(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記ワークに対し実際に研削加工する前に、少なくとも前記砥石操作部を制御して、前記ワーク及び前記ドレスに対し所定の余裕隙間をもった試し動作を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の研削加工装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載のものはいずれも、ティーチング作業の効率化、例えば大型の軸受軌道輪の研削加工において段取り替えなどにおける寸法調整の効率化については考慮されておらず、また、ティーチング作業の不要化の技術的手段について具体的に提示するものではない。また、上記特許文献3のものは、インプロゲージを用いるものであり、検出できる面が一面だけであり、大型のワークでは精度が低下する、又は段取り性が悪いなど改善の余地がある。
【0007】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば、軸受軌道輪などのワークに対する研削加工において、大型のものであってもワークを一度設置すれば装置を停止することなく一連の研削加工を自動で行い、ティーチング作業を不要にして作業の簡便化(スキルレス化)及び高精度化を図ることができる研削加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)ワークを保持すると共に、ワークの軸線回りにワークを回転駆動するワーク回転テーブル部と、ワーク回転テーブル部に保持されたワークの位置及び形状を検出するワーク検出部と、砥石を保持すると共に、砥石の軸線回りに砥石を回転駆動する砥石回転部と、先端部に砥石回転部が固設され、砥石を移動させる砥石操作部と、ドレスを有し、砥石に対して仕上げドレスを行う砥石ドレス部と、記憶部を有すると共に、ワーク回転テーブル部、ワーク検出部、砥石回転部、砥石操作部、砥石ドレス部の動作をそれぞれ制御する制御部と、を備える研削加工装置であって、ワーク検出部は、接触子を有し、接触子をワークに接触させることでワークの位置及び形状を検出し、砥石操作部はサーボモータを有し、砥石操作部のサーボモータが駆動することで砥石を移動させ、制御部の記憶部には、ワークの、ワーク基準原点を基準とした位置形状情報と、砥石の、砥石基準原点を基準とした位置形状情報と、砥石回転部での砥石の取付位置情報と、砥石操作部での砥石回転部の取付位置情報と、砥石操作部の、所定の基準座標系を基準とした座標系情報と、砥石ドレス部の、所定の基準座標系を基準とした座標系情報と、の座標系関連情報群が格納され、
砥石基準原点は、所定の治具によって先端位置が位置出しされるドレスにより砥石をドレスすることにより設定され、制御部は、記憶部の座標系関連情報群、及び砥石操作部のサーボモータの駆動情報に基づき、ワーク、砥石、及びドレスそれぞれの座標系を統合して砥石操作部を制御することにより、砥石の位置決めを行うことを特徴とする研削加工装置。
(2)記憶部には、ワークの目標形状情報が更に格納されており、ワーク検出部は、ワークの現形状を検出し、制御部は、目標形状情報と、ワーク検出部が検出した現形状と、を比較してワークに対する残研削加工量を算出して砥石操作部を制御することを特徴とする(1)に記載の研削加工装置。
(3)砥石の移動は並進移動のみならず回転移動も含み、制御部は、砥石の回転移動をも考慮して砥石操作部を制御することを特徴とする(1)又は(2)に記載の砥石加工装置。
(4)砥石ドレス部はサーボモータを有し、砥石ドレス部のサーボモータが駆動することによりドレスを移動させ、砥石ドレス部のドレスの移動は回転移動を含み、制御部は、ドレスの回転移動をも考慮して砥石操作部及び砥石ドレス部を制御することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の研削加工装置。
(5)制御部は、ワークに対し実際に研削加工する前に、少なくとも砥石操作部を制御して、ワーク及びドレスに対し所定の余裕隙間をもった試し動作を行うことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の研削加工装置。
