(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962221
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ラインドライバの入力ノイズ除去回路及びモータシステム
(51)【国際特許分類】
H04L 25/02 20060101AFI20160721BHJP
H04L 25/03 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
H04L25/02 S
H04L25/03 Z
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-123548(P2012-123548)
(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公開番号】特開2013-251637(P2013-251637A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 祥太
(72)【発明者】
【氏名】渡部 芳幸
【審査官】
阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−278802(JP,A)
【文献】
米国特許第04924115(US,A)
【文献】
国際公開第2010/047250(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインドライバの入力信号線に直列に接続された抵抗と、前記入力信号線に並列に接続されたコンデンサとを備えるローパスフィルタで構成され、
前記コンデンサは、前記入力信号線とグランドとの間に挿入されており、
前記コンデンサと前記入力信号線との間のパターン幅と、前記コンデンサとグランドとの間のパターン幅とが、前記入力信号線のパターン幅の2倍以上となっていることを特徴とするラインドライバの入力ノイズ除去回路。
【請求項2】
前記コンデンサは、前記入力信号線とグランドとの間に挿入されており、
前記コンデンサとグランドとの間のパターン長さが、前記コンデンサと前記入力信号線との間のパターン長さの1/2以下となっていることを特徴とする請求項1に記載のラインドライバの入力ノイズ除去回路。
【請求項3】
ラインドライバの入力信号線に直列に接続された抵抗と、前記入力信号線に並列に接続されたコンデンサとを備えるローパスフィルタで構成され、
前記コンデンサは、前記入力信号線とグランドとの間に挿入されており、
前記コンデンサとグランドとの間のパターン長さが、前記コンデンサと前記入力信号線との間のパターン長さの1/2以下となっていることを特徴とするラインドライバの入力ノイズ除去回路。
【請求項4】
前記コンデンサは、前記入力信号線における前記抵抗の挿入箇所よりもラインドライバ側に接続されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のラインドライバの入力ノイズ除去回路。
【請求項5】
前記入力信号線が複数存在する場合、すべての前記入力信号線にそれぞれ前記ローパスフィルタを挿入することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のラインドライバの入力ノイズ除去回路。
【請求項6】
前記ローパスフィルタは、前記ラインドライバに近接配置されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のラインドライバの入力ノイズ除去回路。
【請求項7】
前記抵抗と前記コンデンサとは、チップ部品により構成されていることを特徴とする請求項6に記載のラインドライバの入力ノイズ除去回路。
【請求項8】
前記抵抗の抵抗値及び前記コンデンサの容量値は、前記ローパスフィルタを通過した後の信号の最大電圧値が、前記ラインドライバがハイレベルと判断する入力電圧の最小値未満となるように設定することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のラインドライバの入力ノイズ除去回路。
【請求項9】
前記請求項1〜8の何れか1項に記載のラインドライバの入力ノイズ除去回路を備えるモータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータのドライブユニット等に組み込まれて使用されるラインドライバの入力ノイズを除去するラインドライバの入力ノイズ除去回路、及びそれを備えるモータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラインドライバを用いたノイズ対策回路として、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、差動ラインドライバと差動ラインレシーバとの間をツイストペア線で接続し、データ通信を、差動信号を用いたシリアル通信方式によって行うものである。ここでは、差動ラインドライバによって背反の信号を作り、差動ラインレシーバにて差動を取ることで、差動ラインドライバと差動ラインレシーバとの間の信号線上で発生したノイズを除去するようにしている。
