(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、可能な場合には、同一又は相当要素には同一の符号を付す。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る半導体光素子の構造を概略的に示す平面図である。
図1に示されるように、半導体光素子1は、第1部分1aと、第2部分1bと、第3部分1cとからなり、第1部分1a、第3部分1c、第2部分1bの順に一方向(第1方向)に沿って配列されている。第1部分1aは、ハイメサ型光導波路20を有し、例えば2×2の多モード光干渉(MMI:Multi Mode Interference)により構成されたMach−Zehnder型変調器(MZM)のような半導体変調器として機能する。第2部分1bは、リッジ型光導波路30を有する。第3部分1cは、変換領域40を有する。この第2部分1bは、例えば回折格子を有する半導体レーザとして機能する。
【0020】
また、半導体光素子1は、第1方向と直交する第2方向において、ストライプ形成部分1dを挟むように一対のテラス形成部分1e,1fを有する。ストライプ形成部分1dには、半導体ストライプSが設けられている。この半導体ストライプSは、第1方向(導波路軸)に延在し、第1部分1aに設けられた第1ストライプS1と、第2部分1bに設けられた第2ストライプS2と、第3部分1cに設けられた第3ストライプS3とを含む。第3ストライプS3は、第1ストライプS1の一端と、第2ストライプS2の一端とに接続されている。具体的に説明すると、第1ストライプS1は、メサ構造を有し、第1メサ20a、第2メサ20b、第3メサ20c、第4メサ20d、第5メサ20eおよび第6メサ20fを備える。第2ストライプS2は、リッジ構造を有し、第1リッジ30aおよび第2リッジ30bを備える。さらに、第3ストライプS3は、リッジ構造とメサ構造とを繋ぐための構造を有し、第1変換部40aおよび第2変換部40bとを備える。また、第1ストライプS1には、第1合分波器50aおよび第2合分波器50bが設けられている。
【0021】
第1リッジ30aおよび第2リッジ30bは、半導体光素子1の第1方向の一端面に一端を有し、第1方向に沿って一端面から第3部分1cまで延在する。また、第1リッジ30aおよび第2リッジ30bは、互いに平行に配置されている。第1変換部40aは、第1リッジ30aの他端に接続される一端と、第1メサ20aの一端に接続される他端とを有し、第1方向に沿って延在する。同様に、第2変換部40bは、第2リッジ30bの他端に接続される一端と、第2メサ20bの一端に接続される他端とを有し、第1方向に沿って延在する。第1メサ20aおよび第2メサ20bはそれぞれ、第1変換部40aおよび第2変換部40bから延び、第1合分波器50aに接続される。第3メサ20cおよび第4メサ20dは、第1合分波器50aと第2合分波器50bとの間に設けられている。第5メサ20eおよび第6メサ20fは、第2合分波器50bから半導体光素子1の第1方向の他端面まで延在する。
【0022】
テラス形成部分1e,1fには、テラスTe,Tfが設けられている。このテラスTeには、上部電極E11および上部電極E12が設けられている。テラスTfには、上部電極E13が設けられている。上部電極E11は、第1リッジ30aに接続され、テラスTe上まで延在している。上部電極E12は、第3メサ20cに接続され、テラスTe上まで延在している。上部電極E13は、第4メサ20dに接続され、テラスTf上まで延在している。
【0023】
そして、半導体ストライプSおよびテラスTe,Tfによって、第1凹部C1が規定される。すなわち、第1凹部C1は、第1リッジ30a、第1変換部40a、第1メサ20a、第1合分波器50a、第3メサ20c、第2合分波器50bおよび第5メサ20eと、テラスTeとの間、第2リッジ30b、第2変換部40b、第2メサ20b、第1合分波器50a、第4メサ20d、第2合分波器50b、第6メサ20fと、テラスTfとの間、第1リッジ30a、第1変換部40a、第1メサ20a、第1合分波器50a、第2メサ20b、第2変換部40bおよび第2リッジ30bに囲まれた部分、第1合分波器50a、第3メサ20c、第2合分波器50bおよび第4メサ20dに囲まれた部分、第5メサ20e、第2合分波器50bおよび第6メサ20fに囲まれた部分に設けられる。
【0024】
また、第1ストライプS1の両側面に沿って、第1ストライプS1と平行に延びる第2凹部C2が設けられる。第2凹部C2は、第1部分1aと第3部分1cとの境界から半導体光素子1の他端面まで延在する。さらに、第3ストライプS3の両側に第3凹部C3が設けられる。具体的には、第1変換部40aを挟むように第3凹部C31および第3凹部C32が設けられ、第2変換部40bを挟むように第3凹部C33および第3凹部C34が設けられる。そして、第3凹部C31、第3凹部C32、第3凹部C33および第3凹部C34では、各々の一端が第2凹部C2に接続される。そして、第3凹部C31は、第1部分1aと第3部分1cとの境界から第2部分1bと第3部分1cとの境界に向かって、第1変換部40aの一側面から徐々に離れるように設けられる。第3凹部C32は、第1部分1aと第3部分1cとの境界から第2部分1bと第3部分1cとの境界に向かって、第1変換部40aの他側面から徐々に離れるように設けられる。同様に、第3凹部C33および第3凹部C34は、第1部分1aと第3部分1cとの境界から第2部分1bと第3部分1cとの境界に向かって、それぞれ第2変換部40bの一側面および他側面から徐々に離れるように設けられる。このように、第1変換部40aおよび第2変換部40bの両側に設けられた第3凹部C3によって、変換領域40における屈折率を、ハイメサ型光導波路20における屈折率からリッジ型光導波路30における屈折率まで徐々に変化している。これにより、ハイメサ型光導波路20とリッジ型光導波路30との接続部における光伝播損失を低減することができる。
【0025】
