に対する前記内周側への移動を拘束しかつ前記外周側への移動を許容して、前記内周側端子収容箱を前記半径方向に回動可能に支持する係合受け部を有する請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の回転電機のステータ。
前記係合突部は、前記内周側端子収容箱の前記底部から離間した突起状を呈し、前記係合受け部は、前記内周側突出部に貫設され前記係合突部が遊嵌する係合穴である請求項4に記載の回転電機のステータ。
前記外周側突出部は、前記内周側端子収容箱の前記装着位置において、該内周側端子収容箱が前記初期装架位置に向けて前記半径方向に回動しないように保持する保持部を有する請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の回転電機のステータ。
前記装着位置に回動され前記外周側被係合部と前記外周側係合部とが係合することにより前記外周側端子収容箱に接近された前記内周側端子収容箱と、前記外周側端子収容箱と、で形成される各前記端子収容箱には、前記コイルの一端側と前記低圧側端子との接続部及び前記コイルの他端側と前記高圧側端子との接続部のうちの少なくとも一方が収容された状態で、絶縁用樹脂材料が入れられる請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の回転電機のステータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に開示されているステータ1Zにおいては、樹脂箱43Zを上方から下方に回動させることによって、樹脂箱43Zがインシュレータ41Zに装着される。このような樹脂箱43Zの装着方法においては、内周側端子収容箱431Zの延設底部436Zと、外周側端子収容箱511の底部521との間に適度な隙間を設ける必要がある。この隙間が狭い場合には、部材同士の干渉によって、樹脂箱43Zの装着に手間がかかる虞がある。また、この隙間が広い場合には、この隙間から絶縁樹脂材料が流出する虞がある。
【0010】
また、特許文献2に開示されているステータ1Zにおいては、一対のワイヤ係止部414Z間にコイル42の高圧側端部422が架設された状態で、樹脂箱43Zがインシュレータ41Zに装着される。したがって、内周側端子収容箱431Zの延設底部436Zと高圧側端部422との接触を避けながら、樹脂箱43Zを上方から下方に回動させる必要があり、樹脂箱43Zの装着に手間がかかっていた。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、複数のコア組立体が円環状に並んで形成されたコアユニットの外周側にバスリングが取り付けられたときに、バスリングに設けられた複数の外周側端子収容箱と、各コア組立体の各インシュレータに配置された各内周側端子収容箱とが一対で整列することによって一面が開口した器状を呈する複数の端子収容箱が形成される回転電機のステータにおいて、インシュレータへの内周側端子収容箱の取り付けが容易であると共に、内部に入れられる絶縁樹脂材料が流出することがない端子収容箱を形成することが可能な回転電機のステータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る回転電機のステータの発明の構成上の特徴は、積層鋼板と、該積層鋼板の一部を絶縁するインシュレータと、該インシュレータに巻回されたコイルとを有する複数のコア組立体が円環状に並んで形成され、それぞれの前記コイルの一端側を互いに接続する低圧側端子を有するコアユニットと、前記コアユニットと対向するように円環状に形成されると共に、電力供給線を保持し、前記コアユニットに取り付けられることにより、前記コイルの他端側と前記電力供給線とを接続する高圧側端子を有するバスリングと、前記バスリングが前記コアユニットに取り付けられた状態で前記バスリングの各前記コア組立体と対向する位置にそれぞれ設けられ、前記コアユニットの前記コイルの反対側及び前記コア組立体側が開口する外周側端子収容箱と、各前記インシュレータに配置され、前記コアユニットの前記コイルの反対側及び前記外周側端子収容箱側が開口し、該外周側端子収容箱と整列して端子収容箱を形成する内周側端子収容箱と、を備え、前記電力供給線を介して、前記コイルに通電されることにより回転磁界を発生させる回転電機のステータであって、
各前記インシュレータには、前記コイルを挟んだ前記コアユニットの内周側及び外周側で前記内周側端子収容箱の底部を支持する内周側突出部及び外周側突出部が突設され、前記内周側端子収容箱には、内周側被係合部が形成されており、前記内周側突出部には、前記内周側端子収容箱が初期装架位置から装着位置まで前記コアユニットの半径方向に回動する間は前記内周側端子収容箱の回動中心となることができ、前記装着位置では前記内周側端子収容箱の前記半径方向の相対移動を許容するように前記内周側被係合部と係合する内周側係合部が形成され、前記内周側端子収容箱には、外周側被係合部が形成されており、前記外周側突出部には、前記内周側端子収容箱の回動に連れて前記外周側被係合部と係合することにより前記内周側端子収容箱を前記外周側端子収容箱に向かって前記半径方向に移動させる外周側係合部が形成されていることである。
【0013】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に係る回転電機のステータにおいて、前記内周側端子収容箱の前記外周側被係合部及び前記外周側突出部の前記外周側係合部のうちの少なくとも一方には、
前記コアユニットの半径方向外方外周側の下方から半径方向内方内周側の上方に向けて傾斜する傾斜面が形成され、他方には、前記内周側端子収容箱の前記装着位置への回動に連れて前記傾斜面と摺接した後に係合する係合面が形成されていることである。
【0014】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2に係る回転電機のステータにおいて、前記内周側端子収容箱の前記底部は、前記外周側に突設されると共に前記外周側被係合部が形成される延設底部を有し、前記外周側突出部は、前記延設底部と当接して前記内周側端子収容箱を前記装着位置で支持すると共に前記外周側係合部が形成される支持部を有することである。
【0015】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に係る回転電機のステータにおいて、前記内周側端子収容箱の前記内周側被係合部は、該内周側端子収容箱の前記底部から前記コイル側に突設された突出壁と、該突出壁から前記半径方向の前記内周側に突設された係合突部とを有し、前記内周側突出部の前記内周側係合部は、前記係合突部が係入可能に形成されると共に、前記内周側端子収容箱の前記内周側突出部に対する前記内周側への移動を拘束しかつ前記外周側への移動を許容して、前記内周側端子収容箱を前記半径方向に回動可能に支持する係合受け部を有することである。
