(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハートカム及びその周辺カムによって形成されたカム溝と、一端が固定され他端が上記カム溝の底面に対し押圧しつつ摺動する摺動端であるロックピンとを備え、上記ハートカムの窪み部で上記摺動端を係止する、あるいは該係止を解除することによって、押込操作によって接点を開閉するスイッチのロック状態またはロック解除状態を切替えるハートカム機構であって、
上記摺動端が上記窪み部にて係止された位置をロック位置とし、上記摺動端は、上記押込操作方向に往復運動しつつ、上記ハートカム外周のカム溝を、上記ロック位置で窪んだハート状軌跡に沿って移動し、このハート状軌跡において、ロック位置と反対側の頂点位置を第1の位置とし、上記ロック位置側の2つの頂点位置を第2及び第3の位置としたとき、上記摺動端は、第1の位置、第2の位置、ロック位置、第3の位置をその順で通過しており、
上記ハートカムにおいて、上記ハート状軌跡の第1〜第3の位置に対応する各頂点を、第1〜第3の頂点とし、上記窪み部と対向する周辺カムには、第2の位置からロック位置へ上記摺動端を誘導するためのロック位置誘導点が設けられており、
上記ハートカム及び周辺カムは、
上記第1の位置、上記第2の位置、上記ロック位置、及び第3の位置の各位置において、上記第1の頂点、上記第2の頂点、上記ロック位置誘導点、及び第3の頂点の各点から上記押込操作方向に延びる線を基準線とし、上記摺動端の中心は、上記基準線に対し、上記各点に対応する上記ハート状軌跡の各位置から摺動端が次の位置へ移動する経路側にずれるように形成されており、
上記第2の位置から上記ロック位置へ延びる通路を第1の通路とし、上記ロック位置から上記第3の位置へ延びる通路を第2の通路としたとき、
上記第1及び第2の通路の底面は、上記押込操作方向に垂直な断面において、上記第2の位置から上記第3の位置へ向かうに従って上記摺動端の押圧方向に下降するように傾斜した傾斜領域を有することを特徴とするハートカム機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたカム溝構造では、スイッチの押圧操作の繰り返しによって、カム溝底面における階段状部分が摩耗したり、ロックピンへの押圧力が低下したりする。それゆえ、ロックピンの端部が意図しない方向にスライドし、スイッチの開閉機構に支障をきたすことがある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、カム溝底面における階段状部分が摩耗した場合であっても、ロックピン端部の逆方向への移動を防止し、かつ信頼性が高いスイッチ開閉機構を実現できるハートカム機構、およびそれを備えたスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のハートカム機構は、上記の課題を解決するために、ハートカム及びその周辺カムによって形成されたカム溝と、一端が固定され他端が上記カム溝の底面に対し押圧しつつ摺動する摺動端であるロックピンとを備え、上記ハートカムの窪み部で上記摺動端を係止する、あるいは該係止を解除することによって、押込操作によって接点を開閉するスイッチのロック状態またはロック解除状態を切替えるハートカム機構であって、上記摺動端が上記窪み部にて係止された位置をロック位置とし、上記摺動端は、上記押込操作方向に往復運動しつつ、上記ハートカム外周のカム溝を、上記ロック位置で窪んだハート状軌跡に沿って移動し、このハート状軌跡において、ロック位置と反対側の頂点位置を第1の位置とし、上記ロック位置側の2つの頂点位置を第2及び第3の位置としたとき、上記摺動端は、第1の位置、第2の位置、ロック位置、第3の位置をその順で通過しており、上記ハートカムにおいて、上記ハート状軌跡の第1〜第3の位置に対応する各頂点を、第1〜第3の頂点とし、上記窪み部と対向する周辺カムには、第2の位置からロック位置へ上記摺動端を誘導するためのロック位置誘導点が設けられており、上記ハートカム及び周辺カムは、上記第1の位置、上記第2の位置、上記ロック位置、及び第3の位置の各位置において、上記第1の頂点、上記第2の頂点、上記ロック位置誘導点、及び第3の頂点の各点から上記押込操作方向に延びる線を基準線とし、上記摺動端の中心は、上記基準線に対し、上記各点に対応する上記ハート状軌跡の各位置から摺動端が次の位置へ移動する経路側にずれる、ように形成されていることを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、上記ハートカム及び周辺カムは、上記第1の位置、上記第2の位置、上記ロック位置、及び第3の位置の各位置において、上記第1の頂点、上記第2の頂点、上記ロック位置誘導点、及び第3の頂点の各点から上記押込操作方向に延びる線を基準線とし、上記摺動端の中心は、上記基準線に対し、上記各点に対応する上記ハート状軌跡の各位置から摺動端が次の位置へ移動する経路側にずれる、ように形成されている。