(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る漏出量測定装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0019】
また、以下の説明においては、本発明の漏出量測定装置の一例として、ヒートポンプで使用される凝縮性ガスのドライガスシール装置における漏出量を測定し、その漏出量に基づいてドライガスシール装置の検定を行う検定試験装置を挙げて説明を行う。なお、凝縮性ガスとは、ヒートポンプの循環流路にて、加熱されることによって蒸発されて気体状態となり、冷却されることによって凝縮されて液体状態となるガスであり、ヒートポンプにおいて熱媒体として使用される。この凝縮性ガスとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ハイドロフルオロカーボンやハイドロフルオロエーテル等の代替フロン、または炭化水素系の自然冷媒が用いられる。
【0020】
図1は、本実施形態の検定試験装置1の概略構成を示すシステムフロー図である。この図に示すように、本実施形態の検定試験装置1(漏出量測定装置)は、ガス供給部2(ガス供給手段)と、漏出実験装置3と、回収部4と、凝縮部5(凝縮手段)と、第1流量計6と、第2流量計7(流量計)と、真空ポンプ8と、制御処理装置9(演算処理手段)とを備えている。
【0021】
ガス供給部2は、流路2aと、第1タンク2bと、第1ヒータ2cとを備えており、第1タンク2bに貯留された液化状態の圧縮性ガス(以下、液化ガスLと称する)を第1ヒータ2cで加熱して蒸発させ、気体状態の圧縮性ガス(以下、ガスGと称する)を、流路2aを介して漏出実験装置3に供給するものである。このガス供給部2は、他に、液面計2dと、第2ヒータ2eと、第3ヒータ2fと、液化ガス充填バルブ2gと、液化ガス回収バルブ2hと、吸排気用バルブ2iと、ガス供給流量調整バルブ2jと、安全弁2kと、第1圧力温度計2lと、第2圧力温度計2mと、第3圧力温度計2nとを備えている。
【0022】
流路2aは、第1タンク2b、第2ヒータ2e、液化ガス充填バルブ2g、液化ガス回収バルブ2h、吸排気用バルブ2i及びガス供給流量調整バルブ2jが接続される配管であり、液化ガスLあるいはガスGを案内する。この流路2aは、下流端が漏出実験装置3の高圧空間3a1と接続されている。
【0023】
第1タンク2bは、液化ガスLを貯留する容器であり、高圧空間3a1よりも非常に大きな容量を有している。第1ヒータ2cは、第1タンク2bに設置されており、第1タンク2bの内部温度を調整する。なお、
図1に示すガス供給部2から回収部4までの系は、外部と隔離されており、液化ガスLあるいはガスGのみが充填されている。また、第1タンク2bの内部には液化ガスLが存在する。このため、第1タンク2bの内部圧力は、第1ヒータ2cによって設定される温度により決まるガスGの飽和蒸気圧となる。また、高圧空間3a1の圧力は、自らに対して容量の大きな第1タンク2bの内部空間の圧力に支配される。さらに、ガスGの飽和蒸気圧は第1タンク2bの内部温度によって変化する。したがって、第1ヒータ2cによって第1タンク2bの内部温度を調整することによって、第1タンク2bの内部温度、さらには高圧空間3a1の圧力を調整することができる。すなわち、第1ヒータ2cは、第1タンク2bの内部温度を調整することによって高圧空間3a1でのガスGの圧力を調整する。
【0024】
液面計2dは、第1タンク2bに接続されており、第1タンク2bに貯留される液化ガスLの液面すなわち液化ガスLの貯留量を検出する。第2ヒータ2eは、第1タンク2bと高圧空間3a1との間に配置されると共に、第1タンク2bから排出されたガスGが流路2a内にて凝縮して液化しないよう、流路2aを加熱する。つまり、第2ヒータ2eは、第1タンク2bと高圧空間3a1との間において流路2aをガスGの凝縮温度より高く加熱する。
【0025】
