(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃料供給停止部は、前記異常燃焼検出部が複数の気筒の異常燃焼を検出したとき1サイクルを1気筒について燃料供給を停止する期間の単位とし各気筒の燃料供給を順番に各サイクルで停止させることを特徴とする請求項1に記載の車両の内燃機関の燃焼状態制御装置。
前記異常燃焼検出部が複数の気筒の異常燃焼を検出したとき当該複数の気筒のうちの少なくとも一の気筒への燃料の供給量を異常燃焼を検出していないときよりも多くする燃料供給量増加部をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の内燃機関の燃焼状態制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、異常燃焼が発生した気筒への燃料供給を停止(Fuel Cut、以下、F/Cともいう。)すると、燃料供給を停止したその気筒では燃焼が行われないことから、異常燃焼が発生していない本来のエンジン駆動状態と比較してエンジン振動が大きくなる恐れがある。
そして、このようにして発生したエンジン振動は、乗員に不快感を与えてしまう恐れがある。
【0007】
本発明の目的は、異常燃焼の抑制を行うとともに、異常燃焼抑制のために行った気筒への燃料供給の停止に起因するエンジンの振動を抑制して商品性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、(1)本発明の一態様は、内燃機関の異常燃焼を検出したとき前記内燃機関の気筒への燃料の供給を停止する車両の内燃機関の燃焼状態制御装置であって、内燃機関の異常燃焼を検出する異常燃焼検出部と、前記異常燃焼検出部が異常燃焼を検出したとき当該異常燃焼を検出した気筒の吸気行程から次の吸気行程間の1サイクル間の当該気筒への燃料の供給を停止する燃料供給停止部と、
車両の加速度または内燃機関の回転数の変動に基づいて車両の振動を検出する振動検出部と、前記燃料の供給停止中に前記振動検出部が車両の振動を検出したとき当該燃料の供給停止を終了させる燃料供給停止終了部と、を有することを特徴とする車両の内燃機関の燃焼状態制御装置を提供する。
【0009】
(2)本発明の一態様では、前記燃料供給停止部は、前記異常燃焼検出部が複数の気筒の異常燃焼を検出したとき1サイクルを1気筒について燃料供給を停止する期間の単位とし各気筒の燃料供給を順番に各サイクルで停止させることが好ましい。
【0010】
(3)本発明の一態様では、前記異常燃焼検出部が複数の気筒の異常燃焼を検出したとき当該複数の気筒のうちの少なくとも一の気筒への燃料の供給量を異常燃焼を検出していないときよりも多くする燃料供給量増加部をさらに有することが好ましい。
【0011】
(4)本発明の一態様では、前記異常燃焼検出部は、各気筒の異常燃焼の度合いを検出しており、前記燃料供給量増加部は、前記異常燃焼検出部が複数の気筒の異常燃焼を検出したとき当該複数の気筒のうちの異常燃焼の度合いが最大の気筒への燃料の供給量を異常燃焼を検出していないときよりも多くし、前記燃料供給停止部は、前記異常燃焼検出部が複数の気筒の異常燃焼を検出したとき前記燃料供給量増加部が燃料の供給量を多くしない気筒への燃料の供給を停止することが好ましい。
【0012】
(5)本発明の一態様では、前記車両は、前記内燃機関の排気路に触媒が配置されている車両であり、前記内燃機関の各気筒から排出される排気ガスが理論空燃比となるように、前記燃料供給停止部が燃料の供給を停止している気筒以外の気筒への燃料の供給量を増加させる調整を行う燃料供給量調整部をさらに有することが好ましい。
【0013】
(6)本発明の一態様では、前記内燃機関の水温を検出する水温検出部をさらに有し、前記燃料供給停止部は、前記水温検出部が検出した水温が高いほど燃料の供給を継続して停止させる時間を長くすることが好ましい。
【0014】