(6)ワークは、大型の軸受軌道輪であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1つに記載の研削加工装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の研削加工装置によれば、ワーク検出部は、接触子を有し、接触子をワークに接触させることでワークの位置及び形状を検出し、砥石操作部はサーボモータを有し、砥石操作部のサーボモータが駆動することで砥石を移動させ、制御部の記憶部には、ワークの、ワーク基準原点を基準とした位置形状情報と、砥石の、砥石基準原点を基準とした位置形状情報と、砥石回転部での砥石の取付位置情報と、砥石操作部での砥石回転部の取付位置情報と、砥石操作部の、所定の基準座標系を基準とした座標系情報と、砥石ドレス部の、所定の基準座標系を基準とした座標系情報と、の座標系関連情報群が格納され、
砥石基準原点は、所定の治具によって先端位置が位置出しされるドレスにより砥石をドレスすることにより設定され、制御部は、記憶部の座標系関連情報群、及び砥石操作部のサーボモータの駆動情報に基づき、ワーク、砥石、及びドレスそれぞれの座標系を統合して砥石操作部を制御することにより、砥石の位置決めを行う。このため、ワークを装置にセットすれば一連の研削加工を自動で行い、作業者が何らかの作業をすることがないため、ティーチング作業を不要にして作業の簡便化(スキルレス化)を図ることができる。即ち、ワーク、砥石及びドレスの座標系を統合するため、装置からワークを取り外すことなく、研削加工時の砥石の移動量を自動的に決定することができ、また、仕上げドレスも自動的に行うことができる。さらに、ワーク検出部は接触子を用いてワークの位置及び形状を検出するため、複数の面を1つの接触子で検出することができる。これにより、大型のワークであってもワークを一度設置すれば装置を停止し取り出して別途測定する必要がなく研削加工を行うことができ、作業時間及び作業負担の低減化及び高精度化を図ることができる。さらに、複数の砥石を装置に着脱自在に装着できるものとすれば、砥石を適宜変更することができ、例えば複数の面を有する複雑な形状でもワークを取り外すことなく、研削加工を行うことができる。
また、砥石基準原点は、所定の治具によって先端位置が位置出しされるドレスにより砥石をドレスすることにより設定されるので、砥石基準原点が制御部により数値で把握されることになる。これにより、全体座標系での砥石ドレス部及びドレスの位置情報、砥石の軸線の位置情報などの座標系情報も合わせて制御部は数値で把握することができる。
【0010】
また、本発明の研削加工装置によれば、記憶部には、ワークの目標形状情報が更に格納されており、ワーク検出部は、ワークの現形状を検出し、制御部は、目標形状情報と、ワーク検出部が検出した現形状と、を比較してワークに対する残研削加工量を算出して砥石操作部を制御する。このため、一回の仕上げ加工でワークを精度良く加工することができる。
【0011】
また、本発明に研削加工装置によれば、砥石の移動は並進移動のみならず回転移動も含み、制御部は、砥石の回転移動をも考慮して砥石操作部を制御するため、ワークが複雑な形状であっても更に精度良く研削加工を行うことができる。
【0012】
また、本発明の研削加工装置によれば、砥石ドレス部はサーボモータを有し、砥石ドレス部のサーボモータが駆動することによりドレスを移動させ、砥石ドレス部のドレスの移動は回転移動を含み、制御部は、ドレスの回転移動をも考慮して砥石操作部及び砥石ドレス部を制御する。このため、砥石が、例えば傾斜面又は曲面を有する複雑な形状であっても、ドレスが砥石の外周面に対し常に垂直に当たるため、精度の良い仕上げドレスを行うことができる。
【0013】
また、本発明の研削加工装置によれば、制御部は、ワークに対し実際に研削加工する前に、少なくとも砥石操作部を制御して、ワーク及びドレスに対し所定の余裕隙間をもった試し動作を行うため、ワーク情報や砥石情報などの入力ミスによる装置の衝突を未然に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る研削加工装置の各実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、上下(重力)方向をZ軸、左右方向をX軸、Z軸及びX軸に垂直な方向をY軸とした座標系を設定して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
