【実施例1】
【0018】
図1は本発明による空気調和機の実施例を示すブロック図である。なお、本発明と直接関係がない冷媒系統やファンモータなどは図示と説明とを省略する。
この空気調和機は交流電源3が接続された室外機1と室内機2とで構成され、室外機1の内部には、交流電源3を入力して所定の直流電源に変換するインターリーブ方式のコンバータ40と、同コンバータ40から出力された直流電源を入力し、3相の交流電源に変換するインバータ10と、同インバータ10から出力される3相の交流電源を入力して図示しない圧縮機を駆動するモータ20と、コンバータ40とインバータ10とを制御する室外機制御部30とを備えている。なお、室外機1の室外機制御部30は室内機2と通信接続され、室内機2からの指示によりインバータ10を介してモータ20の回転数制御を行う。
【0019】
コンバータ40は、全波整流回路からなる整流器110と、スイッチング回路120(基本スイッチング回路)と、スイッチング回路130(増設スイッチング回路)と、コンデンサ140と、電源制御装置160とを備えている。
【0020】
交流電源3が入力に接続された整流器110は、交流電源3を整流してスイッチング回路120、130に出力する。また、スイッチング回路120は、コイル121と、スイッチング素子122と、ダイオード123とを有する。そして、コイル121の一端は整流器110の+端子に接続され、コイル121の他端はダイオード123のアノード端子に接続され、ダイオード123のカソード端子はコンデンサ140の+端子に接続されている。そして、スイッチング素子122はコイル121の他端と整流器110の−端子との間をオン/オフ(接続/開放)するように動作する。
このスイッチング回路120は常時動作する基本スイッチング回路である。
【0021】
スイッチング回路130は、コイル131と、スイッチング素子132と、ダイオード133とを有する。そして、コイル131の一端は整流器110の+端子に接続され、コイル131の他端はダイオード130のアノード端子に接続され、ダイオード130のカソード端子はコンデンサ140の+端子に接続されている。そして、スイッチング素子132はコイル131の他端と整流器110の−端子との間をオン/オフ(接続/開放)するように動作する。
このスイッチング回路130は電源装置100の負荷が大きいときにのみ動作する増設スイッチング回路である。スイッチング素子122,132は、電界効果トランジスタ(MOSFET)、もしくは、IGBT( Insulated Gate Bipolar Transistor)であり、後述の制御回路151によりオン/オフ制御される。
【0022】
図1に示すように、スイッチング回路120及び130は、整流器110の+端子とコンデンサ140の+端子との間に並列接続されている。このスイッチング回路120及び130は、昇圧回路としての役割と、電流波形の整形による力率改善の役割との両方を担う。
【0023】
コンデンサ140は、スイッチング回路120及び130の出力端に接続されている平滑コンデンサであり、スイッチング回路120や130から出力される電流を電荷として蓄積する。また、電源制御装置160は、
図1に示すように、制御回路151と、電流検出器153と、電圧検出器155とを有する。
【0024】
制御回路151は、電圧検出器155により検出された電圧が所定の電圧となるようにフィードバック制御する。また、この制御回路151は、スイッチング素子122のスイッチング信号及びスイッチング素子132のスイッチング信号をそれぞれ出力し、スイッチング素子122、132をオン/オフさせてPFC制御を行う。
インターリーブ方式では前述した2つのスイッチング回路120,130を互いに位相をずらしたスイッチング信号で駆動するようになっている。このため、一方のスイッチング回路のコイルに整流器110から電流が流れ込んでいる間、他方のスイッチング回路のコイルからコンデンサ140へ電流が出力される。このため効率よくコンデンサ140に電流を出力することができる。
そして、スイッチング回路120のコイル121の電流と、スイッチング回路130のコイル131の電流とへ流れ込む電流の合計、即ち、コンバータ40への入力電流の波形が、交流電源の電圧波形と可能な限り相似形になり且つ位相が合うように、電流検出器153により検出された電流に基づいてスイッチング素子122、132を、PWM制御されたパルスであるスイッチング信号によりオン/オフ制御する。