第3ヒータ2fは、高圧空間3a1の内部に設置されており、高圧空間3a1の温度を調整する。なお、高圧空間3a1には液化ガスLが存在しないことから、高圧空間3a1を加熱した場合であっても、高圧空間3a1の圧力は変動せず、温度のみが変動する。このため、第3ヒータ2fによって高圧空間3a1の温度を調整することによって、高圧空間3a1の圧力を変動させることなくガスGの温度を調整することができる。すなわち、第3ヒータ2fは、高圧空間3a1の温度を調整することによって、高圧空間3a1の圧力を変動させることなくガスGの温度を調整する。
【0026】
液化ガス充填バルブ2gは、第1タンク2bに接続されており、第1タンク2bに液化ガスLを充填するときに開放される。液化ガス回収バルブ2hは、第1タンク2bに接続されており、第1タンク2bから液化ガスLを回収するときに開放される。吸排気用バルブ2iは、第1タンク2bと接続されており、第1タンク2bを真空引きするとき、及び、第1タンク2bを大気開放するときに開放される。ガス供給流量調整バルブ2jは、高圧空間3a1と接続されており、開口割合を調整することによって、高圧空間3a1に供給されるガスGの流量を調整する。
【0027】
安全弁2kは、第1タンク2bと接続された逆止弁であり、第1タンク2bの内部圧力が、第1タンク2bの安全上定められた一定値を超えたときに、第1タンク2bの外部にガスGを逃がすことによって第1タンク2bの損傷を防ぐ。第1圧力温度計2lは、第1タンク2bに設置されており、第1タンク2bの内部の圧力及び温度を検出して出力する。第2圧力温度計2mは、流路2aの途中部位に設置される第1流量計6の上流側に設置されており、第1流量計6に供給されるガスGの圧力及び温度を検出して出力する。第3圧力温度計2nは、第1流量計6の下流側に設置されており、第1流量計6を通過したガスGの圧力及び温度を検出して出力する。
【0028】
続いて、漏出実験装置3について説明する。漏出実験装置3は、ドライガスシール装置X(シール部)を介して隔離された高圧空間3a1と低圧空間3a2とを内部に有するチャンバ3aを備え、ガス供給部2から高圧空間3a1に供給されたガスGを低圧空間3a2に漏出させるものである。この漏出実験装置3は、チャンバ3aの他に、回転装置3bと、第4圧力温度計3cと、第5圧力温度計3dとを備えている。
【0029】
ここで、ドライガスシール装置Xの構成について簡単に説明する。ドライガスシール装置Xは、回転装置3bが備える後述のシャフト3b2に対して取り付けられる回転環X1と、チャンバ3aに固定される固定環X2とを備えている。この回転環X1の固定環X2側の面には、回転環X1が回転した際に周囲のガスGを取り込み、回転環X1と固定環X2との間にガスGの薄膜層を形成する複数の溝が形成されている。このようなドライガスシール装置Xは、回転環X1が回転していないときには、回転環X1と固定環X2とが接触することによって高圧空間3a1と低圧空間3a2との間を封止する。また、ドライガスシール装置Xは、回転環X1が回転しているときには回転環X1と固定環X2との間に極小の隙間を空けつつ高圧空間3a1から低圧空間3a2へのガスのリーク量を低減する。
【0030】
漏出実験装置3の説明に戻り、チャンバ3aは、ドライガスシール装置Xを内部に収容する収容器であり、内部空間を高圧空間3a1と低圧空間3a2とを分ける仕切板3a3を備えている。高圧空間3a1は、ガス供給部2と接続されている。また、低圧空間3a2は、回収部4と接続されている。後述するが回収部4はガス供給部2よりも低圧とされている。つまり、高圧空間3a1は高圧なガス供給部2と接続されていることで高圧となり、低圧空間3a2は低圧な回収部4と接続されていることで低圧となっている。仕切板3a3は、チャンバ3aの内部空間を仕切ると共にドライガスシール装置Xの固定環X2を支持する。
【0031】
回転装置3bは、モータ3b1と、シャフト3b2と、磁気カップリング3b3とを備えており、モータ3b1で生成した回転動力を、磁気カップリング3b3を介してシャフト3b2に伝達することでシャフト3b2を回転駆動するものである。モータ3b1は、チャンバ3aの外部に設置されている。シャフト3b2は、高圧空間3a1と低圧空間3a2とに亘って水平配置されており、高圧空間3a1側の先端部にドライガスシール装置Xの回転環X1が固定されている。磁気カップリング3b3は、モータ3b1の駆動軸とシャフト3b2とを磁力を用いて接続するものである。このような回転装置3bでは、磁気カップリング3b3を用いることでモータ3b1をチャンバ3aの外部に配置することができる。このため、チャンバ3aを小型化でき、モータ3b1のメンテナンスを容易とし、さらにモータ3b1に接続される配線等の引き廻しを容易に行うことが可能となる。