【0016】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項4に係る回転電機のステータにおいて、前記係合突部は、前記内周側端子収容箱の前記底部から離間した突起状を呈し、前記係合受け部は、前記内周側突出部に貫設され前記係合突部が遊嵌する係合穴であることである。
【0017】
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に係る回転電機のステータにおいて、前記外周側突出部は、前記内周側端子収容箱の前記装着位置において、該内周側端子収容箱が前記初期装架位置に向けて前記半径方向に回動しないように保持する保持部を有することである。
【0018】
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜6のうちのいずれか一項に係る回転電機のステータにおいて、前記装着位置に回動され前記外周側被係合部と前記外周側係合部とが係合することにより前記外周側端子収容箱に接近された前記内周側端子収容箱と、前記外周側端子収容箱と、で形成される各前記端子収容箱には、前記コイルの一端側と前記低圧側端子との接続部及び前記コイルの他端側と前記高圧側端子との接続部のうちの少なくとも一方が収容された状態で、絶縁用樹脂材料が入れられることである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る回転電機のステータによれば、内周側端子収容箱の内周側被係合部をインシュレータの内周側係合部に係合させることにより内周側端子収容箱の内周側の位置決めが行われた状態で、内周側端子収容箱を初期装架位置から装着位置まで回動させると、内周側端子収容箱の回動に連れて、内周側端子収容箱の外周側被係合部とインシュレータの外周側係合部とが係合して、内周側端子収容箱が外周側端子収容箱に向かって半径方向に移動する。これにより、内周側端子収容箱の装着位置においては、内周側端子収容箱と外周側端子収容箱とを接近させることができる。
【0020】
このような本発明によれば、例えば、装着位置に回動され外周側被係合部と外周側係合部とが係合することにより外周側端子収容箱に接近された内周側端子収容箱と、外周側端子収容箱と、で形成される各端子収容箱に、絶縁用樹脂材料が入れられる(例えば充填される)場合、内周側端子収容箱が装着位置まで回動する直前までは、内周側端子収容箱と外周側端子収容箱との間に絶縁樹脂材料が流出する程度の隙間があったとしても、内周側端子収容箱が装着位置まで回動することによって、内周側端子収容箱が外周側端子収容箱に向かって半径方向に移動して、この隙間を狭くすることができる。したがって、内周側端子収容箱をインシュレータに取り付ける際に、内周側端子収容箱と外周側端子収容箱との接触に配慮する必要がなく、インシュレータへの内周側端子収容箱の取り付けが容易である。また、内周側端子収容箱をインシュレータに装着した状態においては、内周側端子収容箱と外周側端子収容箱とが接近するため、端子収容箱に絶縁樹脂材料が入れられる場合であっても、絶縁樹脂材料が端子収容箱の底部等から流出することがない。
【0021】
また、特許文献2に開示されているステータ1Zのように、一対のワイヤ係止部414Z間にコイル42の高圧側端部422が架設された状態で、内周側端子収容箱431Zをインシュレータ41Zに取り付けるような場合であっても、内周側端子収容箱の底部と高圧側端部との接触に配慮することなく、内周側端子収容箱を初期装架位置から装着位置まで回動させることが可能な構成とすることができる。すなわち、内周側端子収容箱の底部と外周側端子収容箱の底部との境界線付近の内周側端子収容箱側に境界線と平行にコイルの一端側又は他端側が架設されている場合であっても、内周側端子収容箱をインシュレータに容易に取り付けることが可能な構成とすることができる。
【0022】
請求項2に係る回転電機のステータによれば、内周側端子収容箱の外周側被係合部及びインシュレータの外周側突出部の外周側係合部のうちの少なくとも一方に形成された傾斜面と、他方に形成された係合面とが内周側端子収容箱の装着位置への回動に連れて互いに摺接した後に係合する。そして、この傾斜面が
コアユニットの半径方向外方外周側の下方から半径方向内方内周側の上方に向けて傾斜している。これにより、内周側端子収容箱が装着位置に向かって回動することにより内周側端子収容箱の外周側被係合部がコイルに近づいていくときに、外周側被係合部は、傾斜面の傾斜方向に誘導されて、コイルに接近する側かつコアユニットの外周側に移動する。よって、本発明によれば、内周側端子収容箱の回動に連れて、内周側端子収容箱を外周側端子収容箱に向かって半径方向に移動させる構成が簡素である。
【0023】
請求項3に係る回転電機のステータによれば、内周側端子収容箱に形成された延設底部には、外周側被係合部が形成されており、インシュレータの外周側突出部に形成された支持部には、外周側係合部が形成されている。そして、延設底部に支持部が当接することによって、内周側端子収容箱が装着位置で支持される。よって、延設底部及び支持部という二つの部位により、外周側被係合部と外周側係合部との係合、及び内周側端子収容箱の底部の外周側を支持することができるため、構成が簡素である。
【0024】
請求項4に係る回転電機のステータによれば、内周側端子収容箱に形成された突出壁からコアユニットの半径方向の内周側に突設された係合突部が、インシュレータの内周側突出部の内周側係合部に形成された係合受け部に係入されている。これにより、係合突部は係合受け部によって、コアユニットの半径方向への動きのみが許容されている。ここで、例えば、係合受け部に係合突部の基端側又は突出壁が係入不能な形状となっていれば、内周側端子収容箱の内周側突出部に対する内周側への移動が拘束されかつ外周側への移動が許容される。また、例えば、内周側端子収容箱の内周側突出部に対する内周側への移動が拘束された状態において、係合突部が係合受け部内を半径方向に回動することが可能な係入状態であれば、内周側端子収容箱を半径方向に回動可能な状態とすることができる。よって、本発明によれば、内周側被係合部及び内周側係合部の構成が簡素である。
【0025】
請求項5に係る回転電機のステータによれば、上述した係合突部が内周側端子収容箱の底部から離間した突起状を呈しており、突起状の係合突部が内周側突出部に貫設された係合穴に遊嵌されている。これにより、係合突部は、コアユニットの中心軸方向への動きが規制されている。よって、本発明によれば、内周側端子収容箱がインシュレータの内周側突出部から外れることがないため、内周側端子収容箱の取り付け作業性が良好であると共に、内周側端子収容箱を装着位置に確実に保持することができる。
【0026】
請求項6に係る回転電機のステータによれば、内周側端子収容箱の装着位置において、インシュレータの外周側突出部に形成された保持部によって、内周側端子収容箱が半径方向に回動不能に保持される。よって、本発明によれば、内周側端子収容箱がインシュレータの外周側突出部から外れることがないため、内周側端子収容箱を装着位置に確実に保持することができる。