【0025】
電流検出器153は、整流器110から出力される電流(トータル電流)I0、スイッチング回路120のコイル121を流れる電流I1、およびスイッチング回路130のコイル131を流れる電流I2をそれぞれ検出する。検出された電流は、制御回路151に送られPFC制御に用いられる。
【0026】
一方、コンバータ40は短絡スイッチ54を備えている。この短絡スイッチ54の一端は、コイル131とダイオード133とが接続される側のコイル131の他端に、短絡スイッチ54の他端は、コイル121とダイオード123とが接続される側のコイル121の他端に、それぞれ接続されている。このため、短絡スイッチ54が閉となった場合、コイル121とコイル131とが並列に接続されることになる。
【0027】
この短絡スイッチ54は、室外機制御部30の指示により開閉制御される。より具体的には、室外機制御部30から例えばLレベル信号を入力した場合に短絡スイッチ54は開となる。一方、Hレベル信号を入力した場合に短絡スイッチ54は閉となる。
【0028】
また、室外機制御部30は、制御回路151にスイッチング許可信号を出力している。このスイッチング許可信号はスイッチング素子132のスイッチングを許可/禁止するものである。より具体的には、制御回路151は、室外機制御部30からLレベル(禁止)のスイッチング許可信号を入力した場合に、スイッチング素子132のスイッチング信号の出力を停止する。このとき、スイッチング回路130は動作を停止する。一方、制御回路151は、室外機制御部30からHレベル(許可)のスイッチング許可信号を入力した場合に、スイッチング素子132のスイッチング信号の出力を開始する。このとき、スイッチング回路130は動作を開始する。
【0029】
室外機制御部30は室内機2からの要求により、空調運転に必要な冷媒量、つまり、冷媒を循環させる圧縮機のモータ20の回転数を制御している。例えば、室内機2からの要求により、運転開始時に高い空調能力が必要な場合、室外機制御部30は最高回転数:100回転/秒で回転させ、中位な空調能力が要求されれば中回転:60回転/秒で回転させ、低い空調能力が要求されれば低回転:30回転/秒で回転させる。ここでは3段階で説明しているが、実際にはさらに細かい回転数制御を行っている。
【0030】
室外機制御部30は、モータ回転数に従ってコンバータを制御するため、室外機制御部30内部にモータ回転数の2つの閾値を記憶している。この閾値は、コイル接続閾値:30回転/秒と、片相運転閾値:60回転/秒とである。片相運転閾値は、スイッチング回路120とスイッチング回路130とを両相運転させるか、スイッチング回路120だけの片相運転させるかを決定するためのものである。片相運転閾値以上にモータ20を回転させる場合、室外機制御部30は制御回路151にHレベル(許可)のスイッチング許可信号を出力し、スイッチング回路130を動作させる。逆に片相運転閾値未満でモータ20を回転させる場合は、制御回路151にLレベル(禁止)のスイッチング許可信号を出力し、スイッチング回路130を停止させる。
【0031】
一方、コイル接続閾値は、コイル121とコイル131とを並列に接続させるためのものであり、コイル接続閾値以上にモータ20を回転させる場合は、短絡スイッチ54にLレベルの信号を出力し短絡スイッチ54を開にすることで各コイルを独立して使用する。また、コイル接続閾値未満でモータ20を回転させる場合は、短絡スイッチ54にHレベルの信号を出力し短絡スイッチ54を閉にすることでコイルを並列に接続して使用する。
【0032】
次に
図1〜
図5を用いて室外機1の動作を説明する。
図2〜
図5は本発明によるコンバータ40の動作を示しており、
図2は両相で運転を行っている場合、
図3は両相から片相運転へ移行する場合、
図4は片相運転中にコイルを並列接続する場合、
図5は両相運転中にコイルを並列接続する場合をそれぞれ示す説明図である。
【0033】
図2〜
