特許第5962114号(P5962114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962114
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/58 20060101AFI20160721BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20160721BHJP
   B29C 43/52 20060101ALI20160721BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20160721BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20160721BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20160721BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20160721BHJP
【FI】
   B29C43/58
   B29C43/18
   B29C43/52
   B29C67/14 G
   C08J5/04CES
   C08J5/04CFG
   B29K101:12
   B29K105:08
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-69386(P2012-69386)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-173338(P2013-173338A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-13942(P2012-13942)
(32)【優先日】2012年1月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森脇 敦史
(72)【発明者】
【氏名】晝田 真信
(72)【発明者】
【氏名】山名 将寿
(72)【発明者】
【氏名】葭原 法
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−277387(JP,A)
【文献】 特開平05−177633(JP,A)
【文献】 特開2004−143226(JP,A)
【文献】 特開平09−109164(JP,A)
【文献】 特開平04−212811(JP,A)
【文献】 特開平03−264314(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/075628(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00−43/58
B29C 70/00−70/88
B29C 39/00−39/44
B29B 11/16
B29B 15/08−15/14
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維と熱可塑性樹脂とを含有する繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法であって、
連続強化繊維を開繊後、内部圧力が0.1MPa以上である熱可塑性樹脂槽を通し、熱可塑性樹脂を連続含浸させ、その後、賦形ローラーで潰し冷却固化させた後、カッティングして予備成形体を作製する工程と、
開口率が10〜90%である少なくとも底面と側面から構成された、該熱可塑性樹脂の軟化点または融点よりも高い融点を有する耐熱性離型物品内に、該予備成形体を堆積する工程と、
該熱可塑性樹脂の軟化点または融点よりも高い温度で、該耐熱性離型物品を介して該予備成形体の熱可塑性樹脂を溶融する工程と、
該耐熱性離型物品底面の径よりも1〜80mm大きい径を有する金型を用い、該熱可塑性樹脂の軟化点または融点未満の温度、及び2MPa以上の圧力で、該予備成形体の堆積物を加圧冷却固化する工程を
包含する繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法であって、