まず、
図1〜
図7を参照して、本発明に係る研削加工装置の第1実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態の研削加工装置10Aは、
図1に示すように、ワークとして大型の軸受内輪(ワーク、軸受軌道輪)1の外周面に対し砥石41をその軸線L
Wに向かって当てて軸受内輪1を研削するものである。なお、本実施形態では、軸受内輪の場合について説明しているが、これに限らず、軸受外輪にも同様な研削加工を行うことができる。
【0018】
この研削加工装置10Aは、
図1及び
図2に示すように、軸受内輪1を保持すると共に、この軸受内輪1をその軸線L
W回りに回転駆動する軸受回転テーブル部(ワーク回転テーブル部)20と、軸受回転テーブル部20に保持された軸受内輪1の位置及び形状を検出する軸受検出部(ワーク検出部)30と、略円筒状の砥石41を保持すると共に、その軸線L
G回りに砥石41を回転駆動する砥石回転部40と、先端部に砥石回転部40が固設され、砥石41を所定の位置及び姿勢に移動させる砥石操作部50と、複数のドレス61を有して、砥石41に対して仕上げドレスを行う砥石ドレス部60と、記憶部71を有すると共に、軸受回転テーブル部20、軸受検出部30、砥石回転部40、砥石操作部50、砥石ドレス部60の動作をそれぞれ制御する制御部70と、を備える。なお、軸受回転部20及び砥石ドレス部60は、例えば、作業場において、所定の距離を置いて隣接した状態でそれぞれ配置される。また、本実施形態の研削加工装置10Aでは、複数の砥石を着脱自在に取り付けられるように構成されている。
【0019】
軸受回転テーブル部20は、主軸テーブル部21と、主軸テーブル21の上面に固設されるチャック部22と、を有し、軸受内輪1はノーズピース23を介してその軸線L
WがZ軸と平行となるようにチャック22に固定される。これにより、軸受内輪1は、軸受回転テーブル部20により保持された状態で回転される。なお、本実施形態では、チャック22は、マグネットチャックとされるが、メカチャックでもよい。
【0020】
軸受検出部30は、砥石操作部50に直接取り付けられており、砥石操作部50の並進回転駆動部53(後述)の片側部から張り出すベース部32と、このベース部32に固設されZ軸方向でスライド移動可能とされる並進駆動部33と、この並進駆動部33の先端部に取り付けられる接触子31と、を有する。接触子31は、いわゆるタッチプローブタイプのものであり、並進駆動部33により軸受内輪1に近づき、その先端が軸受内輪1に接触することでその軸受内輪1の位置及び形状情報を取得する。さらに、本実施形態では、軸受検出部30は、研削加工中において軸受内輪1の現形状を適宜検出して、その現形状の情報も制御部70に出力するように構成されている。
【0021】
なお、主軸回転中心(即ち、軸受回転テーブル部20の軸線L
W)を基準とする原点(ワーク基準原点)O
Wに関する座標系情報は、事前に制御部70の記憶部71に適宜設定されている。また、本実施形態の研削加工装置10Aでは、全体座標系(所定の基準座標系、例えば主軸中心を原点とする座標系)が設定されており、後述するように砥石41の基準原点(砥石基準原点)O
Gなどの位置情報がこの全体座標系を基準として制御部70の記憶部71に記憶保持されている。
【0022】
砥石回転部40は、砥石41を高速且つ高トルクで回転させるスピンドル部42を有し、このスピンドル部42の回転駆動がベルトなどの所定の駆動伝達装置(不図示)を介して砥石41に伝達される。これにより、砥石41はその軸線L
G回りに高速且つ高トルクに回転駆動される。なお、本実施形態では、ビルトインタイプ(直結型)を用いているが、ベルトなどを含む駆動伝達装置を介して回転駆動が伝達してもよい。
【0023】
砥石操作部50は、軸受回転テーブル部20及び砥石ドレス部60の上方で広範囲に亘って移動できるようにX方向に延びるベース部51と、このベース部51上をZ軸方向にスライド移動可能とされる並進駆動部52と、この並進駆動部52に固設され、X軸、Y軸及びZ軸の3軸方向において並進移動可能であり、且つY軸に平行な軸線L
Mに対し回転移動可能とされる並進回転駆動部53と、を有する(
図2参照)。即ち、砥石操作部50は、並進3自由度、回転1自由度の計4自由度の空間自由度を有する。また、砥石操作部50の並進駆動部52により、砥石41は、待機位置(
