(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸化銀粒子を10質量%以上80質量%以下、前記還元剤を1質量%以上10質量%以下、前記Ag粒子を2質量%以上60質量%以下、樹脂を0質量%以上2質量%以下の範囲で含有し、残部が前記還元剤以外の溶剤とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電性組成物。
前記第一部材と前記第二部材との間に前記導電性組成物を介在させた状態で加熱処理する際に、前記第一部材と前記第二部材とを互いに近接する方向に加圧しないことを特徴とする請求項4に記載の接合体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2,3に記載されたように、金属酸化物粒子と有機物からなる還元剤とを含む酸化物ペーストを用いた場合には、金属酸化物粒子が還元剤によって還元されることによって生成する金属粒子の密度が少なく、導電性の焼成体からなる接合層の内部に空隙が生じ易く、接合強度が確保できないおそれがあった。この空隙の発生を防止するためには、接合時に半導体素子等の電子部品と回路とを互いに近接するように加圧する必要がある。半導体素子はSi等で構成されていることから、加圧した際に破損してしまうおそれがあった。
【0006】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、内部に空隙が生じ難く緻密な構造の導電性焼成体を形成可能な導電性組成物、及び、この導電性組成物を用いた接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の導電性組成物は、導電性を有する焼成体を形成するための導電性組成物であって、酸化銀粒子と、前記酸化銀に対して還元性を有するアルコール又は有機酸からなる還元剤と、
前記還元剤以外の溶剤と、Ag粒子と、を含み、前記酸化銀粒子と前記Ag粒子との質量比Ag−O/Agが、3/7≦Ag−O/Ag≦97/3の範囲内とされており、前記Ag粒子の平均粒径が20nm以上800nm以下であり、前記Ag粒子が有機化合物を有し、前記Ag粒子中の有機化合物の含有量が1質量%未満とされていることを特徴としている。
また、前記Ag粒子が有機物を含有するので、Ag粒子に含有される有機物が分解する際の発熱を利用して焼結を促進することができる。これにより、焼結温度を低くすることが可能となる。
【0008】
この構成の導電性組成物によれば、酸化銀粒子と、Ag粒子と、を含んでおり、酸化銀粒子とAg粒子との質量比Ag−O/Agが、3/7≦Ag−O/Ag≦97/3の範囲内とされていることから、酸化銀粒子同士の間にAg粒子が存在することになる。ここで、酸化銀粒子が還元されて生成する還元Ag粒子とAg粒子とが接触して焼結することになり、緻密な構造の導電性焼成体を形成することが可能となる。
なお、Ag−O/Agが97/3を超える場合には、Ag粒子が不足し、焼成体内部に空隙が多く存在してしまうおそれがある。一方、Ag−O/Agが3/7未満である場合には、酸化銀の還元による発熱量が不足し、焼結や素子との反応が不十分となるおそれがある。したがって、記酸化銀粒子と前記Ag粒子との質量比Ag−O/Agを、3/7≦Ag−O/Ag≦97/3の範囲内に設定している。
【0009】
ここで、Ag粒子は、その平均粒径が20nm以上800nm以下であることが望ましい。
この場合、Ag粒子の平均粒径が20nm以上800nm以下の範囲とされていることから、還元Ag粒子の周囲にAg粒子が接触して焼結し易くなり、緻密な構造の導電性焼成体を形成することができる。
詳述すると、Ag粒子の平均粒径を20nm以上とすることによって、酸化銀粒子が還元されて生成する還元Ag粒子と大きさが揃うため、還元Ag粒子及びAg粒子の焼結がより均一に進行するとともに緻密な構造の接合層が形成されるのである。一方、Ag粒子の平均粒径を800nm以下とすることによって、Ag粒子の低温焼結性が向上し、還元Ag粒子との焼結を促進させることが可能となる。
【0010】
ここで、前記酸化銀粒子と前記還元剤との質量比Ag−O/Rが、3/1≦Ag−O/R≦12/1の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、酸化銀粒子に対して必要な還元剤が確保されているので、酸化銀粒子を確実に還元することができるとともに、還元剤が余剰に添加されていないので、形成された導電性焼成体の内部に還元剤成分が残存することを抑制できる。
