特許第5962094号(P5962094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962094
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】積層基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20160721BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   H05K3/46 B
   H05K3/46 S
   H01L23/12 N
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-60290(P2012-60290)
(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公開番号】特開2013-197163(P2013-197163A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊池 克
(72)【発明者】
【氏名】若生 巌
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−119501(JP,A)
【文献】 特開2000−299559(JP,A)
【文献】 特開2002−185132(JP,A)
【文献】 特開2009−032918(JP,A)
【文献】 特開2010−010488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/02
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に複数の金属層が剥離可能に積層されて成る多層構造の金属箔を有する積層基板の製造方法であって、少なくとも外側に半硬化絶縁樹脂シートを有する材料の外側に前記半硬化絶縁樹脂シートよりも寸法が小さい前記多層構造の金属箔を重ね、該多層構造の金属箔の外側に表面粗度Raが300nm以上1500nm以下の離形フィルムを重ねて積層プレス装置で加熱・加圧することで前記半硬化絶縁樹脂シートを融けださせて熱硬化させて前記多層構造の金属箔の外側の面の端部を覆う絶縁樹脂材料の構造を形成する積層工程を有することを特徴とする積層基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の積層基板の製造方法であって、前記積層工程が、前記離形フィルムの表面粗度を前記絶縁樹脂材料に転写することを特徴とする積層基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子搭載用パッケージに用いる板厚が極めて薄い多層配線板を実現するために用いる積層基板とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、多機能化が一段と進み、これに伴ない、配線の高集積化と小型化が急速に進み、配線の微細化が進んでいる。また、半導体チップとほぼ同等のサイズの、いわゆるチップサイズパッケージ(CSP;Chip Size/Scale Package)などの小型化したパッケージへの要求が強くなっている。一方、エッチングにより配線を形成するサブトラクティブ法で歩留り良く形成できる配線は、導体幅(L)/導体間隙(S)=50μm/50μm程度である。
【0003】
更に微細な導体幅/導体間隙=35μm/35μm程度の配線になると、基材表面に比較的薄い無電解金属めっき層を形成しておき、その上にめっきレジストを形成して、電解金属めっきで導体を必要な厚さに形成し、その後、レジスト剥離後に、その薄い金属めっき層をソフトエッチングで除去するというセミアディティブ法が必要になる。
【0004】
