(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原稿トレイ上に載置された原稿の上面にピックアップローラーを当接させて搬送路上に繰り出した後、原稿を捌く捌き部へと導入し、捌き部で捌かれた原稿を、さらに搬送方向下流側へと搬送する原稿搬送装置であって、
前記ピックアップローラーから前記捌き部に至るまでの間を搬送される原稿に、搬送方向と反対向きに作用する搬送抵抗を付与する搬送抵抗付与手段と、
原稿の厚さに応じて前記搬送抵抗を変更するように前記搬送抵抗付与手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記搬送抵抗付与手段は、前記ピックアップローラーから前記捌き部に到るまでの間の搬送路に繰り出された原稿の表裏に対向するように、前記ピックアップローラーと当該原稿との当接位置から前記捌き部に到るまでの当該原稿の正規の進路を挟んで対向配置された第1のガイド部材と第2のガイド部材とを備え、
前記第1のガイド部材と第2のガイド部材との少なくとも一方が他方に対して移動することにより、前記第1のガイド部材が前記正規の進路から前記第2のガイド部材に向かって突出する量を変更可能であり、
前記制御手段は、原稿が厚紙よりも薄い場合には前記搬送抵抗付与手段に、当該原稿の進路が前記第1のガイド部材に加えて前記第2のガイド部材に当接するように前記突出する量を増加させることにより、前記搬送抵抗を増大させ、
前記制御手段は、原稿が厚紙である場合には前記搬送抵抗付与手段に、当該原稿の進路が前記第2のガイド部材には当接しないように前記突出する量を減少させることにより、前記搬送抵抗を低減させる
ことを特徴とする原稿搬送装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る原稿搬送装置を備える画像形成装置の実施の形態を、電子写真式のカラー複写機(以下、単に「複写機」と言う。)に適用した場合を例にして説明する。
図1は、複写機1の構成を説明するための模式図である。
同図に示すように複写機1は、大きく分けて、原稿画像を読み取るイメージリーダー部4と、読み取った画像をシート上にプリントして再現するプリンター部2とから構成される。
【0018】
<プリンター部>
プリンター部2は、画像形成部20と、給紙部30と、定着部40と、制御部60とを備える。
給紙部30は、収容トレイ31と、繰り出しローラー32と、捌きローラー対33と、タイミングローラー対34などを有している。
【0019】
収容トレイ31は、記録シートを収容する箱である。
繰り出しローラー32は、収容トレイ31の最上位の記録シートに接触して、これを原稿の搬送路に繰り出すものである。
捌きローラー対33は、一方が駆動ローラー、他方が従動ローラーであって、互いに接触して捌きニップを形成しており、当該従動ローラーにはトルクリミッターが取着され、原稿に対して搬送方向とは逆向きの力を与えている。
【0020】
これにより、連れ送りされた記録シートがあれば、後方に押し戻され、記録シートは、捌かれて1枚に分離される。
タイミングローラー対34は、制御部60から指示されたタイミングで記録シートを下流側に送り出すものである。
画像形成部20は、同図に示すように、Y、M、C、Kの各色のそれぞれに対応する作像ユニット10Y,10M,10C,10Kと、感光体ドラム11とそれぞれ対向する一次転写ローラー24と、中間転写ベルト25、二次転写ローラー35等を備えている。
【0021】
作像ユニット10Y,10M,10C,10Kは、同図に示すように、中間転写ベルト25に対向する状態で、当該中間転写ベルト25に沿って、10Y、10M、10C、10Kの順序で所定の間隔をおいて直列に配置されている。
作像ユニット10Kは、感光体ドラム11並びに、当該感光体ドラム11の周囲に配置された帯電器12、露光部13、現像器14及びクリーナー15を備える。
【0022】
作像ユニット10Y,10M,10Cも作像ユニット10Kと同様の構成であるので、ここでの説明は省略する。
露光部13は、レーザダイオードなどの発光素子及びレンズ等を備え、LANなどを介して外部から取得された画像データ、もしくは、イメージリーダー部4によって読み取られた原稿データにもとづいて制御部60が生成した駆動信号を取得し、感光体ドラム11を露光するためのレーザ光を出射して、感光体ドラム11上を主走査方向に露光走査させる。
【0023】
感光体ドラム11は、上記露光を受ける前に各クリーナー15で表面の残存トナーが除去され、不図示のイレーサーランプに照射されて除電された後、帯電器12により一様に帯電されており、このように一様に帯電した状態で、上記レーザ光による露光を受けると、感光体ドラム11の表面に静電潜像が形成される。
