(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内燃機関は、前記吸気管路に設置され前記制御部に接続されたスロットルと、前記スロットルの開度を調整するアクセルと、前記制御部に接続されて前記アクセルが操作されたオン状態及び操作されないオフ状態を検出するアクセルスイッチとを備え、
前記制御部は、前記アクセルスイッチがオフ状態である間に前記バイパス弁を開状態にする
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の凝縮水排出制御機構。
【背景技術】
【0002】
出力を向上させるために過給機及びインタークーラを装備する内燃機関がある。この内燃機関は、排気中のNOxを低減するために、排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)装置を更に装備する場合がある。EGRは、排気ガスの一部を吸気側へ還流し、新気とともに再燃焼させる。
【0003】
特許文献1に記載された技術による装置は、エンジンの排気ポートから過給機のタービンまでの間の排気ガスを、インタークーラからエンジンの吸気ポートまでの間の吸気系へ還流させる高圧EGRを備えている。そして、この装置では、過給システムの異常を検出するために、吸気量センサ及び吸気圧センサなどを備えるほか、エンジン回転数やアクセル開度などのエンジン運転状態を基に過給状態を推定している。
【0004】
特許文献2に記載された技術の内燃機関は、高圧EGRを備えるとともに、低圧EGRも備えている。低圧EGRは、過給機のタービンよりも下流の排気管路中の排気ガスの一部を、過給機のコンプレッサよりも上流の吸気管路へ還流させる。この内燃機関において、圧力センサ、クランクポジションセンサ、アクセルポジションセンサなど各種センサを備えるとともに、高圧EGR弁、低圧EGR弁、第1スロットル弁、第2スロットル弁をそれぞれ備える。第1スロットル弁は、低圧EGR流路が接続された部分よりも上流の吸気管路に設置され、第2スロットル弁は、高圧EGR流路が接続された部分よりも上流の吸気管路に設置されている。そして、吸気管路に吸気漏れが生じていないか検出する。
【0005】
特許文献3に記載された技術の内燃機関は、過給機、アフタクーラ(特許文献1及び特許文献2のインタークーラに同じ)、および結露水排出装置を備えている。結露水排出装置は、アフタクーラにおいて凝縮された結露水を排出する。結露水排出装置は、結露水とともに吸気の一部が放出されないように、過給圧が上昇するのに伴って閉塞するドレンバルブを備えている。
【0006】
特許文献4に記載された過給機付内燃機関は、過給機、インタークーラ、低圧EGRを備えている。インタークーラにおいて凝縮された結露水は、低圧EGRが接続された部分よりも下流の排気管路へ排出され、排気熱によって気化されて水蒸気として排出される。この過給機付内燃機関は、結露水を排出する排水経路に弁を設けている。インタークーラ内の圧力が排気通路内の圧力よりも低い極低出力域の運転状態のとき弁を閉じて排気ガスが排気管路から逆流することを防止するとともに、高出力域の運転状態のときにも弁を閉じて吸入空気が排気管路へ貫けることを防止している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、低圧EGRを備える内燃機関の場合、還流させた排気ガスもインタークーラを通過するようになる。したがって、排気ガス中に含まれる水蒸気もインタークーラにおいて結露し、より多くの凝縮水が生成されることとなる。高速道路を走行するなど、低圧EGRを使用する運転条件が長時間にわたって連続すると、凝縮水が溜まり吸気管路が閉塞してしまうことが懸念される。そのため、凝縮水がある量以上に溜まらないように、定期的に排出しなければならない。
【0009】
また、低圧EGRは、排気管路の触媒よりも上流の位置から排気ガスの一部を吸気管路へ還流させる。そのため、凝縮水を連続的に排出できるように排水経路を常時開放したままにすると、低圧EGRによって還流した排気ガスの一部が排水経路を通って排出されてしまうだけでなく、過給機で加圧した圧力が排水経路から逃げてしまいエンジンの出力が低下する。アクセルペダルを踏んでいる間にエンジンの出力が低下すると、運転者に違和感を与えてしまうかもしれない。
【0010】