より具体的な位置関係は、以下の通りである。
【0010】
すなわち、上記第1の位置にある摺動端の中心は、ハートカムの第1の頂点から上記押込操作方向に延びる上記基準線に対し、摺動端が第1の位置から第2の位置へ移動する経路側にずれている。また、上記第2の位置にある摺動端の中心は、ハートカムの第2の頂点から上記押込操作方向に延びる上記基準線に対し、摺動端が第2の位置からロック位置へ移動する経路側にずれている。また、ロック位置にある摺動端の中心は、周辺カムのロック位置誘導点から上記押込操作方向に延びる上記基準線に対して、摺動端がロック位置から第3の位置へ移動する経路側にずれている。さらに、上記第3の位置にある摺動端は、ハートカムの第1の頂点から上記押込操作方向に延びる上記基準線に対し、摺動端が第3の位置から第1の位置へ移動する経路側にずれている。
【0011】
上記の構成によれば、上記第1の位置、上記第2の位置、上記ロック位置、及び上記第3の位置の各位置にある上記摺動端について、上記位置関係になるように、ハートカム及び周辺カムを形成している。それゆえ、上記の構成によれば、上記摺動端が各位置を通過してハート状軌跡に沿って移動するときに、ハートカムの第1〜第3の頂点、または周辺カムのロック位置誘導点は、摺動端が次の位置に移動する方向へ摺動端の移動方向を規制する移動方向規制部としての役割を果たす。このため、上記の構成によれば、摺動端が逆方向に移動することを防止することができる。よって、第1の位置、第2の位置、ロック位置、及び第3の位置の各位置から次の位置への摺動端の移動がスムーズになる。その結果、上記の構成によれば、カム溝底面における階段状部分が摩耗した場合であっても、ロックピン端部の逆方向への移動を防止することができ、信頼性が高いスイッチ開閉機構を実現できるハートカム機構を提供することができる。
【0012】
本発明のハートカム機構では、上記第2の位置から上記ロック位置へ延びる通路を第1の通路とし、上記ロック位置から上記第3の位置へ延びる通路を第2の通路としたとき、上記第1及び第2の通路の底面は、上記押込操作方向に垂直な断面において、上記第2の位置から上記第3の位置へ向かうに従って上記摺動端の押圧方向に下降するように傾斜した傾斜領域を有するが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、上記第1及び第2の通路の底面は、上記押込操作方向に垂直な断面において、上記第2の位置から上記第3の位置へ向かうに従って上記摺動端の押圧方向に下降するように傾斜した傾斜領域を有するので、上記第2の位置からロック位置への移動、及びロック位置から第3の位置への移動に際し、上記摺動端が逆方向へ移動することを防止することができる。
【0014】
本発明のハートカム機構では、上記第3の位置から上記第1の位置へ延びる第3の通路には、第1の位置におけるカム溝の底面が上記摺動端の押圧方向に沈むように段差が形成され、上記段差は、上記ハートカムの上記第1の頂点から上記押込操作方向へ延びて形成されている、あるいは上記第1の頂点に対して第1の位置側に形成されていることが好ましい。
【0015】
このように、上記段差は、上記ハートカムの上記第1の頂点から上記押込操作方向へ延びて形成されている、あるいは上記第1の頂点に対して第1の位置側に形成されているので、上記摺動端は、上記段差を通過し一旦第1の位置に到達すると、上記段差によって第3の位置側へ戻ることがなくなる。それゆえ、上記の構成によれば、第1の位置にある摺動端の中心は、確実に、ハートカムの第1の頂点に対し、摺動端が第1の位置から第2の位置へ移動する方向側にずれることになる。
【0016】