各静電潜像は、各色の現像器14により現像され、これにより感光体ドラム11表面にY、M、C、Kの現像剤像としてのトナー像が作像される。
【0024】
各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト25上の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにタイミングをずらして実行され、一次転写ローラー24による静電力を受けて中間転写ベルト25上に多重転写されフルカラーのトナー像が形成される。
中間転写ベルト25上の重ね合わされた各色トナー像は、中間転写ベルト25の回転により二次転写位置に移動する。
【0025】
一方、中間転写ベルト25の移動タイミングに合わせて、給紙部30からは、タイミングローラー対34を介してシートが給送されて来ており、二次転写位置において、二次転写ローラー35に印加された電圧により生じた静電力によって、中間転写ベルト25上のトナー像がシート上に二次転写される。
二次転写位置を通過したシートは、定着部40に搬送され、ここでトナー像が加熱、加圧されてシートに定着された後、一対の排出ローラー31を介して排紙トレイ5に排紙される。
【0026】
制御部60は、複写機1のプリンター部2およびイメージリーダー部4を統括的に制御する。
また、プリンター部2には、テンキーおよびタッチパネルなどからなり、操作者からの指示を受け付けると共に、操作者に対して情報を表示する操作パネル(不図示)が設けられている。
【0027】
次にイメージリーダー部4について説明する。
イメージリーダー部4は、固定光学系の一つであるシートスルー方式と移動光学系であるスキャナ移動方式の両方で原稿画像の読み取りが可能なように構成されている。
ここで、シートスルー方式は、光学系(読取位置)を静止(固定)させた状態で、原稿を移動させながら読み取る方式である。
【0028】
また、スキャナ移動方式は、プラテンガラス上に原稿を載置した状態で、原稿面からの反射光をCCDラインセンサーに導くミラーを原稿に対して移動させ、原稿読み取り位置からCCDラインセンサーまでの光路長を常に一定に維持した状態で読み取る方式である。
イメージリーダー部4は、シートスルー方式を実現するための自動原稿搬送部9と、画像を読み取る画像読取部8とを備えている。
【0029】
画像読取部8は、シートスルー方式及びスキャナ移動方式の両方式での画像読み込みを実行するものである。
<画像読取部>
画像読取部8は、シートスルー方式で原稿を読み取る場合には、スキャナ80は、シートスルー用読取ガラス89下方の位置(シートスルーポジション)に存する。
【0030】
そして、シートスルー用読取ガラス89上面を通過する原稿は、当該シートスルーポジションで静止しているスキャナ80のランプ81によって照射される。
原稿面からの反射光は、第1ミラー82、第2ミラー83および第3ミラー84により光路変更され、集光レンズ85によってCCDラインセンサー86の受光面で結像される。
【0031】
一方、スキャナ移動方式で原稿を読み取る場合には、自動原稿搬送部9を上方に開放して、原稿を画像読取部8の手置き用ガラス88上にセットする。この場合には、スキャナ80は、
図1のX’方向に移動される。
この際、第2ミラー83と第3ミラー84とが対となって、上記スキャナ80と同方向であってその移動速度の半分の速度で移動するようになっており、これにより原稿面から集光レンズ85までの距離(光路長)が常に一定に保たれて、原稿の反射光は、CCDラインセンサー86の受光面で結像される。
【0032】
なお、上記スキャナ80および第2ミラー83、第3ミラー84は、スキャンモータ(不図示)を動力源とする動力伝達機構(不図示)を介して走行駆動される。
<自動原稿搬送部>
自動原稿搬送部9は、原稿給紙トレイ91にセットされた原稿束から原稿を1枚ずつ分離し、スキューを補正した後に、シートスルー用読取ガラス89上を通過させた後、原稿排紙トレイ9aに排紙するものである。
【0033】
原稿給紙トレイ91上に載置された原稿束は、不図示のカム機構により昇降板91aが上昇することにより先端部が持ち上げられて、最上位の原稿の上面にピックアップローラー92が当接するようになっており、この状態で、ピックアップローラー92を回転させることにより、原稿給紙トレイ91から搬送路99内へ繰り出される。
