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特許5962035継手機構、ウォーム減速機、および電動パワーステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962035
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】継手機構、ウォーム減速機、および電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/26 20060101AFI20160721BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20160721BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   F16D3/26 A
   F16H1/16 Z
   B62D5/04
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-18530(P2012-18530)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-155844(P2013-155844A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】赤松 秀樹
【審査官】 北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02862373(US,A)
【文献】 特開2009−190519(JP,A)
【文献】 特開平02−261926(JP,A)
【文献】 特開平06−341450(JP,A)
【文献】 特開2005−325986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/26、3/27、3/34、3/46、3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転中心軸まわりに回転する第1回転体と、第2回転中心軸まわりに回転する第2回転体とを互いに連結し、前記第1回転体および前記第2回転体の一方から他方に回転を伝達する継手機構において、
前記第1回転中心軸方向に延びるとともに前記第1回転体から前記第2回転体に向けて突出し、かつ前記第1回転中心軸まわりにおいて所定の間隔で位置するものであり、前記第1回転中心軸方向に延びる第1溝部が前記第1回転中心軸側の面に形成された複数の第1腕部を有する第1ヨークと、
前記第2回転中心軸方向に延びるとともに前記第2回転体から前記第1回転体に向けて突出し、かつ前記第2回転中心軸まわりにおいて前記複数の第1腕部と交互に位置するものであり、前記第2回転中心軸方向に延びる第2溝部が前記第2回転中心軸側の面に形成された複数の第2腕部を有する第2ヨークと、
前記複数の第1腕部および前記複数の第2腕部に囲まれた空間に配置され、所定の回転中心軸方向に延びるとともに前記第1溝部に向けて突出する円弧形状を有する複数の第1突出面、および前記所定の回転中心軸方向に延びるとともに前記第2溝部に向けて突出する円弧形状を有する複数の第2突出面を有するものであり、前記複数の第1突出面が対応する前記第1溝部に接触した状態において前記第1回転中心軸方向に相対的に並進可能であり、前記複数の第2突出面が対応する前記第2溝部に接触した状態において前記第2回転中心軸方向に相対的に並進可能であり、前記複数の第1突出面が対応する前記第1溝部と接触した状態において前記第1回転中心軸まわりに回転し、かつ前記複数の第2突出面が対応する前記第2溝部と接触した状態において前記第2回転中心軸まわりに回転することにより前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの一方から他方に回転力を伝達する単一の伝達部材とを有する継手機構。
【請求項2】
第1回転中心軸まわりに回転する第1回転体と、第2回転中心軸まわりに回転する第2回転体とを互いに連結し、前記第1回転体および前記第2回転体の一方から他方に回転を伝達する継手機構において、
前記第1回転中心軸方向に延びるとともに前記第1回転体から前記第2回転体に向けて突出し、かつ前記第1回転中心軸まわりにおいて所定の間隔で位置するものであり、前記第1回転中心軸方向に延びるとともに前記第1回転中心軸側の面から突出する第1突出面が形成された複数の第1腕部を有する第1ヨークと、
前記第2回転中心軸方向に延びるとともに前記第2回転体から前記第1回転体に向けて突出し、かつ前記第2回転中心軸まわりにおいて前記複数の第1腕部と交互に位置するものであり、前記第2回転中心軸方向に延びるとともに前記第2回転中心軸側の面から突出する第2突出面が形成された複数の第2腕部を有する第2ヨークと、
前記複数の第1腕部および前記複数の第2腕部に囲まれた空間に配置され、所定の回転中心軸方向に延びるとともに前記第1腕部に向けて突出する円弧形状を有し、かつ前記第1腕部に対向する面に前記第1突出面に対応する形状の第1溝部を有する複数の第1突出部、および前記所定の回転中心軸方向に延びるとともに前記第2腕部に向けて突出する円弧形状を有し、かつ前記第2腕部に対向する面に前記第2突出面に対応する形状の第2溝部を有する複数の第2突出部を有するものであり、前記複数の第1溝部が対応する前記第1突出面と接触した状態で前記第1回転中心軸方向に相対移動可能であり、前記複数の第2溝部が対応する前記第2突出面と接触した状態で前記第2回転中心軸方向に相対移動可能であり、前記複数の第1溝部が対応する前記第1突出面と接触した状態において前記第1回転中心軸まわりに回転し、かつ前記複数の第2溝部が対応する前記第2突出面と接触した状態において前記第2回転中心軸まわりに回転することにより前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの一方から他方に回転力を伝達する単一の伝達部材とを有する継手機構。
【請求項3】
各前記第1突出面および各前記第2突出面のそれぞれは、円弧形状の断面を形成する請求項1または2に記載の継手機構。
【請求項4】
前記第1溝部および前記第2溝部は、それぞれ円弧形状の断面を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の継手機構。
【請求項5】
前記継手機構は、前記第1回転体と前記伝達部材との間および前記第2回転体と前記伝達部材との間の少なくとも一方に第1弾性部材を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の継手機構。