本発明のハートカム機構では、上記第3の通路は、上記第3の位置から上記第1の位置へ向かうに従って底面が上記摺動端の押圧方向と反対方向に隆起するように傾斜する傾斜溝を有し、上記傾斜溝の傾斜開始位置は、上記ハートカムの第3の頂点よりも第1の位置側にあることが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、上記第3の通路は、上記第3の位置から上記第1の位置へ向かうに従って底面が上記摺動端の押圧方向と反対方向に隆起するように傾斜する傾斜溝を有し、上記傾斜溝の傾斜開始位置は、上記ハートカムの第3の頂点よりも第1の位置側にあるので、第3の位置から第1の位置へ向かって移動する摺動端がロック位置へ移動するのを防止することができる。また、上記傾斜溝と第1の位置におけるカム溝とにおいて、底面の高低差を十分に確保することができる。
【0018】
本発明のスイッチは、上記の課題を解決するために、上記押込操作により回路の開閉動作を行うための押込部材と、上述のハートカム機構と、上記ロックピンの上記一端を固定するためのベースと、を備えたことを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、カム溝底面における階段状部分が摩耗した場合であっても、ロックピン端部の逆方向への移動を防止することができ、信頼性が高いスイッチ開閉機構を実現できるスイッチを提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のハートカム機構は、以上のように、上記摺動端が上記窪み部にて係止された位置をロック位置とし、上記摺動端は、上記押込操作中に、上記ハートカム外周のカム溝を、上記ロック位置で窪んだハート状軌跡に沿って移動し、このハート状軌跡において、ロック位置と反対側の頂点位置を第1の位置とし、上記ロック位置側の2つの頂点位置を第2及び第3の位置としたとき、上記摺動端は、第1の位置、第2の位置、ロック位置、第3の位置をその順で通過しており、上記ハートカムにおいて、上記ハート状軌跡の第1〜第3の位置に対応する各頂点を、第1〜第3の頂点とし、上記窪み部と対向する周辺カムには、第2の位置からロック位置へ上記摺動端を誘導するためのロック位置誘導点が設けられており、上記ハートカム及び周辺カムは、上記第1の位置、上記第2の位置、上記ロック位置、及び第3の位置の各位置において、上記第1の頂点、上記第2の頂点、上記ロック位置誘導点、及び第3の頂点の各点から上記押込操作方向に延びる線を基準線とし、上記摺動端の中心は、上記基準線に対し、上記各点に対応する上記ハート状軌跡の各位置から摺動端が次の位置へ移動する経路側にずれる、ように形成されている構成である。
【0021】
また、本発明のスイッチは、以上のように、上記押込操作により回路の開閉動作を行うための押込部材と、上記ハートカム機構と、上記ロックピンの上記一端を固定するためのベースと、を備えた構成である。
【0022】
それゆえ、カム溝底面における階段状部分が摩耗した場合であっても、ロックピン端部の逆方向への移動を防止し、かつ信頼性が高いスイッチ開閉機構を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明の実施の形態に係るスイッチの前提的構成について、
図1の(a)及び(b)〜
図8の(a)〜(e)を参照して詳細に説明する。
【0025】
(1)スイッチの構成
まず、本実施形態のスイッチ(本スイッチと記す)の前提となる構成について説明する。
図1は、本スイッチ(リセット機能付スイッチ)の前提となる構成を示し、
図1の(a)は外観を示す斜視図であり、
図1の(b)は内部構成を示す斜視図である。
図2は、スイッチの分解斜視図である。
図3は、プランジャ部30’及び接点機構20を組み付けたベース10の構成を示し、
図3の(a)はプランジャ部30’の構成を示す斜視図であり、
図3の(b)は接点機構20を組み付けたベース10の構成を示す斜視図である。
【0026】
本スイッチは、いわゆるプッシュタイプのスイッチであり、前提的な構成として、矩形形状のベース10と、ベース10に組み付けられる2組の接点機構20と、プランジャ部30’と、ロックピン40と、ハウジング50とを備えている。ハウジング50は、ベース10に嵌合して接点機構20を被覆するとともに、プランジャ部30を上下動可能に支持する。
【0027】
ベース10は、
