(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のリチウムイオン電池用外装材の一例を示して詳細に説明する。
本実施形態のリチウムイオン電池用外装材1(以下、単に「外装材1」という。)は、
図1に示すように、基材層11と、基材層11の第1の面11a側に設けられた第1接着層12と、第1接着層12の基材層11と反対側に設けられた金属箔層13と、金属箔層13の第1接着層12と反対側に設けられた腐食防止処理層14と、腐食防止処理層14の金属箔層13と反対側に設けられた第2接着層15と、第2接着層15の腐食防止処理層14と反対側に設けられたシーラント層16と、基材層11の第2の面11bに設けられた基材保護層17と、を有する。すなわち、外装材1は、基材保護層17、基材層11、第1接着層12、金属箔層13、腐食防止処理層14、第2接着層15、シーラント層16がこの順に積層された積層体である。
外装材1は、基材保護層17を外側、シーラント層16を内側にして使用される。
【0013】
(基材保護層)
基材保護層17は、下記水溶性多糖類(A)を含有する層である。基材保護層17は、基材層11の第2の面11bに直接形成されている。基材保護層17は、水溶性多糖類(A)を含有することで、優れた電解液耐性および耐擦傷性が得られ、基材層11が電解液によって劣化したり、傷付いたりすることが抑制される。
水溶性多糖類(A):85℃において、メタノール、エタノール、プロパノールまたはイソプロピルアルコールのいずれかを50質量%含むアルコール水溶液、および水からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に、該溶媒100質量部に対して1質量部以上溶解する多糖類。
すなわち、水溶性多糖類(A)は、濃度50質量%のメタノール水、濃度50質量%のエタノール水、濃度50質量%のプロパノール水、濃度50質量%のイソプロピルアルコール水、および水のうちの少なくとも1種の溶媒に前記比率で溶解する多糖類である。
なお、本発明において、多糖類が溶解するとは、多糖類が完全に分子分散した溶解状態に加えて、多糖類が膨潤または分散することにより、均一な溶解状態を示すことも含む。
【0014】
水溶性多糖類(A)としては、例えば、キチン、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、キトサン等のキチン誘導体、アミロース、アミロペクチン、デキストラン、プルラン、エルシナン、アルギン酸ナトリウム、寒天、ペクチン、タマリンドガム、キサンタンガム等が挙げられる。
水溶性多糖類(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
水溶性多糖類(A)としては、特に構造配列が規則的であり、分子内水素結合あるいは分子間水素結合の形成による剛直な骨格を有するセルロースが好ましい。セルロースは線膨張係数が極めて低いことが知られており、この線膨張係数の低さにより、優れた成型性を得ることができる。セルロース原料としては、木材パルプ、非木材パルプ、コットン、バクテリアセルロース等が挙げられる。セルロースの繊維幅は、2nm以上200nm以下が好ましい。セルロースの長さは、0.5μm以上50μm以下が好ましい。セルロースの繊維幅および長さが前記範囲であれば、均一で透明なセルロースの水分散体を調製することができる。なお、セルロースの繊維幅や長さについては、0.001質量%程度の水分散液をガラスまたはマイカ上にキャストして乾燥し、透過型電子顕微鏡(TEM)または原子間力顕微鏡(AFM)にて観察することにより求めることができる。
基材保護層17の形成に使用するセルロースの水分散体は、水中でセルロースに機械的処理を施し、微細化することにより得られる。前記機械的処理としては、特に限定されず、ミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、グラインダー磨砕、凍結粉砕、メディアミル等を用いる処理が挙げられる。また、機械的処理を行う前工程として、セルロースを化学処理してもよい。
【0016】
セルロースは、結晶性セルロースであることがより好ましい。セルロースの結晶性が高いと、基材保護層17の弾性率の高さが維持され、また電解液耐性および耐熱性が向上する。高結晶性のセルロースの水分散体を得る方法としては、触媒として2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペジニルオキシ・ラジカル(TEMPO)を使用してセルロースを化学処理したTEMPO酸化セルロースを用いる方法が挙げられる。TEMPO酸化セルロースの水分散体は、顔料を添加したときの顔料分散性が良好であるという特長を有している。さらに、TEMPO酸化セルロースの水分散体は、分散体の透明性が高いことから、優れた意匠性が得られる。また、TEMPO酸化セルロースの水分散体は、塗工性にも優れる。
【0017】
TEMPO酸化セルロースは、例えば、以下に示す化学処理によって得られる。