原稿Gが繰り出されたその先には、原稿に接触して原稿の搬送を妨げようとする抵抗(以下、「搬送抵抗」という。)を付与する搬送抵抗付与部90が設けられている。当該搬送抵抗付与部90の詳細については後述する。
【0034】
また、搬送抵抗付与部90の原稿搬送方向におけるすぐ下流側(以下、原稿搬送方向に関して上流側、下流側であることを、それぞれ単に「上流側」、「下流側」という。)には、原稿を検出するための原稿検出センサーS1が設けられている。
原稿Gは、搬送抵抗付与部90を経て、給送ローラー93aとトルクリミッターが装着された捌きローラー93bとからなる捌きローラー対93の捌きニップ部を通過することにより、1枚だけに捌かれた後、レジストローラー対94へと搬送される。
【0035】
このとき、レジストローラー対94は停止しており、レジストローラー対94のニップ部の上流側手前で原稿にループが形成されて、先端部の傾きが矯正された後、レジストローラー対94を所定のタイミングで回転して、原稿を送り出すことによりスキュー補正が実行される。
そして、スキュー補正された原稿Gは、その下流側に配置された読取前ローラー対95aまで搬送される。
【0036】
読取前ローラー対95aは、シートスルー用読取ガラス89の上流側に配置されている。
レジストローラー対94から送り出された原稿Gは、読取前ローラー対95aを経て、所定のタイミングでシートスルー用読取ガラス89の上方を通過するように送り出される。
【0037】
そして、シートスルー用読取ガラス89上を通過した原稿Gは、第1読取後ローラー対95bおよび第2読取後ローラー対96を経て、その先にある原稿排紙ローラー対97によって、原稿排紙トレイ9a上に排出される。
なお、ピックアップローラー92と給送ローラー93aには、
図2に示すように、駆動ベルト92aが巻き掛けられており、これにより、ピックアップローラー92が給送ローラー93aに連動して駆動されるようになっている。
【0038】
そして、昇降板91aの上昇時において、ピックアップローラー92は、ばねなどの不図示の弾性部材により、所定の押圧力F1で原稿G方向に押圧する。
具体的構成としては、例えば、ピックアップローラー92に原稿Gの最上面が接触して、ピックアップローラー92が所定量押し上げられると、昇降板91aの上昇が停止する構成とすることで、原稿束の厚みが変化しても、上記弾性部材の撓み量が一定に保たれて、原稿G対する押圧力を略一定に保つことが可能となる。
【0039】
また、読取前ローラー対95a、第1読取後ローラー対95b、第2読取後ローラー対96および原稿排紙ローラー対97は、個別の駆動源(不図示)で回転駆動され、原稿Gを所定の速度でシートスルー用読取ガラス89上を通過させる。
なお、読取前ローラー対95a、第1読取後ローラー対95b、第2読取後ローラー対96および原稿排紙ローラー対97を同一の駆動源で回転駆動する構成としてもよい。
【0040】
これらの原稿搬送動作は、自動原稿搬送部9内に設けられた原稿搬送制御部98により制御される。
<搬送抵抗付与部>
図2は、搬送抵抗付与部90およびその周辺の構成を示す部分断面図である。
同図に示すように、搬送抵抗付与部90は、原稿に対して搬送抵抗を付与するものであって、捌き前ガイド191aと、1対の支持体191bと、カム192と、弾性部材193と、カム192を回転駆動させる捌き前ガイド駆動部M4とからなる。
【0041】
捌き前ガイド191aは、断面形状が、左右逆の「く」の字形状に折れ曲がり、同図の紙面奥行方向(原稿の幅方向)に延びる長尺の部材である。その紙面奥行方向の幅は、原稿Gの最大幅(紙面奥行方向における最大幅)以上であることが望ましい。
1対の支持体191bは、捌き前ガイド191aを上記奥行方向の両側で支持するものであって、支軸191cを介して、ADFのフレーム(不図示)に回動自在に保持されている。
【0042】
弾性部材193は、例えば、引張ばねなどの弾性部材であって、捌き前ガイド191aをカム192に向けて押圧する。
捌き前ガイド駆動部M4は、例えば、ステッピングモータなどの回転角度の制御が容易な駆動源であって、カム192を回転駆動する。
カム192の回転角度は、ステッピングモータの駆動パルスをカウントすることにより把握することもできるが、ステッピングモータが脱調した場合には、検出された角度と現実の角度との間にずれが生じるため、本実施の形態では、念のため、捌き前ガイド駆動部M4に、カム192の回転角度を検出するロータリーエンコーダーなどの公知の角度センサーS2を付設している。
【0043】
なお、脱調のおそれがなく、もしくは、ホームポジションに確実に復帰させる構成を有する場合には、上述のように、ステッピングモータの駆動パルスをカウントしてカム192の回転角度を検出し、角度センサーS2を省略する構成としても構わない。