(7)本発明の一態様では、吸気温度を検出する吸気温度検出部をさらに有し、前記燃料供給停止部は、前記吸気温度検出部が検出した吸気温度が高いほど燃料の供給を継続して停止させる時間を長くすることが好ましい。
【0015】
(8)本発明の一態様では、前記異常燃焼検出部は、異常燃焼の度合いを検出しており、前記燃料供給停止部は、前記異常燃焼検出部が検出した異常燃焼の度合いが高いほど燃料の供給を継続して停止させる時間を長くすることが好ましい。
【0016】
(9)本発明の一態様では
、前記燃料供給停止部は
、走行時の加速度が予め設定したしきい値以下であるとき燃料の供給の停止を行わないことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
(1)の態様の発明によれば、異常燃焼を検出した気筒への燃料の供給を停止することで、その気筒の異常燃焼が継続するのを抑制できる。
また、(1)の態様の発明によれば、異常燃焼を検出した気筒への燃料の供給を停止することで、異常燃焼の発生した気筒を冷却でき、異常燃焼が再び発生することを防止できる。
さらに、(1)の態様の発明によれば、燃料の供給停止中に振動検出部が車両の振動を検出したとき燃料供給を停止することを終了させることで、燃料供給を停止していることに起因した内燃機関の振動の増大を抑制できる。これによって、(1)の態様の発明では、異常燃焼抑制制御中に乗員に不快な振動が伝わることを防止できる。
【0018】
(2)の態様の発明によれば、各気筒への燃料供給の停止を同時期に行わないようにでき、燃料の供給停止による内燃機関の振動が大きくなるのを抑制できる。
【0019】
(3)の態様の発明によれば、気筒内での燃料の気化潜熱を増加させることができる。これによって、(3)の態様の発明では、気筒内を冷却でき、異常燃焼が継続するのを抑制できる。
【0020】
(4)の態様の発明によれば、異常燃焼の度合いに応じて、燃料供給量の増加によって気筒内の冷却を行ったり燃料供給の停止によって気筒内の冷却を行ったりすることができる。
【0021】
(5)の態様の発明によれば、内燃機関の排気路に配置されている触媒が排気ガスを効率よく浄化できる。
また、(5)の態様の発明によれば、燃料供給を停止する気筒以外の気筒への燃料の供給量を増加させることで当該気筒内での燃料の気化潜熱を増加させることができる。これによって、(5)の態様の発明では、燃料供給を停止する気筒以外の気筒の気筒内を冷却して異常燃焼の発生を軽減できる。
【0022】
(6)の態様の発明によれば、異常燃焼発生後に異常燃焼が再度発生することを抑制できる。
【0023】
(7)の態様の発明によれば、異常燃焼発生後に異常燃焼が再度発生することを抑制できる。
【0024】
(8)の態様の発明によれば、異常燃焼発生後に再度異常燃焼が発生することを抑制できる。
【0025】
(9)の態様の発明によれば、内燃機関からの振動変動が少ないために内燃機関の振動の変化を乗員が感知しやすい車両走行状況下で、燃料の供給停止に起因する内燃機関の振動が乗員に不快感を与えてしまうのを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、内燃機関の燃焼状態制御装置を搭載した車両を挙げている。
(構成)
図1は、本実施形態における車両の構成例を示す図である。
【0028】
図1中、車両が搭載する内燃機関1の構成として、2はシリンダヘッド、3はシリンダヘッドカバー、4はピストン、5は燃焼室、6はイグニションコイルをそれぞれ示す。この内燃機関1は、4ストローク型の内燃機関である。そして、この内燃機関1は、エンジン制御装置(例えばECM:Engine Control Module)60によって燃焼状態等が制御される。
【0029】
この内燃機関1の吸気系において、吸気管11が、電子制御スロットルボディ12及びサージタンク13を介して、燃焼室5に連通する吸気マニホルド14に接続されている。また、吸気管11には、上流側にエアクリーナ15が配置されている。ここで、電子制御スロットルボディ12内には、スロットル弁12aが設けられている。この電子制御スロットルボディ12は、エンジン制御装置60によってスロットル弁12aの開度等が制御される。