そこで、本発明は、過給機とインタークーラとを備える内燃機関において、凝縮水を適度なタイミングで排水しつつ、吸気ガスを排水経路から放出させない凝縮水排出制御機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る一実施形態の凝縮水排出制御機構は、過給機とインタークーラと圧力センサと溜部とバイパス通路とバイパス弁と制御部とを備える。過給機は、内燃機関の吸気管路に設けられる。インタークーラは、過給機の下流に設置される。圧力センサは、インタークーラの下流の吸気管路内の圧力を測定する。溜部は、インタークーラの下流の吸気管路内に設置され、インタークーラで結露した凝縮水を貯留する。バイパス通路は、溜部に連通し、凝縮水を排出する。バイパス弁は、バイパス通路に設置される。制御部は、圧力センサ及びバイパス弁に少なくとも接続され、バイパス弁を開状態にした場合に圧力センサで計測される吸気管路内の圧力の変化を基に溜部における凝縮水の排水状態を判定する。
【0012】
このとき、制御部は、凝縮水が溜部にあるか否かを判定するために、バイパス通路を通って凝縮水が排出される場合の吸気管路内の圧力
として第1の圧力を設定する。そして制御部は、バイパス弁を開状態にした後、圧力センサで検出された圧力が第1の圧力に維持される間はバイパス弁を開状態に維持し、圧力センサで検出された圧力が第1の圧力を下回った場合はバイパス弁を閉状態にする。
【0013】
本発明に係る凝縮水排出制御機構において、制御部は、内燃機関の運転状態によって決定される吸気管路内の定常圧力を設定し、バイパス弁を開状態にしたときに圧力センサによって検出された圧力が定常圧力を超えた場合、バイパス弁を閉状態にする。
【0014】
本発明に係る凝縮水排出制御機構において、制御部は、バイパス弁を開状態にしている間はインタークーラの下流の吸気管路内の圧力を増大させる。
【0015】
また、本発明に係る凝縮水排出制御機構において、吸気管路に設置され制御部に接続されたスロットルと、このスロットルの開度を調整するアクセルと、制御部に接続されてアクセルが操作されたオン状態及び操作されないオフ状態を検出するアクセルスイッチと、を内燃機関がさらに備える場合、制御部は、アクセルスイッチがオフ状態である間にバイパス弁を開状態にする。
【0016】
このとき、内燃機関が溜部の貯水量を検出する貯水量検出手段を備える場合、制御部は、アクセルスイッチがオン状態であっても貯水量検出手段により溜部の貯水量が所定値を超えたと判断したときバイパス弁を開状態にする。さらに、内燃機関は、制御部に接続されてアクセルの操作に応じて燃料の供給量を調整する燃料噴射装置を備え、制御部は、バイパス弁を開状態にするとともに、アクセルの操作に応じた燃料の供給量よりも多い燃料を燃料噴射装置で供給する。
【0017】
本発明に係る凝縮水排出制御機構において、内燃機関は、後処理装置が設置された排気管路を有しており、バイパス通路はこの後処理装置よりも下流の排気管路に連結している。また過給機の下流の排気管路から、インタークーラよりも上流の吸気管路へ、排気ガスの一部を還流させる排気ガス還流通路を、内燃機関が備えていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る凝縮水排出制御機構によれば、バイパス弁を開状態にし、その時のインタークーラよりも下流の吸気管路内の圧力の変化を基に溜部における凝縮水の排水状態を判定する。凝縮水が溜まっているか否かを判定するために、凝縮水の量を検出するための水位センサや運転状況から凝縮水の生成量を推定するためのロジックが不要である。したがって、凝縮水の有無を判定するこの凝縮水排出制御機構は、比較的安価に提供することができる。
【0019】
また、凝縮水を排出する間の吸気管路内の圧力として第1の圧力を設定し、バイパス弁を開いた場合にこの第1の圧力が維持されている場合にはバイパス弁を開状態に維持し、第1の圧力よりも下回った場合にはバイパス弁を閉状態にする本発明の凝縮水排出制御機構によれば、バイパス弁を開いたのち圧力センサで検出される圧力を基に、溜部に凝縮水が有るか無いか容易に判定することができる。つまり、バイパス弁を開いたのち第1の圧力が維持されれば溜部に凝縮水があることを意味し、第1の圧力よりも下回れば溜部に凝縮水が無いことを意味する。そして、第1の圧力が計測されている間にはバイパス弁を開状態に維持することで凝縮水を全て排出し、第1の圧力よりも圧力が低下した場合には直ちにバイパス弁を閉状態にすることで吸気がバイパス通路を介して排出されることを防止する。したがって、溜まった凝縮水を確実に排出できるとともに、吸気を漏出させないことによっていわゆるブースト抜けを防止することができる。
