(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原稿トレイ上に載置された原稿を、その上面にピックアップローラーを接触させて搬送路上に繰り出した後、給送ローラーと搬送抵抗部材とが圧接してなる捌き部へと導入して捌き、捌かれた原稿を、さらに搬送方向下流側へと搬送し、当該搬送方向と直交する方向に沿って設けられた帯板状の読取用ガラスにおける読取位置を通過させている間に、前記搬送路上に設けられた読取部により当該原稿の画像を読み取るシートスルー方式の画像読取装置であって、
前記搬送方向と直交する方向に平行な軸心回りに回転自在に支承された回転体に、当該回転体の回転に伴って前記読取用ガラス表面上の異物を除去するブラシが、前記回転体の回転軸方向に沿って列状に設けられてなる清掃部材と、
前記回転体を回転駆動する駆動手段と、
前記繰り出し動作の困難性に関する情報に応じて、前記ピックアップローラーと前記原稿との間に作用する第1の圧接力、前記給送ローラーと前記搬送抵抗部材との間に作用する第2の圧接力および第1の圧接力を一の原稿に作用させる作用時間のうち、少なくとも1つの繰り出し条件を基準値から変更する条件変更を行う条件変更手段と、
前記条件変更手段による前記条件変更が行われていない基準状態において、基準の清掃能力で前記読取用ガラスを清掃すると共に、前記条件変更が行われることに起因して、原稿からの紙粉の発生が基準状態よりも多くなる場合には、前記基準の清掃能力よりも高い清掃能力で前記読取用ガラスを清掃するように、前記駆動手段を制御する清掃制御手段と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
前記条件変更手段は、前記リトライ動作の繰り返し回数が、所定回数N(Nは、2以上の整数)以上となった以降の追加のリトライ動作については、第1の圧接力が基準値から増加するように条件を変更する
ことを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
前記読取部は、前記搬送路を通過する原稿の第1面側に設けられ、当該原稿の第1面の画像を読み取る第1の読取部と、前記搬送路を通過する原稿の第2面側に設けられ、当該原稿の第2面を読み取る第2の読取部とからなると共に、
前記清掃部材は、第1の読取部における読取用ガラスを清掃する第1の清掃部材と、第2の読取部における読取用ガラスを清掃する第2の清掃部材とを含み、
前記ピックアップローラーおよび前記給送ローラーは、前記原稿の第1面側に配されており、
前記清掃制御手段は、
前記条件変更が、第1の圧接力の増加、第2の圧接力の増加および前記作用時間の増加のうち少なくとも1つに該当した場合、第1の清掃部材の清掃能力が前記基準の清掃能力よりも増加するように制御することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の画像読取装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)第1の実施形態
以下、本発明の第1の実施形態に係る原稿読取装置を備える画像形成装置の実施の形態を、電子写真式のカラー複写機(以下、単に「複写機」と言う。)に適用した場合を例にして説明する。
(1−1)画像形成装置の構成
図1は、複写機1の構成を説明するための模式図である。
【0020】
同図に示すように複写機1は、大きく分けて、原稿画像を読み取る画像読取部2と、読み取った画像を記録シート上にプリントするプリンター部3とから構成される。
(1−1−1)プリンター部
プリンター部3は、画像形成部10と、給紙部20と、定着部30と、制御部6などを備える。
【0021】
給紙部20は、収容トレイ21と、繰り出しローラー22と、捌きローラー対23と、タイミングローラー対24などを有している。
収容トレイ21は、記録シートを収容するものである。
繰り出しローラー22は、収容トレイ21の最上位の記録シートに接触して、これを記録シートの搬送路に繰り出すものである。
【0022】
捌きローラー対23は、一方が駆動ローラー、他方が従動ローラーであって、互いに接触して捌きニップを形成しており、当該従動ローラーにはトルクリミッターが取着され、記録シートに対して搬送方向とは逆向きの力を与えている。
これにより、連れ送りされた記録シートがあれば、それ以上搬送できなくなり、記録シートは、捌かれて1枚に分離される。
【0023】
タイミングローラー対24は、制御部6から指示されたタイミングで記録シートを下流側に送り出すものである。
画像形成部10は、同図に示すように、Y、M、C、Kの各色のそれぞれに対応する作像ユニット11Y,11M,11C,11Kと、これら作像ユニットの各感光体ドラム12に対向する一次転写ローラー14と、中間転写ベルト13、二次転写ローラー15等を備えている。
【0024】
作像ユニット11Y,11M,11C,11Kは、同図に示すように、中間転写ベルト13に対向する状態で、当該中間転写ベルト13に沿って、11Y、11M、11C、11Kの順序で所定の間隔をおいて直列に配置されている。
例えば、作像ユニット11Kは、感光体ドラム12並びに、当該感光体ドラム12の周囲に配置された帯電器16、露光部17、現像器18及びクリーナー19を備える。
【0025】
なお、作像ユニット11Y,11M,11Cも作像ユニット11Kと同様の構成であるので、ここでの説明は省略する。
露光部17は、レーザダイオードなどの発光素子を、主走査方向に複数列設してなり、LANなどを介して外部から取得された画像データ、もしくは、画像読取部2によって読み取られた原稿データにもとづいて制御部6が生成した駆動信号を取得し、感光体ドラム12を露光するためのレーザ光を出射して、感光体ドラム12上を露光走査する。
【0026】
感光体ドラム12は、上記露光を受ける前に各クリーナー19で表面の残存トナーが除去され、不図示のイレーサーランプに照射されて除電された後、帯電器16により一様に帯電されており、このように一様に帯電した状態で、上記レーザ光による露光を受けると、感光体ドラム12の表面に静電潜像が形成される。
各静電潜像は、各色の現像器18により現像され、これにより感光体ドラム12表面にY、M、C、Kの現像剤像としてのトナー像が作像される。
【0027】
各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト13上の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにタイミングをずらして実行され、一次転写ローラー14による静電力を受けて中間転写ベルト13上に多重転写されフルカラーのトナー像が形成される。
中間転写ベルト13上の重ね合わされた各色トナー像は、中間転写ベルト13の回転により二次転写位置に移動する。
【0028】
一方、中間転写ベルト13の移動タイミングに合わせて、給紙部20からは、タイミングローラー対24を介して記録シートが給送されて来ており、記録シートと中間転写ベルト13とが接触する二次転写位置において、二次転写ローラー15に印加された電圧により生じた静電力によって、中間転写ベルト13上のトナー像が記録シート上に二次転写される。
【0029】
二次転写位置を通過した記録シートは、定着部30に搬送され、ここでトナー像が加熱、加圧されて記録シートに定着された後、一対の排出ローラー31を介して排紙トレイ32に排紙される。
制御部6は、複写機1のプリンター部3および画像読取部2を統括的に制御する。
また、プリンター部3には、テンキーおよびタッチパネルなどからなり、操作者からの指示を受け付けると共に、操作者に対して情報を表示する操作パネル7が設けられている。
【0030】
次に画像読取部2について説明する。
画像読取部2は、固定光学系の一つであるシートスルー方式と移動光学系であるスキャナー移動方式の両方で原稿画像の読み取りが可能なように構成されている。
ここで、シートスルー方式は、光学系(読取位置)を静止(固定)させた状態で、原稿を移動させながら読み取る方式である。
【0031】
また、スキャナー移動方式は、読取ガラス上に原稿を載置した状態で、原稿面からの反射光をCCDラインセンサーに導くミラーを原稿に対して移動させ、原稿読み取り位置からCCDラインセンサーまでの光路長を常に一定に維持した状態で読み取る方式である。
画像読取部2は、シートスルー方式を実現するための原稿搬送部5と、画像を読み取るイメージリーダー部4とを備えている。
【0032】
イメージリーダー部4は、シートスルー方式及びスキャナー移動方式の両方式での画像読み込みを実行するものである。
(1−1−2)イメージリーダー部
イメージリーダー部4は、シートスルー方式で原稿を読み取る場合には、スキャナー42は、シートスルー用の読取ガラス41下方の位置(シートスルーポジション)に存する。
【0033】
そして、読取ガラス41上面を通過する原稿は、当該シートスルーポジションで静止しているスキャナー42のランプ44によって照射される。
