【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成24年5月15日 社団法人 高分子学会発行「高分子学会予稿集 61巻1号〔2012〕」、及び平成24年5月29日(火)〜31日(木) 高分子学会 「第61回(2012年)高分子学会年次大会」において文書をもって発表
【文献】
Zhurnal Organicheskoi Khimii,1991年,Vol.27(10),p.2060-2065
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、下記式(1)で表される化合物について説明する。
【0023】
式(1)中、R
1は、水素原子またはメチル基を示す。
【0024】
式(1)中、R
2は、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、または−R
3(XR
4)
n−*で表される2価の連結基を示す。なお、*は式中の窒素原子と結合する位置を示す。
【0025】
上記R
2で示される炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状の2価の炭化水素基、炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。なお、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基および脂環式炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよい。
【0026】
上記直鎖状または分岐鎖状の2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜16であり、より好ましくは1〜12であり、さらに好ましくは1〜8であり、さらに好ましくは1〜6であり、特に好ましくは1〜4である。
また、該直鎖状または分岐鎖状の2価の炭化水素基としては、メチレン基、アルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0027】
上記2価の脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは3〜12であり、より好ましくは3〜7である。
また、該2価の脂環式炭化水素基としては、シクロアルキレン基の他、アダマンチレン基等の2価の橋かけ環炭化水素基が挙げられるが、好ましくはシクロアルキレン基である。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等が挙げられる。
なお、2価の脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素上でもよい。
【0028】
上記2価の芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6〜18であり、より好ましくは6〜12である。
また、該2価の芳香族炭化水素基としては、アリーレン基が好ましい。該アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
なお、上記2価の芳香族炭化水素基の結合部位は、芳香環上のいずれの炭素上でもよい。
【0029】
また、R
2で示される炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、上記の他に、上記直鎖状または分岐鎖状の2価の炭化水素基と上記2価の芳香族炭化水素基が連結した2価の基が挙げられる。斯様な2価の基としては、フェニレンメチレン基(−C
6H
4−CH
2−)、フェニレンエチレン基(−C
6H
4−CH
2−CH
2−)等のアリーレンアルキレン基;フェニレンジメチレン基(−CH
2−C
6H
4−CH
2−)、フェニレンジエチレン基(−CH
2−CH
2−C
6H
4−CH
2−CH
2−)等のアリーレンジアルキレン基等が挙げられる。
【0030】
また、R
2で示される炭素数1〜20の2価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、スルファニル基が挙げられる。なお、これら置換基の位置および数は任意であり、置換基を2以上有する場合、当該置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0031】
また、上記−R
3(XR
4)
n−*で表される2価の連結基中、R
3は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
斯かる2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6である。また、該2価の炭化水素基としては、メチレン基、アルキレン基が好ましい。
【0032】
また、上記R
4は炭素数2〜4の2価の炭化水素基を示し、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
斯かる2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは2〜3である。また、該2価の炭化水素基としてはアルキレン基が好ましい。
なお、R
3、R
4におけるアルキレン基の具体例としては、上記R
2で示されるものと同様のものが挙げられる。
【0033】
また、上記2価の連結基中、Xは酸素原子、イオウ原子またはカルボニル基を示すが、酸素原子、イオウ原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。
【0034】
また、上記2価の連結基中、nは1〜10の整数を示すが、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましい。なお、nが2〜10の整数である場合、n個のR
4、n個のXはいずれも同一でも異なっていてもよい。
【0035】
そして、上記化合物(1)は、イソチオシアネート基を有するため反応性に富み、且つ大気中の水と反応しにくく安定性に優れ、運搬する際の化学変化等も少ない。
したがって、電子材料、印刷、医療、繊維・紙・木材、自動車、家電、建築材料等として多岐にわたる分野で利用可能な重合体の合成原料として有用であり、構造単位(2)を有する重合体や斯かる重合体と下記式(16)で表される化合物とを反応させて得られる重合体、化合物(4)の合成中間体などとして特に有用である。
【0036】
次に、下記式(2)で表される構造単位を有する重合体について説明する。
【0038】
〔式(2)中、R
1およびR
2は、前記と同義である。〕
【0039】
上記重合体は、構造単位(2)を有するホモポリマーであってもよく、構造単位(2)以外の構造単位を有するコポリマーであってもよい。斯様なコポリマーが有する構造単位(2)以外の構造単位としては、化合物(1)以外のエチレン性不飽和単量体(重合性エチレン性不飽和結合をもつもの)に由来する構造単位が好ましい。
【0040】
化合物(1)以外のエチレン性不飽和単量体としては、不飽和カルボン酸類、芳香族ビニル化合物類、インデン類、マレイミド類、不飽和カルボン酸エステル類、不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル類、シアン化ビニル化合物類、不飽和アミド類、カルボン酸ビニルエステル類、不飽和エーテル類、脂肪族共役ジエン類、重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロ化合物等が挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。斯様な単量体を有する共重合体はアルカリ可溶性樹脂に有用であり、これらの中でも、芳香族ビニル化合物類、不飽和カルボン酸エステル類が好ましい。
【0041】