また、ハイメサ型光導波路20(第1ストライプS1)の幅とリッジ型光導波路30(第2ストライプS2)の幅とは異なり、リッジ型光導波路30の幅の方がハイメサ型光導波路20の幅よりも大きい。このため、ハイメサ型光導波路20とリッジ型光導波路30との接続部における光伝播損失を低減するために、変換領域40において光導波路の幅を連続的に変化させている。また、ハイメサ型光導波路20の光軸とリッジ型光導波路30の光軸とは、一致している。このように、半導体光素子1は、ハイメサ型光導波路20とリッジ型光導波路30とが変換領域40を介して接続された構造を有し、半導体変調器と半導体レーザとを集積している。そして、半導体変調器(第1部分1a)の光導波路と半導体レーザ(第2部分1b、第3部分1c)の光導波路とは、組成が異なり、バットジョイントによって互いに接合されている。このように構成された半導体光素子1では、上部電極E11を介して電流が注入されることによりレーザ光が生成される。第2部分1bにおいて生成されたレーザ光は、バットジョイント接合部を経由し、第1部分1aの半導体変調器によって変調される。そして、変調された光が半導体光素子1の他端面から出射される。
【0026】
次に、
図2を参照して、半導体光素子1の製造方法について説明する。
図2は、半導体光素子1の製造方法を示す工程図である。
図2に示されるように、半導体光素子1の製造方法は、エピタキシャル成長工程S01と、第1マスク形成工程S02と、第1エッチング工程S03と、第2マスク形成工程S04と、第2エッチング工程S05と、第1、第2マスク除去工程S06と、表面保護膜形成工程S07と、埋め込み工程S08と、電極形成工程S09とによって構成されている。
【0027】
エピタキシャル成長工程S01では、半導体基板11の主面上に半導体積層10を成長する。
図3および
図4を用いて、エピタキシャル成長工程S01について具体的に説明する。
図3および
図4は、エピタキシャル成長工程S01における
図1のL−L線に沿っての断面状態を模式的に示した図である。まず、
図3の(a)に示されるように、半導体基板11の主面上に不図示のバッファ層および回折格子層12をエピタキシャル成長する。このバッファ層は、例えば導電型がn型のInPにより構成され、その厚さは500nm程度、ドーピングキャリア濃度は例えば4×10
17cm
−3程度である。また、回折格子層12は、例えばPL(Photoluminescence)波長が1.33μmとなる組成のInGaAsPにより構成され、その厚さは120nm程度、ドーピングキャリア濃度は例えば5×10
17cm
−3程度である。そして、半導体基板11の第2領域11b上の回折格子層12に回折格子Gを形成する(回折格子形成工程)。
【0028】
この回折格子Gは、以下のようにして形成される。CVD(Chemical Vapor Deposition)法によってシリコン窒化膜を例えば厚さ40nm程度で回折格子層12上に成長し、電子ビーム露光装置を用いてシリコン窒化膜上に回折格子パターンを形成する。このとき、電子ビーム露光用レジストを予めシリコン窒化膜上に塗布しておく。現像後、電子ビーム露光用レジストをマスクとして、例えばCF
4−RIEでシリコン窒化膜をエッチングし、回折格子パターンに対応する開口をシリコン窒化膜に形成する。次に、電子ビーム露光用レジストを除去し、シリコン窒化膜をマスクとして、例えばCH
4/H
2−RIEで回折格子層12をエッチングする。このエッチング深さは、例えば60nm程度である。そして、シリコン窒化膜を除去して、回折格子Gを形成する。この回折格子Gの周期は、例えば238.9nm程度である。
【0029】
次に、
図3の(b)に示されるように、OMVPE(Organometallic Vapor Phase Epitaxy)等の結晶成長装置を用いて、スペーサ層13、活性層14、エッチングストップ層15および下部クラッド層16をその順で回折格子層12上にエピタキシャル成長する(活性層エピ成長工程)。スペーサ層13は、例えば導電型がn型のInPにより構成され、その厚さは回折格子層12の平坦部上において70nm程度、ドーピングキャリア濃度は例えば5×10
17cm
−3程度である。このスペーサ層13によって、回折格子Gは埋め込まれ、スペーサ層13の主面において平坦化される。活性層14は、例えばPL波長が1.54μmとなる組成のInGaAsPにより構成され、MQW(Multi Quantum Well:多重量子井戸)構造を有している。エッチングストップ層15は、例えばPL波長が1.15μmとなる組成のInGaAsPにより構成され、その厚さは例えば20nm程度である。下部クラッド層16は、例えば導電型がp型のInPにより構成され、その厚さは例えば600nm程度、ドーピングキャリア濃度は例えば5×10
17cm
−3程度である。
【0030】
続いて、
図3の(c)に示されるように、下部クラッド層16上にバットジョイントマスク17を形成する(バットジョイントマスク形成工程)。このバットジョイントマスク17は、CVD法によって、シリコン窒化膜を250nm程度の厚さで下部クラッド層16上に成長し、フォトリソグラフィーによりパターン形成することによって形成される。バットジョイントマスク17は、例えば長さ方向の一端から所定の範囲に設けられる。
【0031】
次に、
図4の(a)に示されるように、濃度48%の臭化水素酸と水との体積混合比が2:1の水溶液を用いて下部クラッド層16をエッチングし、(111)面ファセットを形成する。このエッチングは、エッチングストップ層15において停止される。そして、濃度36%の塩酸と濃度31%の過酸化水素水と水との体積混合比が1:2:7の水溶液を用いてエッチングストップ層15と活性層14とをエッチングする。このエッチングは、スペーサ層13において停止される。さらに、濃度48%の臭化水素酸と水との体積混合比が2:1の水溶液を再び用いて、スペーサ層13をエッチングする(バットジョイント選択エッチング工程)。
【0032】
次に、
