(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962323
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】高純度尿素水およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 273/16 20060101AFI20160721BHJP
C07C 275/02 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
C07C273/16
C07C275/02
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-179200(P2012-179200)
(22)【出願日】2012年8月13日
(65)【公開番号】特開2014-37357(P2014-37357A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230652
【氏名又は名称】日本化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097928
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 数彦
(72)【発明者】
【氏名】桑机 拓矢
【審査官】
安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−538133(JP,A)
【文献】
特公昭50−034536(JP,B1)
【文献】
特開平11−335345(JP,A)
【文献】
特開2004−290835(JP,A)
【文献】
特開昭49−135924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 273/00
C07C 275/00
B01D 53/00
F01N 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固結防止剤としてホルムアルデヒドが添加された粒状尿素から得られた尿素水原液を酸化処理することを特徴とする、メチレンウレア濃度がクロモトロープ酸吸光法で測定されるアルデヒド換算値で10ppm以下である高純度尿素水の製造方法。
【請求項2】
酸化処理がオゾン酸化処理である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
酸化処理した後にアニオン交換樹脂で処理する請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度尿素水およびその製造方法に関し、詳しくは、メチレンウレアの含有量を規定した新規な高純度尿素水およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気ガスに含まれるNOxを還元浄化する方法として、尿素水とSCR(Selective Catalytic Reduction、選択還元触媒)方式の触媒コンバータによりNOxを大幅に低減する方法が提案されている(特許文献1)。この尿素SCR方式は、尿素水を還元剤とし、これを前記SCR触媒コンバータに入る直前に排気ガスに混合させる方式であり、尿素は排気ガス中でアンモニアに変化し、SCR触媒コンバータ内で排気ガス中のNOxがアンモニアと結びついて水と無害な窒素に分解されるので、排気ガスのクリーン化に有望な技術とされている。
【0003】
ところで、尿素水をSCR触媒へ導入する配管は、尿素水を噴霧状に導入する必要があるため細管であることが要求される。そこで、導入配管の閉塞原因物質として、グアニジン、ビウレット等の不純物が除去された尿素水が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−290835号公報
【特許文献2】特開2007−145796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、尿素SCR方式で使用される尿素には、固結防止剤としてホルムアルデヒドが添加された粒状尿素が使用されるが、本発明者が、尿素水中の不純物について詳細な検討を重ねたところ、前記の不純物の他に、メチレンジウレア、ジメチレントリウレア等のメチレンウレアが含まれていることが判明した。これらは、ビウレット、トリウレット等と同様に、導入配管の閉塞原因物質として作用する恐れがあり、尿素SCR方式の採用においては、その含有量を可及的に減少させることが望まれる。そして、本発明者は、更に検討を重ねた結果、尿素水の酸化処理によりメチレンウレアを減少させることが出来るとの知見を得た。