水中で分散させたセルロースに、ニトロキシラジカルと臭化ナトリウム(臭化物)とを添加し、室温で撹拌しながら次亜塩素酸ナトリウム(酸化剤)の水溶液を添加してセルロースの酸化を行う。酸化反応中に水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を添加し、反応系内のpHを9〜11に制御する。このとき、セルロース繊維表面のC6位の水酸基がカルボキシル基へと酸化され、TEMPO酸化セルロースが得られる。処理後に充分水洗し、得られたTEMPO酸化セルロースを水に繊維状に分散させ、適宜固形分濃度を調整したものが、水分散体の構成材料として使用できる。
酸化剤としては、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩が使用でき、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
臭化物としては、臭化リチウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム等が挙げられ、臭化ナトリウムが好ましい。
【0018】
水溶性多糖類(A)の重合度は、100〜800が好ましく、250〜400がより好ましい。水溶性多糖類(A)の重合度が下限値以上であれば、耐擦傷性がより良好になる。水溶性多糖類(A)の重合度が上限値以下であれば、基材層11と基材保護層17の密着性がより良好になる。
水溶性多糖類(A)の重合度は、銅エチレンジアミン溶液を用いた粘度法により測定される。
【0019】
基材保護層17は、水溶性多糖類(A)に加えて、接着樹脂(B)を含有することが好ましい。基材保護層17に接着樹脂(B)が含有されることで、基材層11と基材保護層17の密着性が向上する。
接着樹脂(B)は、水溶性多糖類(A)との相溶性が良好であり、かつ基材層11との密着が良好で、成型性や引っ張り強度において水溶性多糖類(A)の特性を低下させないものであれば特に限定されない。接着樹脂(B)としては、例えば、ポリビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
接着樹脂(B)としては、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリブチレンテレフタレートがより好ましく、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
接着樹脂(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
水溶性多糖類(A)と接着樹脂(B)の好ましい組み合わせは、以下のものが挙げられる。これらの組み合わせの水溶性多糖類(A)と接着樹脂(B)は相溶性に優れ、互いの性能をより良好に発現できる。
セルロースとポリビニルアルコールとの組み合わせ、
セルロースとエチレン・酢酸ビニル共重合体との組み合わせ、
カルボキシメチルセルロースとポリブチレンテレフタレートの組み合わせ。
【0021】
基材保護層17は、滑剤が含有されるか、または表面に付与されることが好ましい。これにより、外装材1の成型性、および巻取り歩留まりが向上する。
滑剤としては、例えば、脂肪酸アミド(例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等。)、グリセリン等が挙げられる。
滑剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
基材保護層17は、可塑剤を含有してもよい。これにより、外装材1の成型性が向上する。可塑剤としては、例えば、フタル酸系可塑剤、グリコール系可塑剤等が挙げられる。
フタル酸系可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジプロピルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジドデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、ジイソデシルグリコレート等が挙げられる。
グリコール系可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチルフタリルグリコレート、トリエチレングリコール−2−エチルブチレート、グリセリン等が挙げられる。なかでも、グリコール系可塑剤としては、グリセリンが好ましい。
その他、ソルビトール、キシリトール等の糖アルコールおよびその化合物も可塑剤として使用できる。
【0023】
基材保護層17は、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーおよびポリエステル系エラストマーからなる群から選ばれる1種以上のエラストマー成分が含有されることが好ましい。これにより、外装材1の成型性が向上する。エラストマー成分は、いずれもハードセグメントとソフトセグメントからなる成分である。
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン・1−ブテン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン・エチレン共重合体等が挙げられる。
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体等が挙げられる。
ポリエステル系エラストマーのハードセグメントとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の結晶性ポリエステルが挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。ポリエステル系エラストマーのソフトセグメントとしては、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類、または、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペート等のポリエステルが挙げられ、ポリテトラメチレングリコールが特に好ましい。
エラストマー成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
基材保護層17は、有機フィラーおよび無機フィラーからなる群から選ばれる1種以上のフィラー成分が含有されることが好ましい。これにより、基材保護層17の耐擦傷性が向上する。
有機フィラーとしては、例えば、プラスチックの粉末や微粒子を用いることができる。プラスチックとしては、アクリル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、メラミン等が挙げられる。
無機フィラーとしては、カーボン、シリカ、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸アルミニウム、クレー、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、窒化硼素、マイカ等の微粒子等が挙げられる。
【0025】
基材保護層17は、意匠性の点では、顔料が含有されていることが好ましい。顔料を使用する場合、金属箔層13よりも外側のいずれの層に顔料を含有させてもよいが、顔料分散性に優れ、色が均一になりやすいことから、基材保護層17に顔料を含有させることが好ましい。
顔料は、基材保護層17と基材層11の密着性を損なわない範囲であれば特に限定されず、有機顔料でもよく、無機顔料でもよい。
有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴチオインジゴ系、ペリノン−ペリレン系、イソインドレニン系等が挙げられる。
無機顔料としては、カーボンブラック系、酸化チタン系、カドミウム系、鉛系、酸化フローム系等が挙げられる。また、マイカ(雲母)の微粉末、魚鱗箔等を使用してもよい。
【0026】
基材保護層17は、耐水性の点では、架橋剤によって架橋構造が形成されていることが好ましい。
架橋剤としては、例えば、オキサゾリン、ジビニルスルホン、カルボジイミド、ジヒドラジン、ジヒドラジド、エピクロルヒドリン等が挙げられる。前記架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、基材保護層17は、前記したもの以外にも、難燃剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、帯電防止剤等の添加剤が含有されてもよい。
【0027】
優れた電解液耐性および耐擦傷性が得られる点から、基材保護層17(100質量%)中の水溶性多糖類(A)の含有量は、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。また、他の成分による効果が得られやすい点では、基材保護層17(100質量%)中の水溶性多糖類(A)の含有量は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0028】
基材保護層17に接着樹脂(B)を含有させる場合、基材層11と基材保護層17の密着性の点から、基材保護層17(100質量%)中の接着樹脂(B)の含有量は、5質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また、相対的に水溶性多糖類(A)の量を多くでき、優れた電解液耐性および耐擦傷性が得られやすい点から、基材保護層17(100質量%)中の接着樹脂(B)の含有量は、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0029】
基材保護層17に接着樹脂(B)を含有させる場合、水溶性多糖類(A)と接着樹脂(B)の質量比(A)/(B)は、20/80〜95/5が好ましく、60/40〜90/10がより好ましい。前記質量比(A)/(B)が前記範囲内であれば、電解液耐性、耐擦傷性、成型性、密着性、引張り強度を両立させやすい。
基材保護層17(100質量%)中の水溶性多糖類(A)と接着樹脂(B)の合計量は、電解液耐性、耐擦傷性、成型性、密着性、引張り強度に優れる点から、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。また、前記水溶性多糖類(A)と接着樹脂(B)の合計量の上限値は100質量%である。
【0030】
基材保護層17に滑剤を含有させる場合、基材保護層17(100質量%)中の滑剤の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。前記滑剤の含有量が下限値以上であれば、成型性がより良好になる。前記滑剤の含有量が上限値以下であれば、滑剤が基材保護層17の基材層11側にブリードして基材層11と基材保護層17の密着性が低下することを抑制しやすい。