そのための技術として、特許文献1では、離脱が可能なピーラブル銅箔を2枚向かい合わせた間にプリプレグを挟んで積層して硬化させた支持基板を作製し、その支持基板の両面に層間絶縁樹脂層と配線パターンを順次ビルドアップして多層構造体を形成する。そして、支持基板の両面に形成した多層構造体を、ピーラブル銅箔を剥離して分離することで、微細な配線を有し、板厚が極めて薄い多層配線板を製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−101137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、ピーラブル銅箔をプリプレグに積層することで硬化したプリプレグの絶縁樹脂材料を中心とする支持基板に貼り合せた。しかし、そのピーラブル銅箔は、ピーラブル銅箔の剥離の境界線が支持基板の端面に露出しているため、多層配線板の製造のストレスにより、その剥離の界面が製造途中で剥離し製造不良を生じる問題があった。
【0007】
本発明の目的は、多層配線板の製造工程におけるストレスにより製造途中に支持基板となる積層基板のピーラブル金属箔が剥離することを防止し、多層配線板の製造歩留まりを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明は、上記課題を解決するために、両面に複数の金属層が剥離可能に積層されて成る多層構造の金属箔を有する積層基板の製造方法であって、少なくとも外側に半硬化絶縁樹脂シートを有する材料の外側に前記半硬化絶縁樹脂シートよりも寸法が小さい前記多層構造の金属箔を重ね、該多層構造の金属箔の外側に表面粗度Raが300nm以上1500nm以下の離形フィルムを重ねて積層プレス装置で加熱・加圧することで前記半硬化絶縁樹脂シートを融けださせて熱硬化させて前記多層構造の金属箔の外側の面の端部を覆う絶縁樹脂材料の構造を形成する積層工程を有することを特徴とする積層基板の製造方法である。
【0014】
また、本発明は、上記の積層基板の製造方法であって、前記積層工程が、前記離形フィルムの表面粗度を前記絶縁樹脂材料に転写することを特徴とする積層基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の多層配線板の製造方法によると、その外側に多層配線板の多層配線構造30を形成する基礎となる支持基板を、両面にピーラブル金属箔である剥離可能に積層されて成る多層構造の金属箔13を形成した積層基板100を製造することで得る。その積層基板100においては、多層構造の金属箔13の外縁を、多層構造の金属箔13より寸法が大きい絶縁樹脂材料12の額縁部と、その額縁部に連結して多層構造の金属箔13の外縁の表面にかぶる樹脂薄膜15とで包むことにより、剥離可能な多層構造の金属箔13の剥離の界面の境界線が絶縁樹脂材料12で保護できる効果があり、剥離の界面が製造途中で剥離する製造不良を防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の積層基板構造の一例を示す平面および部分断面図である。
図2】本発明の製造方法の実施形態を示す部分断面図である(その1)。
図3】本発明の製造方法の実施形態を示す部分断面図である(その2)。
図4】本発明の製造方法の実施形態を示す部分断面図である(その3)。
図5】本発明の製造方法の実施形態を示す部分断面図である(その4)。
図6】本発明の製造方法の実施形態を示す部分断面図である(その5)。
図7】本発明の製造方法の実施形態を示す部分断面図である(その6)。
図8】本発明の製造方法の実施形態を示す部分断面図である(その7)。
図9】本発明の変形例3の積層基板構造の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1に構造を、図2から図8は、本発明の多層配線板の製造方法の一実施形態を工程順に示す断面図である。
【0018】
図1に、本実施形態における、その外側に多層配線板の多層配線構造30を形成する基礎となる積層基板100の構造を示す。積層基板100は図1(a)に示す平面図の通り、多層構造の金属箔13のサイズが、積層基板100全体のサイズより小さくなり、多層構造の金属箔13の外側である額縁部14の絶縁樹脂材料12が多層構造の金属箔13の内側の面と外側の端部を一体に覆う絶縁樹脂材料として設けられていることを特徴とする。また、図1(b)の部分断面図に示すとおり、絶縁樹脂材料12は、多層構造の金属箔13の露出面外周にも設けられている点を特徴とし、本構造を設けることにより積層基板を用いた基板製造工程での剥離を効果的に防止することができる。