図1中、右側)、研削加工位置(
図1中、中央)、ドレス加工位置(
図1中、左側)にそれぞれ適宜移動される。さらに、本実施形態では、砥石操作部50は、複数のサーボモータ(不図示)を有して、これらサーボモータが駆動することで、砥石回転部40に取り付けられた砥石41の並進及び回転の移動が実現される。そのサーボモータの駆動情報は制御部70により取得される。なお、砥石41の交換は、砥石操作部50の駆動により砥石41が待機位置に移動した状態で実施される。なお、本実施形態は、並進回転駆動部53を3軸方向の並進移動可能としたが、目標動作に応じて2軸の構成にしてもよい。この場合、構造を簡素化できて、装置コストを低減することができる。
【0024】
砥石ドレス部60は、所定の地面に固設されるベース部62と、ベース部62に立設される柱部63と、柱部63の先端部に配置される複数のドレス61と、を有する。また、ドレス61の表面部にはダイアモンドなどの砥粒が植え付けられている。なお、本実施形態では、砥石ドレス部60は、サーボモータなどの駆動部を有しておらず、複数のドレス61は静置された状態で用いられる。
【0025】
制御部70の記憶部71は、一般的なメモリ装置などで構成されており、この記憶部71には、主軸回転中心を基準とする原点O
Wを基準とした位置形状情報と、砥石41の基準原点(砥石基準原点)O
Gを基準とした位置形状情報と、砥石回転部40での砥石41の取付位置情報と、砥石操作部50での砥石回転部40の取付位置情報と、砥石操作部50の、全体座標系を基準とした座標系情報と、砥石ドレス部60の、全体座標系を基準とした座標系情報と、の座標系関連情報群が格納される。具体的には、軸受内輪1の位置形状情報としては軸受内輪1の外径、内径、幅、溝径、及び溝幅などの情報が挙げられる。また、砥石41の位置形状情報として、砥石径、砥石幅、クイル長さなどが挙げられる。さらに、記憶部71には、軸受内輪1の最終的な目標形状を示す目標形状情報が更に格納されている。
【0026】
ここで、砥石41の基準原点O
Gについて
図3及び
図4を参照して更に説明する。
【0027】
砥石41の基準原点O
Gとして、
図3に示すように、略円筒状の砥石41の下端縁部のうちX軸方向で最も外方に位置する点が用いられる。そして、この点を原点として砥石41の座標系が設定されることになる。本実施形態では、この砥石41の基準原点O
Gを確定させるため、砥石ドレス部60のドレス61の先端位置が所定の治具によって正確に位置出しされている。このため、砥石41をこのドレス61を用いてドレスすることにより、砥石41の基準原点O
Gが制御部70により数値で把握されることになる。これにより、全体座標系での砥石ドレス部60及びそのドレス61の位置情報、砥石41の軸線L
Gの位置情報などの座標系情報も合わせて制御部70により数値で把握されることになる。
【0028】
そして、
図4に示すように、砥石回転部40が軸線L
M周りに回転移動して砥石41の位置姿勢が変更しても、制御部70は砥石41の座標系に対して、例えば、同次変換行列などを用いて座標統合を行い、全体座標系における移動先の砥石41の位置姿勢を算出する。このため、砥石41の適切な動作が実現される。
【0029】
制御部70は、
図1に示すように、演算器(例えばCPU)、バス回路、入出力装置(例えば、キーボード、マウス)などを備え、いわゆる一般的なコンピュータとして構成されており、前述した記憶部71の座標系関連情報群、及び砥石操作部50のサーボモータの駆動情報に基づき、軸受内輪1、砥石41、及びドレス61それぞれの座標系を統合して、砥石操作部50を制御することにより砥石41の位置決めを行う。また、制御部70は、記憶部71に格納された軸受内輪1の目標形状情報と、軸受検出部30が検出した軸受内輪1の現形状と、を比較し、軸受内輪1に対する残研削加工量を算出して砥石操作部50を制御する。また、制御部70は、軸受内輪1に対し実際に研削加工する前に、砥石操作部50を制御して、軸受内輪1及びドレス61に対し所定の余裕隙間をもった試し動作(トレースサイクル)を行う。この試し動作では、通常の動作速度よりも遅い速度で行われる。なお、制御部70には、この試し動作が完了しないと研削加工及び仕上げドレスを行うことができないようにインターロックシステムが組み込まれている。
【0030】
次に、
図5及び
図6に基づいて、研削加工装置10Aを用いた軸受内輪1の外周面の研削加工について説明する。