【0032】
第4圧力温度計3c及び第5圧力温度計3dは、チャンバ3aに設置されている。第4圧力温度計3cは、高圧空間3a1におけるガスGの圧力及び温度を検出して出力する。第5圧力温度計3dは、低圧空間3a2におけるガスGの圧力及び温度を検出して出力する。
【0033】
続いて、回収部4について説明する。回収部4は、流路4aと、第2タンク4bとを備え、凝縮部5によって凝縮されると共に流路4aを介して漏出実験装置3から排出された液化ガスLを第2タンク4bにて貯留することで回収するものである。この回収部4は、他に、液面計4cと、第4ヒータ4dと、メンテナンス用バルブ4eと、吸排気バルブ4fと、液化ガス回収バルブ4gと、第6圧力温度計4h、第7圧力温度計4iとを備えている。
【0034】
流路4aは、第2タンク4bと、メンテナンス用バルブ4eと、吸排気バルブ4fと、液化ガス回収バルブ4gとが接続される配管であり、液化ガスLを案内する。この流路4aは、上流端が漏出実験装置3の低圧空間3a2と接続されている。
【0035】
第2タンク4bは、液化ガスLを貯留する容器であり、低圧空間3a2よりも非常に大きな容量を有している。第4ヒータ4dは、第2タンク4bに設置されており、第2タンク4bの内部温度を調整する。上述のように、
図1に示すガス供給部2から回収部4までの系は、外部と隔離されており、液化ガスLあるいはガスGのみが充填されている。また、第2タンク4bの内部には液化ガスLが存在する。このため、第2タンク4bの内部圧力は、第4ヒータ4dによって設定される温度により決まるガスGの飽和蒸気圧となる。また、低圧空間3a2の圧力は、自らに対して容量の大きな第2タンク4bの内部空間の圧力に支配される。ガスGの飽和蒸気圧は第2タンク4bの内部温度によって変化する。したがって、第4ヒータ4dによって第2タンク4bの内部温度を調整することによって、第2タンク4bの内部温度、さらには低圧空間3a2の圧力を調整することができる。すなわち、第4ヒータ4dは、第2タンク4bの内部温度を調整することによって低圧空間3a2でのガスGの圧力を調整する。
【0036】
なお、第4ヒータ4dは、第2タンク4bの内部温度を、第1タンク2bよりも低く設定する。つまり、第4ヒータ4dは、第2タンク4bの圧力を第1タンク2bよりも低くなるように、第2タンク4bの温度調整を行う。これによって、回収部4がガス供給部2よりも低圧に設定される。このように回収部4がガス供給部2よりも低圧に設定され、この差圧によって、ガス供給部2から回収部4に向かってガスGが流れる。つまり、第4ヒータ4dによって第2タンク4bの内部温度を第1タンク2bよりも低温に調整することによって、ファンを設置することなくガスGを流すことができる。
【0037】
液面計4cは、第2タンク4bに接続されており、第2タンク4bに貯留される液化ガスLの液面すなわち液化ガスLの貯留量を検出する。メンテナンス用バルブ4eは、第2タンク4bの上流側に設置されており、第2タンク4bをメンテナンスするときに閉鎖される。吸排気バルブ4fは、第2タンク4bと接続されており、第2タンク4bを真空引きするとき、及び、第2タンク4bを大気開放するときに開放される。液化ガス回収バルブ4gは、第2タンク4bに接続されており、第2タンク4bから液化ガスLを回収するときに開放される。第6圧力温度計4hは、第2流量計7の上流側に設置されており、第2流量計7に供給される液化ガスLの圧力及び温度を検出して出力する。第7圧力温度計4iは、第2タンク4bに設置されており、第2タンク4bの内部の圧力及び温度を検出して出力する。
【0038】