上記不飽和カルボン酸類としては、クロトン酸、けい皮酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸またはその無水物類;3価以上の不飽和多価カルボン酸またはその無水物類;こはく酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕(M−5300:東亞合成(株))、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕(M−5400:東亞合成(株))等の2価以上の多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステル類;ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等の両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0042】
上記芳香族ビニル化合物類としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、p−クロルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−ビニルベンジルメチルエーテル、m−ビニルベンジルメチルエーテル、p−ビニルベンジルメチルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル等が挙げられ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0043】
上記インデン類としては、インデン、1−メチルインデン等が挙げられる。
【0044】
上記マレイミド類としては、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0045】
上記不飽和カルボン酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングルコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングルコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングルコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングルコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0046】
上記不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル類としては、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
上記シアン化ビニル化合物類としては、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。
【0048】
上記不飽和アミド類としては、(メタ)アクリルアミド、α−クロロアクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0049】
上記カルボン酸ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。
【0050】
上記不飽和エーテル類としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0051】
上記脂肪族共役ジエン類としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0052】
上記重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロ化合物における重合体分子鎖としては、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0053】
また、構造単位(2)を有する重合体の両末端としては、後述する重合開始剤に由来する開始剤残基、水素原子等が挙げられる。
【0054】
また、構造単位(2)を有する重合体の重量平均分子量(M
w)としては、1万〜80万が好ましく、5万〜70万がより好ましく、8万〜65万が特に好ましい。また、分子量分布(M
w/M
n)としては、1〜7が好ましく、1.5〜6がより好ましい。
なお、上記重量平均分子量および分子量分布は、後述する実施例に記載の方法に従い測定すればよい。
【0055】
次に、構造単位(2)を有する重合体の製造方法について説明する。
構造単位(2)を有する重合体は、化合物(1)を重合させることで製造できる。斯かる方法によれば、大気中でも反応を進行させることが可能であり(仮に窒素雰囲気やドライルームで行わない場合であっても反応を進行させることができる)、効率よく構造単位(2)を有する重合体を合成できる。具体的には、<工程1>化合物(5)と化合物(6)を反応させ、<工程2>得られた化合物(7)のハロゲン原子R
7をアジ基(−N=N=N)に変換し、<工程3>得られた化合物(8)の基=N=Nを、基=P(−R
9)
3に変換し(R
9は有機基を示す)、<工程4>得られた化合物(9)の基=P(−R
9)
3を更に基=C=Sに変換し、<工程5>得られた化合物(1)を重合開始剤存在下で重合させることで合成できる。
【0057】
〔式中、R
7およびR
8はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられるが、反応効率の点から好ましくは臭素原子)を示し、R
9は有機基を示し、R
1およびR
2は前記と同義である。〕
なお、上記R
9で示される有機基としては、置換または非置換のフェニル基が好ましい。該フェニル基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基等のC
1-3アルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチルスルファニル基、エチルスルファニル基等のC
1-3アルキルスルファニル基等が挙げられる。
【0058】
<工程1>
本反応で用いる化合物(5)としては、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸ブロミド等が挙げられる。
【0059】
また、化合物(6)としては、2−ヨードエタノール、2−ブロモエタノール、2−クロロエタノール、2−ヨードプロパノール、2−ブロモプロパノール、2−クロロプロパノール、3−ヨードプロパノール、3−ブロモプロパノール、3−クロロプロパノール、4−ヨードブタノール、4−ブロモブタノール、4−クロロブタノール、6−ヨードヘキサノール、6−ブロモヘキサノール、6−クロロヘキサノール等が挙げられる。
化合物(6)の使用量は、化合物(5)に対し、通常0.1〜5モル当量である。
【0060】
本反応は、塩基存在下で行うのが好ましい。塩基としては、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等の3級アミン;ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ピコリン、キノリン等の芳香族アミン等が挙げられる。
塩基の使用量は、化合物(5)に対し、通常0.1〜5モル当量である。
【0061】
また、本反応は、溶媒存在下で行うのが好ましい。該溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;テトラメチル尿素等のウレア類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;C
1〜
3の低級アルコール類が挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
溶媒の使用量は、化合物(5)1モルに対し、通常0.01〜5Lである。
【0062】
本反応の反応時間は、通常、1〜72時間であり、好ましくは1〜48時間である。また、反応温度は特に限定されないが、好ましくは−20℃〜溶媒の沸点であり、より好ましくは0〜80℃である。