【0030】
また、吸気マニホルド14には、燃焼室5に指向した燃料噴射弁16が設けられている。燃料噴射弁16には、不図示の燃料タンクに連絡した燃料供給管17が接続されている。この燃料噴射弁16は、エンジン制御装置60によって燃料噴射量や燃料噴射タイミング等が制御される。
【0031】
また、内燃機関1の排気系において、燃焼室5に連通する排気マニホルド21には、触媒コンバータ22を介して不図示の排気管が接続されている。触媒コンバータ22内には、触媒23が設けられている。
【0032】
また、シリンダヘッド2には、不図示の吸気カム軸の端部に、可変バルブタイミング(VVT)装置の吸気VVTアクチュエータ31が取り付けられている。また、シリンダヘッド2には、不図示の排気カム軸の端部に、排気VVTアクチュエータ32が取り付けられている。このような構成に対応して、内燃機関1には、吸気VVTアクチュエータ31を作動する吸気VVTオイルコントロールバルブ33が設けられ、排気VVTアクチュエータ32を作動する排気VVTオイルコントロールバルブ34が設けられている。エンジン制御装置60は、このような各VVTオイルコントロールバルブ33,34を介して各VVTアクチュエータ31,32の駆動を制御する。
【0033】
また、イグニションコイル6は、不図示の点火プラグと電気的に接続されており、その点火プラグを発火させるための電圧がエンジン制御装置60によって制御される。
また、シリンダヘッドカバー3には、PCV(Positive Crankcase Ventilation)バルブ41を介してサージタンク13内に連通する第1ブローバイガス管42が接続されている。また、シリンダヘッドカバー3には、吸気管11に電子制御スロットルボディ12の上流側で連通する第2ブローバイガス管43が接続されている。ここで、PCVバルブ41は、クランクケース内のブローバイガスを吸気側に戻すためのものである。
【0034】
また、本実施形態の車両は、車速センサ51、車両加速度センサ(いわゆる車両Gセンサ)52、水温センサ53、エンジン回転数センサ54、吸気温度センサ55、及びノッキングセンサ(又はノックセンサ)56を有している。
車速センサ51は、自車両の車速を検出する。そして、車速センサ51は、検出値をエンジン制御装置60に出力する。
【0035】
車両加速度センサ52は、車体床面等に取り付けられて車両の振動及び道路勾配(すなわち、車両の傾き)を検出するセンサである。本実施形態では、車両加速度センサ52は、車両内で発生している車両加速度を検出する。そして、車両加速度センサ52は、検出値をエンジン制御装置60に出力する。
【0036】
エンジン回転数センサ54は、内燃機関1に取り付けられてエンジン回転数を検出する。そして、エンジン回転数センサ54は、検出値をエンジン制御装置60に出力する。
水温センサ53は、内燃機関1の冷却水の水温を検出する。そして、水温センサ53は、検出値をエンジン制御装置60に出力する。
【0037】
吸気温度センサ55は、吸気管11に取り付けられており、吸気温度を検出する。そして、吸気温度センサ55は、検出値をエンジン制御装置60に出力する。本実施形態では、
図1に示すように、吸気温度センサ55は、吸気管11への流入空気量を検出するエアフローセンサ57に隣接されて取り付けられている。
【0038】
ノッキングセンサ56は、ノッキングによって発生するエンジンブロックの振動を検出する。このノッキングセンサ56は、内燃機関1のエンジンブロックに各気筒に対応して取り付けてある。そして、ノッキングセンサ56は、検出値をエンジン制御装置60に出力する。
【0039】
エンジン制御装置60は、例えば、マイクロコンピュータ及びその周辺回路を備えるECU(Electronic Control Unit)において構成されている。そのために、例えば、エンジン制御装置60は、CPU、ROM、RAM等によって構成されている。ROMには、各種処理を実現する1又は2以上のプログラムが格納されている。CPUは、ROMに格納されている1又は2以上のプログラムに従って各種処理を実行する。
