【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔発行者名〕 富士電機株式会社 技術開発本部 〔刊行物名〕 富士時報 〔発行年月日〕 平成24年1月10日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
受信した反力指令信号の示す反力指令値に応じて手動操作受付用のスティックを通じオペレータに知覚させる反力を生成するための反力生成装置が前記スティックに接続されているジョイスティック装置と、
該ジョイスティック装置から離して設置され、前記スティックの入力座標値、または該入力座標値に対応付けられている速度指令値のいずれかに応じ負荷対象物を上昇、停止、または下降させる荷重昇降装置と、
該負荷対象物の動荷重値の時間変化率成分を算出し、該時間変化率成分の存在に応じたパルス反力を生成するための反力指令値を示す反力指令信号を前記反力生成装置に出力するパルス反力制御部と、
前記入力座標値または前記速度指令値の少なくともいずれかを示す速度関連信号を受信し、該入力座標値または該速度指令値の該少なくともいずれかに基づいて、前記反力指令信号が示す前記反力指令値のうち、前記スティックをその中立位置から遠ざける向きの反力を生成する値を判定し、当該値を反力を生成しない値に選択的に置換することにより補正済反力指令値を得て、該補正済反力指令値を示す補正済反力指令信号を出力する反力補正処理部と
を備え、
前記ジョイスティック装置の前記反力生成装置は、前記反力指令信号に代えて前記反力補正処理部からの前記補正済反力指令信号を受信して、前記入力座標値を変化させる向きの反力を前記補正済反力指令値に応じて生成するものであり、
これにより、前記スティックを前記中立位置に近付ける向きに前記反力を生成するものである
負荷対象物のリモートハンドリング装置。
前記パルス反力制御部は、前記反力指令値のうちの前記パルス反力の振幅を指定するための値を前記時間変化率成分に応じた値にした上で、前記反力指令信号を出力するものである
請求項1に記載のリモートハンドリング装置。
受信した反力指令信号の示す反力指令値に応じて手動操作受付用のスティックを通じオペレータに知覚させる反力を生成するための反力生成装置が前記スティックに接続されているジョイスティック装置と、
該ジョイスティック装置から離して設置され、前記スティックの入力座標値、または該入力座標値に対応付けられている速度指令値のいずれかに応じ負荷対象物を上昇、停止、または下降させる荷重昇降装置と、
該負荷対象物の動荷重値が静荷重値からのからの差分として示す偏差量成分を算出し、該偏差量成分の存在に応じた反力指令値を示す反力指令信号を前記反力生成装置に出力する偏差反力制御部と、
前記入力座標値または前記速度指令値の少なくともいずれかを示す速度関連信号を受信し、該入力座標値または該速度指令値の該少なくともいずれかに基づいて、前記反力指令信号が示す前記反力指令値のうち、前記スティックをその中立位置から遠ざける向きの反力を生成する値を判定し、当該値を反力を生成しない値に選択的に置換することにより補正済反力指令値を得て、該補正済反力指令値を示す補正済反力指令信号を出力する反力補正処理部と
を備え、
前記ジョイスティック装置の前記反力生成装置は、前記反力指令信号に代えて前記反力補正処理部からの前記補正済反力指令信号を受信して、前記入力座標値を変化させる向きの反力を前記補正済反力指令値に応じて生成するものであり、
これにより、前記スティックを前記中立位置に近付ける向きに前記反力を生成するものである
負荷対象物のリモートハンドリング装置。
前記反力補正処理部は、前記入力座標値または前記速度指令値の前記少なくともいずれかが前記負荷対象物を停止させるべき値であるときの前記補正済反力指令値を、反力を生成しない値に選択的にさらに置換することにより前記補正済反力指令値を得て前記補正済反力指令信号を出力するものである
請求項1または請求項5に記載のリモートハンドリング装置。
オペレータからの手動操作受付用のスティックにおける一の入力軸の入力座標値を検知する入力座標センサーと、受信した反力指令信号の示す反力指令値に応じて前記スティックを通じ前記オペレータに知覚させる反力を生成するための前記スティックに接続されている反力生成装置とを有するジョイスティック装置と、
前記入力座標センサーから前記入力座標値を示す入力座標信号を受信し、該入力座標値に対応付けられている速度指令値を示す速度指令信号を出力する昇降制御部と、
前記ジョイスティック装置から離して設置され、該速度指令信号を受信し、前記速度指令値に応じ負荷対象物を上昇、停止、または下降させる荷重昇降装置と、
前記負荷対象物の動荷重値を検知可能に装備されている荷重センサーと、
該荷重センサーから該動荷重値を示す動荷重信号を受信し、該動荷重値における前記負荷対象物の静荷重値からの差分である偏差量成分の時間変化率成分、または該動荷重値の時間変化率成分のうちのいずれかを算出し、算出した時間変化率成分の存在に応じたパルス反力を生成するための反力指令値を示す反力指令信号を前記反力生成装置に出力するパルス反力制御部と、
前記入力座標信号または前記速度指令信号の少なくともいずれかと前記反力指令信号とを受信し、前記入力座標値または前記速度指令値の少なくともいずれかに基づいて、前記反力指令信号が示す前記反力指令値のうち、前記一の入力軸における中立位置から前記スティックを遠ざける向きの反力を生成する値を判定し、当該値を反力を生成しない値に選択的に置換することにより補正済反力指令値を得て、該補正済反力指令値を示す補正済反力指令信号を出力する反力補正処理部と
を備え、
前記反力補正処理部は、前記入力座標値または前記速度指令値の前記少なくともいずれかが前記負荷対象物を停止させるべき値であるときの前記補正済反力指令値を、反力を生成しない値に選択的にさらに置換することにより前記補正済反力指令値を得て前記補正済反力指令信号を出力するものである
負荷対象物のリモートハンドリング装置。
オペレータからの手動操作受付用のスティックにおける一の入力軸の入力座標値を検知する入力座標センサーと、受信した反力指令信号の示す反力指令値に応じて前記スティックを通じ前記オペレータに知覚させる反力を生成するための前記スティックに接続されている反力生成装置とを有するジョイスティック装置と、
前記入力座標センサーから前記入力座標値を示す入力座標信号を受信し、該入力座標値に対応付けられている速度指令値を示す速度指令信号を出力する昇降制御部と、
前記ジョイスティック装置から離して設置され、該速度指令信号を受信し、前記速度指令値に応じ負荷対象物を上昇、停止、または下降させる荷重昇降装置と、
前記負荷対象物の動荷重値を検知可能に装備されている荷重センサーと、
該荷重センサーから該動荷重値を示す動荷重信号を受信し、該動荷重値における前記負荷対象物の静荷重値からの差分である偏差量成分を算出し、該偏差量成分の存在に応じた反力指令値を示す反力指令信号を前記反力生成装置に出力する偏差反力制御部と、
前記入力座標信号または前記速度指令信号の少なくともいずれかと前記反力指令信号とを受信し、前記入力座標値または前記速度指令値の少なくともいずれかに基づいて、前記反力指令信号が示す前記反力指令値のうち、前記一の入力軸における中立位置から前記スティックを遠ざける向きの反力を生成する値を判定し、当該値を反力を生成しない値に選択的に置換することにより補正済反力指令値を得て、該補正済反力指令値を示す補正済反力指令信号を出力する反力補正処理部と
を備え、
前記反力補正処理部は、前記入力座標値または前記速度指令値の前記少なくともいずれかが前記負荷対象物を停止させるべき値であるときの前記補正済反力指令値を、反力を生成しない値に選択的にさらに置換することにより前記補正済反力指令値を得て前記補正済反力指令信号を出力するものである
