特許第5962043号(P5962043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962043
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/56 20100101AFI20160721BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20160721BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   H01L33/56
   H01L23/30 F
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-27062(P2012-27062)
(22)【出願日】2012年2月10日
(65)【公開番号】特開2013-165150(P2013-165150A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】古関 正賢
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智子
(72)【発明者】
【氏名】松嶌 健史
(72)【発明者】
【氏名】田島 博幸
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雄一
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−129906(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/150754(WO,A1)
【文献】 特開2002−071595(JP,A)
【文献】 特開2012−028501(JP,A)
【文献】 特開2009−081430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
H01L 23/28−23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードフレームに実装された発光素子と、
前記発光素子を封止する、厚さ1mm以下のシリコーン樹脂を主成分とする封止材と、
を有し、
前記封止材は、共鳴周波数25MHzにおけるH核の平均スピン―スピン緩和時間の140℃における数値と25℃における数値の差を115で除して得られる物性値が3.5以下であり、140℃における前記平均スピン―スピン緩和時間が500μsec以下である第1ガスバリア層と、前記平均スピン―スピン緩和時間が25℃以上60℃以下の第1温度領域において前記第1ガスバリア層よりも小さく、120℃以上140℃以下の第2温度領域において前記第1ガスバリア層よりも大きい第2ガスバリア層を含む、発光装置。
【請求項2】
前記封止材の厚さは0.6mm以下である、
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
記第2ガスバリア層の、共鳴周波数25MHzにおけるH核の平均スピン―スピン緩和時間の140℃における数値と25℃における数値の差を115で除して得られる物性値は3.5より大きい、
請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子は、前記リードフレームにワイヤーを介して接続され、
前記ワイヤーの全部分は、前記第1ガスバリア層と前記第2ガスバリア層のうちの下側の層に含まれる、
請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1ガスバリア層の物性値は3.0以下であり、
前記第2ガスバリア層の物性値は4.9よりも大きい、
請求項1に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の発光装置として、発光素子の封止材としてガスバリア性に優れたシリコーン樹脂からなるものを用いた発光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1によれば、ガスバリア性に優れた封止材を用いることにより、硫黄系ガスや塩素系ガスの装置内への侵入を防ぎ、発光素子が接続されるリードフレームの腐食による変色を防止することができる。リードフレームの変色を防ぐことにより、リードフレームの反射率の低下による発光装置の発光強度の低下を防ぐことができる。
【0004】