以上の構成により、カム192が回転駆動されると、捌き前ガイド191aが揺動し、捌き前ガイド191aの原稿と接触する先端部191dの位置が高くなる第1の位置と、それよりも低い第2の位置との間で択一的に切り替る構成となっている。
【0044】
そして、原稿が薄紙や普通紙の場合には、捌き前ガイド191aの先端部191dが第1の位置にくるように捌き前ガイド191aの揺動角が設定される。
このとき、原稿Gの進路を給送ローラー93a寄りに反らせるため、原稿に与える搬送抵抗が大きくなる(
図6(a)参照)。
すなわち、
図6(a)に示すように原稿はピックアップローラー92によって、ピックアップローラー92と原稿との当接位置と捌きニップを結ぶ進路L1よりも下方の線L2に沿って原稿が繰り出され、その先端が捌き前ガイド191aのガイド面に対し、θの突入角で突入する。
【0045】
その後原稿の先端は、当該ガイド面に沿うようにして上昇し、そのガイド先端部191dを乗り越える。
この段階で記録シートは上方に大きく反っているため、その腰によりガイド先端部191dに対する原稿の押圧力は強くなり、この部分での摩擦力が大きくなって、下方に重なって連れ送りされている原稿に大きな搬送抵抗が付与されて捌かれる。
【0046】
ここで、多重送りが生じていた場合には、最上位の原稿の先端が一番前にくるように捌かれているので、次に捌きニップに最初に突入する原稿も最上位の原稿となり、より捌きやすくなる。
更に、原稿が搬送されると、原稿先端が、回転する給送ローラー93aの周面に当接して、下方へと押し下げられることで、捌きニップに引き込まれる。
【0047】
この際、原稿先端が、捌きニップに引き込まれるためには、原稿先端が最初に給送ローラー93aに当接する位置が、給送ローラー93aの回転中心を通る水平面より下方の周面である必要があり、そのようになるように、捌きニップとガイド先端部191dとの水平および鉛直方向における距離、並びにピックアップローラーの原稿の当接位置とガイド先端部191dとの相対位置が設定されている。
【0048】
原稿先端が捌きニップに引き込まれると、
図2に示すように原稿は、ガイド先端部191dでしごかれるようにして移動するので、ますます、ガイド先端部191dより加えられる搬送抵抗が大きくなり、捌き効果が増大する。
捌きローラー93bにより捌かれて、1枚に分離した状態で捌きローラー93bから送出される。
【0049】
このように構成することにより、原稿が薄紙や普通紙の場合において、ピックアップローラーによる繰り出し力を格別制御しなくても、十分な捌き効果を得ることができる。
反対に、捌き前ガイド191aの先端部191dが第2の位置となるように捌き前ガイド191aを揺動させると、搬送抵抗が小さくなる(
図6(b)参照)。
予め、ピックアップローラー92による繰り出し力を、厚紙の場合でも十分搬送できる程度に設定しておけば、厚紙の繰り出しが円滑して行える。
【0050】
捌き前ガイド191aの先端部191dが第1の位置にあるときには、薄紙および普通紙の原稿の多重送りが防止され、第2の位置にあるときに厚紙の給紙ミスが生じないように良好に搬送されるように条件設定(搬送抵抗および原稿の搬送力の設定)が行われている。
上述のように搬送抵抗は、原稿をその正規の進路(捌き前ガイド部材がないときの進路)から反らせる量(変更量)が大きい程大きくなるため、原稿がピックアップローラー92に接触する位置と、捌きローラー対93のニップ部Nとを結んだ進路L1を基準として、捌き前ガイド191aの先端部191dが進路L1から上方に突出する突出量H1[mm]を変更することにより搬送抵抗値を調整することができる。
【0051】
なお、ここでいう薄紙、普通紙および厚紙は、単位面積あたりの重量、即ち、目付量によって、以下のように区別されている。
一般的に、薄紙、普通紙および厚紙の目付量は、それぞれ30[g/m
2]〜50[g/m
2]、60[g/m
2]〜80[g/m
2]および126[g/m
2]以上であるとして取り扱われていることが多く、本実施の形態における薄紙、普通紙および厚紙の定義についても、これに準ずる。
<自動原稿搬送部の原稿搬送制御部>
図3は、自動原稿搬送部9の制御系における主要部の構成を示すブロック図である。
【0052】
原稿給紙トレイ91上に載置された原稿の搬送動作は、原稿搬送制御部98によって制御される。
原稿搬送制御部98は、CPU、クロック、ROM、RAMおよびEEPROMなどからなる。
