特許第5962014号(P5962014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962014
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】フィルムミラー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20160721BHJP
   F24J 2/10 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   G02B5/08 A
   F24J2/10
【請求項の数】10
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2011-547558(P2011-547558)
(86)(22)【出願日】2010年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2010072980
(87)【国際公開番号】WO2011078157
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2009-288781(P2009-288781)
(32)【優先日】2009年12月21日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-294199(P2009-294199)
(32)【優先日】2009年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 丈範
(72)【発明者】
【氏名】本田 美佳
【審査官】 小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−154942(JP,A)
【文献】 特開2008−194993(JP,A)
【文献】 特開2004−009591(JP,A)
【文献】 特開2004−286943(JP,A)
【文献】 特開2006−326971(JP,A)
【文献】 特開2002−154179(JP,A)
【文献】 特開2009−038078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 − 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材上に、少なくとも金属からなる反射層及び紫外線吸収層を有するフィルムミラーであって、
該金属からなる反射層が銀反射層であり、
該銀反射層の上に銀に対する吸着性基を有し、かつ銀の腐食防止能を有する紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層(2)を有し、
さらにその上に紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層(1)を有し、
前記銀に対する吸着性基を有し、かつ銀の腐食防止能を有する紫外線吸収剤が、アミン類及びその誘導体、ピロール環を有する化合物、トリアゾール環を有する化合物、ピラゾール環を有する化合物、チアゾール環を有する化合物、イミダゾール環を有する化合物、インダゾール環を有する化合物、ナフタレン系から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とするフィルムミラー。
【請求項2】
前記金属からなる反射層が、前記樹脂基材よりも光入射側に設けられることを特徴とする請求項1に記載のフィルムミラー。
【請求項3】
前記紫外線吸収層(1)に含まれる紫外線吸収剤が、無機紫外線吸収剤であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムミラー。
【請求項4】
前記紫外線吸収層(2)と前記銀反射層の間に、銀よりもイオン化傾向の高い金属を含有する金属層が前記銀反射層に隣接していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【請求項5】
前記紫外線吸収層(2)と前記銀反射層もしくは、紫外線吸収層(2)と前記金属層の間に接着層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【請求項6】
前記銀反射層に隣接する層の上側に、ガスバリア層を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【請求項7】
最外層に傷防止層を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【請求項8】
前記樹脂基材を含めた層全体の厚さが、75〜250μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【請求項9】
前記銀に対する吸着性基を有し、かつ銀の腐食防止能を有する紫外線吸収剤が、
O−トルイジン、ジフェニルアミン、ベンズアミド、p−エトキシクリソイジン、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウムサリシレート、モノエタノールアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンカーバメイト、ニトロナフタレンアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレート、シクロヘキシルアミンシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロヘキシルアンモニウムアクリレート、シクロヘキシルアミンアクリレートから選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のフィルムミラーを製造するフィルムミラーの製造方法であって、前記金属からなる反射層を銀蒸着によって形成することを特徴とするフィルムミラーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱に対して良好な正反射率を有し、密着性、耐候性及び冷熱衝撃耐性に優れるフィルムミラー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油、天然ガス等の化石燃料エネルギーに代わる代替エネルギーとしては現在、バイオマスエネルギー、核エネルギー、並びに風力エネルギー及び太陽エネルギー等の自然エネルギーが検討されているが、化石燃料の代替エネルギーとして最も安定しており、且つ量の多い自然エネルギーは、太陽エネルギーであると考えられる。
【0003】
しかしながら、太陽エネルギーは非常に有力な代替エネルギーであるものの、これを活用する観点からは、(1)太陽エネルギーのエネルギー密度が低いこと、並びに(2)太陽エネルギーの貯蔵及び移送が困難であることが、問題となると考えられる。
【0004】
これに対して、太陽エネルギーのエネルギー密度が低いという問題は、巨大な反射装置で太陽エネルギーを集めることによって解決することが提案されている。
【0005】
反射装置は、太陽光による紫外線や熱、風雨、砂嵐等に晒されるため、従来、ガラス製ミラーが用いられてきた。ガラス製ミラーは環境に対する耐久性が高い反面、輸送時に破損したり、重いためミラーを設置する架台の強度を持たせるためにプラントの建設費がかさむといった問題があった。
【0006】
上記問題を解決するために、ガラス製ミラーを樹脂製反射シートに置き換えることが考えられてきた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、太陽熱発電用フィルムミラーとして用いる場合、フィルムミラーは太陽光に長時間直接さらされることとなる。そのため、樹脂基材が紫外線により劣化することで、変色して透過率が下がり、結果としてミラーとしての反射率が下がるという問題があった。
【0007】
太陽光を集光する目的において、高い反射率を得るという観点では、特許文献2に開示されているように、金属層を可視光領域の反射率の高い銀で構成することが好ましい。しかしながら、銀を反射層に用いることで、初期の反射率を高めることは可能であるが、やはり紫外線による樹脂の劣化により、長期間使用した場合には反射率の低下を十分に抑制することは困難であった。
【0008】
そこで、特許文献3では、フィルムミラーの表面層にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有させた層を設ける技術が提案されている。特許文献3では、表面層にビニル基を有する架橋可能なモノマーを添加することで、表面層中におけるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と樹脂との相溶性を向上させることで、紫外線吸収剤の添加量を増加させ、紫外線によるプラスチック基材の劣化を抑制する技術を提案している。しかしながら、このような技術をもってしても、温湿度の変化が激しい環境下で、太陽光に直接晒される太陽熱発電用のフィルムミラーとして用いられた場合には、15質量%以上の大量に含まれる紫外線吸収剤が経年で沁み出し(特許文献3ではブルーミングといい、一般にはブリードアウトという)を起こし、層間の密着性低下による剥離の問題や、金属からなる反射層の変形を引き起こし、フィルムミラーとしての正反射率の低下を引き起こす問題が顕在化した。
【0009】
また、金属からなる反射層の金属として用いられる銀は非常に腐食しやすい金属であるため、屋外に設置した場合に、大気中に存在する水蒸気、酸素や紫外光等の複合要因によって劣化が進行する。また、銀は320nm付近の波長光を透過するため、銀の裏面の基材層の保護のために紫外線吸収層を作る必要がある。そのため、フィルムミラーの層構成に紫外線吸収層、銀の腐食防止剤層、酸素や水蒸気のバリア層等を設ける必要がある。
【0010】
特許文献4に開示の太陽熱発電用のフィルムミラーは、最外層から、(紫外線吸収剤が混入したアクリル層)/(銀の変色防止剤が混入したアクリル層)/(銀反射層)/(基材であるPET層)/(接着層)/(剥離層)という構成である。本発明者がこの構成で作製したフィルムミラーを実際に太陽熱発電用として用いたところ、紫外線吸収能が不十分であるため、フィルムミラーを長期間太陽熱にさらすと銀に影響を与えるだけでなく、基材が劣化することが分かった。
【0011】
特許文献5では、この問題を解決するために、最外層の紫外線吸収層に接着層と紫外線吸収剤入りアクリル樹脂層を付与した。この場合、紫外線透過率は約5%まで低下するため、長時間高い反射率を保持することができる。しかし、過酷な環境下に長期間おかれた場合、紫外線吸収剤自体が太陽熱で劣化するため、樹脂基材が劣化して反射率が劣化する。また、大量に紫外線吸収剤を添加すると、ブリードアウトや透過率が低下するという問題が起こる。また、水蒸気や酸素のバリア層としてアクリル層を用いているが、完全に水蒸気や酸素を遮断することはできないため、長期間の使用には耐えられないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−59382号公報
【特許文献2】特開平6−38860号公報
【特許文献3】特表2007−525550号公報
【特許文献4】特開昭61−154942号公報
【特許文献5】米国特許第6,989,924号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、太陽熱発電用フィルムミラーとして過酷な環境下で長期間用いられた場合であっても、紫外線吸収剤のブリードアウトが少なく、正反射率の低下を十分に抑制することが可能であり、軽量で柔軟性があり、製造コストを抑え大面積化・大量生産することのできる、太陽熱に対して良好な正反射率を有し、密着性、耐候性及び冷熱衝撃耐性に優れるフィルムミラー及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0015】
1.樹脂基材上に、少なくとも金属からなる反射層及び紫外線吸収層を有するフィルムミラーであって、
該金属からなる反射層が銀反射層であり、
該銀反射層の上に銀に対する吸着性基を有し、かつ銀の腐食防止能を有する紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層(2)を有し、
さらにその上に紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層(1)を有し、