また、誘導ノイズやサージノイズ等のスパイク状のノイズを除去する回路としては、例えば特許文献2に記載の技術がある。この技術は、入力信号と、入力信号を遅延させた遅延信号との論理演算を行うことで、上記のスパイク状のノイズを除去するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−282440号公報
【特許文献2】特開平5−191226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術にあっては、差動ラインドライバと差動ラインレシーバとの間に印加されたノイズの影響は除去することができるが、差動ラインドライバの入力信号に印加されたノイズについては除去することができない。
また、上記特許文献2に記載の技術にあっては、遅延信号との論理演算を行うと、最低でも元となる信号よりも遅延時間分信号が遅れる。そのため、遅延時間を適切に設定しないとノイズを除去できないという問題がある。
そこで、本発明は、ラインドライバの入力信号に発生したノイズを適切に除去することができるラインドライバの入力ノイズ除去回路、及びそれを備えるモータシステムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係るラインドライバの入力ノイズ除去回路は、ラインドライバの入力信号線に直列に接続された抵抗と、前記入力信号線に並列に接続されたコンデンサとを備えるローパスフィルタで構成されていることを特徴としている。
これにより、ラインドライバの入力信号に印加された高周波ノイズを除去することができる。
また、上記において、前記コンデンサは、前記入力信号線における前記抵抗の挿入箇所よりもラインドライバ側に接続されていることを特徴としている。
これにより、より適切に入力ノイズの除去が可能となる。
【0006】
また、上記において、前記コンデンサは、前記入力信号線とグランドとの間に挿入されており、前記コンデンサと前記入力信号線との間のパターン幅と、前記コンデンサとグランドとの間のパターン幅とが、前記入力信号線のパターン幅の2倍以上となっていることを特徴としている。また、前記コンデンサとグランドとの間のパターン長さが、前記コンデンサと前記入力信号線との間のパターン長さの1/2以下となっていることを特徴としている。
これにより、より適切に入力ノイズの除去が可能となる。
さらに、前記入力信号線が複数存在する場合、すべての前記入力信号線にそれぞれ前記ローパスフィルタを挿入することを特徴としている。
これにより、複数の入力信号のうち何れの入力信号にノイズが印加された場合であっても、適切に当該ノイズを除去することができる。
【0007】
また、上記において、前記ローパスフィルタは、前記ラインドライバに近接配置されていることを特徴としている。
これにより、ローパスフィルタを通過した後の信号にノイズが印加されるのを抑制することができる。
さらに、上記において、前記抵抗と前記コンデンサとは、チップ部品により構成されていることを特徴としている。
これにより、抵抗とコンデンサとを確実にラインドライバの近傍に配置することができる。
【0008】
さらにまた、上記において、前記抵抗の抵抗値及び前記コンデンサの容量値は、前記ローパスフィルタを通過した後の信号の最大電圧値が、前記ラインドライバがハイレベルと判断する入力電圧の最小値未満となるように設定することを特徴としている。
これにより、入力信号に印加されたノイズによってラインドライバが誤動作となるのを防止することができる。
さらに、本発明に係るモータシステムは、上記の何れかのラインドライバの入力ノイズ除去回路を備えることを特徴としている。
これにより、ラインドライバの入力信号に高周波ノイズが印加されることに起因するシステム異常を回避することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ラインドライバの入力信号線にローパスフィルタを挿入することにより、ラインドライバの入力信号に発生する高周波ノイズを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るラインドライバの入力ノイズ除去回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るラインドライバの入力ノイズ除去回路の回路図である。
図中、符号1はラインドライバである。ここでは、ラインドライバ1をダイレクトドライブモータのドライブユニットに適用した場合(モータシステム)について示している。
ラインドライバ1は、入力信号として、例えばエンコーダから出力される3相のインクリメンタル信号(A,B,Z)を、入力信号線2a,2b,2cを介してそれぞれ入力する。そして、ラインドライバ1は、出力信号として、位相の異なるインクリメンタル信号(A,Aバー、B,Bバー、Z,Zバー)を、1対の出力信号線3a,3b,3cを介して外部に開放された外部出力端子4a,4b,4cから出力する。
【0012】
ラインドライバ1の入力側には、ラインドライバ1への入力信号に印加されるサージノイズや誘導ノイズ等のスパイク状のノイズ(入力ノイズ)を除去するための入力ノイズ除去回路10が挿入されている。