【0063】
<工程2>
本反応で用いる化合物(7)としては、2−ヨードエチル(メタ)アクリレート、2−ブロモエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2−ヨードプロピル(メタ)アクリレート、2−ブロモプロピル(メタ)アクリレート、2−クロロプロピル(メタ)アクリレート、3−ヨードプロピル(メタ)アクリレート、3−ブロモプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、4−ヨードブチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、4−クロロブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
上記化合物(7)のハロゲン原子R
7は、例えばアジ化物を反応させることで、アジ基に変換できる。
【0065】
上記アジ化物としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属のアジ化物;カルシウム、マグネシウム等の第2族元素のアジ化物等が挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、アルカリ金属のアジ化物が好ましく、アジ化ナトリウムがより好ましい。
アジ化物の使用量は、化合物(7)に対し、通常0.1〜5モル当量である。
【0066】
また、本反応は、溶媒存在下で行うのが好ましい。該溶媒としては、アミド類、ラクトン類、スルホキシド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素類、C
1〜
3の低級アルコール類が挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これら溶媒の具体例は工程1で使用されるものと同様である。
溶媒の使用量は、化合物(7)1モルに対し、通常、0.1〜10L程度である。
【0067】
本反応の反応時間は、通常、1分〜72時間であり、好ましくは3分〜48時間である。また、反応温度は特に限定されないが、好ましくは0℃〜溶媒の沸点であり、より好ましくは100〜200℃であり、さらに好ましくは100〜175℃である。
【0068】
<工程3>
本反応で用いる化合物(8)としては、2−アジドエチル(メタ)アクリレート、2−アジドプロピル(メタ)アクリレート、3−アジドプロピル(メタ)アクリレート、4−アジドブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0069】
上記化合物(8)の基=N=Nは、例えばP(−R
9)
3で示される有機リン化合物を反応させることで(シュタウディンガー反応)、基=P(−R
9)
3に変換できる。
【0070】
上記有機リン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリス(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、ジフェニル(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス(4−クロロフェニル)ホスフィン、トリス[4−(メチルチオ)フェニル]ホスフィン等のトリフェニルホスフィンやその誘導体が好ましい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
有機リン化合物の使用量は、化合物(8)に対し、通常0.1〜5モル当量である。
【0071】
また、本反応は、溶媒存在下で行うのが好ましい。該溶媒としては、アミド類;スルホキシド類;エステル類;エーテル類;ハロゲン化炭化水素類;炭化水素類;C
1〜
3の低級アルコール類が挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これら溶媒の具体例は工程1で使用されるものと同様である。
溶媒の使用量は、化合物(8)1モルに対し、通常、0.1〜10L程度である。
【0072】
本反応の反応時間は、通常、1〜96時間であり、好ましくは3〜72時間である。また、反応温度は特に限定されないが、好ましくは0℃〜溶媒の沸点であり、より好ましくは10〜200℃であり、さらに好ましくは20〜100℃である。
【0073】
<工程4>
本反応で用いる化合物(9)としては、2−トリフェニルホスホラニリデンアミノエチル(メタ)アクリレート、2−トリフェニルホスホラニリデンアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−トリフェニルホスホラニリデンアミノプロピル(メタ)アクリレート、4−トリフェニルホスホラニリデンアミノブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
上記化合物(9)の基=P(−R
9)
3は、例えば二硫化炭素を反応させることで(アザ−ウィッティヒ反応)、基=C=Sに変換できる。
【0075】
二硫化炭素の使用量は、化合物(9)1モルに対し、通常、0.1〜10L程度である。なお、本反応は、二硫化炭素の他に工程3で用いる溶媒を使用してもよい。
【0076】
本反応の反応時間は、通常、30分〜72時間であり、好ましくは1〜48時間である。また、反応温度は特に限定されないが、好ましくは0℃〜二硫化炭素の沸点であり、より好ましくは10℃〜二硫化炭素の沸点である。
【0077】
なお、上記工程2〜4の反応は、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の重合禁止剤存在下で行うのが好ましい。
重合禁止剤の使用量は、化合物(7)、化合物(8)または化合物(9)に対し、通常0.001〜1モル当量である。
【0078】
<工程5>
本重合反応に使用する化合物(1)としては、2−イソチオシアネートエチル(メタ)アクリレート、2−イソチオシアネートプロピル(メタ)アクリレート、3−イソチオシアネートプロピル(メタ)アクリレート、2−イソチオシアネートブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0079】
本重合反応に使用する重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましい。斯様な開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤等が挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0080】
熱重合開始剤としては、加熱により分解してラジカルを発生し重合を開始させるものであれば特に限定されず、例えば、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート(MAIB)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート等のパーオキシド系重合開始剤等が挙げられる。
【0081】
光重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生し重合を開始させるものであれば特に限定されず、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等が挙げられる。
【0082】
重合開始剤の使用量は、通常、化合物(1)に対し、通常0.001〜3モル当量であり、好ましくは0.005〜1モル当量である。
【0083】
また、本重合反応は、溶媒存在下で反応させるのが好ましい。溶媒としては、アミド類、スルホキシド類、ケトン類、エーテル類、炭化水素類、C
1〜
3の低級アルコール類が好ましく、これら溶媒の具体例は工程1で使用されるものと同様である。なお、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、化合物(1)は水との反応性が低いため、溶媒として水を使用することもできる。