前記銀に対する吸着性基を有し、かつ銀の腐食防止能を有する紫外線吸収剤が、アミン類及びその誘導体、ピロール環を有する化合物、トリアゾール環を有する化合物、ピラゾール環を有する化合物、チアゾール環を有する化合物、イミダゾール環を有する化合物、インダゾール環を有する化合物、ナフタレン系から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とするフィルムミラー。
【0021】
.前記金属からなる反射層が、前記樹脂基材よりも光入射側に設けられることを特徴とする前記に記載のフィルムミラー。
【0031】
.前記紫外線吸収層(1)に含まれる紫外線吸収剤が、無機紫外線吸収剤であることを特徴とする前記またはに記載のフィルムミラー。
【0032】
.前記紫外線吸収層(2)と前記銀反射層の間に、銀よりもイオン化傾向の高い金属を含有する金属層が前記銀反射層に隣接していることを特徴とする前記のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【0033】
.前記紫外線吸収層(2)と前記銀反射層もしくは、紫外線吸収層(2)と前記金属層の間に接着層を有することを特徴とする前記のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【0034】
.前記銀反射層に隣接する層の上側に、ガスバリア層を有することを特徴とする前記のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【0035】
.最外層に傷防止層を有することを特徴とする前記のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【0036】
8.前記樹脂基材を含めた層全体の厚さが、75〜250μmであることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
9.前記銀に対する吸着性基を有し、かつ銀の腐食防止能を有する紫外線吸収剤が、
−トルイジン、ジフェニルアミン、ベンズアミド、p−エトキシクリソイジン、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウムサリシレート、モノエタノールアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンカーバメイト、ニトロナフタレンアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレート、シクロヘキシルアミンシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロヘキシルアンモニウムアクリレート、シクロヘキシルアミンアクリレートから選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載のフィルムミラー。
【0037】
10.前記1〜のいずれか1項に記載のフィルムミラーを製造するフィルムミラーの製造方法であって、前記金属からなる反射層を銀蒸着によって形成することを特徴とするフィルムミラーの製造方法。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、太陽熱発電用フィルムミラーとして過酷な環境下で長期間用いられた場合であっても、紫外線吸収剤のブリードアウトが少なく、正反射率の低下を十分に抑制することが可能であり、軽量で柔軟性があり、製造コストを抑え大面積化・大量生産することのできる、太陽熱に対して良好な正反射率を有し、密着性、耐候性及び冷熱衝撃耐性に優れるフィルムミラー及びその製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明者は、上記課題に鑑み検討を行った結果、金属からなる反射層を有するフィルムミラーを太陽熱発電用の反射装置として用いる場合、金属からなる反射層の高い反射率により使用開始時は高い反射率を得ることができるものの、強い太陽光に長時間晒された場合に、正反射率が低下する問題が発生することが明らかになった。金属、特に銀からなる反射層は、320nm以下の紫外線を透過する性質があることがその要因の一つと考えられた。
【0041】
太陽熱発電用のミラーとしてフィルムミラーを使用する場合は、フィルムミラー自体では十分な自己支持性が得られないため、アルミニウム金属等の金属支持体に貼り付けられて使用されることとなる。その際、金属からなる反射層を透過した紫外線は、金属からなる反射層の下層(光入射側から遠い側)の層を透過した後、金属支持体により反射されて再度金属からなる反射層の下層に入射することとなる。そのため、紫外線により金属からなる反射層の下層が劣化するか、または金属からなる反射層と下層との間が励起されることで、金属からなる反射層の劣化が進み、金属からなる反射層の正反射率の低下を引き起こすことが分かった。
【0042】
また、太陽熱発電用フィルムミラーの設置場所として好ましい赤道に近い砂漠地帯では1日の温度差が30℃以上になることもあり、このような厳しい環境下では冷熱衝撃によって、フィルムミラーに添加した紫外線吸収剤はブリードアウト(表面への沁み出し、凝集固化して粉を吹いたようになる)し、正反射率の低下を引き起こすことが分かった。
【0043】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、樹脂基材上に、少なくとも金属からなる反射層及び高分子型紫外線吸収剤を含有する層を有するフィルムミラーにより、太陽熱発電用フィルムミラーとして過酷な環境下で長期間用いられた場合であっても、正反射率の低下を十分に抑制することが可能であり、軽量で柔軟性があり、製造コストを抑え大面積化・大量生産することのできる、太陽熱に対して良好な正反射率を有し、密着性、耐候性及び冷熱衝撃耐性に優れるフィルムミラーが得られることを見出し、本発明に至った次第である。
【0044】
本発明のフィルムミラーは、樹脂基材上に、構成層として少なくとも、樹脂基材、金属からなる反射層、及び高分子型紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層が設けられたフィルムミラーであることを特徴とする。特に金属からなる反射層は太陽光を赤外域から可視域まで効率よく反射できることから銀または銀合金の使用が好ましい。本発明の形態によれば、高分子型紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層を金属からなる反射層よりも光入射側に配置することで、金属からなる反射層を外部の酸素、水蒸気の影響から遮断して正反射率の低下を抑制できるとともに、金属からなる銀層の下層として設けられる樹脂基材や接着層が金属からなる反射層を透過した紫外線により劣化することで表面精度が粗くなり正反射率が低下する問題を効果的に抑制することが可能となる。また、紫外線吸収剤を高分子型紫外線吸収剤とすることで、急激な冷熱衝撃によって引き起こされる紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制することができることを見出したものである。
【0045】
本発明者は、さらに、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、樹脂基材上に銀反射層を設け、該銀反射層の上に銀の腐食防止能を有する紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層(2)を設け、その上に紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層(1)を設け、銀の変色防止に腐食防止能を持つ紫外線吸収剤を紫外線吸収層(2)に用いることで、その上層の紫外線吸収層(1)の紫外線吸収剤が経時劣化しても、腐食防止能を持つ紫外線吸収剤が紫外線吸収能を補うため、長期間劣化を抑制できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0046】
有機腐食防止剤は、紫外線吸収能は高いが、経時で性能が劣化する。それに対して、無機腐食防止剤の場合、紫外線吸収能はそれほど高くないが、経時における性能は低下しない。そのため、紫外線吸収剤として、無機紫外線吸収剤を用い、さらに紫外線吸収能をもつ腐食防止剤を組み合わせることで、さらに長期間高い反射率を保つことができる。
【0047】
また、無機バリア層は水蒸気や酸素をほぼ完全に遮断できるが、有機物である腐食防止剤層との密着性が問題となる場合がある。そこで、無機紫外線吸収層をその間に設けることで、無機バリア層を設けることが可能になり、さらに長期間高い反射率を保つことができる。このようにすることで、長期間にわたって、高い反射率を保つことができる太陽熱反射フィルムミラーを開発することができる。
【0048】
本発明のフィルムミラーは、樹脂基材上に、構成層として少なくとも、銀反射層、上部隣接層に腐食防止能を持つ紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層(2)、その上層に紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層(1)を有することを特徴とする。
【0049】
本発明の形態によれば、腐食防止能を有する紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層(2)の上層に紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層(1)を形成することにより、太陽熱に含まれる紫外線を吸収し、銀反射層や樹脂基材層の劣化を抑制することができる。この時、銀の腐食防止能を有する紫外線吸収剤を持つものを用いることで、最外層に大量の紫外線吸収剤を添加することに起因するブリードアウトや透過率の低下を抑えることができる。そのため、過酷な環境下においても、フィルムミラー各層の劣化を抑えることができ、長期間にわたって高い反射率を維持することができるフィルムミラーを開発することができる。
【0050】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。
【0051】
(フィルムミラーの構成概要)
本発明のフィルムミラーは、樹脂基材上に、構成層として少なくとも、金属からなる反射層、高分子型紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収剤層が設けられたフィルムミラー、または、樹脂基材上に、構成層として少なくとも、銀反射層、紫外線吸収能を有する銀の腐食防止剤層及びその上層に紫外線吸収層が設けられたフィルムミラーであることを特徴とする。構成層として、これらの層の他に、接着層、ガスバリア層、傷防止層等の特別な機能層を設けることも好ましい態様である。
【0052】
(樹脂基材)
本発明に係る樹脂基材(支持体)としては、従来公地の種々の樹脂フィルムを用いることができる。例えば、セルロースエステルフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアクリルフィルム等を挙げることができる。中でも、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルム、ノルボルネンフィルム、及びセルロースエステルフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアクリルフィルムが好ましい。
【0053】
特にポリエステル、ポリエチレンナフタレート、アクリル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、セルロースまたはポリアミドを含む樹脂フィルムが好ましく、これらのフィルムは、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。金属からなる反射層の光入射側から遠い側にこれらの樹脂基材を有する場合には、金属からなる反射層を透過した紫外線による劣化及びそれに伴う正反射率の低下が問題となるが、本発明の構成によればそのような問題を効果的に抑制することが可能である。
【0054】
樹脂基材の厚さは、樹脂の種類及び目的等に応じて適切な厚さにすることが好ましい。例えば、一般的には10〜300μmの範囲内であり、好ましくは20〜200μm、さらに好ましくは30〜100μmである。
【0055】
(金属からなる反射層)
金属からなる反射層は、樹脂基材よりも光入射側に設けることが好ましい。
【0056】