【0027】
請求項7に係る回転電機のステータによれば、各端子収容箱には、コイルの一端側と低圧側端子との接続部及びコイルの他端側と高圧側端子との接続部のうちの少なくとも一方が収容された状態で、絶縁用樹脂材料が入れられる(例えば充填される)。ここで、請求項1に係る発明の効果で述べたように、内周側端子収容箱の装着位置においては、絶縁樹脂材料が端子収容箱の底部等から流出することがない。したがって、本発明によれば、各前記接続部を絶縁樹脂材料により確実に被覆することが可能であり、各接続部を確実に絶縁することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第一実施形態>
図1乃至
図8に基づき、本発明の第一実施形態による回転電機のステータ(以下、ステータという)1について説明する。尚、説明中において、
図2中に示している上方及び下方を分割コア4の上方及び下方とするが、実際のステータ1におけるその向きとは無関係である。また、説明中において、
図7における上下方向をバスリング5の上下方向とするが、実際のステータ1におけるその向きとは無関係である。これらの上下方向は、後述するコアユニット3の中心軸方向と一致している。また、説明中において、円周方向、外周側(又は半径方向外方)、内周側(又は半径方向内方)とは、
図2中に示している分割コア4が円環状に配置される中心軸(コアユニット3の中心軸)を基準とした円周方向、外周側(又は半径方向外方)、内周側(又は半径方向内方)のことである。
【0030】
図1は、ステータ1の平面図を示している。ステータハウジング2の内周面には、複数(本実施形態においては30個)の分割コア4(コア組立体)が、均等な位置に保持されている。それぞれコイル42が巻回された分割コア4は、ステータハウジング2内に連続して円環状に並ぶことにより、コアユニット3を形成している。コアユニット3とバスリング5とにより複数の端子収容箱6が形成され、それぞれの端子収容箱6には絶縁用樹脂材料7が充填されている。ただし、
図2以降の各図においては、絶縁用樹脂材料7の充填前の状況を示している。
【0031】
尚、
図1において、コアユニット3の内周側(半径方向内方)に対向するように、ローター100が1点鎖線にて示されている。このローター100は、ステータ1の構成要素ではない。外部端子55u、55v、55wから供給された電力を分割コア4に通電してコアユニット3に回転磁界を発生させることにより、ローター100はステータ1に対して回転する。
【0032】
図2は、分割コア4の斜視図を示している。
図3は、分割コア4に後述する樹脂箱43を取り付けている状況を説明する斜視図を示している。分割コア4は、積層鋼板40を内部に含んだインシュレータ41を有している。インシュレータ41は合成樹脂材料により形成されており、内部の積層鋼板40を絶縁している。分割コア4がステータハウジング2に保持されたときに、内周端に位置するインシュレータ41の部位には、四方に突出した内周側フランジ411(内周側突出部)が形成されている。内周側フランジ411の上部には、一対の係合穴412(係合受け部、内周側係合部)が形成されている。各係合穴412は、内周側フランジ411を貫通しており、分割コア4がステータハウジング2に保持されたときの円周方向に、互いに所定距離だけ離れた位置に形成されている。
【0033】
また、分割コア4がステータハウジング2に保持されたときに、外周端に位置するインシュレータ41の部位には、内周側フランジ411に対して外周側(半径方向外方)に対向するように、四方に突出した外周側フランジ413(外周側突出部)が形成されている。外周側フランジ413の上端部には、上方へと延びた一対のワイヤ係止部414が、円周方向に互いに所定距離だけ離れた位置に設けられている。それぞれのワイヤ係止部414の上端部には、円周方向に延びた保持スリット414aが形成されている。また、外周側フランジ413の上端には、一方のワイヤ係止部414の側方に位置するように、フック部416が形成されている。フック部416は、分割コア4の円周方向外方に開口した上下逆向きの略L字状を呈している。
【0034】
また、
図3に示すように、外周側フランジ413の上端部の両ワイヤ係止部414間には、後述する樹脂箱43の外周側を下方から支持する支持部415(外周側係合部)が形成されている。支持部415の上端には、外周側の下方から内周側の上方に向けて傾斜する(コイル42から離間するにつれて内周側に傾斜する)傾斜面415aが面を上方に向けて形成されている。
【0035】
さらに、分割コア4がステータハウジング2に保持されたときに、外周端に位置するインシュレータ41の部位には、上方に突出した一対のリテーナ417が形成されている。リテーナ417は、円周方向に互いに所定距離だけ離れた位置に設けられており、ともに後述する樹脂箱43に対して、ステータ1の半径方向に対向している。ステータ1の半径方向において、リテーナ417と外周側フランジ413との間には、バスリング挿入部418が形成されている。
【0036】
内周側フランジ411と外周側フランジ413との間には、エナメル線等により形成されたコイル42が巻回されている。巻回されたコイル42の高圧側端部422(コイル42の他端側)は、フック部416に係合した後、反転して双方のワイヤ係止部414の保持スリット414a内に挿入され、ワイヤ係止部414間に架設されている。
【0037】
樹脂箱43は、これに限られるものではないが、芳香族ナイロンまたはポリフェニレンサルファイド樹脂により一体に形成されており、概ね容器形状を呈している。樹脂箱43は、上方(コイル42の反対側)及び外周側(後述する外周側端子収容箱511側)が開口した内周側端子収容箱431を有しており、内周側端子収容箱431により端子収容箱6の内周側の収容空間が形成されている。
図5に示すように、内周側端子収容箱431の平面視は、ほぼコの字状を呈している。内周側端子収容箱431内に形成される収容空間は、底部435と、底部435の内周側の端部から上方に立設した内周側壁432と、底部435の円周方向の端部から上方に立設した一対の側壁433、434との四面により囲まれたステータ1の半径方向に長い略直方体状を呈している。樹脂箱43は、インシュレータ41の上部に脱着可能に形成されている。
【0038】
各側壁433、434の外周側の端部には、側壁433、434間の幅が拡大するように、段付部433a、434aが形成されている。また、各側壁433、434の半径方向の中間部には、上方に開口するワイヤ保持溝433b、434bが形成されている。また、双方の側壁433、434の内周側の端部からは、円周方向外方に向けて端子装着部437がそれぞれ延びている。各端子装着部437は、互いに平行に上下方向に延びる一対の挟持壁437aにより形成されている。対向する挟持壁437a間には、後述する中性点端子44が挿入可能なように、側壁433、434を貫通する間隙が形成されている。