このエンジン制御装置60は、車速センサ51等の各種センサ等から検出値等を基に内燃機関1を制御する。
【0040】
そして、本実施形態では、エンジン制御装置60は、各種センサの検出値を基に異常燃焼を抑制する制御を行う。
図2は、そのような制御を実現するためのエンジン制御装置60の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、エンジン制御装置60は、加速判定部61、異常燃焼検出部62、燃料供給停止部63、燃料供給停止終了部64、車両振動検出部65、及び記憶部66を有している。
【0041】
ここで、加速判定部61は、自車両が加速中であるか否かを判定する。具体的には、加速判定部61は、車速センサ51の検出値(すなわち車速)の変化率(すなわち加速度)が加速度判定用しきい値以上である場合、自車両が加速中であると判定する。例えば、加速度判定用しきい値は、車両が加速していることを検出することができる程度に、実験的、経験的、又は理論的に予め設定された値である。
【0042】
異常燃焼検出部62は、内燃機関1(具体的には各気筒)の異常燃焼を検出する。具体的には、異常燃焼検出部62は、各気筒に取り付けられたノッキングセンサ56の検出値を基に各気筒について異常燃焼を検出する。例えば、異常燃焼検出部62は、ノッキングセンサ56の検出値が異常燃焼判定用しきい値以上である場合、当該ノッキングセンサ56が取り付けられている気筒が異常燃焼しているとの結果を得る。例えば、異常燃焼判定用しきい値は、実験的、経験的、又は理論的に予め設定された値である。
【0043】
なお、異常燃焼検出部62は、このようなノッキング時の異常燃焼を検出することに限定されないことは言うまでもなく、プレイグニッションのような異常燃焼を検出することもできる。
燃料供給停止部63は、燃料噴射弁16による燃料噴射を停止させて、気筒内への燃料の供給を停止(すなわちF/C)する。具体的には、燃料供給停止部63は、燃料噴射弁16そのものの駆動を制御したり、燃料噴射弁16に燃料を供給するポンプ(例えばフューエルポンプ)の駆動を制御したりして、燃料噴射弁16による燃料噴射を停止させて、気筒への燃料供給を停止する。
【0044】
燃料供給停止終了部64は、そのような燃料供給停止部63による燃料の供給停止を終了させる。
車両振動検出部65は、車両が振動していることを検出する。具体的には、車両振動検出部65は、車両加速度センサ52の検出値である車両加速度が振動判定用車両加速度以上である場合(車両加速度≧振動判定用車両加速度)、又はエンジン回転数センサ54の検出値であるエンジン回転数の変動が振動判定用変動値以上である場合(エンジン回転数の変動≧振動判定用変動値)、車両が振動しているとの結果を得る。例えば、振動判定用車両加速度及び振動判定用変動値は、実験的、経験的、又は理論的に予め設定された値である。
【0045】
記憶部66には、異常燃焼が発生した気筒(以下、異常燃焼発生気筒という。)の情報(例えば気筒番号)が記憶される。記憶部66は、前述のRAM等のデータの書き換えが可能なメモリである。
図3は、このような
図2に示す構成によって実現される異常燃焼抑制処理の一例を示すフローチャートである。
【0046】
図3に示すように、先ずステップS1では、エンジン制御装置60は、加速判定部61の判定結果及び異常燃焼検出部62の検出結果を基に、自車両が加速中に異常燃焼が発生したか否かを判定する。エンジン制御装置60は、自車両が加速中に異常燃焼が発生したと判定したときに、ステップS2に進む。
【0047】
ステップS2では、エンジン制御装置60は、異常燃焼抑制制御の有無を示す異常燃焼判定フラグに1を設定する(異常燃焼判定フラグ=1)。そして、エンジン制御装置60は、異常燃焼抑制制御を開始する。