原稿面からの反射光は、第1ミラー43、第2ミラー45および第3ミラー46により光路変更され、集光レンズ47によってCCDラインセンサー48の受光面で結像される。
【0034】
一方、スキャナー移動方式で原稿を読み取る場合には、原稿搬送部5を上方に開放して、原稿をイメージリーダー部4の手置き用の読取ガラス49上にセットする。この場合には、スキャナー42は、
図1の右方向に移動される。
この際、第2ミラー45と第3ミラー46とが対となって、上記スキャナー42と同方向であってその移動速度の半分の速度で移動するようになっており、これにより原稿面から集光レンズ47までの距離(光路長)が常に一定に保たれて、原稿の反射光は、CCDラインセンサー48の受光面で結像される。
【0035】
なお、上記スキャナー42および第2ミラー45、第3ミラー46は、スキャンモーター(不図示)を動力源とする動力伝達機構(不図示)を介して走行駆動される。
(1−1−3)原稿搬送部
原稿搬送部5は、原稿の両面の画像を1回の搬送で一挙に読み取り可能な、いわゆる同時読み取り方式の原稿搬送装置であって、原稿給紙トレイ50にセットされた原稿束から原稿を1枚ずつ分離し、スキューを補正した後に、読取ガラス41および読取ガラス61aの表面付近を通過させた後、原稿排紙トレイ51に排紙するものであり、原稿の搬送動作を制御する原稿搬送制御部200を備えている。
【0036】
原稿給紙トレイ50上に載置された原稿束は、不図示のカム機構により昇降板52が上昇することにより先端部が持ち上げられて、最上位の原稿の上面にピックアップローラー53が当接するようになっており、この状態で、ピックアップローラー53を回転させることにより、原稿給紙トレイ50から搬送路54内へ繰り出される。
そして、原稿は、回転駆動されるローラーとトルクリミッターの装着されたローラーとが互いに圧接してなる捌きローラー対55の分離ニップを通過することにより、1枚だけに捌かれた後、レジストローラー対57へと搬送される。
【0037】
本実施形態では、原稿の繰り出し精度を高めるため、ピックアップローラー53と原稿との間の圧接力(以下、「繰出圧接力」という。)および捌きローラー対55の分離ニップにおける圧接力(以下、「分離圧接力」という。)が変更可能な構成となっている。なお、この構成については、後述する。
なお、原稿搬送方向において捌きローラー対55のすぐ下流側(以下、原稿搬送方向に関して上流側、下流側であることを、それぞれ単に「上流側」、「下流側」という。)には、原稿を検出するための原稿検出センサー56が設けられている。
【0038】
レジストローラー対57は、原稿の先端が到着した時点では停止しており、レジストローラー対57のニップ部の上流側手前で原稿にループが形成されて、先端部の傾きが矯正された後、所定のタイミングで回転して、原稿を送り出すことによりスキュー補正が実行される。
そして、スキュー補正された原稿は、その下流側に配置された搬送ローラー対58まで搬送される。
【0039】
搬送ローラー対58は、読取ガラス41の上流側に配置されている。
レジストローラー対57から送り出された原稿は、搬送ローラー対58を経て、所定のタイミングで読取ガラス41の上方を通過するように送り出される。
これにより原稿の表面が、イメージリーダー部4によって読み取られる。
そして、読取ガラス41上を通過した原稿は、搬送ローラー対60aを経て、その先にある原稿裏面読取部61の下方を通過する。
【0040】
原稿裏面読取部61は、原稿の主走査方向に沿って延びるCCDアレイセンサ(不図示)を有しており、操作パネル7を介して操作者から原稿の裏面を読み取る指示が受け付けられていれば、その下方を通過する原稿の裏面側の画像を読み取る。
そして、原稿裏面読取部61を通過した原稿は、搬送ローラー対60bを経て、その先にある原稿排紙ローラー対63によって、原稿排紙トレイ51上に排出される。
【0041】
本実施の形態における原稿搬送部5は、原稿の搬送路を挟んで読取ガラス41の外表面および原稿裏面読取部61の読取ガラス61aの外表面にそれぞれ対向する位置に、主走査方向に延びる清掃部材59および清掃部材62が設けられている。
(1−1−4)清掃部材
清掃部材59および62は、原稿が搬送される合間に、読取ガラス41の表面を清掃するものである。
【0042】
図2は、清掃部材59の斜視図であり、これを回転駆動する第1清掃部材駆動部190も合わせて示している。
清掃部材59は、半円形の断面を有し、原稿の搬送方向と直交する方向に延びる本体部590と、当該本体部590の平坦部591aにおいて、上記直交する方向に沿って束状の繊維が複数束列状に植毛されてなるブラシ部592とからなる。
【0043】
また、本体部590は、その両端部に、それぞれ回転軸591bおよび591cを有し、原稿搬送部5の本体側のフレーム(不図示)に回転自在に軸支されている。
そして、回転軸591cが、第1清掃部材駆動部190に連結されている。
第1清掃部材駆動部190は、ステッピングモーターやサーボモーターなどの回転角の制御が可能なモーターである。
【0044】
図3は、清掃部材59による読取ガラス41の清掃動作を示す図である。
初期状態において、清掃部材59は、
図3(a)に示す状態になっている。
本端部590の円筒状側面591dは白色であって、シェーディング補正時における白色基準板の役目を果たす。
原稿搬送制御部200の指示に従い、第1清掃部材駆動部190により、清掃部材59が、図の反時計回りに回転駆動され、ブラシ部592の先端で読取ガラス41の表面を摺擦して、紙粉などのゴミを掃き出し(
図3(b))、その後、元の位置に戻って停止する(
図3(c))。
【0045】
なお、
図3(c)では、清掃部材59の下方を原稿Gが通過しているが、このとき、清掃部材59は、読取ガラス41と原稿面との距離が所定の範囲D1以内となるように規制するガイドの機能も有している。
また、
図3(d)に示すように、原稿搬送制御部200の指示によって、清掃部材59が所定のタイミングで時計回りに逆転駆動される。
【0046】
これは、
図3(a)〜(c)に示す正転駆動時に生じるブラシ部592の変形を、元の形状に矯正するために行われるものである。
なお、清掃部材62も、清掃部材59と同様の構成であり、また、これを回転駆動させる第2清掃部材駆動部191も第1清掃部材駆動部190と同様の構成であるため、これ以上の説明は省略する。
【0047】
(1−1−5)ピックアップローラーおよび捌きローラー対の構成
図4(a)〜(c)は、ピックアップローラー53および捌きローラー対55の構成を示す部分断面図であり、動作図も兼ねている。
本実施形態における原稿搬送部5では、上述したように、繰出圧接力および分離圧接力が変更可能な構成となっており、以下では、この構成について説明する。
【0048】
図4(a)に示すように、捌きローラー対55は、給送ローラー駆動部180(
図5参照)により回転駆動される給送ローラー55aと、トルクリミッターが装着された捌きローラー55bとが圧接してなる。
給送ローラー55aの回転は、駆動ベルト(不図示)などの動力伝達機構を介してピックアップローラー53にも伝達され、これにより、ピックアップローラー53が給送ローラー55aに連動して、互いが同一の周速で駆動されるようになっている。
【0049】
ピックアップローラー53は、給送ローラー55aの駆動軸180aを中心に揺動自在に設けられた支持部材153に軸支されており、これによりピックアップローラー53は、上下に揺動自在となっている。
支持部材153には、長穴154aが設けられており、この長穴154aに、原稿搬送部5の本体側(不図示)から突出したピン154aが挿通されることにより、支持部材153の揺動範囲を制限している。
【0050】
また、巻ばね155は、支持部材153を矢印Bの方向に付勢しており、これにより、ピックアップローラー53を上記揺動範囲の最下位の位置へと向かわせる。
したがって、ピックアップローラー53が原稿束の上面に当接して押し上げられ、最下位の位置から上方に移動するほど、繰出圧接力が大きくなる。
支持部材153の上方には、位置検出部156が設けられている。
【0051】
この位置検出部156は、例えば、リミットスイッチであって、進退自在のロッド156aを有しており、当該ロッド156aの突出量が、L1、L2およびL3と次第に短くなるにつれ、各状態に対応する信号を原稿搬送制御部200に出力する。
これにより、原稿搬送制御部200は、ピックアップローラー53が、
図4(a)、(b)および(c)にそれぞれ示される位置のうち、いずれの位置に存するのかを検出できるようになっている。
【0052】
原稿トレイの底板のうち、ピックアップローラー53側の一部は、支軸52bにより上下方向に揺動可能に軸支される昇降板52となっており、昇降板52の裏面には、カム52aが当接している。
