(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のセパレータのように複数の層を有するセパレータでは、蓄電素子の組み立て時または使用時に、セパレータに形成された層が剥がれる場合があるという問題がある。
【0006】
例えば、蓄電素子の組み立て時にセパレータにかかる応力や、蓄電素子の使用時における振動、エレメントの膨張収縮、セパレータへの電解液の衝突などにより、セパレータから層が剥がれる。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、複数の層を有するセパレータにおいて、層の剥がれを抑制することができるセパレータ及び当該セパレータを備える蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るセパレータは、正極と負極との間に配置され、前記正極及び前記負極とともに複数層積層されるセパレータであって、第一層と、前記第一層上に配置される、前記第一層と材質が異なる第二層とを備え、前記第一層と前記第二層との端部の剥離強度は、中央部の剥離強度よりも高い。
【0009】
これによれば、セパレータの第一層と第二層との端部の剥離強度は、中央部の剥離強度よりも高い。ここで、複数の層を有するセパレータにおいて、層の剥がれが懸念されるのは、セパレータの端部である。つまり、当該端部は、正極と負極とセパレータとを積層した際に、正極または負極と接触しないことにより巻き締めによる支持応力がかからない。その上、当該端部は、断面が露出しているため、蓄電素子の組み立て時における応力、蓄電素子の使用時における振動、エレメントの膨張収縮、電解液の衝突などによる影響を受けやすい。このため、当該端部は剥がれが起こりやすく、当該端部が起点となって、層の剥がれが開始する。これらのことから、セパレータの端部の剥離強度を高くすることで、当該端部での剥がれを起きにくくし、層の剥がれを抑制することができる。
【0010】
また、好ましくは、前記第一層と前記第二層とは、熱可塑性樹脂を含む。
【0011】
これによれば、セパレータの第一層と第二層とは、熱可塑性樹脂を含む。このため、熱可塑性樹脂によって第一層と第二層とを溶着することで、層の剥がれを抑制することができる。
【0012】
また、好ましくは、前記第一層または前記第二層は、端部の方が中央部よりも熱可塑性樹脂の含有量が多い。
【0013】
これによれば、セパレータの第一層または第二層は、端部の方が中央部よりも熱可塑性樹脂の含有量が多い。これにより、熱可塑性樹脂によって第一層と第二層とを溶着する際に、当該端部での剥離強度を高くすることができるため、当該端部での剥がれを起きにくくし、層の剥がれを抑制することができる。
【0014】
また、好ましくは、前記第一層または前記第二層は、端部の方が中央部よりも熱溶着性が高い熱可塑性樹脂を含む。
【0015】
これによれば、セパレータの第一層または第二層は、端部の方が中央部よりも熱溶着性が高い熱可塑性樹脂を含む。これにより、熱可塑性樹脂によって第一層と第二層とを溶着する際に、当該端部での剥離強度を高くすることができるため、当該端部での剥がれを起きにくくし、層の剥がれを抑制することができる。
【0016】
また、好ましくは、前記第一層または前記第二層は、端部の方が中央部よりも厚みが薄い。
【0017】
これによれば、セパレータの第一層または第二層は、端部の方が中央部よりも厚みが薄い。当該端部をプレス処理すると当該端部の厚みが薄くなる際に、第二層に含まれる耐熱粒子やバインダーが第一層の細孔内に入り込むことにより、当該端部での剥離強度を高くすることができる。このため、当該端部での剥がれを起きにくくし、層の剥がれを抑制することができる。
【0018】
また、好ましくは、前記端部は、前記セパレータが前記正極または前記負極と接触する領域の外側に配置されている。
【0019】
これによれば、セパレータの端部は、セパレータが正極または負極と接触する領域の外側の部分である。つまり、正極または負極と接触しないことにより巻き締めによる支持応力がかからない部分から層の剥がれが起こるため、当該部分を端部として剥離強度を高くすることで、当該端部での剥がれを起きにくくし、層の剥がれを抑制することができる。
【0020】
また、好ましくは、前記第一層と前記第二層との端部は、熱溶着されている。
【0021】
これによれば、セパレータの第一層と第二層との端部は、熱溶着されている。これにより、例えば熱プレス処理によって端部を熱溶着することで、当該端部での剥離強度を高くすることができるため、当該端部での剥がれを起きにくくし、層の剥がれを抑制することができる。