図2に示されるように、その形成する矩形の一方の辺部分に一対の壁11・11が設けられている。そして、他方の辺部分に、壁11・11と対向するように一対の壁12・12が設けられている。また、ベース10は、その上面の中央から立設した隔壁13を備えている。隔壁13は、壁11から壁12へ向かう方向に延びている。また、隔壁13における壁12側の端部近傍には、係合溝14が設けられている。
【0028】
接点機構20は、
図2に示されるように、支持端子21、固定接点端子22、及び可動接触片23を備えている。支持端子21は、断面L字形状に屈曲した導電材から構成されている。支持端子21の一方の端部には、上方へ起立した起立片21aが形成されており、この起立片21aの先端縁部を切欠いて回動
用受け部21bが形成されている。支持端子21は、下方に突出して形成された圧入用舌片21cをベース10の圧入用孔
15に圧入することによって、ベース10に組み付けられる。
【0029】
また、固定接点端子22は、断面略L字形状に屈曲しており、その一方の端部に固定接点22aが設けられている。固定接点端子22は、下方に突出して形成された圧入用舌片22bをベース10の圧入用孔15に圧入することによって、ベース10に組み付けられる。
【0030】
さらに、可動接触片23は、断面略J字形状に屈曲した導電材から構成されている。可動接触片23の一方の端部には、可動接点23aが設けられている一方、他方の端部の先端面にはスライド用切欠き溝23bが形成されている。可動接触片23は、その両側縁部を切欠いて形成した幅狭部23cを支持端子21の回動
用受け部21bに係合させることによって、回動自在に支持される。
【0031】
プランジャ部30’は、プランジャ本体(押込部材)31’と、コイルバネ32・32とを備えている。プランジャ本体31’は、ベース10の互いに対向する壁11・12間に収容可能な形状を有し、この形状の上面中央から押込操作を行うための操作部31Aが突出して設けられている。また、プランジャ本体31’の正面及び背面には、コイルバネ32・32を側方から挿入して支持するための軸部31Bが点対称になるように形成されている。また、プランジャ本体31’は、外側面にカム溝31C’が形成されている。このカム溝31C’は、ロックピン40を介してプランジャ本体31’を所定の位置でロックするために設けられている。さらに、プランジャ本体31’は、その下面に押圧用凸部31Dが、軸部31Bと平行になるように突出して設けられている。
【0032】
また、コイルバネ32は、その両方の端部32a・32bが内側に撓んだ状態で、プランジャ本体31の軸部31Bに挿入されている。これによって、コイルバネ32の端部32aがプランジャ本体31の天井面31Eを圧接するとともに、コイルバネ32の端部32bは、プランジャ本体31の縁部31Fを圧接するようになる。
【0033】
ロックピン40は、棒状金属材の両端部をそれぞれ互いに反対方向に屈曲して、上端部40a(摺動端)及び下端部40bが形成されている。
【0034】
ハウジング50は、接点機構20、プランジャ部30’、及びロックピン40を組み付けたベース10の外周部に嵌合可能な箱形状を有している。そして、この箱形状の上面中央には、プランジャ本体31’の操作部31Aを挿入する操作孔51を形成する環状リブ52が設けられている。また、ハウジング50の内側面には、可動接触片23の位置を規制するための、位置規制用凸部53が設けられている。
【0035】
ここで、スイッチの組立て方法の一例について、説明する。まず、接点機構20を組み付けたベース10の係合溝14に、ロックピン40の下端部40bを上方から挿入し、側方にスライドさせて抜け止めする。そして、
図4に示されるように、コイルバネ32を組み付けたプランジャ本体31’(すなわちプランジャ部30’)をベース10の壁11・12間に上方から収納し位置決めして、ロックピン40の上端部40aをプランジャ本体31’のカム溝31C’に係合させる。そして、これによって、プランジャ本体31’の操作部31Aがハウジング50の操作孔51から突出する。また、コイルバネ32の端部32bが可動接触片23のスライド用切欠き溝23bにスライド可能に係合し、可動接触片23を上方へ引き起こすように付勢する。このため、可動接触片23の可動接点23aは、固定接点22aから開離している。
【0036】
(2)スイッチの操作方法
次に、スイッチの操作方法について、説明する。
【0037】