したがって、このカム52aを不図示の駆動モーターで回動させることにより、昇降板52が上下に揺動し、原稿束Gの上面とピックアップローラー53との距離を変化させることができる。
【0053】
図4(a)の状態から、昇降板52を上昇させると、やがて、原稿束Gの上面がピックアップローラー53と当接し、さらに昇降板52を上昇させると、ピックアップローラー53が上方に押し上げられていくので、位置検出部156からの検出出力に基づき、
図4(b)もしくは
図4(c)の位置で停止させることができ、繰出圧接力の変更が可能となる。
【0054】
ここで、原稿搬送制御部200が、繰出圧接力を基準となるF2に設定するため、
図4(b)に示す位置にピックアップローラー53を移動させていたとする。
原稿Gは、繰出圧接力F2の反力でピックアップローラー53から押圧されており、この状態で原稿Gが繰りだされると、ピックアップローラー53の位置が原稿Gの厚み分下降し、繰出圧接力が若干低下するが、原稿搬送制御部200は、次の原稿Gの繰り出しに備え、位置検出部156のロッド156aの突出量のL2を維持して、繰出圧接力が変わらないように、昇降板52を上昇させている。
【0055】
また、繰出圧接力をF2よりも大きいF3に設定するには、ピックアップローラー53を
図4(c)に示す位置、即ち、位置検出部156のロッド156aの突出量をL3(<L2)にすればよい。
このように、ピックアップローラー53の上下の位置を調整することにより、繰出圧接力を所定の値に設定することができる。
【0056】
一方、捌きローラー対55では、給送ローラー55aの位置が固定されており、捌きローラー55bが上下に揺動することにより、分離圧接力を変更可能な構成となっている。
以下、捌きローラー55bを揺動させる構成について説明する。
図4(a)に示すように、捌きローラー55bは、支軸159を中心に揺動自在に設けられた支持部材158により、不図示のトルクリミッターを介して保持されている。
【0057】
また、全周の約半分にはす歯歯車160aが形成された円盤状の回転部材160が、支持部材158により、支軸159を中心に回転自在に保持されている。
そして、
図4(a)に示すように、巻ばね161の一方の端部が支持部材158に固定され、他方の端部が回転部材160に固定されている。
また、回転部材駆動部162が、原稿搬送部5の本体側(不図示)に設けられている。
【0058】
回転部材駆動部162は、ステッピングモーターなどの回転角度が制御可能なモーターであって、回転軸の先端には、ねじ歯車162aが形成されており、当該ねじ歯車162aが、回転部材160のはす歯歯車160aに噛み合っている。
なお、上述のステッピングモーターの代わりにサーボモーターなどを用いてもよい。
回転部材160が、
図4(a)に示す位置(以下、「ホームポジション」という。)にあるとき、巻ばね161が捌きローラー55bを押し上げる方向(矢印C方向)に付勢するように設定されている。
【0059】
また、
図4(c)に示すように、回転部材160が同図の反時計回りに回転すると、巻ばね161の付勢力が増加するようになっている。
以上の構成により、原稿搬送制御部200は、回転部材駆動部162に駆動パルスを所定数出力して、回転部材160の角度を変更することにより、分離圧接力を目標の値に設定することができる。
【0060】
このような原稿搬送制御部200による繰出圧接力および分離圧接力の変更は、原稿Gの厚みに応じて行われる。
例えば、普通紙、厚紙および薄紙を比較した場合、厚紙は、質量が大きいため、その下の原稿Gとの間の摩擦力が大きく作用して、繰り出しを失敗するいわゆる給紙ミスが生じ易い。
【0061】
なお、ここでいう薄紙、普通紙および厚紙は、単位面積あたりの重量、即ち、目付量によって、以下のように区別される。
即ち、薄紙、普通紙および厚紙の目付量は、一般的には、それぞれ30[g/m2]〜50[g/m2]、60[g/m2]〜80[g/m2]および126[g/m2]以上であるとして取り扱われていることが多く、本実施の形態における薄紙、普通紙および厚紙の定義についても、これに準ずる。
【0062】
そこで、原稿搬送制御部200は、厚紙の原稿を繰り出す場合には、繰出圧接力および分離圧接力を基準値よりも大きくする。
これにより、ピックアップローラー53および給送ローラー55aの原稿Gに対する摩擦力が増加し、原稿Gを搬送する力を増大することができ、給紙ミスの発生を抑制すことができる。
【0063】
なお、繰出圧接力および分離圧接力の各基準値は、普通紙の原稿が適正に搬送されるときの値として、予め実験などにより求められている。
一方、薄紙の原稿Gを繰り出す場合には、質量が小さいために、最上位の原稿Gだけでなく、その下の原稿Gも一緒に繰り出されてしまう、いわゆる重送が生じ易い。
このため、原稿搬送制御部200は、薄紙の原稿Gを繰り出す場合には、繰出圧接力を基準値に維持したまま、分離圧接力を基準値よりも小さくする。
【0064】
これにより、給送ローラー55aと捌きローラー55bとの間の摩擦力は小さくなるため、トルクリミッターのトルクが負荷された捌きローラー55bの給送ローラー55a対する従動性が低下し、捌きローラー55bの捌きニップにおける周速が、給送ローラー55aの周速よりも遅くなるか、もしくは回転を停止する。
したがって、ピックアップローラー53で重送が生じても、捌きニップにおける圧接力が小さくなった分だけ、重送した原稿間で生じる摩擦力が小さくなり連れ送る力が弱くなると共に、捌きローラー55b側の原稿に対する搬送抵抗を増大させることができ、捌きニップにおける重送をより確実に阻止することができる。
【0065】
本実施形態では、ユーザーが操作パネル7を介して、原稿トレイに載置された原稿Gが、普通紙、薄紙および厚紙のうちのいずれであるのかを入力するようになっており、原稿搬送制御部200は、この入力情報にもとづいて、繰出圧接力および分離圧接力の変更を実施する。
最も使用頻度の高い普通紙がデフォルトとして設定されており、特に、ユーザーから原稿の厚みについて入力がない場合には、当該普通紙に対応する繰出圧接力および分離圧接力が設定されるものとする。
【0066】
(1−2)繰出圧接力および分離圧接力と紙粉の発生量との関係
ところで、一般的に回転中のローラーが、摩擦力の高い状態で原稿Gに接触すると、原稿Gからの紙粉の発生量が増加する。
例えば、繰出圧接力および分離圧接力を大きくすると、原稿Gが、ピックアップローラー53および給送ローラー55aにより強く擦られて、
図4(b)、(c)のd1およびd2で誇張して示すように、原稿Gの上面側からの紙粉の発生量が、通常よりも増加することになる。
【0067】
また、分離圧接力を小さくすると、重送が生じていない原稿Gでは、原稿Gと捌きローラー55bと擦れあって、
図4(b)のd3に示すように、原稿Gの下面側からの紙粉の発生量が、通常よりも増加するものと考えられる。
そこで、本実施形態の原稿搬送制御部200は、先ず、清掃部材59および清掃部材62における通常の清掃頻度を従来よりも少なく設定しておき、通常よりも紙粉の発生量が増加すると考えられる場合に、当該清掃頻度を増加させるように制御している。
【0068】
また、紙粉の発生量が、通常よりも低下すると考えられる場合に、上記清掃頻度をさらに低くするように制御している。
ここで、通常の状態とは、普通紙を繰り出す際に、当該普通紙に対応する繰出圧接力と分離圧接力とで繰り出し動作を行ったときの状態(以下、「基準状態」という。)を意味する。
【0069】
(1−3)原稿搬送制御部
図5は、原稿搬送制御部200と、これの制御対象とを示すブロック図であり、同図では、プリンター部3およびイメージリーダー部4との関係についても示されている。
原稿給紙トレイ50上に載置された原稿の搬送動作は、原稿搬送制御部200によって制御される。
【0070】
原稿搬送制御部200は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203および不揮発性メモリー204およびタイマー205などからなる。
ROM202には、原稿の搬送動作の実行するための制御プログラムなどが格納されている。
【0071】
RAM203は、揮発性のメモリーであって、CPU201におけるプログラム実行時のワークエリアとなる。
不揮発性メモリー204は、例えば、EEPROM(登録商標)などであって、CPU201のデータ保存エリアとなる。
タイマー205は、CPU201からの指示に応じて、所定時間ごとにカウントアップを行うことにより計時する。
【0072】
CPU201は、ROM202に格納されている制御プログラムを実行することにより、原稿の搬送処理(以下、「原稿搬送処理」という。)を実行する。
この原稿搬送動作には、清掃部材59および清掃部材62の清掃頻度を変更する処理が含まれる。
(1−4)原稿搬送処理の内容
以下、第1の実施形態に係る、原稿搬送制御部200における原稿搬送処理について、
図6のフローチャートに基づき説明する。
【0073】