【0022】
また、好ましくは、前記第一層は、基材層であり、前記第二層は、耐熱塗工層である。
【0023】
これによれば、セパレータは、基材層上に耐熱塗工層が配置された構成であり、基材層から耐熱塗工層が剥離するのを抑制することができる。
【0024】
また、好ましくは、前記正極は、正極活物質層を備え、前記負極は、前記セパレータを挟んで前記正極活物質層に対向する負極活物質層を備え、前記端部は、前記正極活物質層と前記負極活物質層とが対向する領域の外側に配置されている。
【0025】
これによれば、第一層と第二層との端部は、正極の正極活物質層と負極の負極活物質層とが対向する領域の外側に配置されている。ここで、セパレータの端部は、熱プレス処理等により剥離強度を高くした結果、第一層または第二層の細孔が減少する場合がある。第一層または第二層の細孔が減少すると、イオン透過性が減少し、蓄電素子の性能を劣化させる可能性がある。しかし、当該端部は、正極活物質層と負極活物質層とが対向する領域の外側に配置されているため、イオン透過性が減少する影響をほとんど受けず、蓄電素子の性能の劣化を抑制することができる。
【0026】
なお、本発明は、このようなセパレータとして実現することができるだけでなく、当該セパレータを備える蓄電素子として実現することもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、複数の層を有するセパレータにおいて、層の剥がれを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係るセパレータ及び当該セパレータを備える蓄電素子について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0030】
まず、蓄電素子10の構成について、説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の外観斜視図である。なお、同図は、容器内部を透視した図となっている。
【0032】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質電池である。
【0033】
同図に示すように、蓄電素子10は、容器100と、正極端子200と、負極端子300とを備え、容器100は、上壁であるふた板110を備えている。また、容器100内方には、電極体400と、正極集電体120と、負極集電体130とが配置されている。
【0034】
なお、蓄電素子10の容器100の内部には電解液などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。また、蓄電素子10は、非水電解質電池には限定されず、非水電解質電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
【0035】
容器100は、金属からなる矩形筒状で底を備える筐体本体と、当該筐体本体の開口を閉塞する金属製のふた板110とで構成されている。また、容器100は、電極体400等を内部に収容後、ふた板110と筐体本体とが溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。
【0036】
電極体400は、正極と負極とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる部材である。具体的には、電極体400は、負極と正極との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものを全体が長円形状となるように捲回されて形成されている。なお、同図では、電極体400の形状としては長円形状を示したが、円形状または楕円形状でもよい。また、電極体400の形状は捲回型に限らず、平板状極板を積層した形状でもよい。電極体400の詳細な構成については、後述する。
【0037】
正極端子200は、電極体400の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子300は、電極体400の負極に電気的に接続された電極端子である。つまり、正極端子200及び負極端子300は、電極体400に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体400に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。また、正極端子200及び負極端子300は、電極体400の上方に配置されたふた板110に取り付けられている。