【0031】
基材保護層17に可塑剤を含有させる場合、基材保護層17(100質量%)中の可塑剤の含有量は、1〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。前記可塑剤の含有量が下限値以上であれば、成型性がより良好になる。前記可塑剤の含有量が上限値以下であれば、耐熱性がより良好になる。
【0032】
基材保護層17にエラストマー成分を含有させる場合、基材保護層17(100質量%)中のエラストマー成分の含有量は、5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましい。前記エラストマー成分の含有量が下限値以上であれば、成型性がより良好になる。前記エラストマー成分の含有量が上限値以下であれば、耐擦傷性および電解液耐性がより良好になる。
【0033】
基材保護層17にフィラー成分を含有させる場合、基材保護層17(100質量%)中のフィラー成分の含有量は、0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。前記フィラー成分の含有量が下限値以上であれば、耐擦傷性がより良好になる。前記フィラー成分の含有量が上限値以下であれば、成型性がより良好になる。
【0034】
基材保護層17に顔料を含有させる場合、基材保護層17(100質量%)中の顔料の含有量は、0.1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。前記顔料の含有量が前記範囲内であれば、意匠性がより良好になる。
【0035】
基材保護層17の厚さは、0.1〜5.0μmが好ましく、0.3〜3.0μmがより好ましい。基材保護層17の厚さが下限値以上であれば、電解液耐性および耐擦傷性がより良好になる。基材保護層17の厚さが上限値以下であれば、成型性がより良好になる。
【0036】
(基材層)
基材層11は、ナイロンフィルムからなる層である。
前記ナイロンフィルムは、延伸フィルムであってもよく、無延伸フィルムであってもよい。ナイロンフィルムを形成するナイロンとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等が挙げられる。
基材層11の第2の面11bは、コロナ処理、プラズマ処理、エキシマ処理、化学処理等の表面処理が施されていることが好ましい。すなわち、基材層11を形成するナイロンフィルムは、基材保護層17を設ける側の表面にコロナ処理、プラズマ処理、エキシマ処理、化学処理等の表面処理が施されていることが好ましい。これにより、基材層11と基材保護層17の密着性がより良好になる。
なお、前記化学処理とは、ナイロンフィルム上に、水溶性または水分散性のウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂の塗工液を塗工して10〜350nmの薄膜を形成する処理である。
【0037】
基材層11の厚さは、6〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。基材層11の厚さが下限値以上であれば、耐ピンホール性、絶縁性がより良好になる。基材層11の厚さが上限値以下であれば、成型性がより良好になる。
基材層11の第1接着層12側の面には、接着強度の向上を補助するためにカップリング剤をコーティングしてもよい。
【0038】
(第1接着層)
第1接着層12は、基材層11と金属箔層13を接着する層である。
第1接着層12を構成する接着成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として2官能以上の芳香族系または脂肪族系イソシアネート化合物を作用させる2液硬化型のウレタン系接着剤が好ましい。
前記ウレタン系接着剤は、塗工後、例えば40℃で4日以上のエージングを行うことで、主剤の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の反応が進行して強固な接着が可能となる。
第1接着層12の厚さは、接着強度、追随性、加工性の点から、1〜10μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。
【0039】
(金属箔層)
金属箔層13としては、アルミニウム、ステンレス鋼等の各種金属箔を使用することができ、防湿性、延展性等の加工性、コストの面から、アルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔としては、一般の軟質アルミニウム箔を用いることができる。なかでも、耐ピンホール性、および成型時の延展性に優れる点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。
鉄を含むアルミニウム箔(100質量%)中の鉄の含有量は、0.1〜9.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であれば、外装材1は耐ピンホール性、延展性に優れる。鉄の含有量が9.0質量%以下であれば外装材1は柔軟性に優れる。
金属箔層13の厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性の点から、9〜200μmが好ましく、15〜100μmがより好ましい。