【請求項6】
前記継手機構は、前記複数の第2腕部の先端と前記第1回転体との間、および前記複数の第1腕部の先端と前記第2回転体との間の少なくとも一方に第2弾性部材を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の継手機構。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の継手機構と、前記第1回転体としての電動モーターの出力軸と、前記第2回転体としてのウォームシャフトを有するウォーム減速機構。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の継手機構と、前記第1回転体としての電動モーターの出力軸と、前記第2回転体としてのウォームシャフトとを有する電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1回転中心軸まわりに回転する第1回転体と、第2回転中心軸まわりに回転する第2回転体とを互いに連結し、第1回転体および第2回転体の一方から他方に回転を伝達する継手機構、ウォーム減速機、および電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電動パワーステアリング装置は、電動モーターの出力軸に対してウォームシャフトが傾くこと、および出力軸の回転をウォームシャフトに伝達することが可能な構造を有する。この電動パワーステアリング装置において、ウォームシャフトの電動モーター側に対する反対側の端部は、弾性部材の復元力が付与されることにより、ウォームホイールに押しつけられる。これにより、ウォームシャフトとウォームホイールとの寸法誤差および摩耗に起因するバックラッシュが小さくなる。
【0003】
特許文献2に記載の電動パワーステアリング装置は、ウォームシャフトが軸方向に並進すること、および電動モーターの出力軸の回転をウォームシャフトに伝達することが可能な構造を有する。この電動パワーステアリング装置において、車輪が路面から受ける反力は、車輪の転舵機構を介してウォームホイールを回転させる。ウォームシャフトは、ウォームホイールの回転にともない軸方向に並進する力を受ける。ウォームシャフトは、弾性部材の復元力と軸方向に並進する力とが釣り合う位置まで並進する。これにより、ウォームシャフトが軸受に接触するときの接触音、および軸受がハウジングに接触する接触音の発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−43744号公報
【特許文献2】特表2003−511294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動パワーステアリング装置の実用性を高める観点からすると、電動モーターの出力軸に対してウォームシャフトが傾くことが可能な構造、ウォームシャフトが軸方向に並進することが可能な構造、および出力軸の回転をウォームシャフトに伝達することが可能な構造を1つの機構に持たせることが好ましい。しかし、現状ではこのような機構は提案されていない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、第1回転体および第2回転体の一方の回転を他方に伝達すること、第1回転体および第2回転体の相対的な傾斜を許容すること、および回転中心軸方向における第1回転体および第2回転体の相対的な並進を許容することが可能な継手機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の手段は、請求項1に記載の発明すなわち、第1回転中心軸まわりに回転する第1回転体と、第2回転中心軸まわりに回転する第2回転体とを互いに連結し、前記第1回転体および前記第2回転体の一方から他方に回転を伝達する継手機構において、前記第1回転中心軸方向に延びるとともに前記第1回転体から前記第2回転体に向けて突出し、かつ前記第1回転中心軸まわりにおいて所定の間隔で位置するものであり、前記第1回転中心軸方向に延びる第1溝部が前記第1回転中心軸側の面に形成された複数の第1腕部を有する第1ヨークと、前記第2回転中心軸方向に延びるとともに前記第2回転体から前記第1回転体に向けて突出し、かつ前記第2回転中心軸まわりにおいて前記複数の第1腕部と交互に位置するものであり、前記第2回転中心軸方向に延びる第2溝部が前記第2回転中心軸側の面に形成された複数の第2腕部を有する第2ヨークと、前記複数の第1腕部および前記複数の第2腕部に囲まれた空間に配置され、所定の回転中心軸方向に延びるとともに前記第1溝部に向けて突出する円弧形状を有する複数の第1突出面、および前記所定の回転中心軸方向に延びるとともに前記第2溝部に向けて突出する円弧形状を有する複数の第2突出面を有するものであり、前記複数の第1突出面が対応する前記第1溝部に接触した状態において前記第1回転中心軸方向に相対的に並進可能であり、前記複数の第2突出面が対応する前記第2溝部に接触した状態において前記第2回転中心軸方向に相対的に並進可能であり、前記複数の第1突出面が対応する前記第1溝部と接触した状態において前記第1回転中心軸まわりに回転し、かつ前記複数の第2突出面が対応する前記第2溝部と接触した状態において前記第2回転中心軸まわりに回転することにより前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの一方から他方に回転力を伝達する単一の伝達部材とを有する継手機構であることを要旨とする。
【0008】
第1ヨークおよび伝達部材は、第2ヨークに対して第2回転中心軸方向に一体的に並進することが許容される。第2ヨークおよび伝達部材は、第1ヨークに対して第1回転中心軸方向に一体的に並進することが許容される。伝達部材の第1突出面は、第1溝部に突出する円弧形状を有するため、第1溝部と接触した状態で回転することができる。これにより、第2ヨークおよび伝達部材は、第1ヨークに対して一体的に傾くことが許容される。伝達部材の第2突出面は、第2溝部に突出する円弧形状を有するため、第2溝部と接触した状態で回転することができる。これにより、第1ヨークおよび伝達部材は、第2ヨークに対して一体的に傾くことが許容される。すなわち継手機構は、第1回転体および第2回転体の一方の回転を他方に伝達すること、第1回転体および第2回転体の相対的な傾斜を許容すること、および回転中心軸方向における第1回転体および第2回転体の相対的な並進を許容することを可能にする。
【0009】