特許文献1によれば、パルスNMRによるH核の平均スピンースピン緩和時間の測定によりシリコーン樹脂の架橋密度を調べ、ガスバリア性を評価している。H核の平均スピンースピン緩和時間が短いほど、架橋密度が高く、ガスバリア性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−81430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の発光装置の薄型化により、封止材全体に発光素子からの熱が伝わりやすくなり、発光装置の動作時に封止材の温度が高くなる場合がある。また、発光装置は、その用途等により、広い温度領域で用いられる場合がある。例えば、調光機能を有する発光装置においては、調光により発光素子に流れる電流の大きさが変わり、発光装置内の温度が変化する。
【0007】
しかし、封止材に用いられるシリコーン樹脂は、一般に、温度の上昇に伴ってガスバリア性が低下することが知られている。
【0008】
従って、本発明の目的は、薄型でありながら広い温度領域でリードフレームの変色を抑えることのできる封止材を有する発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、リードフレームに実装された発光素子と、前記発光素子を封止する、厚さ1mm以下のシリコーン樹脂を主成分とする封止材と、を有し、前記封止材は、共鳴周波数25MHzにおけるH核の平均スピン―スピン緩和時間の140℃における数値と25℃における数値の差を115で除して得られる物性値が3.5以下であり、140℃における前記平均スピン―スピン緩和時間が500μsec以下である第1ガスバリア層と、前記平均スピン―スピン緩和時間が25℃以上60℃以下の第1温度領域において前記第1ガスバリア層よりも小さく、120℃以上140℃以下の第2温度領域において前記第1ガスバリア層よりも大きい第2ガスバリア層を含む、発光装置を提供する。
【0010】
上記発光装置において、前記封止材の厚さは0.6mm以下であってもよい。
【0013】
上記発光装置において、記第2ガスバリア層の、共鳴周波数25MHzにおけるH核の平均スピン―スピン緩和時間の140℃における数値と25℃における数値の差を115で除して得られる物性値は3.5より大きくてもよい。
【0014】
上記発光装置において、前記発光素子は、前記リードフレームにワイヤーを介して接続され、前記ワイヤーの全部分は、前記第1ガスバリア層と前記第2ガスバリア層のうちの下側の層に含まれてもよい。
【0015】
上記発光装置において、前記第1ガスバリア層の物性値は3.0以下であり、前記第2ガスバリア層の物性値は4.9よりも大きくてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、薄型でありながら広い温度領域でリードフレームの変色を抑えることのできる封止材を有する発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、第1の実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。
図2図2は、5つの異なるシリコーン樹脂、樹脂A、B、C、D、EのH核の平均スピンースピン緩和時間の温度依存性を表すグラフである。
図3図3は、第2の実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。発光装置10は、リードフレーム1に実装された発光素子2と、発光素子2を封止する封止材11と、を有する。リードフレーム1、発光素子2、及び封止材11は、樹脂製ケース5内に形成される。
【0019】
発光素子2は、LEDチップ等の発光素子である。発光素子2の図示しないn電極及びp電極は、ワイヤー3を介してリードフレーム1に接続される(ワイヤボンディング)。また、発光素子2は、ダイボンディングペースト4によりリードフレーム1に固定される。
【0020】
なお、図1に示される発光装置10は、フェイスアップ型のLEDチップを発光素子2として用いた表面実装型の装置であるが、サイドビュー型、砲弾型、COB(Chip on Board)型等、他の構成を有してもよい。発光素子2も、フェイスアップ型に限られず、フリップチップ型であってもよい。
【0021】
リードフレーム1は、例えば、全体またはその表面がAg、Cu、又はAlからなる。Ag、Cu、及びAlは、優れた導電性を有する一方、硫黄系ガス、塩素系ガス等の大気中のガスに曝されることより腐食し、変色しやすい。リードフレーム1が変色した場合は、反射率が低下し、発光装置10の発光強度が低下する。特に、Agは反射率が高く、リードフレーム1に用いられる材料として優れているが、腐食による変色が特に生じやすいという欠点がある。そのため、リードフレーム1の腐食による変色を抑えることのできる本実施の形態は、Agをリードフレーム1の材料として用いる場合に、特に有効であるといえる。