金属からなる反射層としては、例えば、銀または銀合金、その他、金、銅、アルミニウム、これらの合金も用いることができる。特に、銀を使用することが好ましい。このような反射層は、光を反射させる反射膜としての役割を果たす。反射層を銀または銀合金からなる膜とすることにより、フィルムミラーの可視光領域での反射率を高め、入射角による反射率の依存性を低減できる。可視光領域とは、400〜700nmの波長領域を意味する。入射角とは、膜面に対して垂直な線に対する角度を意味する。
【0057】
銀合金としては、反射層の耐久性が向上する点から、銀と、金、パラジウム、スズ、ガリウム、インジウム、銅、チタン及びビスマスからなる群から選ばれる1種以上の他の金属とからなる合金が好ましい。他の金属としては、高温耐湿性、反射率の点から、金が特に好ましい。
【0058】
反射層が銀合金からなる膜である場合、銀は、反射層における銀と他の金属との合計(100原子%)中、90〜99.8原子%が好ましい。また、他の金属は、耐久性の点から0.2〜10原子%が好ましい。
【0059】
また、反射層の膜厚は、60〜300nmが好ましく、80〜200nmが特に好ましい。反射層の膜厚が60nm未満では、膜厚が薄く、光を透過してしまうため、フィルムミラーの可視光領域での反射率が低下する恐れがある。反射層の膜厚が300nmを超えると、反射層の表面に凹凸が発生しやすくなり、これにより光の散乱が生じてしまい、可視光領域での反射率が低下するおそれがある。
【0060】
金属からなる反射層は、湿式めっき、乾式めっき、銀蒸着で形成することが好ましい。
【0061】
(銀反射層)
本発明に係る銀反射層の形成法としては、湿式法及び乾式法のどちらも使用することができる。
【0062】
湿式法とはめっき法の総称であり、溶液から金属を析出させ膜を形成する方法である。具体例を挙げると銀鏡反応等がある。
【0063】
一方、乾式法とは真空成膜法の総称であり、具体的に挙げると抵抗加熱式真空蒸着法、電子ビーム加熱式真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト真空蒸着法、スパッタ法等がある。とりわけ、本発明には連続的に成膜するロールツーロール方式が可能な蒸着法が好ましく用いられる。すなわち、本発明のフィルムミラーを製造するフィルムミラーの製造方法としては、銀反射層を銀蒸着によって形成することが好ましい。
【0064】
銀反射層の厚さは、反射率等の観点から、10〜200nmが好ましく、より好ましくは30〜150nmである。
【0065】
本発明において、銀反射層は樹脂基材(支持体)に対して光線入射側にあっても、その反対側にあっても良いが、支持体が樹脂であることから、光線による樹脂劣化を防止する目的から、光線入射側に位置する方が好ましい。
【0066】
(紫外線吸収剤層)
本発明の一つは、銀反射層の上に銀の腐食防止能を有する紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層(2)を有し、さらにその上に太陽熱や紫外線による劣化防止の目的で、紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層(1)を有することが特徴である。
【0067】
紫外線吸収層(1)に含まれる紫外線吸収剤は大別して、無機紫外線吸収剤と有機紫外線吸収剤に分類される。
【0068】
無機紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化ジルコニウムが挙げられる。好ましくは酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムを用いるのがよく、より好ましくは酸化セリウムを用いるのがよい。
【0069】
有機紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、トリアジン系等が挙げられる。
【0070】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0071】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0072】
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤としては、フェニルサルチレート、2−4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。ヒンダードアミン系紫外線吸収剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等が挙げられる。
【0073】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0074】
紫外線吸収剤としては、上記以外に紫外線の保有するエネルギーを、分子内で振動エネルギーに変換し、その振動エネルギーを、熱エネルギー等として放出する機能を有する化合物が含まれる。上記の紫外線吸収剤を使用する場合は、紫外線吸収剤の光吸収波長が、光重合開始剤の有効波長と重ならないものを選択する必要がある。通常の紫外線防止剤を使用する場合は、可視光でラジカルを発生する光重合開始剤を使用することが有効である。
【0075】
紫外線吸収剤の使用量は、0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。20質量%よりも多いと密着性が悪くなり、0.1質量%より少ないと耐候性改良効果が小さい。
【0076】
(高分子型紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層)
本発明の一つは、高分子型紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層を有することを特徴とする。
【0077】
〈高分子型紫外線吸収剤〉
本発明に用いられる高分子型紫外線吸収剤とは、重量平均分子量が500以上の紫外線吸収剤をいう。重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置で測定することができる。
【0078】
本発明に用いられる高分子型紫外線吸収剤としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0079】
【化1】
【0080】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R及びRは水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、Rはベンゾフェノン基またはベンゾトリアゾール基を表す。l、m及びnは1以上の整数を表し、l、m及びnの合計は100である。)
及びRで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の直鎖状、分枝鎖状もしくは環状のアルキル基等が挙げられる。
【0081】
及びRで表されるアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ベンジル基、フェネチル基等を挙げることができる。
【0082】
その他の高分子型紫外線吸収剤としては、例えば特開2004−42614号公報に記載の化合物が挙げられる。具体的には[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシオクトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシドデシロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシベンジロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2′−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2′−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2′−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシオクトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2′−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシベンジロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシドデシロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2′,4−トリヒドロキシ−4′−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2′,4−トリヒドロキシ−4′−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2′,4−トリヒドロキシ−4′−(メタクリロイルオキシオクトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2′,4−トリヒドロキシ−4′−(メタクリロイルオキシドデシロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2′,4−トリヒドロキシ−4′−(メタクリロイルオキシベンジロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[4−ヒドロキシ−4′−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[4−ヒドロキシ−4′−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[4−ヒドロキシ−4′−(メタクリロイルオキシオクトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[4−ヒドロキシ−4′−(メタクリロイルオキシドデシロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[4−ヒドロキシ−4′−(メタクリロイルオキシベンジロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4′−メチル−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4′−メチル−4−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4′−メチル−4−(メタクリロイルオキシオクトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4′−メチル−4−(メタクリロイルオキシドデシロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4′−メチル−4−(メタクリロイルオキシベンジロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−(2′−ヒドロキシ−4′−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾトリアゾール]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−(2′−ヒドロキシ−4′−メタクリロイルオキシエトキシ)−5−クロロベンゾトリアゾール]−メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。さらには2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]等の分子量500以上の高分子型紫外線吸収剤も好適である。
【0083】
本発明においては、アクリルポリマーに紫外線吸収ユニットがグラフト重合した化合物も、高分子型紫外線吸収剤として使用することができる。これは、アクリルポリマーのポリマー鎖に紫外線の吸収能を有する紫外線吸収ユニットをグラフト重合により導入した構造の化合物である。
【0084】
このアクリルポリマーを構成するアクリルモノマーとしては、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタアクリル酸アルキルエステル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、これらのアクリルモノマーと共重合性の二重結合を有するビニル化合物との共重合ポリマー等が挙げられる。
【0085】