【0040】
(腐食防止処理層)
腐食防止処理層14は、電解液や、電解液と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層13の腐食を抑制する役割を果たす。リチウムイオン電池の電解液に用いられるLiPF
6、LiBF
4等のリチウム塩は、水分による加水分解反応によりフッ酸が発生する。腐食防止処理層14を設けることで、金属箔層13の内側がフッ酸によって腐食されることも抑制され、該金属箔層の内側での層間剥離を抑制できる。また、腐食防止処理層14は、金属箔層13と第2接着層15との密着力を高める役割も果たす。
腐食防止処理層14としては、塗布型、または浸漬型の耐酸性の腐食防止処理剤によって形成された塗膜が好ましい。前記塗膜は、金属箔層13の酸に対する腐食防止効果に優れる。また、アンカー効果によって金属箔層13と第2接着層15の密着力をより強固にするので、電解液等の内容物に対して優れた耐性が得られる。
【0041】
前記塗膜としては、例えば、酸化セリウムとリン酸塩と各種熱硬化性樹脂からなる腐食防止処理剤によるセリアゾール処理によって形成される塗膜、クロム酸塩、リン酸塩、フッ化物と各種熱硬化性樹脂からなる腐食防止処理剤によるクロメート処理により形成される塗膜等が挙げられる。
なお、腐食防止処理層14は、金属箔層13の耐食性が充分に得られる塗膜であれば、前記塗膜には限定されない。例えば、リン酸塩処理、ベーマイト処理等によって形成した塗膜であってもよい。
【0042】
腐食防止処理層14は、単層であってもよく、複数層であってもよい。また、腐食防止処理層14には、シラン系カップリング剤等の添加剤が添加されてもよい。
腐食防止処理層14の厚さは、腐食防止機能、およびアンカーとしての機能の点から、10nm〜5μmが好ましく、20〜500nmがより好ましい。
【0043】
(第2接着層)
第2接着層15は、腐食防止処理層14が形成された金属箔層13とシーラント層16を接着する層である。外装材1は、第2接着層15を形成する接着成分によって、熱ラミネート構成とドライラミネート構成に大きく分けられる。
熱ラミネート構成における第2接着層15を形成する接着成分としては、ポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等の酸でグラフト変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。酸変性ポリオレフィン系樹脂は、無極性であるポリオレフィン系樹脂の一部に極性基が導入されていることから、シーラント層16が無極性のポリオレフィン系樹脂フィルム等で形成され、腐食防止処理層14が極性を有する塗膜である場合に、それらの両方に強固に密着できる。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂を使用することで、電解液等の内容物に対する耐性が向上し、電池内部でフッ酸が発生しても第2接着層15の劣化による密着力の低下を防止しやすい。
第2接着層15に使用する酸変性ポリオレフィン系樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0044】
酸変性ポリオレフィン系樹脂に用いるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度または高密度のポリエチレン;エチレン・α−オレフィン共重合体;ホモ、ブロックまたはランダムポリプロピレン;プロピレン・α−オレフィン共重合体等が挙げられる。また、前記したものにアクリル酸やメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。
前記ポリオレフィン系樹脂を変性する酸としては、カルボン酸、エポキシ化合物、酸無水物等が挙げられ、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0045】
熱ラミネート構成の第2接着層15を構成する接着成分としては、電解液が浸透してきてもシーラント層16と金属箔層13の密着力を維持し易い点から、ポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸でグラフト変性させた、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。
無水マレイン酸変性ポリプロピレンの無水マレイン酸による変性率(無水マレイン酸変性ポリプロピレンの総質量に対する無水マレイン酸に由来する部分の質量)は、0.1〜20質量%が好ましく、0.3〜5質量%がより好ましい。
【0046】
熱ラミネート構成の第2接着層15中には、基材保護層17で説明したエラストマー成分が含有されていることが好ましい。これにより、冷間成型時に第2接着層15にクラックが生じて白化することを抑制し易く、濡れ性の改善による密着力の向上、異方性の低減による製膜性の向上等が期待できる。エラストマー成分は酸変性ポリオレフィン系樹脂中にナノメートルオーダーで分散、相溶していることが好ましい。
【0047】
熱ラミネート構成の第2接着層15は、前記接着成分を押出し装置で押し出すことで形成できる。