【0022】
封止材11は、広い温度領域で優れたガスバリア性を有するシリコーン樹脂を主成分とし、リードフレーム1の変色を抑える。封止材11のシリコーン樹脂は、熱や光による黄変の少ない“−O−Si−O−Si−O−”のシリコーンを主骨格とすることが好ましい。封止材11は、蛍光体を含んでもよい。さらに、蛍光体を分散させる分散剤を含んでもよい。蛍光体は、分散状態で含有されてもよく、沈降状態で含有されてもよい。
【0023】
また、封止材11は、フィラーを含有してもよい。フィラーの含有量は特に限定されない。フィラーは、発光装置10の製造条件や性能の点から、耐熱性に優れることが好ましく、例えば、150℃以上の温度条件下でも使用できることが好ましい。封止材11は、紫外線硬化型又は熱硬化型のいずれであってもよい。
【0024】
フィラーの材料としては、熱や光による黄変の少ないものが好ましい。封止材11は、シリカ、シリコーン、ガラスビーズ、ガラス繊維等の透明フィラーや、酸化チタン、チタン酸カリウム等の白色フィラーを含んでもよい。フィラーの形状は限定されず、例えば、破砕状、球状、鱗片状、棒状、又は繊維状である。
【0025】
封止材11は、後述するように、共鳴周波数25MHzにおけるH核の平均スピンースピン緩和時間の140℃における数値と25℃における数値の差を115で除して得られる物性値が、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下である。また、140℃における共鳴周波数25MHzにおけるH核の平均スピンースピン緩和時間が500μsec以下、好ましくは450μsec以下である。これらの特徴のため、封止材11は、広い温度領域で優れるガスバリア性を有する。
【0026】
また、封止材11の厚さは1mm以下、好ましくは0.6mm以下である。封止材11は優れたガスバリア性を有するため、厚さが薄くてもリードフレーム1の変色を効果的に抑えることができる。また、封止材11を薄くすることができるため、発光装置10を薄型化することができる。
【0027】
封止材11のガスバリア性は、パルスNMR法によるH核のスピンースピン緩和時間の測定により評価することができる。具体的には、強い磁場の中に液体又は固体のシリコーン樹脂のサンプルを置き、そこへ電磁波パルスを付与し、電磁波パルスに対する応答信号をコイルによって検出し、H核のスピンースピン緩和時間を測定する。
【0028】
H核の平均スピンースピン緩和時間は、シリコーン樹脂の分子中の複数のH核のスピンースピン緩和時間の平均値である。H核の平均スピンースピン緩和時間が短いほど、シリコーン樹脂の架橋密度が高く、ガスバリア性に優れる。
【0029】
図2は、5つの異なるシリコーン樹脂、樹脂A、B、C、D、EのH核の平均スピンースピン緩和時間の温度依存性を表すグラフである。樹脂A、B、C、D、Eの測定値は、図2においてそれぞれマーク●、◇、□、▲、○で表される。ここで、樹脂Aは変性フェニルシリコーン樹脂、樹脂B、C、Dはフェニルシリコーン樹脂、樹脂Eはジメチルシリコーン樹脂である。
【0030】
樹脂A、B、C、D、Eのスピン−スピン緩和時間の測定条件を以下に示す。
測定装置: 日本電子MU25型
共鳴周波数: 25MHz
測定温度: 25〜140℃
観測核種: 1H
磁石: 永久磁石 0.58T
検出方式: QD方式(Quadrature Detection)
パルス系列: ソリッド−エコー法
RFパルス幅:2マイクロ秒
パルス間隔: 8マイクロ秒
パルス繰り返し時間: 1sec
【0031】
いずれのシリコーン樹脂も、温度の上昇に伴ってH核の平均スピンースピン緩和時間が長くなるが、異なるシリコーン樹脂の間で温度領域によってH核の平均スピンースピン緩和時間の長短が逆転する場合がある。
【0032】
例えば、樹脂Aは、25〜80℃の温度領域では樹脂B、C、DよりもH核の平均スピンースピン緩和時間が短いが、100〜140℃の温度領域では樹脂B、C、DよりもH核の平均スピンースピン緩和時間が長くなる。このことは、25〜80℃の温度領域では、樹脂Aが樹脂B、C、Dよりもガスバリア性に優れ、100〜140℃の温度領域では、樹脂B、C、Dが樹脂Aよりもガスバリア性に優れることを表す。
【0033】