負荷対象物のリモートハンドリング装置。
離れている荷重昇降装置をジョイスティック装置により手動操作するオペレータにスティックを通じ反力を知覚させる、負荷対象物のリモートハンドリング装置の補助装置であって、
前記ジョイスティック装置の手動操作受付用のスティックに接続され、受信した反力指令信号の示す反力指令値に応じた前記反力を生成する反力生成装置と、
前記負荷対象物の動荷重値が静荷重値からの差分として示す偏差量成分の時間変化率成分、または該動荷重値の時間変化率成分のうちのいずれかを算出し、算出した時間変化率成分の存在に応じたパルス反力を生成するための反力指令値を示す反力指令信号を前記反力生成装置に出力するパルス反力制御部と、
前記スティックの入力座標値、または該入力座標値に対応付けられている速度指令値のいずれかに基づいて、前記反力指令信号が示す前記反力指令値のうち、前記スティックをその中立位置から遠ざける向きの反力を生成する値を判定し、当該値を反力を生成しない値に選択的に置換することにより補正済反力指令値を得て、該補正済反力指令値を示す補正済反力指令信号を出力する反力補正処理部と
を備え、
前記ジョイスティック装置の前記反力生成装置は、前記反力指令信号に代えて前記反力補正処理部からの前記補正済反力指令信号を受信して、前記一の入力軸の前記入力座標値を変化させる向きの反力を、前記補正済反力指令値に応じて生成するものであり、
これにより、前記スティックを前記中立位置に近付ける向きに前記反力を生成するものである
リモートハンドリング装置の補助装置。
離れている荷重昇降装置をジョイスティック装置により手動操作するオペレータにスティックを通じ反力を知覚させる、負荷対象物のリモートハンドリング装置のための補助装置であって、
前記ジョイスティック装置の手動操作受付用のスティックに接続され、受信した反力指令信号の示す反力指令値に応じた前記反力を生成する反力生成装置と、
前記負荷対象物の動荷重値が静荷重値からの差分として示す偏差量成分を算出し、該偏差量成分の存在に応じた反力指令値を示す反力指令信号を前記反力生成装置に出力する偏差反力制御部と、
前記スティックの入力座標値、または該入力座標値に対応付けられている速度指令値のいずれかに基づいて、前記反力指令信号が示す前記反力指令値のうち、前記スティックをその中立位置から遠ざける向きの反力を生成する値を判定し、当該値を反力を生成しない値に選択的に置換することにより補正済反力指令値を得て、該補正済反力指令値を示す補正済反力指令信号を出力する反力補正処理部と
を備え、
前記ジョイスティック装置の前記反力生成装置は、前記反力指令信号に代えて前記反力補正処理部からの前記補正済反力指令信号を受信して、前記一の入力軸の前記入力座標値を変化させる向きの反力を、前記補正済反力指令値に応じて生成するものであり、
これにより、前記スティックを前記中立位置に近付ける向きに前記反力を生成するものである
リモートハンドリング装置の補助装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の発明者らは、入力装置としてジョイスティック装置を採用したリモートハンドリング装置を操作するオペレータの実際の作業を分析した。すると従来のリモートハンドリング装置7000にはオペレータの作業負荷の点で改善の余地があることに気づいた。負荷対象物500およびその周囲の映像は、例えば負荷対象物500を上方から鉛直下方につり下げながら昇降させるものである場合、昇降装置730の付近において下方の負荷対象物500を向くカメラ760を通じ表示装置770に提供される。また荷重センサー740の指示値も、その指示値そのものや指示値に応じ変化する表示、例えばグラフやバー表示などが、通常は別の表示装置750やメーター等によりそのオペレータに対して提供される。オペレータは、これらの視覚情報として提供される映像および荷重値を頼りに、離れた位置にある負荷対象物500の時々刻々の状態を観察しかつ推測しながら昇降装置を操作しなくてはならない。
【0007】
ところが実際のカメラ760は、負荷対象物500の周囲の注意を要する位置を常に的確に撮影できるわけではない。例えば何らかの物体により撮影できない死角が生じることもしばしばである。また、荷重センサー740の値が異常となり表示装置750やメーターの指示値が変化したとしても、オペレータがそれに気づくためには、自発的な注意力をその指示値に向け続けていなくてはならない。負荷対象物500の周囲の状況や荷重値がオペレータに視覚情報を通じて提供される限り、過大な作業負荷がオペレータにかかることとなる。
【0008】
この作業負荷を軽減すべく本出願の発明者らは、負荷対象物を昇降させる昇降装置の周囲の物体との接触の状況を、ジョイスティックの操作反力(以下、単に「反力」という)によりオペレータに触覚または力覚を通じて知覚させる手法を検討した。最初に検討したのはバイラテラル制御である。バイラテラル制御では、マスター機器(例えばジョイスティック装置)に入力を行なうことによりスレーブ機器(昇降装置)の動作を手動操作するマスター・スレーブ系において、操作中のオペレータに反力がフィードバックされる。このために、スレーブ機器(昇降装置)からマスター機器(ジョイスティック装置)に反力の信号を伝える信号経路を通じてスレーブ側からマスター側に信号が伝達される。典型的には、例えばオペレータには負荷対象物の荷重値に比例した力として上記反力が伝えられる。
【0009】
しかしながら、本出願の発明者らがバイラテラル制御の適用を検討したところ、例えば原子力発電設備において用いられる昇降装置に従来のバイラテラル制御を適用してもオペレータの実際の作業負荷は十分には軽減されないことが判明した。この問題は、昇降装置のバイラテラル制御を、昇降方向だけではなく、昇降方向に直交する横方向や、ねじれの自由度まで反力を再現する多自由度のものとしても同様であった。
【0010】
本発明は、上記問題の少なくともいくつかを解決することを課題とする。本発明は、負荷対象物のリモートハンドリング装置において適切な情報に基づく適切な反力をオペレータに知覚させることにより、リモートハンドリング装置による作業負荷を軽減させるとともに、当該リモートハンドリング装置それ自体の発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者らは、原子力発電設備のリモートハンドリング装置の場合の対象物すなわち負荷対象物の特質と作業とのそれぞれの特質のために、バイラテラル制御による効果が限定的なものとなっていることに気づいた。つまり、まず負荷対象物の特質として、原子力発電設備にて扱われる負荷対象物は、例えば燃料集合体などを含む場合、極めて慎重かつ繊細な取り扱いを要する負荷対象物である。しかも、その負荷対象物は周囲に他の物体が存在する位置にて昇降させる必要がある。したがって、負荷対象物が周囲の物体に触れたことによる軽微なアタリといったわずかな衝撃力や、周囲の物体に触れたまま引き上げたり下降したりする昇降動作が乗じてしまうコスレといったわずかな摩擦力をオペレータに確実に知覚させなくてはならない。また、原子力発電設備のリモートハンドリング装置が利用される作業の特質は、オペレータには高い注意力が要求されることである。オペレータは、上述した負荷対象物のアタリやコスレ(以下、「接触情報」と呼ぶ)以外にも、時々刻々の様々な情報に接しながら作業を行なう必要がある。
【0012】