原稿搬送制御部98は、自動原稿搬送部9における(1)ピックアップローラー92および給送ローラー93aの2つのローラーと、(2)レジストローラー対94と、(3)読取前ローラー対95a、第1読取後ローラー対95bおよび原稿排紙ローラー対97の3つのローラー対の、それぞれの駆動源である原稿搬送駆動源M1、M2およびM3、並びに捌き前ガイド191aを揺動駆動する捌き前ガイド駆動部M4の駆動を制御して、原稿の搬送動作を実行する。
【0053】
<原稿搬送制御の内容>
以下、本実施の形態に係る、原稿搬送制御部98における原稿搬送制御について、
図4のフローチャートに基づき説明する。
ここでは、原稿束として、同一サイズの薄紙、普通紙、厚紙が混在した原稿(混載原稿)を搬送する処理(以下、「原稿搬送処理」という。)を実行するための制御について説明する。
【0054】
この制御は、原稿搬送制御部98が、プリンター部Bの制御部60から、原稿の読取指示を受け付けることにより実行される。
先ず、原稿搬送制御部98は、
図6(a)に示すように、捌き前ガイド駆動部M4を制御して、捌き前ガイド191aを揺動させ、薄紙および普通紙において多重送りが生じににくい位置、即ち、捌き前ガイド191aの先端部191dが第1の位置に来るように、その揺動姿勢を整える(ステップS101)。
【0055】
なお、
図6(a)では、要部の構成のみを示し、要部と無関係な部材の表示を一部省略している(後述の
図6(b)も同じ)。
つまり、現状がこのような状態にある場合は、この状態を維持し、このような状態になければ、角度センサーS2(
図3)からの出力される情報を参照しつつ、捌き前ガイド駆動部M4を駆動してカム192を回転させて、捌き前ガイド191aを揺動し、薄紙および普通紙にとって、多重送りが生じにくい条件として予め設定された姿勢になるまで揺動させる。
【0056】
そして、ピックアップローラー92および給送ローラー93aを駆動させると共に、一定の時間間隔でカウント値をインクリメントする計時動作を開始し(ステップS102)、カウントアップを開始してから所定時間t1以内に原稿検出センサーS1(
図2参照)が原稿を検出したか否かを判定する(ステップS103)。
ここで、所定時間t1は、ピックアップローラー92の駆動開始から、適正に原稿が繰り出されているとすれば、原稿検出センサーS1による検出位置に原稿の先端が到達するまでに要する時間に、所定の許容誤差(例えば、+3%)を付加した値が設定されて、予め原稿搬送制御部98内のROMなどに格納されている。
【0057】
ステップS103の判定において、所定時間t1以内に原稿検出センサーS1がONになって、原稿の先端が検出された場合には、原稿が確実に原稿検出センサーS1の検出位置まで到達して、原稿先端が捌きニップを通過したと考えられるので、原稿が1枚も繰り出されていない給紙ミスは発生していないと解される。そこで、次に、多重送り判定処理を実行する(ステップS104)。
【0058】
図5は、当該多重送り判定処理の内容を示すフローチャートである。
原稿搬送制御部98は、原稿検出センサーS1により原稿の先端が検出されてから時間t2経過時にピックアップローラー92および給送ローラー93aを停止させる(ステップS201)。
この時間t2は、上記原稿検出センサーS1により原稿の先端が検出されてから、給送ローラー93aにより適正に搬送された原稿の先端が、停止中のレジストローラー対94のニップ部に当接した後に所定量のループが形成されるまでの時間であって、予め設計者により求められて原稿搬送制御部98内のROMなどに格納されている。
【0059】
続いて、所定のタイミングでレジストローラー対94が回転駆動される(ステップS202)。上記のように原稿にループが形成された状態で原稿先端が、レジストローラー対94のニップ部に揃っているので、この状態でレジストローラー対94が回転されることにより、スキュー補正が実行されて、さらに、下流へと搬送される。
次に、このレジストローラー対94により原稿の搬送開始から所定時間t3経過時に、原稿検出センサーS1により原稿が検出されているか否かを判定する(ステップS203)。
【0060】
この時間t3は、原稿が多重送りされていなければ、確実に原稿後端が原稿検出センサーS1による検出位置を通過する時間に設定されており、具体的には、原稿の搬送方向における長さを、レジストローラー対94による原稿搬送速度で除した値に適当な誤差α(>0)を加算した時間に設定される。
このような時間t3経過後に、原稿検出センサーS1によりまだ原稿が検出されていれば(ステップS203:YES)、それは、多重送りが生じて、連れ送りされた原稿がずれて検出されているものと解される。
【0061】