続いて、凝縮部5について説明する。凝縮部5は、チャンバ3aの低圧空間3a2に設置される熱交換器5aを備えており、低圧空間3a2に漏出したガスGを凝縮して液化するものである。この凝縮部5は、熱交換器5aの他に、循環流路5bと、第3タンク5cと、ポンプ5dと、流量計5eと、第5ヒータ5fとを備えている。
【0039】
熱交換器5aは、低圧空間3a2に設置されている。この熱交換器5aは、循環流路5bと接続されており、循環流路5bから供給される冷媒と、ドライガスシール装置Xから低圧空間3a2に漏出したガスGとを熱交換し、ガスGを冷却して凝縮する。この熱交換器5aとしては、例えばフィン式やパイプ式を用いることができる。
【0040】
循環流路5bは、熱交換器5a、第3タンク5c、ポンプ5d及び流量計5eに接続される配管であり、冷媒を循環させる。第3タンク5cは、冷媒を貯留する容器である。ポンプ5dは、循環流路5bにて冷媒を強制流動させる。流量計5eは、循環流路5bを流れる冷媒の流量を検出して出力する。第5ヒータ5fは、第3タンク5cに設置されており、第3タンク5cの容器内部の温度を、熱交換によって加熱された冷媒が冷却される温度に保つ。
【0041】
続いて、第1流量計6について説明する。第1流量計6は、ガス供給部2の第2ヒータ2eとガス供給流量調整バルブ2jとの間に設置されている。この第1流量計6は、高圧空間3a1に供給されるガスGの流量を計測して出力する体積流量計である。なお、
図1に示すように、第1流量計6は、ガス供給部2に入り込むようにしてガス供給部2と一体化されているが、機能的には、ガス供給部2の構成要素ではなくガス供給部2から独立した計測器である。
【0042】
続いて、第2流量計7について説明する。第2流量計7は、低圧空間3a2とメンテナンス用バルブ4eとの間に設置されている。第2流量計7は、低圧空間3a2から排出される液化ガスLの流量を計測して出力する体積流量計である。このような第2流量計としては、オリフィス式や電磁式のものを用いても良い。なお、
図1に示すように、第2流量計7は、回収部4に入り込むようにして回収部4と一体化されているが、機能的には、回収部4の構成要素ではなく回収部4から独立した計測器である。
【0043】
続いて、真空ポンプ8について説明する。真空ポンプ8は、吸排気バルブ4fを介して第2タンク4bと接続されている。この真空ポンプ8は、検定試験装置1の起動時に、第1タンク2bから第2タンク4bまでを真空引きする。また、この真空ポンプ8は、着脱可能とされており、吸排気用バルブ2iを介して第1タンク2bとも接続可能とされている。このため、真空ポンプ8が第2タンク4bに接続されている状態で、第1タンク2b側の空気を十分に吸い出すことができない場合には、真空ポンプ8を第1タンク2bに接続して第1タンク2b側の空気を吸い出す。このような真空ポンプ8は、第1タンク2bから第2タンク4bまでを、例えば0.4kPa(abs)程度の真空状態とする。なお、第1タンク2bと第2タンク4bとの各々に対して真空ポンプ8を設けるようにしても良い。
【0044】
続いて、制御処理装置9について説明する。制御処理装置9は、予め記憶するプログラムに基づいて検定試験装置1の全体を制御するものであり、例えばパーソナルコンピュータやワークステーションからなる。例えば、制御処理装置9は、第1ヒータ2c、第2ヒータ2e、第3ヒータ2f、第4ヒータ4d及び第5ヒータ5fと電気的に接続されており、予め記憶するプログラムに基づいてこれらの発熱量を制御する。また、制御処理装置9は、モータ3b1と電気的に接続されており、モータ3b1の回転数を制御する。また、制御処理装置9は、ポンプ5dと電気的に接続されており、ポンプ5dでの冷媒の送出量を制御する。
【0045】
また、制御処理装置9は、第1流量計6の測定結果と、第2圧力温度計2mの出力結果と、第3圧力温度計2nの出力結果とから、高圧空間3a1に供給されるガスGの質量流量を算出する。また、制御処理装置9は、第2流量計7の測定結果と、第7圧力温度計4iの出力結果とから、低圧空間3a2から排出された液化ガスLの質量流量を算出する。制御処理装置9は、これらの質量流量からドライガスシール装置Xでの漏出量を算出し、予め記憶する基準値と比較することによってドライガスシール装置Xの良あるいは不良を判定し、この結果を検定結果として出力する。