前記耐熱性離型物品が、底面板と側面枠から構成され、予備成形体を側面枠内に堆積した後、熱可塑性樹脂の軟化点または融点よりも高い温度で予備成形体の熱可塑性樹脂を溶融し、その後、側面枠を取り外し、底面板を反転させて金型内に予備成形体の堆積物をチャージし、冷却プレスして冷却固化する事を特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記予備成形体が、長さ5mm〜100mm、幅5mm〜50mm、厚み0.05mm〜0.3mmの薄膜片のテープであり、予備成形体に含有される強化繊維と熱可塑性樹脂との質量比が85/15〜40/60である、請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記予備成形体が、連続強化繊維を開繊させた後、熱可塑性樹脂槽を通す前に、樹脂吐出スリットを有する曲面ダイに接触させ、熱可塑性樹脂を含浸させて得られる事を特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記耐熱性離型物品がアルミニウム、またはステンレスである事を特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記耐熱性離型物品の、少なくとも予備成形体と接触する面に離型処理が施されている事を特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記耐熱性離型物品の側面枠の高さが、予備成形体の堆積物の高さより1〜15mm高い事を特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂成形品がシート状であり、その厚み斑が平均厚み±10%以内である事を特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、含浸性と生産性とを同時に満足し、溶融樹脂を流出させず、所望の繊維重量含有率が得られ、且つ低コストで実施され得る繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維強化熱可塑性樹脂シートが成形用中間体として、または成形品として幅広く用いられている。特に、成形用中間体はスタンパブルシートと呼ばれ、例えば、所定の形状に切断され、遠赤外線加熱などにより熱可塑性樹脂の軟化点または融点付近或いはそれ以上の温度まで加熱され、所定の温度の金型に配置され、そして加圧および冷却固化されて最終成形品に成形される。
【0003】
このような成形用中間体は、従来、強化繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維)のマット状物(例えば、チョップトストランドマット)または引き揃え品などに、熱可塑性樹脂の粉体、フィルムまたはシートを、少なくとも熱可塑性樹脂の軟化点または融点よりも高い温度で溶融含浸させて製造される。
【0004】
この成形用中間体の従来の製造方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。
【0005】
A.プレス成形:
プレスへの取り付けの嵌合精度に優れ、加熱および冷却装置を有する金型を、熱媒により少なくとも熱可塑性樹脂の軟化点または融点よりも高い温度に加熱する。この金型に、強化繊維と熱可塑性樹脂シートまたは熱可塑性樹脂粉末とを配置し、加熱および加圧により溶融含浸させる。次いで、金型を冷媒により冷却し、溶融樹脂を加圧および冷却固化して繊維強化熱可塑性樹脂シートを得る。
【0006】
B.金型搬送冷却成形:
加熱および/または冷却可能な一対のプレスに取り付けた嵌合精度に優れる金型を用いる。まず、この金型を一方のプレスに取り付け、少なくとも熱可塑性樹脂の軟化点または融点よりも高い温度に加熱した後に、この金型に強化繊維と熱可塑性樹脂シートまたは熱可塑性樹脂粉末とを配置し、加熱および加圧により溶融含浸させる。次いで、強化繊維と溶融樹脂とを配置したままの金型を、他方のプレスに移し、溶融樹脂を加圧および冷却固化して繊維強化熱可塑性樹脂シートを得る。
【0007】
C.ダブルベルトプレス成形:
無端ベルトと加熱および/または冷却を行う補助装置とを有するダブルベルトプレス装置と呼ばれる装置を用いる。強化繊維と熱可塑性樹脂シートまたは熱可塑性樹脂粉末とをダブルベルトプレス装置に配置し、加熱および加圧により溶融含浸させ、そして連続して加圧および冷却固化して、繊維強化熱可塑性樹脂シートを得る。
【0008】
D.ロール成形:
少なくとも一対の加熱ロールと、少なくとも一対の冷却ロールとを有する装置を用いる。強化繊維と熱可塑性樹脂シートまたは熱可塑性樹脂粉末とを、加熱ロールで加熱および加圧することにより溶融含浸させ、次いで、冷却ロールで加圧および冷却固化して、繊維強化熱可塑性樹脂シートを得る。
【0009】
しかし、上記の方法は、それぞれに以下のような問題を有している。
【0010】
プレス成形および金型搬送冷却成形においては、(a)金型を少なくとも熱可塑性樹脂の軟化点または融点付近まで加熱し、(b)少なくとも樹脂が固化する温度まで、圧力を保持したまま金型ごと冷却しなければならない。そのため、加熱および冷却に非常に時間が掛かり、生産性を上げることが難しい。一方、生産性を上げようとすると、多くの金型が必要であり、設備に要する費用の増大を招く。
【0011】