図4の(b)に示されるように、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)法により、バットジョイントエピ成長を行う(バットジョイント選択エピ成長工程)。バットジョイントマスク17を選択成長のためのマスクとして用い、バットジョイント選択エッチング工程におけるエッチングにより露出した回折格子層12上に活性層24を成長する。この活性層24は、例えばPL波長が1.48μmとなる組成のAlGaInAsにより構成され、MQW構造を有している。また、活性層24は、活性層14と同じ高さまで成長する。さらに、活性層24上にエッチングストップ層25を成長し、エッチングストップ層25上に下部クラッド層26を成長する。エッチングストップ層25は、エッチングストップ層15と同様に構成される。すなわち、エッチングストップ層25は、例えばPL波長が1.15μmとなる組成のInGaAsPにより構成され、その厚さは例えば20nm程度である。下部クラッド層26は、下部クラッド層16と同様に構成される。すなわち、下部クラッド層26は、例えば導電型がp型のInPにより構成され、その厚さは例えば600nm程度、ドーピングキャリア濃度は例えば5×10
17cm
−3程度である。
【0033】
次に、
図4の(c)に示されるように、フッ酸を用いてバットジョイントマスク17を除去し、再びMOCVD法により上部クラッド層27およびコンタクト層28を下部クラッド層16,26上に順に成長する(コンタクトエピ成長工程)。上部クラッド層27は、例えば導電型がp型のInPにより構成され、その厚さは例えば1.6μm程度、ドーピングキャリア濃度は下側で5×10
17cm
−3程度、上側で1.5×10
18cm
−3程度である。コンタクト層28は、例えばInPに格子整合したInGaAsにより構成され、その厚さは例えば250nm、ドーピングキャリア濃度は例えば1.5×10
19cm
−3程度である。このようにして、第1方向に沿って、第1半導体積層10aと第2半導体積層10bとが半導体基板11上に形成される。ここで、第1半導体積層10aは、回折格子層12と、活性層24と、エッチングストップ層25と、下部クラッド層26と、上部クラッド層27と、コンタクト層28とを含む。また、第2半導体積層10bは、回折格子層12と、スペーサ層13と、活性層14と、エッチングストップ層15と、下部クラッド層16と、上部クラッド層27と、コンタクト層28とを含む。
【0034】
図1に示されるように、半導体基板11は、ハイメサ型光導波路20が形成される第1領域11aとリッジ型光導波路30が形成される第2領域11bとを有する。また、第1領域11aと第2領域11bとの間には、変換領域40が形成される第3領域11cが設けられてもよい。すなわち、半導体基板11では、第1方向に沿って、第1領域11a、第3領域11c、第2領域11bの順に配列されている。そして、エピタキシャル成長工程S01では、
図5の(a)に示されるように、第1領域11a上に、第1半導体積層10aが設けられている。
図5の(b)および(c)に示されるように、第2領域11bおよび第3領域11c上に、第2半導体積層10bが設けられている。さらに、半導体基板11は、第2方向において、半導体ストライプSが形成されるストライプ形成領域11dと、ストライプ形成領域11dを挟むように、一対のテラスTが形成される一対のテラス形成領域11e,11fを有する。
【0035】
第1マスク形成工程S02では、半導体ストライプSおよびテラスTのための第1マスクを半導体積層10上に形成する。
図1、
図6〜
図8を用いて、第1マスク形成工程S02について具体的に説明する。
図6および
図7の(a)は第1マスク形成工程S02における
図1のA−A線に沿っての断面状態を模式的に示した図、
図6および
図7の(b)は第1マスク形成工程S02における
図1のB−B線に沿っての断面状態を模式的に示した図、
図6および
図7の(c)は第1マスク形成工程S02における
図1のC−C線に沿っての断面状態を模式的に示した図である。
図8は、第1マスク形成工程S02において形成された第1マスクを示す図である。
【0036】
まず、
図6に示されるように、CVD法によって、シリコン窒化膜31を半導体積層10(コンタクト層28)上に成膜する。このシリコン窒化膜31の厚さは、例えば200nm程度である。そして、フォトリソグラフィにより、半導体ストライプSおよびテラスTに対応するシリコン窒化膜31上の領域を覆うように、レジストマスク32をシリコン窒化膜31上に形成する。そして、レジストマスク32をエッチングマスクとして例えばCF
4−RIEでシリコン窒化膜31をエッチングし、シリコン窒化膜マスク31m(不図示)を形成する。そして、
図7に示されるように、レジストマスク32を除去し、シリコン窒化膜マスク31mを含む第1マスクM1を形成する。
図8に示されるように、第1マスクM1は、半導体積層10上において、半導体ストライプSおよびテラスTが形成される部分を覆うように形成される。
【0037】
第1エッチング工程S03では、第1マスクM1をエッチングマスクとして用いて半導体積層10をエッチングし、半導体ストライプSを形成する。この第1エッチング工程S03では、
図9に示されるように、例えばSiCl
4−RIEによりコンタクト層28、上部クラッド層27および下部クラッド層16,26を順にエッチングし、エッチングストップ層15,25においてエッチングを停止させて、半導体積層10に第1凹部C1を形成する。このとき、例えばプラズマモニタを用いて、エッチングストップ層15,25の組成の元素に由来するプラズマスペクトルを検知し、このプラズマスペクトルを検知した時点でエッチングを停止してもよい。
【0038】
このように、第1エッチング工程S03において、半導体積層10を加工して第1凹部C1を形成することによって、ストライプ形成領域11d上に半導体ストライプSが形成され、テラス形成領域11e,11f上にテラスTe,Tfが形成される。半導体ストライプSは、第1領域11a上の第1ストライプS1と、第2領域11b上の第2ストライプS2とを含む。第3領域11cが設けられる場合には、半導体ストライプSは、第3領域11c上の第3ストライプS3をさらに含み、第3ストライプS3の一端は第1ストライプS1の一端に連接され、第3ストライプS3の他端は第2ストライプS2の一端に連接されている。
【0039】
第2マスク形成工程S04では、ハイメサ型光導波路20のための第2マスクM2を、第1エッチング工程S03において加工された半導体積層10上に形成する。