【0031】
本実施形態では、まず、軸受回転テーブル部20を用いて、軸受内輪1を保持すると共に、この軸受内輪1をその軸線L
W回りに回転駆動する。その後、制御部70は、砥石操作部50を制御することにより、砥石回転部40の砥石41が軸受内輪1の外周面に当たる位置に位置決めして、軸線L
Wに向かって砥石41を徐々に押圧していく。このとき、制御部70は、予め記憶部71の座標系関連情報群を読み込むと共に、砥石操作部50のサーボモータの駆動情報を逐次取得して、軸受内輪1の座標系と砥石41の座標系とを全体座標系を基準として統合して、砥石41の適切な動作を実現している。
【0032】
そして、
図6に示すように、砥石41の外周面を軸受内輪1の外周面に当てた状態で、砥石41を軸受内輪1の回転方向とは逆方向に回転駆動することにより、軸受内輪1の研削加工を開始する。軸受内輪1と砥石41それぞれの表面位置が制御部70により把握されているため、研削加工は自動で行われ、いわゆる「当て込み」が不要となっている。
【0033】
ここで、前述した研削開始から研削終了までのステップについて、
図7を参照しながら更に説明する。
【0034】
研削が開始され(即ち、S1)、砥石41を砥石ドレス部60のドレス61に自動的に当てて、砥石41のドレスを行う(即ち、S2)。このとき、砥石41の基準原点O
Gを確定させる。また、砥石41のドレスを行った回数を制御部70により記録させておき、この回数に応じたドレス61の摩耗量を勘案して、砥石41の基準原点O
Gを確定する。なお、この摩耗量の算出は、例えば、経験則に基づいたマッピングデータを用いて行うことができる。
【0035】
次に、軸受内輪1を装置に設置して、砥石41により軸受内輪1の外周面を粗研削する(即ち、S3)。ここで、砥石41の基準原点O
Gが把握されているため、外部衝撃などの外乱などを無視すれば理想的には1回の研削で目標寸法を得ることができるが、実際には熱膨張などを考慮する必要があり、複数回に分けて研削加工を行う。
【0036】
更に、軸受検出部30の接触子31により、軸受内輪1の各部を測定して現形状を検出する(即ち、S4)。制御部70は、記憶部71から軸受内輪1の目標形状情報を読み出して、この目標形状情報と現形状と差を算出する(即ち、S5)。制御部70が、差があると判断すれば(即ち、S5のYES)、補正値として仕上研削の切り込み量を算出し、この切り込み量に基づいて砥石操作部50の動作を適宜修正する(即ち、S6)。そして、得られた切り込み量に基づき仕上研削を続け(即ち、S7)、S4のステップに戻り、差がないと判断されるまで、S4〜S7のステップを繰り返し実施する。このように、軸受内輪1の研削箇所の寸法を軸受検出部30の接触子31により測定して、目標寸法内にない場合には新たな切り込み量を算出し再度仕上研削を行うという、一連の研削ステップを行う。制御部70が、差がないと判断すれば(即ち、S5のNO)、研削加工を終了する(即ち、S8)。この一連の研削ステップを全ての研削箇所で粗研削を行い、その後各部の寸法を測定して全ての研削箇所で仕上研削を行う。なお、本実施形態では、各研削箇所でこの一連の研削ステップは1回ずつとされるが、これに限らず目標寸法内になるまでループするようにしてもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の研削加工装置10Aによれば、軸受検出部(ワーク検出部)30は、接触子31を有し、接触子31を軸受内輪1(ワーク、軸受軌道輪)に接触させることで軸受内輪1の位置及び形状を検出し、砥石操作部50はサーボモータを有し、砥石操作部50のサーボモータが駆動することで砥石41を移動させ、制御部70の記憶部71には、主軸回転中心を基準とする原点O
Wを基準とした位置形状情報と、砥石41の基準原点(砥石基準原点)O