バイラテラル制御により生成される反力の効果が限定的となるのは、これらの負荷対象物の特質および作業の特質のためである。つまり、原子力発電設備にて注意が向けられるべき負荷対象物の周囲の物体との接触情報の繊細さは、たとえバイラテラル制御を導入したとしても変わらず、僅かな反力を間違いなく知覚することができるような繊細な注意力がオペレータには常時要求される点も何ら改善されない。この事情は、たとえ荷重値に正確に比例した反力をすべての自由度で生成できたとしても大差ない。原子力発電設備におけるリモートハンドリング装置においてオペレータの作業負荷を軽減させる効果はバイラテラル制御のみでは不十分である。
【0013】
そこで本出願の発明者らは、負荷対象物の接触情報を信号処理により選択すること、および、接触情報を強調した反力または警告となる反力として表現してオペレータに高い確実性をもって知覚させること、の二つに着目した。そしてオペレータの作業負荷を軽減させることが可能なリモートハンドリング装置およびリモートハンドリング装置の補助装置の構成を案出し、その評価システムにおける有用性を確認することにより、本出願の発明を完成した。
【0014】
本出願のある態様においては、受信した反力指令信号の示す反力指令値に応じて手動操作受付用のスティックを通じオペレータに知覚させる反力を生成するための反力生成装置が前記スティックに接続されているジョイスティック装置と、該ジョイスティック装置から離して設置され、前記スティックの入力座標値、または該入力座標値に対応付けられている速度指令値のいずれかに応じ負荷対象物を上昇、停止、または下降させる荷重昇降装置と、該負荷対象物の動荷重値の時間変化率成分を算出し、該時間変化率成分の存在に応じたパルス反力を生成するための反力指令値を示す反力指令信号を前記反力生成装置に出力するパルス反力制御部とを備える負荷対象物のリモートハンドリング装置が提供される。
【0015】
本出願のある態様においては、負荷対象物の動荷重値が静荷重値からのからの差分として示す偏差量成分を算出し、該偏差量成分の存在に応じた反力指令値を示す反力指令信号を前記反力生成装置に出力する偏差反力制御部を、上記パルス反力制御部に代え、または、上記パルス反力制御部とともに備える負荷対象物のリモートハンドリング装置も提供される。
【0016】
本出願において、ジョイスティック装置とは、例えばレバーまたは操縦桿を有している可動部(以下「スティック」と呼ぶ)を備えている、オペレータが掌により直接触れて操作する手動操作入力用の入力装置をいう。通常は、スティックの少なくとも一つの角度が入力軸となって、その入力軸の入力座標値が電気信号として伝達される。
【0017】
荷重昇降装置とは、電動モーター等の動力発生装置からの動力をギアまたは油圧などの適当な動力機構により適宜変換して負荷対象物を昇降させることが可能であり、制御された速度により負荷対象物を上昇、停止、または下降させることが可能な任意の装置を含んでいる。そして、本出願では負荷対象物の上昇、停止、または下降の速度を制御するために、ジョイスティック装置の入力座標値を直接または間接的に反映した速度指令値が参照される。
【0018】
動荷重値とは時間に依存した荷重値であり、静止している負荷対象物の場合の静荷重値と同一となる。時間とともに変化する荷重値には、加減速に伴う加速度を生じさせる力に加え、接触情報の手がかりとなる、周囲の物体とのアタリ(衝撃)やコスレ(摩擦)による荷重値の変動量を含んでいる。例えば、負荷対象物の動荷重値は、負荷対象物と周囲の物体とのすべてが静止していれば静荷重値そのものである。また、一定の速度(等速)で上昇している負荷対象物が静止している周囲の物体に当たると、その衝撃による力の成分は、少なくともその瞬間においては静荷重値から増大させるような波形となって検知される。さらに、等速で上昇している負荷対象物が静止している周囲の物体に対しこすれると、その摩擦力の成分は、荷重値を静荷重値から継続的に増大させるような波形となって検知される。負荷対象物が下降している場合はこれらの逆である。なお、本出願における動荷重値は、重力方向の成分が関心の対象となっている。また、アタリ(衝撃)やコスレ(摩擦)との表現は、負荷対象物の昇降操作において生じうる典型的な現象を説明するためのものに過ぎない。本発明の各態様は、信号処理またはデータ処理のみに基づいて検知される任意の現象を、それをどのように表現するかを問わず、対象とすることができる。
【0019】
時間変化率成分とは端的には時間微分値である。本出願においてこの時間変化率は、上記動荷重値の時間変化率である。実施上は、動荷重値の静荷重値からの差分である偏差量成分をいったん求め、その偏差量成分の時間変化率として算出される場合もある。
【0020】
また、時間変化率や偏差量成分の存在とは、これらの値が非ゼロの値を有していることを意味している。その典型例は、各値または各値の絶対値が適当な閾値と比較されて有意な値といえると判定されることである。
【0021】
本出願のある態様は、より詳細な構成を有する態様や、また、既設のリモートハンドリング装置に追加する補助装置の態様により本発明が実施されることもある。
【発明の効果】
【0022】
本発明のいずれかの態様においては、オペレータの作業負荷を軽減させることが可能なリモートハンドリング装置またはその補助装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るリモートハンドリング装置およびその補助装置の実施形態を図面を参照して説明する。当該説明に際し特に言及がない限り、全図にわたり共通する部分または要素には共通する参照符号が付されている。また、図中、各実施形態の要素のそれぞれは、必ずしも互いの縮尺比を保って示してはいない。
【0025】
[1 第1実施形態]
[1−1 リモートハンドリング装置の概略構成]
図2は、本実施形態におけるリモートハンドリング装置1000の構成を示す概略構成図である。また、
図3は、荷重値の変化とそれに応じてリモートハンドリング装置1000において生成される反力を例示する説明図である。本実施形態のリモートハンドリング装置1000は、ジョイスティック装置110、昇降制御部120、荷重昇降装置130、および荷重センサー140を備えている。
【0026】
ジョイスティック装置110は、入力座標センサー114と反力生成装置116とを有している。入力座標センサー114は、オペレータからの手動操作受付用のスティック112における一の入力軸の入力座標値を検知する。また、反力生成装置116は、スティック112を通じオペレータに知覚させる反力を、受信した反力指令信号SRFまたは補正済反力指令信号SRF−Mの示す反力指令値に応じて生成するためのものであり、スティックに接続されている。なお、典型的なジョイスティック装置110には、スティック112を中立位置に対して戻す向きの力を作用させるバネなどの機構(図示しない)が備わっており、オペレータが手をスティック112から離すと直ちにスティック112が中立位置に戻るようになっている。また、オペレータから見て例えば前後の入力軸と左右の入力というように、複数の入力軸を有するジョイスティックを採用したとしても、負荷対象物500の昇降に対応付けされるのは通常はいずれか一の入力軸である。
【0027】
昇降制御部120は、入力座標センサー114から入力座標値を示す入力座標信号SPを受信し、入力座標値に対応付けられている速度指令値を示す速度指令信号SVを出力する。昇降制御部120は例えばPLC(programmable logic controller)やコンピュータなど、信号の入出力が可能なブログラム可能機器を動作させるためのソフトウエアとして実装される。
【0028】
荷重昇降装置130はジョイスティック装置110から離して設置されている。荷重昇降装置130は速度指令信号SVを受信し、速度指令値に応じ、例えば荷重モーター132等の動力を利用して負荷対象物500を上昇、停止、または下降させる。この速度指令値は昇降のための軸における速度値そのものまたは当該得度値に換算可能な値である。