もっとも、誤差αの値があまり大きいと、連れ送りされた原稿の後端も検出位置を抜けて検出できなくなってしまうので、当該誤差αは、装置による搬送精度が許す限り小さい値が望ましい。
なお、画像読取りの対象となる原稿が固定サイズの場合(例えば、A4縦搬送サイズ)には、上記時間t3も固定的でよいが、別のサイズの原稿の場合には、原稿サイズによって時間t3も変わる。
【0062】
特に図示していないが、通常、原稿給紙トレイ91には公知の原稿サイズ検出センサーが設けられており、このセンサーの出力により、原稿の搬送方向における長さ(以下、「原稿長さ」という。)が分かる。この原稿サイズセンサーは、例えば、原稿給紙トレイ91上に原稿が積載されると、これに接触して押し下げられることによって信号を出力するセンサーが、原稿の搬送方向に沿って複数設けられてなる。
【0063】
原稿搬送制御部98のROM内には、当該原稿長さに対応付けて異なる時間t3が予め求められてテーブルに格納されている。したがって、ステップS203では、原稿搬送制御部98は、上記テーブルから検出された原稿長さに対応する時間t3を読み出して判定すればよい。
上記原稿長さは、ユーザーがスタートキーを押下する前に自ら操作パネル20c(
図3)から入力するようにしてもよい。
【0064】
上述のように、ステップS203で「YES」と判定された場合には、多重送りが発生していると判断されるので、ステップS204に移行し、全ての原稿の搬送動作を終了して、多重送りに起因する異常の発生を示す信号をプリンター部2の制御部60に出力する。
この信号を受信したプリンター部2の制御部60は、プリンター部2に設けられた操作パネル20cに、多重送りが生じていることを示すエラーメッセージを表示させる。
【0065】
反対に、ステップS203で、NOと判定された場合には、原稿の後端が既に上記検出位置を通過しており、正常な状態で原稿の搬送が行われているものと考えられるので、リターンして
図4のメインルーチンに復帰する。
その後、原稿は、さらに下流側へと送り出され、シートスルー用読取ガラス89上を通過した後、原稿排紙トレイ9aに排出されることとなる。
【0066】
図4に戻って、原稿搬送制御部98は、原稿検出センサーS1の検出位置を通過した原稿が、搬送すべき原稿束のうちの最後の原稿であれば(ステップS105:YES)、本原稿搬送処理を終了し、当該原稿が、搬送すべき最後の原稿でなければ(ステップS105:NO)、捌き前ガイド191aをその先端部191dが最上位(第1の位置)に存するようにするステップS101以降の処理を実行する。
【0067】
ここで、搬送すべき原稿束のうちの最後の原稿であるか否かは、例えば、原稿給紙トレイ91上の原稿を検出するセンサーを設け、この検出結果により判断することができる。なお、上記のように原稿給紙トレイ91上に原稿サイズセンサー(不図示)が設けられている場合には、この検出結果を利用して判定することも可能である。
また、ステップS103において、ピックアップローラーと給送ローラーの駆動開始から所定時間t1以内に原稿検出センサーS1が原稿を検出していない場合には(ステップS103:NO)、原稿が、ピックアップローラー92と捌きローラー対93との間で停滞している、即ち、給紙ミスが生じているものと考えられるため、この状態がさらに悪化してジャムの発生を招かないように、直ちに、ピックアップローラー92および給送ローラー93aの回動を停止する(ステップS106)。
【0068】
そして、原稿搬送制御部98は、変数N(初期値は0)に1をインクリメントした値を新たな変数Nの値とすることにより、このような給紙ミスが連続して発生した回数をカウントアップする(ステップS107)。
続いて、原稿搬送制御部98は、変数N、即ち、給紙ミスの連続発生回数Nが、所定値(所定閾値)以上になっているか否かを判定し、所定値以上となっていない場合(ステップS108:NO)、給紙ミスの発生回数が少なく、給紙ミスが生じにくい普通紙や薄紙の原稿にも偶発的に給紙ミスが生じている可能性があるため、これまでと同様の繰り出し動作を再度繰り返す(以下、このような動作を「リトライ動作」という)。
【0069】
つまり、ステップS102に戻って、ピックアップローラー92および給送ローラー93aを駆動させると共に、一定の時間間隔でカウント値をインクリメントする計時動作を開始する処理を繰り返す。
一方、ステップS108で、給紙ミスの連続発生回数Nが、所定値以上になっている場合、この原稿が厚紙である可能性が大きいため、原稿搬送制御部98は、角度センサーS2の出力を参照しつつ、捌き前ガイド駆動部M4を駆動させて、