【0020】
また、吸気管路内の定常圧力を設定し、バイパス弁を開状態にしたときに圧力センサによって検出された圧力が定常圧力を超えた場合にバイパス弁を閉状態にする発明の凝縮水排出制御機構によれば、バイパス通路を介して逆流が生じることを防止する。
【0021】
バイパス弁を開放している間はインタークーラの下流の吸気管路内の圧力を増大させる発明の凝縮水制御機構によれば、凝縮水が排出されている間に低下する過給圧を補うので、内燃機関の出力が低下することを抑制できる。
【0022】
スロットルとアクセルとアクセルスイッチとを内燃機関が備え、アクセルスイッチがオフ状態である間にバイパス弁を開状態にする発明の凝縮水排出制御機構によれば、バイパス弁を開状態にして吸気管路内の圧力が低下しても、アクセルスイッチがオフ状態、すなわちアクセルが操作されていない状態である。したがって、運転者にとってアクセルを操作したことに対する応答すなわち内燃機関の出力が、期待値よりも低い状態になっていても、運転者が感じることはない。
【0023】
溜部の貯水量を検出する貯水量検出手段を内燃機関が備える場合、アクセルスイッチがオン状態であっても貯水量検出手段によって溜部の貯水量が所定値を超えたと制御部が判断したときにバイパス弁を開状態にする発明の凝縮水排出制御機構によれば、長時間の連続運転が続いても、凝縮水を確実に排水させることができる。さらに制御部に接続されてアクセルの操作に応じて燃料の供給量を調整する燃料噴射装置を内燃機関が備えており、制御部が、バイパス弁を開状態にするとともに、アクセルの操作に応じた燃料の供給量よりも多い燃料を燃料噴射装置で供給する発明の凝縮水排出制御機構によれば、バイパス弁を開状態にしたことに伴って内燃機関の出力が低下することを補整することができる。
【0024】
後処理装置が設置された排気管路を内燃機関が備えており、バイパス通路がこの後処理装置よりも下流の排気管路に連通する発明の凝縮水排出制御機構によれば、後処理装置に必要な熱を凝縮水が奪うことが無い。つまり、後処理装置の性能を低下させない。
【0025】
過給機の下流の排気管路からインタークーラよりも上流の吸気管路へ、排気ガスの一部を還流させる排気ガス還流通路を内燃機関がさらに備える発明の凝縮水排出制御機構によれば、還流された排気ガス中の水分がインタークーラで凝縮されても、凝縮水を確実に排出させることができるので、排気ガス還流による効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る一実施形態の凝縮水排出制御機構について、
図1から
図7を参照して説明する。凝縮水排出制御機構を備える内燃機関1の概念図を
図1に示す。
図1に示す内燃機関1は、エンジン11に通じる吸気管路12及びエンジン11から延びる排気管路13を備えており、吸気管路12と排気管路13の間に過給機14が設置されている。吸気管路12は、過給機14よりも下流にインタークーラ121と溜部122と圧力センサ123とを有し、過給機14よりも上流に流量センサ124を有している。排気管路13は、過給機14よりも下流に後処理装置131,132を有している。過給機14は、いわゆるターボチャージャであって、排気管路13中に配置されたタービンと吸気管路12中に配置されたコンプレッサとを有している。
【0028】
溜部122は、
図1に示すようにインタークーラ121の下流に位置している。溜部122は、
図2に示すようにインタークーラ121の下流からエンジン11の吸気ポート111までの間の吸気管路12の中で低くなった位置、好ましくはインタークーラ121から下流で最初に低くなる位置、に形成され、インタークーラ121で結露した凝縮水Wを貯留する。
【0029】
圧力センサ123は、インタークーラ121の下流の吸気管路12に配置され、吸気管路12内の圧力を測定する。したがって、この圧力センサ123は、溜部122にかかっている圧力も測定する。流量センサ124は、吸気管路12に取り込まれる新気の流量を測定する。
【0030】
図1に示す内燃機関1は、
図2に示すように溜部122の底に近い部分に連通するバイパス通路15を備えている。バイパス通路15は、溜部122の外側に取り付けられた管台151と、この管台151に対してフレア管継手によって接続されたノズル152と、ノズル152に装着された排水管153と、排水管153の途中に設置されたバイパス弁154とを含む。バイパス通路15の下流端は、