図5はそれぞれ(1)〜(7)の信号を示しており横軸は時間である。各図において、(1)はスイッチング素子122のオン/オフ状態、(2)はコイル121の電流、(3)はスイッチング素子132のオン/オフ状態、(4)はコイル131の電流、(5)は室外機制御部30がインバータ10に対して指示しているモータ20の回転数、(6)は短絡スイッチ54の開閉状態、(7)はスイッチング許可信号の許可/禁止状態をそれぞれ示している。
【0034】
図2(5)に示すようにモータ20は100回転/秒程度で回転している。このため片相運転閾値:60回転/秒とコイル接続閾値:30回転/秒との回転数以上であるため、室外機制御部30は、
図2(6)に示すように短絡スイッチ54を開に、また、
図2(7)に示すようにスイッチング許可信号を許可(Hレベル)にしている。
【0035】
図2(1)に示すようにスイッチング素子122は制御回路151からの指示により、オン/オフ制御される。
図2(2)に示すように、スイッチング素子122がオンの時、コイル121を流れる電流が増加し、スイッチング素子122がオフになるとコイル121を流れる電流が減少する。これを繰り返している。この動作によりコンデンサ140へ間欠的に電流が流れる。
【0036】
一方、
図2(3)に示すように、スイッチング素子132は制御回路151からの指示により、オン/オフ制御される。ただし、スイッチング素子122のオン/オフ周期をTとした場合、スイッチング素子132はT/2だけずれた周期で駆動される。このため、スイッチング回路120とスイッチング回路130とで交互にコンデンサ140へ電流が流れる。
このようにモータの20の回転数が片相運転閾値:60回転/秒の回転数以上の場合は一般的なインターリーブ方式の電源として動作する。
【0037】
図3(5)に示すように、モータ20の回転数が100回転/秒回転から下がってくると負荷が軽くなるため、スイッチング素子122とスイッチング素子132とのオン時間が減少し、これに対応してコイル121とコイル131を流れる電流も減少する。
【0038】
そして、室外機制御部30は、モータ20の回転数が片相運転閾値:60回転/秒未満になると
図3(7)に示すようにスイッチング許可信号を禁止(Lレベル)にする。このため、図(3)と図(4)に示すようにスイッチング回路130が停止してコイル131には電流が流れなくなる。この結果、スイッチング回路120だけが動作する片相運転となる。
【0039】
図4(5)に示すように、モータ20の回転数が50回転/秒からさらに下がってくると、負荷がさらに軽くなるためスイッチング素子122のオン時間が減少し、これに対応してコイル121を流れる電流も減少する。そして、室外機制御部30は、モータ20の回転数がコイル接続閾値:30回転/秒未満になると
図4(6)に示すように短絡スイッチ54を閉にする。
【0040】
この結果、コイル121とコイル131とが並列に接続され、コイル121単独の時と比較してインピーダンスが半分になる。これにより、スイッチング素子122のオン時間が一時的に増加するが、
図4(5)に示すようにモータ20の回転数がさらに減少するため、これに対応してスイッチング素子122のオン時間は減少する。
【0041】
次に
図5を用いて両相運転のままコイル121とコイル131とを並列に接続する例を説明する。従って
図5(7)に示すようにスイッチング許可信号は許可のままである。
図5(5)に示すように、モータ20の回転数が50回転/秒からさらに下がってくると、負荷がさらに軽くなるためスイッチング素子122のオン時間が減少し、これに対応してコイル121を流れる電流も減少する。そして、室外機制御部30は、モータ20の回転数がコイル接続閾値:30回転/秒未満になると
図5(6)に示すように短絡スイッチ54を閉にする。
【0042】
この結果、コイル121とコイル131とが並列に接続され、コイル121単独の時と比較してインピーダンスが半分になる。これにより、スイッチング素子122のオン時間が一時的に増加するが、
図5(5)に示すようにモータ20の回転数がさらに減少するため、これに対応してスイッチング素子122のオン時間は減少する。
【0043】
なお、両相運転中であるため、並列に接続されたコイル121とコイル131に対して
図5(1)と
図5(3)に示すようにそれぞれのスイッチング素子がオン/オフする。つまり、スイッチング周波数が2倍になったのと同様の動作になるが、各スイッチング素子のパルス幅は電流検出器153で検出した瞬時電流値でそれぞれ制御されるため、負荷に対応した電流が供給される。なお、