【0038】
正極集電体120は、電極体400の正極と容器100の側壁との間に配置され、正極端子200と電極体400の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、正極集電体120は、電極体400の正極と同様、アルミニウムで形成されている。
【0039】
負極集電体130は、電極体400の負極と容器100の側壁との間に配置され、負極端子300と電極体400の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、負極集電体130は、電極体400の負極と同様、銅で形成されている。
【0040】
次に、電極体400の詳細な構成について、説明する。
【0041】
図2は、本発明の実施の形態に係る電極体400の構成を説明するための図である。具体的には、同図は、
図1で示されたように捲回される前の電極体400aを示す図である。
【0042】
同図に示すように、電極体400aは、正極板410、負極板420、第一セパレータ430及び第二セパレータ440を備えている。
【0043】
正極板410は、アルミニウムからなる長尺帯状の正極集電体シートの表面に、正極活物質層が形成されたものである。なお、本発明に係る蓄電素子10に用いられる正極板410は、特に従来用いられてきたものと異なるところはなく、通常用いられているものが使用できる。
【0044】
例えば、正極活物質としては、LiMPO
4、LiMSiO
4、LiMBO
3(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種又は2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のスピネル化合物、LiMO
2(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種又は2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
【0045】
負極板420は、銅からなる長尺帯状の負極集電体シートの表面に、負極活物質層が形成されたものである。負極活物質層は、セパレータを挟んで正極の正極活物質層に対向する位置に配置されている。なお、本発明に係る蓄電素子10に用いられる負極板420は、特に従来用いられてきたものと異なるところはなく、通常用いられているものが使用できる。
【0046】
例えば、負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(Li
4Ti
6O
12等)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。
【0047】
第一セパレータ430は、正極板410と負極板420との間に配置される長尺帯状のセパレータであり、第一層431と第二層432とを備えている。
【0048】
第一層431は、第一セパレータ430の基材層であり、熱可塑性樹脂を含んだ微多孔性のシートである。
【0049】
具体的には、第一層431としては、ポリマー、天然繊維、炭化水素繊維、ガラス繊維またはセラミック繊維の織物または不織繊維を有する樹脂多孔膜が用いられる。また、当該樹脂多孔膜は、好ましくは、織物または不織ポリマー繊維を有する。特に、当該樹脂多孔膜は、ポリマー織物またはフリースを有するかまたはこのような織物またはフリースであるのが好ましい。ポリマー繊維としては、好ましくは、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)及び/またはポリオレフィン(PO)、例えばポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)またはこのようなポリオレフィンの混合物から選択したポリマーの非電導性繊維を有する。また、当該樹脂多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜、不織布、紙等であってもよく、好ましくはポリオレフィン微多孔膜である。多孔質ポリオレフィン層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはこれらの複合膜などを利用することができる。なお、電池特性への影響を考慮すると、第一層431の厚みは5〜30μm程度であるのが好ましい。
【0050】
第二層432は、第一層431上に配置される、第一層431とは材質が異なる層である。本実施の形態では、第二層432は、第一層431上に塗工された耐熱塗工層である。ここで、耐熱塗工層とは、例えば、無機粒子からなる無機フィラーまたは耐熱性樹脂などの耐熱粒子を含んだ層である。