ダブルベルトプレス成形においては、無端ベルト(通常、金属ベルトが使用される)と加熱および/または冷却を行う補助装置とを有する装置を用いることにより、連続的な製造が可能である(すなわち、生産性に優れる)。しかし、この方法においては、熱可塑性樹脂を強化繊維に含浸させるために加圧および加熱すると、溶融した熱可塑性樹脂が金属ベルトの幅方向の端部から流出する。その結果、繊維強化熱可塑性樹脂シートの重要な特性である繊維重量含有率が変動するばかりでなく流出樹脂が装置を汚濁する。また装置の清掃に時間がかかり、得られるシートの幅方向の端部の厚みが不足するので端部を取り除く必要がある、などの種々の問題が生じる。一方、低圧で溶融含浸させると、強化繊維への熱可塑性樹脂の含浸が不十分となり、得られる繊維強化熱可塑性樹脂シート中にボイドが存在する、強化繊維と熱可塑性樹脂との濡れ性が不足する、などの問題が生じる。すなわち、強化繊維への熱可塑性樹脂の含浸性が不十分である。このような不十分な含浸では、例えば、スタンピング成形により、得られるシートを再度溶融し加圧および冷却しても、十分に改善することは不可能である。さらに、現状では、ダブルベルトプレス装置は、プレス装置などと比較して非常に高価であり、製造コストの面からも非常に不利である。
【0012】
ロール成形は、ダブルベルトプレス成形と同様に生産性に優れる。さらに、近年、ロールに溝加工を施すことにより、溶融樹脂の流出の防止が試みられている。しかし、このような溝加工は高価であり、しかも、樹脂の流出を十分に防止することはできない。従って、ロール成形は、上記のダブルベルトプレス成形と同様に、溶融樹脂の流出という問題を有している。さらに、ロール成形は、プレス成形のような高圧での成形が困難であるので、得られるシートの含浸性が不十分である場合が多い。
【0013】
以上の問題を解決すべく、特許文献1、2の繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法が開示されている。しかしながら、これらの発明で用いられている耐熱性離型シートは非常に高価であるにも係らず、再利用は難しく、また、熱可塑性樹脂の過熱および冷却を金型内で行おうとすれば、非常に時間がかかり、コスト面と生産性の面で依然として問題があった。
以上のように、含浸性と生産性とを同時に満足し、溶融樹脂を流出させず、所望の繊維重量含有率が得られ、かつ、低コストで実施され得る繊維強化熱可塑性樹脂シート及び成形品の製造方法は、いまだ得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−234751号公報
【特許文献2】特開平9−277387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものである。その目的とするところは、含浸性と生産性とを同時に満足し、溶融樹脂を流出させず、所望の繊維重量含有率が得られ、かつ、低コストで実施され得る繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、強化繊維と熱可塑性樹脂とを含有する予備成形体をあらかじめ成形し、かつ、熱可塑性樹脂の軟化点または融点よりも高い融点を有する開口率が10〜90%の耐熱性離型物品を介して予備成形体を加熱溶融させた後、所望の冷却金型へ直接チャージさせる事により上記目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法は、連続強化繊維を開繊後、内部圧力が0.1MPa以上である熱可塑性樹脂槽を通し、熱可塑性樹脂を連続含浸させ、その後、賦形ローラーで潰し冷却固化させた後、カッティングして予備成形体を作製する工程と、開口率が10〜90%である少なくとも底面と側面から構成された、該熱可塑性樹脂の軟化点または融点よりも高い融点を有する耐熱性離型物品内に、該予備成形体を堆積する工程と、該熱可塑性樹脂の軟化点または融点よりも高い温度で、該耐熱性離型物品を介して該予備成形体の熱可塑性樹脂を溶融する工程と、該耐熱性離型物品底面の径よりも1〜80mm大きい径を有する金型を用い、該熱可塑性樹脂の軟化点または融点未満の温度、及び2MPa以上の圧力で、該予備成形体の堆積物を加圧冷却固化する工程を包含する。
【0018】
好適な実施態様として上記予備成形体は、長さ5mm〜100mm、幅5mm〜50mm、厚み0.05mm〜0.3mmの薄膜片のテープであり、予備成形体に含有される強化繊維と熱可塑性樹脂との質量比が85/15〜40/60である。
望ましくは、上記予備成形体は、連続強化繊維を開繊させた後、熱可塑性樹脂槽を通す前に、樹脂吐出スリットを有する曲面ダイに接触させ、熱可塑性樹脂を含浸されて得られる事が好ましい。
【0019】