図1に示すように後処理装置131,132よりも下流の排気管路13に接続されている。バイパス弁154は、開状態及び閉状態に操作され、凝縮水Wを任意のタイミングで放出するように制御される。
【0031】
さらに、この内燃機関1は、
図1に示すように、いわゆるデュアルループEGR(Exhaust Gas
Recirculation)システムを採用しており、排気ガス還流通路の一形態である高圧EGR管路161及び低圧EGR管路162を有している。高圧EGR管路161は、エンジン11の排気ポート112から過給機14までの間の排気管路13をインタークーラ121から吸気ポート111までの間の吸気管路12に連通させる。低圧EGR管路162は、過給機14より下流の排気管路13を過給機14よりも上流の吸気管路12に連通させる。高圧EGR管路161は、吸気管路12側の端部に高圧EGR弁163を備え、低圧EGR管路162は、吸気管路12側の端部に低圧EGR弁164を備える。高圧EGR弁163及び低圧EGR弁164が開弁されると、高圧EGR管路161及び低圧EGR管路162によってそれぞれ排気ガスの一部が還流される。
【0032】
内燃機関1は、吸気管路12に設置されたスロットル17と、このスロットル17の開度を調整するアクセル17Aと、アクセル17Aが操作されたオン状態及び操作されていないオフ状態を検出するアクセルスイッチ170とを備える。スロットル17は、高圧スロットル171及び低圧スロットル172を含む。高圧スロットル171は、溜部122と高圧EGR弁163との間の吸気管路12に配置されている。低圧スロットル172は、低圧EGR弁164よりも上流の吸気管路12に配置されている。
【0033】
圧力センサ123、流量センサ124、バイパス弁154、高圧EGR弁163、低圧EGR弁164、高圧スロットル171、低圧スロットル172、アクセル17A、アクセルスイッチ170はそれぞれ制御部18に接続されている。制御部18は、内燃機関1を制御するエンジンコントロールユニット(ECU)の一部に設けられてもよいし、ECUとは独立して設置されていてもよい。本発明の一実施形態に係る凝縮水排出制御機構は、過給機14とインタークーラ121と圧力センサ123と溜部122とバイパス通路15とバイパス弁154と制御部18とで少なくとも構成される。そして、制御部18は、バイパス弁154を開状態にした場合に圧力センサ123で計測される吸気管路12内の圧力の変化を基に、溜部122における凝縮水Wの排水状態を判定する。
【0034】
制御部18が凝縮水Wの排水状態を判定する方法を
図4から
図7を参照して説明する。
【0035】
図4は、溜部122に凝縮水Wが溜まっているか否かを制御部18が判定するフローチャートである。このフローチャートによれば、まず、バイパス弁154が閉じられる(S1)。次に、低圧EGRが作動中であるか否か確認するために、低圧EGR弁164が閉じられているか判断(S2)する。低圧EGR弁164が閉じられている場合、つまり低圧EGRが作動していない場合は、エンジン11のキーがオフになっているか判断(S3)し、オフになっている場合は、このフローは終了(S4)し、オンになっている場合は、再び低圧EGR弁164が閉じられているか判断(S2)し、低圧EGR弁164が開状態になるかキーがオフになるまで、S2とS3を繰り返す。
【0036】
低圧EGR弁164が開状態、すなわち低圧EGRが作動している場合、制御部18は、任意のタイミングでバイパス弁154を開状態にし(S5)、圧力センサ123によって検出される圧力の変化を基に溜部122に凝縮水Wが溜まっているか否か判断する。具体的には、
図5に示すように制御部18は、過給機14が作動している場合の過給圧や定常運転時の吸気圧等の定常圧力P
0に対して、凝縮水Wがバイパス通路15を通って排出される場合の吸気管路内の圧力として第1の圧力P
1を設定している。
【0037】
第1の圧力P
1は、実験などによって予めデータ取りされた値である。凝縮水Wが排出される間の第1の圧力P
1は、定常圧力P
0よりも下がるが、溜部122に凝縮水Wが溜まっておらず吸気がそのままバイパス通路15を通って排出される場合の第2の圧力P
2よりも、バイパス通路15に対する凝縮水Wの粘性などによる流動抵抗の分だけ高い。そこで制御部18は、圧力センサ123で検出される圧力Pを基に凝縮水Wが排出されているか否か、すなわち凝縮水Wが溜まっているか否かを判断する(S6)。