まず、
図5の(a)に示されるように、スイッチの操作前においては、コイルバネ32のバネ力によって端部32aには上方の力が働き、プランジャ本体31’は上方へ付勢した状態になっている。一方、コイルバネ32の端部32bには下方の力が働いている。このため、コイルバネ32の端部32bが可動接触片23の他端部(可動接点23aと反対側の端部)を押し下げている状態になっている。ここで、ハウジング50の内側面には、位置規制用凸部53が設けられている(
図1の(b))。それゆえ、可動接触片23の一端部は、位置規制用凸部53の下端部に当接して位置規制されることになり、脱落することがない。このとき、ロックピン40の上端部40aは、
図1の(b)に示されるように、プランジャ本体31’のカム溝31C’の初期領域31C
1’に位置している。
【0038】
そして、
図5の(c)に示されるように、プランジャ本体31’の操作部31Aを押し下げると、コイルバネ32が撓むとともに、コイルバネ32の端部32bが可動接触片23のスライド用切欠き溝23b内をスライドしつつ、可動接触片23を引き起こす方向に付勢する。そして、プランジャ本体31’の押圧用凸部31Dが
、可動接触片23の一端部(可動
接触片23側の端部)を押し下げている。このとき、ロックピン40の上端部40aは、カム溝31C’の底面を押圧しつつ摺動し、初期領域31C
1’から第1傾斜溝31C
2’、第2傾斜溝31C
3’、及び第3傾斜溝31C
4’を移動する(
図5の(d))。
【0039】
さらに、プランジャ本体31’の操作部31Aを押し込むことによって、コイルバネ32の端部32aが所定の位置を超えたとき、コイルバネ32の端部32aが可動接触片23を押し倒す方向に付勢する。このため、可動接触片23が支持端子21の回動用受け部21bを支点として瞬間的に回動し、可動接点23aが固定接点22aに接触する(
図5の(e))。
【0040】
次に、
図6の(a)に示されるように、プランジャ本体31’の操作部31Aをさらに最下位まで押し込むことによって、ロックピン40の上端部40aが第4傾斜溝31C
5’に到達する(
図6の(b))。そして、プランジャ本体31’の押圧を解除すると、コイルバネ32のバネ力によって、プランジャ本体31’が上方へ押し上げられる。このとき、ロックピン40の上端部40aは、
図6の(d)に示されるように、ロック位置Lで係止する。そして、これによって、プランジャ本体31’の上方への復帰が規制され、ロック状態になる。このため、
図6の(c)に示されるように、コイルバネ32の端部32bが可動接触片23を押し倒すように付勢し続け、可動接点23aが固定接点22aに接触し続ける。
【0041】
次に、上述のロック状態(
図7の(a)及び(b))を解除する場合、
図7の(c)に示されるように、プランジャ本体31’の操作部31Aを一段深く押し下げる。これによって、
図7の(d)に示されるように、ロックピン40の上端部40aがロック位置Lから第5傾斜溝31C
6’へ移動し、ロック状態が解除される。
【0042】
次いで、操作部31Aへの押圧を解除すると、
図8の(a)に示されるように、コイルバネ32が可動接触片23を押し倒す方向に付勢しつつ、プランジャ本体31’を上方へ押し上げるようになる。このとき、ロックピン40の上端部40aは、
図8の(b)に示されるように、第5傾斜溝31C
6’から第6傾斜溝31C
7’を通って、第2傾斜溝31C
3’に復帰する。さらに、プランジャ本体31’が元の位置に自動復帰すると、コイルバネ32の端部32bが所定の位置から可動接触片23を引き起こす方向に付勢する。そして、可動接触片23が回動用受け部21bを支点として瞬間的に回動し、可動接点23aが固定接点22aから開離することになる(
図8の(c))。さらに、可動接触片23が回動すると、可動接触片23の一端部(可動接点23側の端部)は、プランジャ本体31’の押圧用凸部31Dに当接した後、ハウジング50の内側面に設けられた位置規制用凸部53に当接して位置規制される(
図8の(d))。そして、ロックピン40の上端部40aは、カム溝31C’の初期領域31C
1’に復帰する(
図8の(e))。
【0043】
(3)本スイッチの特徴的構成:プランジャ本体31のカム溝の構造(ハートカム機構)
ところで、上述したプランジャ本体31’のカム溝31C’の構造では、スイッチの押圧操作の繰り返しによって、カム溝31C’の傾斜部分が摩耗したり、ロックピン40への押圧力が低下したりする。それゆえ、