【0011】
また、前記酸化銀粒子を10質量%以上40質量%以下、前記還元剤を1質量%以上50質量%以下、前記Ag粒子を2質量%以上20質量%以下、樹脂を0質量%以上2質量%以下の範囲で含有し、残部が
前記還元剤以外の溶剤とされていることが好ましい。
この場合、酸化銀粒子が還元されて生成する還元Ag粒子とAg粒子とが焼結することになり、緻密な構造の導電性焼成体を確実に形成することが可能となる。なお、樹脂は、導電性組成物の粘性を調整するものであり、取り扱い性を考慮して必要に応じて添加すればよい。
【0013】
本発明の接合体の製造方法は、第一部材と第二部材とが接合されてなる接合体の製造方法であって、前記第一部材と前記第二部材との間に、前述の導電性組成物を介在させた状態で加熱処理を行い、前記第一部材と前記第二部材とを、前記導電性組成物の焼成体からなる接合層を介して接合することを特徴としている。
【0014】
この構成の接合体の製造方法によれば、酸化銀粒子が還元されて生成する還元Ag粒子とAg粒子とを焼結することによって形成される緻密な構造の接合層を介して第一部材と第二部材とが接合されることになり、接合信頼性に優れた接合体を製造することが可能となる。
【0015】
ここで、前記第一部材と前記第二部材との間に前記導電性組成物を介在させた状態で加熱処理する際に、前記第一部材と前記第二部材とを互いに近接する方向に加圧しないことが好ましい。
この場合、前記第一部材と前記第二部材とを互いに近接する方向に加圧しなくても、酸化銀粒子が還元されて生成する還元Ag粒子とAg粒子とを焼結することによって空隙の少ない緻密な構造の接合層を介して第一部材と第二部材とを接合することができる。よって、接合時における第一部材や第二部材の破損を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内部に空隙が生じ難く緻密な構造の導電性焼成体を形成可能な導電性組成物、及び、この導電性組成物を用いた接合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態である導電性組成物及びこの導電性組成物を用いた接合体の製造方法について添付した図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態である導電性組成物は、酸化銀粒子と、還元剤と、溶剤と、樹脂と、平均粒径20nm以上800nm以下のAg粒子と、を含有しており、酸化銀粒子とAg粒子との質量比Ag−O/Agが、3/7≦Ag−O/Ag≦97/3の範囲内に設定されている。また、酸化銀粒子と還元剤との質量比Ag−O/Rが、3/1≦Ag−O/R≦12/1の範囲内に設定されている。
【0020】
具体的には、本実施形態における導電性組成物(Ag含有酸化銀ペースト)の組成は、前記酸化銀粒子を10質量%以上80質量%以下、前記還元剤を1質量%以上10質量%以下、前記Ag粒子を2質量%以上60質量%以下、樹脂を0質量%以上2質量%以下の範囲で含有し、残部が溶剤とされている。
なお、本実施形態における導電性組成物は、その粘度が10Pa・s以上400Pa・s以下、より好ましくは30Pa・s以上300Pa・s以下に調整されている。
【0021】
酸化銀粒子は、その粒径が0.1μm以上40μm以下とされたものを使用した。なお、このような酸化銀粉末は、市販品として入手可能なものである。
【0022】
還元剤は、還元性を有する有機物とされており、例えば、アルコール、有機酸を用いることができる。
アルコールであれば、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の1級アルコールを用いることができる。なお、これら以外にも、多数のアルコール基を有する化合物を用いてもよい。
有機酸であれば、例えば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナンデカン酸などの飽和脂肪酸を用いることができる。なお、これら以外にも、不飽和脂肪酸を用いてもよい。
なお、導電性組成物を焼結して得られる導電性焼成体(接合層)内部での空隙の発生を抑制するために、熱分解性に優れた分子構造を有する有機物を用いることが好ましい。