また前記耐熱性離型物品は、底面板と側面枠から構成され、予備成形体を側面枠内に堆積した後、熱可塑性樹脂の軟化点または融点よりも高い温度で予備成形体の熱可塑性樹脂を溶融し、その後、側面枠を取り外し、底面板を反転させて金型内に予備成形体の堆積物をチャージし、冷却プレスして冷却固化する事が好ましい。耐熱性離型物品がアルミニウム、またはステンレスである事が好ましい。耐熱性離型物品の、少なくとも予備成形体と接触する面に離型処理が施されている事が好ましい。耐熱性離型物品の側面枠の高さが、予備成形体の堆積物の高さより1〜15mm高い事が好ましい。
望ましくは、熱可塑性樹脂成形品がシート状であり、その厚み斑が平均厚み±10%以下となる事が好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、含浸性と生産性とを同時に満足し、溶融樹脂を流出させず、所望の繊維重量含有率が得られ、かつ、低コストで実施され得る繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法が提供される。さらには、得られる熱可塑性樹脂成形品がシート状である場合、その厚み斑が非常に小さいと言う効果も有する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において、「予備成形体」とは、強化繊維と熱可塑性樹脂とを含有し、最終繊維強化熱可塑性樹脂成形品を形成し得るあらゆる成形体を包含するが、強化繊維を開繊させた状態で、熱可塑性樹脂を溶融含浸させた後、ローラーで挟み、冷却固化した後、カットして得られるテープが特に望ましい。
【0022】
強化繊維は特に限定されないが、代表例としては、炭素繊維、炭化珪素繊維、ガラス繊維などの無機繊維、ボロン繊維などの金属繊維、アラミド繊維などの有機繊維が挙げられる。コスト、ならびに得られる成形品の弾性率および機械的強度の点から、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維が好ましい。これらの繊維は、連続繊維を引き揃え、そして十分に開繊させて用いることが好ましい。
【0023】
熱可塑性樹脂は特に限定されないが、代表例としては、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン46などのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0024】
特に好ましい熱可塑性樹脂の代表例は以下の通りである。これらは、成形品の用途(または所望の特性)に応じて、適宜使用され得る。
(1)低コスト、成形時の流動性、耐水性、耐熱水性、または耐化学薬品性が要求される場合には、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。入手が容易であるという理由で、ポリプロピレンが特に好ましく、本発明においては、酸変性されたポリプロピレンを用いる事が好ましい。後述の強化繊維との接着性に特に優れるからである。
(2)耐摩耗性、耐油性、または長期耐熱特性が要求される場合には、ポリアミド系樹脂が好ましく、ナイロン6、ナイロン66、MXD6樹脂が特に好ましい。
(3)耐熱性、機械的強度、クリープ特性、耐薬品性、または耐油性が要求される場合には、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0025】
本発明に用いられる耐熱性離型物品は、熱可塑性樹脂の軟化点または融点よりも高い融点を有する開口率が10〜90%の耐熱性離型物品である。耐熱性離型物品は熱可塑性樹脂を効率良く溶融、搬送し、短時間で金型内にチャージ出来る様、ハンドリング性と生産性を向上させるために用いられる。ここで言う開口率とは、垂直方向より耐熱性離型物品を投影した際の空隙面積率を指し、特に規定はしないが、材料を搬送する際に必要な強度と熱伝達性に問題が無い範囲で適宜仕様は選定される。耐熱性離型物品の個々の開口部は、上記予備成形体がすり抜けない大きさである必要がある。特に、2〜8mmの直径の円で打ち抜きされたプレートは、強度と熱伝達の点から望ましい。開口率が10%未満である場合、熱の伝達率が不足し、開口率が90%を超える場合、強度が不足するので好ましくない。より好ましい範囲は、20〜85%、更に好ましい範囲は30〜80%である。
耐熱性離型物品は、少なくとも底面と側面から構成されたものである。このように構成された箱状物の内部に、前記予備成形体を堆積させるためである。
【0026】
予備成形体は、長さ5mm〜100mm、幅5mm〜50mm、厚み0.05mm〜0.3mmの薄膜片のテープであり、含有される強化繊維と熱可塑性樹脂との質量比(強化繊維/熱可塑性樹脂)は、85/15〜40/60である事が望ましい。
【0027】