【0019】
構造に用いる材料、構成については、製造方法の実施形態を例に以下に説明する。
(コア基板)
先ず、図2(a)のように、コア基板10として、厚み0.04mmから0.4mmの基板で、両面に厚み18μmの銅箔11を有する、有機樹脂をガラスやポリイミド、液晶などから成る補強繊維に含浸させた材料から成る銅張積層板(例えば、サイズが610×510mm)を用いる。
【0020】
このコア基板10を構成する有機樹脂材料は、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、エポキシアクリレート系、フェノールエポキシ系、ポリイミド系、ポリアミド系、シアネート系、液晶系を主体とする有機樹脂を用いることができる。また、その有機樹脂にシリカやブチル系有機材料、炭酸カルシウムなどによるフィラーを含ませた基板を用いることもできる。
【0021】
(コア基板の銅箔粗化処理工程)
先ず、コア基板10の銅箔11の表面を、過水硫酸等のエッチング液によるソフトエッチング処理により粗化処理する。次に、コア基板10の表面に、ピーラブル銅箔などの多層構造の金属箔13を重ねる位置合せマークとして、銅箔11をエッチングしたパターンで位置合せマークを形成する。
【0022】
(変形例1)
変形例1として、このコア基板10として、ガラス(青板、無アルカリガラス、石英)、又は、金属(ステンレス、鉄、銅、チタン、タングステン、マグネシウム、アルミニウム、クロム、モリブデンなどを主体とする)を用いることもできる。
【0023】
(多層構造の金属箔の積層工程)
次に、図2(b)のように、サイズが例えば610×510mmのコア基板10を中心にし、そのコア基板10の外側に、平面視でコア基板10と同じサイズの寸法が610×510mmのプリプレグもしくは樹脂フィルムから成る半硬化絶縁樹脂シート12aを重ね、その外側に、半硬化絶縁樹脂シート12aより小さいサイズの寸法が600×500mmの多層構造の金属箔13を重ねる。そして、その多層構造の金属箔13の外側に離型フィルム20を重ねて、真空積層プレスにより、コア基板10の外側に半硬化絶縁樹脂シート12aを介して多層構造の金属箔13を積層する。
【0024】
真空積層プレス装置によって加熱・加圧する積層処理によって、コア基板10の外側の半硬化絶縁樹脂シート12aを硬化させて絶縁樹脂材料12にし、そのコア基板10と絶縁樹脂材料12とからなる支持基板の外側の面に多層構造の金属箔13が一体となった積層基板100を製造する。
【0025】
(半硬化絶縁樹脂シート)
ここで用いる半硬化絶縁樹脂シート12aとしては、厚さが0.04mmから0.4m
mの(例えば厚さが0.07mmの)、有機樹脂が補強繊維に含浸されて成るプリプレグを半硬化絶縁樹脂シート12aとして用いる。プリプレグは、樹脂リッチに調整している方が好ましい。必要なハンドリング性を確保できる場合は、補強繊維を含まない樹脂フィルムの半硬化絶縁樹脂シート12aを用いても構わない。
【0026】
半硬化絶縁樹脂シート12aの有機樹脂の材料としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂(以下、BT樹脂と称す)、ポリイミド樹脂、PPE樹脂、フェノール樹脂、PTFE樹脂、珪素樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、PPS樹脂、PPO樹脂、シアネート樹脂、シアネートエステル樹脂などの有機樹脂を使用することができる。
【0027】
また、補強繊維は、ガラス繊維、アラミド不織布やアラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、液晶繊維などを用いることができる。また、半硬化絶縁樹脂シート12aの有機樹脂には、シリカやブチル系有機材料、炭酸カルシウムなどによるフィラーを含ませることもできる。