次に、図2H核の平均スピンースピン緩和時間の25℃における測定点と140℃における測定点とを結ぶ線分の傾き、すなわちH核の平均スピンースピン緩和時間の140℃における数値と25℃における数値の差を140℃と25℃の差の数値である115で除して得られる物性値(以下、αと記す)に着目する。
【0034】
樹脂A、B、C、Dのαは、それぞれ4.94、3.43、3.25、2.96である。αが小さい方が、温度の上昇に伴うH核の平均スピンースピン緩和時間の増加量が小さい、すなわち温度が上昇に伴うガスバリア性の低下が少ないといえる。
【0035】
例えば、αが樹脂B、C、Dよりも大きい樹脂Aは、室温に近い25〜80℃の温度領域では樹脂B、C、Dよりもガスバリア性に優れるものの、高温側の100〜140℃の温度領域ではガスバリア性が大きく劣化し、樹脂B、C、Dよりも悪くなる。このことから、広い温度領域で用いられる発光装置1においては、αが小さい樹脂B、C、Dを封止材11の材料として用いることが好ましいといえる。
【0036】
(封止材の評価)
本発明者等は、上記の樹脂A〜Dを封止材11に用いて発光装置10を形成し、硫黄ガス雰囲気に放置した後の明るさ維持率の評価を行った。リードフレーム1の変色が著しいほど、反射率が低下し、明るさ維持率が低くなる。ここで、放置後の明るさが放置前の明るさの50%以上であるものを合格、50%未満であるものを不合格とした。
【0037】
封止材の評価条件を以下に示す。
封止材の厚さ: 0.6mm
温度: 100℃
硫黄ガス濃度: 3〜5ppm
放置時間: 200時間
【0038】
評価の結果、樹脂BCDが合格、樹脂Aが不合格であった。この結果は、100℃におけるH核の平均スピンースピン緩和時間は樹脂Aが最も長い、図2の内容と一致する。
【0039】
評価の結果から、封止材11のαの値は、樹脂B、C、Dの値を含む3.5以下であることが好ましく、さらに、αが最も小さい樹脂Dの値のみを含む3.0以下であることがより好ましい。
【0040】
なお、樹脂Aを用いて上記の評価条件よりも厚い厚さ1.5mmの封止材を形成したところ、評価結果は合格であった。これは、ガスバリア性の悪い樹脂であっても、厚く形成することにより硫黄ガスの侵入を抑えることができるためである。ただし、封止材が厚くなれば、発光装置が厚くなるという欠点がある。
【0041】
ところで、図2に示される樹脂Eは、ガスバリア性に著しく劣るが、αの値が、0.45と非常に小さい。これは、ガスバリア性の著しく悪いシリコーン樹脂は、H核の平均スピンースピン緩和時間の長さが飽和し、温度依存性が小さくなるためである。
【0042】
そのため、封止材11に用いられる樹脂は、αについての条件だけでなく、H核の平均スピンースピン緩和時間の長さについての条件も満たすことが好ましい。例えば、ガスバリア性に優れた樹脂B、C、Dが満たし、樹脂A、Eが満たさないH核の平均スピンースピン緩和時間についての条件、140℃におけるH核の平均スピンースピン緩和時間が500μsec以下、を満たすことが好ましい。さらに、140℃における前記平均スピンースピン緩和時間が450μsec以下であることがより好ましい。
【0043】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態によれば、封止材11は、薄型でありながら広い温度領域で優れたガスバリア性を有するため、硫黄系ガス等の金属を腐食させるガスの発光装置10内への侵入を抑え、リードフレーム1の変色を抑えることができる。そのため、発光装置10は、厚さが薄く、且つ腐食性ガスへの優れた耐性を有する。また、発光装置10は、調光機能を有する照明装置のような、広い温度領域で用いられる発光装置として用いられることができる。
【0044】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、封止材が2層構造を有する点において、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略又は簡略化する。
【0045】
図3は、第2の実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。発光装置20は、リードフレーム1に実装された発光素子2と、発光素子2を封止する封止材21と、を有する。リードフレーム1、発光素子2、及び封止材21は、樹脂製ケース5内に形成される。
【0046】
封止材21は、第1ガスバリア層21aと、第1ガスバリア層21a上の第2ガスバリア層21bから構成される2層構造を有する。第1ガスバリア層21aは、第1の実施の形態の封止材11と同じ材料からなり、同じ特性を有する。