次に、ステップS3では、エンジン制御装置60は、異常燃焼発生気筒(例えば気筒番号)を記憶部66に記憶する。このとき、異常燃焼発生気筒が複数であれば、エンジン制御装置60は、その複数の異常燃焼発発生気筒(例えば気筒番号)を記憶部66に記憶する。
【0048】
次に、ステップS4では、エンジン制御装置60は、記憶部66からF/Cを実施する異常燃焼発生気筒(例えば気筒番号)を読み込む。ここで、エンジン制御装置60は、記憶部66に複数の異常燃焼発生気筒がある場合には、複数の異常燃焼発生気筒から一の異常燃焼発生気筒を読み込む。このとき、例えば、エンジン制御装置60は、記憶部66に記憶されている複数の異常燃焼発生気筒(例えば気筒番号)を、異常燃焼が発生した順序に読み込む。
【0049】
次に、ステップS5では、エンジン制御装置60は、燃料供給停止部63によって、前記ステップS4で読み込んだ異常燃焼発生気筒について1サイクル中にF/Cを実施する。ここでいう1サイクルは、吸気行程から次の吸気行程までの1サイクルであり、内燃機関1が2回転するサイクルである。
【0050】
次に、ステップS6では、エンジン制御装置60は、異常燃焼検出部62の検出結果を基に、全ての気筒について異常燃焼していないか否かを判定する。エンジン制御装置60は、異常燃焼していないと判定すると、ステップS8に進む。また、エンジン制御装置60は、異常燃焼していると判定すると、ステップS7に進む。
【0051】
ステップS7では、エンジン制御装置60は、車両振動検出部65によって、車両加速度が振動判定用車両加速度以上であるか否か、又はエンジン回転数の変動が振動判定用変動値以上であるか否かを判定する。エンジン制御装置60は、車両加速度が振動判定用車両加速度以上であると判定すると(車両加速度≧振動判定用車両加速度)、又はエンジン回転数の変動が振動判定用変動値以上であると判定すると(エンジン回転数の変動≧振動判定用変動値)、ステップS8に進む。また、エンジン制御装置60は、それ以外であると判定すると(車両加速度<振動判定用車両加速度かつエンジン回転数の変動<振動判定用変動値)、前記ステップS4から再び処理を開始する。
【0052】
ステップS8では、エンジン制御装置60は、燃料供給停止終了部64によって、F/Cを止めて異常燃焼抑制制御を終了し、異常燃焼判定フラグに0を設定する(異常燃焼判定フラグ=0)。そして、エンジン制御装置60は、当該
図3に示す処理を終了する。
【0053】
(動作、作用等)
次に、エンジン制御装置60の一連の動作、及びその作用等について説明する。
エンジン制御装置60は、自車両が加速中に異常燃焼が発生した場合、異常燃焼判定フラグに1を設定して異常燃焼抑制制御を開始するとともに、異常燃焼発生気筒(例えば気筒番号)を記憶部66に記憶する(前記ステップS1乃至前記ステップS3)。
【0054】
そして、エンジン制御装置60は、記憶部66からF/Cを実施する異常燃焼発生気筒(例えば気筒番号)を読み込み、読み込んだ異常燃焼発生気筒について1サイクル中にF/Cを実施する(前記ステップS4、前記ステップS5)。すなわち、エンジン制御装置60は、F/Cを実施して、異常燃焼発生気筒について1サイクルの掃気及び冷却サイクルを設ける。
【0055】
また、エンジン制御装置60は、異常燃焼発生気筒が複数有る場合には、記憶部66に記憶されている複数の異常燃焼発生気筒(例えば気筒番号)を、異常燃焼が発生した順序(異常燃焼を検出した順序)に読み込んでいき、1サイクルにつき1気筒単位でF/Cを順次実施する。つまり、エンジン制御装置60は、1サイクルを1気筒について燃料供給を停止する期間の単位とし各気筒の燃料供給を順番に各サイクルで停止させる。
【0056】
そして、エンジン制御装置60は、全ての気筒について異常燃焼がなくなるまで、又はある程度の大きさの車両振動を検出しない限り、異常燃焼発生気筒についてF/Cを実施する(前記ステップS6、前記ステップS7)。一方、エンジン制御装置60は、全ての気筒について異常燃焼がなくなると、又は車両振動がある程度の大きさになると、異常燃焼抑制制御を終了してF/Cを止めて(すなわち、燃料供給を開始して)、異常燃焼判定フラグに0を設定する(前記ステップS6乃至前記ステップS8)。