(2)第2の手段は、請求項2に記載の発明すなわち、第1回転中心軸まわりに回転する第1回転体と、第2回転中心軸まわりに回転する第2回転体とを互いに連結し、前記第1回転体および前記第2回転体の一方から他方に回転を伝達する継手機構において、前記第1回転中心軸方向に延びるとともに前記第1回転体から前記第2回転体に向けて突出し、かつ前記第1回転中心軸まわりにおいて所定の間隔で位置するものであり、前記第1回転中心軸方向に延びるとともに前記第1回転中心軸側の面から突出する第1突出面が形成された複数の第1腕部を有する第1ヨークと、前記第2回転中心軸方向に延びるとともに前記第2回転体から前記第1回転体に向けて突出し、かつ前記第2回転中心軸まわりにおいて前記複数の第1腕部と交互に位置するものであり、前記第2回転中心軸方向に延びるとともに前記第2回転中心軸側の面から突出する第2突出面が形成された複数の第2腕部を有する第2ヨークと、前記複数の第1腕部および前記複数の第2腕部に囲まれた空間に配置され、所定の回転中心軸方向に延びるとともに前記第1腕部に向けて突出する円弧形状を有し、かつ前記第1腕部に対向する面に前記第1突出面に対応する形状の第1溝部を有する複数の第1突出部、および前記所定の回転中心軸方向に延びるとともに前記第2腕部に向けて突出する円弧形状を有し、かつ前記第2腕部に対向する面に前記第2突出面に対応する形状の第2溝部を有する複数の第2突出部を有するものであり、前記複数の第1溝部が対応する前記第1突出面と接触した状態で前記第1回転中心軸方向に相対移動可能であり、前記複数の第2溝部が対応する前記第2突出面と接触した状態で前記第2回転中心軸方向に相対移動可能であり、前記複数の第1溝部が対応する前記第1突出面と接触した状態において前記第1回転中心軸まわりに回転し、かつ前記複数の第2溝部が対応する前記第2突出面と接触した状態において前記第2回転中心軸まわりに回転することにより前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの一方から他方に回転力を伝達する単一の伝達部材とを有する継手機構であることを要旨とする。
【0010】
第1ヨークおよび伝達部材は、第2ヨークに対して第2回転中心軸方向に一体的に並進することが許容される。第2ヨークおよび伝達部材は、第1ヨークに対して第1回転中心軸方向に一体的に並進することが許容される。伝達部材の第1突出部は、第1腕部に向けて突出する円弧形状を有するため、第1溝部と第1突出面とが接触した状態で回転することができる。これにより、第2ヨークおよび伝達部材は、第1ヨークに対して一体的に傾くことが許容される。伝達部材の第2突出部は、第2腕部に向けて突出する円弧形状を有するため、第2溝部と第2突出面とが接触した状態で回転することができる。これにより、第1ヨークおよび伝達部材は、第2ヨークに対して一体的に傾くことが許容される。すなわち継手機構は、第1回転体および第2回転体の一方の回転を他方に伝達すること、第1回転体および第2回転体の相対的な傾斜を許容すること、および回転中心軸方向における第1回転体および第2回転体の相対的な並進を許容することを可能にする。
【0011】
(3)第3の手段は、請求項3に記載の発明すなわち、前記第1突出面および前記第2突出面のそれぞれは、円弧形状の断面を形成する請求項1または2に記載の継手機構であることを要旨とする。
【0012】
第1突出面および第2突出面は、円弧形状を有する。このため、第1ヨークおよび伝達部材の一方は、他方に接触した状態において第1回転中心軸まわりに回転するとき、第1突出面と第1溝部との面圧が小さくなる。また、第2ヨークおよび伝達部材の一方は、他方に接触した状態において第2回転中心軸まわりに回転するとき、第2突出面と第2溝部との面圧が小さくなる。
【0013】
(4)第4の手段は、請求項4に記載の発明すなわち、前記第1溝部および前記第2溝部は、それぞれ円弧形状の断面を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の継手機構であることを要旨とする。
【0014】
第1溝部および第2溝部は、円弧形状を有する。このため、第1ヨークおよび伝達部材の一方は、他方に接触した状態において第1回転中心軸まわりに回転するとき、第1突出面と第1溝部との面圧が小さくなる。また、第2ヨークおよび伝達部材の一方は、他方に接触した状態において第2回転中心軸まわりに回転するとき、第2突出面と第2溝部との面圧が小さくなる。
【0015】
(5)第5の手段は、請求項5に記載の発明すなわち、前記継手機構は、前記第1回転体と前記伝達部材との間および前記第2回転体と前記伝達部材との間の少なくとも一方に第1弾性部材を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の継手機構であることを要旨とする。
【0016】
継手機構は、伝達部材と第1回転体との間に第1弾性部材を有する場合、第1ヨークおよび伝達部材の相対的な並進により接触音が発生することが抑制される。また、伝達部材と第2回転体との間に第1弾性部材を有する場合、第2ヨークおよび伝達部材の相対的な並進により接触音が発生することが抑制される。
【0017】
(6)第6の手段は、請求項6に記載の発明すなわち、前記継手機構は、前記複数の第2腕部の先端と前記第1回転体との間、および前記複数の第1腕部の先端と前記第2回転体との間の少なくとも一方に第2弾性部材を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の継手機構であることを要旨とする。
【0018】
継手機構は、第2腕部の先端と第1回転体との間に第2弾性部材を有する場合、第2ヨークおよび第1ヨークの相対的な並進により接触音が発生することが抑制される。また、第1腕部の先端と第2回転体との間に第2弾性部材を有する場合、第1ヨークおよび第2ヨークの相対的な並進により接触音が発生することが抑制される。
【0019】
(7)第7の手段は、請求項7に記載の発明すなわち、請求項1〜6のいずれか一項に記載の継手機構と、前記第1回転体としての電動モーターの出力軸と、前記第2回転体としての前記ウォームシャフトを有するウォーム減速機構であることを要旨とする。
【0020】
ウォーム減速機構は、電動モーターの出力軸に対してウォームシャフトが傾斜することを許容する機構と、ウォームホイールに対するウォームシャフトの並進を許容する機構とを併せて有することが可能になる。
【0021】
(8)第8の手段は、請求項8に記載の発明すなわち、請求項1〜6のいずれか一項に記載の継手機構と、前記第1回転体としての電動モーターの出力軸と、前記第2回転体としての前記ウォームシャフトとを有する電動パワーステアリング装置であることを要旨とする。
【0022】
