(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
繊維基材に熱硬化性の樹脂材料を含浸させたプリプレグと、このプリプレグの表面および裏面のうちの少なくとも一方の面に仮接着されたシートとを備える積層体を用意する工程と、
前記積層体を加圧せずに、加熱して前記熱硬化性の樹脂材料の硬化を進行させて、前記シートと前記プリプレグとを本接着する工程とを含む硬化体の製造方法であって、
積層体を用意する前記工程では、
長尺状の前記繊維基材に対して、前記樹脂材料を含浸させて長尺の前記プリプレグを得るとともに、前記樹脂材料を加熱して硬化を進行させて、プリプレグの表裏面のうち少なくとも一方の面に長尺のシートを仮接着し、長尺の前記プリプレグと前記長尺のシートとを有する長尺の前記積層体を用意し、
この積層体を所定の寸法に裁断し、
本接着する前記工程では、裁断された前記積層体を治具に吊り下げた状態で、加圧を行なわずに、加熱する、硬化体の製造方法。
繊維基材に熱硬化性の樹脂材料を含浸させたプリプレグと、このプリプレグの表面および裏面のうちの少なくとも一方の面に仮接着されたシートとを備える積層体を用意する工程と、
前記積層体を加圧せずに、加熱して前記熱硬化性の樹脂材料の硬化を進行させて、前記シートと前記プリプレグとを本接着する工程とを含む硬化体の製造方法であって、
積層体を用意する前記工程では、
長尺状の前記繊維基材に対して、前記樹脂材料を含浸させて長尺の前記プリプレグを得るとともに、前記樹脂材料を加熱して硬化を進行させて、プリプレグの表裏面のうち少なくとも一方の面に長尺のシートを仮接着し、長尺の前記プリプレグと前記長尺のシートとを有する長尺の前記積層体を用意し、
この積層体を所定の寸法に裁断し、
本接着する前記工程では、裁断された前記積層体を水平方向に移動するコンベアに搭載し、コンベアで前記積層体を搬送しながら、加圧を行なわずに、加熱する、硬化体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同一符号を付し、その詳細な説明は重複しないように適宜省略される。
<積層シート>
まず、積層シート40Bについて、
図1を参照しつつ説明する。
【0011】
図1に示す積層シート40Bは、薄板状(平板状)の繊維基材(基材)2と、繊維基材2の一方の面(上面)側に位置し、固形または半固形の第1の樹脂組成物で構成される第1樹脂層(樹脂層)3と、繊維基材2の他方の面(下面)側に位置し、固形または半固形の第2の樹脂組成物で構成される第2樹脂層(樹脂層)4と、第1樹脂層3および第2樹脂層4上にそれぞれ形成された金属層12とを有する。
なお、積層シート40Bにおいて、各樹脂層3,4は完全硬化しており、Cステージ状態である。
この積層シート40Bは、多層プリント配線板(回路基板)に使用されるものであり、コア材として使用されるものである。積層シート40Bの金属層を選択的に除去して回路層を形成し、さらに、この積層シート40Bの表裏面に、プリプレグと回路層とを交互に積層することで、多層プリント配線板(回路基板)が得られる。
【0012】
繊維基材2は、積層シート40Bの機械的強度を向上する機能を有する。
この繊維基材2としては、例えば、ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維や全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のアラミド繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維等を主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙繊維基材等の有機繊維基材等の繊維基材等が挙げられる。
なお、繊維基材は、上述した繊維のいずれか1種を使用してもよいし、2種以上を使用したものであってもよい。
【0013】
これらの中でも、繊維基材2は、ガラス繊維基材であるのが好ましい。かかるガラス繊維基材を用いることにより、積層シート40Bの機械的強度をより向上することができる。また、積層シート40Bの熱膨張係数を小さくすることもできるという効果もある。
【0014】
このようなガラス繊維基材を構成するガラスとしては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス、Qガラス、石英ガラス等のいずれかが挙げられる。これらの中でも、ガラスは、Sガラス、Tガラス、石英ガラスまたはQガラスであるのが好ましい。これにより、ガラス繊維基材の熱膨張係数を比較的小さくすることができ、このため、積層シート40Bをその熱膨張係数ができる限り小さいものとすることができる。
【0015】
繊維基材2の平均厚さTは、特に限定されないが、150μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、10〜50μm程度であるのがさらに好ましい。かかる厚さの繊維基材2を用いることにより、積層シート40Bの機械的強度を確保しつつ、その薄型化を図ることができる。さらには、積層シート40Bの加工性・寸法安定性を向上することもできる。
【0016】
この繊維基材2の一方の面側には、第1樹脂層3が設けられ、また、他方の面側には、第2樹脂層4が設けられている。また、第1樹脂層3は、第1の樹脂組成物で構成され、一方、第2樹脂層4は、第2の樹脂組成物で構成されている。第1の樹脂組成物と第2の樹脂組成物とは同じ組成物であってもよく、異なるものであってもよい。本実施形態では同じ組成物とする。
【0017】
本実施形態では、第1樹脂層3および第2樹脂層4上にそれぞれ金属層12が形成されている。この金属層12は、例えばエッチングやレーザ加工を施すことにより、配線部(導体パターン)となる。このため、第1の樹脂組成物、第2の樹脂組成物は、金属との密着性に優れるような組成に設定されている。
【0018】
図1に示すように、本実施形態では、繊維基材2の厚さ方向の一部に第1の樹脂組成物(第1樹脂層3)が含浸され(以下この部分を「第1の含浸部31」と言う)、繊維基材2の第1の樹脂組成物が含浸されていない残り部分に、第2の樹脂組成物(第2樹脂層4)が含浸されている(以下この部分を「第2の含浸部41」と言う)。これにより、第1樹脂層3の一部である第1の含浸部31と第2樹脂層4の一部である第2の含浸部41とが繊維基材2内に位置する。そして、繊維基材2内において、第1の含浸部31(第1樹脂層3の下面)と第2の含浸部41(第2樹脂層4の上面)とが接触している。換言すれば、第1の樹脂組成物が、繊維基材2の上面側から、繊維基材2に含浸され、第2の樹脂組成物が、繊維基材2の下面側から、繊維基材2に含浸され、これらの樹脂組成物で繊維基材2内の空隙が充填されている。
なお、第1樹脂層3のうち、繊維基材2に含浸されていない領域は、非含浸部32であり、第2樹脂層4のうち、繊維基材2に含浸されていない領域は、非含浸部42である。
本実施形態では、第1の含浸部31の厚みと、第2の含浸部41の厚みは等しい。
さらに、第1樹脂層3の第1の含浸部31を除く部分(第1の非含浸部32)の厚みと、第2樹脂層4の第2の含浸部41を除く部分(第2の非含浸部42)の厚みとは等しい。第1の非含浸部32の厚み、第2の非含浸部42の厚みは、たとえば、2〜20μmである。なお、第1の含浸部31の厚みと、第2の含浸部41の厚みは異なっていてもよく、また、第1の非含浸部32の厚みと、第2の非含浸部42の厚みとが異なっていてもよい。
なお、符号20は、第1の含浸部31と第2の含浸部41との境界線を模式的に示している。
【0019】
図2に示すように、第1樹脂層3は、金属層12が積層された状態で、長尺の薄板状の第1シート5aとして積層シート製造装置30の製造装置30Aに供給される。第2樹脂層4も、金属層12が積層された状態で、長尺の薄板状の第2シート5bとして積層シート製造装置30に供給される。
なお、第1シート5aの第1樹脂層3の金属層12と反対側の面には、第1樹脂層3を支持するための支持基体51が設けられている(
図3参照)。同様に、第2シート5bの第2樹脂層4の金属層12と反対側の面には、第2樹脂層4を支持するための支持基体51が設けられている(
図3参照)。なお、
図2においては、見易さを考慮して、支持基体51の図示は省略している。
支持基体51としては、例えば、樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等のいずれかが挙げられる。そして、樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、これらの中でも、耐熱性に優れ、安価であることから、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、樹脂フィルムは、その樹脂フィルムの樹脂層側の面に剥離可能な処理が施されたものであることが好ましい。これにより、後述するように支持基体51と樹脂層とを容易に分離することができる。