厚みが0.05mm未満であると生産効率が悪く、0.3mmを超えると含浸性が不足する傾向となる。より好ましくは0.07mm〜0.2mmの範囲内である。また幅は5mm未満、及び50mmを超えると生産効率が悪くなる。より好ましくは10mm〜40mmの範囲内である。長さに関しても5mm未満、若しくは100mmを超える場合、生産性が悪くなり好ましくない。より好ましくは10mm〜50mmの範囲内である。また幅と長さが同じサイズに近いと異方性が無くなり、ランダマイズされ易いのでより好ましい。含有される強化繊維の質量比も85%を超えると樹脂含浸性が不十分となり破壊の基点となり易く、40%未満の場合、強化繊維補強効果が得られにくくなるので好ましくない。強化繊維と熱可塑性樹脂のより好ましい質量比の範囲は、80/20〜50/50である。
【0028】
また、予備成形体は、必要に応じて、熱劣化防止剤、酸化劣化防止剤、紫外線吸収剤、などの添加剤を含有し得る。これらの添加剤の含有量は、目的に応じて変化し得るが、通常、これらの添加剤は、それぞれ0.5質量%以下が好ましく、より好ましくはそれぞれ0.2〜0.5質量%の範囲内で添加される。
【0029】
前記予備成形体は、連続強化繊維を開繊後、0.1MPa以上の圧力を有する熱可塑性樹脂槽を通り、更に望ましくは、強化繊維が樹脂槽へ入る前に、樹脂吐出スリットを有する曲面ダイに接触、熱可塑性樹脂を連続的に含浸させ、その後、賦形ローラーで潰し冷却固化させた後、カッティングされて得られる事が望ましい。
【0030】
開繊工程は撚りが殆ど入らない状態で行われるのが望ましく、通常、ローラー及び空気開繊工程が用いられるが、これに限定されるものではない。熱可塑性樹脂を連続的に効率良く含浸させるため、0.1MPa以上の圧力を有する樹脂槽を通すのが好ましい。0.1MPa未満である場合、含浸性が十分に得られにくくなる。樹脂槽内の圧力は高い方がより含浸性が向上し好ましく、より好ましくは0.3MPa以上、更に好ましくは、0.5MPa以上である。樹脂槽内の圧力は高い方がより含浸性が向上し好ましいが、設備コストも高くなるので、2MPa以下であることが好ましい。
また、強化繊維が樹脂槽へ入る前に、樹脂吐出スリットを有する曲面ダイに接触させる事が好ましい。強化繊維が開繊された常態を保持したまま、プレ含浸が良好に行われ得るためである。
【0031】
樹脂含浸槽を通過した強化繊維は、引取り張力により集束し易く、この状態では強化繊維の細部に熱可塑性樹脂が含浸しきれていない。賦形ローラーで潰し冷却固化させる事により樹脂含浸性と、取り扱い性を向上させる事が出来る。カッティングは通常、ファンカッターで行われるが、特に限定はされない。
【0032】
また、前記耐熱性離型物品は、底面板と側面枠から構成され、予備成形体を側面枠内に堆積した後、熱可塑性樹脂の軟化点または融点よりも高い温度で予備成形体の熱可塑性樹脂を溶融し、側面枠を取り外し、底面板を反転させて金型内に予備成形体の堆積物をチャージさせて予備成形体を冷却固化させる事が好ましい。耐熱性離型物品は、前述の様に、溶融した予備成形体を金型内にチャージするハンドリング性を良くするために用いられる。底面板と側面枠がセパレートされた構成とする理由は、比較的嵩の大きい溶融前の予備成形体を枠内に配置し通常のIRヒーターで熱可塑性樹脂を溶融した後、枠が直ぐに取り外せることで、材料温度が大きく低下しない内に、底板のみを反転させるだけで容易に予備成形体を金型内にチャージする事が可能となるためである。
【0033】
また耐熱性離型物品はアルミニウム、若しくはステンレス製である事が好ましく、耐熱性離型物品の、少なくとも予備成形体と接触する面に離型処理が施されている事が好ましい。耐熱性離型物品の側面枠の高さが、側面枠内に堆積された予備成形体の高さより1〜15mm高い事が望ましい。アルミニウム、若しくはステンレス製であると熱伝導性に優れ、軽量化が可能となる。また予備成形体と接触する面に離型処理が施されていると、溶融後の予備成形体を金型内にチャージする際の離型性が良くなる。離型処理は通常、テフロン(登録商標)加工が施されるがこれに限定されるものではない。耐熱性離型物品の側面枠の高さと、側面枠内に堆積された予備成形体の高さの差が、1mm未満である場合、予備成形体が枠内よりこぼれ易く好ましくなく、15mmを超える場合には、枠内に接する予備成形体が枠にもたれかかる状態になり易く、その部分はIRヒーター加熱によって過加熱になり樹脂劣化し易いので好ましくない。より好ましい範囲は3〜12mmである。
なお、側面枠は底面板に対して垂直に立っている事が好ましいが、内側、外側のどちらに傾いていても構わない。傾いている場合の側面枠の高さとは、底面板から垂直方向への高さを指す。
【0034】
本発明では、耐熱性離型物品底面の径よりも1〜80mm大きい径を有する金型を用いる。つまり、耐熱性離型物品は底面の径が、用いる金型の径より1〜80mm小さいものを用いる。
耐熱性離型物品底面の大きさが、側面に囲われた範囲より大きい場合、底面の径とは、側面に囲われた範囲で考える。