電動パワーステアリング装置は、電動モーターの出力軸に対するウォームシャフトの傾斜を許容することによりウォームシャフトをウォームホイールに押しつける機構と、ウォームホイールに対するウォームシャフトの並進を許容する機構とを併せて有することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、第1回転体および第2回転体の一方の回転を他方に伝達すること、第1回転体および第2回転体の相対的な傾斜を許容すること、および回転中心軸方向における第1回転体および第2回転体の相対的な並進を許容することが可能な継手機構を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態の継手機構を含む車両操舵装置について、その全体構造を示すブロック図。
図2】実施形態の減速機構について、ウォームシャフトの回転中心軸に平行かつウォームホイールの回転中心軸に直交する平面の断面構造を示す断面図。
図3】実施形態の継手機構について、回転中心軸に平行する平面の断面構造を示す断面図。
図4】実施形態の第1および第2ヨークについて、(a)は正面構造を示す正面図、(b)は(a)のXC−XC平面の断面構造を示す断面図、(c)は(a)のXD−XD平面の断面構造を示す断面図。
図5】実施形態のモーター側およびウォーム側弾性部材について、(a)は正面構造を示す正面図、(b)は側面構造を示す側面図。
図6】実施形態の伝達部材について、(a)は側面構造を示す側面図、(b)は(a)のXE−XE平面の断面構造を示す断面図。
図7】実施形態の継手機構における図3のXB−XB平面の断面構造を示す断面図であり、(a)は出力軸が回転を停止している状態の断面図、(b)は各第1腕部が伝達部材に接触している状態のときの断面図およびSB部分の拡大構造を示す断面図、(c)は伝達部材が各第2腕部に接触している状態のときの断面図およびSC部分の拡大構造を示す断面図。
図8】実施形態の減速機構について、図2のSA部分の拡大構造を示す断面図であり、(a)はウォームシャフトが出力軸に対して傾斜した状態の断面図、(b)は(a)のSD部分の拡大構造を示す断面図。
図9】実施形態の減速機構について、図2のSA部分の拡大構造を示す断面図であり、(a)はウォームシャフトが軸方向において出力軸方向に並進する状態を示す断面図、(b)は(a)のSE部分の拡大構造を示す断面図。
図10】実施形態の減速機構について、図2のSA部分の拡大構造を示す断面図であり、(a)はウォームシャフトが軸方向において玉軸受方向に並進する状態を示す断面図、(b)は(a)のSF部分の拡大構造を示す断面図。
図11】変形例の継手機構について、回転中心軸に平行する平面の断面構造を示す断面図。
図12】変形例の継手機構における図11のXF−XF平面の断面構造を示す断面図であり、出力軸が回転を停止している状態の断面図。
図13】変形例の伝達部材について、(a)は側面構造を示す側面図、(b)は(a)のXG−XG平面の断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照して、車両操舵装置1の全体構成について説明する。
車両操舵装置1は、コラムシャフト31にトルクを伝達するステアリングホイール10と、前輪20の転舵角を変更する転舵装置30と、コラムシャフト31にトルクを付与するアシスト装置40と、アシストモーター41の回転をコラムシャフト31に伝達するウォーム減速機構50とを有する。
【0026】
転舵装置30は、コラムシャフト31の他に、コラムシャフト31とともに回転するインターミディエイトシャフト32と、インターミディエイトシャフト32とともに回転するピニオンシャフト33とを有する。またこの他に、ピニオンシャフト33に連結されたラックアンドピニオン機構34と、前輪20の転舵角を変更する転舵シャフト35とを有する。
【0027】
アシスト装置40は、コラムシャフト31にトルクを付与するアシストモーター41と、コラムシャフト31に入力される操舵トルクを検出するトルクセンサー42とを有する。またこの他に、車両の走行速度を検出する車速センサー43と、操舵トルクおよび走行速度に応じてアシストモーター41を制御する制御装置44とを有する。アシストモーター41は、出力軸41Aを有する。
【0028】
車両操舵装置1の動作について説明する。
運転者は、前輪20の転舵角を変更するとき、ステアリングホイール10に操舵トルクを入力する。コラムシャフト31は、ステアリングホイール10の回転にともない回転する。制御装置44は、コラムシャフト31の操舵トルクおよび車両の走行速度に応じた電流をアシストモーター41に供給する。
【0029】
アシストモーター41は、電流の供給を受けて出力軸41Aを回転させる。ウォーム減速機構50は、出力軸41Aの回転を減速してコラムシャフト31に伝達する。インターミディエイトシャフト32は、コラムシャフト31の回転をピニオンシャフト33に伝達する。ラックアンドピニオン機構34は、ピニオンシャフト33の回転を転舵シャフト35の軸方向の並進運動に変換する。転舵シャフト35は、並進運動することによりタイロッドを介してナックル(いずれも図示略)を動作させる。そして、ナックルの動作にともない前輪20の転舵角が変化する。
【0030】
図2を参照して、ウォーム減速機構50の詳細な構成について説明する。
(A)出力軸41Aの回転中心軸を第1回転中心軸Jとし、ウォームシャフト54の回転中心軸を第2回転中心軸Kとする。
(B)第1回転中心軸Jに沿う方向を「第1軸方向A」とする。
(C)コラムシャフト31のステアリングホイール10側からの正面視、かつ第1軸方向Aにおいて、左側から右側に向かう方向を「第1右方向A1」とし、右側から左側に向かう方向を「第1左方向A2」とする。
(D)第2回転中心軸Kに沿う方向を「第2軸方向B」とする。
(E)コラムシャフト31のステアリングホイール10側からの正面視、かつ第2軸方向Bにおいて、左側から右側に向かう方向を「第2右方向B1」とし、右側から左側に向かう方向を「第2左方向B2」とする。
(F)第1左方向A2からの側面視、かつ第1回転中心軸Jまわりの回転方向Qにおいて、時計まわり方向を「正転方向Q1」とし、反時計回り方向を「逆転方向Q2」とする。
(G)第2左方向B2からの側面視、かつ第2回転中心軸Kまわりの回転方向Pにおいて、時計回り方向を「正転方向P1」とし、反時計回り方向を「逆転方向P2」とする。
(H)コラムシャフト31のステアリングホイール10側からの正面視、かつ継手機構60の回転中心Uまわりの回転方向Rにおいて反時計回り方向を「正転方向R1」とする。
(I)コラムシャフト31のステアリングホイール10側からの正面視、かつコラムシャフト31の回転中心軸Vまわりの回転方向Sにおいて、時計回り方向を「正転方向S1」とし、反時計回り方向を「逆転方向S2」とする。
【0031】