この共重合性ビニル化合物としては、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;酢酸ビニル、エチルビニル、2−エチルヘキシルビニル等のアルキルビニルエステル;スチレン、無水マレイン酸等が挙げられる。これらのアクリルポリマーの数平均分子量は20,000〜200,000のものであり、50,000〜200,000のものが好ましい。
【0086】
このアクリルポリマーに導入する紫外線吸収ユニットとしては、紫外線吸収能を有する化合物であればよく、例えば上述したベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、安息香酸エステル化合物等が挙げられる。これらの化合物をグラフト重合によりアクリルポリマーのポリマー鎖に導入する。この場合、アクリルポリマーに導入された紫外線吸収ユニットの割合は、紫外線吸収剤の全質量に対して40〜90質量%であり、好ましくは50〜80質量%である。
【0087】
高分子型紫外線吸収剤を含む層としては、これらのアクリルポリマーに紫外線吸収ユニットがグラフト重合した化合物の他、下記に挙げるようなバインダーに高分子型紫外線吸収剤を添加して使用してもよい。
【0088】
〈バインダー〉
バインダーとしては、例えば、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、及びこれらの共重合体の少なくともいずれかを含有するものが挙げられ、さらに具体的には、ダイヤナールBR−80(三菱レイヨン株式会社製)等が挙げられる。ここで、ダイヤナールBR−80(三菱レイヨン株式会社製)は、ポリメチルメタクリレートである。
【0089】
また、前記高分子型紫外線吸収剤の質量と前記バインダーの質量との比率(高分子型紫外線吸収剤の質量/前記バインダーの質量)は、0.25〜0.60であることが好ましく、0.30〜0.60であることがより好ましく、0.40〜0.55であることが特に好ましい。前記高分子型紫外線吸収剤の質量と前記バインダーの質量との比率(前記紫外線吸収剤の質量/前記バインダーの質量)が、0.25以上であると、コストが低下し、0.60以下であると紫外線吸収剤がブリードアウトしにくくなる。
【0090】
〈ポリメタクリル酸エステル〉
前記ポリメタクリル酸エステルのモノマー成分としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、スルフォプロピルメタクリレート、N−エチル−N−フェニルアミノエチルメタクリレート、2−(3−フェニルプロピルオキシ)エチルメタクリレート、ジメチルアミノフェノキシエチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−iso−プロポキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(付加モル数n=6)、アクリルメタクリレート、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩等を挙げることができる。
【0091】
〈ポリアクリル酸エステル〉
前記ポリアクリル酸エステルのモノマー成分としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−iso−プロポキシアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(付加モル数n=9)、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0092】
高分子型紫外線吸収剤を含む層の形成は、エマルジョン状に分散された高分子型紫外線吸収剤液を塗布乾燥して得ることが好ましく、有機溶剤にて溶解させた樹脂液に高分子型紫外線吸収剤を添加して塗布後に溶媒を揮発乾燥させて得ることもできる。
【0093】
また、高分子型紫外線吸収剤を含む層は、紫外線硬化性モノマー樹脂液に高分子型紫外線吸収剤を添加して塗布後に紫外線硬化することが好ましい。
【0094】
高分子型紫外線吸収剤を含む層は、膜厚は50μm以下で、光線透過率の平均値が90%以上であることが好ましい。
【0095】
(腐食防止剤)
本発明のフィルムミラーには、金属からなる反射層の腐食防止剤を含有することが好ましい。ここで、「腐食」とは、金属(銀)がそれを取り囲む環境物質によって、化学的または電気化学的に浸食されるかもしくは材質的に劣化する現象をいう(JIS Z0103−2004参照)。
【0096】
本発明のフィルムミラーは、前記接着層が酸化防止剤を含有し、かつ金属からなる反射層の隣接層が銀に対する吸着性基を有する腐食防止剤を含有していることが好ましい。
【0097】
なお、腐食防止剤の含有量は、使用する化合物によって最適量は異なるが、一般的には、0.1〜1.0g/mの範囲内であることが好ましい。
【0098】
銀反射層の腐食防止剤としては、大別して、銀に対する吸着性基を有する腐食防止剤と酸化防止剤が好ましく用いられる。
【0099】
〈銀に対する吸着性基を有する腐食防止剤〉
銀に対する吸着性基を有する腐食防止剤としては、アミン類及びその誘導体、ピロール環を有する化合物、トリアゾール環を有する化合物、ピラゾール環を有する化合物、チアゾール環を有する化合物、イミダゾール環を有する化合物、インダゾール環を有する化合物、銅キレート化合物類、チオ尿素類、メルカプト基を有する化合物、ナフタレン系の少なくとも一種またはこれらの混合物から選ばれることが望ましい。
【0100】
アミン類及びその誘導体としては、エチルアミン、ラウリルアミン、トリ−n−ブチルアミン、O−トルイジン、ジフェニルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2N−ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アセトアミド、アクリルアミド、ベンズアミド、p−エトキシクリソイジン、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウムサリシレート、モノエタノールアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンカーバメイト、ニトロナフタレンアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレート、シクロヘキシルアミンシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロヘキシルアンモニウムアクリレート、シクロヘキシルアミンアクリレート等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0101】
ピロール環を有する物としては、N−ブチル−2,5−ジメチルピロール、N−フェニル−2,5−ジメチルピロール、N−フェニル−3−ホルミル−2,5−ジメチルピロール、N−フェニル−3,4−ジホルミル−2,5−ジメチルピロール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0102】
トリアゾール環を有する化合物としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−ヒドロキシ−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−メチル−1,2,3−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4,5,6,7−テトラハイドロトリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0103】
ピラゾール環を有する化合物としては、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリジン、ピラゾリドン、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ヒドロキシピラゾール、4−アミノピラゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0104】
チアゾール環を有する化合物としては、チアゾール、チアゾリン、チアゾロン、チアゾリジン、チアゾリドン、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、P−ジメチルアミノベンザルロダニン、2−メルカプトベンゾチアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0105】
イミダゾール環を有する化合物としては、イミダゾール、ヒスチジン、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、4−フォルミルイミダゾール、2−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−フォルミルイミダゾール、4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0106】
インダゾール環を有する化合物としては、4−クロロインダゾール、4−ニトロインダゾール、5−ニトロインダゾール、4−クロロ−5−ニトロインダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0107】
銅キレート化合物類としては、アセチルアセトン銅、エチレンジアミン銅、フタロシアニン銅、エチレンジアミンテトラアセテート銅、ヒドロキシキノリン銅等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0108】
チオ尿素類としては、チオ尿素、グアニルチオ尿素等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0109】
メルカプト基を有する化合物としては、すでに上記に記載した材料も加えれば、メルカプト酢酸、チオフェノール、1,2−エタンジオール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、グリコールジメルカプトアセテート、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0110】
ナフタレン系としては、チオナリド等が挙げられる。
【0111】
〈酸化防止剤〉
本発明のフィルムミラーに用いられる金属からなる反射層の腐食防止剤としては、酸化防止剤を用いることもできる。
【0112】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、チオール系酸化防止剤及びホスファイト系酸化防止剤を使用することが好ましい。
【0113】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス−〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス[1,1−ジ−メチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−2,4,8,10−テトラオキオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。特に、フェノール系酸化防止剤としては、分子量が550以上のものが好ましい。
【0114】
チオール系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)等を挙げられる。
【0115】
ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4′−ビフェニレン−ジホスホナイト、2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
【0116】
なお、本発明においては、上記酸化防止剤と下記の光安定剤を併用することもできる。
【0117】
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、1−メチル−8−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタン−テトラカルボキシレート、トリエチレンジアミン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン等が挙げられる。
【0118】