【0029】
そして荷重センサー140が負荷対象物500の動荷重を検知可能に装備されている。荷重センサー140は、時々刻々の荷重値を測定するための十分な応答性を備えている。
【0030】
[1−2 反力制御部100(概要)]
リモートハンドリング装置1000にはさらに反力制御部100が備わっている。反力制御部100は、動荷重値を示す荷重信号SWを入力として、反力生成装置116に与える反力指令信号SRFを出力する。ここで、荷重信号SWは、表示装置150において動荷重値を示す信号として従来から利用されている信号である。反力制御部100は入力座標センサー114からの入力座標信号SPまたは昇降制御部120からの速度指令信号SVの少なくともいずれかを入力として利用する。入力座標信号SPまたは速度指令信号SVのうちのいずれかの信号は反力の向きを制御するために利用される。また、リモートハンドリング装置1000には、カメラ760および表示装置770と同様の映像撮影・表示装置による負荷対象物500の視覚的な確認手段が備わっている(
図2には図示しない)。そして、本実施形態のリモートハンドリング装置1000は、荷重信号SWに基づいて負荷対象物500の二種類の接触状態に合わせて別々の反力を生成する。
【0031】
[1−2−1 反力制御部による接触の検出と強調]
本実施形態における反力制御部100では、負荷対象物500によるアタリ(衝撃)とコスレ(摩擦)を、荷重信号SWの信号波形に着目して検出する。本出願の発明者らは、アタリが荷重信号SWの時間変化率として検知可能なこと、および、コスレが荷重信号SWの静荷重値からの差分である偏差量成分として検知可能なことを確認している。
【0032】
図3(a)は負荷対象物500を一定の速度で上昇させている場合のある期間の動荷重W(t)を示す説明図である。動荷重値W(t)は荷重センサー140からの荷重信号SWが示す時間依存波形である。動荷重値W(t)は実際には負荷対象物500に作用する力を時々刻々示す。
図3(a)では、説明のための典型例として、弱いアタリA、強いアタリB、コスレC、アタリおよびコスレDに応じた時間変化波形として動荷重値W(t)を図示している。
図3(b)は動荷重値W(t)の時間変化率、つまり負荷対象物500からの動荷重値W(t)を時間tにより微分したdW/dtの波形である。弱いアタリAの直前までは一定の速度で負荷対象物500が上昇しているため、動荷重値W(t)は静荷重値W0の値である。その後の時間変化率により、例えば適当な閾値TH1との大小比較を行なうことにより、弱いアタリA、強いアタリB、アタリおよびコスレDが検知可能である。時間変化率が負となる場合には、負の値の閾値TH2を利用する。また、
図3(c)は、偏差量成分、つまり、動荷重値W(t)と静荷重値W0の差分ΔW(t)を示している。この差分ΔWは、弱いアタリA、強いアタリB、コスレC、アタリおよびコスレDのすべてにおいて0でない値となる。この差分ΔWからは、例えば適当な閾値TH3との大小比較をすることにより、コスレCやアタリおよびコスレDを検出することが可能である。この場合にも、負の偏差を検知するには負の値の閾値TH4を利用する。
【0033】
図2に戻ると、反力制御部100は、アタリとコスレの二つの接触状態それぞれに対して別々の反力を生成する制御を行なう。その際、本実施形態における反力制御部100では、アタリとコスレのそれぞれをそのまま反力に反映させるのではなく、スティック112を通じてオペレータが知覚しやすいように強調する処理も行なう。
【0034】
[1−2−1−1 時間変化率によるパルス反力の生成]
具体的には、アタリに対応させる反力のために、反力制御部100は、パルス反力と呼ぶ孤立した反力を知覚させるパルス状の反力を生成する。このための処理は、反力制御部100の一部であるパルス反力制御部104により行なわれる。このパルス反力を生成するためのきっかけには、荷重信号SWが示す動荷重値W(t)の時間変化率が存在するかどうかが、つまり、
図3(b)のdW/dtが衝突を検知するための閾値を超えるかどうかが利用される。
図3(d)は、動荷重値W(t)の時間変化率(
図3(b))において閾値TH1を超えた値が得られたことに対応してパルス反力F1が生成される様子を示している。グラフの縦軸は力の向きと強さを示している。ここで、パルス反力F1を負の方向に描いているのは、上昇のために操作されているスティック112を中立位置に戻す向きの力を生成するためである。パルス反力F1においては、弱いアタリA、強いアタリB、アタリおよびコスレDにおける各アタリのタイミングに合わせて、それぞれパルス反力F1A、F1B、およびF1Dが生成される。なお、典型的には、弱いアタリA、強いアタリBにおいて見られるように、動荷重値W(t)の時間変化率が閾値TH1を超える期間はさまざまであるが、それとは無関係な一定の時間幅のパルス状の力として
パルス反力F1A、F1B、F1Dが生成される。また、パルス反力F1A、F1B、およびF1Dの波形の高さは、その時間変化率成分に応じた値とされる。これらの高さは、例えば、動荷重値W(t)の時間変化率のピーク値や、閾値TH1を超え、またはTH2を下回った部分の面積に応じた値とされる。いずれの場合であっても、閾値TH1またはTH2に相当する時間変化率成分が検出されて初めて反力が反力生成装置116により生成される。それ以外の期間において、反力生成装置116は、後述するコスレが検知された場合を除き特に反力を生成しない。
【0035】
なお、反力生成装置116が反力を生成しない期間には、オペレータは操作に必要な最低限のスティック112からの力のみを知覚している状態である。この力は通常は、スティック112を中立位置に戻すバネなどの機構による静的な力である。このため、スティック112の位置を固定している限り、オペレータの掌にはスティック112から一定のバネの力で押しつける力が四六時中作用している。オペレータはそのバネの力に対して何ら意識を向けることはない。その状態で動荷重値W(T)の時間変化率の存在に応じて反力生成装置116がパルス反力を生成することにより、オペレータはアタリが生じたことを触覚または力覚により知覚することができるのである。したがって、上述した反力生成装置116を制御する処理は、時間変化率に基づいてアタリを検出するという点と、知覚が容易なパルス反力を生成する点とを組み合わせた警告のための処理といえる。さらにこの処理は、アタリを検出しない正常な期間における反力の生成をマスクつまり抑制することによりアタリの検出を際立たせるという意味において、オペレータに対する強調の処理ともなっている。
【0036】
[1−2−1−2 偏差量成分からの反力の生成]
もう一つのコスレに対応して生成する反力のためには、振動しない反力および振動反力と呼ぶ反力を知覚させる反力指令信号SRFを出力する。このための処理は、反力制御部100の一部である偏差反力制御部106により行なわれる。この振動しない反力および振動反力を生成するきっかけとして、負荷対象物500がその周囲の物体と摩擦することにより生じた荷重信号SWの偏差量成分(
図3(c))が利用される。
図3(e)および(f)は、振動しない反力F2および振動反力F3が生成される様子を示している。振動しない反力F2および振動反力F3は、動荷重値W(t)の偏差量成分である差分ΔW(
図3(c))において閾値TH3を超えた値が得られたことに対応して、それぞれ、コスレCとアタリおよびコスレDにおけるコスレのタイミングに合わせて生成される。また、コスレCとアタリおよびコスレDにおいては、摩擦力の変化により差分ΔWが時間的に変化している。この変化は、時間変化率としては必ずしも大きいとは限らず、例えば、閾値TH1(