原稿搬送制御部200は、主電源がONされると、操作パネル7を介して、ユーザーから原稿を読み取る指示が受け付けられまで待機し(ステップS11:NO)、原稿を読み取る指示が受け付けられると(ステップS11:YES)、操作パネル7を介して、原稿の厚みに関する情報、即ち、普通紙、厚紙および薄紙のいずれであるのかを示す情報を取得する(ステップS12)。
【0074】
そして、原稿が薄紙であるか否かを判定し、薄紙でなければ(ステップS13:NO)、次に厚紙であるか否かを判定して、厚紙でなければ(ステップS14:NO)、この原稿は普通紙であると判断されるので、繰出圧接力の値を、普通紙を繰り出すのに適した基準値F
P1に設定すると共に、分離圧接力を、普通紙を捌くのに適した基準値F
D1に設定する(ステップS15)。
【0075】
次に、不揮発性メモリー204に格納されている原稿の種別を示すフラグFの値を、普通紙であることを示す「1」にする(ステップS16)。
また、原稿が厚紙である場合には(ステップS14:YES)、給紙ミスの発生を抑制するために、繰出圧接力および分離圧接力を、それぞれの基準値よりも大きい値F
P2およびF
D2に設定すると共に(ステップS18)、上記フラグFの値を、厚紙であることを示す「2」にする(ステップS19)。
【0076】
そして、原稿が薄紙の場合には(ステップS13:YES)、繰出圧接力の値を基準値F
P1に設定すると共に、レジストローラー対57よりも下流側において重送が発生しないように、分離圧接力を基準値F
D1よりも小さいF
D3に設定して(ステップS20)、上記フラグFの値を、薄紙であることを示す「3」にする(ステップS21)。
上記のフラグFの設定後、原稿の搬送タイミングが到来したか否かを判定する(ステップS17)。
【0077】
ここで、原稿搬送制御部200は、公知の原稿サイズセンサー(不図示)により原稿の長さを取得し、原稿の紙間が所定の間隔となるように、ピックアップローラー53および給送ローラー55aならびにレジストローラー対57などのローラーの駆動タイミングを自ら決定しているため、原稿の搬送タイミングを判別することができる。
原稿搬送制御部200は、原稿の搬送タイミングが到来したと判断すると(ステップS17:YES)、ピックアップローラー53および給送ローラー55aなどを回転させて原稿搬送動作を開始する(ステップS22)。
【0078】
この原稿搬送動作には、給送ローラー55aよりも下流側に位置する全てのローラーの駆動が含まれており、当該駆動に際して、原稿搬送制御部200は、サーボモーターなどからなるレジストローラー駆動部181、搬送ローラー駆動部182および排紙ローラー駆動部183などをON・OFF制御する。
そして、原稿搬送制御部200は、清掃をするタイミングが到来するまで待機し(ステップS23:NO)、原稿がレジストローラー対57から送り出されて、清掃をするタイミングが到来すると(ステップS23:YES)、ユーザーからの指示に応じて、読取ガラス41、もしくは、読取ガラス41および61aの両方を清掃して原稿の画像を読み取るサブルーチン処理(以下、「読取面清掃・読み取り処理」という。)を実行し(ステップS24)、読み取った原稿が、読み取りの指示を受けた一連の原稿の最後であれば(ステップS25:YES)、本原稿搬送処理を終了する。
【0079】
また、最後の原稿でなければ(ステップS25:NO)、ステップS17以降の処理を繰り返し実行する。
なお、原稿搬送制御部200は、レジストローラー対57の回転開始時からタイマー205によって計時を開始しており、計時された時間が所定時間に達したときに、清掃をするタイミングが到来したものと判定する。
【0080】
ここで、上記所定時間は、原稿の先端が読取ガラス41上に導入されるまでに、清掃が完了するように設定されている。
(1−4−1)読取面清掃・読み取り処理の内容
以下、原稿搬送処理におけるサブルーチン処理として実行される読取面清掃・読み取り処理について、
図7のフローチャートに基づき説明する。
【0081】
原稿搬送制御部200は、原稿の両面を読み取る指示が受け付けられていない場合、即ち、表面だけを読み取る場合には(ステップS101:NO)、フラグFの値を判定し(ステップS102)、その値が「1」、即ち、普通紙を示すものであれば(ステップS102:YES)、以下に示す標準モードで、読取面清掃・読み取り処理を実行し(ステップS103)、メインルーチンにリターンする。
【0082】
図8(a)は、標準モードで読取面清掃・読み取り処理を説明する図である。
同図において、左から右へと時間が流れており、上向きの矢印は、清掃部材59を正転駆動で1回転(以下、「+1回転」という。)させることを意味し、また、下向きの矢印は、清掃部材59を逆転駆動で1回転(以下、「−1回転」という。)させることを意味する。
【0083】
同図に示すように、最初の原稿が読取ガラス41上を通過する直前に、清掃部材59を+1回転させており、その後は、原稿が2枚通過する度に、紙間で清掃部材59を+1回転させる動作を繰り返す。
そして、最後の原稿が読取ガラス41上を通過したときに限り、当該最後の原稿の通過後、清掃部材59を−1回転させて、ブラシ部592の変形を矯正する。
【0084】
このように、標準モードでは、紙間で清掃部材59を回転させないときがあるので、その分、清掃部材59のブラシ部592の摩耗が、紙間で毎回清掃部材を回転させていた従来よりも軽減される。普通紙の場合には、この程度の清掃頻度で発生した紙粉を十分除去できる。
図7に戻って、フラグFの値が「1」でなければ(ステップS102:NO)、フラグFの値が「2」であるか否かを判定し、その値が「2」、即ち、厚紙を示すものであれば(ステップS104:YES)、ステップS18において、繰出圧接力および分離圧接力を基準値よりも大きくしているので、原稿の表面からの紙粉の発生が多くなることが予想されるため、以下に示す清掃能力を強化したモード(以下、「能力強化モード」という。」)で、読取面清掃・読み取りを実行し(ステップS105)、メインルーチンにリターンする。
【0085】
図8(b)は、能力強化モードで読取面清掃・読み取り処理を説明する図であり、図の見方は、
図8(a)と同様である。
なお、黒塗の矢印は、標準モードに対して、新たに清掃動作が追加されていることを示している。
図8(b)に示すように、最初の原稿が読取ガラス41上を通過する直前に、清掃部材59を+1回転させており、その後は、原稿が1枚通過する度に、紙間で清掃部材59を+1回転させる動作を繰り返す。
【0086】
そして、原稿が最後に読取ガラス41上を通過したときに限り、当該最後の原稿の通過後、清掃部材59を−1回転させて、ブラシ部592の変形を矯正する。
このように、能力強化モードでは、各紙間で清掃部材59を+1回転させるので、読取ガラス41がしっかり清掃されて、画像に筋状のノイズが入るなどの画像読み取り品質の低下を防止することができる。
【0087】
図7に戻って、フラグFの値が「2」でなければ(ステップS104:NO)、フラグFの値は「3」、即ち、薄紙を示すものであるたため、ステップS20において、分離圧接力を基準値よりも小さくしているので、原稿の表面からの紙粉の発生が少なくなる反面、裏面からの紙粉の発生が多くなることが予想される。
ここでは、原稿の表面のみを読み取っており、裏面から発生する紙粉は、読み取り品質にほとんど影響しないため、原稿の表面側の紙粉が少なくなることのみを考慮すればよい。
【0088】
このため、原稿搬送制御部200は、以下に示すように清掃能力を抑制したモード(以下、「能力抑制モード」という。」)で、読取面清掃・読み取り処理を実行し(ステップS106)、メインルーチンにリターンする。
図8(c)は、能力抑制モードでの読取面清掃・読み取り処理を説明する図であり、図の見方は、
図8(a)と同様である。
【0089】
なお、破線の矢印は、標準モードにおいて実行されていた清掃が省略されていることを示す。
図8(c)に示すように、最初の原稿が読取ガラス41上を通過する直前に、清掃部材59を+1回転させており、その後は、原稿が3枚通過する度に、紙間で清掃部材59を+1回転させる動作を繰り返す。
【0090】
そして、原稿が最後に読取ガラス41上を通過したときに限り、当該最後の原稿の通過後、清掃部材59を−1回転させて、ブラシ部592の変形を矯正する。
このように、能力抑制モードでは、原稿が3枚通過する度に、紙間で清掃部材59を+1回転させるので、清掃頻度が標準モードよりも少なくなり、清掃部材59のブラシ部592の摩耗がより軽減される。
【0091】
このように清掃頻度を低下させても、上述したように、紙粉の発生量が少なくなっているので、問題は生じない。
図7に戻って、原稿の両面の画像を読み取る指示が受け付けられている場合には(ステップS101:YES)、フラグFの値を判定し、その値が「1」、即ち、普通紙を示すものであれば(ステップS107:YES)、以下に示す両面用標準モードで、読取面清掃・読み取り処理を実行し(ステップS108)、メインルーチンにリターンする。