【0020】
支持基体51の厚さは、特に限定されないが、8〜70μm程度であるのが好ましく、12〜40μm程度であるのがより好ましい。
なお、シート5a、5bにおける各樹脂層3,4の厚みは、たとえば、3〜60μm、好ましくは5〜30μmである。
【0021】
金属層12は、前述したように配線部に加工される部分であり、導電性を有する金属材料で構成された、例えば、銅箔あるいはアルミ箔等の金属箔を、対応する樹脂層に接合すること、銅、あるいはアルミニウムを、対応する樹脂層の表面にメッキすること等により形成される。また、本実施形態では、第1樹脂層3や第2樹脂層4は、前述したような特性を有するため、高い密着性で金属層12を保持することができるとともに、高い加工精度で金属層12を配線部に形成することができるようになっている。
この金属層12の厚みは、たとえば、1〜70μmである。
【0022】
さて、第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物は、次のような組成とするのが好ましい。
【0023】
各樹脂組成物は、例えば、熱硬化性樹脂を含み、必要に応じて、硬化助剤(例えば硬化剤、硬化促進剤等)および無機充填材のうちの少なくとも1種を含んで構成される。
【0024】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、マレイミド化合物、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、ビスアリルナジイミド化合物、ビニルベンジル樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、シアネート樹脂、エポキシ樹脂等のいずれか1種以上を使用することができる。これらの中でも、熱硬化性樹脂は、ガラス転移温度が200℃以上になる組合せが好ましい。例えば、スピロ環含有、複素環式、トリメチロール型、ビフェニル型、ナフタレン型、アントラセン型、ノボラック型の2または3官能以上のエポキシ樹脂、シアネート樹脂(シアネート樹脂のプレポリマーを含む)、マレイミド化合物、ベンゾシクロブテン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂のいずれかを用いるのが好ましい。
【0025】
熱硬化性樹脂を用いることにより、さらに、後述する基板を作製した後において、硬化後の第1樹脂層3中において架橋密度が増加するので、硬化後の第1樹脂層3の耐熱性の向上を図ることができる。
【0026】
前記熱硬化性樹脂と充填材を併用することにより、積層シート40Bの熱膨張係数を小さくすること(以下、「低熱膨張化」と言うこともある)ができる。さらに、積層シート40Bの電気特性(低誘電率、低誘電正接)等の向上を図ることもできる。
【0027】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、これらのうち、1種以上を使用できる。
【0028】
これらの中でも、エポキシ樹脂は、ナフタレン型あるいは、アリールアルキレン型エポキシ樹脂であるのが好ましい。ナフタレン型、アリールアルキレン型エポキシ樹脂を用いることにより、硬化後の樹脂層3、4(得られる基板)において、吸湿半田耐熱性(吸湿後の半田耐熱性)および難燃性を向上させることができる。ナフタレン型エポキシとしては、DIC(株)製のHP−4700、HP−4770、HP−4032D、HP−5000、HP-6000、日本化薬(株)製のNC−7300L、新日鐵化学(株)製のESN−375等が挙げられ、アリールアルキレン型エポキシ樹脂としては、日本化薬(株)製のNC−3000、NC−3000L、NC−3000−FH、日本化薬(株)製のNC−7300L、新日鐵化学(株)製のESN−375等が挙げられる。アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に芳香族基とメチレン等のアルキレン基の組合せが一つ以上含むエポキシ樹脂のことをいい、耐熱性、難燃性、および機械的強度が優れる。また、ハロゲンフリーの配線板に対応する上では、実質的にハロゲンを含まないエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0029】
前記シアネート樹脂は、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類やナフトール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。また、このようにして調製された市販品を用いることもできる。
【0030】
前記シアネート樹脂は、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、及びナフトールアラルキル型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらのうち、1種以上を使用できる。
【0031】
また、前記シアネート樹脂は、分子内に2個以上のシアネート基(−O−CN)を有することが好ましい。例えば、2,2'−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、1,1'−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4−ジシアナトビフェニル、及びフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型等の多価フェノール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂、ナフトールアラルキル型の多価ナフトール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂等のいずれかを使用することができる。これらの中で、フェノールノボラック型シアネート樹脂が難燃性、及び低熱膨張性に優れ、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、及びジシクロペンタジエン型シアネート樹脂が架橋密度の制御、及び耐湿信頼性に優れている。特に、フェノールノボラック型シアネート樹脂が低熱膨張性の点から好ましい。また、更に他のシアネート樹脂を1種類あるいは2種類以上併用したりすることもでき、特に限定されない。
【0032】
前記シアネート樹脂は、単独で用いてもよいし、重量平均分子量の異なるシアネート樹脂を併用したり、前記シアネート樹脂とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
【0033】
これらシアネート樹脂を用いることにより、効果的に耐熱性、及び難燃性を発現させことができる。
【0034】
また、前記硬化性樹脂は、2種以上を併用して用いることもできる。例えば、硬化性樹脂として前記エポキシ樹脂を用いる場合、より難燃性を向上させる上で、前記シアネート樹脂を併用することができ、また、より耐熱性を向上させる上で、前記マレイミド化合物を併用することができる。さらに、硬化性樹脂として、前記シアネート樹脂を用いる場合は、より耐熱性や難燃性などを向上させる上で、前記エポキシ樹脂を併用することができる。
【0035】
硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の5〜70質量%であるのが好ましく、10〜50質量%であるのがより好ましい。硬化性樹脂の含有量が前記下限値未満であると、硬化性樹脂の種類等によっては、樹脂組成物のワニスの粘度が低くなりすぎ、積層シート40Bを形成するのが困難となる場合がある。一方、硬化性樹脂の含有量が前記上限値を超えると、他の成分の量が少なくなり過ぎるため、硬化性樹脂の種類等によっては、積層シート40Bの機械的強度が低下する場合がある。
【0036】
また、樹脂組成物は、無機充填材を含むことが好ましい。これにより、プリプレグを薄型化(例えば、厚さ35μm以下)しても、機械的強度に優れる基板を得ることができる。さらに、基板の低熱膨張化を向上することもできる。
【0037】
無機充填材としては、例えば、タルク、アルミナ、ガラス、溶融シリカのようなシリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。また、機充填材の使用目的に応じて、破砕状、球状のものが適宜選択される。これらの中でも、低熱膨張性に優れる観点からは、無機充填材は、シリカであるのが好ましく、溶融シリカ(特に球状溶融シリカ)であるのがより好ましい。
【0038】