【0057】
(第1の実施形態における効果)
第1の実施形態では、異常燃焼発生気筒についてF/Cを実施している。これによって、第1の実施形態では、異常燃焼発生気筒について掃気及び冷却を行い、異常燃焼の原因となる高温の残留ガスを低減すると同時に気筒内を冷却している。
また、第1の実施形態では、車両の振動が大きくなったとき(具体的には、車両加速度≧振動判定用車両加速度又はエンジン回転数の変動≧振動判定用変動値になったとき)、F/Cの実施を中止している。これによって、第1の実施形態では、異常燃焼発生気筒で燃焼がないことに起因して、異常燃焼が発生していない本来のエンジン駆動状態と比較してエンジン振動が大きくなってしまうことを防止し、車両の振動が乗員に不快感を与えてしまうのを防止できる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、前述の第1の実施形態と同様な構成については同一の符号を付して説明する。
この第2の実施形態では、F/Cを実施していない気筒について燃料供給量を増加させる処理を行っている。
【0059】
図4は、そのような第2の実施形態における処理を実現するエンジン制御装置60の構成例を示す。
図4に示すように、第2の実施形態におけるエンジン制御装置60は、燃料供給量増加部71をさらに有する。
【0060】
図5は、第2の実施形態における異常燃焼抑制処理の一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、この処理では、第1の実施形態における
図3の処理に対して、ステップS5の処理の後にステップS21の処理が追加されている。
そのステップS21では、エンジン制御装置60は、燃料供給量増加部71によって、前記ステップS5でF/Cを実施している気筒以外の全気筒への燃料供給量を増加させる。
【0061】
ここで、前記ステップS5でF/Cを実施している気筒以外の気筒として、他の異常燃焼発生気筒や異常燃焼が発生していない気筒がある。
また、燃料供給量増加部71は、燃料噴射弁16の燃料噴射量を増加させることで、気筒への燃料供給量を増加させる。
【0062】
また、燃料供給量増加部71は、各気筒からの排気ガスが集まる位置、すなわち触媒23の直前位置での排気ガスの理論空燃比が理論空燃比(ストイキとも言う。空気:燃料=14.7:1の状態となることを指す。)となるように、各気筒への燃料供給量を増加させる。すなわち例えば、燃料供給量増加部71は、F/Cによって異常燃焼発生気筒に燃料供給しなかった燃料分を、当該異常燃焼発生気筒以外の気筒への燃料噴射に振り分ける。このとき、当該異常燃焼発生気筒以外の気筒が複数有る場合には、燃料供給量増加部71は、F/Cの実施によって燃料噴射しなかった燃料分を、当該異常燃焼発生気筒以外の複数の気筒に均等に振り分ける。ここで、通常は、各気筒への流入空気量はそれぞれ等しいことから、燃料供給量増加部71は、燃料噴射しなかった燃料分を各気筒に均等に振り分けている。
【0063】
これに対して、燃料供給量増加部71は、各気筒に流入する空気量にあわせて各気筒への燃料供給量を増加させることもできる。このとき、燃料供給量増加部71は、その気筒に流入する空気量が多いほど燃料供給の増量分を多くする。
また、燃料供給量増加部71は、前記ステップS1にて異常燃焼が発生すると判定してF/Cを実施する気筒及びその気筒に供給予定の燃料供給量を確認できた時点で燃料供給量の増量分を算出する。例えば、燃料供給量増加部71は、F/Cの実施時に燃料供給量の増量分を算出する。
【0064】
以上は、第2の実施形態における構成であるが、第2の実施形態のその他の構成は、前述の第1の実施形態の構成と同様である。
【0065】
(第2の実施形態における効果)