【0047】
第2ガスバリア層21bは、共鳴周波数25MHzにおけるH核の平均スピンースピン緩和時間が25℃を含む第1温度領域において第1ガスバリア層21aよりも小さく、140℃を含む第2温度領域において第1ガスバリア層21aよりも大きい。すなわち、第2ガスバリア層21bは、第1温度領域において第1ガスバリア層21aよりもガスバリア性に優れ、第2温度領域においてガスバリア性に劣る。ここで、第1温度領域及び第2温度領域は、例えば、25℃以上60℃以下の領域、及び120℃以上140℃以下の領域である。
【0048】
例えば、図2に示される樹脂B、C、Dを第1ガスバリア層21aに用いる場合、樹脂Aを第2ガスバリア層21bに用いることができる。樹脂Aは、共鳴周波数25MHzにおけるH核の平均スピンースピン緩和時間が少なくとも25℃以上60℃以下の領域において、樹脂B、C、Dよりも短く、少なくとも120℃以上140℃以下の領域において長い。
【0049】
また、第2ガスバリア層21bは、H核の平均スピンースピン緩和時間の140℃における数値と25℃における数値の差を140℃と25℃の差の数値である115で除して得られる物性値αの値が第1ガスバリア層21aよりも大きい、すなわち3.5より大きいことが好ましい。さらに、樹脂Aのαの値が4.94であることから、第2ガスバリア層21bのαの値は4.9よりも大きいことがより好ましい。
【0050】
つまり、封止材21は、常温に近い温度領域で優れたガスバリア性を示す第2ガスバリア層21bと、高い温度領域で優れたガスバリア性を示す第1ガスバリア層21aを有するため、より効果的に、広い温度領域においてリードフレーム1の変色を抑えることができる。なお、第1バリア層21aと第2バリア層21bの材料は逆であってもよい。すなわち、1バリア層21aと第2バリア層21bのガスバリア性は逆であってもよい。
【0051】
また、封止材21の厚さは1mm以下である。封止材21は優れたガスバリア性を有するため、1mm以下という薄さであっても、リードフレーム1の変色を抑えることができる。また、封止材21を薄くすることができるため、発光装置10を薄型化することができる。第1バリア層21aと第2バリア層21bの厚さの比は特に限定されず、発光装置20の用いられる環境の温度等に合わせて適宜調整することができる。
【0052】
封止材21を形成する際に、第1ガスバリア層21aと第2ガスバリア層21bのうちの下側の層の樹脂が完全に硬化していない状態で上側の層の樹脂を注入し、両方の樹脂を硬化させることにより、第1ガスバリア層21aと第2ガスバリア層21bの密着性を高めることができる。
【0053】
ワイヤー3は、第1バリア層21aと第2バリア層21bとの界面に接触しないことが好ましい。すなわち、ワイヤー3の全部分は、第1バリア層21aと第2バリア層21bのうちの下側の層に含まれることが好ましい。ワイヤー3が第1バリア層21aと第2バリア層21bとの界面に接触すると、界面に発生する応力により損傷するおそれがあるためである。
【0054】
ワイヤー3の材料としては、一般的によく用いられるAuの他に、Agを用いることもできる。Agは反射率が高い一方、硫黄系ガス等により腐食、変色しやすいという欠点があるが、封止材21が優れたガスバリア性を有するため、Agをワイヤー3の材料として用いる場合であっても、ワイヤー3の腐食による変色を抑えることができる。
【0055】
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施の形態によれば、封止材21は、常温に近い温度領域で優れたガスバリア性を示す第2ガスバリア層21bと、高い温度領域で優れたガスバリア性を示す第1ガスバリア層21aを有するため、第1の実施の形態に係る封止材1よりも、広い温度領域におけるガスバリア性に優れる。そのため、発光装置20は、厚さが薄く、且つ腐食性ガスへのより優れた耐性を有する。また、発光装置20は、調光機能を有する照明装置のような、広い温度領域で用いられる発光装置として用いられることができる。
【0056】
本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0057】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0058】
1 リードフレーム
2 発光素子
3 ワイヤー
10、20 発光装置
11、21 封止材
21a 第1ガスバリア層
21b 第2ガスバリア層
図1
図2
図3