【0028】
(複数の金属層が剥離可能に積層されて成る多層構造の金属箔)
複数の金属層が剥離可能に積層されて成る多層構造の金属箔13には、例えば、厚さ1μm〜8μm(例えば5μm)の極薄銅箔層13bの金属層に、厚さ10μm〜35μm(例えば18μm)のキャリア銅箔層13aの金属層を剥離可能に積層したピーラブル金属箔を用いる。ここで、極薄銅箔層13bの金属層とキャリア銅箔層13aの金属層が剥離可能に接着剤で接着された二層の銅箔から成るピーラブル銅箔などのピーラブル金属箔を多層構造の金属箔13として用いる。複数の金属層を剥離可能に積層する手段は、剥離可能に接着剤で接着する以外に、他の方法で剥離可能に積層しても良い。
【0029】
更に、この多層構造の金属箔13には、銅層以外の金属層を用いることも可能である。また、複数の金属層を異種の金属層により構成することもできる。
【0030】
この多層構造の金属箔13を、キャリア銅箔層13aを内側にして半硬化絶縁樹脂シート12aの外側に重ねる。
【0031】
(変形例2)
ここで、変形例2として、コア基板10とその外側の半硬化絶縁樹脂シート12aの外側に、多層構造の金属箔13を、キャリア銅箔を外側にし極薄銅箔層13bを内側にして重ねることもできる。
【0032】
図2(b)のように、多層構造の金属箔13の外側に、離型フィルム20を重ねて真空積層プレスにより、コア基板10の外側に半硬化絶縁樹脂シート12aを介して多層構造の金属箔13を積層する。真空積層プレスの条件は、適用する半硬化絶縁樹脂シート12aの材料に合わせて昇温速度や圧力、加圧タイミングを調整して実施する。流動性が高い材料を用いる場合は、昇温速度や加圧タイミングを遅くする調整を施しても構わない。
【0033】
そして、半硬化絶縁樹脂シート12aを固化させて絶縁樹脂材料12にした後に離型フィルム20を剥離して、図3(c)のように、サイズ600×500mmの多層構造の金属箔13の外周部を絶縁樹脂材料12による幅5mmの額縁部14が囲み、多層構造の金属箔13の外縁部の表面の上に、額縁部14の絶縁樹脂材料12と連結している薄い樹脂薄膜15を形成させた支持基板である積層基板100を製造する。この状態に置いて、多層構造の金属箔13の内側の面、側壁、外側の端部が一体の絶縁樹脂材料にて覆われる。
【0034】
(変形例3)
変形例3として、コア基板10を用いずに、2枚の多層構造の金属箔13の間に、その多層構造の金属箔13より大きいサイズの、積層による硬化後に剛性が十分に確保できる厚さ及び剛性を有する絶縁樹脂材料12になる半硬化絶縁樹脂シート12aを挟んで真空積層プレスにより積層処理して積層基板100を製造することもできる。その積層基板100は、図9のように、2枚の多層構造の金属箔13の間に絶縁樹脂材料12が形成された構造であり、その2枚の多層構造の金属箔13のサイズは積層基板100のサイズより小さい。そして、多層構造の金属箔13の外側の面の端部を絶縁樹脂材料12の一部である樹脂薄膜15が覆う構造が形成される。結局、変形例3によっても、多層構造の金属箔13の内側の面と多層構造の金属箔13の外側の面の端部とが、一体構造に形成された絶縁樹脂材料12で覆われている積層基板100を製造することができる。
【0035】
(離型フィルム)
図2(b)の工程で、真空積層プレスの際に真空積層プレス装置のステンレス製のプレス板との間に挟む離型フィルム20としては、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド等の樹脂材料とステンレス、真鍮等の金属材料とを組み合わせた複合材料からなるフィルムを用いる。
【0036】
離型フィルム20の熱収縮率は、加熱加圧処理を施す温度において、0.01〜0.9%の熱収縮率を持つ離型フィルム20を用いる。また、離型フィルム20の加熱加圧処理後における伸びの低下率が加熱加圧処理前の30%以下である離型フィルム20を用いる。
【0037】
離型フィルム20の形態は、厚みが、10〜200μmの樹脂材料からなり、特に、離型フィルム20の表面に、JIS B0601に規定される平均粗さRaを300nm以上1500nm以下に粗面化処理(マット処理)を施した離型フィルム20を用いる。