【0039】
さらに、双方の側壁433、434の内周側には、底部435の下端から互いに平行に下方に延びる一対の突出壁438(内周側被係合部)が形成されている(
図3及び8示)。各突出壁438の下端には、突出壁438と同一の壁厚からなると共に半径方向の内周側に突出した係合突起438a(係合突部)が形成されている。各係合突起438aは、底部435から離間した突起状を呈している。また、双方の側壁433、434の内周側の端部には、底部435の下端から下方に突出した一対の脚部439が形成されている(
図8示)。
【0040】
また、底部435は、
図2に示すように、樹脂箱43がインシュレータ41の上部に装着された状態において、分割コア4とバスリング5との境界線付近(ワイヤ係止部414の外周側の端部付近)まで外周側に突設された延設底部436(外周側被係合部)を有している。延設底部436の円周方向の幅は、インシュレータ41の一対のワイヤ係止部414間の隙間よりも僅かに狭く、延設底部436を一対のワイヤ係止部414間に挿入可能とされている。延設底部436の外周側の端部には、下方に突出した突起部436aが形成されている。突起部436aの下端には、外周側の下方から内周側の上方に向けて傾斜する傾斜面436bが面を下方に向けて形成されている(
図8示)。
【0041】
図2に示すように、樹脂箱43が、コイル42が巻回されたインシュレータ41の上部に取り付けられて分割コア4が完成する。
図8に基づいて、樹脂箱43をインシュレータ41に取り付ける方法(内周側端子収容箱431をインシュレータ41に取り付ける方法)について説明する。
図8(a)は、樹脂箱43が初期装架位置から下方に回動し始めた状況を示している。
図8(a)に示すように、樹脂箱43を傾けた状態で、樹脂箱43の一対の係合突起438aを、インシュレータ41の内周側フランジ411に形成された一対の係合穴412に内周側から外周側に向かって深く遊嵌する。
【0042】
このとき、樹脂箱43に形成された一対の突出壁438の内周側の端部が一対の係合穴412の外周側の縁部に当接することにより樹脂箱43の内周側フランジ411に対する内周側への移動が拘束されかつ外周側への移動が許容される。また、樹脂箱43に形成された一対の脚部439の下端が内周側フランジ411の上端に下方から支持されている。このように樹脂箱43の内周側の位置決めが行われた状態で、
図8(a)中に矢印で示すように、係合穴412付近を回動中心として、樹脂箱43を上方の初期装架位置から下方の装着位置まで半径方向に回動させることができる。
図8(a)に示すように、樹脂箱43を初期装架位置から装着位置まで回動させている最中に、樹脂箱43の延設底部436がワイヤ係止部414間に架設された高圧側端部422に接触することはない。
【0043】
図8(b)は、樹脂箱43が外周側に誘導されている状況を示している。樹脂箱43が下方に回動すると、
図8(b)に示すように、外周側フランジ413の支持部415に形成された傾斜面415aと、樹脂箱43の延設底部436の突起部436aに形成された傾斜面436bとが当接し始める。そして、樹脂箱43の下方への回動に連れて、傾斜面415aと傾斜面436bとが互いに摺接した後に係合する。これにより、
図8(b)中に矢印で示すように、樹脂箱43が半径方向の外周側に誘導される。
【0044】
図8(c)は、樹脂箱43のインシュレータ41への取り付けが完了した状況を示している。
図2及び
図8(c)に示すように、樹脂箱43が装着位置に装着されたときには、樹脂箱43の外周側においては、傾斜面415aと傾斜面436bとが完全に係合している。また、延設底部436が支持部415により下方から支持されている。また、延設底部436の外周側の端部が分割コア4とバスリング5との境界線付近に接近している。また、側壁433、434の段付部433a、434aが、各ワイヤ係止部414に対して円周方向外方から係合している。一方、樹脂箱43の内周側においては、一対の脚部439が内周側フランジ411の上端に下方から支持されている。また、一対の係合突起438aが係合穴412に浅く遊嵌している。
【0045】
樹脂箱43のインシュレータ41への取り付けが完了した後、
図2及び5に示すように、コイル42の低圧側端部421(コイル42の一端側)を、側壁433のワイヤ保持溝433bに挿入した後、側壁434のワイヤ保持溝434bに係合させる。これにより、低圧側端部421は、側壁433、434間に架設される。その後、
図1に示したように、すべての分割コア4を、ステータハウジング2の内周面に円環状に並ぶように取り付ける。
図4は、
図1に示したステータ1の外部端子55u、55v、55wの周辺を外周側の上方から見た部分斜視図を示している。
図5は、ステータ1の中心軸を挟んで
図4に示した位置と反対側の位置を上方から見た部分平面図を示している。
【0046】
図4及び5に示すように、分割コア4を円環状に並べて形成されたコアユニット3の各樹脂箱43に、中性点端子44(低圧側端子)を装着する。中性点端子44は、導電性を有する金属により形成されている。中性点端子44は、その平面視において、長手方向の中央に位置する中央突部441を中心に対称形状を呈している。中央突部441は、樹脂箱43に取り付けた状態で外周側に突出しており、中央突部441の円周方向の中央には中央接続片442が形成されている。また、中央突部441の両端部には直線状の挿入部443が接続され、各挿入部443には、外周側に突出した端縁部444が形成されている。それぞれの端縁部444の端部には、端部接続片445が形成されている。
【0047】
中性点端子44は、各挿入部443を、樹脂箱43の挟持壁437a間に挿入することにより、隣り合った3個の樹脂箱43に渡って取り付けられる。これにより、中央接続片442及び一対の端部接続片445が、連続して並んだ3個の分割コア4の樹脂箱43内にそれぞれ配置される。中央接続片442及び端部接続片445は、側壁433、434間に架設されたコイル42の低圧側端部421に対して、ヒュージング、かしめ、溶接等により固着され、各コイル42の低圧側端部421を互いに接続する。すべての中性点端子44は、図示しないインバーターの低圧側と接続される。
【0048】
図6は、バスリング5の平面図を示している。
図7は、バスリング5を内周側の上方から見た部分斜視図を示している。ただし、
図6及び7においては、バスリング5の後述する30個の電力供給端子54のうちの1個を取り付ける前の状況を示している。
図6に示すように、バスリング5は、コアユニット3の外周側においてコアユニット3と対向するように、円環状に形成されている。バスリング5は、ともに合成樹脂材料により環状に形成されたアウタクリップ51とインナクリップ52とを備えており、これらは半径方向に互いに嵌合している。アウタクリップ51及びインナクリップ52は、それぞれ複数のセグメントに分割されたものを接続して形成してもよい。