ウォーム減速機構50は、ウォームシャフト54を収容するシャフト収容部51と、玉軸受57を収容する軸受収容部52と、軸受収容部52を覆うエンドカバー53とを有する。またこの他に、出力軸41Aに連結されるウォームシャフト54と、ウォームシャフト54と噛み合うウォームホイール55と、ウォームシャフト54の一端が挿入される並進弾性部材56とを有する。またこの他に、並進弾性部材56の回転を受ける玉軸受57と、玉軸受57に復元力を付与する押付弾性部材58と、ウォームシャフト54の一端を出力軸41Aに連結する継手機構60とを有する。
【0032】
シャフト収容部51は、第1左方向A2に延びる円柱形状の空間としてウォーム減速機構50内に形成される。軸受収容部52は、シャフト収容部51の出力軸41A側の反対側から、シャフト収容部51の半径を拡大した円柱形状の空間として、第1左方向A2に向けて、ウォーム減速機構50の外部まで貫通する。エンドカバー53は、軸受収容部52の開口端に圧入される。
【0033】
ウォームシャフト54は、第2回転中心軸Kまわりに回転可能、かつ第2軸方向Bに並進可能に継手機構60によって出力軸41A側の一端が支持される。ウォームホイール55は、コラムシャフト31と一体的に回転可能にこのコラムシャフト31によって支持される。
【0034】
並進弾性部材56は、ウォームシャフト54と同軸の円柱形状を有している。並進弾性部材56は、ウォームシャフト54の出力軸41A側に対する反対側の端部が挿入される軸穴56Aを一端に有し、この並進弾性部材56の他端から突出する挿入部56Bを有する。挿入部56Bは、並進弾性部材56の外径を縮小した円柱形状を有する。
【0035】
玉軸受57は、第2回転中心軸Kまわりに回転可能な状態で並進弾性部材56の挿入部56Bが挿入される。押付弾性部材58は、玉軸受57と軸受収容部52との間に圧縮された状態で挿入される。
【0036】
図3図6を参照して、継手機構60の詳細な構造について説明する。
図3に示されるように、継手機構60は、出力軸41Aと一体的に回転する第1ヨーク61と、ウォームシャフト54と一体的に回転する第2ヨーク62と、第1ヨーク61の回転を第2ヨーク62に伝達する伝達部材63とを有する。またこの他に、第1ヨーク61を基礎として伝達部材63に復元力を付与するモーター側弾性部材64と、第2ヨーク62を基礎として伝達部材63に復元力を付与するウォーム側弾性部材65とを有する。
【0037】
図4を参照して、第1および第2ヨーク61、62の詳細な構造について説明する。
図4(a)に示されるように、第1ヨーク61は、第1基部61Aと、一対の第1腕部61Bと、各第1腕部61Bに形成される第1溝部61Cと、出力軸41Aが圧入される第1圧入穴61Dとを有する。
【0038】
図4(b)および図4(c)に示されるように、各第1腕部61Bは、第1回転中心軸J方向に沿って第1基部61Aから第1圧入穴61Dの反対側に突出する。第1基部61Aは、第1回転中心軸Jを中心として対向する位置に各第1腕部61Bを有する。各第1腕部61Bは、第1回転中心軸J側の面において、第1回転中心軸J方向に延びる第1溝部61Cを有する。各第1溝部61Cは、第1回転中心軸Jを中心とする曲率RAの円の一部分に相当する円弧形状の断面を有する。第1基部61Aは、第1腕部61Bの位置する面の反対面に第1圧入穴61Dを有する。第1圧入穴61Dは、第1回転中心軸Jを中心とし、かつ出力軸41Aを圧入可能な直径の円形状を有する。
【0039】
図4(a)に示されるように、第2ヨーク62は、第2基部62Aと、一対の第2腕部62Bと、各第2腕部62Bに形成される第2溝部62Cと、ウォームシャフト54の一端が圧入される第2圧入穴62Dとを有する。
【0040】
図4(b)および図4(c)に示されるように、各第2腕部62Bは、第2回転中心軸K方向に沿って第2基部62Aから第2圧入穴62Dの反対側に突出する。第2基部62Aは、第2回転中心軸Kを中心として対向する位置に各第2腕部62Bを有する。各第2腕部62Bは、第2回転中心軸K側の面において、第2回転中心軸K方向に延びる第2溝部62Cを有する。各第2溝部62Cは、第2回転中心軸Kを中心とする曲率RAの円の一部分に相当する円弧形状の断面を有する。第2基部62Aは、第2腕部62Bの位置する面の反対面に第2圧入穴62Dを有する。第2圧入穴62Dは、第2回転中心軸Kを中心とし、かつウォームシャフト54の一端を圧入可能な直径の円形状を有する。
【0041】
図5を参照して、モーター側弾性部材64およびウォーム側弾性部材65の詳細な構造について説明する。
図5(a)および(b)に示されるように、モーター側弾性部材64は、第1回転中心軸Jを中心軸とする円柱形状を有する。ウォーム側弾性部材65は、第2回転中心軸Kを中心軸とする円柱形状を有する。モーター側弾性部材64は、フランジ64Aを端部に有する。ウォーム側弾性部材65は、フランジ65Aを端部に有する。
【0042】
図6を参照して、伝達部材63の詳細な構造について説明する。
図6(b)に示されるように、伝達部材63は、互いに直交する中心軸N1およびN2のうち、中心軸N1を長軸とする楕円M1を短軸(中心軸N2)回りに回転させてできる扁楕円体O1と、中心軸N2を長軸とする楕円M2を短軸(中心軸N1)回りに回転させてできる扁楕円体O2との中心を回転中心Uに一致させることによって形成される外面Lを有する。
【0043】
図6(b)に示されるように、伝達部材63は、外面Lのうち扁楕円体O1の外面に相当する面を、回転中心Uから中心軸N1方向の両側に向かって突出する円弧形状の一対の第1突出面63Aとして有する。また、伝達部材63は、外面Lのうち扁楕円体O2の外面に相当する面を、回転中心Uから中心軸N2方向の両側に向かって突出する円弧形状の一対の第2突出面63Bとして有する。
【0044】
各第1突出面63Aは、伝達部材63の正面視、かつ一対の第1突出面63Aの頂点と、回転中心Uとを通る断面において、第1溝部61Cの曲率RAよりも大きい曲率RBを有する。各第2突出面63Bは、伝達部材63の正面視、かつ一対の第2突出面63Bの頂点と、回転中心Uとを通る伝達部材63の断面において、第2溝部62Cの曲率RAよりも大きい曲率RBを有する。
【0045】
図3を参照して、継手機構60の各部材の関係について説明する。
モーター側弾性部材64と第1ヨーク61とは、第1回転中心軸Jを中心軸とし、かつ互いに接着された関係を有する。また、ウォーム側弾性部材65と第2ヨーク62とは、第2回転中心軸Kを中心軸とし、かつ互いに接着された関係を有する。
【0046】
第1ヨーク61と伝達部材63とは、各第1溝部61Cと各第1突出面63Aとが対向する関係を有する。第2ヨーク62と伝達部材63とは、各第2溝部62Cと各第2突出面63Bとが対向する関係を有する。