図10〜
図16を用いて、第2マスク形成工程S04について具体的に説明する。
図10、
図12〜
図15の(a)は第2マスク形成工程S04における
図1のA−A線に沿っての断面状態を模式的に示した図、
図10、
図12〜
図15の(b)は第2マスク形成工程S04における
図1のB−B線に沿っての断面状態を模式的に示した図、
図10、
図12〜
図15の(c)は第2マスク形成工程S04における
図1のC−C線に沿っての断面状態を模式的に示した図である。
図11は、
図10の過程において形成された選択膜を示す図である。
図16は、第2マスク形成工程S04において形成された第2マスクを示す図である。
【0040】
まず、
図10に示されるように、第1マスクM1を除去することなく、第1エッチング工程S03において加工された半導体積層10上に熱硬化性樹脂をスピン塗布する。この熱硬化性樹脂は、例えば感光性を有する低誘電率の樹脂である。熱硬化性樹脂の厚さが例えば1500nm程度となるように、スピンコータの回転数を調整して熱硬化性樹脂を半導体積層10上に塗布する。そして、N
2雰囲気中において60℃で90秒間のソフトベークを行う。そして、フォトリソグラフィにより露光、現像して、
図11に示されるような選択膜R1のためのパターンを形成した後、N
2雰囲気中において300℃で60分間キュア(熱硬化処理)し、選択膜R1を形成する。このようにして選択膜R1を形成することによって、選択膜R1は、ガラス転移点が350℃以上の熱硬化性を有する。なお、熱硬化性樹脂として、感光性BCB(ベンゾシクロブテン)樹脂を用いてもよい。
【0041】
図10および
図11に示されるように、選択膜R1は、第1領域11aと第3領域11cとの上に設けられ、第2領域11b上には設けられない。第1領域11a上において、選択膜R1は、第1ストライプS1の頂面および両側面を覆うように設けられ、その幅は、第1ストライプS1の幅よりも大きい。第3領域11c上における第1領域11aと第3領域11cとの境界付近では、選択膜R1は、第3ストライプS3の頂面および両側面を覆うように設けられている。そして、選択膜R1は、第3領域11c上における第1領域11aと第3領域11cとの境界から第3領域11cと第2領域11bとの境界に向かって、第3ストライプS3の両側面から徐々に離れるように略V字状に設けられる。このように、選択膜R1が形成される領域(選択膜形成領域)は、後述の第2エッチング工程S05工程において第2凹部C2が形成される領域を覆うように形成される。言い換えると、選択膜形成領域は、第2マスクM2の第1開口部34aが形成される第1開口形成領域と、第2マスクM2の第2開口部34bが形成される第2開口形成領域とを覆うように形成される。
【0042】
次に、
図12に示されるように、選択膜R1が形成された半導体積層10上に、CVD法によってシリコン窒化膜34を成膜する。このシリコン窒化膜34の厚さは、例えば300nm程度である。このとき、成膜温度は220℃程度であるが、選択膜R1のガラス転移点は350℃以上であるから、成膜温度による影響を受けることなくシリコン窒化膜34を形成できる。そして、フォトリソグラフィにより、選択膜形成領域上に開口35aおよび開口35bを有するレジストマスク35をシリコン窒化膜34上に形成する。この開口35aは、第1領域11a上の選択膜形成領域上に設けられ、開口35bは、第3領域11c上の選択膜形成領域上に設けられる。すなわち、開口35aの開口縁および開口35bの開口縁は、選択膜R1上に位置する。
【0043】
次に、
図13に示されるように、レジストマスク35をエッチングマスクとしてCF
4−RIEでシリコン窒化膜34をエッチングし、シリコン窒化膜マスク34mを形成する。そして、
図14に示されるように、例えばアセトンおよびイソプロピルアルコールなどの有機溶剤を用いてレジストマスク35を除去する。さらに、
図15に示されるように、シリコン窒化膜マスク34mを用いて酸素プラズマにより選択膜R1を除去して、シリコン窒化膜マスク34mを含む第2マスクM2を形成する。なお、選択膜R1が感光性BCB樹脂からなる場合は、CF
4と酸素との混合ガスをエッチング用ガスとして、RIEプラズマエッチングにより除去することができる。
【0044】
図16に示されるように、第2マスクM2は、第1開口部34aおよび第2開口部34bとを有し、第1マスクM1が設けられた半導体積層10上に形成される。第1開口部34aは、レジストマスク35の開口35aを介してシリコン窒化膜34をエッチングすることによって、シリコン窒化膜34上に形成される。また、第2開口部34bは、レジストマスク35の開口35bを介してシリコン窒化膜34をエッチングすることによって、シリコン窒化膜34上に形成される。すなわち、第1開口部34aは、導波路軸に沿って延在し、第1ストライプS1の一方の側面から距離を隔てた第1開口縁e1と第1ストライプS1の他方の側面から距離を隔てた第2開口縁e2とを有する。すなわち、第1開口部34aの幅は、第1ストライプS1の幅よりも大きい。第1開口縁e1および第2開口縁e2は、第1マスクM1により覆われていない半導体積層10上に位置する。言い換えると、第1開口縁e1および第2開口縁e2は、第1凹部C1上に位置する。第2開口部34bは、第1凹部C1上に設けられ、導波路軸に沿って第3ストライプS3の両側面から徐々に離れるように設けられる。なお、第2マスクM2は、テラスT上、第2ストライプS2および第3ストライプS3上において、第1マスクM1に積層される。
【0045】
第2エッチング工程S05では、第1マスクM1および第2マスクM2をエッチングマスクとして用いて第1領域11aおよび第3領域11c上の半導体積層10をエッチングし、ハイメサ型光導波路20のためのメサ構造を形成する。この第2エッチング工程S05では、
図17に示されるように、例えばSiCl
4−RIEによりエッチングストップ層15,25、活性層14,24、スペーサ層13および回折格子層12を順にエッチングし、回折格子層12の裏面(半導体基板11の主面)から例えば250nm程度の深さまで半導体基板11をエッチングする。このエッチングにより、第1領域11a上に第2凹部C2を形成し、第3領域11c上に第3凹部C3を形成する。この第2凹部C2によって、ハイメサ型光導波路20のためメサ構造が形成される。このとき、予め計測しておいたエッチングレートから所望のエッチング深さになるようにエッチング時間を算出し、算出されたエッチング時間でエッチングしてもよい。