【0049】
図1、4及び6に示すように、アウタクリップ51の3か所からは、それぞれインバーターの高圧側の各相と接続される外部端子55u、55v、55wが延出している。外部端子55u、55v、55wは、後述する各相の電力供給端子54(高圧側端子)と接続されているが、電力供給端子54と一体に形成されていてもよい。
【0050】
バスリング5は、各相のセグメントワイヤ53u、53v、53w(いずれも電力供給線)を、それぞれ複数個備えている。各セグメントワイヤ53u、53v、53wは、例えばエナメル線により円弧状に形成されている。また、バスリング5は、導電性を有する金属により形成され、セグメントワイヤ53u、53v、53wにかしめられた電力供給端子54を有している(
図7示)。
【0051】
アウタクリップ51の内周面には、内周側に突出した上下方向に一対の環状のリブ(図示せず)が形成されており、インナクリップ51の内周面には、外周側に突出した上下方向に一対の環状のリブ(図示せず)が形成されている。アウタクリップ51とインナクリップ52とが嵌合すると、これら6個のリブによりバスリング5内が上下方向に3分割される。この3分割されたバスリング5内の各空間には、セグメントワイヤ53u、53v、53wが、異相のもの同士が接触しないように、各空間に1相ずつ保持されている。
【0052】
同相のセグメントワイヤ53u、53v、53wの上方へ延びた端部同士は、電力供給端子54によりかしめられて接合されている。電力供給端子54は、セグメントワイヤ53u、53v、53wの端部にかしめられたかしめ部541と、かしめ部541からバスリング5の内周側へと延びたコイル係合部542とを有している。コイル係合部542の先端は、上方へと延びた後に下降することにより、概ね逆U字状に形成されている(
図7示)。
【0053】
図5及び7に示すように、アウタクリップ51の上面には、複数(本実施形態においては30個)の外周側端子収容箱511が、アウタクリップ51の上面の円周方向に均等間隔に設けられている。外周側端子収容箱511は、上方(コイル42の反対側)及び内周側(内周側端子収容箱431側)が開口した器状を呈しており、外周側端子収容箱511により端子収容箱6の外周側の収容空間が形成されている。外周側端子収容箱511は、外周側に位置する外周側壁512と、外周側壁512の両縁部から内周側へと延びる一対の側壁513と、外周側端子収容箱511の底部となる後述するアウタクリップ51の保持片514及びインナクリップ52の保持フランジ521とにより形成されている。双方の側壁513の端部は開放されており、外周側端子収容箱511の平面視は台形状を呈している(
図5示)。
【0054】
外周側壁512の下方には、上述した外部端子55u、55v、55wが外周側に引き出される端子孔512aが形成されている(
図7示)。また、
図5及び7に示すように、外周側壁512の内周面の端子孔512aの下方には、内周側に突出する保持片514が形成されている。保持片514は、平面視で台形状を呈しており、保持片514の内周側の端部でセグメントワイヤ53u、53v、53wの端部を保持する。
【0055】
図5及び7に示すように、インナクリップ52の上端には、外周側に突出する複数の保持フランジ521が円周方向に均等間隔に形成されている。保持フランジ521は、平面視で上述した外周側端子収容箱511の内周面に嵌合する台形状を呈している。保持フランジ521の外周側には、上述した保持片514が嵌合する台形状の切欠き521aが形成されており、切欠き521aの最奥部でセグメントワイヤ53u、53v、53wの端部を保持する。また、保持フランジ521上には、一対の保持突起521bが形成されている。電力供給端子54のコイル係合部542は、保持突起521b間に嵌合保持される。
【0056】
アウタクリップ51とインナクリップ52とが嵌合することにより複数の外周側端子収容箱511が形成され、
図7に示すように、セグメントワイヤ53u、53v、53wにかしめられた各電力供給端子54が各外周側端子収容箱511に取り囲まれる。セグメントワイヤ53u、53v、53wの端部のうち同相のものは、アウタクリップ51の上面の円周方向において、2個おきに外周側端子収容箱511内に突出することになる。また、保持片514が切欠き521aに嵌合することによって、保持片514の内周側の端部と切欠き521aの最奥部との間に隙間が形成され、この隙間にセグメントワイヤ53u、53v、53wの端部が挟持される。
【0057】
図4に示すように、バスリング5を、ステータハウジング2に保持されたコアユニット3に取り付けるために、コアユニット3に対して上方から対向させる。そして、バスリング5を各分割コア4のバスリング挿入部418内に挿入する。これにより、バスリング5の外周側端子収容箱511の外周側壁512が、円周方向において一対のリテーナ417間に配置されるように位置決めされる。このとき、外周側端子収容箱511の側壁512bの内周側の端部が、分割コア4のワイヤ係止部414を挟んで、樹脂箱43の側壁433、434の外周側の端部と外周側から対向する。
【0058】
このように、各外周側端子収容箱511と各内周側端子収容箱431Zとが、円周方向に整列して、ワイヤ係止部414を挟んで半径方向に互いに対向することによって、上方が開口した所定の容積を有する器状を呈する端子収容箱6が、分割コア4ごとに独立して形成される。端子収容箱6内において、電力供給端子54のコイル係合部542は、ワイヤ係止部414間に架設されたコイル42の高圧側端部422に係合された後、ヒュージング、かしめ、溶接等により固着される。
【0059】
コイル42の低圧側端部421と中性点端子44との接続部、及びコイル42の高圧側端部422と電力供給端子54との接続部を端子収容箱6内に収容した状態で、端子収容箱6内にポッティング材としての絶縁用樹脂材料7を充填する(
図1示)。絶縁用樹脂材料7の充填時に、内周側端子収容箱431、外周側端子収容箱511、及びワイヤ係止部414間に少々の隙間があっても、絶縁用樹脂材料7が所定の粘性を有するため、端子収容箱6外に絶縁用樹脂材料7が流出することはない。充填された絶縁用樹脂材料7が硬化することにより、インシュレータ41、樹脂箱43及びバスリング5が固着して、ステータ1が完成する。
【0060】
ステータ1において、外部端子55u、55v、55wから、セグメントワイヤ53u、53v、53wを介して各相のコイル42に電力を加えることにより、回転磁界を発生させることができる。
【0061】