【0047】
図2を参照して、ウォーム減速機構50の動作を説明する。
制御装置44は、コラムシャフト31の操舵トルクおよび車両の走行速度に応じた電流をアシストモーター41に供給する。アシストモーター41は、電流の供給を受けて出力軸41Aを回転させる。出力軸41Aは、アシストモーター41が正の電流の供給を受けているとき、正転方向Q1に回転する。出力軸41Aは、アシストモーター41が負の電流の供給を受けているとき、逆転方向Q2に回転する。
【0048】
継手機構60は、出力軸41Aの正転方向Q1への回転を、正転方向P1への回転としてウォームシャフト54に伝達する。ウォームホイール55は、ウォームシャフト54の正転方向P1への回転にともない、ウォームシャフト54との噛み合いの関係から正転方向S1に回転する。コラムシャフト31は、ウォームホイール55と一体的に正転方向S1へ回転する。
【0049】
継手機構60は、出力軸41Aの逆転方向Q2への回転を、逆転方向P2への回転としてウォームシャフト54に伝達する。ウォームホイール55は、ウォームシャフト54の逆転方向P2への回転にともない、ウォームシャフト54との噛み合いの関係から逆転方向S2に回転する。コラムシャフト31は、ウォームホイール55と一体的に逆転方向S2へ回転する。
【0050】
図7を参照して、出力軸41Aが正転方向P1に回転するときの継手機構60の動作について説明する。
図7(a)に示されるように、伝達部材63は、出力軸41Aが回転を停止しているとき、重力によって一対の第1溝部61Cの内、重力方向に位置する第1溝部61Cに接触する。
【0051】
図7(b)に示されるように、出力軸41Aが正転方向Q1に回転することにより、第1ヨーク61が一体的に正転方向Q1に回転する。各第1溝部61Cは、第1ヨーク61と一体的に正転方向Q1に回転する。各第1突出面63Aは、各第1溝部61Cの正転方向Q1への回転にともない、各第1溝部61Cに接触する。伝達部材63は、各第1溝部61Cと各第1突出面63Aとの接触にともない、第1ヨーク61と一体的に正転方向Q1に回転する。
【0052】
図7(c)に示されるように、各第2突出面63Bは、伝達部材63と第1ヨーク61とが一体的に正転方向Q1へ回転することにより、各第2溝部62Cと接触する。第2ヨーク62は、各第2突出面63Bと各第2溝部62Cとの接触により、伝達部材63と一体的に正転方向P1に回転する。ウォームシャフト54は、第2ヨーク62と一体的に正転方向P1へ回転する。
【0053】
なお、出力軸41Aが逆転方向Q2に回転するときの継手機構60の動作は、出力軸41Aが正転方向Q1に回転するときと同様である。すなわち、第1ヨーク61、および伝達部材63の逆転方向Q2への回転が、逆転方向P2への回転として第2ヨーク62およびウォームシャフト54に伝達される。
【0054】
図8を参照して、ウォームシャフト54が出力軸41Aに対して傾くときの継手機構60の動作について説明する。
ウォームシャフト54およびウォームホイール55は、互いに噛み合って摩耗することにより、噛み合い部分の直径が減少する。これにより、ウォームシャフト54は、ウォームホイール55から離れる状態となる。
【0055】
図8(a)に示されるように、玉軸受57は、ウォームシャフト54がウォームホイール55から離れることにより、正転方向R1に回転可能な状態となる。押付弾性部材58は、正転方向R1に回転する復元力を玉軸受57に付与する。ウォームシャフト54は、玉軸受57および並進弾性部材56を介して、正転方向R1に回転する復元力を押付弾性部材58から付与される。
【0056】
図8(b)に示されるように、第2ヨーク62は、ウォームシャフト54が正転方向R1に回転するのにともない、ウォームシャフト54と一体的に正転方向R1に回転する。各第2溝部62Cは、第2ヨーク62と一体的に正転方向R1に回転する。各第2突出面63Bは、各第2溝部62Cの正転方向R1への回転にともない、各第2溝部62Cに接触する。伝達部材63は、各第2突出面63Bが各第2溝部62Cに接触することによって正転方向R1に回転するのにともない、各第1突出面63Aが各第1溝部61Cに接触する状態で、回転中心Uまわりに回転する。
【0057】
図9を参照して、ウォームホイール55の正転方向S1への回転を受けることにより、ウォームシャフト54が並進するときの継手機構60の動作について説明する。
図9(a)に示されるように、ウォームシャフト54は、ウォームホイール55の正転方向S1への回転にともない、ウォームホイール55の正転方向S1の接線力を受ける。ウォームホイール55の正転方向S1の接線力は、第2右方向B1に作用する。
【0058】
図9(b)に示されるように、第2ヨーク62は、ウォームシャフト54から第2右方向B1の力を受ける。第2右方向B1の力は、各第2溝部62Cおよび各第2突出面63Bと、各第1溝部61Cおよび各第1突出面63Aとの接触状態に応じて定まる比率で、第1右方向A1と第2右方向B1の力に分散される。
【0059】
第2ヨーク62は、分散された第2右方向B1の力に応じて、各第2溝部62Cと各第2突出面63Bとが接触した状態で、第2右方向B1に移動する。伝達部材63は、分散された第1右方向A1の力に応じて、各第1溝部61Cと各第1突出面63Aとが接触した状態で、第1右方向A1に並進する。これにより、ウォームシャフト54は、第2ヨーク62の第2右方向B1への並進および伝達部材63の第1右方向A1への並進にともなう並進をする。
【0060】
ウォームホイール55の正転方向S1への回転を受けることにより、ウォームシャフト54が並進することにともなう並進弾性部材56、モーター側弾性部材64およびウォーム側弾性部材65の動作について説明する。
【0061】
図9(a)に示されるように、並進弾性部材56は、第2ヨーク62の第2右方向B1への並進および伝達部材63の第1右方向A1への並進にともなうウォームシャフト54の並進に応じて、自然長さに復元する。図9(b)に示されるように、モーター側弾性部材64およびウォーム側弾性部材65は、第2ヨーク62の第2右方向B1への並進および伝達部材63の第1右方向A1への並進にともない圧縮される。
【0062】
図10を参照して、ウォームホイール55の逆転方向S2への回転を受けることにより、ウォームシャフト54が並進するときの継手機構60の動作について説明する。
図10(a)に示されるように、ウォームシャフト54は、ウォームホイール55の逆転方向S2への回転にともない、ウォームホイール55の逆転方向S2の接線力を受ける。ウォームホイール55の逆転方向S2の接線力は、第2左方向B2に作用する。