その他ニッケル系紫外線安定剤として、〔2,2′−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)〕−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、ニッケルコンプレックス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル・リン酸モノエチレート、ニッケル・ジブチル−ジチオカーバメート等も使用することが可能である。
【0119】
特にヒンダードアミン系の光安定剤としては、3級のアミンのみを含有するヒンダードアミン系の光安定剤が好ましく、具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、または1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール/トリデシルアルコールと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸との縮合物が好ましい。
【0120】
また、金属からなる反射層の腐食防止のため、金属からなる反射層と接して、Cuを福層や、チオエーテル系、チオール系、Ni系有機化合物系、ベンゾトリアゾール系、イミダゾール系、オキサゾール系、テトラザインデン系、ピリミジン系またはチアジアゾール系の腐食防止剤層を設けることが好ましい。
【0121】
(腐食防止能を有する紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層)
本発明では、銀反射層の上に腐食防止能を有する紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層を有することが特徴である。
【0122】
なお、腐食防止能を有する紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収層に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、使用する化合物によって最適量は異なるが、一般的には、0.1〜1.0g/mの範囲内であることが好ましい。
【0123】
腐食防止能を有する紫外線吸収剤は、銀に対する吸着性基を有し、かつ紫外線吸収能を有することが好ましい。
【0124】
〈銀に対する吸着性基を有し、腐食防止能を有する紫外線吸収剤〉
銀に対する吸着性基を有し、腐食防止能を有する紫外線吸収剤としては、アミン類及びその誘導体、ピロール環を有する化合物、トリアゾール環を有する化合物、ピラゾール環を有する化合物、チアゾール環を有する化合物、イミダゾール環を有する化合物、インダゾール環を有する化合物、メルカプト基を有する化合物、ナフタレン系の少なくとも一種またはこれらの混合物から選ばれることが望ましい。
【0125】
アミン類及びその誘導体としては、O−トルイジン、ジフェニルアミン、ベンズアミド、p−エトキシクリソイジン、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウムサリシレート、モノエタノールアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンカーバメイト、ニトロナフタレンアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレート、シクロヘキシルアミンシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロヘキシルアンモニウムアクリレート、シクロヘキシルアミンアクリレート等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0126】
ピロール環を有する物としては、N−ブチル−2,5−ジメチルピロール、N−フェニル−2,5−ジメチルピロール、N−フェニル−3−ホルミル−2,5−ジメチルピロール、N−フェニル−3,4−ジホルミル−2,5−ジメチルピロール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0127】
トリアゾール環を有する化合物としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−ヒドロキシ−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−メチル−1,2,3−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4,5,6,7−テトラハイドロトリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0128】
ピラゾール環を有する化合物としては、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリジン、ピラゾリドン、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ヒドロキシピラゾール、4−アミノピラゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0129】
チアゾール環を有する化合物としては、チアゾール、チアゾリン、チアゾロン、チアゾリジン、チアゾリドン、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、P−ジメチルアミノベンザルロダニン、2−メルカプトベンゾチアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0130】
イミダゾール環を有する化合物としては、イミダゾール、ヒスチジン、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、4−フォルミルイミダゾール、2−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−フォルミルイミダゾール、4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0131】
インダゾール環を有する化合物としては、4−クロロインダゾール、4−ニトロインダゾール、5−ニトロインダゾール、4−クロロ−5−ニトロインダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0132】
メルカプト基を有する化合物としては、すでに上記に記載した材料も加えれば、チオフェノール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0133】
ナフタレン系としては、チオナリド等が挙げられる。
【0134】
(ガスバリア層)
本発明のフィルムミラーは、ガスバリア層を有することが好ましい。
【0135】
本発明に係るガスバリア層は、湿度の変動、特に高湿度による樹脂基材及び当該樹脂基材で保護される各種機能素子等の劣化を防止するためのものであるが、特別の機能・用途を持たせたものであってもよく、上記特徴を維持する限りにおいて、種々の態様のガスバリア層を設けることができる。本発明においては、前記金属からなる反射層の上側に、ガスバリア層を設けることが好ましい。
【0136】
当該ガスバリア層の防湿性としては、40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が、100g/m・day/μm以下、好ましくは50g/m・day/μm以下、さらに好ましくは20g/m・day/μm以下となるように当該ガスバリア層の防湿性を調整することが好ましい。また。酸素透過度としては、測定温度23℃、湿度90%RHの条件下で、0.6ml/m/day/atm以下であることが好ましい。
【0137】
本発明に係るガスバリア層に関しては、その形成方法において特に制約はないが、無機酸化物膜のセラミック前駆体を塗布した後に、塗布膜を加熱及び/または紫外線照射により、無機酸化物膜を形成する方法が好ましく用いられる。
【0138】
〈セラミック前駆体〉
本発明に係るガスバリア層は、加熱により無機酸化物膜を形成するセラミック前駆体を塗布した後に、一般的な加熱方法が適用して形成することできるが、局所的加熱により形成することが好ましい。セラミック前駆体は、ゾル状の有機金属化合物またはポリシラザンが好ましい。
【0139】
〈有機金属化合物〉
本発明に係る有機金属化合物は、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、及びニオブ(Nb)のうちの少なくとも一つの元素を含有することが好ましい。特に、当該有機金属化合物が、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、及びバリウム(Ba)のうちの少なくとも一つの元素を含有することが好ましい。さらに、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、及びリチウム(Li)のうちの少なくとも一つの元素を含有することが好ましい。
【0140】
有機金属化合物としては、加水分解が可能なものであればよく、特に限定されるものではないが、好ましい有機金属化合物としては、金属アルコキシドが挙げられる。
【0141】
前記金属アルコキシドは、下記一般式(I)で表される。
【0142】
一般式(I):MR(ORn−m
一般式(I)において、Mは、酸化数nの金属を表す。R及びRは、各々独立に、アルキル基を表す。mは、0〜(n−1)の整数を表す。R及びRは、同一でもよく、異なっていてもよい。R及びRとしては、炭素原子4個以下のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基CH(以下、Meで表す。)、エチル基C(以下、Etで表す)、プロピル基C(以下、Prで表す。)、イソプロピル基i−C(以下、i−Prで表す。)、ブチル基C(以下、Buで表す)、イソブチル基i−C(以下、i−Buで表す)等の低級アルキル基がより好ましい。
【0143】
前記一般式(I)で表される金属アルコキシドとしては、例えば、リチウムエトキシドLiOEt、ニオブエトキシドNb(OEt)、マグネシウムイソプロポキシドMg(OPr−i)、アルミニウムイソプロポキシドAl(OPr−i)、亜鉛プロポキシドZn(OPr)、テトラエトキシシランSi(OEt)、チタンイソプロポキシドTi(OPr−i)、バリウムエトキシドBa(OEt)、バリウムイソプロポキシドBa(OPr−i)、トリエトキシボランB(OEt)、ジルコニウムプロポキシドZn(OPr)、ランタンプロポキシドLa(OPr)、イットリウムプロポキシドY(OPr)、鉛イソプロポキシドPb(OPr−i)等が好適に挙げられる。これらの金属アルコキシドは何れも市販品があり、容易に入手することができる。また、金属アルコキシドは、部分的に加水分解して得られる低縮合物も市販されており、これを原料として使用することも可能である。
【0144】
〈無機酸化物〉
本発明に係る無機酸化物は、上記有機金属化合物を原料とするゾルから局所的加熱により形成されたものである。従って、有機金属化合物に含有されているケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)等の元素の酸化物であることを特徴とする。
【0145】
例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等である。これらのうち、好ましくは、酸化ケイ素である。
【0146】
本発明において、有機金属化合物から無機酸化物を形成する方法としては、いわゆるゾル−ゲル法及びポリシラザンを塗布する方法を用いることが好ましい。
【0147】
〈ゾル−ゲル法〉
ここで、「ゾル−ゲル法」とは、有機金属化合物を加水分解すること等により、水酸化物のゾルを得て、脱水処理してゲルとし、さらにこのゲルを加熱処理することで、ある一定の形状(フィルム状、粒子状、繊維状等)の金属酸化物ガラスを調製する方法をいう。異なる複数のゾル溶液を混合する方法、他の金属イオンを添加する方法等により、多成分系の金属酸化物ガラスを得ることも可能である。
【0148】
具体的には、下記工程を有するゾル−ゲル法で、無機酸化物を製造することが好ましい。
【0149】
すなわち、少なくとも水及び有機溶媒を含有する反応液中で、ホウ素イオン存在下にてハロゲンイオンを触媒として、pHを4.5〜5.0に調整しながら、有機金属化合物を加水分解及び脱水縮合して反応生成物を得る工程、及び該反応生成物を200℃以下の温度で加熱してガラス化する工程、を有するゾル−ゲル法により製造されてなることが、高温熱処理による微細孔の発生や膜の劣化等が発生しないという観点から、特に好ましい。
【0150】