【0046】
第1、第2マスク除去工程S06では、
図18に示されるように、第1マスクM1および第2マスクM2を例えばフッ酸を用いて除去する。
【0047】
表面保護膜形成工程S07では、
図19に示されるように、第1凹部C1および第2凹部C2が設けられた半導体積層10上に、CVD法によって表面保護膜41を成膜する。この表面保護膜41は、絶縁膜であって、例えばシリコン窒化物により構成される。
【0048】
埋め込み工程S08では、
図20に示されるように、第1凹部C1および第2凹部C2を埋め込み、さらに半導体ストライプSおよびテラスTを覆うように、埋込層42を表面保護膜41上に形成する。この埋込層42は、低誘電率膜であって、例えばBCB樹脂により構成される。埋め込み工程S08によって、素子の平坦化がなされる。
【0049】
電極形成工程S09では、まず、
図21に示されるように、フォトリソグラフィにより、埋込層42上にレジストマスク43を形成する。このレジストマスク43は、上部電極E1のための開口43aを有する。この例では、開口43aは、第1リッジ30a上に設けられた第1開口と、第3メサ20cおよび第4メサ20d上に設けられた第2開口とを含む。そして、レジストマスク43をエッチングマスクとして、CF
4+O
2混合ガスを用いたRIEを行って、埋込層42をエッチングする。メサ構造およびリッジ構造上の表面保護膜41が露出するまでエッチングし、その後、CF
4−RIEによりメサ構造およびリッジ構造上の表面保護膜41を、コンタクト層28が露出するまでエッチングし、開口42a,42b,42cを形成する。
【0050】
次に、フォトリソグラフィによりリフトオフ用レジストマスクを埋込層42上に形成する。そして、
図22に示されるように、埋込層42上にオーミック金属を蒸着して上部電極E1を埋込層42上に形成する。上部電極E1は、開口42a,42b,42cを介してコンタクト層28に電気的に接続される。この上部電極E1は、例えばTiPtAuなどの金属から構成される。次に、半導体基板11の裏面を研磨し、半導体基板11の厚さを例えば110μm程度にする。そして、半導体基板11の裏面にオーミック金属を蒸着して下部電極E2を半導体基板11の裏面に形成する。この下部電極E2は、例えばAuGeなどの金属から構成される。そして、上部電極E1および下部電極E2を合金化処理する。以上のようにして、半導体光素子1が作製される。
【0051】
次に、半導体光素子1の製造方法の作用効果について説明する。半導体光素子1は、ハイメサ型光導波路20(光変調器)と、リッジ型光導波路30(レーザ素子)とを軸方向に接続する構造を有する。ハイメサ型光導波路20およびリッジ型光導波路30は、高さが異なるので、半導体光素子1の製造において、複数回エッチングを行う必要がある。また、ハイメサ型光導波路20の光軸とリッジ型光導波路30の光軸とが一致している必要がある。半導体光素子1の製造方法では、第1領域11a上に、第1エッチング工程S03において、第1凹部C1が形成され、さらに第2エッチング工程S05において、第1凹部C1の一部をエッチングして第2凹部C2が形成されている。このように、2段階のエッチングによって形成された第2凹部C2により、ハイメサ型光導波路20のためのメサ構造が形成される。一方、第2領域11b上には、第1エッチング工程S03において、第1凹部C1が形成される。この第1凹部C1により、リッジ型光導波路30のためのリッジ構造が形成される。このとき、第1凹部C1を形成するために用いた第1マスクM1を、第2凹部C2を形成するためにも用いているので、ハイメサ型光導波路20の光軸とリッジ型光導波路30の光軸とを一致させることができる。さらに、第2マスクM2の第1開口部の第1開口縁および第2開口縁は、第1マスクM1により覆われていない半導体積層10の領域上に位置している。すなわち、第1開口縁および第2開口縁は、半導体積層10のうち、第1エッチング工程においてエッチングされた領域の上に位置している。このため、第2マスクM2の位置ずれの影響を受けることなく、第1開口縁および第2開口縁は、第1エッチング工程においてエッチングされた領域の上に位置することができる。その結果、ハイメサ型光導波路20とリッジ型光導波路30との間に、エッチングされないことによる凸部が生じること又は過剰なエッチングによる凹部が生じることを防止できる。
【0052】
[変形例]
次に、半導体光素子1の製造方法の変形例について説明する。この変形例では、第2マスク形成工程S04、第2エッチング工程S05および第1、第2マスク除去工程S06が第1実施形態の製造方法とは異なる。したがって、第2マスク形成工程S04、第2エッチング工程S05および第1、第2マスク除去工程S06について以下に説明する。
【0053】
第2マスク形成工程S04では、ハイメサ型光導波路20のための第2マスクM21を、第1エッチング工程S03において加工された半導体積層10上に形成する。
図23〜
図25を用いて、第2マスク形成工程S04について具体的に説明する。
図23〜
図25の(a)は第2マスク形成工程S04における
図1のA−A線に沿っての断面状態を模式的に示した図、
図23〜
図25の(b)は第2マスク形成工程S04における
図1のB−B線に沿っての断面状態を模式的に示した図、
図23〜
図25の(c)は第2マスク形成工程S04における
図1のC−C線に沿っての断面状態を模式的に示した図である。
【0054】
まず、