【0046】
この他、制御処理装置9は、第1圧力温度計2l、第4圧力温度計3c、第5圧力温度計3d、第6圧力温度計4hと電気的に接続されており、これらの出力結果に基づいて各圧力温度計が設置されている箇所の圧力及び温度を監視している。
【0047】
次に、このように構成された本実施形態の検定試験装置1の動作について説明する。
【0048】
まず最初に、初期準備を行う。この初期準備では、液化ガス充填バルブ2gを介して第1タンク2bに液化ガスLを充填し、真空ポンプ8によって、第1タンク2bから第2タンク4bまでの真空引きを行う。真空ポンプ8を第2タンク4bに接続し、真空ポンプ8を起動することによって、第1タンク2bから第2タンク4bまでに入っている空気を引き出す。ここで、第1タンク2b側から十分に空気を引き出すことができないときには、真空ポンプ8を第1タンク2bに接続して真空引きを行う。
【0049】
このようにして、第1タンク2bから第2タンク4bまでの間から空気が排出されると、続いて、制御処理装置9は、ガス供給部2の第1ヒータ2cに第1タンク2bの内部を加熱させ、凝縮部5のポンプ5dに冷媒を強制流動させ、漏出実験装置3のモータ3b1にシャフト3b2を回転駆動させる。これによって、第1タンク2bに貯留された液化ガスLが蒸発し、ガスGが発生する。ガスGが発生すると、第1タンク2bの内部圧力が上昇し、低圧の回収部4に向けてガスGが流れる。
【0050】
ガスGは、高圧空間3a1、ドライガスシール装置X、低圧空間3a2の順に流れ、低圧空間3a2に配置された熱交換器5aにて冷却されて凝縮されることで液化ガスLに戻る。なお、初期段階では、熱交換器5aにて発生した液化ガスLは、熱交換器5aの表面に付着して滴下しない。このため、熱交換器5aの表面全体が液化ガスLの液膜によって覆われ、液化ガスLが滴下するまで、低圧空間3a2へのガスGの供給を続ける。そして、熱交換器5aの表面が液化ガスLの液膜によって覆われると、熱交換器5aから滴下する液化ガスLの流量と、低圧空間3a2に流れ込むガスGの流量との比率が一定となる。つまり、低圧空間3a2に流れ込んだガスGの流量に対応した量の液化ガスLが熱交換器5aから滴下してチャンバ3aの外部に排出される。
【0051】
熱交換器5aから滴下した液化ガスLは、回収部4の第2タンク4bに流れ込み、この第2タンク4bに貯留される。そして、第2タンク4bに、所定量の液化ガスLが貯留された時点で初期準備が完了する。なお、予め第2タンク4bに液化ガスLを貯留しておくことで初期準備期間を短縮することも可能である。このため、第2タンク4bに液化ガスLを供給するための液化ガス充填バルブを設置しておいても良い。
【0052】
このような初期準備が完了すると、続いて、制御処理装置9によって、ドライガスシール装置Xの検定を行うための測定準備が行われる。この測定準備について、
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0053】
まず制御処理装置9に対して、ドライガスシール装置Xの高圧側(高圧空間3a1)の温度Ts及び圧力Psが入力される(ステップS1)。これらの温度Ts及び圧力Psは、例えば、作業者によって手入力されたり、ネットワークを介して入力されたりする。
【0054】
続いて、制御処理装置9は、ステップS1で入力された圧力Psに基づいて、第1ヒータ2cの温度T1を設定する(ステップS2)。上述のように、第1ヒータ2cの温度T1(すなわち第1タンク2bの内部温度)は、第1タンク2bの内部における飽和蒸気圧を規定し、高圧空間3a1の圧力を規定する。つまり、制御処理装置9は、第1ヒータ2cの温度T1を設定することによって、高圧空間3a1の圧力を設定する。
【0055】
続いて、制御処理装置9は、第3ヒータ2fの温度T2をステップS1で入力された温度Tsに設定する(ステップS3)。上述のように、第3ヒータ2fの温度T2は、高圧空間3a1の温度を規定する。つまり、制御処理装置9は、第3ヒータ2fの温度T2を設定することによって、高圧空間3a1の温度を設定する。
【0056】