【0038】
図2(b)の工程で、コア基板10の外側に、樹脂リッチに調整した半硬化絶縁樹脂シート12aを重ね、その外側に多層構造の金属箔13を重ね、その外側に、平均粗さRaを300nm以上1500nm以下に粗面化処理(マット処理)した離型フィルム20を重ねて、プレス板の間に挟んで、そのプレス板で加熱・加圧する真空積層プレス装置を用いて積層して積層基板100を製造する。
【0039】
その際に、離型フィルム20の面のマット処理の効果により、図3(c)のように、多層構造の金属箔13の外縁部の表面の上に、額縁部14の絶縁樹脂材料12と連結している薄い樹脂薄膜15が形成される。
【0040】
この樹脂薄膜15が適切に形成されるように、離型フィルム20の面のマット処理と半硬化絶縁樹脂シート12aの樹脂リッチな度合いと真空積層プレスの加熱・加圧条件を調整する。それにより、加熱・加圧された半硬化絶縁樹脂シート12aの樹脂材料が多層構造の金属箔13の外縁部の表面の上に適切に流れ出して、多層構造の金属箔13の外縁部の上に絶縁樹脂材料12の樹脂薄膜15が厚さが3μm以下で、幅が0.1mm以上10mm以下の範囲の幅で形成される。
【0041】
この、樹脂薄膜15は、額縁部14の絶縁樹脂材料12と連結して、多層構造の金属箔13のキャリア銅箔層13aと極薄銅箔層13bとの剥離の界面の境界線を絶縁樹脂材料12内に埋め込んで保護する効果がある。それにより、以降の製造工程のストレスで、多層構造の金属箔13の、キャリア銅箔層13aと極薄銅箔層13bの剥離の境界面が剥離することを防止でき、その界面の剥離による製造不良を防止できる効果がある。
【0042】
特に、樹脂薄膜15の幅を0.1mm以上にすることで、多層構造の金属箔の剥離の界
面の境界線が十分に保護される効果があり、それにより、基板の以降の製造工程において多層構造の金属箔13が予期せず剥離する不具合を防止できる効果がある。一方、樹脂薄膜15の幅を10mmより大きくすると、多層構造の金属箔13が樹脂薄膜15で覆われない有効領域の面積が狭くなり製品コストを増加させてしまう。なお、好ましくは、この樹脂薄膜15が多層構造の金属箔13を覆う幅を0.5μm以上5mm以下の幅となるように製造条件を調整することが望ましい。
【0043】
この樹脂薄膜15と額縁部14の絶縁樹脂材料12の表面には、マット処理された離型フィルム20の、平均粗さRaが300nm以上1500nm以下の粗度の粗さが転写されている。それにより、後に形成する金属めっき層と、この樹脂薄膜15の表面及び額縁部14の絶縁樹脂材料12の表面との密着力を強くできる効果がある。Raが300nmより小さくなると発現される密着力が弱く、工程中に絶縁樹脂材料12表面に設けられる金属めっき層が剥離する。また、Raが1500nmより大きくなる場合、凸部となる絶縁樹脂材料12が脱離しやすく、この脱離物により工程中の歩留低下を発生させる。
【0044】
ここで、両面に銅箔11を有するコア基板10とその両面の外側に半硬化絶縁樹脂シート12aを重ねて積層する場合は、それらを多層構造の金属箔13の間に挟んで積層して積層基板100を製造すると、その積層基板100が銅箔11で補強される効果がある。また、銅箔11により、積層基板100の表面の熱膨張係数が銅の熱膨張係数に整合され、積層基板100の表面に形成する銅の配線パターン4と積層基板100の表面の熱膨張係数の差が小さくなり、製造工程での熱処理により積層基板100と配線パターン4の界面に生じる熱ストレスを軽減できる効果がある。
【0045】
(めっき下地導電層の形成工程)
次に、図3(d)のように、積層基板100の両面への無電解銅めっき処理により、多層構造の金属箔13の極薄銅箔層13bの表面と、その外縁の表面を覆う樹脂薄膜15の表面、及び、幅5mmの額縁部14の絶縁樹脂材料12の表面の全面に、厚さ0.5μmから3μmのめっき下地導電層1を形成する。
【0046】
この無電解銅めっき処理は、次に配線パターン4を形成する電解銅めっき層の下地の導電層を形成するものであるが、この無電解銅めっき処理を省略して、多層構造の金属箔13に直接に電解銅めっき用の電極を接触させて、多層構造の金属箔13上に直接に電解銅めっきして配線パターン4を形成しても良い。