また、樹脂組成物は、以上に説明した成分のほか、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、カップリング剤等の密着性付与剤、難燃剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック、アントラキノン類等の着色剤等を挙げることができる。
【0039】
<積層シート製造装置>
次に、上述した積層シート40Bを製造するための製造装置30について説明する。
図2〜10を参照して、製造装置30の概要について説明する。
この製造装置30は、樹脂層3,4と繊維基材2とで構成されるプリプレグの表面および裏面の少なくとも一方の面に、シート(金属層)12が仮接着された積層体(積層シート)40Aを製造する装置30A(
図2参照)と、積層シート40Aを裁断する裁断装置30B(
図8参照)と、裁断された積層シート40Aを硬化させる硬化装置30C(
図9参照)とを備える。
【0040】
積層シート製造装置30について詳細に説明する。
図2,3に示すように、積層シート製造装置30は、積層シート40Aを製造する装置30Aを有する。
この装置30Aは、熱硬化性の樹脂層(たとえば、樹脂層3)とこの樹脂層に設けられた金属層12とを備えるシート(たとえば、シート5a)の前記樹脂層を、繊維基材2の表面および裏面の少なくとも一方の面に当接させて、前記シートと前記繊維基材2とを積層して積層シート40Aを得る積層手段70と、
積層シート40Aを加熱して繊維基材2内部への前記樹脂層の含浸を進行させる第一の加熱手段60と、積層シート40Aを加熱して、繊維基材2内部への前記樹脂層の含浸を進行させる第二の加熱手段90とを含む。
なお、積層シート40Aは、その長手方向に沿って搬送される。
【0041】
図3に示すように、積層手段70は、ハウジング75と、ハウジング75内に収納された第1のローラ71a、71b、第2のローラ72a、72bおよび第3のローラ73a、73bと、ハウジング75内を減圧する減圧手段76とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0042】
図4に示すように、ハウジング75は、間隔をおいて互いに対向配置された一対の壁部751を有する、例えば箱状をなすものである。壁部751の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等の各種金属、またはこれらを含む合金が挙げられる。また、このような金属材料の他に、例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等のような樹脂材料も壁部751の構成材料として用いることができる。
ここで、壁部751は、平板状のものであることが好ましいが、これに限られるものではない。第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとで、シート搬送方向に沿った両端面が開口した筒状体が構成される。壁部751は、この筒状体の前記開口を閉鎖するものであればよい。なお、一対の壁部751は、各ローラ71a、71b、72a、72b、73a、73bが架け渡されるものであることが特に好ましい。
【0043】
ハウジング75の2つの壁部751間には、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとがそれぞれ架設されている。これらのローラは、回転軸が互いに平行となっている。そして、これらのローラは、例えば、多数の歯車が配置された歯車機構(図示せず)を介してモータ(図示せず)と連結されている。そして、このモータが作動すると、その動力が歯車機構を介して伝達され、各ローラがそれぞれ回転することとなる。言うまでもないが、各ローラの駆動は歯車機構に限定されず、必要に応じ、各ローラに対して個別にモータを接続して駆動させてもよい。
【0044】
なお、これらのローラは、太さが異なること以外は同一の構成である。以下、第1のローラ71aの構成について代表的に説明するが、他のローラも同様の構造である。
【0045】
図4に示すように、第1のローラ71aは、外形形状が円柱状をなし、その長手方向の中間部に位置する本体部711と、本体部711の両端側にそれぞれ位置する軸712とで構成されている。各軸712は、それぞれ、その外径が本体部711の外径よりも縮径している。
【0046】
この第1のローラ71aは、各軸712がそれぞれ壁部751に設置された軸受け(ベアリング)771に挿入されており、当該軸受け771により回転可能に壁部751に支持されている。
【0047】
なお、第1のローラ71aは、本実施形態では、中実体のものであるが、これに限定されず、例えば、中空体のものであってもよい。中空体を用いる場合は、必要に応じて各ローラに熱媒を循環させてローラを加熱することができるためさらに好ましい。この場合の熱媒は、特に限定されないが例えば水、油等が挙げられる。
【0048】
また、第1のローラ71aの構成材料としては、特に限定されず、例えば、壁部751の構成材料で挙げた材料を用いることができる。第1のローラ71aの本体部711の外周面711Aには、外周面711Aが摩耗するのを防止する処理が施されていてもよい。この処理としては、例えば、外周面711AにDLC(Diamond Like Carbon)の被膜を形成する方法が挙げられる。また、第1のローラ71aの構成材料としては、壁部751の構成材料で挙げた材料の他に、例えば、ニトリルゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料も用いることができる。
【0049】
第1のローラ71aと第1のローラ71bとは、水平方向に互いに平行に配置され、本体部711の外周面711A同士が、繊維基材2を介して、互いに当接し(圧接し)合っている(
図3参照)。そして、第1のローラ71aと第1のローラ71bとが回転すると、これらの間で長尺状の繊維基材2を
図3中の左側から右側へ搬送することができる。これにより、シート状の長尺の繊維基材2が後述する空間S内部に搬送されることとなる。
【0050】
第2のローラ72aと第2のローラ72bとは、第1のローラ71a、71bと異なる位置、すなわち、第1のローラ71a、71bに対し繊維基材2の搬送方向前方(下流側)に配置されている。また、第2のローラ72aと第2のローラ72bとは、水平方向に互いに平行に配置され、本体部711の外周面711A同士が、繊維基材2、第1樹脂層3および第2樹脂層4を介して、互いに当接し(圧接し)合っている。そして、第2のローラ72aと第2のローラ72bとが回転すると、これらの間で繊維基材2に第1樹脂層3と第2樹脂層4とをそれぞれ圧着することができる(
図3参照)。この場合、前述したように、第2のローラ72a、72bに熱媒を循環させることにより加熱圧着させることが可能となる。これにより、繊維基材2に対して第1樹脂層3と第2樹脂層4の密着性が向上する。
また、第2のローラ72a、72bを加熱ローラとすることで、繊維基材2に対して第1樹脂層3と第2樹脂層4とを含浸させやすくすることができる。なお、第2のローラ72a、72bの温度は、樹脂層3,4の溶融温度よりも高いことが好ましい。
第2のローラ72a、72bにより、積層シート40Aは後述する空間S外部に送り出される。ここで、第2のローラ72a、72bにより、積層シート40Aは大気圧以上の雰囲気下に送り出されることが好ましい。本実施形態では、第2のローラ72a、72bのシート搬送方向下流側は大気圧であり、第2のローラ72a、72bにより、積層シート40Aは大気圧下に搬送されることとなる。
【0051】
第3のローラ73a、73bは、繊維基材2を挟んで配置されている。第3のローラ73aは、繊維基材2の一方の面側(表面側)に配置された第1のローラ71aのシート搬送方向下流側であり、繊維基材2の一方の面側(表面側)に配置された第2のローラ72aのシート搬送方向上流側に配置されている。
第3のローラ73bは、繊維基材2の他方の面側(裏面側)に配置された第1のローラ71bのシート搬送方向下流側であり、繊維基材2の他方の面側(裏面側)に配置された第2のローラ72bのシート搬送方向上流側に配置されている。
第3のローラ73aと第3のローラ73bとは、互いに上下方向(鉛直方向)に離間し、水平方向には平行に対向配置されている。そして、第3のローラ73aが回転すると、第1シート5aの第1樹脂層3から支持基体51を剥離する(巻き取る)ことができる(
図3参照)。これと同様に、第3のローラ73bが回転すると、第2シート5bの第2樹脂層4から支持基体51を剥離することができる(
図3参照)。
【0052】
さらに、第3のローラ73aは、その本体部711の外周面711Aが、第1のローラ71aの本体部711の外周面711Aと、第2のローラ72aの本体部711の外周面711Aとにそれぞれ当接している。一方、第3のローラ73bは、その本体部711の外周面711Aが、第1のローラ71bの本体部711の外周面711Aと、第2のローラ72bの本体部711の外周面711Aとにそれぞれ当接している。このような配置により、製造装置30Aでは、ハウジング75の各壁部751と、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとで囲まれた空間Sが形成される。空間Sは、減圧手段76の作動により減圧される(