図1のスイッチには、ロックピン40の上端部40aが意図しない方向にスライドし、スイッチの開閉機構に支障をきたすという課題が残されている。
【0044】
本スイッチの特徴的構成であるハートカム機構によれば、カム溝底面における階段状部分が摩耗した場合であっても、ロックピン端部の逆方向への移動を防止し、かつ信頼性が高いスイッチ開閉機構を実現できる。
図9は、本スイッチのハートカム機構の構成要素であるプランジャ本体31の構成を示す平面図である。
【0045】
図9に示されるように、カム溝31Cは、ハートカム1及びハートカム1の周辺カム2〜5によって形成されている。ハートカム1は、窪み部1dを有するハート形状であり、窪み部1dと反対側に頂点1a(第1の頂点)を有し、窪み部1d側に2つの頂点1b・1c(第2及び第3の頂点)を有する。また、窪み部1dと対向する周辺カム3には、凸部3a(ロック位置誘導点)が設けられている。
【0046】
スイッチがロック状態(
図7の(a)及び(b))にあるとき、ロックピン40の上端部40aは、ハートカム1の窪み部1dにて係止され、ロック位置Lに位置している。この上端部40aは、スイッチの押込操作中に、ハートカム1の外周のカム溝31Cの底面を、押圧しつつ摺動し、ロック位置Lで窪んだハート状軌跡6に沿って移動する。ここで、ハート状軌跡6において、ロック位置Lと反対側の頂点位置を移動位置1A(第1の位置)とする。そして、ロック位置L側の2つの頂点位置を移動位置1B・1C(第2及び第3の位置)とする。このとき、上端部40aは、移動位置1A、移動位置1B、ロック位置L、移動位置1Cをその順で通過することになる。周辺カム3の凸部3aは、ロックピン40の上端部40aを、移動位置1Bからロック位置Lへ誘導するロック位置誘導点として機能する。
【0047】
また、ハート状軌跡6は、ハートカム1の外形に近い形になっている。すなわち、ハート状軌跡6の移動位置1A〜1Cはそれぞれ、ハートカム1における頂点1a〜1cに対応している。また、ロック位置Lは、ハートカム1における窪み部1d(または周辺カム3の凸部3a)に対応している。
【0048】
ここで、
図9に示されるように、移動位置1A、移動位置1B、ロック位置L、及び移動位置1Dの各位置において、ロックピン40の上端部40aの中心はそれぞれ、頂点1a、頂点1b、凸部3a、及び頂点1cの各部位に対してずれて配されている。頂点1a、頂点1b、凸部3a、及び頂点1cの各部位から押込操作の方向に延びる線を基準線として、移動位置1A、移動位置1B、及びロック位置Lの各位置にある上端部40aはそれぞれ、頂点1a、頂点1b、凸部3a、及び頂点1cの各部位の基準線に対して、上端部40aが次の位置に移動する経路側にずれている。より具体的には、移動位置1Aにある上端部40aの中心は、ハートカム1の頂点1aから押込操作方向に延びる基準線に対し、上端部40aが移動位置1Aから移動位置1Bへ移動する経路側にずれている。また、移動位置1Bにある上端部40aの中心は、ハートカム1の頂点1bから押込操作方向に延びる基準線に対し、上端部40aが移動位置1Bからロック位置Lへ移動する経路側にずれている。また、ロック位置Lにある上端部40aの中心は、周辺カム3の凸部3aから押込操作方向に延びる基準線に対し、上端部40aがロック位置Lから移動位置1Cへ移動する経路側にずれている。さらに、移動位置1Cにある上端部40aの中心は、ハートカム1の頂点1cから押込操作方向に延びる基準線に対し、上端部40aが移動位置1Cから移動位置1Aへ移動する経路側にずれている。
【0049】
本スイッチにおいては、移動位置1A、移動位置1B、ロック位置L、及び移動位置1Cの各位置にある上端部40aについて、上記の位置関係になるように、ハートカム1及び周辺カム2〜5を形成している。このため、上端部40aが各位置を通過しハート状軌跡6に沿って移動するときに、ハートカム1の頂点1a〜1c、または周辺カム3の凸部3aは、上端部40aが次の位置に移動する方向へ上端部40aの移動方向を規制する移動方向規制部としての役割を果たす。このため、上端部40aが逆方向に移動することを防止することができる。よって、移動位置1A、移動位置1B、ロック位置L、及び移動位置1Dの各位置から次の位置への上端部40aの移動がスムーズになる。その結果、本スイッチのハートカム機構によれば、カム溝底面における階段状部分が摩耗した場合であっても、ロックピン端部の逆方向への移動を防止することができ、信頼性が高いスイッチ開閉機構を実現できる。