【0047】
ここで、多層構造の金属箔13の外縁の表面を覆う樹脂薄膜15の表面には、マット処理された離型フィルム20の、平均粗さRaが300nm以上1500nm以下の粗度の粗さが転写されている。そのため、その樹脂薄膜15の表面に無電解銅めっき処理で形成するめっき下地導電層1がその樹脂薄膜15に強く密着できる効果がある。
【0048】
(配線パターンの形成工程)
次に、図4(e)のように、積層基板100の両面に、感光性レジスト例えばドライフィルムのめっきレジストをロールラミネートで貼り付け、パターン露光用フィルムのパターンを感光性レジストに露光・現像して、積層基板100の両面に、樹脂薄膜15上の額縁金属パターン3と、配線パターン4の逆版のめっきレジストのパターン2を形成する。すなわち、めっきレジストのパターン2を、額縁金属パターン3と配線パターン4の部分でめっき下地導電層1を露出させた開口を有するパターンに形成する。
【0049】
次に、図4(g)のように、多層構造の金属箔13側から導通をとり電解銅めっき処理により、配線パターン部分で露出しためっき下地導電層1の面上に銅めっきを15μmの厚さに厚付けするパターンめっきを行うことで額縁金属パターン3と配線パターン4を形
成する。
【0050】
ここで、額縁金属パターン3は、図4(f)のように、離型フィルム20の粗さが転写された樹脂薄膜15の表面及び額縁部14の絶縁樹脂材料12の表面と、多層構造の金属箔13の表面とに連続したパターンで形成する。そのため、額縁金属パターン3が樹脂薄膜15に強く密着するとともに多層構造の金属箔13の表面に接続して、多層構造の金属箔13のキャリア銅箔層13aと極薄銅箔層13bとの剥離の界面の境界線を額縁金属パターン3が樹脂薄膜15の外側から包み保護する効果がある。それにより、以降の製造工程のストレスで、多層構造の金属箔13の、キャリア銅箔層13aと極薄銅箔層13bの剥離の境界面が剥離することを防止でき、その界面の剥離による製造不良を防止できる効果がある。
【0051】
次に、図5(h)のように、めっきレジストを剥離し積層基板100の多層構造の金属箔13上に額縁金属パターン3と配線パターン4を形成する。
【0052】
(層間絶縁樹脂層の形成工程)
次に、層間絶縁樹脂層5の形成のための前処理として、額縁金属パターン3と配線パターン4の表面を、粒界腐食のエッチング処理により粗化処理するか、酸化還元処理による黒化処理、又は、過水硫酸系のソフトエッチング処理により粗化処理する。
【0053】
次に、図5(i)のように、積層基板100と額縁金属パターン3と配線パターン4上に層間絶縁樹脂層5を、ロールラミネートまたは積層プレスで熱圧着させる。例えば厚さ45μmのエポキシ樹脂をロールラミネートする。ガラスエポキシ樹脂を使う場合は任意の厚さの銅箔を重ね合わせ積層プレスで熱圧着させる。
【0054】
層間絶縁樹脂層5の樹脂材料として、エポキシ樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂(以下、BT樹脂と称す)、ポリイミド樹脂、PPE樹脂、フェノール樹脂、PTFE樹脂、珪素樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、PPS樹脂、PPO樹脂、シアネート樹脂、シアネートエステル樹脂などの有機樹脂を使用することができる。また、これらの樹脂単独でも、複数樹脂を混合しあるいは化合物を作成するなどの樹脂の組み合わせも使用できる。更に、これらの材料に、ガラス繊維の補強材を混入させた層間絶縁樹脂層5を用いることができる。補強材には、アラミド不織布やアラミド繊維、ポリエステル繊維を用いることができる。
【0055】
(ビアホール及び配線パターンの形成工程)
次に、図5(j)のように、層間接続用のビアホール下穴6を、レーザー法あるいはフォトエッチング法で形成する。なお、層間絶縁樹脂層5の熱圧着に銅箔を使用した場合は、ビアホール下穴6を形成する前処理として、その銅箔を全面エッチングするか、銅箔にビアホール下穴6用の開口を形成するエッチング処理を行うか、あるいは、銅箔の表面処理を行うことでビアホール下穴6部分の銅箔のレーザー吸収性を改善してレーザーによりビアホール下穴6を形成する。