【0051】
具体的には、上記の無機粒子は、下記のうちの一つ以上の無機物の単独もしくは混合体もしくは複合化合物からなる。例えば、酸化鉄、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、BaTiO
2、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物などの酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物微粒子、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子、シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子、タルク、モンモリロナイトなどの粘土微粒子、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカなどの鉱物資源由来物質あるいはそれらの人造物などが上記の無機物として挙げられる。また、上記の無機物は、SnO
2、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの酸化物微粒子、カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質微粒子などの導電性微粒子の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、上記の電気絶縁性の無機粒子を構成する材料)で表面処理することで、電気絶縁性を持たせた微粒子であってもよい。
【0052】
そして、本実施の形態では、第二層432は、少なくとも端部に熱可塑性樹脂を含んでいる。詳細については後述する。
【0053】
なお、第一層431と第二層432とは、互いに材質が異なるものであればよく、上記の材質等には限定されない。
【0054】
第二セパレータ440は、負極板420上に配置されるセパレータであり、第一層441と第二層442とを備えている。ここで、第二セパレータ440は、第一セパレータ430と同様の構成を有する。つまり、第一層441は、第一層431と同様の材質等を有し、第二層442は、第二層432と同様の材質等を有する。
【0055】
そして、正極板410、第一セパレータ430、負極板420及び第二セパレータ440が、ともに長手方向(同図に示すX軸方向)に捲回され複数層積層されることで、
図1に示す電極体400が形成される。これにより、第二セパレータ440についても、正極板410と負極板420との間に配置されることになる。
【0056】
次に、第一セパレータ430の詳細な構成について、説明する。なお、第二セパレータ440についても第一セパレータ430と同様の構成を有するため、第二セパレータ440の詳細な構成についての説明は省略する。
【0057】
図3A及び
図3Bは、本発明の実施の形態に係る第一セパレータ430の構成を説明するための図である。具体的には、
図3Aは、
図2に示された電極体400aのうち第一セパレータ430のみを示した図である。また、
図3Bは、
図3AにおけるA−A断面で第一セパレータ430を切断した場合の第一セパレータ430の断面を示す図である。
【0058】
まず、これらの図に示すように、第一層431は、両端に第一層端部431a及び431bを有し、中央に第一層中央部431cを有している。また、第二層432は、両端に第二層端部432a及び432bを有し、中央に第二層中央部432cを有している。
【0059】
そして、第一層431の一方の端部である第一層端部431aと、第二層432の一方の端部である第二層端部432aとは、接合され、第一セパレータ430の一方の端部であるセパレータ端部430aを形成している。
【0060】
また、第一層431の他方の端部である第一層端部431bと、第二層432の他方の端部である第二層端部432bとは、接合され、第一セパレータ430の他方の端部であるセパレータ端部430bを形成している。
【0061】
具体的には、第一層431と第二層432との端部の剥離強度は、中央部の剥離強度よりも高くなっている。つまり、第一層端部431aと第二層端部432aとの剥離強度は、第一層中央部431cと第二層中央部432cとの剥離強度よりも高くなっている。また、第一層端部431bと第二層端部432bとの剥離強度は、第一層中央部431cと第二層中央部432cとの剥離強度よりも高くなっている。
【0062】