本実施形態によれば、内周側端子収容箱431を有する樹脂箱43をインシュレータ41の上部に装着するときには、まず、内周側端子収容箱431と一体に形成された一対の係合突起438aを、インシュレータ41の内周側フランジ411に形成された一対の係合穴412に遊嵌させることにより内周側端子収容箱431の内周側の位置決めが行われる。そして、内周側端子収容箱431を初期装架位置から装着位置まで回動させると、内周側端子収容箱431の回動に連れて、外周側フランジ413の支持部415に形成された傾斜面415aと、内周側端子収容箱431の延設底部436の突起部436aに形成された傾斜面436bとが互いに摺接した後に係合する。これにより、内周側端子収容箱431を有する樹脂箱43が半径方向の外周側に誘導されて、内周側端子収容箱431の装着位置においては、内周側端子収容箱431と外周側端子収容箱511とを接近させることができる。
【0062】
したがって、内周側端子収容箱431が装着位置まで回動する直前までは、内周側端子収容箱431と外周側端子収容箱511との間に絶縁樹脂材料7が流出する程度の隙間があったとしても、内周側端子収容箱431が装着位置まで回動することによって、内周側端子収容箱431が外周側端子収容箱511に向かって半径方向に移動して、この隙間を狭くすることができる。したがって、内周側端子収容箱431をインシュレータ41に取り付ける際に、内周側端子収容箱431と外周側端子収容箱511との接触に配慮する必要がなく、インシュレータ41への内周側端子収容箱431の取り付けが容易である。また、内周側端子収容箱431をインシュレータ41に装着した状態においては、内周側端子収容箱431と外周側端子収容箱511とが接近するため、端子収容箱6に充填される絶縁樹脂材料7が端子収容箱6の底部等から流出することがない。
【0063】
また、外周側フランジ413に形成された傾斜面415a、及び内周側端子収容箱431に形成された傾斜面436bを、外周側の下方から内周側の上方に向けて傾斜させることによって、内周側端子収容箱431の回動に連れて、内周側端子収容箱431を半径方向に移動させることができるため、構成が簡素である。また、内周側端子収容箱431の延設底部436及び外周側フランジ413の支持部415という二つの部位により、傾斜面415aと傾斜面436bとの係合、及び内周側端子収容箱431の底部435の外周側を支持することができるため、構成が簡素である。
【0064】
また、内周側端子収容箱431に形成された係合突起438aを、インシュレータ41の内周側フランジ411に形成された係合穴412に遊嵌させることによって、内周側端子収容箱431の内周側フランジ411に対する内周側への移動を拘束しかつ外周側への移動を許容して、内周側端子収容箱431を半径方向に回動可能に支持することができるため、構成が簡素である。また、内周側端子収容箱431をインシュレータ41に装着した状態においても、係合突起438aが係合穴412に浅く遊嵌しており、内周側端子収容箱431がインシュレータ41の内周側フランジ411から外れることがないため、内周側端子収容箱431の取り付け作業性が良好であると共に、内周側端子収容箱431を装着位置に確実に保持することができる。
【0065】
さらに、本実施形態においては、一対のワイヤ係止部414間にコイル42の高圧側端部422が架設された状態で、内周側端子収容箱431をインシュレータ41に取り付けているが、内周側端子収容箱431を初期装架位置から装着位置まで回動させている最中に、内周側端子収容箱431の延設底部436がワイヤ係止部414間に架設された高圧側端部422に接触することはない。したがって、内周側端子収容箱431と高圧側端部422との接触に配慮する必要がなく、インシュレータ41への内周側端子収容箱431の取り付けが容易である。
【0066】
<第二実施形態>
本実施形態は、第一実施形態のステータ1における分割コア4を、分割コア4B(コア組立体)に変更した実施形態である。これ以外の構成部材等については、第一実施形態と同一であるため説明を省略する。また、分割コア4Bを構成する各部材において、第一実施形態のステータ1における分割コア4と同一の部材については、第一実施形態と同一の符号を付けている。したがって、本実施形態において、第一実施形態と同一の符号が付けられた各部材の詳細については説明を一部省略する。
【0067】
図9に、本実施形態におけるステータの分割コア4Bに樹脂箱43Bを取り付けている状況を説明する断面図を示す。
図9(a)は、樹脂箱43Bが初期装架位置から装着位置に向かって下方に回動している状況、
図9(b)は、樹脂箱43Bが外周側に誘導されている状況、
図9(c)は樹脂箱43Bの取り付けが完了した状況を示している。
【0068】
図9に示すように、分割コア4Bの内周端に位置するインシュレータ41Bの部位には、四方に突出した内周側フランジ411B(内周側突出部)が形成されている。内周側フランジ411Bの上部には、一対の係合溝412B(係合受け部、内周側係合部)が形成されている。各係合溝412Bは、内周側フランジ411Bの上端から下方に向けて凹設され半径方向に貫通した溝であり、分割コア4Bがステータハウジング2に保持されたときの円周方向に、互いに所定距離だけ離れた位置に形成されている。
【0069】
また、分割コア4Bの外周端に位置するインシュレータ41Bの部位には、内周側フランジ411Bに対して外周側に対向するように、四方に突出した外周側フランジ413B(外周側突出部)が形成されている。外周側フランジ413Bの上端部には、第一実施形態と同様の一対のワイヤ係止部414が形成されており、コイル42の高圧側端部422が一対のワイヤ係止部414間に架設されている。また、両ワイヤ係止部414間には、樹脂箱43Bの外周側を下方から支持する支持部415B(外周側係合部)が形成されている。支持部415Bは、
図8に示した第一実施形態における支持部415よりも内周側に配置されている。支持部415Bの上端には、水平な平坦面415Ba(係合面)が面を上方に向けて形成されている。
【0070】
樹脂箱43Bは、第一実施形態と同様の内周側端子収容箱431を有している。本実施形態における樹脂箱43Bには、第一実施形態における樹脂箱43に形成されていた突出壁438、係合突起438a及び脚部439の代わりに、突出壁438B(内周側被係合部)及び係合突壁438Ba(係合突部)が形成されている。一対の突出壁438Bは、底部435の内周側の下端から互いに平行に下方に延びている。係合突壁438Baは、各突出壁438Bの上端から上下方向の中間位置までの範囲に形成され、突出壁438Bと同一の壁厚からなると共に半径方向の内周側に突出している。係合突壁438Baの上端は、底部435の下端に一体化されている。
【0071】
樹脂箱43Bをインシュレータ41Bに取り付ける方法(内周側端子収容箱431をインシュレータ41Bに取り付ける方法)について説明する。
図9(a)に示すように、樹脂箱43Bを傾けた状態で、樹脂箱43Bの一対の係合突壁438Baを、インシュレータ41Bの内周側フランジ411Bに形成された一対の係合溝412Bに内周側から外周側に向かってかつ上方から下方に向かって深く係入する。
【0072】