図6(b)に示すように、捌き前ガイド191aの先端部191dが、第2の位置に来るように揺動させる(ステップS109)。
【0070】
これにより、原稿搬送路上における搬送抵抗が大幅に低減され、原稿が厚紙である場合における給紙ミスが解消されやすくなる。
もしくは、搬送抵抗を少なくするため(搬送抵抗=0も含む)、ガイド部材の先端部191dが、正規の進路L1(
図2)より下方に位置するようにしてもよい。
ここで、給紙ミスの連続発生回数Nの値と比較している上記所定値は、例えば、複写機1の納入業者がプリンター部2に設けられた操作パネル20c(
図3参照)を用いて設定されたもの、もしくは、本複写機1を利用するユーザーにより設定されたものである。この所定値をどのよう設定すべきかについては、後述する。
【0071】
図4に戻り、原稿搬送制御部98は、ピックアップローラー92および給送ローラー93aを駆動させると共に、計時を開始し(ステップS110)、当該計時が開始されてから所定時間t1以内に原稿検出センサーS1が原稿を検出したか否かを判定する(ステップS111)。
このとき、原稿を検出した場合には、原稿が捌きローラー対93を通過し、正常な搬送が行われているので、この後、ステップS104と同じ多重送り判定処理のサブルーチンを実行し(ステップS112)、当該のサブルーチンで多重送りが発生していないと判定されてリターンされた場合に、変数Nの値を0にクリアして(ステップS113)、本原稿搬送処理を終了する。
【0072】
また、ステップS111において、所定時間t1以内に原稿検出センサーS1が原稿を検出していない場合には(ステップS111:NO)、搬送抵抗を減少させてもなお給紙ミスが発生しているものと考えられるため、これ以上の原稿搬送動作を断念し、本原稿搬送処理を終了して、給紙ミスに起因する異常の発生を示す信号をプリンター部2の制御部60に出力する(ステップS114)。
【0073】
この信号を受信したプリンター部2の制御部60は、プリンター部2に設けられた操作パネル20cに、給紙ミスが生じていることを示すエラーメッセージを表示させる。
以上のように、原稿搬送制御部98は、最初は搬送抵抗を高めた状態で原稿を搬送する。
この状態は、普通紙および薄紙の原稿にとって、搬送が良好に行える条件に設定されたものであるため、搬送される原稿が普通紙や薄紙であるならば、給紙ミスの発生回数Nが所定値以上となる前に、問題なく搬送が行われる。
【0074】
そして、給紙ミスの発生回数Nが所定の閾値以上になると、厚紙の原稿であると判定し、今度は搬送抵抗を小さくした状態で原稿を搬送する。
これにより、厚紙の原稿であっても、搬送しやすくなり給紙ミスを解消することができる。
ところで、給紙ミスの発生回数Nの閾値を、小さく設定しすぎると、まだ原稿が普通紙や薄紙である可能性が高いのにも拘わらず、少ないリトライ回数で原稿搬送路上の搬送抵抗が低減されるため、多重送りが生じやすくなる。
【0075】
薄紙や普通紙の原稿を搬送するケースが多いときに、このような設定を行った場合、薄紙や普通紙の原稿であっても偶発的に多重送りが発生する可能性が大きくなる。
逆に、給紙ミスの発生回数Nの閾値を大きく設定しすぎると、リトライ回数が増加し、原稿搬送路上の搬送抵抗が低減されるタイミングが遅れる。
厚紙の原稿を搬送するケースが多いときに、このような設定を行った場合、リトライ動作が所定値と同じ回数だけ繰り返される可能性が大きくなり、1枚の原稿を搬送するまでの時間がかかり生産性が低下する。
【0076】
したがって、複写機1が設置された使用環境において、読み取られる原稿の厚みの傾向に応じて、上記所定値を適当な値に決定しておくことで、紙厚の異なる混載原稿であっても、生産性をあまり低下させずに、多重送りおよび給紙ミスの発生を抑制することが可能となる。
通常は、上記所定値は、1から3の範囲内で設定される。
【0077】
<変形例>
(1)上記実施の形態において、自動原稿搬送部9は、捌き前ガイド191aを揺動させて、原稿Gの搬送軌道を上方に逸らせるように搬送路変更を行ったり、行わなかったりすることで、搬送抵抗を変化させていたが、これに限らず、例えば、変更搬送路の上下に挟む1対のガイド部材の間隔を変更する構成としてもよい。
【0078】
図7は、このような構成を有する搬送抵抗付与部290の要部の構成を示す模式図である。なお、
図7では、要部と無関係な部材の描画を一部省略している。
同図では、上側捌き前ガイド291と、これの下方において、当該上側捌き前ガイド291と対向する位置に下側捌き前ガイド292が設けられている。
上側捌き前ガイド291は、固定的に配置されており、一方、下側捌き前ガイド292は、上記実施の形態における捌き前ガイド191aと同様に、回動自在に設けられており、上記実施の形態と同様にカム機構などにより揺動される。