また、第一層431と第二層432との端部は、正極の正極活物質層と負極の負極活物質層とが対向する領域の外側に配置されている。つまり、第一層端部431aと第二層端部432aとは、当該正極活物質層と当該負極活物質層とが対向する領域の外側に配置されている。また、第一層端部431bと第二層端部432bとは、当該正極活物質層と当該負極活物質層とが対向する領域の外側に配置されている。
【0063】
ここで、第一層431と第二層432との端部の接合方法について説明する。
【0064】
図4は、本発明の実施の形態に係る第一層431と第二層432との端部の接合方法を説明するための図である。
【0065】
同図に示すように、第一層431と第二層432との両端部は、熱プレス処理により熱溶着され、第一セパレータ430の両端部が形成される。
【0066】
具体的には、保持用ロール510の上に第一層431と第二層432とが配置され、第一層431と第二層432とがともに同図に示すX軸方向に流れながら、熱プレスロール521及び522によって第一層431と第二層432との両端部が熱プレスされる。
【0067】
ここで、第一層431及び第二層432は、少なくとも両端部である第一層端部431a、431b及び第二層端部432a、432bに熱可塑性樹脂を含んでいる。
【0068】
具体的には、第一層431または第二層432は、端部の方が中央部よりも熱可塑性樹脂の含有量が多くなっている。つまり、第一層端部431aまたは431bは、第一層中央部431cよりも熱可塑性樹脂の含有量が多くなっており、第二層端部432aまたは432bは、第二層中央部432cよりも熱可塑性樹脂の含有量が多くなっている。
【0069】
そして、第一層端部431aと第二層端部432aとが保持用ロール510と熱プレスロール521とに挟まれることで熱溶着されるとともに、第一層端部431bと第二層端部432bとが保持用ロール510と熱プレスロール522とに挟まれることで熱溶着される。
【0070】
これにより、
図3Bに示すように、第一層431及び第二層432は、端部の方が中央部よりも厚みが薄くなる。つまり、第一層端部431a及び431bは、第一層中央部431cよりも厚みが薄い。また、第二層端部432a及び432bは、第二層中央部432cよりも厚みが薄い。
【0071】
以上のようにして、第一層431と第二層432との端部の剥離強度は、中央部の剥離強度よりも高くなる。
【0072】
ここで、第一層端部431a、第一層端部431b、第二層端部432a、第二層端部432bは、同図に示すY軸方向の長さが、2mm以上であるのが好ましい。当該長さが2mm以上であれば、仮に端部の一部に亀裂等が生じた場合であっても、層の剥離を確実に抑制することができる。
【0073】
また、当該端部の厚みは、クロスセクションポリッシャー(CP)加工による断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定できる。また、当該端部の剥離強度が高いことは、JIS−K6854−2に定められている180°ピール試験を用いたピール強度を測定することで判断することができる。
【0074】
ピール強度を測定する際は、幅15mmのメンディングテープを用い、10cm/minの剥離速度で0.1s刻みにてデータを取得する。中央部の剥離強度を測定する際は、中央部にメンディングテープを貼り、30s以上連続して剥離試験を行う。剥離開始後15s目から30s目の剥離強度の平均値を算出することで、当該中央部の剥離強度を測定することができる。10cm/minの剥離速度で30s以上の剥離試験を行うことを考慮して、6cm以上の連続した試料を用いるのが好ましい。端部の剥離強度を測定する際は、予め試料(第一セパレータ430または第二セパレータ440)の外側に離型剤を用意してピール強度の観測値が小さくなるようにする。そして、試料の端部以外の部分から当該端部に向かってピール剥離試験を行う。剥離開始後、当該端部に相当する範囲(例えば、端部が2mmで剥離速度が10cm/minの場合、その間の測定時間は1.2sである。)のうち、測定開始点と測定終了点を除いた測定値を平均することで、当該端部の剥離強度を測定することができる。
【0075】
なお、第一層431及び第二層432の両方とも端部の厚みが薄くなる構成には限定されず、第一層431または第二層432のいずれか一方のみの端部の厚みが薄くなる構成でもかまわない。
【0076】
次に、正極板410と負極板420と第一セパレータ430との位置関係について、説明する。
【0077】
図5は、本発明の実施の形態に係る正極板410と負極板420と第一セパレータ430との位置関係を示す図である。