図5に示すように、バイパス弁154を開状態にしたのち圧力センサ123で検出された圧力が第1の圧力P
1以上かつ定常圧力P
0以下に維持される場合(P
0≧P≧P
1)、制御部18はバイパス弁154を開状態に維持する。
【0038】
検出された圧力Pが第1の圧力P
1を下回った場合(P
1>P)、凝縮水Wが溜部122から排出されてしまい吸気がバイパス通路15から放出されようとしていることを意味する。また、
図6に示すように、バイパス弁154を開状態にしたことによって検出された圧力Pが定常圧力P
0よりも上昇した場合(P>P
0)、バイパス通路15が逆流していることを意味する。圧力Pが第1の圧力P
1を下回った場合(P
1>P)及び圧力Pが定常圧力P
0よりも上昇した場合(P>P
0)のいずれも凝縮水Wを排出することはできないので、制御部18はバイパス弁154を閉状態にする(S7)。バイパス弁154が閉じられると、低圧EGR弁164が閉じられているか判断するS2へ戻り、S2からS7を繰り返す。
【0039】
また、本実施形態の内燃機関1は、アクセルスイッチ170を備えているので、これをトリガーとして凝縮水Wを排出するか否かを判断してもよい。バイパス弁154を開いたことによって吸気管路12の圧力Pが低下するとエンジン11の出力も低下する。したがって、アクセル17Aが踏まれている間にバイパス弁154を開くと、アクセル17Aを踏んだ量に応じた出力が得られない。そこで、S2において低圧EGR弁164が開状態であると判断された場合、アクセルスイッチ170がオンであるか否か、すなわち、運転者によってアクセル17Aが踏み込まれているか否かを判断(S8)する。
【0040】
具体的には、S8において、アクセルスイッチ170がオフ、すなわちアクセル17Aが踏まれていない場合、バイパス弁154を開状態にする(S5)。S8においてアクセルスイッチ170がオン、すなわちアクセル17Aが踏まれている場合、バイパス弁154が閉状態であるか判断(S9)する。バイパス弁154が開状態であった場合、バイパス弁154を閉状態にし(S10)、判断A(S11)へ移行する。また、S9において、バイパス弁154が閉状態であった場合、そのまま判断A(S11)へ移行する。
【0041】
判断A(S11)は、アクセル17Aが長時間踏み込まれた状態である場合、例えば高速道路を走行するなど、アクセルスイッチ170がオフになるまでの期間が長く、溜部122の容積を超えて許容量以上に凝縮水Wが溜まる恐れがある場合を想定して用意されている。本実施形態の内燃機関1は、圧力センサ123及び流量センサ124の他に、エンジン11のシリンダ内の圧力を測定する筒内圧センサを備えている。制御部18は、各センサの検出値を基に判定するための2つの条件を判断A(S11)に設定している。
【0042】
第1の条件では、圧力センサ123によって計測された圧力Pが定常圧力P
0であるのに流量センサ124によって計測された流量Vがエンジン11の出力に応じた定常流量V
0よりも低下したことを検出する。凝縮水Wが溜部122の許容量を超えて吸気管路12に溜まることによって、流路断面が狭められて流量Vが減少すると予想される。したがって、
図7に示すように、流量Vが定常流量V
0よりも低下して閾値V
1よりも減少した場合、制御部18は、これをトリガーにしてバイパス弁154を開状態にする(S5)。本実施形態における閾値V
1は、エンジン11の動作を維持するための流量下限値として設定される。
【0043】
また、第2の条件では、エンジン11の圧縮行程中の筒内圧センサの値が設定圧力値に対して異常に上昇したことを検出する。溜部122の許容量を超えて凝縮水が吸気管路に溜まった結果、その一部がシリンダ内へ侵入することによって筒内圧センサの値が設定圧力値に対して異常に上昇すると考えられる。したがって、筒内圧センサの値が異常に高くなった場合、制御部18は、これをトリガーにしてバイパス弁154を開状態にする(S5)。
【0044】
判断Aにおける第1の条件及び第2の条件は、いずれも溜部122の容積を超えて許容量以上に凝縮水が溜まった場合を意味している。したがって、この判断Aは、溜部122の貯水量を検出する貯水量検出手段として機能し、検出及び判定に寄与する圧力センサ123、流量センサ124、筒内圧センサおよび制御部18などによって貯水量検出手段が構成される。そしてこの貯水量検出手段は、水位センサなどの専用の装置を必要としていない点において、内燃機関を複雑化しない。