そして、制御処理装置9は、ステップS2で設定した温度T1に基づいて第1ヒータ2cを加熱し(ステップS4)、ステップS3で設定した温度T2に基づいて第3ヒータ2fを加熱する(ステップS5)。なお、
図2のフローチャートには示されていないが、制御処理装置9は、第1タンク2bで発生したガスGが流路2aにおいて凝縮しないように第2ヒータ2eを加熱する。また、制御処理装置9は、ガス供給部2と回収部4との間で、ガスGが流れるのに十分な差圧が生じるように、第4ヒータ4dを加熱する。また、制御処理装置9は、冷媒がガスGの凝集を行うのに必要な温度に保たれるように、第5ヒータ5fの温度調整を行う。
【0057】
続いて、制御処理装置9は、第4圧力温度計3cの出力温度が温度Tsとなっているかの判定を行なう(ステップS6)。ここで、第4圧力温度計3cの出力温度が温度Tsとなっていない場合には、制御処理装置9は、第3ヒータ2fの設定温度の調整を行い(ステップS7)、その後、調整した設定温度に基づいて再び第3ヒータ2fを加熱する(ステップS5)。例えば、第4圧力温度計3cの出力温度が温度Tsよりも低い場合には、制御処理装置9は、第3ヒータ2fの温度を上昇させる。一方、第4圧力温度計3cの出力温度が温度Tsよりも高い場合には、制御処理装置9は、第3ヒータ2fの温度を低下させる。
【0058】
ステップS6において、第4圧力温度計3cの出力温度が温度Tsとなっている場合には、制御処理装置9は、第4圧力温度計3cの出力圧力が圧力Psとなっているかの判定を行う(ステップS8)。ここで、第4圧力温度計3cの出力圧力が圧力Psとなっていない場合には、制御処理装置9は、第1ヒータ2cの設定温度の調整を行い(ステップS9)、その後、調整した設定温度に基づいて再び第1ヒータ2cを加熱する(ステップS4)。例えば、第4圧力温度計3cの出力圧力が圧力Psよりも低い場合には、制御処理装置9は、第1ヒータ2cの温度を上昇させる。一方、第4圧力温度計3cの出力温度が温度Psよりも高い場合には、制御処理装置9は、第1ヒータ2cの温度を低下させる。
【0059】
そして、ステップS8において、第4圧力温度計3cの出力圧力が圧力Psとなっている場合には、制御処理装置9は、測定準備を完了する。つまり、制御処理装置9は、第4圧力温度計3cの出力温度及び出力圧力(すなわち高圧空間3a1の圧力及び温度)が、入力された温度Tsと圧力Psとなるまで繰り返し第1ヒータ2cと第3ヒータ2fの温度調整を行い、この温度調整の完了をもって、測定準備を完了する。
【0060】
このような測定準備が完了すると、制御処理装置9は、ドライガスシール装置Xの検定を行う。続いて、このようなドライガスシール装置Xの検定工程について説明する。上述のように測定準備が完了した状態では、第1タンク2bにおいて発生したガスGは、
図1に示すように、第2ヒータ2e、第1流量計6及びガス供給流量調整バルブ2jを介して高圧空間3a1に供給される。高圧空間3a1に供給されたガスGの一部は、ドライガスシール装置Xを通過して低圧空間3a2に漏出する。低圧空間3a2に漏出したガスGは、凝縮部5の熱交換器5aによって冷却されて凝集し、液化ガスLとなる。このような液化ガスLは、低圧空間3a2の底部に接続された流路4aに流れ込み、第2流量計7、メンテナンス用バルブ4eを介して第2タンク4bに流れ込む。
【0061】
このようにしてガスG及び液化ガスLが流れると、第1流量計6、第2流量計7、第1圧力温度計2l、第2圧力温度計2m、第3圧力温度計2n、第4圧力温度計3c、第5圧力温度計3d、第6圧力温度計4h、第7圧力温度計4iから検出結果が出力される。ここで、制御処理装置9は、第1流量計6の検出結果と、第2圧力温度計2mの検出結果と、第3圧力温度計2nの検出結果とから、高圧空間3a1に流れ込むガスGの質量流量を算出する。また、制御処理装置9は、第2流量計7の検出結果と、第6圧力温度計4hの検出結果とから、低圧空間3a2から排出された液化ガスLの質量流量を算出する。そして、制御処理装置9は、上述のように算出した高圧空間3a1に流れ込むガスGの質量流量と、低圧空間3a2から排出された液化ガスLの質量流量との差分をドライガスシール装置Xにおける漏出量として算出する。制御処理装置9は、このようにして算出したドライガスシール装置Xにおける漏出量と、予め記憶する基準値と比較し、漏出量が基準値を下回ればドライガスシール装置Xを良と判定し、漏出量が基準値を上回ればドライガスシール装置Xを不良と判定し、この結果を検定結果として出力する。