第2の実施形態では、触媒23の直前位置における排気ガスの空燃比が理論空燃比となるように、F/Cを実施している気筒以外の各気筒への燃料供給量を増加させている。これによって、本実施形態では、内燃機関1の排気路に配置されている触媒23が排気ガスを効率よく浄化できる。
【0066】
すなわち、異常燃焼発生気筒についてF/Cを実施すると、F/Cを実施していない気筒(異常燃焼発生気筒であるが未だF/Cを実施していない気筒を含む)を含めて全体として排気ガスの空燃比がリーン側(すなわち、理論空燃比よりも空気量が大となる状態)となりNOx等が悪化してしまう恐れがある。これに対して、例えば、第2の実施形態では、F/Cを実施している気筒以外の各気筒への燃料供給量を増加させることによって、HC、CO、NOx等の浄化率を低下させることなく異常燃焼が継続してしまうのを防止できる。
【0067】
また、第2の実施形態では、このようにF/Cを実施している気筒以外の各気筒、すなわち、異常燃焼気筒であるが未だF/Cを実施していない気筒や異常燃焼が発生していない気筒への燃料供給量を増加させることによって、異常燃焼が既に発生している気筒や異常燃焼が発生していない気筒であるが異常燃焼が発生する可能性が高い気筒を予め冷却できる。
【0068】
また、第2の実施形態では、異常燃焼発生気筒以外の各気筒に流入する空気量にあわせて各気筒への燃料供給量を増加させている。これによって、第2の実施形態では、各気筒間で流入する空気量がばらつくことがあっても、各気筒への燃料供給量をそれに応じた量にできる。この結果、第2の実施形態では、燃料供給量の過度の増量による未燃HC等の発生を防止できる。
【0069】
また、第2の実施形態では、異常燃焼が発生すると判定してF/Cを実施する気筒及びその気筒に供給予定の燃料供給量を確認できた時点で燃料供給量の増量分を算出している。これによって、第2の実施形態では、他の気筒への燃料供給量の増加指示をF/C実施後に即座に早期に対応できるようになる。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、前述の第1及び第2の実施形態と同様な構成については同一の符号を付して説明する。
この第3の実施形態では、複数の異常燃焼発生気筒のうち、異常燃焼強度が最も高い異常燃焼発生気筒には燃料供給量を積極的に増加させる処理を行っている。
【0071】
図6は、そのような第3の実施形態における処理の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、この処理では、第2の実施形態における
図5の処理に対して、ステップS3の処理の後にステップS41及びステップS42の処理を追加している。
そのステップS41では、エンジン制御装置60は、異常燃焼強度が特に高い異常燃焼発生気筒が有るか否かを判定する。エンジン制御装置60は、異常燃焼強度が特に高い異常燃焼発生気筒が有ると判定すると、ステップS42に進む。また、エンジン制御装置60は、異常燃焼強度が特に高い異常燃焼発生気筒が無いと判定すると、前記ステップS4に進む。
【0072】
エンジン制御装置60は、このステップS41の判定処理によって、複数の異常燃焼発生気筒がある存在する場合に、それら異常燃焼発生気筒のうちの異常燃焼強度が最も高い異常燃焼発生気筒を選択する。
ステップS42では、エンジン制御装置60は、燃料供給量増加部71によって、異常燃焼強度が最も高い異常燃焼気筒への燃料供給量を増加させる。このとき、燃料供給量増加部71は、異常燃焼強度に応じて燃料供給量を増加させる。具体的には、燃料供給量増加部71は、異常燃焼強度が高いほど、燃料供給の増量分を多くする。そして、エンジン制御装置60は、前記ステップS4に進む。
【0073】
以上は、第3の実施形態における構成であるが、第3の実施形態のその他の構成は、前述の第1及び第2の実施形態の構成と同様である。
第3の実施形態では、以上のような構成によって、ある気筒での異常燃焼の発生を検出した後、その気筒のF/Cを実施するまでの間に、別の気筒で、より強度の高い異常燃焼の発生を検出した場合、そのような異常燃焼の強度が高い異常燃焼発生気筒への燃料供給量の増量を優先的に行う。