耐熱性離型物品の側面枠は、通常、金型の形状と相似形で作製されると、プレスの際の材料の流動状態のバランスが良いので望ましい。所望の金型形状に合わせ、適宜仕様は変化し得るが、プリプレグシート中間材を作製する際には、取り扱い性、搬送効率の点より、長方形が好ましく、正方形に近い形とする事がより好ましい。故に、本発明において径とは、長方形に対応する各辺のサイズを指す。耐熱性離型物品は底面の径が、金型の径よりも小さければ小さい程、チャージはし易くなるが、その差が1mm未満であると、チャージの際に溶融後の予備成形体が金型からはみ出す恐れがあり好ましくなく、また80mmを超えると金型内の流動距離が大きくなり、金型内に材料が十分に流れにくくなる。より好ましい範囲は3〜60mmである。
【0035】
また、前記熱可塑性樹脂の軟化点または融点よりも高い温度で耐熱性離型物品を介し予備成形体の熱可塑性樹脂を溶融した後、加圧下で熱可塑性樹脂の軟化点または融点未満の温度で予備成形体の堆積物を冷却固化する工程に於いて、成形圧力は2MPa以上であり、好ましくは、熱可塑性樹脂成形品がシート状であり、厚み斑が平均厚み±10%以内である事が望ましい。
成形圧力が2MPa未満である場合、予備成形体の流動距離が限定され、金型の細部にまで材料が行き渡り難くなるので好ましくない。より好ましくは、5MPa以上、更に好ましくは、8MPa以上である。圧力は高い方が望ましいが、成形機のコストも高くなるので、経済性と性能の観点より適宜条件は選択されるが、50MPa以下であることが好ましい。
予備成形体の熱可塑性樹脂を溶融する温度としては、軟化点または融点より、5〜85℃高い温度であることが好ましい。
また、予備成形体の堆積物を冷却固化する温度としては、軟化点または融点より、30〜120℃低い温度であることが好ましい。
【0036】
また、繊維強化熱可塑性樹脂成形品は予備成形体を過熱後、直接所望の形状の金型に投入し成形する事が可能であるが、厚み斑が平均厚み±10%以内であるプリプレグのシート状に加工する事も望ましい。シート状とすると、中間材料として広く扱う事が出来、輸送の際のスペースも小さく出来る。厚み斑が平均厚み±10%を超える部分があると、所望の容積に切り出しにくくなり好ましくない。より好ましくは、厚み斑は平均厚み±8%、更に好ましくは、±6%の範囲が望ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、繊維強化熱可塑性樹脂成形品のシート厚みの測定は、シートを縦3、横3の9分割にしたパーツの中央部の平均値で評価した。
【0038】
(実施例1)
強化繊維として、連続ガラス繊維(日本電気硝子(株)製、ER2310−431N、2310Tex、4000f)を直径2cmのローラーに通し開繊後、0.6MPaの圧力を有する酸変性されたポリプロピレン((株)プライムポリマー製、J139、及びMMP006のブレンド、融点160℃)からなる240℃の樹脂槽を通し、樹脂を連続的に含浸させ、その後、賦形ローラーで潰し冷却固化させた後、カッティングし、ガラス繊維75質量部にポリプロピレン樹脂25質量部が含浸されてなる、幅15mm、長さ20mm、厚み0.1mmのテープ状の予備成形体を作製した。一方、耐熱性離型物品として、厚み1mm、開口率50%(開口部は直径3mmの円形)のステンレス板(SUS304、融点1420℃)を加工し、一辺455mmの正方形の縁部に側面枠固定用に高さ20mmの壁を有する底面板を作製し、一般的なテフロン(登録商標)加工を施した。また同じ厚み1mm、開口率50%のステンレス板を加工し、一辺430mm角、高さ50mmの側面枠を作製し、同様にテフロン(登録商標)加工を施し、前記底面板の壁の内側にセットして、底面が430mm角の耐熱性離型物品とした。この側面枠内に上記予備成形体2kgをガラス繊維の配向がランダムになる様、また高さが40mmになる様、堆積させた後、一般的なIRヒーター(日本ガイシ(株)製、インフラスタイン炉、品番H7GS―73363)で、耐熱性離型物品を介し該予備成形体の熱可塑性樹脂を220℃に加熱した。その後、側面枠を取り外し、一辺450mm角、温度100℃の平板金型内へ耐熱性離型物品の底面板を反転させ、予備成形体の堆積物を金型内へチャージした後、15MPaの圧力で2分間プレスし、所望の平板を作製した。得られたシートの厚みは5.7mmとボイドがなく、テープの焼けもなく、シートを9分割した中央部分の厚み斑も平均厚み±7%に収まり、良好なものであった。
【0039】
(実施例2)
強化繊維としてのガラス繊維60質量部に、熱可塑性樹脂として実施例1に使用したポリプロピレン樹脂40質量部を0.7MPaの圧力を有する樹脂槽を通し含浸させ、幅20mm、長さ20mm、厚み0.1mm、のテープ状に切断し、堆積高さが25mmとなる様に、高さ35mmの耐熱性離型物品の側面枠内に予備成形体1kgを配置させた以外は、実施例1と同法により所望の平板を作製した。得られたシートの厚みは3.4mm、テープに焼けもなく、シートを9分割した中央部分の厚み斑は平均厚み±6%に収まる良好なものであった。