【0078】
同図に示すように、第一セパレータ430の端部は、第一セパレータ430が正極または負極と接触する領域の外側に配置されている。
【0079】
具体的には、第一層431は正極板410の上方に配置され、第一層端部431a及び第一層端部431bは、第一層431が正極板410と接触する領域の外側(同図に示すY軸方向の外側)に配置されている。
【0080】
また、第二層432は負極板420の下方に配置され、第二層端部432a及び第二層端部432bは、第二層432が負極板420と接触する領域の外側(同図に示すY軸方向の外側)に配置されている。
【0081】
以上のように、本発明の実施の形態に係る第一セパレータ430によれば、第一層431と第二層432との端部の剥離強度は、中央部の剥離強度よりも高い。ここで、複数の層を有する第一セパレータ430において、層の剥がれが懸念されるのは、第一セパレータ430の端部である。つまり、当該端部は、正極板410と負極板420と第一セパレータ430とを積層した際に、正極板410または負極板420と接触しないことにより巻き締めによる支持応力がかからない。その上、当該端部は、断面が露出しているため、蓄電素子10の組み立て時における応力、蓄電素子10の使用時における振動、電極体400の膨張収縮、電解液の衝突などによる影響を受けやすい。このため、当該端部は剥がれが起こりやすく、当該端部が起点となって、層の剥がれが開始する。これらのことから、第一セパレータ430の端部の剥離強度を高くすることで、当該端部での剥がれを起きにくくし、層の剥がれを抑制することができる。
【0082】
また、第一層端部431a及び第一層端部431b、第二層端部432a及び第二層端部432bは、正極板410または負極板420と接触しないことにより、正極活物質層と負極活物質層とが対向する領域の外側に配置されている。当該端部は、熱プレス処理等により剥離強度を高くした結果、第一層431または第二層432の細孔が減少する場合がある。第一層431または第二層432の細孔が減少すると、イオン透過性が減少し、蓄電素子10の性能を劣化させる可能性がある。しかし、当該端部は、正極活物質層と負極活物質層とが対向する領域の外側に配置されているため、イオン透過性が減少する影響をほとんど受けず、蓄電素子10の性能の劣化を抑制することができる。
【0083】
また、第一セパレータ430の第一層431と第二層432とは、熱可塑性樹脂を含む。このため、熱可塑性樹脂によって第一層431と第二層432とを溶着することで、層の剥がれを抑制することができる。
【0084】
また、第一セパレータ430の第一層431または第二層432は、端部の方が中央部よりも熱可塑性樹脂の含有量が多い。これにより、熱可塑性樹脂によって第一層431と第二層432とを溶着する際に、当該端部での剥離強度を高くすることができるため、当該端部での剥がれを起きにくくし、層の剥がれを抑制することができる。
【0085】
また、第一セパレータ430の第一層431または第二層432は、端部の方が中央部よりも厚みが薄い。当該端部をプレス処理すると当該端部の厚みが薄くなる際に、第二層432に含まれる耐熱粒子やバインダーが第一層431の細孔内に入り込むことにより、当該端部での剥離強度を高くすることができる。このため、当該端部での剥がれを起きにくくし、層の剥がれを抑制することができる。
【0086】
また、第一セパレータ430の端部は、第一セパレータ430が正極板410または負極板420と接触する領域の外側の部分である。つまり、正極板410または負極板420と接触しないことにより巻き締めによる支持応力がかからない部分から層の剥がれが起こるため、当該部分を端部として剥離強度を高くすることで、当該端部での剥がれを起きにくくし、層の剥がれを抑制することができる。
【0087】
また、第一セパレータ430の第一層431と第二層432との端部は、熱プレス処理により熱溶着されている。これにより、熱プレス処理によって端部を熱溶着することで、当該端部での剥離強度を高くすることができるため、当該端部での剥がれを起きにくくし、層の剥がれを抑制することができる。
【0088】
また、第一セパレータ430は、基材層上に耐熱塗工層が配置された構成であり、基材層から耐熱塗工層が剥離するのを抑制することができる。
【0089】
(変形例1)
次に、本実施の形態の変形例1について説明する。上記実施の形態では、第一層431または第二層432は、端部の方が中央部よりも熱可塑性樹脂の含有量が多いこととした。しかし、本変形例1では、第一層431または第二層432は、端部の方が中央部よりも熱溶着性が高い熱可塑性樹脂を含んでいる。