図3参照)。
【0053】
再度、
図4に示すように、第1のローラ71aおよび71b(第2のローラ72aおよび72b、第3のローラ73aおよび73bについても同様)のそれぞれの本体部711の両端と、各壁部751との間には、シール材77が介在している。各シール材77は、それぞれ、リング状の弾性体で構成され、壁部751に形成されたリング状の凹部751Aに圧縮状態で挿入されている。これにより、空間Sの気密性が確実に維持され、よって、減圧手段76で空間Sを減圧した際、その減圧が迅速かつ確実に行なわれる。
【0054】
シール材77の構成材料としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0055】
図3に示すように、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとは、互いに本体部711の外径(大きさ)が異なっている。本実施形態では、その大小関係は、(第3のローラ)<(第1のローラ)<(第2のローラ)となっている。また、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとの各ローラの大きさは任意であるが、例えばローラに可撓性を有するシート材を沿わせたときに当該シート材に皺が生じない程度に、できる限り小さいのが好ましい。具体的には、直径が75〜300mmであるのが好ましく、100〜200mmであるのがより好ましい。
【0056】
また、第1のローラ71aと第2のローラ72aと第3のローラ73aとの中心同士を結んで形成された三角形を想定したとき、当該三角形の第3のローラ73aの中心を頂点とする角度は、60°を超え、180°未満であるのが好ましい。第1のローラ71bと第2のローラ72bと第3のローラ73bとの中心同士を結んで形成された三角形についても同様である。
【0057】
図5に示すように、減圧手段76は、ポンプ761と、ポンプ761と各壁部751にそれぞれ形成された開口部751Bとを接続する接続管762とを有している。ポンプ761は、ハウジング75の外側に設置され、例えば真空ポンプが適用される。
減圧手段76は、ローラで囲まれた空間S内部を、空間S外部の領域よりも低い気圧とする。減圧手段76を駆動することで、第1のローラ71a、71bよりもシート搬送方向上流側の領域、第2のローラ72a、72bよりも、シート搬送方向下流側の領域よりも空間Sの気圧は低くなる。第1のローラ71a、71bを境界とし、この第1のローラ71a、71bよりもシート搬送方向上流側の領域は、大気圧以上(本実施形態では、大気圧下)である。
同様に、第2のローラ72a、72bを境界とし、第2のローラ72a、72bよりも、シート搬送方向下流側の領域は、大気圧以上(本実施形態では、大気圧下)である。
【0058】
各接続管762は、それぞれ、例えばステンレス鋼等のような金属材料で構成された硬質管である。
【0059】
各開口部751Bは、それぞれ、空間Sに向かって開口し、空間Sに連通している。なお、
図5に示す構成では双方の壁部751にそれぞれ開口部751Bが形成されているが、これに限定されず、例えば、一方の壁部751にのみ開口部751Bが形成されていてもよい。
【0060】
そして、ポンプ761を作動させることにより、各開口部751Bから空間S内の気体(空気G)を吸引することができ、よって、空間Sを減圧することができる。また、これにより、隣接するローラ同士が互いに近づこうとする力が生じてさらに圧接し合い、よって、空間Sの気密性がより確実に維持される。
【0061】
なお、
図10に、
図3のD-D方向の繊維基材2、樹脂層3,4の断面図を示す。繊維基材2の搬送方向と直交する方向の幅寸法は、第1樹脂層3および第2樹脂層4の搬送方向と直交する方向の幅寸法よりも小さい。
前述したように、一対の第2のローラ72a、72bにより、繊維基材2、第1樹脂層3および第2樹脂層4が圧着される。このとき、第1樹脂層3の幅方向の一方の端部と、第2樹脂層4の幅方向の一方の端部とが溶融して、圧着(熱圧着)されるとともに、第1樹脂層3の幅方向の他方の端部と、第2樹脂層4の幅方向の他方の端部とが溶融して、圧着(熱圧着)される。これにより、樹脂層3,4の端部同士が直接接合されて、接合部が形成され、繊維基材2が第1樹脂層3および第2樹脂層4内に内包される形となる。すなわち、積層シート40Aの幅方向の両端部は密閉された状態となる。
繊維基材2は、複数の孔が形成された多孔質材である。繊維基材2に形成された孔は、他の孔を介して、シート搬送方向に連通し、さらに、繊維基材2表裏面に連通する。そのため、空間S外部に位置する繊維基材2であっても、その内部は、空間Sに連通することとなる。空間S外部に位置する繊維基材2内部の気体(空気)は、繊維基材2内部の孔および空間Sを介して、減圧手段により吸引されることとなる。
【0062】
次に、
図2,3を参照して、積層手段70のシート搬送方向下流側に配置される第一の加熱手段60について説明する。
積層手段70のローラ72a、72bから、金属層12、樹脂層4、繊維基材2、樹脂層3、金属層12で構成される積層シート40Aが連続的に送出される。ここで、ローラ72a、72bにより、樹脂層3,4は繊維基材2に圧着されるが、このとき、樹脂層3,4の一部が、繊維基材2内部に含浸される。ただし、ローラ72a、72bにより、繊維基材2内部が完全に樹脂層3,4で埋まってしまうことはない。
第一の加熱手段60には、連続的に積層シート40Aが供給され、積層シート40Aを加熱して繊維基材2内部への樹脂層3,4の含浸をさらに、進行させる。
第一の加熱手段60は、たとえば、少なくとも一対の加熱ローラ61a、61bを備える。本実施形態では、第一の加熱手段60は複数対の加熱ローラ61a、61bを有している。加熱ローラ61a、61b間に、積層シート40Aが供給され、積層シート40Aは、加熱ローラ61a、61bで挟圧されるとともに、加熱されることとなる。
加熱ローラ61a、61bは、回転することで、積層シート40Aを搬送する機能も有する。
なお、ここでは、第一の加熱手段60は、加熱ローラを備えるとしたが、これに限らず、第一の加熱手段は、積層シートの搬送方向に沿って延在するヒータ等の加熱部を有していてもよい。
第一の加熱手段60により、積層シート40Aは搬送されながら、加熱されることとなる。
第一の加熱手段60により、積層シート40Aを加熱する際の加熱温度は、後述する第二の加熱手段90による加熱温度よりも低いことが好ましい。また、積層シート40Aを加熱する際の加熱温度は、ローラ72a、72bによる加熱温度よりも低いことが好ましい。たとえば、第一の加熱手段60による積層シート40Aの加熱温度は、80〜180℃であることが好ましく、第二の加熱手段90による積層シート40Aの加熱温度は、80〜200℃であることが好ましい。第一の加熱手段60では、主として樹脂層3,4の繊維基材2内部への含浸を進行させる。第二の加熱手段90での加熱温度よりも低い温度で、第一の加熱手段60により、積層シート40Aを加熱することで、樹脂層3,4の硬化が進行しすぎることを防止するとともに含浸を進行させている。
一方で、第二の加熱手段90では、第一の加熱手段60よりも高い温度で加熱することで、樹脂層3,4の硬化を進行させて、硬化の程度を調整し、所望の硬化率とする。ただし、第二の加熱手段90において、樹脂層3,4の繊維基材2内部への含浸を進行させてもよい。
【0063】
さらには、第一の加熱手段60により、積層シート40Aを加熱する際に、積層シート40Aには、搬送方向に所定の張力が加わっていることが好ましい。ただし、第一の加熱手段60により、積層シート40Aを加熱する際に、積層シート40Aにかかる張力は、第二の加熱手段90により、積層シート40Aを加熱する際に、積層シート40Aにかかる張力よりも大きいことが好ましい。第一の加熱手段60により、積層シート40Aを加熱する際に、積層シート40Aにかかる張力は、たとえば50〜500Nであり、第二の加熱手段90により、積層シート40Aを加熱する際に、積層シート40Aにかかる張力は10〜200Nであることが好ましい。
このようにすることで、第一の加熱手段60で積層シート40Aの加熱を行ない、繊維基材2内部へ樹脂層3,4を十分に含浸させることができる。
第一の加熱手段60のシート搬送方向下流側には、第一の加熱手段60から送出されたローラを後段の第二の加熱手段90へ搬送するための搬送ローラR1が配置されている。
【0064】
さらに、
図2に示すように、第一の加熱手段60の積層シート搬送方向下流側には、第二の加熱手段90が配置されている。第一の加熱手段60で加熱された積層シート40Aは、第二の加熱手段90で加熱される。この第二の加熱手段90は、