入力ノイズ除去回路10は、抵抗とコンデンサとからなるローパスフィルタによって構成されている。このローパスフィルタは、ノイズ除去対象である入力信号が入力される入力信号線に直列接続された抵抗と、当該入力信号線に並列接続されたコンデンサとを有する。
【0013】
すなわち、入力ノイズ除去回路10は、入力信号線2a上に挿入された抵抗11aと、入力信号線2aとグランドとの間に挿入されたコンデンサ12aと、入力信号線2b上に挿入された抵抗11bと、入力信号線2bとグランドとの間に挿入されたコンデンサ12bと、入力信号線2c上に挿入された抵抗11cと、入力信号線2cとグランドとの間に挿入されたコンデンサ12cとを備える。
【0014】
そして、抵抗11aとコンデンサ12aとで構成されるローパスフィルタによって、入力信号Aに印加されているノイズを除去し、抵抗11bとコンデンサ12bとで構成されるローパスフィルタによって、入力信号Bに印加されているノイズを除去し、抵抗11cとコンデンサ12cとで構成されるローパスフィルタによって、入力信号Zに印加されているノイズを除去するようになっている。このように、本実施形態では、入力信号線2a〜2cの全てにノイズ除去用のローパスフィルタを挿入する。
ここで、コンデンサ12a〜12cは、それぞれ入力信号線2a〜2cにおける抵抗11a〜11cが挿入されている箇所よりもラインドライバ1側に挿入する。
【0015】
また、コンデンサ12a〜12cと入力信号線2a〜2cとの間のパターン幅と、コンデンサ12a〜12cとグランドとの間のパターン幅とを、入力信号線2a〜2cのパターン幅の2倍以上とする。
さらに、コンデンサ12a〜12cとグランドとの間のパターン長さは、コンデンサ12a〜12cと入力信号線2a〜2cとの間のパターン長さの1/2以下とする。
【0016】
また、各ローパスフィルタとラインドライバ1とは、近接配置、すなわち極力短い配線で接続する。ローパスフィルタ(抵抗11a〜11cとコンデンサ12a〜12c)は、ラインドライバ1の近傍に配置するために、チップ部品を使用する。
さらに、抵抗11a〜11cとコンデンサ12a〜12cとの定数は、ローパスフィルタを通過した後の入力信号の最大電圧が、ラインドライバ1がハイレベルと判断する入力電圧の最小値未満となるように設定する。
【0017】
また、出力信号線3a〜3cには、外部出力端子4a〜4cから印加される静電気や雷により発生するサージ電圧及び放射ノイズによってラインドライバ1が破壊されるのを防ぐための保護回路20を設ける。保護回路20は、各外部出力端子4a〜4cに接続された出力信号線3a〜3cに、それぞれ並列に接続されたツェナーダイオード21a〜21cによって構成されている。なお、保護回路20としては、上述したサージ電圧等からラインドライバ1を保護できればよく、他の回路構成を適用することもできる。
以上の構成により、ラインドライバ1の入力信号に印加された入力ノイズを効果的に除去することができる。
【0018】
本実施形態においては、ラインドライバ1への入力信号の周波数と入力ノイズの周波数とは大きく異なる。入力ノイズは、上述したようにサージノイズや誘導ノイズ等、スパイク状のノイズであり、ラインドライバ1への入力信号に比べて周波数が遥かに高い。そのため、周波数によってノイズの区別が可能であり、ラインドライバ1の入力信号線にローパスフィルタを挿入することにより、入力信号に印加されるスパイク状の高周波ノイズを確実に除去することができる。
このように、入力ノイズ除去回路10を、抵抗とコンデンサとからなるローパスフィルタで構成するので、比較的簡易な回路構成でノイズ除去を行うことができる。また、当該ローパスフィルタのコンデンサを、入力信号線における抵抗の挿入箇所よりもラインドライバ側に接続するので、より適切に入力ノイズの除去が可能となる。
【0019】
さらに、すべての入力信号線にそれぞれローパスフィルタを挿入するので、複数の入力信号のうち何れの入力信号にノイズが印加されている場合であっても、適切に当該ノイズを除去することができる。
また、ローパスフィルタとラインドライバとをなるべく短い配線で接続するので、ローパスフィルタを通過した後の信号にノイズが印加されるのを抑制することができる。
【0020】
さらにまた、ローパスフィルタを通過した後の信号の最大電圧値が、ラインドライバがハイレベルと判断する入力電圧の最小値未満となるように、抵抗及び前記コンデンサの定数を設定するので、入力信号に印加されたノイズによってラインドライバが誤作動するのを防止することができる。
なお、上記実施形態においては、ダイレクトドライブモータのドライブユニットに適用する場合について説明したが、ラインドライバへの入力信号の周波数に比べて入力ノイズの周波数が高いものであれば、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1…ラインドライバ、2a〜2c…入力信号線、3a〜3c…出力信号線、4a〜4c…外部出力端子、10…入力ノイズ除去回路、11a〜11c…抵抗、12a〜12c…コンデンサ、21a〜21c…ツェナーダイオード