【0056】
次に、ビアホール下穴6の壁面および層間絶縁樹脂層5の表面に無電解めっきを施す。次に、表面に無電解めっきを施した層間絶縁樹脂層5の面に感光性めっきレジストフィルムを形成して露光・現像することで、ビアホール下穴6の部分、及び、第2の配線パターン19の部分を開口した第2のめっきレジストのパターン2を形成する。次に、第2のめっきレジストパターンの開口部分に、厚さ15μmの電解銅めっきを施すことで銅めっきを厚付けする。
【0057】
次に、第2のめっきレジストを剥離し、層間絶縁層上に残っている無電解めっきを過水
硫酸系のフラッシュエッチングなどで除去することで、図6(k)のように、銅めっきで充填したビアホール7と第2の配線パターンを形成する。そして、層間絶縁樹脂層の形成工程と、ビアホール及び配線パターンの形成工程を繰り返して、積層基板100上に、層間絶縁樹脂層5とビアホール7と第2の配線パターンを複数層ビルドアップした多層配線構造30を形成する。
【0058】
次に、多層配線構造30の表面をマイクロエッチング剤で粗化処理した上にアゾール化合物の厚い被膜を形成させてソルダーレジストの接着性を向上させる処理を行う。次に、感光性のソルダーレジスト8の膜を形成し、露光・現像しパッド部分を開口させ、加熱硬化させる。粗化処理後に多層配線構造30とソルダーレジスト8との密着が確保できる場合は、アゾール化合物による処理は実施しなくても構わない。
【0059】
次に、多層配線構造30の表面に、所望のサイズのエッチングレジストを張り付け、図6(l)の切断線16で多層配線構造30と積層基板100を切断することで額縁部14及び額縁金属パターン3を切り離し、その切断面に多層構造の金属箔13の剥離の境界線を露出させる。そして、図7(m)のように、露出させた剥離の境界線から多層構造の金属箔13のキャリア銅箔層13aから極薄銅箔層13bを剥離することで、厚さ0.4mmの積層基板100から多層配線構造30を分離する。
【0060】
次に、硫酸-過酸化水素系ソフトエッチングを用いて極薄銅箔層13bとめっき下地導電層1を除去し、エッチングレジストを除去することにより、図7(n)のように層間絶縁樹脂層5に埋め込まれた配線パターン4が露出した多層配線構造30を得る。
【0061】
(ランド部分のめっき)
次に、図8のように、露出させた配線パターン4上に、配線パターン4のランド部分に開口部を有するパターンのソルダーレジスト9を印刷する。図8では両面にソルダーレジストが設けられた例を示したが、図7(n)の片面のみにソルダーレジスト8が形成された状態でも構わない。
【0062】
次に、ソルダーレジスト9及び8の開口部のランド部分に、無電解Niめっきを3μm以上形成し、その上に無電解Auめっきを0.03μm以上形成する。無電解Auめっきは1μm以上形成しても良い。更にその上にはんだをプリコートすることも可能である。あるいは、ソルダーレジスト開口部に、電解Niめっきを3μm以上形成し、その上に電解Auめっきを0.5μm以上形成しても良い。更に、ソルダーレジスト開口部に、金属めっき以外に、有機防錆皮膜を形成しても良い。
(外形加工)
次に、多層配線構造30の外形をダイサーなどで加工して個片の多層配線板に分離する。
【符号の説明】
【0063】
1・・・めっき下地導電層
2・・・めっきレジストのパターン
3・・・額縁金属パターン
4・・・配線パターン
5・・・層間絶縁樹脂層
6・・・ビアホール下穴
7・・・ビアホール
8、9・・・ソルダーレジスト
10・・・コア基板
11・・・銅箔
12・・・絶縁樹脂材料
12a・・・半硬化絶縁樹脂シート
13・・・多層構造の金属箔
13a・・・キャリア銅箔層
13b・・・極薄銅箔層
14・・・額縁部
15・・・樹脂薄膜
16・・・切断線
20・・・離型フィルム
30・・・多層配線構造
100・・・積層基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9