【0040】
(実施例3)
金型として、一般構造部材を模擬した、一辺450mm角、リブ部の厚み3mm、高さ60mm、温度100℃のリブ試験金型を用いた事以外は実施例1と同法にて熱可塑性樹脂成形品を作製した。得られた成形品はショートがなく成形性は良好であり、同法により複雑な形状部材も直接作製出来る事を確認した。
【0041】
(実施例4)
耐熱性離型物品の側面枠の高さが、側面枠内に配置された予備成形体の堆積物の高さより20mm高い、60mmの物を用いた事以外は、実施例1と同じ方法でシートを作製した。得られたシートの平均厚みは5.8mm、シートを9分割した中央部分の厚み斑は平均厚み±6%と良好であったが、予備成形体を加熱する時点で、側面枠の高さが高い事によりテープの数枚が側面枠にもたれ掛かる状態になる事になり、その部分が過加熱となり、樹脂が変色する問題が起きた。
【0042】
(実施例5)
予備成形体が、連続強化繊維を開繊させた後、樹脂槽に通す前に、樹脂吐出スリットを有する曲面ダイに接触させ、熱可塑性樹脂を含浸させた工程を付加した以外は、実施例1と同じ方法でシートを作製した。得られたシートの厚みは5.7mmとボイドがなく、シートを9分割した中央部分の厚み斑も平均厚み±7%に収まり、テープの焼けもなく、含浸状態も非常に良好なものであった。
【0043】
(実施例6)
樹脂槽内の圧力が0.12MPaである事以外は、実施例1と同じ方法でシートを作製した。得られたシートの厚みは5.8mmとボイドがなく、含浸状態も良好であり、テープの焼けもなく、シートを9分割した中央部分の厚み斑も平均厚み±7%に収まり、良好なものであった。
【0044】
(実施例7)
樹脂槽内の圧力が0.8MPaである事以外は、実施例1と同じ方法でシートを作製した。得られたシートの厚みは5.7mmとボイドがなく、含浸状態も非常に良好であり、テープの焼けもなく、シートを9分割した中央部分の厚み斑も平均厚み±6%に収まり、良好なものであった。
【0045】
(実施例8)
耐熱性離型物品の開口率が15%である事以外は、実施例1と同じ方法でシートを作製した。熱可塑性樹脂を加熱するのに必要な時間が若干長くなる傾向が見られたが、得られたシートの厚みは5.7mmとボイドがなく、含浸状態も良好であり、テープの焼けもなく、シートを9分割した中央部分の厚み斑も平均厚み±7%に収まり、良好なものであった。
【0046】
(実施例9)
耐熱性離型物品の開口率が85%である事以外は、実施例1と同じ方法でシートを作製した。開口率が高い事により、若干材料強度が不足し、扱い辛い傾向が見られたが、得られたシートの厚みは5.7mmとボイドがなく、含浸状態も非常に良好であり、テープの焼けもなく、シートを9分割した中央部分の厚み斑も平均厚み±6%に収まり、良好なものであった。
【0047】
(実施例10)
一辺448mm角、高さ50mmの側面枠を用いた事以外は、実施例1と同じ方法でシートを作製した。底面板を反転させ、予備成形体の堆積物を金型内へチャージする際、材料の一部が若干、金型よりはみ出やすい傾向があったが、得られたシートの厚みは5.7mmとボイドがなく、含浸状態も非常に良好であり、テープの焼けもなく、シートを9分割した中央部分の厚み斑も平均厚み±7%に収まり、良好なものであった。
【0048】
(実施例11)
一辺380mm角、高さ50mmの側面枠を用いた事以外は、実施例1と同じ方法でシートを作製した。金型内での予備成形体の流動距離が長く、若干四隅が中央部に比べ薄くなる傾向が見られたが、得られたシートの厚みは5.8mmとボイドがなく、含浸状態も非常に良好であり、テープの焼けもなく、シートを9分割した中央部分の厚み斑も平均厚み±9%に収まり、良好なものであった。
【0049】
(実施例12)
耐熱性離型物品の側面枠の高さが、側面枠内に配置された予備成形体の堆積物の高さより2mm高い、42mmの物を用いた事以外は、実施例1と同じ方法でシートを作製した。予備成形体の堆積物の高さと側面枠の高さが近い事により均一に堆積させやすく、搬送の際にテープが溢れる事もなく、テープが側面枠にもたれ掛かり過加熱となる事もなく、シートを作製する事が出来た。得られたシートの平均厚みは5.7mm、シートを9分割した中央部分の厚み斑は平均厚み±6%と良好であった。
【0050】
(実施例13)