図3(b))を超えない程度である。しかし、振動しない反力F2または振動反力F3を、差分ΔWの値に応じたものとすることより、コスレの強さの変化をオペレータが知覚することができる。例えば
図3(e)の振動しない反力F2C、F2D、および
図3(f)の振動反力F3C、F3Dは、差分ΔWの値に応じた値として描いている。つまり、振動しない反力F2(
図3(e))は差分ΔWの変化を正しく表現させることができる。なおこの場合であっても、差分ΔWのうち閾値TH3に満たない値は振動しない反力F2には反映されない。このため、閾値TH3を適切に選べば有意なコスレのみを強調することが可能である。また、振動反力F3(
図3(f))は振動としてオペレータに知覚されるため、コスレの発生を強調して知覚させることが可能である。つまり、振動しない反力F2および振動反力F3により生成された反力は、ともに閾値TH3に相当する偏差が生じた場合に確実に反力が知覚されるような警告の処理されたものといえる。さらにこの警告処理も、コスレを検出しない正常な期間に反力の生成をマスクすることによりコスレの検出を際立たせるという意味において、オペレータに対する強調の処理となっている。
【0037】
[1−2−1−3 反力の重畳]
なお、オペレータに知覚させる実際の反力は、例えば
図3(d)〜(f)に示したパルス反力F1、振動しない反力F2、そして振動反力F3を、適当な比率で重ね合わせたものである。この比率は、パルス反力F1、振動しない反力F2、および振動反力F3を、必要に応じて互いに区別できるように決められる。さらに、上述した例では、
図3(e)に示した振動しない反力F2、そして
図3(f)に示した振動反力F3を両者に共通の閾値TH3、TH4により生成させているが、本実施形態においては、振動しない反力F2と振動反力F3とのそれぞれを生成させるための閾値を変更することも有用である。例えば、コスレが生じていることを確実にオペレータに認識させるため、小さい差分ΔWにおいて振動反力F3を生成するとともに、それより大きな差分ΔWの場合にコスレの具体的な強さを知覚させるように振動しない反力F2を重畳することも有用である。それとは逆に、コスレの強さが小さい時点ではコスレの程度が小さいため振動しない反力F2のみを生成するとともに、コスレの強さが大きくなって初めて振動反力F3を生成することも有用である。上記比率や反力の生成の開始となる閾値の具体的な値は、オペレータに対してどのような情報をどのように認識させるかといった実施上の条件に基づき適宜に決定することができる。
【0038】
[1−2−1−4 反力の補正]
そして反力制御部100には、パルス反力制御部104、偏差反力制御部106これらとは異なる反力補正処理部108も実装されると有利である。反力補正処理部108は反力指令値を補正するものである。この補正は、主として反力の向きを限定する処理である。また、反力補正処理部108はそれ以外の例外処理として反力指令値を補正する。
【0039】
なお、反力制御部100も、実用上は例えばPLCやコンピュータなどのブログラム可能機器上のソフトウエアとして実装される。次にパルス反力制御部104、偏差反力制御部106、および反力補正処理部108の詳細な動作についてさらに説明する。
【0040】
[1−2−2 パルス反力制御部104の詳細な動作]
パルス反力制御部104の典型的な動作は、まず、荷重センサー140から動荷重値を示す動荷重信号SWを受信する。次いで動荷重値の時間変化率成分を算出する。このためには、荷重信号SWの動荷重値から直接時間変化率成分を算出してもよいし、また、荷重信号SWの示す動荷重値のうち、負荷対象物500の静荷重値からの差分である偏差量成分を算出してそこから時間変化率成分を算出してもよい。そして、その時間変化率成分の存在に応じたパルス反力を生成するための反力指令値を示す反力指令信号SRFを出力する。パルス反力とは、
図3(d)に例示したような、ある時間(例えば0.1秒間)に知覚可能な反力を生成する孤立したパルス状の反力である。このパルス状の反力のための反力指令値は、その反力の時間変化を示すパルス状の時間変化波形として与えられる。そしてその波形は、アタリが生じたことをスティック112を通じてオペレータに触覚または力覚により知覚させるために適する任意の波形の反力とすることができ、この波形の典型例は、例えば矩形波、三角波などである。そしてパルス反力の反力指令値を示す反力指令信号SRFが、反力生成装置116から出力される。オペレータがスティック112から知覚している操作力は、例えば、スティック112を中立位置に戻すためのバネなどの特に時間変化を示さないものから、反力生成装置116がパルス反力制御部104の制御の下で生成するパルス反力を含むものに変化する。このため、オペレータは、スティック112からも当たりが生じたことを認知することが可能となる。
【0041】
特に、パルス反力制御部104は、反力指令値のうちのパルス反力の振幅を指定するための値を荷重信号SWの時間変化率成分に応じた値にした上で反力指令信号SRFを出力すると有利である。アタリを強調した反力で知覚させることに加え、アタリの強弱も反力により知覚することができれば、オペレータは、負荷対象物500の昇降動作において生じた事象についての一層詳細な情報を得ることができる。
【0042】
さらに、パルス反力制御部104を、反力指令信号SRFの示す反力指令値を、入力座標値または速度指令値の少なくともいずれかに基づいて、パルス反力制御部104が、中立位置からスティック112を遠ざける向きの反力を生成しない値とすると有利である。この際、パルス反力制御部104は、入力座標信号SPまたは速度指令信号SVの少なくともいずれかをさらに受信する。なお、入力座標信号SPおよび速度指令信号SVは、ともに速度に関連した信号であるため、入力座標信号SPまたは速度指令信号SVのいずれかを指すために速度関連信号ということもある。ここで中立位置は、スティック112がその中立位置であるときの入力座標値SPに対応付けられている速度指令値が負荷対象物500を停止させるべき値となる一の入力軸におけるスティック112の位置である。この構成により、スティック112を中立位置に近付ける向きに反力を生成することが可能となる。
【0043】
これを具体例で説明すると、例えば、スティック112の入力座標値が正の時に荷重昇降装置130は負荷対象物500を上昇させるとする。このとき、上昇中に負荷対象物500にアタリが生じると、その瞬間に荷重信号SWの荷重値が増大しその時間変化率成分は正の値となる。この正の時間変化率に対して、パルス反力制御部104は、スティック112の負の方向に入力座標センサー114が反力を生成するような反力指令値を算出する。これに対し、上昇中に負荷対象物500にアタリによって荷重信号SWの荷重値の時間変化率成分が負の値となる場合に単純に符号を反転させて反力を生成すると、スティック112の正の方向に入力座標センサー114が反力を生成するような反力指令値を生成することとなる。ところがその場合、負荷対象物500の上昇速度をさらに増大させる向きの反力となる。もしオペレータがそれに応じてスティック112を操作したり、反力によるスティック112の動きを許容すると、中立位置からのオペレータによる手動操作を反力が助長することとなってしまう。したがって、本実施形態のパルス反力制御部104がそのような向きの反力を生成させないことが好適な構成となる。なお、上昇中に負荷対象物500にアタリによって荷重信号SWの荷重値の時間変化率成分が負の値となる場合は、例えば
図3(b)にて下向き矢印により示したように、アタリやコスレによる荷重値が減少する場面である。
【0044】
[1−2−3 偏差反力制御部106の詳細な動作]