溶媒の使用量は、化合物(1)1モルに対し、通常、0.05〜5mL程度である。
【0084】
本重合反応の反応時間は、通常、0.5〜96時間であり、好ましくは0.5〜72時間であり、より好ましくは0.5〜48時間である。また、重合温度は特に限定されないが、通常、20℃〜溶媒の沸点であり、好ましくは20〜100℃であり、より好ましくは20〜90℃であり、さらに好ましくは20〜80℃である。
【0085】
なお、上記各工程において、各反応生成物の単離は、必要に応じて、ろ過、洗浄、乾燥、再結晶、再沈殿、透析、遠心分離、各種溶媒による抽出、中和、クロマトグラフィー等の通常の手段を適宜組み合わせて行えばよい。
【0086】
そして、上記のようにして得られる構造単位(2)を有する重合体は、イソチオシアネート基を有するため反応性に富み、且つ大気中の水と反応しにくく安定性に優れ、運搬する際の化学変化等も少なく貯蔵安定性が高く、優れた熱安定性も有する。
したがって、電子材料、印刷、医療、繊維・紙・木材、自動車、家電、建築材料等として多岐にわたる分野で利用可能なプレポリマーとして有用であり、構造単位(2)を有する重合体と式(16)で表される化合物とを反応させて得られる重合体等を誘導するためのプレポリマーとして特に有用である。
【0087】
次に、上記式(2)で表される構造単位を有する重合体と、下記式(16)で表される化合物とを反応させて得られる重合体(以下、この重合体を重合体(3)ともいう)について説明する。該重合体(3)は、上記構造単位(2)を有する重合体の基−N=C=Sに、化合物(16)の基−ZHを反応させることにより得られ、チオウレタン結合、ジチオカルバミド酸エステル結合(ジチオカルバメート結合)またはチオウレア結合を有するものである。
【0089】
式(16)中、Zは、酸素原子、イオウ原子、または基−NR
6−(R
6は、水素原子、1価の飽和炭化水素基、またはエチレン性不飽和基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種を有する1価の有機基を示す)を示すが、酸素原子、基−NR
6−が好ましい。
【0090】
上記R
6で示されるエチレン性不飽和基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種を有する1価の有機基は、後述するR
5で示されるものと同様であり、R
6で示される1価の飽和炭化水素基としてはアルキル基が好ましい。該アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜12であり、さらに好ましくは1〜4である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0091】
式(16)中、R
5は、エチレン性不飽和基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種を有する1価の有機基、または2価以上の有機基を示す。
【0092】
上記R
5で示されるエチレン性不飽和基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種を有する1価の有機基の炭素数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜16である。また、上記エポキシ基としては、オキシラニル基、オキセタニル基が挙げられる。
上記1価の有機基が有するエチレン性不飽和基、エポキシ基の位置および個数は任意であるが、これらを合計で1個有する1価の有機基としては、以下の式(10)〜(12)で表されるものが挙げられる。
【0094】
〔式(10)中、R
10は、カルボニル基、炭素数1〜14の2価の炭化水素基、−(R
11O)
k−で表される2価の連結基(R
11は炭素数2〜4の2価の炭化水素基を示し、kは1〜4の整数を示す)、または−R
12−NH−R
13−で表される2価の連結基を示す(R
12およびR
13は、それぞれ独立して、炭素数1〜8の2価の炭化水素基を示す)。また、式(11)中、R
14は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示し、R
15は、水素原子またはメチル基を示す。また、式(12)中、R
16は炭素数1〜14の2価の炭化水素基を示し、mは1または2を示す。〕
【0095】
上記R
10およびR
16で示される炭素数1〜14の2価の炭化水素基としては、メチレン基、炭素数2〜14の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基、炭素数3〜14のシクロアルキレン基、炭素数6〜14のアリーレン基が挙げられる。
また、R
10およびR
16で示される2価の炭化水素基の炭素数としては、好ましくは1〜12であり、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜6である。
上記R
12およびR
13で示される炭素数1〜8の2価の炭化水素基としては、メチレン基、炭素数2〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基、炭素数3〜8のシクロアルキレン基、炭素数6〜8のアリーレン基が挙げられる。
また、上記R
12およびR
13で示される2価の炭化水素基の炭素数としては、好ましくは1〜4である。
上記R
14で示される炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、メチレン基、炭素数2〜12の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基、炭素数3〜12のシクロアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基が挙げられる。
また、上記R
14で示される2価の炭化水素基の炭素数としては、好ましくは1〜8であり、より好ましくは1〜6である。
また、上記R
10、R
12、R
13、R
14およびR
16におけるアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基の具体例としては、R
2で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0096】
上記R
11で示される炭素数2〜4の2価の炭化水素基としては、R
4で示されるものと同様のものが挙げられる。また、kとしては1または2が好ましい。
【0097】
また、上記R
5で示されるエチレン性不飽和基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種を有する1価の有機基のうち、エチレン性不飽和基、エポキシ基を合計で2個以上有するものとしては、下記式(13)〜(15)で表されるものが挙げられる。
【0099】
〔式(13)中、R
17は、単結合、メチレン基または炭素数2〜3のアルキレン基を示し、R
18およびR
19は、それぞれ独立して、オキシラニル基、オキセタニル基、グリシジルオキシ基、ビニル基およびビニルオキシ基から選ばれる1種以上の置換基を有する炭素数1〜5のアルキル基(置換アルキル基とも称する)、オキシラニル基、オキセタニル基、グリシジルオキシ基、ビニル基、またはビニルオキシ基を示し、R
20は、オキシラニル基、オキセタニル基、グリシジルオキシ基、ビニル基およびビニルオキシ基から選ばれる1種以上の置換基を有する炭素数1〜5のアルキル基、オキシラニル基、オキセタニル基、グリシジルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、または水素原子を示す。
また、式(14)中、R
21は、メチレン基または炭素数2〜3のアルキレン基を示し、R
22およびR