前記ゾル−ゲル法において、原料として用いられる有機金属化合物としては、加水分解が可能なものであればよく、特に限定されるものではないが、好ましい有機金属化合物としては、前記金属アルコキシドが挙げられる。
【0151】
上記ゾル−ゲル法において、前記有機金属化合物は、そのまま反応に用いてもよいが、反応の制御を容易にするため溶媒で希釈して用いることが好ましい。希釈用溶媒は、前記有機金属化合物を溶解することができ、かつ水と均一に混合することができるものであればよい。そのような希釈用溶媒としては、脂肪族の低級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びそれらの混合物が好適に挙げられる。また、ブタノールとセロソルブとブチルセロソルブの混合溶媒、あるいはキシロールとセロソルブアセテートとメチルイソブチルケトンとシクロヘキサンの混合溶媒等を使用することもできる。
【0152】
前記有機金属化合物において、金属がCa、Mg、Al等である場合には、反応液中の水と反応して水酸化物を生成したり、炭酸イオンCO2−が存在すると炭酸塩を生成して沈殿を生ずるため、反応液に隠蔽剤としてトリエタノールアミンのアルコール溶液を添加することが好ましい。溶媒に混合溶解するときの前記有機金属化合物の濃度としては、70質量%以下が好ましく、5〜70質量%の範囲に希釈して使用することがより好ましい。
【0153】
前記ゾル−ゲル法において用いられる反応液は、少なくとも水及び有機溶媒を含有する。前記有機溶媒としては、水及び酸、アルカリと均一な溶液をつくるものであればよく、通常、前記有機金属化合物の希釈に用いる脂肪族の低級アルコール類と同様のものが好適に挙げられる。前記脂肪族の低級アルコール類の中でも、メタノール、エタノールより、炭素数の多いプロパノール、イソプロパノール、ブタノール、及びイソブタノールが好ましい。これは、生成する金属酸化物ガラスの膜の成長が安定であるためである。前記反応液において、水の割合としては、水の濃度として0.2〜50mol/Lの範囲が好ましい。
【0154】
前記ゾル−ゲル法においては、前記反応液中において、ホウ素イオンの存在下にて、ハロゲンイオンを触媒として、有機金属化合物を加水分解する。前記ホウ素イオンB3+を与える化合物としては、トリアルコキシボランB(OR)が好適に挙げられる。その中でも、トリエトキシボランB(OEt)がより好ましい。また、前記反応液中のB3+イオン濃度としては、1.0〜10.0mol/Lの範囲が好ましい。
【0155】
前記ハロゲンイオンとしては、フッ素イオン及び/または塩素イオンが好適に挙げられる。即ち、フッ素イオン単独、塩素イオン単独でもよく、これらの混合物でもよい。用いる化合物としては、上記反応液中でフッ素イオン及び/または塩素イオンを生ずるものであればよく、例えば、フッ素イオン源として、フッ化水素アンモニウムNHHF・HF、フッ化ナトリウムNaF等が好適に挙げられ、塩素イオン源として、塩化アンモニウムNHCl等が好適に挙げられる。
【0156】
前記反応液中の前記ハロゲンイオンの濃度としては、製造しようとする無機マトリックスを有する無機組成物からなるフィルムの膜厚や、その他の条件によって異なるが、一般的には、触媒を含む前記反応液の合計質量に対して、0.001〜2mol/kg、特に0.002〜0.3mol/kgの範囲が好ましい。ハロゲンイオンの濃度が0.001mol/kgより低いと、有機金属化合物の加水分解が十分に進行し難くなり、膜の形成が困難となる。またハロゲンイオンの濃度が2mol/kgを超えると、生成する無機マトリックス(金属酸化物ガラス)が不均一になり易いため、いずれも好ましくない。
【0157】
なお、反応時に使用したホウ素に関しては、得られる無機マトリックスの設計組成中にB成分として含有させる場合は、その含有量に応じた有機ホウ素化合物の計算量を添加したまま生成物とすればよく、またホウ素を除去したいときは、成膜後、溶媒としてのメタノールの存在下、またはメタノールに浸漬して加熱すればホウ素はホウ素メチルエステルとして蒸発させて除去することができる。
【0158】
前記有機金属化合物を、加水分解及び脱水縮合して反応生成物を得る工程においては、通常所定量の前記有機金属化合物を所定量の水及び有機溶媒を含有する混合溶媒に混合溶解した主剤溶液、ならびに所定量の前記ハロゲンイオンを含有する所定量の反応液を、所定の比で混合し十分に攪拌して均一な反応溶液とした後、酸またはアルカリで反応溶液のpHを希望の値に調整し、数時間熟成することにより進行させて反応生成物を得る。前記ホウ素化合物は、主剤溶液または反応液に予め所定量を混合溶解しておく。また、アルコキシボランを用いる場合は、他の有機金属化合物と共に主剤溶液に溶解するのが有利である。
【0159】
前記反応溶液のpHは、目的によって選択され、無機マトリックス(金属酸化物ガラス)を有する無機組成物からなる膜(フィルム)の形成を目的とするときは、例えば、塩酸等の酸を用いてpHを4.5〜5の範囲に調整して熟成するのが好ましい。この場合は、例えば、指示薬としてメチルレッドとブロモクレゾールグリーンとを混合したもの等を用いると便利である。
【0160】
なお、前記ゾル−ゲル法においては、同一成分の同一濃度の主剤溶液、及び反応液(B3+及びハロゲンイオンを含む。)を所定のpHに調整しながら、逐次同一割合で追加添加することにより簡単に継続して、反応生成物を製造することもできる。なお、前記反応溶液の濃度は±50質量%の範囲で、水(酸またはアルカリを含む。)の濃度は、±30質量%の範囲で、及びハロゲンイオンの濃度は±30質量%の範囲で変化させることができる。
【0161】
次に、前工程で得られた反応生成物(熟成後の反応溶液)を、200℃以下の温度に加熱して乾燥しガラス化させる。加熱にあたって、特に50〜70℃の温度区間を注意して徐々に昇温して、予備乾燥(溶媒揮散)工程を経た後さらに昇温することが好ましい。この乾燥は、膜形成の場合、無孔化膜とするために重要である。予備乾燥工程後、加熱し乾燥する温度としては、70〜150℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。
【0162】
〈ポリシラザンを塗布する方法〉
本発明に係るガスバリア層は、加熱により無機酸化物膜を形成するセラミック前駆体を塗布した後に、塗布膜の局所的加熱により形成された無機酸化物を含有することも好ましい。
【0163】
当該セラミック前駆体が、ポリシラザンを含有する場合は、下記一般式(II)で表されるポリシラザン及び有機溶剤中に必要に応じて触媒を含む溶液で樹脂基材を被覆し、そして、この溶剤を蒸発させて除去し、それによって樹脂基材上に0.05〜3.0μmの層厚を有するポリシラザン層を残し、そして、水蒸気を含む雰囲気中で酸素、活性酸素、場合によっては、及び窒素の存在下に、上記のポリシラザン層を、局所的加熱することによって、当該樹脂基材上にガラス様の透明な被膜を形成する方法を採用することが好ましい。
【0164】
一般式(II):−(SiR−NR
一般式(II)において、R、R、及びRは、同一かまたは異なり、互いに独立して、水素、あるいは場合によっては置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基、好ましくは水素、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、フェニル、ビニルまたは3−(トリエトキシシリル)プロピル、3−(トリメトキシシリルプロピル)からなる群から選択される基を表し、この際、nは整数であり、そしてnは、当該ポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められる。
【0165】
触媒としては、好ましくは、塩基性触媒、特にN,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミンまたはN−複素環式化合物が使用される。触媒濃度は、ポリシラザンを基準にして通常0.1〜10モル%、好ましくは0.5〜7モル%の範囲である。
【0166】
好ましい態様の一つでは、R、R及びRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンを含む溶液が使用される。
【0167】
さらに別の好ましい態様の一つでは、本発明によるコーティングは、下記一般式(III)の少なくとも一種のポリシラザンを含む。
【0168】
一般式(III):−(SiR−NR−(SiR−NR
一般式(III)において、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素、あるいは場合によっては置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基を表し、この際、n及びpは整数であり、そしてnは、当該ポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められる。
【0169】
特に好ましいものは、R、R及びRが水素を表し、そしてR、R及びRがメチルを表す化合物、R、R及びRが水素を表し、そしてR、Rがメチルを表し、そしてRがビニルを表す化合物、R、R、R及びRが水素を表し、そしてR及びRがメチルを表す化合物である。
【0170】
また、一般式(IV)の少なくとも一種のポリシラザンを含む溶液も同様に好ましい。
【0171】
一般式(IV):−(SiR−NR−(SiR−NR−(SiR−NR
一般式(IV)において、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立して、水素、あるいは場合によっては置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基を表し、この際、n、p及びqは整数であり、そしてnは、当該ポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められる。
【0172】
特に好ましいものは、R、R及びRが水素を表し、そしてR、R、R及びRがメチルを表し、Rが(トリエトキシシリル)プロピルを表し、そしてRがアルキルまたは水素を表す化合物である。
【0173】
溶剤中のポリシラザンの割合は、一般的には、ポリシラザン1〜80質量%、好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは10〜40質量%である。
【0174】
溶剤としては、特に、水及び反応性基(例えばヒドロキシル基またはアミン基)を含まずそしてポリシラザンに対して不活性の有機系で好ましくは非プロトン性の溶剤が好適である。これは、例えば、脂肪族または芳香族炭化水素、ハロゲン炭化水素、エステル、例えば酢酸エチルまたは酢酸ブチル、ケトン、例えばアセトンまたはメチルエチルケトン、エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはジブチルエーテル、並びにモノ−及びポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジグライム類)またはこれらの溶剤からなる混合物である。
【0175】
上記ポリシラザン溶液の追加の成分は、塗料の製造に慣用されているもののようなさらに別のバインダーであることができる。これは、例えば、セルロースエーテル及びセルロースエステル、例えばエチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートまたはセルロースアセトブチレート、天然樹脂、例えばゴムもしくはロジン樹脂、または合成樹脂、例えば重合樹脂もしくは縮合樹脂、例えばアミノプラスト、特に尿素樹脂及びメラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステルもしくは変性ポリエステル、エポキシド、ポリイソシアネートもしくはブロック化ポリイソシアネート、またはポリシロキサンである。
【0176】
当該ポリシラザン調合物のさらに別の成分は、例えば、調合物の粘度、下地の濡れ、成膜性、潤滑作用または排気性に影響を与える添加剤、あるいは無機ナノ粒子、例えばSiO、TiO、ZnO、ZrOまたはAlであることができる。
【0177】
本発明の方法を用いることによって、亀裂及び孔がないためにガスに対する高いバリア作用に優れる緻密なガラス様の層を製造することができる。
【0178】
形成される被膜の厚さは、100nm〜2μmの範囲内にすることが好ましい。
【0179】
(傷防止層)
本発明においては、フィルムミラーの最外層として、傷防止層を設けることができる。傷防止層は、傷防止のために設けられる。
【0180】