図5の例ではモータ20の回転数に係わらずにスイッチング許可信号は許可のままであるため、
図1においてスイッチング許可信号の機能を削除してもよい。
【0044】
以上説明したように、コンバータ40の負荷が軽い、つまり、モータ20の回転数が低いコイル接続閾値未満の時に短絡スイッチ54を閉にして複数のコイルを並列に接続するため、コイルのインピーダンスを低下させてコンバータ40の効率を向上させることができる。このため、低負荷での運転時間が長い空気調和機の総合的な消費電力を低減させることができる。
【0045】
次に
図6のフローチャートを用いて室外機制御部30の動作を説明する。また、
図6において、STはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を示す。また、
図6中の『Y』はYesを、『N』はNoをそれぞれ示している。なお、このフローチャートは、本発明に関する部分のみを記載している。なお、この制御の開始前にスイッチング許可信号は禁止(Lレベル)、また、短絡スイッチ54は閉になっているものとする。
【0046】
室外機制御部30は、まず最初に室内機2から冷媒量の増減指示、つまり、モータ20の回転数の増減指示があるか確認する(ST1)。室内機から指示がない場合(ST1−N)、現在の状態を維持する。例えばモータ20が回転中の場合はインバータ10を制御し、現状のモータ20の回転数を維持する制御を行う。回転中でなければその状態、例えば回転停止を維持する(ST7)。そして、ST1へジャンプする。
【0047】
室内機から指示がある場合(ST1−Y)、この指示は回転数の増加か確認する(ST2)。指示が回転数の増加でない場合(ST2−N)、指示は回転数の減少であるため、インバータ10を制御してモータ20の回転数を指示された回転数まで減少させる(ST3)。
【0048】
次にモータ回転数は片相運転閾値以上か確認する(ST4)。モータ回転数が片相運転閾値以上の場合(ST4−Y)、スイッチング許可信号をHレベル(許可)にする(ST9)。そして、ST1へジャンプする。
モータ回転数が片相運転閾値未満の場合(ST4−N)、スイッチング許可信号をLレベル(禁止)にする(ST11)。次にモータ回転数はコイル接続閾値以上か確認する(ST5)。モータ回転数がコイル接続閾値未満の場合(ST5−N)、短絡スイッチ54を閉にする(ST6)。そして、ST1へジャンプする。
【0049】
一方、モータ回転数がコイル接続閾値以上の場合(ST5−Y)、短絡スイッチ54を開にする(ST10)。そして、ST1へジャンプする。
なお、指示が回転数の増加の場合(ST2−Y)、インバータ10を制御してモータ20の回転数を指示された回転数まで増加させる(ST8)。そして、ST4へジャンプする。
【0050】
なお、
図5で説明したように両相運転のままで短絡スイッチ54を制御する場合、つまり、片相運転閾値による片相運転を実行しない場合は、
図6のフローチャートにおける点線で囲ったステップ4とステップ9とステップ11とを削除し、ステップ3の次にステップ5を実行するようにしてもよい。
【0051】
なお、本実施例ではモータの負荷状態をモータの回転数と対応させ、この回転数の値に関して片相運転閾値とコイル接続閾値とを設けて、室外機制御部がこれらの閾値に対応してスイッチング許可信号や短絡スイッチを制御するようにしているが、これに限るものではなく、モータの負荷状態を判別できるものなら、モータの回転数やトルク、インバータやコンバータの負荷電流など、どのようなパラメータを用いてもよい。
例えばモータの負荷状態の1つであるトルクは、PWM制御されるインバータ内のスイッチング素子の駆動パルス幅と対応しているため、このパルス幅と対応させて片相運転閾値とコイル接続閾値とを設け、このパルス幅と対応させてスイッチング許可信号や短絡スイッチを制御するようにしてもよい。
また、他の方法として電流検出器で検出した瞬時電流値を積分してコンバータの消費電流値を生成し、モータの負荷状態の1つである消費電流に対応した片相運転閾値とコイル接続閾値とを設けて、スイッチング許可信号と短絡スイッチとを制御するようにしてもよい。
また、本実施例ではスイッチング回路を2回路備えた例を説明しているが、これに限るものでなく、3回路以上備えていてもよい。