【0006】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、尿素SCR方式の採用において尿素水をSCR触媒へ導入する配管の閉塞原因物質として懸念されるメチレンウレアを減少させた新規な高純度尿素水およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明
の要旨は、固結防止剤としてホルムアルデヒドが添加された粒状尿素から得られ
尿素水原液を酸化処理することを特徴とする、メチレンウレア濃度がクロモトロープ酸吸光法で測定されるアルデヒド換算値で10ppm以下であ
る高純度尿素
水の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば前記の課題が解決される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は固結防止剤としてホルムアルデヒドが添加された粒状尿素の水溶液の高速液体クロマトグラフ質量分析で得られたクロマトグラムの一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
先ず、尿素水中のメチレンウレアについて説明する。尿素に固結防止剤としてホルムアルデヒドが添加されると、メチレンウレアは、以下の化学反応式に示すように、ホルムアルデヒドと尿素とが反応してモノメチロールウレアが生成し、これが脱水縮合して、メチレンジウレア(a)、ジメチレントリウレア(b)及び(c)等に変換したものと推定される。ジメチレントリウレア(b)は線状構造、ジメチレントリウレア(c)は非線状構造である。
【0012】
【化1】
【0013】
各メチレンウレアの同定は、高速液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS)によって行うことが出来る。LC/MS分析条件の一例を表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】
図1のクロマトグラムにおいて、ピーク(1)はウレア(モル質量:60.06gmol
−1)、(2)はメチレンジウレア(モル質量:132.12gmol
−1)、(3)はビウレット(モル質量:103.08gmol
−1)、(4)及び(5)はジメチレントリウレア(モル質量:204.19gmol
−1)、(6)はトリウレット(モル質量:146.10gmol
−1)である。
【0016】
メチレンウレアの大部分は、メチレンジウレア及びジメチレントリウレアであり、ジメチレントリウレアはメチレンジウレアの1/2〜1/4程度の割合である。そして、それらの合計(メチレンウレア)の定量はクロモトロープ酸吸光法によって行うことが出来る。
【0017】
クロモトロープ酸吸光法は、硫酸酸性下でクロモトロープ酸がアルデヒドと反応して紫に呈色することを利用した方法であり、アルデヒドの測定法(JIS K2247−2:2009)として利用されているが、メチレンジウレア(MDU)及びジメチレントリウレア(DMTU)の合計(メチレンウレア)の定量法としても利用することが出来る。以下、クロモトロープ酸吸光法で測定されるメチレンウレア量を「アルデヒド換算値」と表記する。なお、MDUおよびDMTUの分析については、米国内の肥料検査法の統一を目的に設立された団体(Association of Official Agricultural Chemists:AOAC)の公定分析法(OMA)によって液体クロマト法が規定されているが、本発明では、微量のメチレンウレアを精度良く定量するため、クロモトロープ酸吸光法を利用する。
【0018】
尿素水中のメチレンウレアの濃度は溶解に使用した尿素の種類によって異なる。表2は、各種の輸入尿素を使用し、電気伝導度が50〜100μS/cmの水で尿素濃度32.5重量%に調製された尿素水について、クロモトロープ酸法で測定したアルデヒド換算メチレンウレア含量の一例である。因に、上記の各尿素水について、アセチルアセトン法(試料にアセチルアセトン−酢酸アンモニウムを添加し生じる黄色を波長420nmで測定するホルムアルデヒドの定量分析法)を試みたが、アルデヒドは検出されなかった。
【0019】
【表2】
【0020】
なお、上記のクロモトロープ酸法による定量分析は次の要領で行った。すなわち、吸光度測定用セルに試料(尿素水)2gを採取し、これに98重量%硫酸6mlと2重量%クロモトロープ酸二ナトリウム二水和物水溶液0.5mlを加え、更に、水約1.5mlを加えて10mlにメスアップした後、90℃の湯浴中で15分間加熱して着色させ、分光光度計(株式会社島津製作所製「UV−1200PC」)を使用し、565nmの波長で吸光度を測定し、検量線法によって定量した。検量線は、ホルムアルデヒド水溶液によって作成した。
【0021】
次に、本発明に係る高純度尿素水の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、尿素水原液を酸化処理することを特徴とする。