図2、
図7に示すように、縦型加熱炉91を含んで構成される。本実施形態は、第二の加熱手段90は、複数の縦型加熱炉91を備えている。搬送ローラR2,3により、縦型加熱炉91内に連続的に積層シート40Aが供給される。一方の縦型加熱炉91内部では、積層シート40Aが、鉛直方向下方側から上方側に向かって搬送される。また、搬送ローラR3、R2により、他方の縦型加熱炉91内部では、積層シート40Aが、鉛直方向上方側から下方側に向かって搬送される。
搬送ローラR2,R3間の距離はたとえば、5m程度である。
各加熱炉91内部には、積層シート40Aをその長手方向に沿って搬送するとともに、積層シート40Aを厚み方向から挟圧する少なくとも一対の加圧ローラ92(本実施形態では複数対の加圧ローラ)が配置されている。
この加圧ローラ92は内部にヒータが配置されており、積層シート40Aを加圧するとともに加熱する。
また、加圧ローラ92とは別に、加熱炉91内部にはヒータ等の加熱手段が配置されており、加熱炉91内部を通過することで、積層シート40Aが加熱されることとなる。
なお、本実施形態では、第二の加熱手段90は、縦型加熱炉91を備えるとしたが、これに限らず、横型の加熱炉であってもよい。たとえば、エアーにより、積層シート40Aを裏面側から支持しながら、横型の加熱炉内を搬送してもよい。
また、繊維基材2の一方の面にのみ、シート5aあるいはシート5bを設ける場合には、加圧ローラ92はなくてもよく、また、加圧ローラ92の位置を移動させて、繊維基材2に触れないようにしてもよい。
第二の加熱手段90のシート搬送方向下流側には、巻き取りローラR4が配置されており、巻き取りローラR4により、積層シート40Aが巻き取られる。
なお、本実施形態では、巻き取りローラR4で積層シート40Aを巻き取るとしたが、積層シート40Aを巻き取らずに、所定の長さに裁断してもよい。
この製造装置30Aで製造された積層シート40Aの樹脂層3,4はいずれも、半硬化であり、Bステージの状態である。この製造装置30Aで製造されたプリプレグである積層シート40Aでは、繊維基材2内部は、樹脂層3,4により完全に埋め込まれている。ただし、繊維基材2内部が樹脂層3,4に完全に埋め込まれておらず、繊維基材2内部に空隙が形成されていてもよい。
【0065】
次に、
図8を参照して、裁断装置30Bについて説明する。
この裁断装置30Bは、積層シート40Aの平坦化を行う平坦化手段81と、積層シート40Aを所定の寸法に裁断する裁断手段82とを備える。
平坦化手段81は、巻きとりローラから送出される積層シート40Aを挟んで配置された一対のローラ811であり、積層シート40Aの巻き癖をなおし、積層シート40Aを平坦化する。平坦化手段81には、積層シート40Aがその長手方向に沿って連続的に供給される。
この平坦化手段81よりも、積層シート搬送方向下流側には、裁断手段82が配置されている。この裁断手段82は、ブレードを有し、積層シート40Aを所定の寸法に裁断する。
裁断手段82で裁断された積層シート40Aは、ベルトコンベアB1により、載置台Dまで搬送される。このようにして裁断された積層シート40Aの樹脂層3,4はいずれも、半硬化であり、Bステージの状態である。
【0066】
次に、
図9を参照して、硬化装置30Cについて説明する。硬化装置30Cは、裁断装置30Bで裁断された積層シート40Aの樹脂層3,4の硬化を行い、積層シート40Bとするものである。
図9(A)に示すように、硬化装置30Cは、裁断された積層シート40Aを加熱して、硬化させる。このとき、積層シート40Aを外部から加圧せずに、積層シート40Aを加熱して硬化させる。具体的には、硬化装置30Cは、加熱炉85と、この加熱炉85内に配置されたヒータ86である加熱手段と、積層シート40Aをつりさげる治具87とを備える。
治具87は、積層シート40Aをその表裏面が鉛直方向と平行となるように、積層シート40Aをつりさげるためのものである。治具87により、積層シート40Aは、水平方向に延在する支持材88に取り付けられ、吊り下げられた状態となる。そして、治具87により、積層シート40Aの端部を把持した状態で、積層シート40Aの加熱硬化を行う。これにより、積層シート40Aは完全硬化(Cステージ)し、金属層12と樹脂層3,4とが本接着されることとなる。これにより積層シート40Bが得られる。
加熱炉85内には複数の積層シート40Aがつりさげられて、複数の積層シート40Aの加熱硬化が同時に行われる。なお、この加熱炉85内から、積層シート40Bを取り出し、冷却をおこなう。冷却も、
図9(B)に示すように、積層シート40Bをその表裏面が鉛直方向と平行となるように、積層シート40Bをつりさげて行うことが好ましい。
【0067】
<製造方法>
次に、積層シート製造装置30による積層シート40Bの製造方法について説明する。
はじめに、製造方法の概要について説明する。
本実施形態の製造方法は、繊維基材2に対して、熱硬化性の樹脂材料が含浸したプリプレグと、このプリプレグの表面および裏面のうちの少なくとも一方の面に仮接着されたシート(金属層12)とを備える積層体(積層シート40A)を用意する工程と、前記積層体を加圧せずに、加熱して前記熱硬化性の樹脂層の硬化を進行させて、前記シートと前記プリプレグとを本接着する工程とを含む。
【0068】
次に製造方法について、詳細に説明する。
はじめに、装置30Aにより、積層シート40Aを製造する。
まず、シート5a、5bを用意する。
長尺の金属層12を用意して、この金属層12に対し、第1樹脂層3となる樹脂ワニスを塗布する。そして、乾燥装置で乾燥させて、所望の厚みの第1樹脂層3を形成する。
第1樹脂層3は、長尺であり、金属層12とともに、延在する。
さらに、第1樹脂層3を被覆する支持基体51を第1樹脂層3にラミネートする。
これにより、長尺のシート5aが得られる。
同様の方法で、シート5bも用意する。長尺の金属層12を用意して、この金属層12に対し、第2樹脂層4となる樹脂ワニスを塗布する。そして、乾燥装置で乾燥させて、所望の厚みの第2樹脂層4を形成する。第2樹脂層4は、長尺であり、金属層12とともに、延在する。さらに、第2樹脂層4を被覆する支持基体51を第2樹脂層4にラミネートする。
本実施形態では、あらかじめ金属層12上に第1樹脂層3となる樹脂ワニス(あるいは第2樹脂層4となる樹脂ワニス)を塗布しており、この樹脂ワニスを乾燥させて、第1樹脂層3(第2樹脂層4)を形成している。そのため、金属層12と、樹脂層とを加圧で張り合わせる場合に比べて、樹脂層と金属層との接着性を高めることができる。
【0069】
次に、第1のローラ71a、71bと、第2のローラ72a、72bと、第3のローラ73a、73bとが回転するのに先立ち、減圧手段76を作動させ、空間S内の気体を吸引して、空間S内を減圧しておく(
図3参照)。
空間S内の気圧は、たとえば、800Pa以下、100Pa以上である。
【0070】
図3に示すように、第1のローラ71aと第1のローラ71bとが回転すると、これらのローラ間から繊維基材2が空間S内に送り出される(連続的に供給される)。
【0071】
また、第2のローラ72aと第3のローラ73aとが回転すると、これらのローラ間から第1シート5aが空間S内に送り出される(連続的に供給される)。
ここで、第1シート5aは、前述したように、支持基体51、第1樹脂層3、金属層12をこの順に積層してなるものである。
この第1シート5aは、支持基体51が第3のローラ73aの外周面に沿って巻き取られ(引張られ)、これにより、第1樹脂層3から支持基体51が剥離される。支持基体51が剥離した第1樹脂層3は、第2のローラ72aに沿って徐々に繊維基材2に接近していく。また、剥離された支持基体51は、第1のローラ71aと第3のローラ73aとにより、第2のローラ72a、72bとは異なる方向に送出される。具体的には、第1のローラ71aと第3のローラ73aとの間から外側(空間S外)に向かって送り出される。また、第1樹脂層3は、Bステージの状態であり、固形、半固形、あるいは液体の状態である。
【0072】
また、第2のローラ72bと第3のローラ73bとが回転すると、これらのローラ間から第2シート5bが空間S内に送り出される(連続的に供給される)。ここで、第2シート5bは、前述したように、支持基体51、第2樹脂層4、金属層12をこの順に積層してなるものである。
この第2シート5bは、支持基体51が第3のローラ73bに巻き取られ、これにより、第2樹脂層4から支持基体51が剥離される。支持基体51が剥離した第2樹脂層4は、第2のローラ72bに沿って徐々に繊維基材2に接近していく。また、剥離された支持基体51は、第1のローラ71bと第3のローラ73bとにより、第2のローラ72a、72bとは異なる方向に送出される。具体的には、第1のローラ71bと第3のローラ73bとの間から外側に向かって送り出される。