23は、それぞれ独立して、オキシラニル基、オキセタニル基、グリシジルオキシ基、ビニル基およびビニルオキシ基から選ばれる1種以上の置換基を有する炭素数1〜5のアルキル基を示す。
また、式(15)中、R
24およびR
25は、それぞれ独立して、オキシラニル基、オキセタニル基、グリシジルオキシ基、ビニル基およびビニルオキシ基から選ばれる1種以上の置換基を有する炭素数1〜5のアルキル基を示す。〕
【0100】
上記R
17で示されるアルキレン基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。具体例としては、R
2で示されるアルキレン基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0101】
上記R
18およびR
19におけるアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
また、上記アルキル基の炭素数は1〜5であるが、好ましくは1〜3である。
【0102】
上記アルキル基は、オキシラニル基、オキセタニル基、グリシジルオキシ基、ビニル基およびビニルオキシ基から選ばれる1種以上の置換基を有する。該置換基の中でも、オキシラニル基、グリシジルオキシ基、ビニル基が好ましい。
また、該置換基の位置および個数は任意であるが、R
18およびR
19のそれぞれに含まれるその個数は、好ましくは1〜3個であり、より好ましくは1個である。
なお、R
18およびR
19で示されるアルキル基は、上記置換基以外の置換基(水酸基等)を有していてもよい。
【0103】
また、R
18およびR
19は、オキシラニル基、オキセタニル基、グリシジルオキシ基、ビニル基、またはビニルオキシ基であってもよく、上記置換基と同様のものが好適な例としてあげられる。
【0104】
上記R
20で示されるオキシラニル基、オキセタニル基、グリシジルオキシ基、ビニル基およびビニルオキシ基から選ばれる1種以上の置換基を有する炭素数1〜5のアルキル基は、R
18で示されるものと同様である。
また、R
20としては、上記置換アルキル基、水素原子が好ましく、ビニル基を有する炭素数1〜5のアルキル基、水素原子がより好ましい。
【0105】
式(14)中、R
21は、メチレン基または炭素数2〜3のアルキレン基を示し、該アルキレン基はR
17で示される炭素数2〜3のアルキレン基と同様である。
また、式(14)中のR
22、R
23、式(15)中のR
24、R
25は、R
18で示される置換アルキル基と同様である。
【0106】
また、式(16)中、R
5で示される2価以上の有機基としては、2〜4価の有機基が好ましく、2価の有機基がより好ましい。
上記2価の有機基としては、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、基−R
a(OR
b)
q−が好ましい(R
aおよびR
bは、それぞれ独立して、炭素数2〜10のアルキレン基を示し、qは1〜5の整数を示す)。
また、3価または4価の有機基としては、炭素数1〜20の3価または4価の炭化水素基が好ましく、その炭素数は、好ましくは6〜18であり、より好ましくは12〜16である。
【0107】
上記炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖状の2価の炭化水素基、炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。なお、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基および脂環式炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよい。
【0108】
上記直鎖状または分岐鎖状の2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜16であり、より好ましくは1〜12であり、さらに好ましくは1〜8であり、特に好ましくは1〜6である。
また、該直鎖状または分岐鎖状の2価の炭化水素基としては、メチレン基、アルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0109】
上記2価の脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは3〜12であり、より好ましくは3〜7である。
また、該2価の脂環式炭化水素基としては、シクロアルキレン基の他、アダマンチレン基等の2価の橋かけ環炭化水素基が挙げられるが、好ましくはシクロアルキレン基である。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等が挙げられる。
なお、2価の脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素上でもよい。
【0110】
上記2価の芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6〜18であり、より好ましくは6〜12である。
また、該2価の芳香族炭化水素基としては、アリーレン基が好ましい。該アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、トリレン基、ナフチレン基の他、アントラセンジイル、フルオレンジイル基等が挙げられる。
なお、上記2価の芳香族炭化水素基の結合部位は、芳香環上のいずれの炭素上でもよい。
【0111】
また、R
5で示される炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、上記の他に、上記直鎖状または分岐鎖状の2価の炭化水素基と上記2価の芳香族炭化水素基が連結した2価の基が挙げられる。斯様な2価の基としては、フェニレンメチレン基(−C
6H
4−CH
2−)、フェニレンエチレン基(−C
6H
4−CH
2−CH
2−)等のアリーレンアルキレン基;フェニレンジメチレン基(−CH
2−C
6H
4−CH
2−)、フェニレンジエチレン基(−CH
2−CH
2−C
6H
4−CH
2−CH
2−)等のアリーレンジアルキレン基等が挙げられる。
【0112】
また、上記R
5で示される基−R
a(OR
b)
q−中、R
aおよびR
bは、それぞれ独立して、炭素数2〜10のアルキレン基を示すが、その炭素数は好ましくは2〜4であり、より好ましくは2または3である。斯かるアルキレン基の具体例としては、上記R
5で示されるアルキレン基と同様のものが挙げられる。
また、基−R
a(OR
b)
q−中のqは1〜5の整数を示すが、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1または2である。
【0113】
また、式(16)中、pは1以上の整数を示す。但し、R
5の価数とpは同一であり、例えば、p=1のとき、R
5はエチレン性不飽和基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種を有する1価の有機基であり、p=2のとき、R
5は2価の有機基であり、p=3のとき、R
5は3価の有機基である。また、pが2以上の整数である場合、p個のR
1およびp個のR
2は、それぞれ同一でも異なっていてもよいが、合成の容易さの観点から、同一であるのが好ましい。
また、上記pとしては、1〜4の整数が好ましく、1または2がより好ましい。
【0114】
また、上記化合物(16)のうち式(16)中のpが1のものは、反応性基(エチレン性不飽和基およびエポキシ基)を1つ有するもの(単官能)と反応性基を2つ以上有するもの(多官能)に大別され、これら化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用されていてもよい。この中でも、反応性基を1つ有する化合物が好ましい。
【0115】