このとき、突出壁438Bの内周側の端部と係合突壁438Baの下端とにより形成される角部が係合溝412Bの外周側の下方の縁部に当接することにより樹脂箱43Bの内周側フランジ411Bに対する内周側への移動が拘束されかつ外周側への移動が許容される。また、この角部において、樹脂箱43Bの内周側が係合突壁438Baを介して内周側フランジ411Bにより下方から支持されている。このように樹脂箱43Bの内周側の位置決めが行われた状態で、
図9(a)中に矢印で示すように、係合溝412Bの外周側の下方の縁部を回動中心として、樹脂箱43Bを上方の初期装架位置から下方の装着位置まで半径方向に回動させることができる。
図9(a)に示すように、樹脂箱43Bを初期装架位置から装着位置まで回動させている最中に、樹脂箱43Bの延設底部436がワイヤ係止部414間に架設された高圧側端部422に接触することはない。
【0073】
樹脂箱43Bが下方に回動すると、
図9(b)に示すように、外周側フランジ413Bの支持部415Bに形成された平坦面415Baの外周側の縁部と、樹脂箱43Bの延設底部436の突起部436aに形成された傾斜面436bとが当接し始める。そして、樹脂箱43Bの下方への回動に連れて、平坦面415Baの外周側の縁部と傾斜面436bとが互いに摺接した後に係合する。これにより、
図9(b)中に矢印で示すように、樹脂箱43Bが半径方向の外周側に誘導される。
【0074】
図9(c)に示すように、樹脂箱43Bが装着位置に装着されたときには、樹脂箱43Bの外周側においては、平坦面415Baと傾斜面436bとが完全に係合している。また、延設底部436が平坦面415Baにより下方から支持されている。一方、樹脂箱43Bの内周側においては、底部435の内周側の下端が内周側フランジ411Bの上端に下方から支持されている。また、一対の係合突壁438Baが係合溝412Bに浅く係入している。
【0075】
本実施形態によれば、内周側端子収容箱431が初期装架位置から装着位置まで回動する間、係合突壁438Baが上方が開口した係合溝412Bに係入されている。したがって、内周側端子収容箱431の内周側の上方への移動が許容されているため、内周側端子収容箱431の取り付け中及び取り付けが完了した後に、内周側端子収容箱431がインシュレータ41Bの内周側フランジ411Bから外れることがある。この点を除けば、本実施形態と第一実施形態との作用効果は同様であるため説明を省略する。
【0076】
<第三実施形態>
本実施形態は、第一実施形態のステータ1における分割コア4を、分割コア4C(コア組立体)に変更した実施形態である。これ以外の構成部材等については、第一実施形態と同一であるため説明を省略する。また、分割コア4Cを構成する各部材において、第一実施形態のステータ1における分割コア4と同一の部材については、第一実施形態と同一の符号を付けている。したがって、本実施形態において、第一実施形態と同一の符号が付けられた各部材の詳細については説明を一部省略する。
【0077】
図10に、本実施形態におけるステータの分割コア4Cに樹脂箱43Cを取り付けている状況を説明する断面図を示す。
図10(a)は、樹脂箱43Cが初期装架位置から装着位置に向かって下方に回動している状況、
図10(b)は、樹脂箱43Cが外周側に誘導されている状況、
図10(c)は樹脂箱43Cの取り付けが完了した状況を示している。
【0078】
図10に示すように、分割コア4Cの内周端に位置するインシュレータ41Cの部位には、四方に突出した内周側フランジ411C(内周側突出部)が形成されている。内周側フランジ411Cの上部には、第一実施形態における一対の係合穴412と同様の一対の係合穴412C(係合受け部、内周側係合部)が形成されている。
【0079】
また、分割コア4Cの外周端に位置するインシュレータ41Cの部位には、内周側フランジ411Cに対して外周側に対向するように、四方に突出した外周側フランジ413C(外周側突出部)が形成されている。外周側フランジ413Cの上端部には、第一実施形態と同様の一対のワイヤ係止部414が形成されており、コイル42の高圧側端部422が一対のワイヤ係止部414間に架設されている。また、両ワイヤ係止部414間には、樹脂箱43Cの外周側を下方から支持する支持部415C(外周側係合部)が形成されている。支持部415Cは、
図8に示した第一実施形態における支持部415よりも内周側に配置されている。支持部415Cの上端には、第一実施形態における支持部415の傾斜面415aと同様の傾斜面415Caが形成されている。
【0080】
樹脂箱43Cは、第一実施形態と同様の内周側端子収容箱431を有している。本実施形態における樹脂箱43Cには、第一実施形態における樹脂箱43に形成されていた底部435の代わりに、底部435Cが形成されている。また、第一実施形態における樹脂箱43に形成されていた突出壁438、係合突起438a及び脚部439の代わりに、突出壁438C(内周側被係合部)及び係合突起438Ca(係合突部)が形成されている。
【0081】
底部435Cの延設底部436C(外周側被係合部)の外周側の端部には、下方に突出した突起部436Caが形成されている。突起部436Caの下端には、水平な平坦面436Cb(係合面)が面を下方に向けて形成されている。一対の突出壁438Cは、底部435Cの内周側の下端から互いに平行に下方に延びている。係合突起438Caは、各突出壁438Cの上下方向の中間位置に形成され、突出壁438Cと同一の壁厚からなると共に半径方向の内周側に突出しかつ底部435Cから離間した突起状を呈している。
【0082】
樹脂箱43Cをインシュレータ41Cに取り付ける方法(内周側端子収容箱431をインシュレータ41Cに取り付ける方法)について説明する。
図10(a)に示すように、樹脂箱43Cを傾けた状態で、樹脂箱43Cの一対の係合突起438Caを、インシュレータ41Cの内周側フランジ411Cに形成された一対の係合穴412Cに内周側から外周側に向かって深く遊嵌する。
【0083】
このとき、突出壁438Cの内周側の端部と係合突起438Caの下端とにより形成される角部が係合穴412Cの外周側の下方の縁部に当接することにより樹脂箱43Cの内周側フランジ411Cに対する内周側への移動が拘束されかつ外周側への移動が許容される。また、この角部において、樹脂箱43Cの内周側が係合突壁438Caを介して内周側フランジ411Cにより下方から支持されている。このように樹脂箱43Cの内周側の位置決めが行われた状態で、
図10(a)中に矢印で示すように、係合穴412Cの外周側の下方の縁部を回動中心として、樹脂箱43Cを上方の初期装架位置から下方の装着位置まで半径方向に回動させることができる。
図10(a)に示すように、樹脂箱43Cを初期装架位置から装着位置まで回動させている最中に、樹脂箱43Cの延設底部436Cがワイヤ係止部414間に架設された高圧側端部422に接触することはない。
【0084】
樹脂箱43Cが下方に回動すると、