熱ラミネート構成の第2接着層15の接着成分のメルトフローレート(MFR)は、230℃、2.16kgfの条件において4〜30g/10分が好ましい。
熱ラミネート構成の第2接着層15の厚さは、2〜50μmが好ましい。
【0048】
ドライラミネート構成の第2接着層15の接着成分としては、例えば、第1接着層12で挙げたものと同様の2液硬化型のポリウレタン系接着剤が挙げられる。
ドライラミネート構成の第2接着層15は、エステル基やウレタン基等の加水分解性を有する結合部を有しているので、より高い信頼性が求められる用途には熱ラミネート構成の第2接着層15が好ましい。
【0049】
(シーラント層)
シーラント層16は、外装材1においてヒートシールによる封止性を付与する層である。
シーラント層16としては、ポリオレフィン系樹脂、またはポリオレフィン系樹脂に無水マレイン酸等の酸をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。
前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度または高密度のポリエチレン;エチレン・α−オレフィン共重合体;ホモ、ブロック、またはランダムポリプロピレン;プロピレン・α−オレフィン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、第2接着層15で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0050】
シーラント層16は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。例えば、防湿性を付与する点では、エチレン・環状オレフィン共重合体やポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムが使用できる。
【0051】
シーラント層16は、押出成型により形成したフィルムを使用する場合、該フィルムの押出方向に分子が配向する傾向があるため、配向による異方性を緩和するために、基材保護層17の項で説明したエラストマー成分を配合してもよい。これにより、外装材1を冷間成型して凹部を形成する際にシーラント層16が白化し難くなる。
また、シーラント層16は、難燃剤、滑剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加材が配合されてもよい。
シーラント層16の厚さは、10〜100μmが好ましく、20〜60μmがより好ましい。
【0052】
外装材1としては、ドライラミネーションによってシーラント層16が積層されたものでもよいが、接着性向上の点から、第2接着層15が酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる、サンドイッチラミネーションによってシーラント層16が積層されていることが好ましい。
【0053】
(製造方法)
以下、外装材1の製造方法について説明する。ただし、外装材1の製造方法は以下の方法に限定されない。外装材1の製造方法としては、例えば、下記工程(1)〜(4)を有する方法が挙げられる。
(1)金属箔層13上に、腐食防止処理層14を形成する工程。
(2)金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、第1接着層12を介して基材層11を積層する工程。
(3)基材層11の第1接着層12と反対側に基材保護層17を積層する工程。
(4)金属箔層13の腐食防止処理層14側に、第2接着層15を介してシーラント層16を積層する工程。
【0054】
工程(1):
例えば、金属箔層13の一方の面に、腐食防止処理剤を塗布、乾燥して腐食防止処理層14を形成する。腐食防止処理剤としては、例えば、前記したセリアゾール処理用の腐食防止処理剤、クロメート処理用の腐食防止処理剤等が挙げられる。
腐食防止処理剤の塗布方法は特に限定されず、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコート等、各種方法を採用できる。
【0055】
工程(2):
金属箔層13における腐食防止処理層14を形成した側と反対側に、第1接着層12を形成する接着剤を用いて、ドライラミネーション等の手法で基材層11を貼り合わせる。
工程(2)では、接着性の促進のため、室温〜100℃の範囲でエージング(養生)処理を行ってもよい。
【0056】
工程(3):
例えば、基材層11における第1接着層12と反対側に、水溶性多糖類(A)、および必要に応じて使用する接着樹脂(B)、滑剤、エラストマー成分等を含む塗工液を塗工、乾燥して基材保護層17を形成する。基材保護層17を形成する塗工液は、例えば、水溶性多糖類(A)の水分散体等が使用できる。水溶性多糖類(A)の水分散体は、アルコール類を含んでもよい。
基材保護層17を形成する塗工液の固形分濃度は、0.5〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。前記固形分濃度が下限値以上であれば、塗工後の乾燥が容易になる。前記固形分濃度が上限値以下であれば、塗工性がより良好になる。
【0057】
工程(4):