【0045】
このように制御部18は、アクセルスイッチ170がオンであることに関係なく、判断A(S11)によってバイパス弁154を開状態にし(S5)、凝縮水Wを強制排出する。判断A(S11)において、流量Vが定常流量V
0であり、かつ、筒内圧センサの値が設定圧力値である場合、制御部18は、凝縮水Wが溜部122の許容量を超えていないと判断し、アクセルスイッチ170がオフになるまで、S8からS11を繰り返す。そして、アクセルスイッチ170がオフになった場合、これをトリガーにしてバイパス弁154を開状態にする(S5)。
【0046】
制御部18は、判断A(S11)を経てバイパス弁154を開状態(S5)にした場合、圧力センサ123の計測値を基に判断(S6)する。圧力Pが定常圧力P
0以下かつ第1の圧力P
1以上である場合、再び判断A(S12)において、第1の条件または第2の条件を満たすか判定する。第1の条件又は第2の条件のどちらかを満たす場合、凝縮水Wが排出されていないことを意味するので、S6に戻って圧力センサ123の計測値を判定する。
【0047】
凝縮水Wの排出が進み、S12における判断Aの第1の条件及び第2の条件を満たさなくなった場合、エンジン11の出力を低下させる程度に凝縮水Wが溜まっていないことを意味する。そこで、制御部18は、S8に戻ってアクセルスイッチ170がオンであるか確認する。アクセルスイッチ170がオンである場合は、バイパス弁154が閉じられているか確認する(S9)。バイパス弁154が開かれているとエンジン11の出力が低下するのでこれを防止するべくバイパス弁154を閉状態にする(S10)。S8においてアクセルスイッチ170がオフである場合、バイパス弁154を開状態にする(S5)。
【0048】
さらに、本実施形態の場合、S8においてアクセルスイッチ170がオフであった場合、効率よく凝縮水Wを排出するために第1のオプションPO1を設けてもよい。第1のオプションOP1では、
図4に示すようにブレーキ装置が作動しているか確認(S13)する。ブレーキ装置は、少なくともエンジンブレーキとフットブレーキとを含む。制御部18は、フットブレーキが作動していることを検出するために、ブレーキペダルに設置されて踏込量を検出するブレーキセンサ190に接続される。ブレーキセンサ190の信号はECU(Engine
Control Unit)を介して取得してもよい。エンジンブレーキが作動していることは、ECUから取得してもよいし、エンジン11の回転数の減衰率などから算出してもよい。
【0049】
第1のオプションOP1において制御部18は、エンジンブレーキの作動、または、フットブレーキの作動を検出する(S13)と、ブレーキ作動量の増加に伴い、高圧スロットル171を絞り(S14)、インタークーラ121の下流の吸気管路12内の圧力を増大させる。
【0050】
高圧スロットル171を絞った状態で、バイパス弁154を開状態にする(S5)ことによって、インタークーラ121の下流の吸気管路12内の圧力、すなわち溜部122における圧力が増大し、凝縮水Wを排出することが促進される。または、過給機14がタービン側に可変ベーン141を備えるターボチャージャである場合、制御部18は、上記と同様に、ブレーキ作動量の増加に伴い、エンジン11の運転状態に応じた位置よりも可変ベーン141を絞る(S14)。可変ベーン141を絞ると、過給機14のタービンの回転数が増大する。その結果、タービンに連動するコンプレッサによって吸気側の圧力が増大するので、高圧スロットル171を絞った場合と同様に、インタークーラ121の下流の吸気管路12内の圧力、すなわち溜部122における圧力が増大し、凝縮水Wを排出することが促進される。ブレーキ装置が使用されている場合、ポンプロスなどによってエンジン11の出力が低下しても、運転性能(ドライバビリティ)に影響はない。このように、高圧スロットル171や可変ベーン141を絞って、バイパス通路15の上流側の圧力を高くすると、凝縮水Wの排出効率が高まる。第1のオプションOP1は、S13及びS14を含む。
【0051】
制御部18は、S6において圧力センサ123で検出された圧力Pが第1の圧力P
1を下回ったことによって凝縮水Wが排出されたことを確認する。圧力Pが第1の圧力P
1を下回ったことを検出すると、制御部18は、S7においてバイパス弁154を閉状態にし、S14の操作を解除(S15)する、すなわち、絞った高圧スロットル171又は可変ベーン141をエンジン11の出力に応じた位置状態であるもとの状態に戻す。