【0092】
図9(a)は、両面用標準モードでの読取面清掃・読み取り処理を説明する図であり、図の見方は、
図8(a)と同様である。
なお、下段におけるハッチング入りの矢印は、裏面読取位置における清掃部材62の清掃動作を示す。
同図に示すように、最初の原稿が読取ガラス41および61a上を通過する直前に、清掃部材59および62をそれぞれ+1回転させており、その後は、読取ガラス41および61a上を原稿が2枚通過する度に、紙間で清掃部材59および62をそれぞれ+1回転させる動作を繰り返す。
【0093】
そして、最後の原稿が読取ガラス41および61a上を通過したときに限り、当該最後の原稿の通過後、清掃部材59および62をそれぞれ−1回転させて、清掃部材59および62に設けられたブラシ部592の変形を矯正する。
このように、標準モードでは、紙間で清掃部材59および62を回転させないときがあるので、その分、清掃部材59および62のブラシ部592の摩耗が、紙間で毎回清掃部材を回転させていた従来よりも軽減される。
【0094】
図7に戻って、フラグFの値が「1」でなければ(ステップS107:NO)、フラグFの値が「2」であるか否かを判定し、その値が「2」、即ち、厚紙を示すものであれば(ステップS109:YES)、ステップS18において、繰出圧接力および分離圧接力を基準値よりも上げているので、原稿の表面からの紙粉の発生が多くなることが予想されるため、以下に示す両面用能力強化モードで、読取面清掃・読み取り処理を実行し(ステップS110)、メインルーチンにリターンする。
【0095】
図9(b)は、両面用能力強化モードでの読取面清掃・読み取り処理を説明する図であり、図の見方は、
図9(a)と同様である。
図9(b)に示すように、最初の原稿が読取ガラス41および61a上を通過する直前に、清掃部材59および62をそれぞれ+1回転させている。
その後は、原稿が1枚、読取ガラス41上を通過する度に、紙間で清掃部材59を+1回転させると共に、原稿が2枚、読取ガラス61a上を通過する度に、紙間で清掃部材62を+1回転させる動作を繰り返す。
【0096】
つまり、原稿の表面側と対向する読取ガラス41を清掃する清掃部材59の清掃能力は、大きくするが、原稿の裏面側と対向する読取ガラス61aを清掃する清掃部材62の清掃能力は変更しない。
これは、繰出圧接力および分離圧接力を基準値よりも上げると、原稿の表面に加える摩擦力が大きくなってその部分での紙粉の発生が多くなるため、原稿の表面と対向する読取ガラス41への紙粉の付着が増加するものの、双方の圧接力の増加は原稿の裏面における摩擦力にはあまり影響を与えず紙粉の発生量は普通紙の場合と変わらないと考えられるからである。
【0097】
このように、本実施形態では、紙粉が発生している原稿の面に応じて、清掃すべき読取ガラスを決定している。
そして、最後の原稿が読取ガラス41および61a上を通過したときに限り、当該最後の原稿の通過後、清掃部材59および62をそれぞれ−1回転させて、清掃部材59および62に設けられたブラシ部592の変形を矯正するのは、両面用標準モードと同様である。
【0098】
このように、両面用能力強化モードでは、紙粉が付着し易くなっている読取ガラス41がしっかり清掃されるため、画像読み取り品質の低下を抑制することができる。
図7に戻って、フラグFの値が「2」でなければ(ステップS109:NO)、フラグFの値は「3」、即ち、薄紙を示すものであるたため、ステップS20において、分離圧接力を基準値よりも下げているので、原稿の表面からの紙粉の発生が少なくなり、裏面からの紙粉の発生が多くなることが予想されるため、以下に示す両面用能力変更モードで、読取面清掃・読み取り処理を実行し(ステップS111)、メインルーチンにリターンする。
【0099】
図9(c)は、両面用能力変更モードでの読取面清掃・読み取り処理を説明する図であり、図の見方は、
図9(a)と同様である。
図9(c)に示すように、最初の原稿が読取ガラス41および61a上を通過する直前に、清掃部材59および62を+1回転させる。
その後は、原稿が読取ガラス41を3枚通過する度に、紙間で清掃部材59を+1回転させる動作を繰り返すと共に、原稿が読取ガラス61aを1枚通過する度に、紙間で清掃部材62を+1回転させる動作を繰り返す。
【0100】
そして、最後の原稿が読取ガラス41および61a上を通過したときに限り、当該最後の原稿の通過後、清掃部材59および62をそれぞれ−1回転させて、清掃部材59および62に設けられたブラシ部592の変形を矯正するのは、両面用標準モードと同様である。
このように、両面用能力変更モードでは、読取ガラス41および61aのうち、紙粉が付着しやすい読取ガラス61aの清掃頻度を上げ、紙粉が付着しにくい読取ガラス41の清掃頻度を下げているため、原稿の裏面の画像品質の低下を抑制しつつ、清掃部材59のブラシ部592の摩耗を軽減し、寿命を延ばすことができる。
【0101】
以上のように、第1の実施形態に係る複写機1では、原稿の厚みに起因する操り出し動作の困難性に応じて、繰出圧接力および分離圧接力を変更しており、当該変更の内容により原稿の表面側および裏面側からの紙粉の発生量の変動を推測して、推測された紙粉の発生量に応じて、清掃部材59および62の清掃頻度を適切な頻度に設定するので、原稿の両面の画像読み取り品質を維持しつつ、清掃部材59および62に設けられたブラシ部592の摩耗を軽減し、寿命を延ばすことができる。
【0102】
また、従来、操作パネルなどを介して、ユーザーから、例えば、1回の清掃タイミングで清掃部材を3回転させるような、清掃頻度を通常よりも増加させる指示を受け付ける場合もあるが、このような事例が生じるのは、原稿の画像の読み取りを行った後、ユーザーが紙粉に起因する画像品質の低下に気づいて、再度画像を読み込むときに清掃頻度を上げる場合が少なくない。
【0103】
これに対し、本実施形態の複写機1では、最初にユーザーが、普通紙、厚紙および薄紙のいずれに該当するのを入力するだけで、自動的に読取ガラス41および61aの清掃頻度が調整されるので、画像の読み取りを失敗する可能性も低下し、その分、余計に原稿の搬送動作を繰り返すこともなくなるので、ブラシ部592の長寿命化が図られると共に、生産性の向上に資する。
【0104】
(2)第2の実施形態
(2−1)画像読取装置の構成
以下、本発明の第2の実施形態に係る画像読取部210について説明する。
第2の実施形態に係る画像読取部210の構成は、基本的に第1の実施形態に係る画像読取部2と共通するが、第2の実施形態に係る画像読取部210では、同時読み取り方式の原稿搬送部5の代わりに、原稿をスイッチバックさせて反転することにより、両面の画像を読み取る反転方式の原稿搬送部215が設けられている点と、両面用標準モード、両面用能力強化モードおよび両面用能力変更モードの読取面清掃・読み取り処理に代えて、それぞれ後述の反転用標準モード、反転用能力強化モードおよび反転用能力変更モードで読取面清掃・読み取り処理を実行する。
【0105】
以下では、共通の構成部分には第1の実施形態と同じ符号を付して、その説明は省略し、相違する点を中心に説明する。
(2−2)原稿搬送部の構成
図10(a)〜(c)は、第2の実施形態に係る画像読取部210の動作図である。
画像読取部210の原稿搬送部215は、
図10(a)に示すように、反転路64が設けられており、また、第1の実施形態の原稿搬送部5に設けられていた原稿裏面読取部61および清掃部材62は設けられていない。
【0106】
したがって、原稿の両面を読み取る場合には、
図10(b)に示すように、原稿の先端側の大部分を原稿排紙トレイ51上に排出した後、
図10(c)に示すように、原稿排紙ローラー対63を逆転させて、原稿をスイッチバックさせて、再度、読取ガラス41上を通過させ、原稿の裏面側の画像を読み取る。
また、裏面側の画像を読み取った原稿をそのまま原稿排紙トレイ51上に排出してしまうと、片面のみを読み取ったときの原稿と、1枚ごとの表裏の上下関係が逆転した状態で積載されて頁順が狂ってしまうため、もう一度スイッチバック動作(以下、「整合反転動作」という。)を行った後に、原稿排紙トレイ51上に排出する。
【0107】
このように、原稿の裏面読み取り時に反転させたり、整合反転動作を行ったりするため、読取面清掃・読み取り処理の内容が第1の実施形態とは異なる。
具体的には、上述したように、両面用標準モード、両面用能力強化モードおよび両面用能力変更モードの読取面清掃・読み取り処理に代えて、それぞれ以下に示す反転用標準モード、反転用能力強化モードおよび反転用能力変更モードの読取面清掃・読み取り処理が実行される。
【0108】
図11(a)は、反転用標準モードでの読取面清掃・読み取り処理を説明する図であり、図の見方は、
図8(a)〜(c)と同様である。
図11(a)に示すように、最初の原稿が読取ガラス41上を通過する直前に、清掃部材59を+1回転させており、その後は、原稿が読取ガラス41上を偶数回通過する度に、紙間で清掃部材59を+1回転させる動作を繰り返す。