図23に示されるように、第1マスクM1を除去することなく、第1エッチング工程S03において加工された半導体積層10上に、例えばCVD法によってシリコン酸化膜51を成膜する。このシリコン酸化膜51の厚さは、例えば300nm程度である。そして、フォトリソグラフィにより、開口52aおよび開口52bを有するレジストマスク52をシリコン酸化膜51上に形成する。開口52aは、第1領域11a上において導波路軸に沿って設けられ、その内側に第1ストライプS1を含むように設けられる。すなわち、開口52aの幅は、第1ストライプS1の幅よりも大きい。開口52bは、第3領域11c上に設けられ、開口52aの一端から第3領域11cと第2領域11bとの境界に向かって、略V字状に2方向に延びるように設けられる。すなわち、開口52bは、第1領域11aと第3領域11cとの境界から第3領域11cと第2領域11bとの境界に向かって(導波路軸に沿って)、第3ストライプS3の両側面から徐々に離れるように設けられる。
【0055】
次に、
図24に示されるように、レジストマスク52をエッチングマスクとしてC
4F
8およびCOの混合ガスを用いて、シリコン酸化膜51を選択エッチングし、シリコン酸化膜マスク51mを形成する。なお、第1マスクM1は、この選択エッチングによりエッチングされることなく残っている。そして、
図25に示されるように、例えばアセトンおよびイソプロピルアルコールなどの有機溶剤を用いてレジストマスク52を除去して、シリコン酸化膜マスク51mを含む第2マスクM21を形成する。
【0056】
このように、第2マスクM21は、第1実施形態の第2マスクM2と同様に、第1開口部51aおよび第2開口部51bとを有し、第1マスクM1が設けられた半導体積層10上に形成される。この第1開口部51aは第1開口部34aと同じ位置に設けられ、第2開口部51bは第2開口部34bと同じ位置に設けられる。なお、第2マスクM21は、第2マスクM2と同様に、テラスT上および第2ストライプS2上において、第1マスクM1に積層される。
【0057】
第2エッチング工程S05では、第1マスクM1および第2マスクM21をエッチングマスクとして用いて第1領域11aおよび第3領域11c上の半導体積層10をエッチングし、ハイメサ型光導波路20のためのメサ構造を形成する。この第2エッチング工程S05では、
図26に示されるように、例えばSiCl
4−RIEによりエッチングストップ層15,25、活性層14,24、スペーサ層13および回折格子層12を順にエッチングし、回折格子層12の裏面(半導体基板11の主面)から例えば250nm程度の深さまで半導体基板11をエッチングする。このエッチングにより、第1領域11a上に第2凹部C2を形成し、第3領域11c上に第3凹部C3を形成する。この第2凹部C2によって、ハイメサ型光導波路20のためメサ構造が形成される。このとき、予め計測しておいたエッチングレートから所望のエッチング深さになるようにエッチング時間を算出し、算出されたエッチング時間でエッチングしてもよい。なお、第2エッチング工程S05において形成されたメサ構造は、第1実施形態におけるメサ構造と同じ形状を有する。
【0058】
第1、第2マスク除去工程S06では、
図27に示されるように、第1マスクM1および第2マスクM21を例えばフッ酸を用いて除去する。
【0059】
この変形例では、熱硬化樹脂を塗布する工程からパターン形成する工程を省略することが可能であり、工程を簡略化することができる。
【0060】
[第2実施形態]
図28は、第2実施形態に係る半導体光素子の構造を概略的に示す平面図である。
図28に示されるように、半導体光素子101は、第1部分101aと、第2部分101bと、第3部分101cとからなり、第1部分101a、第3部分101c、第2部分101bの順に一方向(第1方向)に沿って配列されている。第1部分101aは、ハイメサ型光導波路120を有し、例えば2×2の多モード光干渉(MMI)により構成されたMach−Zehnder型変調器(MZM)のような半導体変調器として機能する。第2部分101bは、リッジ型光導波路130を有する。第3部分101cは、変換領域140を有する。この第2部分101bおよび第3部分101cは、例えば回折格子を有する半導体レーザとして機能する。また、半導体光素子101は、第1方向と直交する第2方向において、ストライプ形成部分101dを挟むように一対のテラス形成部分101e,101fを有する。
【0061】
この半導体光素子101は、半導体光素子1と比較して、第2凹部C102および第3凹部C103の周縁に凸部60が設けられる点においてのみ相違している。以下、凸部60について説明し、他の構成要素についてはその説明を省略する。
【0062】
凸部60は、第1凸部60aおよび第2凸部60bを含む。第1凸部60aは、第2凹部C102の周縁に沿って設けられ、下部クラッド層126と同様の組成を有する。この第1凸部60aの高さは、エッチングストップ層125の主面から例えば150〜200nm程度である。第2凸部60bは、第3凹部C103の周縁に沿って設けられ、下部クラッド層116と同様の組成を有する。この第2凸部60bの高さは、エッチングストップ層115の主面から例えば150〜200nm程度である。
【0063】
次に、
図2を参照して、半導体光素子101の製造方法について説明する。
図2に示されるように、半導体光素子101の製造方法は、エピタキシャル成長工程S11と、第1マスク形成工程S12と、第1エッチング工程S13と、第2マスク形成工程S14と、第2エッチング工程S15と、第1、第2マスク除去工程S16と、表面保護膜形成工程S17と、埋め込み工程S18と、電極形成工程S19とによって構成されている。
【0064】
エピタキシャル成長工程S11では、
図29に示されるように、第1方向に沿って、第1半導体積層110aと第2半導体積層110bとが半導体基板111上に形成される。ここで、第1半導体積層110aは、回折格子層112と、活性層124と、エッチングストップ層125と、下部クラッド層126と、上部クラッド層127と、コンタクト層128とを含む。また、第2半導体積層110bは、回折格子層112と、スペーサ層113と、活性層114と、エッチングストップ層115と、下部クラッド層116と、上部クラッド層127と、コンタクト層128とを含む。
【0065】