上記反応性基を1つ有する化合物としては、例えば、アリルアルコール、1−ペンテン−5−オール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2−プロパンジオール1−(メタ)アクリレート、3−メチル−2,3−ブタンジオール−2−モノ(メタ)アクリレート、6−オキシラニル−1−ヘキサノール、8−オキシラニル−1−オクタノール、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4'−ビニルビフェニル−4−オール等の水酸基とともに反応性基を1つ有する化合物;アクリルアミド、アリルアミン、メチルアリルアミン、2−ビニルアニリン、3−(ビニルオキシ)プロピルアミン、4−(ビニルオキシ)−1−ブタンアミン、4−アミノスチレン等のアミノ基またはアミド基とともに反応性基を1つ有する化合物;アリルメルカプタン、アリル(2‐メルカプトエチル)アミン、4−ビニルベンゼンメタンチオール等のメルカプト基とともに反応性基を1つ有する化合物等が挙げられる。
【0116】
一方、上記反応性基を2つ以上有する化合物としては、1,3−ビス(グリシジルオキシ)−2−プロパノール、1−オキシラニル−3−ブテン−1−オール、1−オキシラニル−3−ブテン−2−オール、1,3,5,6−テトラキス(グリシジルオキシ)−2,4−ヘキサンジオール、2−ビニル−4−ペンテン−1−オール、1−(ビニルオキシ)−2−プロペン−1−オール、1−(ビニルオキシ)−5−ヘキセン−2−オール等の水酸基とともに反応性基を2つ以上有する化合物;ビスアクリルアミド等のアミノ基またはアミド基とともに反応性基を2つ以上有する化合物;2−(ジアリルアミノ)エタンチオール、4−アリル−1,6−ヘプタジエン−4−チオール、4,6−ビス(アリルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−チオール等のメルカプト基とともに反応性基を2つ以上有する化合物が挙げられる。
【0117】
また、上記化合物(16)のうち式(16)中のpが2以上の整数のものは架橋剤として作用する。
斯様な架橋剤として作用する化合物(16)としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジオール等の2価のアルコール;グリセロール、シクロヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の3価または4価のアルコール;レゾルシノール、ヒドロキノン、カテコール、アントラジオール等のフェノール性水酸基を2個有する化合物;フロログルシノール、ピロガロール等のフェノール性水酸基を3個有する化合物;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノフルオレン等の2価のアミン;2,2’,2’’−ニトリロトリエタンアミン、メラミン、ベンゼントリアミン、テトラアミノメタン、ベンゼンテトラアミン等の3価または4価のアミン;メルカプトメタノール等の水酸基を有する1価のチオール;1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、トリグリコールジメルカプタン、ベンゼンジチオール等の2価のチオール;ベンゼントリチオール、エテンテトラチオール、ベンゼンテトラチオール等の3価または4価のチオール等が挙げられる。これらの中でも、2価のアルコール、2価のアミン、2価のチオールが好ましい。
【0118】
化合物(16)の使用量は、構造単位(2)1モルに対し、通常、0.001〜10モル当量であり、好ましくは0.01〜10モル当量である。
【0119】
また、上記重合体(3)がチオウレタン結合を有する場合(化合物(16)としてZが酸素原子のものを用いた場合)やジチオカルバミド酸エステル結合(ジチオカルバメート結合)を有する場合(化合物(16)としてZがイオウ原子のものを用いた場合)、重合体(3)としては、構造単位(2)を有する重合体と化合物(16)を触媒存在下で反応させて得られたものが好ましい。該触媒としては塩基が好ましく、ジラウリン酸ジブチルすず、ヨウ化銅(I)等の金属触媒、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、ピコリン、キノリン等のアミン化合物が挙げられる。この中でも、ジアザビシクロウンデセン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ピコリン、キノリンが好ましい。
上記触媒の使用量は、構造単位(2)1モルに対し、通常0.001〜10モル当量である。
【0120】
また、上記反応は、溶媒存在下で行うのが好ましい。該溶媒としては、上記化合物(1)を重合させる工程1で使用される溶媒と同様のものが挙げられ、中でも、アミド類、スルホキシド類、ケトン類、エーテル類、炭化水素類、C
1〜
3の低級アルコール類が好ましい。
溶媒の使用量は、構造単位(2)を有する重合体に対し、通常0.1〜100Lであり、好ましくは0.1〜10Lである。
【0121】
また、上記反応の反応時間は、通常、30秒〜72時間であり、好ましくは30秒〜48時間であり、より好ましくは30秒〜24時間である。また、反応温度は特に限定されないが、好ましくは−20〜溶媒の沸点であり、より好ましくは0〜80℃である。
【0122】
なお、化合物(16)のR
5を必要に応じて保護して反応させて得られたものでもよい。また、反応生成物の単離は、構造単位(2)を有する重合体の単離と同様にして行えばよい。
【0123】
また、上記重合体(3)の具体例としては、例えば、下記式(3−1)または(3−2)で表される構造単位を有する重合体が挙げられる。
【0125】
〔式(3−1)中、R
5-1は、エチレン性不飽和基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種を有する1価の有機基を示し、R
1、R
2およびZは、前記と同義である。〕
【0127】
〔式(3−2)中、R
5-2は、2価の有機基を示し、R
1、R
2およびZは前記と同義である。〕
【0128】
上記式(3−1)中、R
5-1で示されるエチレン性不飽和基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種を有する1価の有機基は、R
5で示されるエチレン性不飽和基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種を有する1価の有機基と同様であり、式(3−2)中、R
5-2で示される2価の有機基は、R
5における2価の有機基と同様である。
【0129】
また、重合体(3)は、式(2)で表される構造単位を有する重合体式(16)で表される化合物に由来する構造単位以外の構造単位を有していてもよい。斯様な構造単位としては、構造単位(2)を有する重合体が有していてもよい化合物(1)以外のエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位として例示したものが挙げられる。
【0130】
また、重合体(3)が、化合物(16)のうち式(16)中のpが1のものを用いて得られたものである場合、該重合体(3)の重量平均分子量(M
w)、分子量分布(M
w/M
n)の好ましい範囲は、構造単位(2)を有する重合体と同様である。
【0131】
また、本発明は、下記式(4)で表される化合物も提供するものである。
【0133】
〔式(4)中、R
1、R
2、R
5、Zおよびpは、前記と同義である。〕
【0134】
上記式(4)で表される化合物としては、下記式(4−1)または(4−2)で表される化合物が挙げられる。
【0136】
〔式(4−1)中、R
1、R
2、R
5-1およびZは、前記と同義である。〕
【0138】
〔式(4−2)中、R
1、R
2、R
5-2およびZは、前記と同義である。〕
【0139】
化合物(4)は、式(2)で表される構造単位を有する重合体を化合物(1)に変更する以外は、重合体(3)と同様にして合成できる。
【0141】
(上記式中、各記号は前記と同義である。)
【0142】