【0109】
なお、読取ガラス41上を3の倍数の回数目で通過する原稿は、表裏の上下関係を片面読み取りの原稿と一致させるために、ただ反転させているだけであり、この原稿の読み取りは行わないので、破線で示している。
そして、原稿が最後に読取ガラス41上を通過したときに限り、当該最後の原稿の通過後、清掃部材59を−1回転させて、清掃部材59に設けられたブラシ部592の変形を矯正する。
【0110】
また、
図11(b)は、反転用能力強化モードでの読取面清掃・読み取り処理を説明する図であり、図の見方は、
図11(a)と同様である。
図11(b)に示すように、最初の原稿が読取ガラス41上を通過する直前に、清掃部材59を+1回転させており、その後は、原稿の表面側を読み取った後に、紙間で清掃部材59を+2回転させる動作を繰り返す。
【0111】
このとき、清掃時間は、清掃部材59を+1回転させる通常の清掃動作よりも2倍の時間を要するため、紙間を反転用標準モードよりも大きくする必要がある。
さらに、反転用標準モードで実行される+1回転の清掃動作が、反転用能力強化モードにおいても同じタイミングで実行されるようになっており、この清掃動作の実行タイミングが、上記+2回転させる動作のタイミングと重なるときは、当該タイミングにおいて合計で+2回転させるようにする。
【0112】
このようにすることで、原稿の表面からの紙粉の発生量が多くなると予想される当該ケースであっても、しっかりと紙粉を除去することができると共に、清掃期間全体を通して、清掃頻度が一時的に両面用標準モードよりも下回るような期間が生じることが防止できる。
そして、原稿が最後に読取ガラス41上を通過したときに限り、当該最後の原稿の通過後、清掃部材59を−1回転させて、清掃部材59に設けられたブラシ部592の変形を矯正するのは、反転用標準モードと同様である。
【0113】
さらに、
図11(c)は、反転用能力変更モードでの読取面清掃・読み取り処理を説明する図であり、図の見方は、
図11(a)および(b)と同様である。
図11(c)に示すように、最初の原稿が読取ガラス41上を通過する直前に、清掃部材59を+1回転させており、その後は、原稿の裏面を読み取った後に、紙間で清掃部材59を+2回転させる動作を繰り返す。
【0114】
さらに、原稿の表面を読み取り、次に原稿が読取ガラス41を通過するまでは、清掃動作を実施しない。
このように原稿の表面からの紙粉の発生量が減少し、裏面からの紙粉の発生量が多くなると予想される当該ケースでは、裏面読取り時の清掃頻度を増加させるように変更して、紙粉を除去すると共に、紙粉発生の少ない表面読み取り時の清掃頻度を減少させることにより、全体として無駄な清掃頻度の増加を抑制し、ブラシ部592の寿命の低下を抑制することができる。
【0115】
そして、原稿が最後に読取ガラス41上を通過したときに限り、当該最後の原稿の通過後、清掃部材59を−1回転させて、清掃部材59に設けられたブラシ部592の変形を矯正するのは、反転用標準モードと同様である。
(3)第3の実施形態
(3−1)画像読取装置の構成
以下、本発明の第3の実施形態に係る原稿搬送部について説明する。
【0116】
第3の実施形態に係る原稿搬送部の構成は、基本的に第1の実施形態に係る原稿搬送部5と共通するが、第3の実施形態に係る原稿搬送部では、ユーザーからの原稿種別の受付は必要ではなく、さらに、繰出圧接力および分離圧接力を変更せず、また、原稿の搬送動作および読取面清掃・読み取り処理の内容が、第1の実施形態とは異なる。
なお、上述したように、本発明の第3の実施形態に係る原稿搬送部は、繰出圧接力および分離圧接力を変更しないため、原稿搬送部5の構成からこれらの圧接力を変更する機構を省略してもよく、この省略した構成については、当業者であれば容易に考え得る内容であるため、ここでの説明は省略する。
【0117】
また、読取面清掃・読み取り処理の内容をわかりやすくするために、第3の実施形態に係る原稿搬送部では、原稿裏面読取部61および清掃部材62は、省略された構成とする。
図12は、第3の実施形態に係る原稿搬送部の原稿搬送制御部における原稿搬送処理の実行手順を示すフローチャートである。
【0118】
なお、第3の実施形態に係る原稿搬送部の原稿搬送制御部は、ROM202に格納されている実行プログラムの内容のみが、第1の実施形態に係る原稿搬送制御部200と異なるだけで、ハードウエア的には何ら変わらないため、第1の実施形態と同じ符号を付して説明する。
原稿搬送制御部200は、主電源がONされると、操作パネル7を介して、ユーザーから原稿を読み取る指示が受け付けられまで待機し(ステップS301:NO)、原稿を読み取る指示が受け付けられると(ステップS301:YES)、原稿の搬送タイミングが到来するまで待機し(ステップS302:NO)、原稿の搬送タイミングが到来すると(ステップS302:YES)、原稿の搬送動作を行うサブルーチン処理(以下、「原稿搬送処理」という。)を実行する(ステップS303)。
【0119】
図13は、この原稿搬送処理の実行手順を示すフローチャートである。
原稿搬送制御部200は、1枚の原稿に対して、繰り出し動作を繰り返した回数を示すカウント値Nを「0」にリセットして(ステップS401)、給送ローラー駆動部180を駆動させて、給送ローラー55aと、これと不図示のベルトで繋がっているピックアップローラー53の回転を開始させると共に、計時を開始する(ステップS402)。
【0120】
そして、計時した時間が所定時間taに達するまでに、原稿検出センサー56が、原稿を検出したか否かを判定する(ステップS403)。
上記所定時間taは、1回の繰り出し動作で、原稿が正常に繰り出された場合に、原稿の先端が原稿検出センサー56の検出位置を通過するのに要する時間に、ある程度のマージンを加算した時間であって、この時間を過ぎても原稿検出センサー56が原稿の先端を検出していないときは、給紙ミスが発生しているものと考えられる。
【0121】
このため、原稿搬送制御部200は、計時した時間が所定時間taに達するまでに、原稿の先端が原稿検出センサー56により検出されていれば(ステップS403:YES)、正常な繰り出し動作が行われていると考えられるので、メインルーチンにリターンする。
なお、このように、正常な繰り出し動作が行われている場合には、所定のタイミングでレジストローラー対57、搬送ローラー対58、搬送ローラー対60および原稿排紙ローラー対63などが駆動されるが、これは従来と同様の動作であるので、説明を省略する。
【0122】
また、計時した時間が所定時間taに達するまでに、原稿の先端が検出されていなければ(ステップS403:NO)、給紙ミスが発生していると考えられるので、ジャムが生じないように、直ちにピックアップローラー53および給送ローラー55aを停止し(ステップS404)、カウント値Nが所定値Na(Naは、例えば、「3」)以上となっていなければ(ステップS405:NO)、カウント値Nの値を1インクメントして(ステップS406)、ステップS402以降の処理を繰り返す、いわゆるリトライ動作を実行する。
【0123】
つまり、本実施形態では、ユーザーが原稿の種別を入力していないが、上記カウント値Nによって、原稿の種別が厚紙であるかどうかをある程度判別することができる。
カウント値Nが、所定値Na以上となっていれば(ステップS405:YES)、これ以上リトライ動作を続けても、繰り出し動作が正常に行われる可能性が低いので、原稿搬送動作を終了し、給紙ミスの発生を通知するための信号を、プリンター部3の制御部6に出力し、その旨のメッセージを操作パネル7に表示させる(ステップS407)。
【0124】
図12に戻って、原稿搬送制御部200は、清掃をするタイミングが到来するまで待機し(ステップS304:NO)、原稿がレジストローラー対57から送り出されて、清掃をするタイミングが到来すると(ステップS304:YES)、カウント値Nが「0」であれば(ステップS305:YES)、1回の繰り出し動作で原稿が正常に繰り出されているので、
図8(a)に示す標準モードで読取ガラス41の清掃および原稿の読み取りを実施し(ステップS306)、読み取った原稿が、読み取りの指示を受けた一連の原稿の最後であれば(ステップS307:YES)、本原稿搬送処理を終了する。
【0125】
また、カウント値Nが「0」でなければ、レジストローラー対57から送り出された原稿は、リトライ動作が実行されており、少なくとも繰出圧接力が原稿の表面に作用している作用時間は、通常よりも長くなっているので、表面からの紙粉の発生が増加しているものと解されるので、以下に示す能力強化モードで読取ガラス41の清掃および原稿の読み取りを実施し、ステップS307以降の処理を実行する。
【0126】
図14は、能力強化モードでの読取ガラス41の清掃および原稿の読み取り動作を説明する図であり、図の見方は、
図8(a)〜(c)と同様である。
図14に示すように、リトライ動作が行われた原稿(以下、「リトライ原稿」という。)が、読取ガラス41上を通過するまでは、