半導体基板111は、ハイメサ型光導波路120が形成される第1領域111aとリッジ型光導波路130が形成される第2領域111bとを有する。また、第1領域111aと第2領域111bとの間には、変換領域140が形成される第3領域111cが設けられてもよい。すなわち、半導体基板111では、第1方向に沿って、第1領域111a、第3領域111c、第2領域111bの順に配列されている。第1領域111a上には、第1半導体積層110aが設けられている。第2領域111bおよび第3領域111c上には、第2半導体積層110bが設けられている。さらに、半導体基板111は、第2方向において、半導体ストライプSが形成されるストライプ形成領域111dと、ストライプ形成領域111dを挟むように、一対のテラスTが形成される一対のテラス形成領域111e,111fを有する。
【0066】
第1マスク形成工程S12では、半導体ストライプSおよびテラスTのための第1マスクM101を半導体積層110上に形成する。
図29に示されるように、第1マスクM101は、半導体積層110上において、半導体ストライプSおよびテラスTが形成される部分を覆うように形成される。すなわち、第1マスクM101は、
図8に示された第1実施形態における第1マスクM1と同じ形状を有している。なお、エピタキシャル成長工程S11および第1マスク形成工程S12はそれぞれ、エピタキシャル成長工程S01および第1マスク形成工程S02と同様であるので、その具体的な説明を省略する。
【0067】
第1エッチング工程S13では、第1マスクM101をエッチングマスクとして用いて半導体積層110をエッチングし、半導体ストライプSを形成する。
図30〜
図32を用いて、第1エッチング工程S13について具体的に説明する。
図30〜
図32の(a)は第1エッチング工程S13における
図28のA−A線に沿っての断面状態を模式的に示した図、
図30〜
図32の(b)は第1エッチング工程S13における
図28のB−B線に沿っての断面状態を模式的に示した図、
図30〜
図32の(c)は第1エッチング工程S13における
図28のC−C線に沿っての断面状態を模式的に示した図である。
【0068】
まず、
図30に示されるように、例えばSiCl
4−RIEによりコンタクト層128、上部クラッド層127および下部クラッド層116,126を順にエッチングする。そして、エッチングストップ層115,125の主面に対し、例えば150〜200nm程度浅い位置においてエッチングを停止させる。このとき、予め計測しておいたエッチングレートから所望のエッチング深さになるようにエッチング時間を算出し、算出されたエッチング時間でエッチングしてもよい。
【0069】
次に、
図31に示されるように、第1マスクM101を除去することなく、エッチング加工された半導体積層110上に熱硬化性樹脂をスピン塗布する。この熱硬化性樹脂は、例えば感光性を有する低誘電率の樹脂である。熱硬化性樹脂の厚さが例えば1500nm程度となるように、スピンコータの回転数を調整して熱硬化性樹脂を半導体積層110上に塗布する。そして、N
2雰囲気中において60℃で90秒間のソフトベークを行う。そして、フォトリソグラフィにより露光、現像して、選択膜R2のためのパターンを形成した後、N
2雰囲気中において300℃で60分間キュア(熱硬化処理)し、選択膜R2を形成する。このようにして選択膜R2を形成することによって、選択膜R2は、ガラス転移点が350℃以上の熱硬化性を有する。なお、熱硬化性樹脂として、感光性BCB樹脂を用いてもよい。また、選択膜R2は、
図11に示された第1実施形態における選択膜R1と同じ形状を有している。このように、選択膜R2が形成される領域(選択膜形成領域)は、後述の第2エッチング工程S15工程において第2凹部C102が形成される領域を覆うように形成される。
【0070】
次に、
図32に示されるように、選択膜R2を除去せずに、第1マスクM101を用いて、エッチングストップ層115,125に達するまで下部クラッド層116,126を選択エッチングして、第1凹部C101を形成する。この選択エッチングは、濃度48%の臭化水素酸と水との体積混合比が2:1の水溶液を用いて行われる。このように、第1エッチング工程S13において、半導体積層110を加工して第1凹部C101を形成することによって、ストライプ形成領域111d上に半導体ストライプSが形成され、テラス形成領域111e,111f上にテラスTe,Tfが形成される。
【0071】
また、ウェットエッチングにより下部クラッド層116,126を選択エッチングするため、半導体ストライプSおよびテラスTの側面(第1凹部C101)には(111)面が形成される。このため、半導体ストライプSおよびテラスTは逆メサ構造となる。半導体ストライプSは、第1領域111a上の第1ストライプS101と、第2領域111b上の第2ストライプS102とを含む。第3領域111cが設けられる場合には、半導体ストライプSは、第3領域111c上の第3ストライプS103をさらに含み、第3ストライプS103の一端は第1ストライプS101の一端に連接され、第3ストライプS103の他端は第2ストライプS102の一端に連接されている。
【0072】
第2マスク形成工程S14では、ハイメサ型光導波路120のための第2マスクM102を、第1エッチング工程S13において加工された半導体積層110上に形成する。
図33〜
図36を用いて、第2マスク形成工程S14について具体的に説明する。
図33〜
図36の(a)は第2マスク形成工程S14における
図28のA−A線に沿っての断面状態を模式的に示した図、
図33〜
図36の(b)は第2マスク形成工程S14における
図28のB−B線に沿っての断面状態を模式的に示した図、
図33〜
図36の(c)は第2マスク形成工程S14における
図28のC−C線に沿っての断面状態を模式的に示した図である。
【0073】
まず、
図33に示されるように、選択膜R2が形成された半導体積層110上に、CVD法によってシリコン窒化膜61を成膜する。このシリコン窒化膜61の厚さは、例えば300nm程度である。このとき、成膜温度は220℃程度であるが、選択膜R2のガラス転移点は350℃以上であるから、成膜温度による影響を受けることなくシリコン窒化膜61を形成できる。そして、フォトリソグラフィにより、選択膜形成領域上に開口62aおよび開口62bを有するレジストマスク62をシリコン窒化膜61上に形成する。この開口62aは、第1領域111a上の選択膜形成領域上に設けられ、開口62bは、第3領域111c上の選択膜形成領域上に設けられる。すなわち、開口62aの開口縁および開口62bの開口縁は、選択膜R2上に位置する。