Gを基準とした位置形状情報と、砥石回転部40での砥石41の取付位置情報と、砥石操作部50での砥石回転部40の取付位置情報と、砥石操作部50の、全体座標系(所定の基準座標系)を基準とした座標系情報と、砥石ドレス部60の、全体座標系を基準とした座標系情報と、の座標系関連情報群が格納され、制御部70は、記憶部71の座標系関連情報群、及び砥石操作部50のサーボモータの駆動情報に基づき、軸受内輪1、砥石41、及びドレス61それぞれの座標系を統合して砥石操作部50を制御することにより、砥石41の位置決めを行う。このため、ワークである軸受内輪1を装置にセットすれば一連の研削加工を自動で行い、作業者が何らかの作業をすることがないため、ティーチング作業を不要にして作業の簡便化(スキルレス化)を図ることができる。即ち、軸受内輪1、砥石41及びドレス61の座標系を統合するため、装置から軸受内輪1を取り外すことなく、研削加工時の砥石41の移動量を自動的に決定することができ、また、仕上げドレスも自動的に行うことができる。さらに、軸受検出部30は接触子31を用いて軸受内輪1の位置及び形状を検出するため、複数の面を1つの接触子31で検出することができる。これにより、大型の軸受内輪1であっても軸受内輪1を一度設置すれば装置を停止し取り出して別途測定する必要がなく研削加工を行うことができ、作業時間及び作業負担の低減化及び高精度化を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態の研削加工装置10Aによれば、記憶部71には、軸受内輪(ワーク、軸受軌道輪)1の目標形状情報が更に格納されており、軸受検出部(ワーク検出部)30は、軸受内輪1の現形状を検出し、制御部70は、目標形状情報と、軸受検出部30が検出した現形状と、を比較して軸受内輪1に対する残研削加工量を算出して砥石操作部50を制御する。このため、一回の仕上げ加工で軸受内輪1を精度良く加工することができる。
【0039】
また、本実施形態の研削加工装置10Aによれば、砥石41の移動は並進運動のみならず回転移動も含み、制御部70は、砥石41の回転移動をも考慮して砥石操作部50を制御するため、軸受内輪1が複雑な形状であっても更に精度良く研削加工を行うことができる。
【0040】
また、本実施形態の研削加工装置10Aによれば、制御部70は、軸受内輪(ワーク)1に対し実際に研削加工する前に、少なくとも砥石操作部50を制御して、軸受内輪1及びドレス61に対し所定の余裕隙間をもった試し動作を行うため、軸受内輪情報や砥石情報などの入力ミスによる装置の衝突を未然に防止することができる。
【0041】
次に、
図8〜
図10を参照して本実施形態に係る変形例について説明する。
【0042】
本変形例では軸受内輪81に軌道溝82が外周面に亘って形成されており、この軌道溝82を研削するものである。本変形例の砥石101は、
図8に示すように、第1円筒部101Aと、この第1円筒部101Aの下端面に固設され、外周面が下方に行くに従い縮径する第2円筒部101Bと、を有する。
【0043】
研削加工を開始するためには、制御部70が記憶部71から軌道溝82を有する軸受内輪81の位置形状情報、及び砥石101の位置形状情報が制御部70により事前に自動的に読み込まれる。そして、軸受内輪81が軸受回転テーブル部20に保持され回転された状態で、制御部70は、記憶部71の座標系関連情報群及び砥石操作部50のサーボモータの駆動情報に基づき、砥石101を軸受内輪81の軌道溝82の底面部82Aに当てて研削する。
【0044】
軌道溝82の底面部82Aの研削加工が終了すれば、
図9に示すように、有底椀状に形成されて、円状底部111Aと、この円状底部111Aの周縁から軸方向に延出した周壁部111Bと、を有する砥石111に交換する。ここでは、砥石111の円状底部111Aが上方に位置するように砥石111を砥石回転部40に取り付けられ、その交換は自動的に行われる。このとき、制御部70は、この砥石111の情報を記憶部71から読み込む。そして、軸受内輪81が回転された状態で、制御部70は、記憶部71の座標系関連情報群及び砥石操作部50のサーボモータの駆動情報に基づき、砥石111の周壁部111Bの端面を軌道溝82の一対の側面部82B,82Bのうち下方に当てて研削する。なお、砥石の交換の度に砥石のドレスを行って、種々の砥石の基準原点O
Gをそれぞれ把握するステップが各面の研削加工前に行われる。
【0045】
さらに、下方の側面部82Bの研削加工が終了すれば、
図10に示すように、砥石111に対し上下逆形状の砥石116に交換する。ここで、砥石116は砥石111と同様な構造とされ円状底部116Aと周壁部116Bとを有するが、この交換は自動で行われるものであるため、予め互いに上下逆の配置とされる砥石111,116が所定の装置に別個にそれぞれ装填配置されている。
【0046】