図8(a)に示す標準モードと同様の動作を行い、リトライ原稿が読取ガラス41上を通過し、その次の原稿が通過するまでに、標準モードよりも+1回多く清掃部材59を回転させる。
【0127】
そして、原稿が最後に読取ガラス41上を通過したときに限り、当該最後の原稿の通過後、清掃部材59を−1回転させて、ブラシ部592の変形を矯正する。
このように、本実施形態における能力強化モードでは、リトライ原稿が、読取ガラス41上を通過した直後の各紙間で、清掃部材59を通常よりも余計に+1回転させることにより、読取ガラス41がしっかり清掃されて、画像読み取り品質の低下を抑制することができる。
【0128】
<変形例>
(1)上記第1の実施形態において、能力強化モードでの読取面清掃・読み取り処理では、原稿が読取ガラス41上を1枚通過する度に、紙間で清掃部材59を+1回転させて、清掃頻度を高めていたが、これに限らない。
例えば、
図15(a)に示すように、本来標準モードにおいて、原稿が読取ガラス41上を通過する前に実施する+1回転動作と最後に実施する−1回転動作とを除く他の回転動作において、清掃部材59を+1回転させるべきところを、+2回転させるようにして、清掃頻度を高めても構わない。
【0129】
その場合、清掃時間が標準モードよりも長くなるので、紙間を大きくする必要がある。
もしくは、
図15(b)に示すように、読取ガラス41を清掃するタイミングや清掃部材59の回転を標準モードと同じにして、清掃部材59を回転させる速度を標準モードよりも遅くしても構わない。
同図では、矢印の幅を大きく表示しているが、これは時間をかけて、清掃部材59をゆっくり回転させている状態を示しており、このように清掃部材59をゆっくり回転させると、標準モードよりもより確実に清掃することができる。
【0130】
以上のことから、紙粉の発生量の増加が予想される場合の対処法としては、読取ガラスの清掃頻度を増加させる他に、清掃部材の回転速度を低下させて清掃する時間を長くするなど、要するに、清掃能力を増加させればよく、このことは、両面用能力強化モード、両面用能力変更モード、反転用能力強化モードおよび反転用能力変更モードにおける上記対処方としても適用することができる。
【0131】
(2)上記第3の実施形態において、原稿搬送部は、繰出圧接力および分離圧接力を変更しないため、原稿搬送部5の構成からこれらの圧接力を変更する機構を省略してもよいとしたが、これに限らず、第1の実施形態と同様に、繰出圧接力および分離圧接力を変更する構成としてもよい。
例えば、
図13の原稿搬送処理の実行手順を示すフローチャートのステップS405において、カウント値Nが所定値Na以上となっていれば、さらにリトライ動作を行っても正常に繰り出し動作が行われる可能性が低いので、原稿搬送動作を終了し、給紙ミスの発生を通知示するための信号を、制御部6を介して操作パネル7に出力するとしているが、Naよりも小さく、かつ、2以上の値であるNb(Nbは、整数)を設定し、カウント値NがNb以上となった場合には、繰出圧接力または繰出圧接力と分離圧接力の両方を基準値よりも増加させて、給紙ミスが解消され易い状態へと変更(以下、「繰り出し条件変更」という。)してもよい。
【0132】
この場合、リトライ動作を行った結果、原稿が繰り出されたとしても、繰り出し条件変更が行われないで繰り出された原稿と、繰り出し条件変更が行われて繰り出された原稿とでは、前者よりも後者の方が、原稿を強く擦っているので、紙粉の発生量が多くなることが予想される。
したがって、リトライ動作が行われたことにより清掃能力を増加させる場合、繰り出し条件を変更しないで搬送された場合(
図14参照)よりも、繰り出し条件を変更して搬送された場合の方の清掃能力の増加の程度を大きくすることが望ましい。
【0133】
図16(a)および(b)は、このように繰り出し条件変更が行われたときに清掃能力の増加の程度を大きく設定する場合の一例を示す図である。
ここで、
図16(a)および(b)の能力強化モードにおける「リトライ原稿」は、リトライ動作を繰り返す過程で、繰出圧接力、もしくは、繰出圧接力および分離圧接力の両方を増加させる繰り出し条件変更が行われた原稿のことを示す。
【0134】
図16(a)に示す能力強化モードでは、上記リトライ原稿が読取ガラス41を通過してから、次に原稿が読取ガラス41に到達するまでの紙間で、清掃部材59を+2回転させて、上記繰り出し条件変更が行われなかった場合の能力強化モード(
図14参照)よりも、さらに清掃能力を高めている。
また、
図16(b)に示す能力強化モードでは、上記リトライ原稿が読取ガラス41を通過して以降の全ての紙間で、清掃部材59を+1回転させることにより、結果として上記繰り出し条件変更が行われなかったときよりも清掃能力を高めている。
【0135】
(3)上記第3の実施形態における原稿搬送部は、原稿裏面読取部61および清掃部材62が省略されている構成としたが、これに限らず、原稿裏面読取部61および清掃部材62を備える構成としてもよい。
その場合、原稿の裏面側の紙粉の発生量が、通常よりも増加することが予想される場合には、清掃部材62の清掃動作に、
図14に示すような能力強化モードを適用すればよい。
【0136】
さらに、繰出圧接力および分離圧接力を変更可能な上記変形例(2)の構成においては、原稿の裏面側の紙粉の発生量が、通常よりも増加することが予想される場合には、
図16(a)または(b)の能力強化モードを、清掃部材62の清掃動作に適用すればよい。
(4)上記第1から第3の実施形態では、繰出圧接力および分離圧接力の増減や、繰出圧接力の原稿に対する作用時間のみに着目して、清掃部材の清掃能力を変化させていたが、これに限らない。
【0137】
例えば、原稿がOHPシートの場合には、紙粉は発生せず、また、原稿がコート紙などの場合には、紙粉が発生しにくいので、このような原稿の画像を読み取る指示がなされた場合には、繰出圧接力および分離圧接力を増加させた場合であっても、例外的に、清掃部材の清掃能力を増加させるモードへの移行は行わないか、もしくは、清掃部材の清掃能力の増加幅を小さくしてもよいであろう。
【0138】
この場合、ユーザーは、原稿の紙種がOHPシートやコート紙などであることを、操作パネル7を介して入力すればよい。
また、上述のように、繰出圧接力および分離圧接力の増減や、繰出圧接力の原稿に対する作用時間に着目したのは、ピックアップローラー53、給送ローラー55aおよび捌きローラー55bと、原稿の表面との摩擦の増減から紙粉の発生量を推定しようとしたからであるが、これら3つのローラーは、使用されるうちに表面が摩耗して、摩擦係数は次第に小さくなり、紙粉が発生しにくくなる傾向にあるので、繰り出し回数(摩耗度合指標値)などからピックアップローラー53における表面の摩擦係数の低下を推測して、能力強化モードの内容を以下のようにしてもよい。
【0139】
図17(a)は、原稿の繰り出し回数の積算値(横軸)とピックアップローラー53の外周面の摩擦係数(縦軸)との関係を概略的に示す図である。
同図に示すように、ピックアップローラー53の外周面の摩擦係数は、ほぼ指数関数的に減少することがわかる。
ここで、初期状態におけるピックアップローラー53の外周面の摩擦係数値をμ0とし、摩擦係数の低下が鈍る繰り出し回数の積算値をM1とし、このときの摩擦係数値をμ1とする。
【0140】
さらに、ピックアップローラー53における繰り出し耐用回数をM2とするとき、当該耐用回数に達したときの周面の摩擦係数をμ2とする。
また、
図17(b)は、ピックアップローラー53の外周面の摩擦係数(横軸)と所定回数の繰り出し動作で原稿から発生する紙粉の量(縦軸)との関係を示す図である。
同図に示すように、紙粉の発生量は、ほぼ対数関数的に増加することがわかる。
【0141】
ここで、摩擦係数値μ0、μ1およびμ2に対応する紙粉の発生量を、それぞれS0、S1およびS2とする。
図17(a)に示すように、繰り出し回数がM1に達するまでは、ピックアップローラー53の外周面の摩擦係数の変化が大きいため、
図17(a)および(b)に示すグラフを用いて、繰り出し回数の積算値によって紙粉の発生量を推測して、推測された紙粉の発生量に応じて、清掃部材の清掃能力を変更してもよい。
【0142】
また、繰り出し回数がM1以上となった場合、
図17(b)に概略的に示すように、紙粉の発生量が急激に減少するので、繰出圧接力および分離圧接力を増加させた場合であっても、例外的に、清掃部材の清掃能力を増加させるモードへの移行は行わないか、もしくは、清掃部材の清掃能力の増加幅を小さくしてもよいであろう。
また、給送ローラー55aおよび捌きローラー55bについても、
図17(a)および(b)で示したものと同様の傾向であるため、これらのローラーについても、上記ピックアップローラー53に適用した内容を適用することができる。
【0143】
