(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962199
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】防振構造
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20160721BHJP
F16B 37/04 20060101ALI20160721BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20160721BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20160721BHJP
F16B 39/24 20060101ALI20160721BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
F16F15/02 Z
F16B37/04 M
F16B5/02 C
F16B5/02 U
F02F7/00 P
F02F7/00 301E
F02F7/00 302B
F16B39/24 C
F16B43/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-113617(P2012-113617)
(22)【出願日】2012年5月17日
(65)【公開番号】特開2013-241949(P2013-241949A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳氏
(72)【発明者】
【氏名】高津 秀久
(72)【発明者】
【氏名】中野 純
【審査官】
塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−172197(JP,A)
【文献】
特開平07−042876(JP,A)
【文献】
特開2006−125551(JP,A)
【文献】
特開2010−242864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00−15/36
F02F 7/00
F16B 5/02、23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材に加わる振動を低減する防振構造であって、
前記部材に形成された貫通孔と、前記貫通孔に挿入可能なボルトと、前記ボルトが遊嵌するボスとを備え、
前記貫通孔に挿入された前記ボルトに前記ボスを遊嵌させるとともに、該ボルトの回転止めを設けたことを特徴とする防振構造。
【請求項2】
前記回転止めは、前記ボルトの頭部と前記部材との間に挟み込まれた板材の一部を折り曲げて、前記ボルトの頭部側面に当接させてなる請求項1に記載の防振構造。
【請求項3】
前記部材がエンジンの構成部材である請求項1又は2に記載の防振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防振構造に関し、更に詳しくは、従来よりもコスト及び重量を増加させることなく、エンジンの構成部品などに発生する振動を低減することができる防振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダブロックやヘッドカバーなどのエンジンの構成部材には、エンジン運転や車両の走行に伴い振動が発生するが、そのような振動が過大になったり長時間続いたりすると、エンジンの駆動に影響を及ぼすだけでなく、最悪の場合にはエンジンの損傷に至るおそれがある。その対策として、従来からエンジンの構成部材を制振鋼板を用いて形成することが行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この制振鋼板は、金属板やプラスチック板を複数積層した構造を有しており、振動による変形で生じる各板間の変位を各板間の摩擦で吸収することにより、振動エネルギーを熱エネルギーに変換することで振動を低減する機能を有している。
【0004】
しかしながら、一般に制振鋼板は高価で重量が大きいため、エンジンの材料コスト及び製造コストが高騰するとともに、エンジン重量が増加してしまうという問題がある。そのため、コストや重量を増加を増加させることなく振動を低減することができる防振構造の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−255071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来よりもコスト及び重量を増加させることなく、部材に加わる振動を低減することができる防振構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の防振構造は、部材に加わる振動を低減する防振構造であって、前記部材に形成された貫通孔と、前記貫通孔に挿入可能なボルトと、前記ボルトが遊嵌するボスとを備え、前記貫通孔に挿入された前記ボルトに前記ボスを遊嵌させる
とともに、該ボルトの回転止めを設けたことを特徴とするものである。
【0008】
上記
の回転止めは、ボルトの頭部と前記部材との間に挟み込まれた板材の一部を折り曲げて、ボルトの頭部側面に当接させることで構成する。そのように構成することで、容易にボルトの回転を止めることができるとともに、防振構造のコスト及び重量が過度に増加することを防止できる。
【0009】
本発明は、エンジンの構成部材に対して好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の防振構造によれば、ボルトがボスに対して動くことにより、部材に加わる振動エネルギーが熱エネルギーに変換されるので、部材の振動を低減することができる。また、部材にボルト及びボスを取り付けるだけでよいため、従来よりも材料コスト及び製造コスト並びに重量が増加することはない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態からなる防振構造の組立図である。
【
図2】本発明の実施形態からなる防振構造の構成図である。
【
図5】表1の実施例1における振動の大きさの測定結果を示すグラフである。
【
図6】表1の比較例1における振動の大きさの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1、2は、本発明の実施形態からなる防振構造を示す。
【0014】
この防振構造は、
図1に示すように、エンジンの構成部材1に形成された貫通孔2と、その貫通孔2に挿入可能なボルト3と、そのボルト3が遊嵌するボス4とから主に構成されている。貫通孔2は、ボルト3の雄ネジ部5のみが挿入可能な大きさとなっている。また、ボス4には、ボルト3の雄ネジ部5がクリアランス6を有しながら緩やかに螺合する雌ネジ孔7が形成されている。防振構造を構成するには、
図2に示すように、ボルト3を貫通孔2に挿入してから、雄ネジ部5にボス4の雌ネジ孔7をクリアランス6を有するように螺合させ、ボルト3の頭部8とボス4とによりエンジンの構成部材1を緩やかに挟持する。
【0015】
このような防振構造において、エンジンの構成部材1に振動が加わると、ボルト3の雄ネジ部5とボス4との間にはクリアランス6が存在するため、ボルト3がボス4に対して動くことで、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて振動が低減されるのである。
【0016】
このように、エンジンの構成部材1にボルト3とボス4を取り付けるだけでよいため、従来よりもコスト及び重量を増加させることなく、構成部材1に加わる振動を低減することができる。
【0017】
上記の防振構造においては、振動によりボルト3が回転してボス4から抜け落ちないように、ボルト3の回転止めを設け
る。そのような回転止めは、例えば
図3に示すように、金属製の薄板材9をボルト3の頭部8と構成部材1との間に挟み込み、その薄板材9のコーナー部10を折り曲げて、薄板材9の表面をボルト3の頭部側面11の1つに当接させることで、安価かつ容易に構成することができる。
【0018】
本発明の防振構造の適用対象は、特に限定するものではないが、エンジンの構成部品1であるシリンダブロック、ヘッドカバー、オイルパン又はパイプ類などに好ましく適用される。
【実施例】
【0019】
エンジンのアルミ製ヘッドカバーに加速度センサを取り付けた試験体を紐で吊り下げて、ハンマリングにより加振したときの周波数応答関数(FRF)及びロスファクタηを測定した結果を
図4〜6に示す。試験体に取り付けた全ボルト本数、及びボルトとボスとの間のクリアランスの有無を、表1のように変化させている。なお、ロスファクタηは、以下の(1)式から算出した。
η=(f2−f1)/f0 ---(1)
但し、f0は共振周波数を、f1及びf2はf0でのFRFレベルに対し−3dBを呈する周波数を、それぞれ示す。
【0020】
【表1】
【0021】
図4の結果から、実施例1、2は比較例1、2に比べてFRFが低く、かつロスファクタηが高いことが分かる。また、
図5、6の結果から、実施例1は比較例1に比べて試験体の振動を広い周波数域で大幅に低減することが分かる。
【0022】
これらの結果から、本発明の防振構造は、振動低減効果を有することが分かる。更に、
図4の結果からは、本発明の防振構造におけるボルトの本数が4本と少ない場合でも、一定の振動低減効果があることが分かる。
【符号の説明】
【0023】
1 構成部材
2 貫通孔
3 ボルト
4 ボス
5 雄ネジ部
6 クリアランス
7 雌ネジ孔
8 頭部
9 薄板材
10 コーナー部
11 頭部側面