【0052】
また、S6において圧力Pが第1の圧力P
1以上で定常圧力P
0以下である間、つまり凝縮水Wを排出している間に、S12の判断Aによって第1の条件及び第2の条件のいずれでもなくなった場合、S8でアクセルスイッチ170がオンであると判定された場合にも、S9及びS10を経てバイパス弁154が閉状態にされると、S14の操作を解除する(S17)。
【0053】
アクセルスイッチ170がオフになったことによってS5でバイパス弁154を開状態にする制御フローを経る場合、S11及びS12における判断Aの第1の条件または第2の条件を満たす判定がされていた場合であっても、S6を経ることによって凝縮水Wは吸気管路12の内部のみならず溜部122からも排出される。溜部122から凝縮水Wが排出されてしまえば、しばらく吸気管路12が凝縮水Wで塞がることはない。したがって、制御部18は、判断Aの判定を解除し(S16)、S2へ戻る。
【0054】
S8においてアクセルスイッチ170がオンであり、S11において判断Aの第1の条件又は第2の条件が満たされた場合、S5でバイパス弁154が開状態にされて吸気管路12内の圧力Pが低下したことに伴い、エンジン11の出力は少し低下する。そこで、この場合のエンジン11の出力低下を補完するための制御として第2のオプションOP2を加えてもよい。
【0055】
本実施形態ではS5において凝縮水Wの排出を開始した後、圧力Pが定常圧力P
0から第1の圧力P
1の間に維持されている間、すなわち凝縮水Wが放出されて吸気管路12の流量Vが定常流量V
0に回復するまでS6とS12を繰り返す間に、第2のオプションOP2を設ける。第2のオプションOP2では
図4に示すように、圧力センサ123によって検出される圧力Pが定常圧力P
0であるか判断(S18)する。定常圧力P
0を維持できている場合は、エンジン11の出力が維持されていることを意味するので、S6に戻る。圧力Pが定常圧力P
0を下回っている場合、第2のオプションOP2では、エンジン11の出力が低下しないように、アクセル17Aの操作に応じた燃料の供給量よりも多い燃料を燃料噴射装置20から噴射させるまたは過給機14の可変ベーン141を絞る(S19)ことによって、圧力Pを増加させることを試みる。制御部18は、S19の結果、圧力Pが増加したか確認(S20)し、前よりも増加している場合S18に戻って、圧力Pが定常圧力P
0であるか確認する。圧力Pが増加していない場合、S6に戻る。第2のオプションOP2は、S18からS20を含む。
【0056】
燃料噴射量を増加させたり可変ベーン141を絞ったりするS19を経ている場合、制御部18は、凝縮水Wが排出されてS7においてバイパス弁154を閉状態にしたあと、S15においてS14を解除するときにS19も解除する。S19を経ている場合、S11やS12の判断Aも実施されているので、さらにS16において判断Aの判定をクリアし、S2へ戻る。
【0057】
以上のように構成された本発明の凝縮水排出制御機構によれば、低圧EGRが作動している場合、凝縮水Wを排出するためのバイパス通路15に設置されたバイパス弁154を開状態にし、吸気管路12に設置されている圧力センサ123によって検出される圧力Pの変化を基に、凝縮水Wを確実に排出することができる。このとき、凝縮水Wの排出中であることを示す第1の圧力P
1を、圧力Pが下回った場合にバイパス弁154を閉弁状態にすることで、凝縮水Wが排出され切った後に続いて吸気管路12中の吸気が排出されてしまうことを防止できる。
【0058】
また、本発明の凝縮水排出制御機構によれば、バイパス通路15の下流端を排気管路13に接続する場合、後処理装置131,132が設置された位置よりも下流にバイパス通路15を連通させる。後処理装置131,132は、排気ガス中のNOx,SOx,HCなどの化学物質を処理する触媒を内蔵している。触媒は、排気ガスの熱によって活性温度に加熱されることで、触媒反応を行うことができる。
【0059】
したがって、バイパス通路15を後処理装置131,132の上流に連通させ、触媒の上流に凝縮水Wを排出すると、排気ガスの熱が凝縮水Wを気化させるために消費され、触媒の温度を低下させてしまう。触媒の活性温度を下回ると触媒反応が抑制され、本来の機能を果たせなくなる。また、触媒がセラミックス製である場合、凝縮水Wによって急冷されると割れる恐れもある。
【0060】
本発明の凝縮水排出制御機構によれば、バイパス通路15は、後処理装置132の下流側に連通しているので、触媒反応を阻害することはない。また、圧力センサ123によって圧力Pが第1の圧力P