図10(b)に示すように、外周側フランジ413Cの支持部415Cに形成された傾斜面415Caと、樹脂箱43Cの延設底部436Cの突起部436Caに形成された平坦面436Cbの内周側の縁部とが当接し始める。そして、樹脂箱43Cの下方への回動に連れて、傾斜面415Caと平坦面436Cbの内周側の縁部とが互いに摺接した後に係合する。これにより、
図10(b)中に矢印で示すように、樹脂箱43Cが半径方向の外周側に誘導される。
【0085】
図10(c)に示すように、樹脂箱43Cが装着位置に装着されたときには、樹脂箱43Cの外周側においては、傾斜面415Caと平坦面436Cbとが完全に係合している。また、延設底部436Cが傾斜面415Caにより下方から支持されている。一方、樹脂箱43Cの内周側においては、底部435Cの内周側の下端が内周側フランジ411Cの上端に下方から支持されている。また、一対の係合突壁438Caが係合穴412Cに浅く遊嵌している。本実施形態における作用効果については、第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0086】
<第四実施形態>
本実施形態は、第一実施形態のステータ1における分割コア4を、分割コア4D(コア組立体)に変更した実施形態である。これ以外の構成部材等については、第一実施形態と同一であるため説明を省略する。また、分割コア4Dを構成する各部材において、第一実施形態のステータ1における分割コア4と同一の部材については、第一実施形態と同一の符号を付けている。したがって、本実施形態において、第一実施形態と同一の符号が付けられた各部材の詳細については説明を一部省略する。
【0087】
図11は、分割コア4Dの斜視図を示している。分割コア4Dは、積層鋼板40、インシュレータ41D、コイル42及び樹脂箱43を備えている。積層鋼板40、コイル42及び樹脂箱43の詳細については、第一実施形態で述べたとおりである。インシュレータ41Dと、第一実施形態におけるインシュレータ41とを対比すると、本実施形態のインシュレータ41Dには、保持突起419D(保持部)が備わっている点のみが構成が異なっている。
【0088】
図11に示すように、保持突起419Dは、インシュレータ41Dの外周側フランジ413Dの一対のワイヤ係止部414のうちの一方に形成されている。本実施形態においては、保持突起419Dは、樹脂箱43の側壁433側のワイヤ係止部414の円周方向内方の面に、樹脂箱43の側壁434側のワイヤ係止部414に向かって突出するように形成されている。
【0089】
保持突起419Dは、外周側から見て、上方に傾斜面、下方に水平面を有する台形状を呈している。この傾斜面は、円周方向外方の上方から円周方向内方の下方に向けて傾斜している。
図11に示すように、樹脂箱43が装着位置に装着されたとき、保持突起419Dの下方の水平面が樹脂箱43の延設底部436の上面に当接している。保持突起419Dは、上方から見て、延設底部436に僅かに重なっている。したがって、樹脂箱43は、装着位置から初期装架位置に向けて上方に回動しないように保持突起419Dによって保持されている。
【0090】
樹脂箱43をインシュレータ41Dに取り付けるときには、樹脂箱43を初期装架位置から装着位置まで回動させている最中に、樹脂箱43の延設底部436の下部が、保持突起419Dの上方の傾斜面に当接する。合成樹脂材料により形成されている樹脂箱43及びインシュレータ41Dは、多少の弾性変形が許容されているため、延設底部436が保持突起419Dに当接した状態から、樹脂箱43をさらに下方に回動させることが可能である。そして、樹脂箱43の回動に連れて、延設底部436が保持突起419Dに摺接しつつ保持突起419Dを上方から下方に乗り越えて、樹脂箱43が
図11に示す装着位置に装着される。
【0091】
本実施形態によれば、内周側端子収容箱431を有する樹脂箱43をインシュレータ41Dの上部に装着したときに、インシュレータ41Dの外周側フランジ413Dに形成された保持突起419Dによって、内周側端子収容箱431が半径方向に回動不能に保持される。よって、本実施形態によれば、内周側端子収容箱431がインシュレータ41Dの外周側フランジ413Dから外れることがないため、内周側端子収容箱431を装着位置に確実に保持することができる。本実施形態における他の作用効果については、第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0092】
<その他の実施形態>
本発明の回転電機のステータは、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができることは言うまでもない。
【0093】
例えば、本発明において、内周側端子収容箱に形成される内周側被係合部、及びインシュレータの内周側突出部に形成される内周側係合部の構成は、第一〜第三実施形態において説明した内周側被係合部(突出壁438、438B及び438C)、及び内周側係合部(係合穴412及び412C、係合溝412C)の構成に限定されない。内周側端子収容箱が初期装架位置から装着位置までコアユニットの半径方向に回動する間は内周側端子収容箱の回動中心となることができ、装着位置では内周側端子収容箱の半径方向の相対移動を許容するように内周側被係合部と内周側係合部とが係合する構成であれば、種々の形態にて実施することができる。例えば、第一実施形態のステータ1は、円周方向に一対の突出壁438と一対の係合穴412とを有しているが、円周方向の一箇所のみに突出壁及び係合穴を有する構成とすることもできる。
【0094】
また、本発明において、内周側端子収容箱に形成される外周側被係合部、及びインシュレータの外周側突出部に形成される外周側係合部の構成は、第一〜第三実施形態において説明した外周側被係合部(延設底部436及び436C)、及び外周側係合部(支持部415、415B及び415C)の構成に限定されない。内周側端子収容箱の回動に連れて外周側係合部が外周側被係合部と係合することにより内周側端子収容箱を外周側端子収容箱に向かって半径方向に移動させ得る構成であれば、種々の形態にて実施することができる。例えば、第一実施形態のステータ1は、延設底部436を本発明の外周側被係合部としているが、内周側端子収容箱431の各側壁433、434に形成された段付部433a、434aを本発明の外周側被係合部として改良を施すこともできる。
【0095】
また、第一〜第四実施形態を、端子収容箱6内に、コイル42の低圧側端部421と中性点端子44との接続部、及びコイル42の高圧側端部422と電力供給端子54との接続部のうちのどちらかのみを収容した状態で、端子収容箱6内に絶縁用樹脂材料7を充填する実施形態に変更することもできる。また、端子収容箱6に絶縁用樹脂材料7を入れる方法は、充填に限定されず、塗布により行うこともできる。
【0096】
本発明によるステータは、同期モーター、誘導モーター、直流モーターあるいはそれ以外のあらゆる回転電機に適用可能である。