【0074】
次に、
図34に示されるように、レジストマスク62をエッチングマスクとしてCF
4−RIEでシリコン窒化膜61をエッチングし、シリコン窒化膜マスク61mを形成する。そして、
図35に示されるように、例えばアセトンおよびイソプロピルアルコールなどの有機溶剤を用いてレジストマスク62を除去する。さらに、
図36に示されるように、シリコン窒化膜マスク61mを用いて酸素プラズマにより選択膜R2を除去して、シリコン窒化膜マスク61mを含む第2マスクM102を形成する。なお、選択膜R2に覆われていた部分は、第1エッチング工程S13において選択エッチングされないため、下部クラッド層116,126がエッチングストップ層115,125の主面から150〜200nm程度残っている。
【0075】
第2マスクM102は、
図16に示された第1実施形態における第2マスクM2と同様の形状を有している。すなわち、第2マスクM102は、第1開口部61aおよび第2開口部61bとを有し、第1マスクM101が設けられた半導体積層110上に形成される。第1開口部61aは、レジストマスク62の開口62aを介してシリコン窒化膜61をエッチングすることによって、シリコン窒化膜61上に形成される。また、第2開口部61bは、レジストマスク62の開口62bを介してシリコン窒化膜61をエッチングすることによって、シリコン窒化膜61上に形成される。すなわち、第1開口部61aは、導波路軸に沿って延在し、第1ストライプS101の一方の側面から距離を隔てた第1開口縁e101と第1ストライプS101の他方の側面から距離を隔てた第2開口縁e102とを有する。すなわち、第1開口部61aの幅は、第1ストライプS101の幅よりも大きい。第1開口縁e101および第2開口縁e102は、第1領域11a上の選択膜R2の上に位置する。第2開口部61bは、第3領域11c上の選択膜R2の上に設けられ、導波路軸に沿って第3ストライプS103の両側面から徐々に離れるように設けられる。この第2開口部61bの開口縁は、第3領域11c上の選択膜R2の上に位置する。なお、第2マスクM102は、テラスT上、第2ストライプS102および第3ストライプS103上において、第1マスクM101に積層される。
【0076】
第2エッチング工程S15では、第1マスクM101および第2マスクM102をエッチングマスクとして用いて第1領域111aおよび第3領域111c上の半導体積層110をエッチングし、ハイメサ型光導波路120のためのメサ構造を形成する。この第2エッチング工程S15では、
図37に示されるように、例えばSiCl
4−RIEにより下部クラッド層116,126、エッチングストップ層115,125、活性層114,124、スペーサ層113および回折格子層112を順にエッチングし、回折格子層112の裏面(半導体基板111の主面)から例えば250nm程度の深さまで半導体基板111をエッチングする。このエッチングにより、第1領域111a上に第2凹部C102を形成し、第3領域111c上に第3凹部C103を形成する。この第2凹部C102によって、ハイメサ型光導波路120のためメサ構造が形成される。このとき、予め計測しておいたエッチングレートから所望のエッチング深さになるようにエッチング時間を算出し、算出されたエッチング時間でエッチングしてもよい。なお、第2エッチング工程S15において形成されたメサ構造は、第1実施形態のハイメサ型光導波路20のためのメサ構造と略同じ形状を有する。
【0077】
そして、第2マスクM102の第1開口部61aの開口縁および第2開口部61bの開口縁が選択膜R2の上に設けられているため、第2エッチング工程S15において、下部クラッド層116,126がエッチングされずに第2凹部C102および第3凹部C103の周縁に沿って残り、凸部60をなす。
【0078】
第1、第2マスク除去工程S16では、
図38に示されるように、第1マスクM1および第2マスクM102を例えばフッ酸を用いて除去する。
【0079】
表面保護膜形成工程S17、埋め込み工程S18および電極形成工程S19はそれぞれ、表面保護膜形成工程S07、埋め込み工程S08および電極形成工程S09と同様であるので、その説明を省略する。以上のようにして、半導体光素子101が作製される。
【0080】
この半導体光素子101の製造方法では、テラスTおよび半導体ストライプSを逆メサ構造とすることができる。このため、リッジ下部幅を細くすることができるので、電流の広がりを抑えられるため効率が向上する。また、リッジ上部幅を相対的に広くすることができるので、電極形成で必要になるコンタクトホールの加工がしやすくなる。また、半導体光素子101の製造方法では、第2凹部C102および第3凹部103の周縁に凸部を形成できる。このため、ハイメサ導波路とリッジ導波路との変換領域において過剰エッチングによる凹みの形成がなくなり、変換領域での光損失を低減することができる。
【0081】
[第3実施形態]
図39は、第3実施形態に係る半導体光素子の構造を概略的に示す平面図である。半導体光素子201は、第1実施形態の半導体光素子1に対して、半導体ストライプSの配置および第2凹部C202の配置のみが異なる。具体的には、半導体光素子201では、第2メサ220bが第1合分波器250aとテラスTfとの間に設けられ、第5メサ220eが第2合分波器250bとテラスTeとの間に設けられる。具体的に説明すると、第2メサ220bの一端がその幅を徐々に広げながらテラスTfに接続され、第2メサ220bの他端が第1合分波器250aに接続される。また、第5メサ220eの一端が第2合分波器250bに接続され、第5メサ220eの他端がその幅を徐々に広げながらテラスTeに接続される。また、半導体光素子201は、半導体光素子1の第2リッジ30bおよび第2変換部40bに対応する構成要素を有しない。このように構成された半導体光素子201についても、第1実施形態および第2実施形態と同様の製造方法により作製することができる。
【0082】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。