1以下になったことを検出し、直ちにバイパス弁154を閉状態にするので、低圧EGR管路162によって吸気管路12へ還流させた排気ガスの一部が、バイパス通路15を通って排出される心配がない。
【0061】
なお、
図4に示したフローチャートでは、低圧EGR弁164が閉じられていない、つまり低圧EGRが作動している場合に凝縮水Wを排出するか否かの制御を行っている。これは、低圧EGRが作動していると凝縮水Wが増えることを考慮したためである。したがって、
図4に示したフローチャートのS2を省略し、低圧EGRが作動しているか作動していないかにかかわらずバイパス弁154を開状態にして凝縮水Wの有無を確認することも本発明に含まれる。その場合、
図4に示したフローチャートのS2において、凝縮水排出が必要であるか否か判定し、不要である場合はS3へ、必要である場合はS5へそれぞれ進むようにすればよい。凝縮水の排出が必要であるか否かは、内燃機関1を始動してからの経過時間やアクセルが連続して踏み込まれている時間を基に判断してもよい。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 内燃機関の吸気管路に設けられた過給機と、前記過給機の下流に設置されたインタークーラと、前記インタークーラの下流の前記吸気管路内の圧力を測定する圧力センサと、前記インタークーラの下流の前記吸気管路内に設置され前記インタークーラによって結露した凝縮水を貯留する溜部と、前記溜部に連通し前記凝縮水を排出するバイパス通路と、前記バイパス通路に設置されるバイパス弁と、前記バイパス弁及び前記圧力センサに接続され、前記バイパス弁を開状態にした場合に前記圧力センサによって計測される前記吸気管路内の圧力の変化を基に前記溜部における前記凝縮水の排水状態を判定する制御部とを備える凝縮水排出制御機構。
[2] 前記制御部は、前記バイパス通路を通って前記凝縮水が排出される場合の前記吸気管路内の圧力として第1の圧力を設定し、前記圧力センサで検出された圧力が前記第1の圧力に維持される間は前記バイパス弁を開状態に維持し、前記圧力センサで検出された圧力が前記第1の圧力を下回った場合は前記バイパス弁を閉状態にすることを特徴とする[1]に記載の凝縮水排出制御機構。
[3] 前記制御部は、前記内燃機関の運転状態によって決定される前記吸気管路内の定常圧力を設定し、前記バイパス弁を開状態にしたときに前記圧力センサによって検出された圧力が前記定常圧力を超えた場合に前記バイパス弁を閉状態にすることを特徴とする[1]または[2]に記載の凝縮水排出制御機構。
[4] 前記制御部は、前記バイパス弁を開状態にしている間は前記インタークーラの下流の前記吸気管路内の圧力を増大させることを特徴とする[1]から[3]のいずれか1つに記載の凝縮水排出制御機構。
[5] 前記内燃機関は、前記吸気管路に設置され前記制御部に接続されたスロットルと、前記スロットルの開度を調整するアクセルと、前記制御部に接続されて前記アクセルが操作されたオン状態及び操作されないオフ状態を検出するアクセルスイッチとを備え、前記制御部は、前記アクセルスイッチがオフ状態である間に前記バイパス弁を開状態にすることを特徴とする[1]から[4]のいずれか1つに記載の凝縮水排出制御機構。
[6] 前記内燃機関は、前記溜部の貯水量を検出する貯水量検出手段を備え、前記制御部は、前記アクセルスイッチがオン状態であっても前記貯水量検出手段により前記溜部の貯水量が所定値を超えたと判断したとき前記バイパス弁を開状態にすることを特徴とする[5]に記載の凝縮水排出制御機構。
[7] 前記内燃機関は、前記制御部に接続されて前記アクセルの操作に応じて燃料の供給量を調整する燃料噴射装置を備え、前記制御部は、前記バイパス弁を開状態にするとともに、前記アクセルの操作に応じた燃料の供給量よりも多い燃料を前記燃料噴射装置で供給することを特徴とする[6]に記載の凝縮水排出制御機構。
[8] 前記内燃機関は、後処理装置が設置された排気管路を有し、前記バイパス通路は、前記後処理装置よりも下流の前記排気管路に連通していることを特徴とする[1]から[7]のいずれか1つに記載の凝縮水排出制御機構。
[9] 前記内燃機関は、前記過給機の下流の排気管路から、前記インタークーラよりも上流の前記吸気管路へ、排気ガスの一部を還流させる排気ガス還流通路を備えることを特徴とする[1]から[8]のいずれか1つに記載の凝縮水排出制御機構。