【0090】
具体的には、第一層端部431aまたは431bは、第一層中央部431cよりも熱溶着性が高い熱可塑性樹脂を含んでおり、第二層端部432aまたは432bは、第二層中央部432cよりも熱溶着性が高い熱可塑性樹脂を含んでいる。
【0091】
ここで、熱溶着性が高い熱可塑性樹脂とは、熱を加えて溶着させた場合に剥離強度が高くなる熱可塑性樹脂である。例えば、中央部にポリプロピレンを含んでいる場合に、端部にポリプロピレンよりも低融点のポリエチレンなどを含ませることで、端部の方が中央部よりも熱溶着性が高くなる。
【0092】
なお、その他の構成については、上記実施の形態における構成と同様であるため、説明は省略する。
【0093】
以上のように、本発明の実施の形態の変形例1に係る第一セパレータ430によれば、第一層431または第二層432は、端部の方が中央部よりも熱溶着性が高い熱可塑性樹脂を含む。これにより、熱可塑性樹脂によって第一層431と第二層432とを溶着する際に、当該端部での剥離強度を高くすることができるため、当該端部での剥がれを起きにくくし、層の剥がれを抑制することができる。
【0094】
(変形例2)
次に、本実施の形態の変形例2について説明する。上記実施の形態では、第一層431と第二層432との両端部の剥離強度が、中央部の剥離強度よりも高いこととした。しかし、本変形例2では、第一層431と第二層432とのいずれか一方の端部の剥離強度のみが中央部の剥離強度よりも高い。
【0095】
図6は、本発明の実施の形態の変形例2に係る第一セパレータ450の構成を説明するための図である。
【0096】
同図に示すように、第一セパレータ450は、上記実施の形態の第一セパレータ430と同様に、第一層451及び第二層452を備えている。そして、第一層451と第二層452とのいずれか一方の端部(同図では、第一層端部451a、第二層端部452a)の剥離強度のみが中央部の剥離強度よりも高い。
【0097】
つまり、上記実施の形態では、第一層431または第二層432は、両端部が中央部よりも熱可塑性樹脂の含有量が多いこととしたが、本変形例2では、第一層451または第二層452は、いずれか一方の端部のみが中央部よりも熱可塑性樹脂の含有量が多い。
【0098】
また、上記実施の形態では、第一層431または第二層432は、両端部が中央部よりも厚みが薄いこととしたが、本変形例2では、第一層451または第二層452は、いずれか一方の端部のみが中央部よりも厚みが薄い。
【0099】
また、上記実施の形態では、第一層431と第二層432との両端部は、熱プレス処理により溶着されていることとしたが、本変形例2では、第一層451と第二層452とのいずれか一方の端部のみが、熱プレス処理により溶着されている。
【0100】
また、本変形例2では、第一層端部451a及び第二層端部452aは、セパレータ450が正極板410または負極板420と接触する領域の外側に配置されている。
【0101】
また、上記実施の形態の変形例1では、第一層431または第二層432は、両端部が中央部よりも熱溶着性が高い熱可塑性樹脂を含むこととしたが、本変形例2では、第一層451または第二層452が、いずれか一方の端部のみが中央部よりも熱溶着性が高い熱可塑性樹脂を含むことにしてもよい。
【0102】
(変形例3)
次に、本実施の形態の変形例3について説明する。上記実施の形態では、第一層431と第二層432との端部とは、
図3Aに示す第一セパレータ430の長手方向(同図のX軸方向)の端部であるセパレータ端部430a、430bであることとした。しかし、本変形例3では、第一セパレータの短手方向の端部を、第一層と第二層との端部であることにする。
【0103】
図7A及び
図7Bは、本発明の実施の形態の変形例3に係る第一セパレータ460の構成を説明するための図である。具体的には、
図7Aは、第一セパレータ460を示す図であり、
図7Bは、
図7AにおけるB−B断面で第一セパレータ460を切断した場合の第一セパレータ460の断面を示す図である。
【0104】
これらの図に示すように、第一セパレータ460は、短手方向(同図のX軸方向)の端部であるセパレータ端部460a、460bを有している。つまり、セパレータ端部460a、460bは、第一セパレータ460を捲回する際の巻き始めまたは巻き終わり部分である。
【0105】
また、上記実施の形態と同様に、第一セパレータ460は、第一層461と第二層462とを備えている。そして、セパレータ端部460aは、第一層461の第一層端部461aと第二層462の第二層端部462aとから形成され、セパレータ端部460bは、第一層461の第一層端部461bと第二層462の第二層端部462bとから形成されている。