また、第2樹脂層4は、Bステージの状態であり、固形、半固形、あるいは液体の状態である。
【0073】
このように第1樹脂層3および第2樹脂層4がそれぞれ繊維基材2と圧着される直前(以前)に空間S内で支持基体51が剥離することができることにより、当該支持基体51が各樹脂層の圧着の邪魔になるのを防止することができるとともに、圧着直前まで支持基体51で各樹脂層を保護することができる。
【0074】
そして、繊維基材2と、第1樹脂層3と、第1樹脂層3に設けられた金属層12と、第2樹脂層4と、第2樹脂層4に設けられた金属層12とは、第2のローラ72aと第2のローラ72bとの間を一括して通過することとなる。これらは、その長手方向に沿って搬送される。このとき、
図6に示すように、第2のローラ72aと第2のローラ72bとの間の圧接力(当接力)F1により、第1樹脂層3が上側から繊維基材2に押圧される(押し付けられる)とともに、第2樹脂層4が下側から繊維基材2に押圧される。これにより、積層シート40Aが得られる。積層シート40Aは、第2のローラ72aと第2のローラ72bとの間から連続的に排出されて、第一の加熱手段60に供給されることとなる。
なお、ここで、繊維基材2等が連続的に供給される、あるいは排出されるとは、枚葉式のように、繊維基材等が間欠的に供給、あるいは排出されるものを除く趣旨である。たとえば、空間S内に繊維基材2等が存在する状態と、存在しない状態とが短期間で交互にいれかわるものを除く趣旨である。ただし、必要に応じて、繊維基材2等の搬送を停止してもよい。
【0075】
また、製造装置30Aでは、減圧すべき空間を、第1のローラ71aおよび71bと、第2のローラ72aおよび72bと、第3のローラ73aおよび73bとで囲まれた空間Sとして、できる限り小さくすることができる。これにより、製造装置30Aが小型のものとなる。また、減圧手段76を作動させた際、その減圧を迅速に行なうことができる。また、高真空化も可能である。
【0076】
また、前述したように、空間Sは、減圧手段76の作動により減圧されている。これにより、
図6に示すように、空間S内に生じた減圧力F2が、第1樹脂層3の繊維基材2への押圧と、第2樹脂層4の繊維基材2への押圧とを補助することができる。
【0077】
また、繊維基材2と第1樹脂層3とが接合する際、これらの間に空気が溜まっていたとしても圧接力F1によりその空気を押し出すことができ、よって、空気が溜まったまま接合がなされてしまうのを確実に防止することができる(繊維基材2と第2樹脂層4との接合時についても同様)。
【0078】
このような圧接力F1による押圧と減圧力F2による押圧とが相まって、樹脂層3,4を繊維基材2に強く圧着することができる。これにより、繊維基材2内部に樹脂層3,4を含浸させることができる。これに加え、第2のローラ72aと第2のローラ72bを加熱ローラとすることで、樹脂層3,4を繊維基材2内部に含浸させやすくすることができる。
さらに、空間S内を減圧することで、繊維基材2内部の気体が吸引されることとなり、繊維基材2内部に含浸した樹脂層中にボイドが発生しにくくなる。
なお、第2のローラ72aと第2のローラ72bにより、樹脂層3,4の一部が繊維基材2内部に含浸するものの、完全に含浸することはない。この工程において、樹脂層3,4は、繊維基材2に含浸するものの、第2のローラ72a、72bから送り出された積層シート40Aの繊維基材2内部は、空間S内に位置する繊維基材2内部と連通している。
また、第2のローラ72aと第2のローラ72bにより、樹脂層3,4を繊維基材2内部に含浸させることで、所望の含浸度の積層シート40Bを得ることができる。
すなわち、第二の加熱手段90による加熱後に、樹脂層3,4の含浸が不十分となってしまうことを防止できる。
【0079】
第2のローラ72aと第2のローラ72bにより、積層シート40Aは、空間Sの外部に連続的に送出され、第一の加熱手段60に供給される。
第一の加熱手段60では、前述したように、加熱ローラ61a、61bで加熱されるとともに、加圧される。これにより、樹脂層3,4の繊維基材2内部への含浸が進行することとなる。また、第一の加熱手段60により、樹脂層3,4の硬化も進行する。ただし、第一の加熱手段60による加熱終了後においても、樹脂層3,4はBステージの状態である。第一の加熱手段60により積層シート40Aへの加熱を実施することで、樹脂層3,4の硬化を進行させる
【0080】
前述したように、一対の第2のローラ72a、72bにより、繊維基材2、第1樹脂層3および第2樹脂層4が圧着される。このとき、第1樹脂層3の幅方向の一方の端部と、第2樹脂層4の幅方向の一方の端部とが熱圧着されるとともに、第1の樹脂層3の幅方向の他方の端部と、第2の樹脂層4の幅方向の他方の端部とが熱圧着される。樹脂層3,4の幅方向の端部同士が溶融接合されて、繊維基材2が第1樹脂層3および第2樹脂層4内に内包される形となる。すなわち、積層シート40Aの幅方向の両端部は密閉された状態となる(
図10参照)。
繊維基材2は、複数の孔が形成された多孔質材である。繊維基材2に形成された孔は、他の孔を介して、シート搬送方向に連通し、さらに、繊維基材2表裏面に連通する。そのため、空間S外部に位置する繊維基材2であっても、その内部は、空間Sに連通することとなる。空間S外部に位置する繊維基材2内部の気体は、繊維基材2内部の孔および空間Sを介して、減圧手段により吸引されることとなる。第一の加熱手段60による加熱の際、加熱されている積層シート40Aの繊維基材2の内部は、空間S内部に存在する繊維基材2の内部と連通している。従って、空間S内を減圧することで、空間S内に位置する繊維基材2を介して、第一の加熱手段60により加熱されている積層シート40Aの繊維基材2内部が減圧されることとなる。すなわち、第一の加熱手段60では、繊維基材2内部の気体が減圧手段76に吸引されている間に、樹脂層3,4の繊維基材2への含浸が進行することとなる。これにより、樹脂層3,4が繊維基材2内部へ含浸する際に、繊維基材2内部に気体が残存してしまうことを抑制できて、繊維基材2内でボイドが発生することを抑制できる。
これに加えて、積層シート40Aにおいて、繊維基材2の搬送方向側の端面は、樹脂層3,4に被覆されており、露出していない。そのため、積層シート40Aの繊維基材2の前記端面側から気体が積層シート40Aの繊維基材2内部に流入してしまうことが防止され、積層シート40Aの繊維基材2内部を確実に減圧できる。これによっても、第一の加熱手段60で積層シート40Aを加熱して、樹脂層3,4が繊維基材2内部へ含浸する際に、繊維基材2内部に気体が残存してしまうことを抑制できる。
【0081】
さらには、積層シート40Aの繊維基材2内部が減圧されるので、これにより、樹脂層3,4が繊維基材2内部側に引っ張られて、樹脂層3,4の繊維基材2内部への含浸がさらに進行することとなる。
【0082】
さらに、積層シート40A内部の繊維基材2内は、減圧されるものの、積層シート40Aは、大気圧以上(本実施形態では、大気圧下)の雰囲気下に存在している。これにより、第一の加熱手段60で加熱される積層シート40Aには、外部から大気圧以上の力がかかる。これによっても、樹脂層3,4の繊維基材2内部への含浸を促進させることができる。
また、第一の加熱手段60により、繊維基材2内部に繊維基材2の搬送方向に沿った端面に連通する孔が存在しないように、繊維基材2内部へ樹脂層3,4を十分に含浸させる。
【0083】
第一の加熱手段60では、積層シート40Aを搬送しながら、繊維基材2への樹脂層3,4の含浸が進行することとなる。その後、積層シート40Aは、第一の加熱手段60を通り、搬送ローラR1により、第二の加熱手段90へと搬送される。次に、積層シート40Aは、第二の加熱手段90により加熱されることとなる(
図2、7参照)。
具体的には、搬送ローラR2により、積層シート40Aは、一方の縦型加熱炉91内を鉛直方向上向きに搬送されながら、加熱される。その後、一方の縦型加熱炉91から積層シート40Aが送り出されて、その後、他方の縦型加熱炉91内に積層シート40Aが送り込まれる。積層シート40Aは、他方の縦型加熱炉91内を鉛直方向下向きに搬送されながら、加熱される。
この加熱工程では、積層シート40Aを縦型加熱炉内で搬送している間に、樹脂層3,4の硬化が進行する。
第二の加熱手段90を縦型加熱炉91で構成することで、製造装置の設置スペースを省スペース化できる。
【0084】
なお、第二の加熱手段90による加熱終了後においても、樹脂層3,4はBステージの状態である。
【0085】
第二の加熱手段90による加熱が終了した後、
図2に示すように、積層シート40Aは、巻き取りローラR4に巻きとられることとなる
以上のようにして積層シート40Aが得られる。以上の工程が、プリプレグ(繊維基材2、樹脂層3,4とで構成される)と、プリプレグに対して仮接着された金属層12とを備える積層シート40Aを用意する工程である。