ドライラミネート構成の場合は、例えば、第1接着層12を形成する接着剤と同じものを使用し、腐食防止処理層14における金属箔層13と反対側に、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウェットラミネーション等の手法により、第2接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせる。
熱ラミネート構成の場合、ドライプロセスでは、例えば、熱ラミネート用の接着成分を用いて、腐食防止処理層14における金属箔層13と反対側に押出ラミネート法によって第2接着層15を形成し、サンドイッチラミネーションによってシーラント層16を積層する。
また、ウェットプロセスでは、熱ラミネート用の接着成分を溶媒に分散させた接着樹脂液を腐食防止処理層14における金属箔層13と反対側に塗工し、接着成分の融点以上の温度で溶媒を揮発させ、接着成分を溶融軟化させて焼き付けを行った後、第2接着層15上にシーラント層16を熱ラミネーション等の熱処理により積層する。
【0058】
以上説明した工程(1)〜(4)により、外装材1が得られる。
なお、外装材1の製造方法は、前記工程(1)〜(4)を順次実施する方法に限定されない。例えば、工程(2)を行ってから工程(1)を行ってもよい。また、工程(4)を行ってから工程(3)を行ってもよい。
【0059】
以上説明した本発明の外装材は、基材層の外側に、水溶性多糖類(A)を含有する基材保護層が設けられていることで、充分な成型性および電解液耐性に加えて、車載用としても耐え得る優れた耐擦傷性を有している。
また、本発明の外装材は、基材層の外側に接着剤層を形成した後に基材保護層を設ける場合に比べて、塗工回数が少なくて済む。また、基材保護層に接着樹脂(B)を含有させる場合は、基材保護層を形成する塗工液の固形分濃度を高くしやすいので、塗膜の乾燥性に優れ、生産性が高い。
【0060】
なお、本発明の外装材は、前記外装材1には限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、基材層、第1接着層、金属箔層、腐食防止処理層、第2接着層、シーラント層のいずれかの層間に別の層を有していてもよい。例えば、金属箔層の第1接着層側に腐食防止処理層が形成されていてもよい。金属箔層の第1接着層側にも腐食防止処理層が形成されていれば、金属箔層の第1接着層側が電解液で腐食されることを抑制することがさらに容易になる。
また、本発明の外装材は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、基材保護層の外側に別の層を有していてもよい。本発明の外装材としては、電解液耐性および耐擦傷性に優れる効果が得られやすい点から、水溶性多糖類(A)を含む基材保護層が最表層であることが好ましい。
また、ヒートシールによる封止性が良好に得られる点から、シーラント層も最表層であることが好ましい。
【0061】
本発明の外装材により形成するリチウムイオン電池としては、例えば、パソコン、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラ、衛星、潜水艦、電気自動車、電動自転車等に用いられるリチウムイオン電池が挙げられる。なかでも、電気自動車等の車載用のリチウムイオン電池が好ましい。
リチウムイオン電池は、例えば、本発明の外装材を袋状等にした容器体内に、正極、セパレータ、負極、電解液、並びにリードおよびタブシーラントからなるタブを有する電池内容物を、前記タブの一部が外部に位置するように収容して密封することで製造される。リチウムイオン電池は、本発明の外装材を有する以外は、公知の形態を採用できる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[使用材料]
本実施例で使用した材料を以下に示す。
(基材保護層17)
水溶性多糖類A−1の水分散体:以下に示す方法で得たTEMPO酸化セルロースの水分散体。
(1)試薬・材料
セルロース:漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ「Machenzie」)、
TEMPO:市販品(東京化成工業株式会社製、98%)、
次亜塩素酸ナトリウム:市販品(和光純薬株式会社製、Cl:5%)、
臭化ナトリウム:市販品(和光純薬株式会社製)。
(2)セルロースのTEMPO酸化反応
2Lのガラスビーカー中に、乾燥質量10gの漂白クラフトパルプとイオン交換水500mlとを投入して一晩静置し、パルプを膨潤させた。これを温調付きウォーターバスにより20.0℃に温度調整し、TEMPO0.1gと臭化ナトリウム1gを添加して撹拌し、パルプ懸濁液とした。さらに撹拌しながら、セルロース質量当たり5mmol/gの次亜塩素酸ナトリウムを添加した。この際、約1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してパルプ懸濁液のpHを約10.5に保持した。その後、30分間反応を行い、イオン交換水でパルプを充分に水洗して、TEMPO酸化セルロース(水溶性多糖類A−1)を得た。
(3)TEMPO酸化セルロースの分散処理
得られたTEMPO酸化セルロースをイオン交換水中で所定濃度となるように調整し、ミキサー(大阪ケミカル、アブソルートミル、14,000rpm)を用いて30分間撹拌し、微細化することにより透明な水溶性多糖類A−1の水分散体を得た。