そして、制御部70は、この砥石116の情報を記憶部71から読み込む。軸受内輪81が回転された状態で、制御部70は、記憶部71の座標系関連情報群及び砥石操作部50のサーボモータの駆動情報に基づき、砥石116の周壁部116Bの端面を軌道溝82の一対の側面部82B,82Bのうち上方に当てて研削する。
【0047】
このように本変形例によれば、軌道溝82を有する軸受内輪81のような複数の面を有する形状であっても、それぞれの加工面に応じて砥石101,111,116などの専用砥石を適宜それぞれ自動的に交換することで、装置から軸受内輪81を取り外すことなく研削加工を自動的に且つ精度良く行うことができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、
図11〜
図13を参照しながら、本発明に係る研削加工装置の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一或いは同等符号を付してその説明を省略或いは簡略化する。
【0049】
本実施形態の砥石131は、
図12に示すように、略円筒状に形成され、その外周面において下部に位置する第1テーパ面部131Aと、第1テーパ面部131Aと連続すると共にその上方に位置する第2テーパ面部131Bと、を有する。第1テーパ面部131A及び第2テーパ面部131Bは、軸方向外方に行くに従い縮径するようにそれぞれ傾斜しており、その傾斜方向は互いに逆方向とされている。また、第1テーパ面部131Aの軸方向寸法は、第2テーパ面部131Bに比べ厚く設定されている。
【0050】
砥石131に対し仕上げドレスする場合には、砥石操作部50は制御部70の指示に基づき、砥石131をドレス加工位置(
図11中、左側)まで移動し、砥石131をドレス61に当てて、砥石ドレス部60は砥石131の仕上げドレスを行う。このとき、制御部70は、砥石131の外周面とドレス61が垂直に当たるように砥石操作部50を指示する。より具体的には、砥石回転部40のスピンドル部42を傾けた状態で並進駆動させ、この姿勢を保持した状態で砥石131をドレス61に当てることで砥石131の斜面を形成する。
【0051】
また、本実施形態では、
図11に示すように、ワークとして一対の軌道溝92,92を有する軸受内輪91が軸受回転テーブル20に設置される。軸受内輪91は、
図13に示すように、内輪91の中央部に大鍔部93が形成され、両端部に一対の小鍔部94,94がそれぞれ形成されており、また、大鍔部93と小鍔部94との間に軌道溝92がそれぞれ形成されている。
【0052】
ここで、この軸受内輪91の大鍔部93に対し研削加工を行うためには、制御部70が記憶部71から軸受内輪91の位置形状情報、及び砥石131の位置形状情報を読み込むよう、制御部70に対し入力装置を用いて外部から指示する。そして、軸受内輪91が軸受回転テーブル部20に保持され回転された状態で、制御部70は、記憶部71の座標系関連情報群及び砥石操作部50のサーボモータの駆動情報に基づき、砥石131の第2テーパ面部131Bを大鍔部93の側面部に当てて研削する。なお、軌道溝92の研削加工は、前述した砥石41のような円筒形状の砥石を用いて行われる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の研削加工装置10Bによれば、大鍔部93及び一対の小鍔部94,94を有する軸受内輪91など、複雑な軸受形状に対しても、装置から軸受内輪91を取り外すことなく研削加工を自動的に且つ精度良く行うことができる。
その他の構成及び作用効果については、上記第1実施形態と同様である。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、砥石ドレス部60が更にサーボモータを有し、この砥石ドレス部60のサーボモータが駆動することによりドレス61を移動させ、また砥石ドレス部60のドレス61の移動は回転移動を含み、そして制御部70は、ドレス60の回転移動をも考慮して砥石操作部50及び砥石ドレス部60を制御するようにしてもよい。この場合には、砥石が、例えば、球状、傾斜面又は曲面を有する複雑な形状であっても、ドレス61が砥石の外周面に対し常に垂直に当たるため、精度の良い仕上げドレスを行うことができる。
例えば、軸受検出部30を砥石操作部50に直接取り付けたが、ツールチェンジャを備える研削加工装置の場合には、無線式にして砥石回転テーブル部20に取り付けるようにしてもよい。