【0062】
以上のような本実施形態の検定試験装置1においては、ドライガスシール装置Xを介して高圧空間3a1から低圧空間3a2に漏出したガスGを凝縮部5によって凝縮し、液化状態のガス(液化ガスL)の流量を測定し、この測定結果からガスGの漏出量を求める。つまり、本実施形態の検定試験装置1によれば、気体状態のガスGに比べて温度や圧力による体積変化等の影響が少ない液化状態のガス(液化ガスL)の流量を測定し、この測定結果からガスGの漏出量を求める。このため、ドライガスシール装置Xが設置される空間を実際の使用状態と同様に高温及び高圧の状態とした場合であっても、正確にガスGの漏出量を求めることが可能となる。したがって、本実施形態の検定試験装置1によれば、ドライガスシール装置XにおけるガスGの漏出量をより精度高く測定することが可能となる。したがって、漏出量が極めて微量であったとしても、正確に漏出量を測定することができる。
【0063】
また、本実施形態の検定試験装置1においては、ガス供給部2は、液化状態のガス(液化ガスL)を貯留する第1タンク2bと、第1タンク2bの内部温度を調整することによって高圧空間3a1でのガスGの圧力を調整する第1ヒータ2cとを備える。このため、第1ヒータ2cの出力を調整することによって、容易に高圧空間3a1の圧力を調整することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態の検定試験装置1においては、ガス供給部2は、第1タンク2bと高圧空間3a1との間の流路2aに設置されると共に、流路2aをガスGの凝縮温度より高く加熱する第2ヒータ2eを備える。このため、第1タンク2bで発生したガスGが高圧空間3a1に到達する前に凝集して液化ガスLに戻ることを防止することができる。
【0065】
また、本実施形態の検定試験装置1においては、ガス供給部2は、高圧空間3a1の温度を調整することによって高圧空間3a1でのガスGの温度を調整する第3ヒータ2fを備える。このため、高圧空間3a1におけるガスGの温度調整をより正確に行うことができる。
【0066】
また、本実施形態の検定試験装置1においては、第2流量計7を通過した液化状態のガス(液化ガスL)を回収して貯留する第2タンク4bと、第1タンク2bから第2タンク4bまでを真空引きする真空ポンプ8とを備える。このため、第1タンク2bから第2タンク4bまでの間の空気を排出することができ、高圧空間3a1における圧力及び温度の調整をより正確に行うことが可能となる。
【0067】
また、本実施形態の検定試験装置1においては、第2タンク4bの内部温度を第1タンク2bの内部温度よりも低い温度に調整する第4ヒータ4dを備える。このため、ガス供給部2の圧力よりも回収部4の圧力を低くし、この差圧にてガスGを容易に流すことが可能となる。
【0068】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態においては、本発明のシール部がドライガスシール装置Xである例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、シール部がドライガスシール装置以外のものであっても良い。
【0070】
また、上記実施形態においては、ガスGが、ヒートポンプに用いられる凝縮性ガスである例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、どのようなガスを対象としても、より正確にシール部における漏出量を測定することが可能となる。
【0071】
また、上記実施形態においては、ドライガスシール装置Xの検定まで行う例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、漏出量のみを算出して出力するようにしても良い。