【0074】
(第3の実施形態における効果)
第3の実施形態では、異常燃焼強度が最も高い異常燃焼発生気筒には燃料供給量を積極的に増加させている。これによって、第3の実施形態では、異常燃焼発生気筒について、F/Cの実施によって燃焼を行われないことで実現される気筒内の冷却よりも高い効率で気筒内を冷却できる。
【0075】
また、異常燃焼強度の最も高い気筒への燃料供給量を増加させた際、その気筒への燃料供給量の増量だけでは触媒23の直前位置での排気ガスの空燃比がリーン側となる場合がある。これに対して、第3の実施形態では、前述の第2の実施形態と同様に、触媒23の直前位置での排気ガスの空燃比が理論空燃比となるように、F/Cを実施している気筒以外の各気筒への燃料供給量を増加させている(前記ステップS21)。
【0076】
これによって、第3の実施形態では、前述の第2の実施形態と同様に、内燃機関1の排気路に配置されている触媒23が排気ガスを効率よく浄化できる。
以上の実施形態の説明では、燃料供給量増加部71は、例えば、燃料供給量増加部及び燃料供給調整部の機能を併有する。また、エンジン制御装置60は、例えば、内燃機関の燃焼状態制御装置を構成する。
【0077】
(本実施形態の変形例)
本実施形態では、水温センサ53が検出した水温が高いほど燃料供給の停止を継続する時間(すなわち、停止継続時間)を長くすることができる。このとき、本実施形態では、F/Cを実施するサイクル数を多くすることで、燃料供給の停止を継続させる時間を長くする。
【0078】
また、本実施形態では、吸気温度センサ55が検出した吸気温度が高いほど燃料供給の停止を継続する時間を長くすることができる。
また、本実施形態では、異常燃焼の度合い(すなわち、異常燃焼強度)が高いほど燃料供給の停止を継続する時間を長くすることができる。
【0079】
また、本実施形態では、エンジンの振動に起因する車両の振動を検出するために、車両加速度センサ52及びエンジン回転数センサ54を用いている。しかし、本実施形態では、これに限定されない。すなわち、本実施形態では、エンジンの振動に起因する車両の振動をこれら以外の他の検出部を用いることができる。
【0080】
また、本実施形態では、車両加速度センサ52及びエンジン回転数センサ54の検出値を基に車両振動を検出している。しかし、本実施形態では、これに限定されない。すなわち例えば、本実施形態では、車両加速度センサ52及びエンジン回転数センサ54の何れか一方の検出値を用いて車両振動を検出することもできる。このような構成は、車両が車両加速度センサ52及びエンジン回転数センサ54の何れか一方しか搭載していない場合に有効である。
【0081】
また、本実施形態では、ノッキングセンサ56の検出値を基に異常燃焼を検出している。しかし、本実施形態では、これに限定されない。すなわち例えば、本実施形態では、イオン電流を検出するイオン電流検出部の検出値を基に異常燃焼を検出することもできる。このイオン電流検出部を用いた異常燃料の検出は次のようになる。
【0082】
イオン電流検出部は、点火プラグの電極に電流を流して、混合ガスの燃焼中に発生するイオン電流を検出する。そして、異常燃焼検出部62は、イオン電流検出部が検出したイオン電流の発生タイミングを基に、プレイグである異常燃焼を検出する。
【0083】
また、本実施形態では、吸気VVTアクチュエータ31を有する可変吸気弁機構を用いて吸気弁の閉時期を遅らせる、いわゆる吸気VVTの遅角を行って、異常燃焼を回避することもできる。この場合、本実施形態では、このような吸気VVTの遅角によっても異常燃焼を回避できないときに、前述のようなF/Cによる異常燃焼の抑制を図ることができる。
【0084】
また、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項1により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。