【0022】
尿素としては固結防止剤としてホルムアルデヒドが添加された尿素が使用され、水としては電気伝導度が50〜100μS/cmの水を使用するのが好ましい。一般には、工業用水あるいは水道水の電気伝導度は、この範囲内に収まるものである。尿素水原液における尿素濃度は通常30〜50重量%である。斯かる尿素水原液はメチレンウレアを含有するが、その含有量は、前述の通り、輸入尿素の種類によって異なる。
【0023】
本発明の製造方法によれば、後述の実施例に示すように、尿素水原液中のメチレンウレアを分解して効果的に減少させることが出来る。従って、本発明の製造方法における尿素水原液は、必ずしも固結防止剤としてホルムアルデヒドが添加された尿素から調製された尿素水に限定されない。すなわち、本発明の製造方法においては、メチレンウレアを含有する限り、その含有量が如何に小さい尿素水であっても尿素水原液として使用し得る。しかしながら、経済的観点から、メチレンウレア濃度がクロモトロープ酸吸光法で測定されるアルデヒド換算値で通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上、更に好ましくは29ppm以上の尿素水が尿素水原液として使用される。
【0024】
酸化処理の方法としては、オゾン酸化、酸化チタンを使用した光触媒酸化、過酸化水素を使用した化学酸化の何れであってもよいが、オゾン酸化が簡便で好ましい。酸化処理により、尿素水原液中のメチレンウレアは分解されて除去される。
【0025】
ところで、尿素水原液の中には尿素の分解生成によって生じた微量のアンモニアが存在しているが、このアンモニアの少なくとも一部は酸化処理によって硝酸となる。そのため、酸化処理直後の尿素水のpH値が酸性を呈する。斯かる尿素水は、材質腐食や硝酸態窒素(NOx源)を含有するという観点から、尿素SCR方式に採用する尿素水としては相応しくない。加えて、尿素水が酸性を呈する場合、クロモトロープ酸吸光法における紫の呈色が黄色に変化し、アルデヒド換算値のメチレンウレア量の測定に影響を及ぼす。
【0026】
ところで、尿素水は、放置時間の経過に伴い、遊離アンモニアが発生して溶液のpH値が高められる。従って、酸化処理後に尿素水を放置することにより、酸性を呈した尿素水のpH値を中性付近に戻すことが出来る。また、本発明においては、酸化処理直後の尿素水をアニオン交換樹脂で処理することにより、溶存する微量の硝酸を除去することも出来る。通常、アニオン交換樹脂で処理した後の尿素水は弱塩基性である。アニオン交換樹脂としては、特に制限されないが、例えば、三菱化学社製のアニオン交換樹脂「PA316」等が好適である。
【0027】
本発明の高純度尿素水は、例えば、上記のようにして得られるが、メチレンウレア濃度がクロモトロープ酸吸光法で測定されるアルデヒド換算値で10ppm以下であることを特徴とする。アルデヒド換算値のメチレンウレア濃度は、好ましくは5ppm以下、更に好ましくは3ppm以下である。
【実施例】
【0028】
次に、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1:
酸化処理装置として、オゾン発生器に連結するオゾンバブリング管を内部に備えた200mlの酸化容器と、45mlのアニオン交換樹脂(三菱化学社製「PA316」)を充填した100mlのアニオン交換樹脂カラムと、ポンプ備えて容器内の尿素水をアニオン交換樹脂カラムの上部に供給し且つアニオン交換樹脂カラム下部から抜き出された尿素水を酸化容器に供給する循環配管とから主として構成される装置を使用した。オゾン発生器としては、エコデザイン(株)製「ED−OG−R4」を使用し、これに酸素ボンベからの酸素を供給することによってオゾンを発生させた。
【0030】
尿素水原液は、前述の表2に示したカタール産尿素(アルデヒド換算メチレンウレア含量114[ppm/尿素水])を、尿素濃度が32.5重量%になるように、電気伝導度50〜100μS/cmの水に溶解して調製し、200g使用した。
【0031】
オゾン発生器への酸素供給量:1L/min.オゾン発生器の出力電流:2A、オゾン発生量:5g/hr、アニオン交換樹脂カラムにおける尿素水の空間速度(SV):60hr
−1の条件下、210分間酸化処理した。この間、液温は11℃から18℃まで上昇した。酸化処理で高純度尿素水におけるアルデヒド換算メチレンウレア含量を明細書の本文に記載した方法で測定した結果、1[ppm/尿素水]であった。
【0032】
実施例2:
実施例1において、尿素として前述の表2に示したサウジアラビア産尿素(アルデヒド換算メチレンウレア含量634[ppm/尿素水])を使用した以外は、実施例1と同様に、尿素水原液を調製して酸化処理を行った。270分間酸化処理した結果、アルデヒド換算メチレンウレア含量3[ppm/尿素水]の高純度尿素水が得られた。