【0023】
なお、酸化銀粉末と混合した後に還元反応が容易に進行しない還元剤であれば、導電性組成物の保存安定性が向上することになる。そこで、還元剤としては、融点が室温以上のものが好ましく、具体的には、ミリスチルアルコール、1−ドデカノール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,10−デカンジオール、ミリスチン酸、デカン酸等を用いることが好ましい。
【0024】
溶剤は、導電性組成物の保存安定性、印刷性を確保する観点から、高沸点(150℃〜300℃)のものを用いることが好ましい。
具体的には、α-テルピネオール、酢酸2エチルヘキシル、酢酸3メチルブチル等を用いることができる。
【0025】
樹脂は、導電性組成物の取り扱い性(例えば印刷性)の向上を目的として添加されるものである。
例えば、アクリル樹脂、セルロース系樹脂等を適用することができる。なお、本実施形態では、焼結時に樹脂が焼結温度以下で完全に酸化・分解して導電性焼成体(接合層)内に残存しないようにするため、熱分解性の良いアクリル樹脂を用いた。
【0026】
そして、本実施形態におけるAg粒子は、その平均粒径が20〜30nmとされたナノAg粒子とされている。なお、このAg粒子(ナノAg粒子)の平均粒径は、TEM(透過型電子顕微鏡)によって約50万倍程度の倍率で撮影し、得られた画像からAg粒子200個について一次粒径を測定して粒径分布を作成し、作成した粒径分布から得られた平均値を平均粒径として算出したものである。
【0027】
このAg粒子(ナノAg粒子)は、カルボン酸類水溶液に還元剤水溶液を添加して得られたカルボン酸塩懸濁液を反応場として用い、これを加熱反応させることによって得られるものである。ここで、カルボン酸はリコール酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸及び酒石酸からなる群より選ばれた1種又は2種以上からなる化合物とした。また、還元剤はヒドラジン、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸及びこれらの塩類からなる群より選ばれた1種又は2種以上の化合物とした。
このようにして得られたAg粒子(ナノAg粒子)においては、炭素鎖1〜3の原料由来の有機化合物(例えばカルボン酸など)を含有しており、有機化合物のAg粒子中の含有量は、1質量%未満とされている。
【0028】
次に、本実施形態である導電性組成物の製造方法について、
図1に示すフロー図を参照して説明する。
本実施形態においては、酸化銀粉末を含有する酸化銀ペーストと、Ag粉末を含有するAgペーストと、を混合、撹拌することで、本実施形態である導電性組成物を製造する構成とされている。
【0029】
まず、前述した酸化銀粉末と還元剤(固体粉末)とを混合し、固体成分混合物を生成する(粉末混合工程S01)。
また、樹脂と溶剤とを混合して、有機混合物を生成する(有機物混合工程S02)。
【0030】
粉末混合工程S01で得られた固体成分混合物と、有機物混合工程S02で得られた有機混合物と、を混合して撹拌する(第一撹拌工程S03)。そして、第一撹拌工程S03で得られた撹拌物を、例えば複数のロールを有するロールミル機を用いて練り込みながら混合する(混錬工程S04)。
このようにして、前述の酸化銀ペーストが製出されることになる。なお、得られた酸化銀ペーストは、冷蔵庫等によって低温(例えば5〜15℃)で保存しておくことが好ましい。
【0031】
一方、前述のAg粉末(ナノAg粒子)と溶剤とを混合して撹拌する(第二撹拌工程S05)。これにより、前述のAgペーストが製出されることになる。
なお、溶剤は酸化銀ペーストに用いられた溶剤と同種の溶剤を用いることが望ましい。また、このAgペーストの組成は、Ag粉末の含有量が50質量%以上80質量%以下とされ、残りが溶剤とすることが好ましい。
【0032】
そして、酸化銀ペーストとAgペーストとを、混合して撹拌する(ペースト混合工程S06)。
このようにして、本実施形態である導電性組成物が製造されることになる。
【0033】
次に、本実施形態である接合体の製造方法について、
図2及び
図3を用いて説明する。
本実施形態における接合体10は、