【0079】
つまり、上側捌き前ガイド291と下側捌き前ガイド292とに挟まれる隙間C1が変更自在となっており、C1の値が小さいほど、搬送抵抗が増加し、C1の値が大きいほど、搬送抵抗が減少する構成となっている。
本変形例によれば、原稿を表裏から挟み込むようにして搬送抵抗を創出しているので、上記実施の形態のように水平方向に搬送される記録シートを上に反らせるように進路変更して、重力とシート自身の腰を利用して捌き前ガイドとの摩擦力によって搬送抵抗を増加させる場合よりも、より確実で、かつ大きな搬送抵抗を生成することができるという利点がある。
【0080】
また、重力に依存せずに搬送抵抗を形成できるので、記録シートの搬送方向が縦方向であっても効果があり、装置設計の自由度が高くなる。
なお、本変形例において、一対の捌き前ガイドの距離を変更するため、上側捌き前ガイド291および下側捌き前ガイド292の双方を移動させてもよいし、上側捌き前ガイド291のみを移動させる構成としても構わない。
【0081】
(2)上記実施の形態では、ピックアップローラー92による繰り出し力を、厚紙原稿が給送できる所定の一定値に保ちつつ、搬送抵抗付与部90により生じさせる搬送抵抗を変更することにより、紙厚に応じた捌き効果を得るようにしたが、この搬送抵抗の変更に併せて、繰り出し力も変化させるようにすれば、より十分な効果が得られる。
繰り出し力は、ピックアップローラー92の押圧力F1やピックアップローラー92の表面および原稿間の摩擦係数などによって決まる。
【0082】
ピックアップローラー92の表面は、ゴムなどの弾性体で覆われており、当該弾性体の材質や硬度を選定することにより上記摩擦係数が決定されているので、ピックアップローラー92の押圧力F1を変更させて繰り出し力を変更させることになる。
この場合、薄紙や普通紙の場合には押圧力F1を弱く、厚紙の場合には押圧力F1を強くなるように設定される。具体的な押圧力F1の大きさは、実験などにより決定される。
【0083】
なお、押圧力F1を変更する機構は、原稿トレイにおける昇降板の昇降量を制御して、バネなどの付勢部材により付勢されているピックアップローラーとの相対位置を変化させたり、当該付勢部材のピックアップローラー92と反対側の基端部が取り付けられる部位を適当なアクチュエータにより、原稿に向けて近接・離間させることにより、容易に実行できる。
【0084】
(3)また、上記実施の形態では、原稿搬送制御部98が、自動原稿搬送部9内に設けられているとしたが、これに限らない。
画像読取部8またはプリンター部2内に設けられている制御系が原稿搬送制御部98を兼ねる構成であってもよい。
(4)上記実施の形態では、ガイド先端部191dの位置を、第1と第2の位置に変更して、原稿の進路を2段階に変更できるようにしたが、3段階以上に分けて進路変更できるようにしてもよい。例えば、薄紙と普通紙とで進路が異なるように設定しても構わない。
【0085】
また、第2の位置については、いきなり最下位に移動させずに、例えば、原稿を搬送する間にガイド先端部191dを徐々に最下位に近づけてもよいであろう。
(5)上記実施の形態では、捌き部を、給送ローラー93aと捌きローラー93bで捌きニップを形成することにより構成したが、これに限られない。
例えば、捌きローラー93bの代わりに捌きパッドなどの捌き部材を給送ローラー93aの周面に当接もしくは近接させる構成にしてもよい。
【0086】
(6)上記実施の形態では、原稿給紙トレイ91上に薄紙、普通紙、厚紙が混在された混載原稿を搬送する事例を説明したが、無論、自動原稿搬送部9は、原稿給紙トレイ91上に同じ厚みの原稿が載置されている場合であっても、当該原稿を円滑に搬送することができる。
このように原稿の厚みが変わらないケースでは、搬送すべき原稿が、薄紙、普通紙および厚紙のいずれに相当するのかを、操作パネル20cを介して操作者から受け付け、原稿搬送制御部98がその結果にもとづいて、捌き前ガイド191aの先端部191dを第1および第2の位置のいずれかに揺動させるとしてもよい。
【0087】
(7)また、上記実施の形態では、原稿搬送装置が設けられた画像形成装置として複写機を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ファクシミリ等の画像形成装置にも適用できる。また、画像形成装置に限らず、画像読取機能のみを有する画像読取装置であってもよい。
また、上記実施の形態および上記変形例の内容を可能な限り、それぞれ組み合わせるとしてもよい。