以上の工程では、ローラ72a、72b、第一の加熱手段60、第二の加熱手段90の加熱により樹脂層3,4の硬化が進行し、樹脂層3と金属層12との接着強度、樹脂層4と金属層12との接着強度が高まる。これにより、金属層12が、プリプレグに対して、仮接着された積層シート40Aが得られる。以上の工程では、後段で積層シート40Aを裁断し、裁断した積層シート40Aを吊り下げた際に、金属層12がプリプレグから剥離しないように金属層12がプリプレグに仮接着されている。
【0086】
次に、
図8に示すように、巻きとりローラR4から積層シート40Aが装置30Bに連続的に供給される。そして装置30Bの平坦化手段81により、積層シート40Aが挟圧されて、積層シート40Aが平坦化される。その後、裁断手段82により、積層シート40Aが所定の寸法に裁断される。
次に、
図9(A)に示す硬化装置30Cの治具87で積層シート40Aの端部を把持し、加熱炉85内に複数の積層シート40Aをつりさげる。そして、大気圧下で外部から加圧せずに、無加圧の状態で、積層シート40Aの加熱硬化を行う。加熱硬化時において、積層シート40Aは、その厚さ方向および厚さ方向と直交する方向から、挟圧されることがない。
積層シート40Aは完全硬化(Cステージ)し、金属層12と樹脂層3,4とが本接着されることとなる。これにより積層シート40Bである硬化体が得られる。この本接着工程における積層シート40Aの加熱温度は、硬化体である積層シート40Bのガラス転移点未満であることが好ましい。このようにすることでリフロー工程時の寸法変化を小さくできる、という効果がある。また、前記ガラス転移点以下で積層シート40Aを加熱することで、樹脂層3、4、金属層12の変色や、樹脂層3,4の劣化を抑制することができる。なお、加熱硬化する際に、積層シート40Aのふらつきや、そりの発生を防止するために、積層シート40Aを固定する冶具を使用してもよい。
ただし、硬化体である積層シート40B内部に発生する残留応力を低減する観点からは、積層シート40Aには、自重を超える荷重や張力をかけないことが好ましい。
なお、Cステージとは、DSCにて加熱硬化した場合に、発熱がほとんど観察できない場合であり、硬化率が90%以上の状態である。
本実施形態では、加熱炉85内で積層シート40Aを吊り下げて、積層シート40Aの硬化を行なっている。このようにすることで、積層シート40Aの硬化を行なうスペースの省スペース化を図ることができる。また、積層シート40Aを吊り下げるため、積層シート40Aの端部のみが治具に接触するだけであり、積層シート40Aの表裏面の大部分は、治具等に接触しない。そのため、積層シート40Aの表裏面に積層シート40Aを支持する部材の痕が生じてしまうことを防止できる。
【0087】
その後、
図9(B)に示すように、この加熱炉85内から、積層シート40Bを取り出し、冷却をおこなう。この本接着工程における樹脂層3,4の硬化率をβとし、前述した積層シート40Aを用意する工程の積層シート40Aの樹脂層3,4の硬化率をαとした場合、β-αは、5%〜90%である。なかでも、好ましくは、β-αは20〜80%である。
硬化率はDSCにより発熱ピークを計測することで算出することができる。また、硬化率を算出する際には、シート5a、5bの状態の樹脂層の硬化率を0%とする。
以上の工程により積層シート40Bが得られるが、積層シート40Bにおけるプリプレグと金属層12との接着強度は、プリプレグに対して仮接着された金属層12を有する積層シート40Aにおけるプリプレグと金属層12との接着強度よりも高い。
ここでいう接着強度は、ピール強度であり、JIS C 6481の90度引き剥がし法に準じて測定できる。具体的には、金属層をプリプレグの樹脂層に対して90度方向に引き剥がして測定することができる。
プリプレグに対して仮接着された金属層12を有する積層シート40Aにおけるピール強度は、たとえば、0.2〜0.4N/mm
2であることが好ましく、積層シート40Bにおけるプリプレグと金属層12との接着強度は、たとえば、0.8〜1.0N/mm
2であることが好ましく、上述した積層シート40Aにおけるピール強度の2〜5倍となることが好ましい。
【0088】
本実施形態では、積層シート40Aを加圧せずに、加熱して熱硬化性の樹脂層3,4の硬化を進行させている。
これにより、樹脂層3,4および繊維基材2で構成されるプリプレグが加圧されないため、プリプレグ内部に応力が発生しにくくなり、硬化体である積層シート40B内部に発生する残留応力を低減できる。
また、仮接着工程では、積層シート40Aを加圧して、熱硬化性の樹脂層3,4を硬化させている。このとき、積層シート40A内部には、加圧による残留応力が発生するが、本接着工程において、積層シート40Aが再度加熱されるため、前記残留応力は開放されることなる。そして、前述したように、本接着工程において、積層シート40Aを加圧せずに、加熱して熱硬化性の樹脂層3,4の硬化を進行させることで、硬化体である積層シート40B内部に発生する残留応力を低減できる。
また、本実施形態では、本接着工程における樹脂層3,4の硬化率をβとし、前述した積層シート40Aを用意する工程の積層シート40Aの樹脂層3,4の硬化率をαとした場合、β-αは5%〜90%である。すなわち、本接着工程で樹脂層3,4の硬化が比較的大きく進行することとなる。このように硬化が比較的大きく進行する本接着工程にて、プリプレグを加圧した場合には、加圧により加わった力がプリプレグ内に残留しやすくなるが、本実施形態では、本接着工程において、プリプレグが加圧されないため、プリプレグ内部に応力が残留しにくくなり、硬化体である積層シート40B内部に発生する残留応力を確実に低減できる。
このような積層シート40Bは、残留応力が低減されているため、加熱により樹脂層が軟化して、残留応力が緩和されても、加熱前後での寸法変動が生じにくくなり、信頼性の高いシートとなる。
【0089】
次に、以上のようにして製造された積層シート40Bの接合部を必要に応じて、裁断する。そして、このようにして得られた積層シート40Bは、多層プリント配線板のコア材として使用することができる。すなわち、積層シート40Bの金属層12を選択的に除去して回路層を形成し、この回路層を被覆するように、プリプレグや樹脂層を積層し、多層プリント配線基板とすることができる。
【0090】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば、前記実施形態では、硬化装置30Cの治具で積層シート40Aの端部を把持し、加熱炉内で複数の積層シート40Aをつりさげて、積層シート40Aの加熱硬化を行なったが、これに限られるものでない。たとえば、裁断された積層シート40Aをベルトコンベア上に載せて、加熱炉内を搬送しながら、大気圧下で積層シート40Aの加熱硬化を行なってもよい。この場合にも、積層シート40Aは外部から加圧されずに、硬化することとなる。
【0091】
さらに、前記実施形態では、長尺の繊維基材2に対して、長尺の金属層12付樹脂層3および、長尺の金属層12付樹脂層4を圧着し、長尺の金属層付プリプレグである積層シート40Aを製造したが、これに限らず、たとえば、繊維基材2に対して、樹脂層3,4を含浸させて、プリプレグを製造し、このプリプレグに対して、金属層12を圧着して、積層シート40Aを製造してもよい。
ただし、プリプレグを製造する際、繊維基材2にワニス状の第1樹脂層3、第2樹脂層4を含浸させるが、このとき、繊維基材2を、ワニスが充填された槽に浸し、この槽から引き上げる必要があるので繊維基材2に非常に大きな張力をかける必要がある。本実施形態のように、予め、樹脂層と金属層とを有するシート5a(5b)を用意し、樹脂層を繊維基材2に含浸させる方が、繊維基材2にかかる張力を小さくすることが可能となる。
【0092】
さらに、前記実施形態では、樹脂層3,4にシート状の金属層12が設けられていたが、これに限らず、樹脂層3,4に樹脂シートが設けられていてもよい。さらには、樹脂層3,4と繊維基材2とで構成されるプリプレグとは別のプリプレグを、樹脂層3,4と繊維基材2とで構成されるプリプレグ上に積層してもよい。そして、複数のプリプレグを仮接着して積層体を構成した後、無加圧で加熱して本接着してもよい。
さらに、たとえば、金属層12に樹脂基板が設けられたものを使用してもよい。この場合には、樹脂層3,4に対して前記実施形態と同様に金属層12を仮接着することとなる。この場合、硬化体として、回路基板用のコア材にビルドアップ層が設けられたビルドアップ層付コア材が得られる。
【0093】
また、前記実施形態では、ローラで囲まれた空間S内を減圧し、空間S内で繊維基材2と、金属層12付の樹脂層3、4を積層していたが、これに限られるものではない。たとえば、容器内を減圧し、この容器内で繊維基材2と、金属層12付の樹脂層3、4を積層してもよい。
【0094】