接着成分B−1:ポリビニルアルコール(商品名「PVA−124」、クラレ株式会社製)。
接着成分B−2:ウレタン系樹脂(商品名「コータックスLH635」、東レ・ファインケミカル株式会社製)。
(基材層11)
フィルムC−1:厚さ25μmのナイロン6フィルム。
(第1接着層12)
接着成分D−1:ウレタン系接着剤(商品名「A525/A50」、三井化学ポリウレタン株式会社製)。
(金属箔層13)
金属箔E−1:軟質アルミニウム箔8079材(東洋アルミニウム株式会社製、厚さ40μm)。
(腐食防止処理層14)
処理剤F−1:溶媒として蒸留水を使用し、固形分濃度10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」。酸化セリウム100質量部に対して、リン酸塩は10質量部とした。
(第2接着層15)
接着成分G−1:無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン系樹脂(商品名「アドマー」、三井化学株式会社製)。
(シーラント層16)
フィルムH−1:無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ40μm)の内面となる側の面をコロナ処理したフィルム。
【0063】
[実施例1]
金属箔E−1の一方の面に処理剤F−1を塗布、乾燥して、金属箔層13の一方の面に腐食防止処理層14(厚さ200nm)を形成した。次いで、金属箔層13における腐食防止処理層14の反対側に、接着成分D−1を用いたドライラミネート法によりフィルムC−1を貼り合わせ、第1接着層12(厚さ4μm)を介して基材層11を積層した。その後、60℃、6日間のエージングを行った。
次に、基材層11の第1接着層12と反対側に、水溶性多糖類A−1の水分散体と接着成分B−1とを質量比(A)/(B)が60/40となるように混合した塗工液(固形分濃度3.0質量%)をグラビアコート法にて塗工し、乾燥させて基材保護層17(厚さ1μm)を形成した。
次に、得られた積層体の腐食防止処理層14側に、押出し装置にて接着成分G−1を押出して第2接着層15(厚さ50μm)を形成し、フィルムH−1を貼り合わせてサンドイッチラミネーションすることでシーラント層16を形成した。その後、得られた積層体に対し、160℃、4kg/cm
2、2m/分の条件で加熱圧着することで外装材を得た。
【0064】
[比較例1]
基材保護層17を形成する塗工液の代わりに、接着成分B−1と蒸留水を混合した塗工液(固形分濃度3.0質量%)を使用して樹脂層(厚さ1μm)を形成した以外は、実施例1と同様にして外装材を得た。
【0065】
[比較例2]
基材保護層17を形成する塗工液の代わりに、接着成分B−2と蒸留水を混合した塗工液(固形分濃度10.0質量%)を使用して樹脂層(厚さ1μm)を形成した以外は、実施例1と同様にして外装材を得た。
【0066】
[耐擦傷性の評価]
各例で得られた外装材の外表面(基材層11側の表面)に対して、#0000スチールウール(日本スチールウール製)を150g/cm
2の荷重を加えながら10往復させて擦り、レーザー変位計によって傷の深さを測定した。耐擦傷性の評価は、以下の基準に従って行った。
「○」:表面の傷の深さが1μm未満である。
「×」:表面の傷の深さが1μm以上である。
【0067】
[電解液耐性の評価]
各例で得られた外装材の外表面(基材層11側の表面)に電解液(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合液に対し、LiPF
6(六フッ化リン酸リチウム)を1.5Mになるように調整して溶解した電解液)を数滴滴下し、25℃、65%RHの環境下で24時間放置し、電解液を拭き取り、表面の変質を光学顕微鏡(株式会社島津製作所社製)にて確認した。電解液耐性の評価は、以下の基準に従って行った。
「○」:表面の変質(白化)が見られなかった。
「×」:表面が変質(白化)が見られた。
【0068】
[成型性の評価]
各例で得られた外装材を150mm×190mmのブランク形状に切り取り、成型深さを変化させながら冷間成型し、成型性を評価した。パンチとしては、形状が100mm×150mm、パンチコーナーR(RCP)が1.5mm、パンチ肩R(RP)が0.75mm、ダイ肩R(RD)が0.75mmのものを使用した。成型性の評価は、以下の基準に従って行った。
「◎」:破断、クラックを生じさせずに、成型深さ7mm以上の深絞り成型が可能であった。
「○」:破断、クラックを生じさせずに、成型深さ5mm以上7mm未満の深絞り成型が可能であった。
「×」:成型深さ5mm未満の深絞り成型で破断、クラックが生じた。
実施例および比較例における各評価結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示すように、基材層の外側に水溶性多糖類(A)および接着樹脂(B)からなる基材保護層を形成した実施例1の外装材は、充分な成型性および電解液耐性に加えて、優れた耐擦傷性を有していた。
一方、最外層がポリビニルアルコールで形成された層である比較例1の外装材は、充分な電解液耐性が得られなかった。また、最外層がアクリル系樹脂で形成された層である比較例2の外装材は、充分な耐擦傷性が得られなかった。