次に、偏差反力制御部106について説明する。偏差反力制御部106は、荷重センサー140から動荷重値を示す動荷重信号SWを受信し、動荷重値における負荷対象物500の静荷重値からの差分である偏差量成分を算出する。そして、偏差反力制御部106は、偏差量成分の存在に応じた反力を生成するための反力指令値を示す反力指令信号SRFを反力生成装置116に出力する。
【0045】
偏差反力制御部106は振動しない反力を偏差量成分の値に応じて生成するための反力指令値を含めて反力指令信号SRFを反力生成装置に出力するものであると有利である。ここでの振動しない反力は、コスレが生じたことにより動荷重値が静荷重値に比べて増大または減少したことに応じた動荷重値の偏差量成分によりされる。このため、例えば一定の速度で上昇または下降している負荷対象物500がある時点になって初めて周囲の物体とコスレを生じた場合、その時点まではスティック112を通じて反力を感じなかったオペレータは、その時点から反力を知覚することとなる。
【0046】
また偏差反力制御部106は、振動反力を上記偏差量成分に応じて生成するための反力指令値を含めて反力指令信号SRFを出力すると有利である。振動反力は、スティック112を通じてオペレータに振動を知覚させるための反力であり、典型的には、パルス反力を断続させて繰り返すことにより実現することができる。なお、振動反力は、振動の振幅が小さい力であっても、比較的知覚されやすいため、コスレによる摩擦力による荷重値の増分を強調する手法として有用である。この振動反力の振幅を、偏差量成分に応じたものとするために、例えば偏差量成分に例えば比例させたり、非線形に対応する振幅としたりすることも有利である。
【0047】
本実施形態においては、パルス反力制御部104と同様に、偏差反力制御部106においても、反力の向きを制限することが好適である。そのために、偏差反力制御部106も、入力座標信号SPまたは速度指令信号SVの少なくともいずれかすなわち速度関連信号をさらに受信する。また偏差反力制御部106は、入力座標値SPまたは速度指令値SVの少なくともいずれかに基づいてスティック112の一の入力軸における中立位置からスティックを遠ざける向きの反力を生成しない値として反力指令信号SRFの示す反力指令値を算出する。
【0048】
[1−2−4 反力補正処理部108の詳細な動作]
上述したように、本実施形態の反力制御部100には、反力補正処理部108がさらに備わっていると有利である。反力補正処理部108は、入力座標信号SPまたは速度指令信号SVの少なくともいずれかと反力指令信号SRFとを受信する。また反力補正処理部108は、入力座標値または速度指令値の少なくともいずれかに基づいて、反力指令信号SRFが示す反力指令値のうち、スティック112の一の入力軸における中立位置からスティック112を遠ざける向きの反力を生成する値を判定する。このため、
図2に示すように、反力補正処理部108には、入力座標信号SPが入力される。そして反力補正処理部108は、当該値を、反力を生成しない値に選択的に置換する。これにより補正済反力指令値を得て、補正済反力指令値を示す補正済反力指令信号SRF−Mを反力補正処理部108から出力する。
【0049】
この場合、ジョイスティック装置110の反力生成装置116は、反力指令信号SRFに代えて反力補正処理部108からの補正済反力指令信号SRF−Mを受信して、一の入力軸の入力座標値SPを変化させる向きの反力を、補正済反力指令値に応じて生成する。
【0050】
この構成により、スティック112を中立位置に近付ける向きの反力が生成される(以下、「反力の向きの制限処理」という)。ここで、実際には、パルス反力制御部104または偏差反力制御部106を上述した好適な構成とした場合には、反力補正処理部108による反力の向きの制限は通常の操作では殆ど実行されない。というのは、パルス反力制御部104と偏差反力制御部106により、反力指令信号SRFを算出する時点で殆どのタイミングでいずれも入力座標信号SPまたは速度指令信号SVの入力座標値または速度指令値に基づいて反力の向きが決定されるためである。それでもなお、反力生成装置116に反力を生成させるタイミングにおいて、パルス反力制御部104や偏差反力制御部106による反力指令値のままではスティック112を中立位置から遠ざけるような向きの反力となってしまう場合がありうるため、反力の向きの制限処理が採用されるのである。そのような場合の例としては、パルス反力制御部104のパルス反力が生成されている期間中にスティック112が中立位置を跨いで反対に操作される場合を想定することができる。さらに、例えばパルス反力制御部104における時間変化率の算出は、一般にノイズ等に敏感なものとなり、また数値計算の誤差の影響を受けることもある。これらの場合であっても、反力補正処理部108による反力の向きの制限処理を行なうことよって、スティック112を中立位置から遠ざけるような向きの反力の生成が防止される。
【0051】
さらに、反力補正処理部108は、入力座標値または速度指令値の少なくともいずれかが負荷対象物500を停止させるべき値であるときの補正済反力指令値を、反力を生成しない値に選択的にさらに置換すると有利である。これにより反力補正処理部108は、補正済反力指令値を得て補正済反力指令信号SRF−Mを出力する。この処理(以下「停止時反力制限処理」という)は、反力を生成するとオペレータの操作意思と反する反力となるためである。つまり、入力座標信号SPまたは速度指令信号SVから得られるスティック112の位置が中立位置である場合は、停止させる意思によりオペレータがスティック112を中立位置に戻している操作であるか、または、スティック112がバネの力により中立位置に戻っている。このため、これらの状況に合わせれば、反力の生成を制限するのが適切となるのである。
【0052】
[1−3 第1実施形態の変形例]
上述したリモートハンドリング装置1000においては、反力制御部100のパルス反力制御部104と偏差反力制御部106とを個別に説明した。実用面からは反力指令値として、
図2に示したパルス反力制御部104と偏差反力制御部106の双方からの信号を加算処理した反力指令値を採用する構成も有利である。例えば負荷対象物500が最初に僅かな衝撃とともに接触してその後に摩擦を引き起こす場合には、パルス反力制御部104および偏差反力制御部106のそれぞれが、接触の開始のアタリに応じたパルス反力およびコスレに応じた反力のための反力指令値を算出する。これらが加算された反力指令信号SRFにより反力により、オペレータは、負荷対象物500の周囲の物体への接触が一時的なものであるか、コスレつまり摩擦を伴っているかといった状況を、スティック112を通じて把握することが可能となる。
【0053】
[2 第2実施形態]
[2−1 既設のリモートハンドリング装置への追加]
上述したリモートハンドリング装置1000は、従来のリモートハンドリング装置7000(
図1)のような既設のリモートハンドリング装置に対していくつかの機器を追加することにより実現することができる。以下、既設のリモートハンドリング装置に対して追加される補助装置として本発明の第2実施形態を説明する。引き続き
図2を参照する。
【0054】
本実施形態の補助装置1200は、離れている荷重昇降装置をジョイスティック装置により手動操作するオペレータに対し、スティックを通じ反力を知覚させるために負荷対象物のリモートハンドリング装置に付加される。例えば