図3に示すように、第一部材11と第二部材12とが接合されてなるものであり、第一部材11がSi製基板とされ、第二部材12がサファイア基板とされている。
【0034】
まず、第一部材11の接合面に、本実施形態である導電性組成物20を塗布する(導電性組成物塗布工程S11)。なお、この導電性組成物塗布工程S11においては、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、感光性プロセススプレーコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、スリットコーティング法、インクジェットコーティング法、またはダイコーティング法等の種々の手段を採用することができる。本実施形態では、スクリーン印刷法を用いている。
【0035】
次に、塗布した導電性組成物20を介して、第一部材11と第二部材12とを積層する(積層工程S12)。
そして、第一部材11と第二部材12とを積層した状態で加熱炉内に装入し、導電性組成物20の焼結を行う(焼結工程S13)。このとき、加熱炉内は大気雰囲気とし、加熱温度を150℃以上300℃以下、ピーク温度での加熱時間を1分以上2時間以下とした。また、第一部材11と第二部材12とを積層方向に加圧しなかった。
【0036】
この焼結工程S13により、第一部材11と第二部材12との間に、導電性組成物20の焼成体からなる接合層15が形成され、第一部材11と第二部材12とが互いに接合されることなる。
このようにして、第一部材11と第二部材12とが接合されてなる接合体10が製造される。
【0037】
以上のような構成とされた本実施形態である導電性組成物においては、酸化銀粒子と、平均粒径20nm以上800nm以下のAg粒子(本実施形態では、平均粒径20nm以上30nm以下のナノAg粒子)と、を含んでおり、酸化銀粒子とAg粒子との質量比Ag−O/Agが、7/3≦Ag−O/Ag≦9/1の範囲内とされているので、酸化銀粒子同士の間にAg粒子(ナノAg粒子)が存在することになる。ここで、酸化銀粒子が還元されて生成する還元Ag粒子とAg粒子(ナノAg粒子)とが接触して焼結することになり、緻密な構造の接合層15を形成することが可能となる。
【0038】
また、酸化銀粒子と還元剤との質量比Ag−O/Rが、3/1≦Ag−O/R≦12/1の範囲内に設定されているので、酸化銀粒子を確実に還元することができるとともに、接合層15の内部に還元剤成分が残存することを抑制できる。
【0039】
また、前記酸化銀粒子を10質量%以上80質量%以下、前記還元剤を1質量%以上10質量%以下、前記Ag粒子を2質量%以上60質量%以下、樹脂を0質量%以上2質量%以下の範囲で含有し、残部が溶剤とされているので、酸化銀粒子が還元されて生成する還元Ag粒子とAg粒子とを焼結することができ、緻密な構造の接合層15を確実に形成することが可能となる。
【0040】
また、樹脂の含有量を調整することにより、導電性組成物の粘性が10Pa・s以上400Pa・s以下、より好ましくは30Pa・s以上300Pa・s以下に調整されているので、スクリーン印刷法等によって塗布することが可能となる。よって、必要な部分のみに選択的に導電性組成物を塗布することができ、導電性組成物の使用量を削減することが可能となる。
【0041】
さらに、本実施形態では、Ag粒子(ナノAg粒子)が炭素鎖1〜3の原料由来の有機化合物(例えばカルボン酸など)を含有しているので、この有機化合物が分解する際の発熱を利用して焼結を促進することができる。これにより、焼結工程S13における焼結温度を低くすることが可能となる。
また、本実施形態においては、導電性組成物に混合する還元剤として、室温で固体であるものを用いているので、焼結工程S13の前に還元反応が進行することを防止できる。
【0042】
また、本実施形態の接合体10の製造方法によれば、第一部材11と第二部材12との間に導電性組成物20を塗布し、この導電性組成物20を焼結して接合層15を形成しているので、緻密な構造とされた接合層15によって第一部材11と第二部材12とを強固に接合することができる。
さらに、本実施形態では、焼結工程S13を行う際に第一部材11と第二部材12とを積層方向に加圧していないので、第一部材11や第二部材12の破損を抑制することができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0044】