【0063】
図10(b)に示されるように、第2ヨーク62は、ウォームシャフト54から第2左方向B2の力を受ける。第2左方向B2の力は、各第2溝部62Cおよび各第2突出面63Bと、各第1溝部61Cおよび各第1突出面63Aとの接触状態に応じて定まる比率により、第2左方向B2と第1左方向A2との力に分散される。
【0064】
第2ヨーク62は、分散された第2左方向B2の力に応じて、各第2溝部62Cと各第2突出面63Bとが接触した状態で、第2左方向B2に移動する。伝達部材63は、分散された第1左方向A2の力に応じて、各第1溝部61Cと各第1突出面63Aとが接触した状態で、第1左方向A2に並進する。これにより、ウォームシャフト54は、第2ヨーク62の第2左方向B2への並進および伝達部材63の第1左方向A2への並進にともなう並進をする。
【0065】
ウォームホイール55の逆転方向S2への回転を受けることにより、ウォームシャフト54が並進することにともなう並進弾性部材56、モーター側弾性部材64およびウォーム側弾性部材65の動作について説明する。
【0066】
図10(a)に示されるように、並進弾性部材56は、第2ヨーク62の第2左方向B2への並進および伝達部材63の第1左方向A2への並進にともなうウォームシャフト54の並進に応じて、圧縮される。図10(b)に示されるように、モーター側弾性部材64およびウォーム側弾性部材65は、第2ヨーク62の第2左方向B2への並進および伝達部材63の第1左方向A2への並進にともない自然長さに復元する。
【0067】
本実施形態の継手機構60は以下の効果を奏する。
(1)継手機構60は、第1回転中心軸J方向に延びる第1溝部61Cが、第1回転中心軸J側の面に形成された複数の第1腕部61Bを有する第1ヨーク61と、第2回転中心軸K方向に延びる第2溝部62Cが、第2回転中心軸K側の面に形成された複数の第2腕部62Bを有する第2ヨーク62とを有する。また、継手機構60は、所定の中心軸方向に延びるとともに第1溝部61Cに向けて突出する円弧形状を有する複数の第1突出面63A、および上記中心軸方向に延びるとともに第2溝部62Cに向けて突出する円弧形状を有する複数の第2突出面63Bを有する伝達部材63を有する。伝達部材63は、複数の第1突出面63Aが対応する第1溝部61Cに接触した状態において第1回転中心軸J方向に相対的に並進可能であり、複数の第2突出面63Bが対応する第2溝部62Cに接触した状態において第2回転中心軸K方向に相対的に並進可能である。また、伝達部材63は、複数の第1突出面63Aが対応する第1溝部61Cと接触した状態において第1回転中心軸Jまわりに回転し、かつ複数の第2突出面63Bが対応する第2溝部62Cと接触した状態において第2回転中心軸Kまわりに回転することにより第1ヨーク61および第2ヨーク62の一方から他方に回転力を伝達する。
【0068】
上記構成によれば、第1ヨーク61および伝達部材63は、第2ヨーク62に対して第2回転中心軸K方向に一体的に並進することが許容される。第2ヨーク62および伝達部材63は、第1ヨーク61に対して第1回転中心軸J方向に一体的に並進することが許容される。伝達部材63の第1突出面63Aは、第1溝部61Cに突出する円弧形状を有するため、第1溝部61Cと接触した状態で回転することができる。これにより、第2ヨーク62および伝達部材63は、第1ヨーク61に対して一体的に傾くことが許容される。伝達部材63の第2突出面63Bは、第2溝部62Cに突出する円弧形状を有するため、第2溝部62Cと接触した状態で回転することができる。これにより、第1ヨーク61および伝達部材63は、第2ヨーク62に対して一体的に傾くことが許容される。すなわち継手機構60は、出力軸41Aの回転をウォームシャフト54に伝達すること、出力軸41Aに対するウォームシャフト54の傾斜を許容すること、およびウォームシャフト54の出力軸41Aに対する並進を許容することを可能にする。
【0069】
(2)第1突出面63Aおよび第2突出面63Bのそれぞれは、円弧形状の断面を形成する。
上記構成によれば、第1ヨーク61および伝達部材63の一方は、他方に接触した状態において第1回転中心軸Jまわりに回転するとき、第1突出面63Aと第1溝部61Cとの面圧が小さくなる。また、第2ヨーク62および伝達部材63の一方は、他方に接触した状態において第2回転中心軸Kまわりに回転するとき、第2突出面63Bと第2溝部62Cとの面圧が小さくなる。
【0070】
(3)第1溝部61Cおよび第2溝部62Cは、それぞれ円弧形状の断面を有する。
上記構成によれば、第1ヨーク61および伝達部材63の一方は、他方に接触した状態において第1回転中心軸Jまわりに回転するとき、第1突出面63Aと第1溝部61Cとの面圧が小さくなる。また、第2ヨーク62および伝達部材63の一方は、他方に接触した状態において第2回転中心軸Kまわりに回転するとき、第2突出面63Bと第2溝部62Cとの面圧が小さくなる。
【0071】
(4)第1ヨーク61と伝達部材63との間にモーター側弾性部材64を有し、かつ第2ヨーク62と伝達部材63との間にウォーム側弾性部材65を有する。
継手機構60は、伝達部材63と第1ヨーク61との間にモーター側弾性部材64を有するため、第1ヨーク61および伝達部材63との相対的な並進により接触音が発生することが抑制される。また、伝達部材63と第2ヨーク62との間にウォーム側弾性部材65を有するため、第2ヨーク62および伝達部材63の相対的な並進により接触音が発生することが抑制される。
【0072】
(5)アシスト装置40は、出力軸41Aと、ウォームシャフト54とを連結する継手機構60を有する。
アシスト装置40は、アシストモーター41の出力軸41Aに対するウォームシャフト54の傾斜を許容することによりウォームシャフト54をウォームホイール55に押しつける機構と、ウォームホイール55に対するウォームシャフト54の並進を許容する機構とを併せて有することが可能になる。
【0073】
(6)ウォーム減速機構50は、出力軸41Aと、ウォームシャフト54とを連結する継手機構60を有する。
ウォーム減速機構50は、アシストモーター41の出力軸41Aに対してウォームシャフト54が傾斜することを許容する機構と、ウォームホイール55に対するウォームシャフト54の並進を許容する機構とを併せて有することが可能になる。
【0074】
(7)並進弾性部材56、モーター側弾性部材64およびウォーム側弾性部材65は、ウォームホイール55の回転を受けることにより、ウォームシャフト54が並進することにともない圧縮または復元する。
【0075】