図1に示した従来のリモートハンドリング装置7000が設置されているとき、反力制御部100と反力生成装置116とを有する補助装置1200を追加し、必要な信号として荷重信号SWや入力座標信号SPを反力制御部100に入力するだけで、実質的にリモートハンドリング装置1000を作製することが可能となる。この際、反力制御部100におけるパルス反力制御部104と偏差反力制御部106とは、必要に応じて、それぞれが単独で追加されることも、また双方が同時に追加されることもどちらの場合もある。さらに、反力補正処理部108も必要に応じ追加することができる。
【0055】
なお、既設のリモートハンドリング装置を改修することにより、補助装置1200の補助装置を追加してリモートハンドリング装置1000と同等の機能を追加する具体的な追加作業では、本実施形態を適用するために、公知の変形を行なうことができる。例えば、ジョイスティック装置710(
図1)に反力生成装置116を追加してジョイスティック装置110の構成とすることに代え、反力生成装置116の機能を有するジョイスティック装置110を利用する可能性もある。また、昇降制御部120がすでにソフトウエアにより実装されている場合には、反力制御部100を追加する作業は、当該ソフトウエアのみの改修作業となるかもしれない。これらの現実の追加作業は、具体的なリモートハンドリング装置の構成に合わせて当業者により適宜に実施することが可能である。
【0056】
[3 実装例]
[3−1 ソフトウエアにより実装される反力制御部100]
次に、反力制御部100のソフトウエアによる実装例について、
図4を参照して説明する。
図4は、
図2に示したリモートハンドリング装置1000においてソフトウエアにより実装される反力制御部および昇降制御部の構成の一例の構成を含むリモートハンドリング装置1000A全体の構成を示すブロックダイヤグラムである。
図4は、本出願の第1実施形態に従う評価システムを作製した際のソフトウエアの構成例であり、本出願の第2実施形態に従う評価システムとなる構成例でもある。ここでは、作製した評価システムの理解を容易にするため、ソフトウエアとハードウエアの区別を区別して、ソフトウエアの要素を実線により、ハードウエアの要素を鎖線により示している。本実装例では、表示装置150、カメラ、そして映像のため表示装置の説明は省略する。また、以下の説明において、
図2に説明した要素と実質的な違いの無い要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。この際、説明済の用語との対応を混乱させないため、ソフトウエアモジュールにより実現される要素や要素間でやりとりされるデータを、上述した処理部や信号の要素名により説明する。さらに、ソフトウエアによる実装のためのみの差異を有する要素には、アルファベットまたは数値を末尾に追加した関連する符号を付して説明する。以下の実装例に示す手法、処理内容、処理手順、要素や具体的処理等は本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することかできる。したがって、本発明の範囲は以下の具体例に限定されるものではない。
【0057】
[3−1−1 ソフトウエアによる昇降制御部120A]
ジョイスティック装置110からの入力座標信号SPは、昇降制御部120Aに入力される。昇降制御部120Aは
図2に示した昇降制御部120と同等の機能を実行するものである。つまり、この昇降制御部120Aにより、入力座標信号SPにより示される入力座標値から速度指令値を示す速度指令信号SVが生成されて出力され、荷重昇降装置130に送られる。具体的には、ジョイスティック装置110のスティック112に接続されている入力座標センサー114からの入力座標信号SPの示すアナログ値の入力座標値が、AD変換部122によりスケールを調整する変換(同様の処理を以下「工業値変換」という)を施してデジタル値とされる。この変換により入力座標信号SPは、例えばマイナス100〜プラス100%の数値範囲の入力座標値を示す入力座標信号SP2とされる。入力座標信号SP2が示す入力座標値の正負はそれぞれが例えば負荷対象物500の上昇と下降に割り当てられ、0は停止とされる。この段階の入力座標値には、ノイズが含まれている可能性があるため適当なフィルタ処理部124によりノイズが除去される。その後、マイナス100〜100%の数値範囲の入力座標値を示す入力座標信号SP3となって、速度指令変換部126により、モーターの速度指令値を示す速度指令信号SV2に変換される。速度指令信号SV2が示す速度指令値は、例えばマイナス100〜プラス100%の値であり、荷重モーター132の速度に比例した値である。こうして、速度指令変換部126により、スティック112の入力座標値と荷重モーター132の速度の対応関係が実質的に決定される。
【0058】
速度指令変換部126は例えば、停止付近では微動が可能であるとともに、高速の移動を行ないうるような非線形変換を行なう。速度指令信号SV2の示す速度指令値は、例えばDA変換部128により、工業値変換されて荷重モーター132に対して適切な電圧レンジの速度指令信号SVとされ出力される。荷重昇降装置130の荷重モーター132には、荷重モーター駆動電源134が接続されており、速度指令信号SVに比例した速度で荷重モーター132を動作させるために必要な増幅された電流信号が荷重モーター駆動電源134から出力される。荷重モーター132には、図示しないギアなどの増力減速機構が接続されている。こうして、ジョイスティック装置110からの入力座標信号SPが示す入力座標値に応じ、速度指令信号SVが示す速度指令値に比例した速度で直接負荷対象物500が荷重モーター132により上昇、停止、または下降される。負荷対象物500を昇降させる軸である昇降軸136には、移動量の限界の到達を検知するために上端リミットスイッチ138Lと下端リミットスイッチ138Uが装着されている。
【0059】
荷重センサー140は、適当な位置に装着されて負荷対象物500の動荷重値の計測信号を出力する。この計測信号は、ロードセル変換器142を経て荷重信号SWとされ、ロードセルインターフェース144を通じ反力制御部100Aに入力される。荷重信号SWは反力制御部100Aの入力時に工業値変換され、荷重信号SW2とされる。反力制御部100Aは、反力を生成するための反力指令信号SRFを生成する。
【0060】
[3−1−2 ソフトウエアによる反力制御部100A]
反力制御部100Aでは、まず、荷重信号SW2の示す荷重値から、適当なフィルタ1020によりノイズを除去して荷重信号SW3を生成する。この荷重信号SW3から負荷対象物500が静止している際の荷重値により静荷重値を決定する。具体的には、下端リミットスイッチ138Uまたは上端リミットスイッチ138Lのいずれかが負荷対象物500が昇降軸136の上端または下端にあることを示しているときの荷重信号SW3がサンプリングされてその荷重値が静荷重記憶部1026に格納される。このような動作のため、反力制御部100には、下端リミットスイッチ138Uおよび上端リミットスイッチ138Lからの入力を受け付ける上端下端入力部1024が備わっている。なお、下端リミットスイッチ138U、上端リミットスイッチ138Lの他の目的は、荷重モーター132の動作を制御する荷重モーター駆動電源134に入力されて、荷重モーター132の動作を上端または下端の範囲に制限することである。
【0061】
次いで、静荷重記憶部1026の静荷重値と、荷重信号SW3の動荷重値との差分が差分処理部1022により算出されて、偏差量成分ΔSW3として算出される。この偏差量成分ΔSW3は、パルス反力制御部104Aと偏差反力制御部106Aに入力される。
【0062】