そして、上記重合体(3)および化合物(4)は、架橋剤、密着助剤、分散剤、高屈折材料等として有用である。また、優れた熱安定性を有する。また、重合体(3)及び化合物(4)の合成は、大気中でも反応を進行させることが可能であり(仮に窒素雰囲気やドライルームで行わない場合であっても反応を進行させることができる)、効率よく重合体(3)および化合物(4)を合成できる。
【0143】
なお、化合物(1)を、化合物(16)のうちR
5がエチレン性不飽和基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも1種を有する1価の有機基で示される化合物に由来する重合体(反応性基を2つ以上有する化合物に由来する架橋ポリマーを含む)に反応させれば、該重合体の側鎖に含まれる基−ZHを、基−Z−(C=S)−(NH)−R
2O−(C=O)−(CR
1)=CH
2に変換できる。斯かる反応は、重合体(3)の製造と同様に行えばよい。
【0144】
また、上記化合物(1)および構造単位(2)を有する重合体は、上述のようにイソチオシアネート基を有し反応性に富むものであり、上記化合物(16)等以外の化合物とも容易に反応するため、様々なチオウレタン化合物、チオウレア化合物、ジチオカルバミド酸エステル化合物(ジチオカルバメート化合物)の出発原料として極めて有用である。
また、その他の化合物(1)および構造単位(2)を有する重合体と反応可能な化合物(16)等以外の化合物としては、例えば、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール、フルオロベンジルアルコール、クロロベンジルアルコール、ブロモベンジルアルコール、フルオロフェニルエタノール、チオフェンメタノール、チオフェンエタノール、アントラセンメタノール、シクロプロパンメタノール等の1価のアルコール;ベンジルアミン、フルオロベンジルアミン、クロロベンジルアミン、ブロモベンジルアミン、フルオロフェニルアミン、ベンズヒドリルアミン等の1価のアミン;メチルメルカプタン、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、ベンゼンチオール、ベンゼンメタンチオール等の1価のチオール;
等が挙げられる。
【実施例】
【0145】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0146】
〔分析条件〕
実施例における各分析条件は以下に示すとおりである。
【0147】
<分子量測定>
重合体の分子量は、東ソー株式会社製HLC−8320 SEC SYSTEMを用いて、THFを溶離液としてGPC測定を行いポリスチレン換算で求めた。
【0148】
<NMRスペクトル>
1H−NMRスペクトルおよび
13C−NMRスペクトルは、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準物質として用いて、日本電子株式会社製JNM−AL300および日本電子株式会社製JNM−ECS400により測定した。
【0149】
<IRスペクトル>
実施例1、3および4:Thermo Scientific社製のSMARTiTRサンプリングユニット付NICOLET iS10を用いてATR法により測定した。
実施例5〜8:Thermo Scientific社製のSMARTiTRサンプリングユニット付NICOLET iS10を用いてKBr法により測定した。
【0150】
<ガラス転移温度(Tg)>
セイコーインスツルメント社製DSC−6200により、アルミパンを用いて、50mL/minの窒素気流中−100〜200℃までの温度範囲を10℃/minで昇温させて測定した。
【0151】
<5%重量減少温度(T
d5)>
セイコーインスツルメント社製TG−DTA6200により、アルミパンを用いて、50mL/minの窒素気流中10℃/minで上昇させて測定した。
【0152】
実施例1 2−イソチオシアネートエチルメタクリレートの合成
(1)2−ブロモエチルメタクリレートの合成
1L四つ口フラスコをヒートガンで乾燥させた後、フラスコ内を窒素ガスで置換し、CH
2Cl
2(モレキュラーシーブ4Aで乾燥させたもの)500mL、2−ブロモエタノール33.1mL(58.0g,464mmol)、およびトリエチルアミン64.4mL(46.9g,463mmol)を加えて0℃に冷却した。次いで、あらかじめ蒸留精製しておいたメタクリル酸クロリド48.4g(463mmol)、およびCH
2Cl
2(モレキュラーシーブ4Aで乾燥させたもの)33mLを、滴下ロートを用いて30分間かけてフラスコ内に滴下し、室温で11時間撹拌した後、水を加えて冷却した。次いで、CH
2Cl
2で抽出し、塩水で洗浄し、MgSO
4で乾燥した後、溶媒を減圧留去してから200Pa(1.5mmHg)、63℃で更に減圧蒸留し、2−ブロモエチルメタクリレートを収率75%で得た。得られた化合物の構造式および分析結果を以下に示す。
【0153】
【化17】
【0154】
1H NMR (300 MHz, 293 K, CDCl
3, δ): 6.17 (dq, J = 1.6, 1.0 Hz, 1 H, C=CH
2), 5.62 (dq, J = 1.6, 1.5 Hz, 1 H, C=CH
2), 4.46 (t, J = 6.1 Hz, 2 H, -OCH
2CH
2-), 3.56 (t, J = 6.1 Hz, 2 H, -CH
2CH
2Br), 1.97 (dd, J = 1.5, 1.0 Hz, 3 H, C=C-CH
3) ppm.
13C NMR (75 MHz, 293 K, CDCl
3, δ): 166.9, 135.8, 126.4, 64.0, 28.9, 18.3 ppm.
IR (ATR) ν
max: 2959 (w, C-H), 1716 (s, C=O), 1636 (m, C=C), 1296 (m, C-O), 1148 (s, C-O), 924 (m, C-O) cm
-1.
Rf値:0.7(溶離液組成:CH
2Cl
2)
bp:63〜65℃(1.5mmHg)
【0155】
(2)2−イソチオシアネートエチルメタクリレートの合成
500mLナスフラスコに、アジ化ナトリウム3.7g(57.0mmol,1.1eq.)、上記で得た2−ブロモエチルメタクリレート10.0g(51.8mmol)、p−メトキシフェノール320mg(2.59mmol,0.05eq.)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mL(2−ブロモエチルメタクリレートが0.5mol/Lとなる量)を加え、150℃で10分間撹拌し、その後、水を加えて冷却しヘキサンで抽出し、水および塩水で洗浄し、CaCl
2で乾燥した。
次いで、ヘキサンを100mLまで減圧留去し、ジエチルエーテル100mLおよびトリフェニルホスフィン13.6g(51.8mmol,1.0eq.)を加え、室温で10時間攪拌した。
次いで、減圧留去して溶媒を除去し、二硫化炭素12mLを加えて3時間還流し、水を加えて冷却した後、ジエチルエーテルで抽出し、水および塩水で洗浄しCaCl
2で乾燥した。溶媒を減圧留去し、8Pa(0.06mmHg)、52℃で更に減圧蒸留し、2−イソチオシアネートエチルメタクリレートを収率31%で得た。得られた化合物の構造式および分析結果を以下に示す。
【0156】
【化18】
【0157】
1H NMR (300 MHz, 293 K, CDCl
3, δ): 6.21 (dq, J = 2.0, 1.4 Hz, 1 H, C=CH
2), 5.66 (dq, J = 2.0, 2.0 Hz, 1 H, C=CH
2), 4.36 (t, J = 6.9 Hz, 2 H, -OCH
2CH
2-), 3.80 (t, J = 6.9 Hz, 2 H, -CH
2CH
2NCS), 1.99 (dd, J = 2.0, 1.4 Hz, 3 H, C=C-CH
3) ppm.
13C NMR (75 MHz, 293 K, CDCl
3, δ): 166.8, 135.6, 126.7, 62.3, 44.4, 18.2 ppm.