【0106】
そして、上記実施の形態と同様に、第一層461と第二層462との端部の剥離強度は、中央部の剥離強度よりも高くなっている。つまり、第一層端部461aと第二層端部462aとの剥離強度は、第一層461の第一層中央部461cと第二層462の第二層中央部462cとの剥離強度よりも高くなっている。また、第一層端部461bと第二層端部462bとの剥離強度は、第一層中央部461cと第二層中央部462cとの剥離強度よりも高くなっている。
【0107】
また、第一層461または第二層462は、端部の方が中央部よりも熱可塑性樹脂の含有量が多くなっている。つまり、第一層端部461aまたは461bは、第一層中央部461cよりも熱可塑性樹脂の含有量が多くなっており、第二層端部462aまたは462bは、第二層中央部462cよりも熱可塑性樹脂の含有量が多くなっている。
【0108】
また、第一層461及び第二層462は、端部の方が中央部よりも厚みが薄くなる。つまり、第一層端部461a及び461bは、第一層中央部461cよりも厚みが薄い。また、第二層端部462a及び462bは、第二層中央部462cよりも厚みが薄い。
【0109】
また、第一セパレータ460の端部は、第一セパレータ460が正極または負極と接触する領域の外側に配置されている。つまり、第一層端部461a及び第一層端部461bは、第一層461が正極板410と接触する領域の外側(同図に示すX軸方向の外側)に配置され、第二層端部462a及び第二層端部462bは、第二層462が負極板420と接触する領域の外側(同図に示すX軸方向の外側)に配置されている。
【0110】
また、第一層461と第二層462との両端部は、熱プレス処理により溶着され、第一セパレータ460の両端部が形成される。
【0111】
なお、上記実施の形態の変形例1と同様に、第一層461または第二層462は、端部の方が中央部よりも熱溶着性が高い熱可塑性樹脂を含んでいることにしてもよい。つまり、第一層端部461aまたは461bは、第一層中央部461cよりも熱溶着性が高い熱可塑性樹脂を含んでおり、第二層端部462aまたは462bは、第二層中央部462cよりも熱溶着性が高い熱可塑性樹脂を含んでいることにしてもよい。
【0112】
また、上記実施の形態の変形例2と同様に、第一層461と第二層462との両端部が上記構成を有するのではなく、いずれか一方の端部のみが上記構成を有していることにしてもよい。
【0113】
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る第一セパレータについて説明したが、本発明は、この実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。
【0114】
つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0115】
例えば、上記実施の形態及びその変形例では、第一層431及び第二層432は熱可塑性樹脂を含んでいることとしたが、第一層431及び第二層432は、熱可塑性樹脂を含んでいなくともよい。この場合、熱溶着ではなく圧着や接着剤で接着するなどによって、第一層431と第二層432との端部が中央部の剥離強度よりも高くなるように接合を行うことで、本発明を実現することができる。また、第二層432が耐熱塗工層の場合、第一層431に耐熱粒子を塗工する際に用いる接合剤を、端部が中央部よりも多くなるように調整することで、端部の剥離強度を中央部の剥離強度よりも高くすることができる。
【0116】
また、上記実施の形態及びその変形例では、第一層431または第二層432は、端部の方が中央部よりも熱可塑性樹脂の含有量が多くなっていることとしたが、第一層431と第二層432との端部が中央部の剥離強度よりも高くなるのであれば、当該端部の熱可塑性樹脂の含有量は限定されない。
【0117】
また、上記実施の形態及びその変形例では、第一層431及び第二層432は、端部の方が中央部よりも厚みが薄いこととしたが、第一層431と第二層432との端部が中央部の剥離強度よりも高くなるのであれば、当該端部の厚みは限定されない。つまり、
図4に示したような第一セパレータ430の端部への熱プレスではなく、第一セパレータ430を全体的に熱プレスする構成などでもかまわない。
【0118】
また、本発明は、このような第一セパレータ430として実現することができるだけでなく、第一セパレータ430を備える蓄電素子10として実現することもできる。