連続ガラス繊維(日本電気硝子(株)製、ER2310−431N、2310Tex、4000f)を直径2cmのローラーに通し開繊後、0.8MPaの圧力を有する熱可塑性樹脂としてNy6(東洋紡績(株)製、A2500、融点220℃)を用い、270℃の樹脂槽を通し、樹脂を連続的に含浸させ、その後、賦形ローラーで潰し冷却固化させた後、カッティングし、ガラス繊維73質量部にナイロン樹脂27質量部が含浸されてなる、幅14mm、長さ20mm、厚み0.1mmのテープ状の予備成形体を作製した。実施例1と同じ側面枠内に上記予備成形体2.15kgをガラス繊維の配向がランダムになる様、また高さが40mmになる様、堆積させた後、一般的なIRヒーター(日本ガイシ(株)製、インフラスタイン炉、品番H7GS―73363)で、耐熱性離型物品を介し該予備成形体の熱可塑性樹脂を260℃に加熱した。その後、側面枠を取り外し、一辺450mm角、温度150℃の平板金型内へ耐熱性離型物品の底面板を反転させ、予備成形体の堆積物を金型内へチャージした後、15MPaの圧力で2分間プレスし、所望の平板を作製した。得られたシートの厚みは5.7mmとボイドがなく、テープの焼けもなく、シートを9分割した中央部分の厚み斑も平均厚み±6%に収まり、良好なものであった。
【0051】
(実施例14)
強化繊維として、連続炭素繊維ロービング(東邦テナックス社製 IMS40,340Tex,6000フィラメント)を使用した以外は、実施例1と全く同様に、樹脂を連続的に含浸させ、その後、賦形ローラーで潰し冷却固化させた後、カッティングし、炭素繊維68質量部にポリプロピレン樹脂32質量部が含浸されてなる、幅15mm、長さ20mm、厚み0.12mmの短冊状の予備成形体を作製した。一方、耐熱性離型物品として、実施例1と全く同様の底面が430mm角の耐熱性離型物品とした。この側面枠内に上記予備成形体1.5kgを炭素繊維の配向がランダムになる様、また高さが40mmになる様、堆積させた後、実施例1と全く同様に、耐熱性離型物品を介し該予備成形体の熱可塑性樹脂を220℃に加熱した。その後、側面枠を取り外し、一辺450mm角、温度100℃の平板金型内へ耐熱性離型物品の底面板を反転させ、予備成形体の堆積物を金型内へチャージした後、17MPaの圧力で2分間プレスし、所望の平板を作製した。得られたシートの厚みは5.5mmとボイドがなく、テープの焼けもなく、シートを9分割した中央部分の厚み斑も平均厚み±6%に収まり、良好なものであった。
【0052】
(比較例1)
耐熱離型物品の開口率を0%とした以外は、実施例1と同法にて一辺450mm角のシート状物を作製した。得られたシートの厚みは6.2mm、シートを9分割した中央部分の厚み斑は平均厚み±13%であった。予備成形体への熱伝達率が悪く、熱可塑性樹脂を220℃に加熱するのに非常に時間がかかり、且つシート中央部に所々ボイドの残るものとなってしまった。
【0053】
(比較例2)
強化繊維としてのガラス繊維75質量部に、実施例1で使用したポリプロピレン樹脂25質量部を0.05MPaの圧力を有する樹脂槽を通し含浸させた以外は、実施例1と同じ方法により所望の平板を得た。得られたシートの厚みは6.0mm、シートを9分割した中央部分の厚み斑は平均厚み±11%となり、所々に含浸不良に伴うボイド跡の残るシートとなった。
【0054】
(比較例3)
強化繊維としてのガラス繊維75質量部に、実施例1で使用したポリプロピレン樹脂25質量部の予備成形体を用い、一辺550mm角の金型を用いた以外は、実施例1と同じ方法でシートを得た。得られたシートの平均厚みは4.0mm、シートを9分割した中央部分の厚み斑は平均厚み±12%となり、材料の流動距離が長いために金型の隅にまで十分材料が行き渡らず、四隅が薄いシートとなった。
【0055】
(比較例4)
強化繊維としてのガラス繊維75質量部に、実施例1で使用したポリプロピレン樹脂25質量部の予備成形体を用い、成形圧力が1.5MPaである事以外は、実施例1と同じ方法でシートを作製した。得られたシートの平均厚みは6.3mm、シートを9分割した中央部分の厚み斑は平均厚み±14%となり、所々にボイドの残ったシートとなってしまった。
【0056】
(比較例5)
強化繊維としてのガラス繊維75質量部に、実施例1で使用したポリプロピレン樹脂25質量部の予備成形体を用い、445mm角、高さが4cmのアルミ箔からなるボックス内に予備成形体を2kg充填させ、450mm角、温度が230℃の加熱プレス機内で0.6MPaの成形圧力をかけながら熱可塑性樹脂を溶融させた後、ボックス自体を取り出し、100℃の冷却プレス機内に設置後、5MPaの圧力をかけシートを作製した。得られたシートの平均厚みは5.9mm、シートを9分割した中央部分の厚み斑は平均厚み±6%と良好であったが、加熱プレスから冷却プレスに予備成形体を搬送するために用いられるアルミ箔からなるボックスは使い捨てのため高コストとなり、且つ、ボックス作製、アルミ箔除去、加熱プレスから冷却プレスへの搬送と、作業効率の非常に悪いものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、含浸性と生産性とを同時に満足し、溶融樹脂を流出させず、所望の繊維重量含有率が得られ、かつ、低コストで実施され得る繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法が提供できる。