(5)上記第1および第2の実施形態では、ピックアップローラー53および捌きローラー55bの位置を上下させることにより、繰出圧接力および分離圧接力を変化させている。
しかしながら、変形例(4)で説明したように、ピックアップローラー53、給送ローラー55aおよび捌きローラー55bは、使用しているうちに表面が摩耗すると、同じ量上下に変化させたときであっても、摩耗ない状態と摩耗が進んだ状態とでは、外径が異なるため、繰出圧接力および分離圧接力の値に差が生じ、摩耗が進んだ状態の方が摩耗ない状態よりも値も小さくなる。
【0144】
このため、繰り出し回数に応じて、これらのローラーの摩耗による外径変化を推定し、ピックアップローラー53および給送ローラー55aの上下量を補正することが望ましい。
図18(a)は、原稿の繰り出し回数の積算値(横軸)とピックアップローラー53の外径(縦軸)との関係を概略的に示す図である。
【0145】
同図に示すように、ピックアップローラー53の外径は、ほぼ指数関数的に減少することがわかる。
ここで、初期状態におけるピックアップローラー53の外径をD0とし、外径の低下が鈍る繰り出し回数の積算値をM3とし、このときピックアップローラー53の外径をD3とする。
【0146】
さらに、ピックアップローラー53の繰り出し耐用回数M2に達したときのピックアップローラー53の外径をD2とする。
また、
図18(b)は、ピックアップローラー53の外径(横軸)と基準状態における繰出圧接力(縦軸)との関係を概略的に示す図である。
同図に示すように、繰出圧接力は、ほぼ対数関数的に増加することがわかる。
【0147】
ここで、外径D0、D2およびD3に対応する基準状態における操出圧接力の値をP0、P2およびP3とする。
図18(a)に示すように、繰り出し回数がM3に達するまでは、ピックアップローラー53の外径変化が大きいため、
図18(a)および(b)に示すグラフを用いて、ピックアップローラー53の外径変化を推測して、基準状態における操出圧接力の値がP0となるように、ピックアップローラー53の上下の移動量を補正することが望ましい。
【0148】
この場合、原稿搬送制御部が、位置検出部から、ロッド156aの突出量L2およびL3に対応する信号が出力されたときから、
図18(a)のグラフに基づき得られるピックアップローラー53の半径の減少分だけ余計に昇降板52を上方に上昇させるように、昇降板駆動部152の駆動制御を見直すようにすればよい。
また、繰り出し回数がM3以上となった場合、
図18(a)および(b)に示すように、ピックアップローラー53の外径は、D3からD2に変化するので、上記と同様昇降板駆動部152の上昇量を調整するようにしてもよいが、その変化量は比較的小さいので、繰り出し回数がM3を過ぎてから実施する調整は、省略してもよい。
【0149】
また、給送ローラー55aおよび捌きローラー55bについても、
図18(a)および(b)で示したものと同傾向であるため、これらのローラーについても、上記ピックアップローラー53に適用した内容を適用することができる。
(6)また、上記実施の形態では、原稿搬送制御部200が、原稿搬送部5内に設けられているとしたが、これに限らない。
【0150】
イメージリーダー部4またはプリンター部3内に設けられている制御系が原稿搬送制御部200を兼ねる構成であってもよい。
(7)上記第1〜第3の実施形態では、捌きローラー対55は、分離ニップを形成するために、給送ローラー55aとトルクリミッターが取着された捌きローラー55bとを圧接させる構成であったが、これに限らず、捌きローラー55bの代わりに、表面が所定の摩擦係数に設定された加圧パッドなどを給送ローラー55aに圧接させる構成としてもよく、要するに、原稿を捌く捌き部としては、回転駆動されるローラーと、当該ローラーに接触して、原稿の動きを抑制する搬送抵抗部材とがあれば、どのようなものであってもよい。
【0151】
(8)上記第1および第2の実施形態では、ユーザーが操作パネル7により、原稿が普通紙、厚紙および薄紙のうちのいずれに該当するのかを入力するとしたが、これに限らず、原稿搬送装置内に超音波厚み検出計などの厚み検出部を設けて、原稿の厚みを直接検出して原稿の厚みに関する情報を取得してもよい。
厚み検出部の構成としては、平坦なガイド面上に置かれた原稿に上方から超音波を送受信するプローブで押し当てて、原稿を上記ガイドに密着させた状態にして厚みを検出すればよい。
【0152】
プローブを押し当てる位置としては、捌きローラー対55の下流側の直近が望ましい。
何故ならば、レジストローラー対57に原稿の先端を当接させてループを形成する動作が完了してから、レジストローラー対57の回転が開始されるまでの期間は、原稿は停止しており、この期間に、原稿にプローブを押し当てても、原稿の搬送に支障を来さないからである。
【0153】
なお、プローブを原稿に押し当てる動作は、電磁ソレノイドなどのアクチュエーターを用いることにより容易に実現可能である。
ところで、給紙ミスは、原稿の厚み、即ち、坪量が大きいことに起因することが少なくない。
したがって、第3の実施形態の原稿搬送部のように、給紙ミスが生じた場合に実施されるリトライ動作の反復回数が、多い場合には、厚紙であるものと推測される。
【0154】
つまり、リトライ動作の反復回数は、ある程度、原稿の厚みを指標しているものと考えられる。
このように、原稿の厚みを取得する取得手段としては、操作パネルや厚み検出部のほか、リトライ動作の反復回数をカウントする手段であってもよい。
なお、第3の実施形態では、リトライ動作を繰り返すことで、原稿に対する繰出圧接力の作用時間を長くし、原稿が繰り出される確率を高めているが、例えば、操作パネルから入力された原稿の紙種が、厚紙である場合には、原稿搬送動作の初めからピックアップローラーの回転時間を通常よりも長くし、原稿に対する繰出圧接力の作用時間を長くして、原稿が繰り出される確率を高めてもよい。
【0155】
(9)また、第1および第2の実施形態では、操作パネルが受け付ける原稿の紙種は、普通紙、薄紙および厚紙のいずれかであったが、これに限らず、例えば、更紙や上質紙などの入力を受け付けてもよい。
上質紙は、更紙よりも表面が滑らかで、摩擦係数が小さく、給紙ミスが生じ易いため、原稿を繰り出す困難性においては、厚紙と同等であるので、厚紙原稿と同様の原稿搬送処理を実施するとしてもよい。
【0156】
(10)また、変形例(2)では、給紙ミスが生じた場合、繰出圧接力の作用時間を通常よりも長くすると共に、読取ガラスの清掃能力を高めており、さらに、給紙ミスが継続して発生し、リトライ回数がNb回以上となった場合、繰出圧接力、もしくは、分離圧接力および繰出圧接力の両方を大きくすると共に、読取ガラスの清掃能力をさらに高めている。
【0157】
そして、その後に給紙ミスが解消すれば、変更した繰出圧接力、分離圧接力および繰出圧接力の作用時間、ならびに、読取ガラスの清掃能力を基準の値に戻すようにしているが、これに限らない。
例えば、Nb回以上のリトライ動作を繰り返すほど、繰り出し動作が困難な場合、通常の厚紙よりも原稿の剛性が高いなどの特殊な事情が考えられ、原稿束に含まれる原稿全般に給紙ミスが生し易くなっている場合も多々あるため、リトライ動作をNb回以上繰り返した後に給紙ミスが解消しても、繰出圧接力、分離圧接力、繰出圧接力の作用時間および清掃部材の清掃能力を基準の値に戻さずに、原稿読取ジョブが完了するまで、そのまま維持するようにして、次の給紙ミスが生じ難いようにしてもよい。
【0158】
また、このように次の給紙ミスが生じ難くする制御を選択するのか、もしくは、変形例(2)のような制御を選択するのかを、例えば、操作パネルなどの受け付ける手段を介して、ユーザーからの指示を受け付けることにより決定してもよい。
(11)上記実施の形態では、能力抑制モード、両面用能力変更モードおよび反転用能力変更モードにおいて、読取ガラスへの紙粉の付着が減少すると推測される場合に、当該読取ガラスに対する清掃能力を基準値よりも低下させているが、必ずしもこのように清掃能力を低下させる必要はない。
【0159】
(12)上記実施の形態および変形例では、原稿の紙種に起因する操り出し動作の困難性のみを問題としていたが、例えば、画像読取装置の使用環境が高温・高湿となっている場合には、原稿表面、ピックアップローラー、給送ローラー55aおよび捌きローラー55bの摩擦係数が大きくなる傾向にあるため、重送が生じ易くなり、また、原稿にカールが生じている場合には、給紙ミスが生じ易い。
【0160】
このように、画像読取装置の使用環境や原稿の状態によっても、繰り出し動作の困難性に影響を及ぼすため、これらの要因も含めて、繰り出し動作の困難性を判断してもよい。
(13)また、上記実施の形態では、画像読取装置が設けられた画像形成装置として複写機を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ファクシミリ等の画像形成装置にも適用できる。
【0161】
また、上記実施の形態および上記変形例の内容を可能な限り、それぞれ組み合わせるとしてもよい。