パルス反力制御部104Aでは、偏差量成分ΔSW3から時間変化率成分が算出されて、時間変化率成分の絶対値がある閾値つまり時間変化率閾値を超えている場合に、パルス反力のための反力の値を生成する。ここで時間変化率閾値は、負荷対象物500が周囲の物体に衝突しアタリが生じる場合には、偏差量成分ΔSW3からの時間変化率が超えるような値に選択されている。例えば、負荷対象物500を上昇させているときにアタリが生じると、静荷重記憶部1026の静荷重値から増大する荷重信号SW3が得られる。従って、偏差量成分ΔSW3は、正の大きな時間変化率を示す。その際、孤立したパルス状のパルス反力がある時間だけ生成するための反力指令値をパルス反力制御部104Aが算出する。したがって、パルス反力は、時間変化率成分が存在することに応じて生成される。なお、偏差量成分ΔSW3の時間変化の起源は、荷重信号SWの時間変化である。また、時間変化率閾値の例が
図3に示した閾値TH1、TH2である。
【0063】
パルス反力制御部104Aにより算出されるパルス反力のための反力指令値は、スティック112を中立位置に戻す方向のパルス反力を生成するためのものであり、スティック112を中立位置から遠ざける向きの反力は生成されない。このような反力指令値を算出するためには、スティック112の入力座標値または速度指令値を利用する必要がある。この目的で、本実装例のパルス反力制御部104Aには、
図2に示したリモートハンドリング装置1000において入力座標信号SPを入力していたパルス反力制御部104とは異なり、昇降制御部120Aからの速度指令信号SV2が入力される。また、パルス反力制御部104Aは、リモートハンドリング装置1000におけるパルス反力制御部104が荷重信号SWを入力としているのに対し、静荷重との差分である偏差量成分ΔSW3を入力としている点において実施上の差異を有している。ただしこの点は時間変化率の算出上において実質的相違点とはならない。
【0064】
そして、パルス反力制御部104Aは反力指令値を算出して反力指令信号SRF2として出力する。
【0065】
偏差反力制御部106Aは、振動反力または繰返パルス反力を生成するための反力指令値を算出する。この際にも、スティック112を中立位置から遠ざける向きの反力は生成されない。このため、偏差反力制御部106Aにも、偏差量成分ΔSW3に加え、昇降制御部120Aからの速度指令信号SV2も入力される。この点において、本実装例は入力座標信号SPを入力していた
図2のリモートハンドリング装置1000の偏差反力制御部106と異なっている。また、偏差反力制御部106Aは、リモートハンドリング装置1000における偏差反力制御部106が荷重信号SWを入力としているのに対し、静荷重との差分である偏差量成分ΔSW3を入力としている。このため、偏差反力制御部106の動作は、リモートハンドリング装置1000Aの偏差反力制御部106Aの動作と差分処理部1022、上端下端入力部1024、静荷重記憶部1026の動作を含むものである。
【0066】
そして、偏差反力制御部106Aは反力指令値を算出して反力指令信号SRF3として出力する。偏差反力制御部106Aでは、偏差量成分ΔSW3の絶対値がある閾値つまり偏差量閾値を超えている場合に、振動しない反力(
図3(e))や振動反力(
図3(f))のための反力の値を生成する。ここで偏差量閾値は、負荷対象物500が周囲の物体に摩擦して生じるコスレの際に、偏差量成分ΔSW3が超えるような値に選択されている。例えば、負荷対象物500を上昇させているときにコスレが生じると、静荷重記憶部1026の静荷重値から増大する荷重信号SW3が得られる。このとき、偏差量成分ΔSW3は、正の偏差量を示す。その際、上記偏差量閾値を偏差量成分ΔSW3が超えた場合には、振動しない反力や振動反力のための反力指令値を偏差反力制御部106Aが算出する。したがって、パルス反力は、時間変化率成分が存在することに応じて生成される。なお、偏差量閾値例が
図3に示した閾値TH3、TH4である。
【0067】
パルス反力制御部104Aからの反力指令信号SRF2が示す反力指令値と偏差反力制御部106Aからの反力指令信号SRF3が示す反力指令値は加算処理部1028により重畳され、反力指令信号SRF4として反力補正処理部108Aに入力される。反力補正処理部108Aは、生成される反力を適切なものにするために、反力指令信号SRF4が示す反力指令値を対象に補正処理を行なう。反力補正処理部108Aには、上記補正処理のために速度指令信号SV2も入力される。この点、本実装例の反力補正処理部108Aは
図2に示した入力座標信号SPを入力していた反力補正処理部108とは異なっている。反力補正処理部108Aの具体的な処理は4つである。まず(1)反力指令信号SRF4の反力指令値にかかわらず、速度指令信号SV2が0であるときには反力補正値を0とする。また(2)反力指令信号SRF4の示す反力の向きとスティック112の向きが同一であるときには反力補正値を0とする。さらに(3)反力指令信号SRF4の反力指令値が反力指令値の上限値を超えるときには反力指令値を当該上限値とする。最後に、(4)(1)〜(3)以外のときには反力指令信号SRF4の反力指令値をそのまま出力する。これらのうち(1)および(2)の処理はそれぞれ、「1−2−4 反力補正処理部108の詳細な動作」の欄にて上述した停止時反力制限処理、および反力の向きの制限処理である。
【0068】
反力補正処理部108Aの出力は反力指令信号SRF5となり、工業値変換された上、モーター駆動電源118に反力指令信号SRFとして出力される。反力生成装置116は、モーター駆動電源118からの出力電流により駆動され、スティック112を通じてオペレータに知覚させる反力を反力制御部100の制御動作に従って生成する。このような制御動作により、負荷対象物500の周囲の物体とのアタリやコスレが適切に検出され、
図3に例示した反力のようなオペレータにとって知覚が容易となるように強調された反力が生成される。
【0069】
本出願の発明者らは、リモートハンドリング装置1000Aの評価システムにおいて各種のパラメータを調整することより、上述した第1実施形態のリモートハンドリング装置1000の有用性を実際に確認した。すなわち、
図3に示した反力により説明すれば、負荷対象物500と周囲の物体とのアタリとコスレは、スティック112を通じたパルス反力F1、ならびに振動しない反力F2および振動反力F3により、オペレータは負荷対象物500の昇降操作に注意力を向けていないタイミングにおいても知覚することが可能であった。その際オペレータは、アタリとコスレを区別することも可能であった。さらに、アタリおよびコスレD(
図3(a))のようなアタリとコスレが共に生じた場合には、そのアタリとコスレが連続していることについても認識することができた。そして、パルス反力F1Aとパルス反力F1Bとの区別や、振動しない反力F2C、F2D、振動反力F3C、F3Dそれぞれにおいて反力が変化している状況もオペレータが知覚することが可能であった。なお、リモートハンドリング装置1000Aの評価システムのこれらの確認のために調整した上記パラメータは次のパラメータ群のうち少なくとも一のパラメータとした:閾値TH1、TH2、TH3、TH4、パルス反力F1、振動しない反力F2、および振動反力F3についてのそれぞれの強さ、これらについてのそれぞれの相対的なバランス、パルス反力F1についての期間、振動反力F3についての交番周期およびパルスの期間、ならびに、反力補正処理部108Aにおける反力指令値の上限値、とした。
【0070】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。上述の各実施形態および実装例は、発明を説明するために記載されたものであり、本出願の発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきものである。また、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。