本実施形態では、Ag粒子として、平均粒径が20nm以上30nm以下とされたナノAg粒子を用いるものとして説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、サブミクロンAg粒子であってもよい。このサブミクロンAg粒子は、銀イオン溶液に還元剤を添加して銀微粒子を還元析出させることによって製造される。具体的にはハロゲン化物イオン源として塩化アンモニウム(NH
4Cl)、臭化アンモニウム(NH
4Br)、ヨウ化アンモニウム(NH
4I)、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、またはヨウ化ナトリウム、還元剤としてはヒドロキノンが用いられる。なお、銀濃度に対するハロゲン濃度を調整することによって析出する銀微粒子の粒径(0.2〜1μm)が制御可能である。
また、このサブミクロンAg粒子の平均粒径は、レーザ散乱法(粒子群にレーザ光を照射し、そこから発せられる回折・散乱光の強度分布パターン)から計算によって求めることが可能である。
【0045】
また、本実施形態では、酸化銀ペーストとAgペーストとを混合することで導電性組成物を製造するものとして説明したが、これに限定されることはなく、酸化銀粉末とAg粉末とを混合した後に、溶剤や樹脂を混合してもよい。
さらに、本実施形態では、第一部材をSi製基板とし、第二部材をサファイア基板として説明したが、これに限定されることはなく、第一部材及び第二部材に限定はなく、前述の導電性組成物の焼成体によって接合するものであればよい。
例えば、アルミニウム部材同士を接合する場合や、アルミニウム部材とセラミックス基板を接合する場合に適用してもよい。また、銅部材同士を接合する場合や、銅部材とセラミックス基板を接合する場合、アルミニウム部材と銅部材とを接合する場合に適用してもよい。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
本実施形態に記載された方法によって導電性組成物を製造した。このとき、表1に示すように、Ag粉末の添加量を変更して11種類の導電性組成物を製造した。
長さ5mm,幅5mm,厚さ0.2mmのサファイア基板を素子として用意した。
Si製基板の表面に、表1に示す導電性組成物を塗布し、上述のサファイア基板を積層した。そして、大気中、300℃で2時間の条件で焼結を行い、接合体を製造した。このとき、表1に示すように積層方向への加圧圧力を変更して接合を実施した。
【0047】
得られた接合体について、せん断強度を測定した。せん断強度の測定には、デイジ・ジャパン株式会社製ボンドテスター(型番:シリーズ4000)を用いた。接合体を、Si製基板を下にして水平に固定し、サファイア基板をシェアツールで横から水平に押して、サファイア基板をSi製基板の接合面が破断されたときの強度を測定した。なお、一条件に付き3回強度試験を行い、それらの平均値を測定値とした。評価結果を表1、表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
酸化銀粒子とAg粒子との比Ag−O/Agが99/1とされ、酸化銀粒子に対してAg粒子が少なくされた比較例1では、接合時の加圧圧力を0MPa、1MPaとした場合には接合できなかった。
また、Ag粒子を添加しなかった従来例においても、接合時の加圧圧力を0MPa、1MPaとした場合には接合できなかった。これは、酸化銀粒子のみでは接合時の加圧圧力を高くしないと接合層内部に空隙が発生するためと推測される。
【0051】
酸化銀粒子とAg粒子との比Ag−O/Agが2/8とされ、酸化銀粒子に対してAg粒子が多くされた比較例2では、接合時の加圧圧力を0MPaとした場合には接合できなかった。
さらに、酸化銀粒子とAg粒子との比Ag−O/Agが1/9とされ、酸化銀粒子に対してAg粒子が非常に多くされた比較例3では、接合時の加圧圧力を0MPa、1MPaとした場合には接合できなかった。また、加圧圧力を高くした場合であってもせん断強度が不十分であった。
【0052】
これに対して、酸化銀粒子とAg粒子との比Ag−O/Agが本件発明の範囲内である実施例1〜4については、接合時の加圧圧力が0MPaであっても、せん断強度が10MPa以上となっており、十分に接合されることが確認された。