アシスト装置40は、直進時の修正操舵にともなうトルクの付与を抑制するため、ゼロを基準とする所定範囲内の操舵角である場合、アシストモーター41の駆動を停止する。したがって、車両の走行方向を左右に切り替えるときには、アシストモーター41が瞬間的に停止する。このとき、運転者により入力された操舵トルクによりウォームホイール55が回転することにともない、ウォームシャフト54がウォームホイール55の回転方向の接線力を受けて並進する。並進弾性部材56、モーター側弾性部材64およびウォーム側弾性部材65を有さない構成において、ウォームシャフト54は、玉軸受57または出力軸41Aに接触するまで並進する。ウォームホイール55は、ウォームシャフト54が玉軸受57または出力軸41Aに接触すると、回転を停止する。運転者は、この回転の停止にともない、コラムシャフト31の回転が停止し、違和感を覚える。上記構成によれば、並進弾性部材56、モーター側弾性部材64およびウォーム側弾性部材65を有するため、ウォームシャフト54の並進の停止時の接触を和らげることができ、運転者の違和感が抑制される。
【0076】
本発明は、上記実施形態以外の実施形態を含む。以下、本発明のその他の実施形態としての上記実施形態の変形例を示す。なお、以下の各変形例は、互いに組み合わせることもできる。
【0077】
図11図13を参照して、変形例の継手機構について説明する。実施形態の第1ヨーク61および第2ヨーク62は、それぞれ第1溝部61Cおよび第2溝部62Cを有する。また、実施形態の伝達部材63は、第1突出面63Aおよび第2突出面63Bを有する。一方、変形例の第1ヨーク71および第2ヨーク72は、それぞれ第1突出面71Cおよび第2突出面72Cを有する。また、変形例の伝達部材73は、第1溝部73Bおよび第2溝部73Dを有する。
【0078】
図11に示されるように、変形例の継手機構は、第1突出面71Cを有する第1ヨーク71と、第2突出面72Cを有する第2ヨークと、第1溝部73Bおよび第2溝部73Dを有する伝達部材73とを有する。
【0079】
図12に示されるように、第1ヨーク71の第1腕部71Bは、伝達部材73に向かって突出する第1突出面71Cを有する。第2ヨーク72の第2腕部72Bは、伝達部材73に向かって突出する第2突出面72Cを有する。伝達部材73は、第1突出面71Cに対応する形状の第1溝部73Bと、第2突出面72Cに対応する形状の第2溝部73Dとを有する。
【0080】
図13(a)に示されるように、第1溝部73Bは、回転中心Uから外側に向かって突出する円弧形状に沿うように第1突出部73A上に形成される。第2溝部73Dは、回転中心Uから外側に向かって突出する円弧形状に沿うように第2突出部73C上に形成される。
【0081】
図11図13に示されるように、変形例の継手機構は、第1回転中心軸J方向に延びるとともに第1回転中心軸J側の面から突出する第1突出面71Cが形成された複数の第1腕部71Bを有する第1ヨーク71を有する。また、変形例の継手機構は、第2回転中心軸K方向に延びるとともに第2回転中心軸K側の面から突出する第2突出面72Cが形成された複数の第2腕部72Bを有する第2ヨーク72を有する。さらに、変形例の継手機構は、所定の中心軸方向に延びるとともに第1腕部71Bに向けて突出する円弧形状を有し、第1腕部71Bに対向する面に第1突出面71Cに対応する形状の第1溝部73Bを有する複数の第1突出部73Aを伝達部材73が有する。また、伝達部材73は、所定の中心軸方向に延びるとともに第2腕部72Bに向けて突出する円弧形状を有し、第2腕部72Bに対向する面に第2突出面72Cに対応する形状の第2溝部73Dを有する複数の第2突出部73Cを有する。
【0082】
上記構成によれば、実施形態の継手機構60が奏する効果に準じた効果を奏する。すなわち、実施形態の(1)〜(7)に記載の効果に準じた効果を奏する。
・実施形態の第1ヨーク61および第2ヨーク62は、それぞれ2つの腕部を有する。一方、変形例の継手機構において、第1ヨークおよび第2ヨークは、3以上の腕部を有する。
【0083】
・実施形態の継手機構60は、第1ヨーク61の回転を伝達部材63を介して第2ヨーク62に伝達する。一方、変形例の継手機構は、第2ヨーク62の回転を伝達部材63を介して第1ヨーク61に伝達する。
【0084】
・実施形態の第1腕部61Bは、先端と第2基部62Aとが直接接触する。また、第2腕部62Bは、先端と第1基部61Aとが直接接触する。一方、変形例の継手機構では、第1腕部の先端と第2基部との間および第2腕部の先端と第1基部との間の少なくとも一方に弾性部材(第2弾性部材)を有する。
【0085】
・実施形態の継手機構60は、第1回転中心軸Jまわりおよび第2回転中心軸Kまわりの回転に対して遊びを有する。一方、変形例の継手機構は、第1回転中心軸Jまわりおよび第2回転中心軸Kまわりの回転に対して遊びを有さない。すなわち、曲率RAおよび曲率RBが略等しい。
【0086】
・実施形態の継手機構60は、ウォームシャフト54が正転方向R1に回転することによって傾く。一方、変形例の継手機構は、ウォームシャフト54が正転方向R1と反対方向に回転することによって傾くことも許容される。
【符号の説明】
【0087】
1…車両操舵装置、10…ステアリングホイール、20…前輪、30…転舵装置、31…コラムシャフト、32…インターミディエイトシャフト、33…ピニオンシャフト、34…ラックアンドピニオン機構、35…転舵シャフト、40…アシスト装置(電動パワーステアリング装置)、41…アシストモーター、41A…出力軸(第1回転体)、42…トルクセンサー、43…車速センサー、44…制御装置、50…ウォーム減速機構、51…シャフト収容部、52…軸受収容部、53…エンドカバー、54…ウォームシャフト(第2回転体)、55…ウォームホイール、56…並進弾性部材、56A…軸穴、56B…挿入部、57…玉軸受、58…押付弾性部材、60…継手機構、61…第1ヨーク(第1回転体)、61A…第1基部、61B…第1腕部、61C…第1溝部、61D…第1圧入穴、62…第2ヨーク(第2回転体)、62A…第2基部、62B…第2腕部、62C…第2溝部、62D…第2圧入穴、63…伝達部材、63A…第1突出面、63B…第2突出面、64…モーター側弾性部材(第1弾性部材)、64A…フランジ、65…ウォーム側弾性部材(第1弾性部材)、65A…フランジ、70…継手機構、71…第1ヨーク(第1回転体)、71A…第1基部、71B…第1腕部、71C…第1突出面、71D…第1圧入穴、72…第2ヨーク(第2回転体)、72A…第2基部、72B…第2腕部、72C…第2突出面、72D…第2圧入穴、73…伝達部材、73A…第1突出部、73B…第1溝部、73C…第2突出部、73D…第2溝部。
図1
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