傷防止層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、有機シリケート化合物、シリコン系樹脂等で構成することができる。特に、硬度と耐久性等の点で、シリコン系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。さらに、硬化性、可撓性及び生産性の点で、活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂、または熱硬化型のアクリル系樹脂からなるものが好ましい。
【0181】
活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂または熱硬化型のアクリル系樹脂とは、重合硬化成分として多官能アクリレート、アクリルオリゴマーあるいは反応性希釈剤を含む組成物である。その他に必要に応じて光開始剤、光増感剤、熱重合開始剤あるいは改質剤等を含有しているものを用いてもよい。
【0182】
アクリルオリゴマーとは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート等であり、また、メラミンやイソシアヌール酸等の剛直な骨格にアクリル基を結合したもの等も用いられ得る。
【0183】
また、反応性希釈剤とは、塗工剤の媒体として塗工工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となるものである。
【0184】
市販されている多官能アクリル系硬化塗料としては、三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム(登録商標)”シリーズ等)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール(登録商標)”シリーズ等)、新中村株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズ等)、DIC株式会社;(商品名“UNIDIC(登録商標)”シリーズ等)、東亞合成株式会社;(商品名“アロニックス(登録商標)”シリーズ等)、日本油脂株式会社;(商品名“ブレンマー(登録商標)”シリーズ等)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD(登録商標)”シリーズ等)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズ等)等の製品を利用することができる。
【0185】
本発明において、傷防止層中には、本発明の効果が損なわれない範囲で、さらに各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等の安定剤、界面活性剤、レベリング剤及び帯電防止剤等を用いることができる。
【0186】
レベリング剤は、特に機能層を塗工する際、表面凹凸低減に効果的である。レベリング剤としては、例えば、シリコン系レベリング剤として、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体(例えば東レダウコーニング(株)製SH190)が好適である。
【0187】
(接着層)
本発明に係るフィルムミラーは、接着層を有していてもよい。接着層は金属からなる反射層と樹脂基材(樹脂フィルム)との接着性を高めるために用いられるもの(密着性)や、他の構成層同士の接着性を高めるもの、金属からなる反射層を真空蒸着法等で形成する時の熱にも耐え得る耐熱性、及び金属からなる反射層が本来有する高い反射性能を引き出すための平滑性を有するものであってもよいが、樹脂からなることが好ましい。
【0188】
接着層に使用する樹脂は、上記の密着性、耐熱性及び平滑性の条件を満足するものであれば特に制限はなく、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系樹脂等の単独またはこれらの混合樹脂が使用でき、耐候性の点からポリエステル系樹脂とメラミン系樹脂の混合樹脂が好ましく、さらにイソシアネート等の硬化剤を混合した熱硬化型樹脂とすればより好ましい。ポリエステル系樹脂では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましい。
【0189】
接着層の厚さは、密着性、平滑性、反射材の反射率等の観点から、0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。
【0190】
接着層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。接着層が金属酸化物である場合、例えば酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化ランタン、窒化ランタン等、各種真空製膜法により製膜することができる。例えば、抵抗加熱式真空蒸着法、電子ビーム加熱式真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト真空蒸着法、スパッタ法等がある。
【0191】
(金属層)
本発明では、前記腐食防止能を持つ紫外線吸収材層と銀反射層の間に、銅や亜鉛等の銀よりもイオン化傾向の高い金属を含有する金属層が前記銀反射層に隣接していることが好ましい。
【0192】
本発明に係る金属層は、銀の犠牲防食機能を有するものであるため、銀に隣接した形態で、銀よりもイオン化傾向が高いものを使用する必要がある。例えば、リチウム、セシウム、ルビジウム、カリウム、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、マンガン、タンタル、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、銅、水銀等を挙げることができる。特にアルミニウム、亜鉛、鉄、スズ、銅であることが好ましい。
【0193】
金属層の製造方法はめっき法で総称される湿式法で形成してもよく、前述の真空製膜法を用いてもいい。
【0194】
金属層の膜厚は、銀の犠牲防食機能を有することを考慮して、10nm〜500nmで範囲内である。好ましくは50〜300μm、さらに好ましくは100〜200μmである。
【0195】
(フィルムミラー全体の厚さ)
本発明に係るフィルムミラー全体の厚さは、ミラーがたわみ防止、正反射率、取り扱い性等の観点から、75〜250μmが好ましく、さらに好ましくは90〜230μm、さらに好ましくは100〜220μmである。
【0196】
(太陽熱発電用反射装置)
本発明のフィルムミラーは、太陽熱を集光する目的に好ましく使用できる。フィルムミラー単体で太陽熱集光ミラーとして用いることもできるが、より好ましくは、樹脂基材を挟んで銀反射層を有する側と反対側の樹脂基材面に塗設された粘着層を介して、他基材上に、特に金属基材上に、当該フィルムミラーを貼り付けて太陽熱発電用反射装置として用いることである。
【0197】
太陽熱発電用反射装置として用いる場合、反射装置の形状を樋状(半円筒状)として、半円の中心部分に内部に流体を有する筒状部材を設け、筒状部材に太陽熱を集光させることで内部の流体を加熱し、その熱エネルギーを変換して発電する形態が一形態として挙げられる。また、平板状の反射装置を複数個所に設置し、それぞれの反射装置で反射された太陽熱を一枚の反射鏡(中央反射鏡)に集光させて、反射鏡により反射して得られた熱エネルギーを発電部で変換することで発電する形態も一形態として挙げられる。特に後者の形態においては、用いられる反射装置に高い正反射率が求められるため、本発明のフィルムミラーが特に好適に用いられる。
【0198】
〈粘着層〉
粘着層としては、特に制限されず、例えばドライラミネート剤、ウエットラミネート剤、粘着剤、ヒートシール剤、ホットメルト剤等のいずれもが用いられる。
【0199】
例えばポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ニトリルゴム等が用いられる。
【0200】
ラミネート方法は特に制限されず、例えばロール式で連続的に行うのが経済性及び生産性の点から好ましい。
【0201】
粘着層の厚さは、粘着効果、乾燥速度等の観点から、通常1〜50μm程度の範囲であることが好ましい。
【0202】
本発明に適宜採用される本発明のフィルムミラーと貼り合せられる他基材としては、銀反射層層の保護性を付与できるものであればよく、例えば、アクリルフィルムまたはシート、ポリカーボネートフィルムまたはシート、ポリアリレートフィルムまたはシート、ポリエチレンナフタレートフィルムまたはシート、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはシート、フッ素フィルム等のプラスチックフィルムまたはシート、または酸化チタン、シリカ、アルミニウム粉、銅粉等を練り込んだ樹脂フィルムまたはシート、これらを練り込んだ樹脂をコーティングしたり、金属蒸着等の表面加工を施した樹脂フィルムまたはシートが用いられる。
【0203】
貼り合わせフィルムまたはシートの厚さは、特に制限はないが通常12〜250μmの範囲であることが好ましい。
【0204】
また、これらの他基材は本発明のフィルムミラーと貼り合わせる前に凹部や凸部を設けてから貼り合せてもよく、貼り合せた後で凹部や凸部を有するように成形してもよく、貼り合わせと凹部や凸部を有するように成形することを同時にしてもよいものである。
【0205】
〈金属基材〉
本発明に係る太陽熱集光ミラーの金属基材としては、鋼板、銅板、アルミニウム板、アルミニウムめっき鋼板、アルミニウム系合金めっき鋼板、銅めっき鋼板、錫めっき鋼板、クロムめっき鋼板、ステンレス鋼板等熱伝導率の高い金属材料を用いることができる。
【0206】
本発明においては、特に耐食性の良好なめっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板等にすることが好ましい。
【実施例】
【0207】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0208】
実施例1
〔フィルムミラーの作製〕
(フィルムミラー1の作製)
樹脂基材として、2軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ100μm)を用いた。このフィルムの片面に、銀反射層として真空蒸着法により厚さ80nmの銀反射層を形成した。銀反射層上に、ポリエステル系樹脂(ポリエスター SP−181、日本合成化学社製)と、TDI系イソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート)を樹脂固形分比率で10:2に混合した樹脂中に、さらに腐食防止剤としてグリコールジメルカプトアセテートを塗布後に0.3g/mとなるよう調整した量を添加し、グラビアコート法によりコーティングして、厚さ0.1μmの銀保護ポリマー層を形成した。さらに、その上に紫外線吸収剤を含む層として、メチルアクリレート:ブチルアクリレート共重合体(比率64:36、紫外線硬化樹脂)にTINUVIN328(紫外線吸収剤、BASFジャパン社製)を10質量%混合したトルエン溶液をグラビアコート法によりコーティングし、105℃で4分間乾燥した。銀反射層のない側の樹脂基材面に、アクリル系の粘着剤エスダイン#7851(積水化学工業製)を5μm厚に塗布して粘着層を形成し、比較例のフィルムミラー1の作製を作製した。
【0209】
(フィルムミラー2の作製)
フィルムミラー1の作製において、紫外線吸収剤を含む層のTINUVIN328(紫外線吸収剤、BASFジャパン社製)を紫外線硬化樹脂に対し10質量%を、TINUVIN328(紫外線吸収剤、BASFジャパン社製)を紫外線硬化樹脂に対し5質量%、及びTINUVIN234(紫外線吸収剤、BASFジャパン社製)を紫外線硬化樹脂に対し5質量%に変更した以外は同様にして、比較例のフィルムミラー2を作製した。
【0210】
(フィルムミラー3の作製)
フィルムミラー1の作製において、メチルアクリレート:ブチルアクリレート共重合体(比率64:36、紫外線硬化樹脂)をイソボニルアクリレート(紫外線硬化樹脂)に代え、TINUVIN328(紫外線吸収剤、BASFジャパン社製)を紫外線硬化樹脂に対し10質量%を、CGL−139(紫外線吸収剤、BASFジャパン社製)を紫外線硬化樹脂に対し16質量%に代えた以外は同様にして、比較例のフィルムミラー3を作製した。
【0211】
(フィルムミラー4の作製)