【0050】
図10は、カム溝31Cの底面の構成を示す。
図10において、(a)は、上面図であり、(b)は(a)のF−F線断面図であり、(c)は(a)のP−P線断面図であり、(d)は(a)のH−H線断面図であり、(e)は(a)のD−D線断面図である。
【0051】
図10の(a)に示されるように、カム溝31Cは、初期領域31C
1、領域31C
2、第1傾斜溝31C
3、第2傾斜溝31C
4、平坦溝31C
5、ロック領域31C
6、第3傾斜溝31C
7、及び第4傾斜溝31C
8からなっている。ここで、
図9に示す移動位置1Aから移動位置1Bへ延びる通路は、初期領域31C
1、領域31C
2、第1傾斜溝31C
3、第2傾斜溝31C
4、及び平坦溝31C
5からなっている。また、移動位置1Bからロック位置Lへ延びる通路(第1の通路)は、平坦溝31C
5及びロック領域31C
6からなっている。また、ロック位置Lから移動位置1Cへ延びる通路(第2の通路)は、ロック領域31C
6及び第3傾斜溝31C
7からなっている。また、移動位置1Cから移動位置1Aへ延びる通路(第3の通路)は、第3傾斜溝31C
7、第4傾斜溝31C
8、及び初期領域31C
1からなっている。
【0052】
ここで、
図10の(c)に示されるように、第2傾斜溝31C
4、平坦溝31C
5の底面は、押込操作方向に垂直な断面(P−P断面)において、移動位置1Bから移動位置1Cへ向かって上端部40aの押圧方向下方に傾斜している。それゆえ、上端部40aは、移動位置1Bから一旦ロック位置L(ロック領域31C
6)へ到達すると、移動位置1B側へ戻ることがなくなる。ここで、上端部40aの「押圧方向」とは、ロックピン40の屈曲部位から上端部40aが伸長する方向ともいえる。
【0053】
また、第3傾斜溝31C
7の底面は、押込操作方向に垂直な断面(P−P断面)において、移動位置1Bから移動位置1Cへ向かうに従って上端部40aの押圧方向に下降するように傾斜している。それゆえ、上端部40aは、ロック位置L(ロック領域31C
6)から一旦移動位置1Cへ到達すると、ロック位置L側へ戻ることがなくなる。
【0054】
このように、第2傾斜溝31C
4、平坦溝31C
5、及び第3傾斜溝31C
7の底面が傾斜しているので、移動位置1Bからロック位置Lへの移動、及びロック位置Lから移動位置1Cへの移動に際し、ロックピン40の上端部40aが逆方向へ移動することを防止することができる。
【0055】
また、
図10の(d)に示されるように、移動位置1Cから移動位置1Aへ延びる通路(第3の通路)において、第4傾斜溝31C
8及び初期領域31C
1(
図9の移動位置1Aに対応)の間には、第4傾斜溝31C
8に比べて初期領域31C
1の底面が押圧方向に沈むように段差Bが形成されている。また、
図10の(a)に示されるように、段差Bは、ハートカム1の頂点1aから押込操作方向へ延びて形成されている。このため、上端部40aは、段差Bを通過して一旦初期領域31C
1に到達すると、段差Bによって第4傾斜溝31C
8側へ戻ることがなくなる。その結果、移動位置1Aにある上端部40aの中心は、確実に、ハートカム1の頂点1aに対し、上端部40aが移動位置1Aから移動位置1Bへ移動する方向側にずれることになるという効果がある。なお、この効果を考慮すると、段差Bは、ハートカム1の頂点1aに対して移動位置1A側に形成されていてもよい。
【0056】
また、移動位置1Cから移動位置1Aへ延びる通路(第3の通路)において、第4傾斜溝31C
8は、移動位置1Cから移動位置1Aへ向かうに従って押圧方向と反対方向に隆起するように傾斜する底面を有する。そして、この第4傾斜溝31C
8の底面の傾斜開始位置Aは、ハートカム1の頂点1cよりも移動位置1A側にある。これによって、移動位置1Cから移動位置1Aへ向かう上端部40aがロック位置Lへ移動するのを防止することができる。また、第4傾斜溝31C
8と初期領域31C
1とにおいて、底面の高低差を十分に確保することができる。
【0057】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。