また、前記実施形態では、繊維基材2、シート5a、5bは、長尺状であり、第一の加熱手段60等に、連続的に積層シート40Aが供給されたが、これに限られるものではない。枚葉式で積層体を製造してもよい。たとえば、前述したように、内部が減圧される容器を用意し、この容器内に一対のプレス板等の挟圧部材を配置しておく。そして、一対のプレス板間に、あらかじめ、裁断された繊維基材、樹脂層、金属層の積層体を配置して、プレスした後、容器から積層体を取り出す。このように、枚葉式で、積層体を形成してもよい。そして、第一の加熱手段60や第二の加熱手段90では、複数の積層体を同時に加熱してもよい。
【実施例】
【0095】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
1.樹脂層のワニスの調整
熱硬化性樹脂としてノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製、プリマセット PT−30、重量平均分子量約2,600)15重量%、エポキシ樹脂としてビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000、エポキシ当量275)12.7重量%、フェノール樹脂としてビフェニルジメチレン型フェノール樹脂(日本化薬社製、GPH−65、水酸基当量200)2.3重量%をメチルエチルケトンに溶解させた。さらに、無機充填材として球状溶融シリカ(アドマテックス社製、SO−25H、平均粒径0.5μm)69.7重量%とエポキシシラン型カップリング剤(日本ユニカー社製、A−187)0.3重量%を添加して、高速攪拌装置を用いて60分間攪拌して、固形分70重量%の樹脂層のワニスを調製した。
【0096】
2.キャリア材料の製造
厚み12μm、幅480mmの銅箔(古河電工社製・F2WS−12)上に、上述したワニスをコンマコーター装置で塗工し、170℃の乾燥装置で3分間乾燥させ、厚さ29〜33μmになるように形成した(第1樹脂層3を形成した)。尚、幅410mmの樹脂層が、幅480mmの銅箔の中心になるようにした。さらに、この樹脂層3上に支持基体51となるポリエチレンテレフタレートフィルム(パナック社製、TP−01、厚さ38μm、幅480mm)を設けて第1シート5aを得た。
また、同様の方法で塗工するワニスの量を調整して、厚さ29〜33μm、幅410mmの樹脂層が、幅480mmの銅箔(古河電工社製・F2WS−12)の幅方向の中心に位置するように形成した(第2樹脂層4を形成した)。この樹脂層4上に支持基体51を設けて、第2シート5bを得た。
【0097】
3.硬化体の製造
前記実施形態の製造装置30を使用して、硬化体を製造した。
繊維基材としてTガラス織布(クロスタイプ♯2116、幅360mm、厚さ87μm、坪量104g/m
2)を用いた。
はじめに、空間S内を10torr(1333Pa)に減圧し、空間S内に、第1シート5a、第2シート5bを供給した。前記実施形態と同様、第1シート5aの支持基体51、第2シート5bの支持基体51は、ローラ73a、73bにより、剥離された。
そして、70℃のローラ72a、72bで、第1樹脂層3に設けられた金属層12と、第1樹脂層3と、繊維基材2と、第2樹脂層4と、第2樹脂層4に設けられた金属層12とを挟圧した。
その後、第一の加熱手段60により、積層シート40Aを加熱した。このとき、加熱ローラの温度は、100℃であり、積層シート40Aにかかる張力は300Nであった。
その後、積層シート40Aを、第二の加熱手段90により加熱した。第二の加熱手段90のヒータの温度は150℃であり、縦型加熱炉91を積層シート40Aが通過する際の、積層シート40Aにかかる張力は50Nであった。
さらに、積層シート40Aが第二の加熱手段90を通過するのにかかった時間は2分であった。
以上のようにして、厚さ102μm(第1樹脂層の非含浸部の厚さ:7.5μm、繊維基材:87μm、第2樹脂層のの非含浸部の厚さ:7.5μm)の積層シート40Aを得た。積層シート40Aの樹脂層3,4の硬化率は5%〜30%であり、Bステージとなっていた。
次に、積層シート40Aを裁断し、硬化装置30Cの治具87で裁断された積層シート40Aの端部を把持し、加熱炉85内で複数の積層シート40Aをつりさげて、積層シート40Aの加熱硬化を行なった。加熱時間は2時間、加熱温度は225℃(後述する硬化体のガラス転移点未満)であった。このとき、積層シート40Aを加圧せずに、積層シート40Aの加熱硬化を行なった。
以上のようにして得られた硬化体(積層シート40B)の樹脂層3,4の硬化率は90%以上であり、Cステージとなっていた。すなわち、積層シート40Bにおける樹脂層3,4と金属層12との接着強度は、積層シート40Aにおける樹脂層3,4と金属層12との接着強度よりも高くなっていた。
【0098】
(比較例1)
裁断された積層シート40Aを一対のプレス板で加圧加熱して、積層シート40Aの加熱硬化を行なった。加圧力は、0.2〜4.0MPa、加熱時間は2時間、加熱温度は225℃であった。他の点は実施例1と同じである。
【0099】
実施例1で得られた硬化体(積層シート40B)、比較例1で得られた硬化体の寸法変化をIPC−TM−650の2.4.39に準拠して室温で測定した。尚、得られた硬化体の初期値寸法をAとし、エッチングにより両面の金属箔を除去後、105℃で4時間の予備加熱処理と、表面温度が260〜265℃で30秒のリフロー処理とからなる加熱処理をおこなった後の寸法をBとした際、寸法変化率は下記式で表される。
寸法変化率(%)=(B−A)/A×100
ここで、縦方向は硬化体の搬送方向(いわゆるMD)を指し、横方向は、硬化体の搬送方向と直交方向(いわゆるTD)を指す。なお、予備加熱処理の温度は雰囲気温度であり、リフロー処理の温度は硬化体の表面の温度である。
結果を
図11,12に示す。
図11,12においてリフロー×1は、上述したリフロー処理を1回行なったことを意味し、リフロー×3は、上述したリフロー処理を3回行なったことを意味する。また、
図11,12の縦軸は%である。
実施例1に比べて、比較例1のリフロー前後における硬化体の寸法変化率は大きかった。
以下、参考形態の例を付記する。
1.繊維基材に熱硬化性の樹脂材料を含浸させたプリプレグと、このプリプレグの表面および裏面のうちの少なくとも一方の面に仮接着されたシートとを備える積層体を用意する工程と、前記積層体を加圧せずに、加熱して前記熱硬化性の樹脂材料の硬化を進行させて、前記シートと前記プリプレグとを本接着する工程とを含む硬化体の製造方法。
2.1に記載の硬化体の製造方法において、当該硬化体は、プリント配線板用である硬化体の製造方法。
3.1または2に記載の硬化体の製造方法において、前記繊維基材を構成する繊維は、ガラス、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、アラミド樹脂、ポリエステルのいずれかの材料で構成された硬化体の製造方法。
4.1乃至3のいずれかに記載の硬化体の製造方法において、前記積層体を用意する前記工程では、前記プリプレグの樹脂材料は、Bステージの状態であり、本接着する前記工程では、前記加熱により、前記プリプレグの樹脂材料をCステージまで硬化する硬化体の製造方法。
5.1乃至4のいずれかに記載の硬化体の製造方法において、
積層体を用意する前記工程では、
長尺状の前記繊維基材に対して、前記樹脂材料を含浸させて長尺の前記プリプレグを得るとともに、前記樹脂材料を加熱して硬化を進行させて、プリプレグの表裏面のうち少なくとも一方の面に長尺のシートを仮接着し、長尺の前記プリプレグと前記長尺のシートとを有する長尺の前記積層体を用意し、
この積層体を所定の寸法に裁断し、
本接着する前記工程では、裁断された前記積層体を治具に吊り下げた状態で、加圧を行なわずに、加熱する硬化体の製造方法。
6.1乃至4のいずれかに記載の硬化体の製造方法において、長尺状の前記繊維基材に対して、前記樹脂材料を含浸させて長尺の前記プリプレグを得るとともに、前記樹脂材料を加熱して硬化を進行させて、プリプレグの表裏面のうち少なくとも一方の面に長尺のシートを仮接着し、長尺の前記プリプレグと前記長尺のシートとを有する長尺の前記積層体を用意し、この積層体を所定の寸法に裁断し、本接着する前記工程では、裁断された前記積層体を水平方向に移動するコンベアに搭載し、コンベアで前記積層体を搬送しながら、加圧を行なわずに、加熱する硬化体の製造方法。
7.1乃至6のいずれかに記載の硬化体の製造方法において、本接着する前記工程では、当該硬化体における前記樹脂材料のガラス転移点未満の温度で、前記積層体を加熱する硬化体の製造方法。
8.1乃至7のいずれかに記載の硬化体の製造方法において、前記シートは、金属箔あるいは金属箔付樹脂基板である硬化体の製造方法。
9.1乃至8のいずれかに記載の硬化体の製造方法において、積層体を用意する前記工程では、前記樹脂材料で構成された樹脂層とこの樹脂層に設けられた前記シートとを有するシート材の前記樹脂層を、前記繊維基材の少なくとも一方の面に当接させて、前記樹脂層を前記繊維基材に含浸させて前記積層体を構成する硬化体の製造方法。