樹脂基材として、2軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ100μm)を用いた。このフィルムの片面に、銀反射層として、真空蒸着法により厚さ80nmの銀反射層を形成した。銀反射層上に、ポリエステル系樹脂(ポリエスター SP−181、日本合成化学社製)と、TDI系イソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート)を樹脂固形分比率で10:2に混合した樹脂中に、さらに腐食防止剤としてグリコールジメルカプトアセテートを塗布後に0.3g/mとなるよう調整した量を添加し、グラビアコート法によりコーティングして、厚さ0.1μmの銀保護ポリマー層を形成した。さらにその上に紫外線吸収剤を含む層として、水分散エマルジョンタイプのベンゾトリアゾール系高分子型紫外線吸収コーティング液UVA−1383MG(BASF社製)をグラビアコート法によりコーティングして、55℃で4分間乾燥した。銀反射層のない側の樹脂基材面に、接着剤としてアクリル系の粘着剤エスダイン#7851(積水化学工業製)を5μm厚に塗布して接着層を形成し、本発明のフィルムミラー4を作製した。
【0212】
(フィルムミラー5の作製)
フィルムミラー4の作製において、紫外線吸収剤を含む層として、ベンゾフェノン系高分子型紫外線吸収コーティング液UVA−933LP(BASF社製)とメチルアクリレート:ブチルアクリレート共重合体(比率64:36)を6:4となるよう調整したメチルエチルケトン溶液をグラビアコート法によりコーティングして105℃で4分間乾燥した以外は同様にして本発明のフィルムミラー5を作製した。
【0213】
(フィルムミラー6の作製)
フィルムミラー4の作製において、紫外線吸収剤を含む層のベンゾフェノン系高分子型紫外線吸収コーティング液UVA−933LP(BASF社製)をベンゾトリアゾール系高分子型紫外線吸収コーティング液UVA−1933LP(BASF社製)に代えた以外は同様にして本発明のフィルムミラー6を作製した。
【0214】
〔フィルムミラーの評価〕
〔太陽熱発電用反射装置の作製〕
実際の太陽熱発電用反射装置は形状として1辺が少なくとも1mを超える長さであり、そのままのサイズでは評価測定装置で評価できないことから、下記のような小サイズの太陽熱発電用反射装置を作製し、これを用いて太陽熱発電用反射装置のフィルムミラーの評価を行った。
【0215】
厚さ1mmで、縦25.4mm×横76.2mmのスライドガラス上に、上記作製したフィルムミラー1〜6を、厚さ5μmの粘着層を介して貼り付け、それぞれ太陽熱発電用反射装置1〜6を作製した。
【0216】
〔太陽熱発電用反射装置の評価〕
上記で得られた太陽熱発電用反射装置について、下記の方法により正反射率、密着性、耐候性及び冷熱衝撃耐性の評価を行った。
【0217】
(正反射率)
太陽熱発電用反射装置を測定サイズの2.5cm角に切り出し、分光光度計U4000(日立ハイテクノロジーズ製)の反射率測定モードを選択し、反射面の法線に対して、入射光の入射角を5°となるように調整し、入射した光の反射光を積分球に導き正反射率を測定した。可視光領域(400〜800nm)の反射率を平均して、正反射平均値を算出し、下記基準で評価した。
○:正反射率平均値が90%以上
△:正反射率平均値が80%以上90%未満
×:正反射率平均値が80%未満
(密着性)
JISK5600−5−6の手順に従い、太陽熱発電用反射装置の光入射側からカッターを用いて2mm間隔で切り込みを入れ100個の碁盤の目を作成した。接着テープ(ニチバン製)を膜表面にしっかりと貼り、テープを勢いよくはがして剥離せずに残ったマス目の数を測定し、下記基準で評価した。
5:残ったマス目が90〜100個
4:残ったマス目が70〜89個
3:残ったマス目が50〜69個
2:残ったマス目が30〜49個
1:残ったマス目が29個以下
(耐候性)
85℃、85%RHの条件で30日間放置後の太陽熱発電用反射装置の反射率を、上記正反射率測定と同様の方法により測定した。強制劣化試験前後のフィルムミラーの正反射率の低下率を算出し、下記基準で評価した。
5:反射率の低下率が5%未満
4:反射率の低下率が5%以上10%未満
3:反射率の低下率が10%以上15%未満
2:反射率の低下率が15%以上20%未満
1:反射率の低下率が20%以上
(冷熱衝撃耐性)
−40℃から+80℃の雰囲気を6時間周期で繰り返す冷熱衝撃試験機に10日間投入し、目視にてフィルムミラー表面のブリードアウトを観察し、下記基準で評価した。
○:1cm角の面積内に目視で見える粉が10点以下
△:1cm角の面積内に目視で見える粉が11〜20点
×:1cm角の面積内に目視で見える粉が21点以上
評価の結果を表1に示す。
【0218】
【表1】
【0219】
表1から明らかなように、本発明の太陽熱発電用反射装置の各種特性は、比較例の太陽熱発電用反射装置の各種特性に対して優れていることが分かる。すなわち、本発明の上記手段により、構成層の劣化に伴う銀反射層の正反射率の低下を防止するとともに、軽量で柔軟性があり、製造コストを抑え、大面積化・大量生産することのできる密着性、耐候性及び冷熱衝撃耐久性に優れ、太陽熱に対して良好な正反射率を有するフィルムミラーを用いた太陽熱発電用反射装置が得られることが分かる。
【0220】
実施例2
〔フィルムミラーの作製〕
(フィルムミラー1の作製)
樹脂基材として、2軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ100μm)を用いた。上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、酸化ランタンと酸化アルミニウムを8:2で混合した混合物を真空蒸着法により60nmになるように蒸着し、続いて銅層を真空蒸着法により厚さ100nmの銅反射層を形成し、同様に銀反射層を150nmになるように蒸着した。次に銀反射層上に、ポリエステル系樹脂とTDI(トリレンジイソシアネート)系イソシアネートを樹脂固形分比率で10:2に混合した樹脂を、グラビアコート法によりコーティングして、厚さ0.1μmの腐食防止剤層を形成し、比較例のフィルムミラー1を作製した。
【0221】
(フィルムミラー2の作製)
フィルムミラー1の作製において、腐食防止剤層に腐食防止剤としてジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレート(腐食防止剤A、紫外線吸収能のある腐食防止剤)を0.3g/mとなるように含有させたこと以外は同様にして、比較例のフィルムミラー2を作製した。
【0222】
(フィルムミラー3の作製)
フィルムミラー1の作製において、腐食防止剤層に腐食防止剤としてグリコールジメルカプトアセテート(腐食防止剤B、紫外線吸収能のない腐食防止剤)を0.3g/mとなるように含有させ、腐食防止剤層上に、酸化セリウムを電子ビーム加熱式真空蒸着法により100nm製膜し紫外線吸収剤層を形成したこと以外は同様にして、比較例のフィルムミラー3を作製した。
【0223】
(フィルムミラー4の作製)
樹脂基材として、2軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ100μm)を用いた。上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、酸化ランタンと酸化アルミニウムを8:2で混合した混合物を真空蒸着法により60nmになるように蒸着し、続いて銅層を真空蒸着法により厚さ100nmの銅反射層を形成し、同様に銀反射層を150nmになるように蒸着した。銀反射層上に、ポリエステル系樹脂とTDI系イソシアネートを樹脂固形分比率で10:2に混合した樹脂中に、さらに腐食防止剤としてジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレートを0.3g/mとなるよう調整した量を添加し、グラビアコート法によりコーティングして、厚さ100nmの腐食防止剤層を形成した。その上に、上記腐食防止剤層のバインダーとして用いたポリエステル系樹脂に紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾールを0.3g/mとなるよう調整した量を添加して、グラビアコート法によりコーティングして、厚さ100nmの紫外線吸収剤層を形成し、本発明のフィルムミラー4を作製した。
【0224】
(フィルムミラー5の作製)
フィルムミラー4の作製において、紫外線吸収剤層を、酸化セシウムを100nm真空蒸着法により製膜した以外は同様にして、本発明のフィルムミラー5を作製した。
【0225】
(フィルムミラー6の作製)
フィルムミラー5の紫外線吸収剤層上に、ジブチルエーテル中(クラリアント社製、NL120)の3質量%パーヒドロポリシラザン液を用いて、乾燥後の膜の厚さが100nmとなるようにバーコーティングし、3分間自然乾燥した後、90℃のオーブンで30分間アニールし、ガスバリア層を設け、本発明のフィルムミラー6を作製した。
【0226】
(フィルムミラー7の作製)
フィルムミラー6のガスバリア層の上に、市販のハードコート剤(JSR社製、オプスター(登録商標)Z7534)をメチルエチルケトンで固形分濃度が50質量%になるように希釈し、さらに平均粒子径が1.5μmのアクリル系微粒子(綜研化学社製、ケミスノー(登録商標)MXシリーズ)を上記ハードコート剤の固形分に対して1質量%添加して、傷防止層用の塗料を調製した。上記の塗料を塗工後、80℃で乾燥、さらに紫外線1.0J/cmを照射して硬化させ、厚さ6μmの傷防止層を設け、本発明のフィルムミラー7を作製した。
【0227】
(フィルムミラー8の作製)
フィルムミラー7の作製において、2軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ100μm)を2軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ175μm)に替えた以外は同様にして、本発明のフィルムミラー8を作製した。
【0228】
〔太陽熱発電用反射装置の作製〕
厚さ0.1mmで、縦4cm×横5cmのステンレス(SUS304)板上に、上記作製したフィルムミラー1〜8を、厚さ3μmの粘着層を介して貼り付け、それぞれ太陽熱発電用反射装置1〜8を作製した。
【0229】
〔太陽熱発電用反射装置の評価〕
上記で得られた太陽熱発電用反射装置について、下記の方法により正反射率、耐候性、耐光性、鉛筆硬度及び黄色変化の評価を行った。
【0230】
(正反射率)
島津製作所社製の分光光度計「UV265」に、積分球反射付属装置を取り付けたものを改造し、反射面の法線に対して、入射光の入射角を5°となるように調整し、反射角5°の正反射率を測定した。評価は、350nmから700nmまでの平均反射率として測定した。
【0231】
(耐候性)
85℃、85%RHの条件で30日間放置後の正反射率を、上記と同様の方法により測定し、強制劣化前の正反射率と強制劣化後の正反射率の比から、耐候性試験前後における正反射率の低下率を算出した。以下に耐候性試験の評価基準を示す。
5:正反射率の低下率が5%未満
4:正反射率の低下率が5%以上10%未満
3:正反射率の低下率が10%以上15%未満
2:正反射率の低下率が15%以上20%未満
1:正反射率の低下率が20%以上
(耐光性)
岩崎電気製アイスーパーUVテスターを用いて、65℃の環境下で7日間紫外線照射を行った後、上記方法により正反射率を測定し、強制劣化前の正反射率と強制劣化後の正反射率の比から、耐光性試験前後における正反射率の低下率を算出した。以下に耐光性試験の評価基準を示す。
5:正反射率の低下率が5%未満
4:正反射率の低下率が5%以上10%未満
3:正反射率の低下率が10%以上15%未満
2:正反射率の低下率が15%以上20%未満
1:正反射率の低下率が20%以上
(鉛筆硬度)
JIS−K5400に基づいて、各サンプルの45°傾斜、1kg荷重における鉛筆硬度を測定した。
【0232】
(黄色変化)
岩崎電気製アイスーパーUVテスターを用いて、65℃の環境下で7日間紫外線照射を行った後、目視により黄色変化を観察した。以下に黄色変化の評価基準を示す。
○:目視で色味の差が見えない
△:目視で色味の差がわずかに見える
×:目視で色味の差がはっきり見える
評価の結果を表2に示す。
【0233】
【表2】
【0234】
表2から明らかなように、本発明のフィルムミラーを用いた太陽熱発電用反射装置の各種特性は、比較例のフィルムミラーを用いた太陽熱発電用反射装置に対して優れていることが分かる。すなわち、本発明の上記手段により、銀反射層の劣化による正反射率の低下を防止するとともに、軽量で柔軟性があり、製造コストを抑え大面積化・大量生産することのできる耐光性及び耐候性に優れ、太陽熱に対して良好な正反射率を有するフィルムミラーを用いた太陽熱発電用反射装置が得られることが分かる。