IR (ATR) ν
max: 2958 (w, C-H), 2216 (w, N=C=S), 2086 (br, N=C=S), 1716 (s, C=O), 1636 (m, C=C), 1293 (m, C-O), 1149 (s, C-O), 941 (m, C-O) cm
-1.
Rf値:0.3(溶離液組成:ヘキサン/ジエチルエーテル:4/1)
bp:51〜53℃(0.06mmHg)
【0158】
実施例2 ポリ(2−イソチオシアネートエチルメタクリレート)の合成
アンプル管に、実施例1で得た2−イソチオシアネートエチルメタクリレート250mg(1.46mmol)、メチルエチルケトン1.46mL、およびアゾビスイソブチロニトリル(あらかじめメタノールで再結晶精製したもの)4.8mg(0.092mmol,0.063eq.)を加えて脱気した後封かんした。60℃で4時間撹拌した後、液体窒素につけた。THFを加えて濃度を0.1mol/Lにした後、エーテル100mLに再沈殿させた。濾過して固体を乾燥しポリ(2−イソチオシアネートエチルメタクリレート)を収率34%で得た。得られた化合物の構造式および分析結果を以下に示す。
【0159】
【化19】
【0160】
1H NMR (400 MHz, 353 K, DMSO-d
6, δ): 4.31-4.05 (m, 2 H, -OCH
2CH
2-), 4.03-3.84 (m, 2 H, -OCH
2CH
2Br), 2.16-1.83 (m, 2 H, -CH
2-CCO), 1.32-0.83 (m, 3 H, -CH
3) ppm.
13C NMR (100 MHz, 353 K, DMSO-d
6, δ): 175.7, 131.1, 62.5, 53.2, 44.4, 43.8, 17.2 ppm.
M
n:40,700、M
w:211,600、M
n/M
w:5.2
【0161】
実施例3 2−イソチオシアネートエチルアクリレートの合成
メタクリル酸クロリドをアクリル酸クロリドに変更した以外は実施例1の(1)と同様の操作で2−ブロモエチルアクリレートを合成し、500mLナスフラスコに、アジ化ナトリウム4.00g(61.5mmol,1.1eq.)、上記で得た2−ブロモエチルアクリレート10.0g(55.9mmol)、p−メトキシフェノール347mg(2.8mmol,0.05eq.)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mL(2−ブロモエチルアクリレートが0.5mol/Lとなる量)を加え、60℃で1時間撹拌し、その後、水を加えて冷却しジエチルエーテルで抽出し、水および塩水で洗浄し、CaCl
2で乾燥した。
次いで、ジエチルエーテルを100mLまで減圧留去し、トリフェニルホスフィン14.7g(55.9mmol,1.0eq.)を加え、室温で8時間撹拌した。
次いで、減圧留去して溶媒を除去し、二硫化炭素15mLを加えて室温で10時間撹拌した。反応終了後ジエチルエーテルを100mL加えて濾過して固体を取り除いた後、減圧留去してジエチルエーテルを取り除き、20Pa(0.15mmHg),58℃で更に減圧蒸留し、2−イソチオシアネートエチルアクリレート(オイル状、無色透明)を収率18%で得た。得られた化合物の構造式および分析結果を以下に示す。
【0162】
【化20】
【0163】
1H NMR (300 MHz, 293 K, CDCl
3, δ): 6.50 (dd, J = 17.3, 1.4 Hz, 1 H, C=CH
2), 6.17 (dd, J = 17.3, 10.4 Hz, 1 H, CH
2=CH-), 5.93 (dd, J = 10.4, 1.4 Hz, 1 H, C=CH
2), 4.35 (t, J = 5.2 Hz, 2 H, -OCH
2CH
2-), 3.80 (t, J = 5.2 Hz, 2 H, -CH
2CH
2NCS) ppm.
13C NMR (75 MHz, 293 K, CDCl
3, δ): 165.6, 132.1, 127.7, 62.2, 44.4 ppm.
IR (ATR) ν
max: 2956 (w, C-H), 2215 (br, N=C=S), 2091 (br, N=C=S), 1722 (s, C=O), 1634 (m, C=C), 1406 (m, C=C), 1262 (s, C-O), 1174 (m, C-O), 981 (m, C-O) cm
-1.
Rf値:0.2(溶離液組成:ヘキサン/ジエチルエーテル:4/1)
bp:58℃(0.15mmHg)
【0164】
実施例4 ポリ(2−イソチオシアネートエチルアクリレート)の合成
アンプル管に、実施例3で得た2−イソチオシアネートエチルアクリレート250mg(1.59mmol)、メチルエチルケトン1.59mL、およびアゾビスイソブチロニトリル(あらかじめメタノールで再結晶精製したもの)5.2mg(0.032mmol)を加えて凍結脱気した後封管した。60℃で24時間撹拌した後、エーテル100mLに再沈殿した。遠心分離(3000rt/min,30min)でポリマーを分離し、真空乾燥してポリ(2−イソチオシアネートエチルアクリレート)(白色、固体)を収率69%で得た。得られた化合物の構造式および分析結果を以下に示す。
【0165】
【化21】
【0166】
1H NMR (400 MHz, 313 K, acetone-d
6, δ): 4.48-4.30 (m, 2 H, -OCH
2CH
2-), 4.08-3.91 (m, 2 H, -OCH
2CH
2NCS), 2.69-2.46 (m, 1 H, COC-H), 2.21-1.68 (m, 2 H, -CH
2-CCO) ppm.
13C NMR (100 MHz, 313 K, acetone-d
6, δ): 174.9, 133.2, 63.4, 45.4, 42.3, 35.7 ppm.
IR (ATR) ν
max: 2924 (w, C-H), 2207 (br, N=C=S), 2083 (br, N=C=S), 1728 (s, C=O), 1151 (s, C-O) cm
-1.
M
n:18,800、M
w:90,000、M
n/M
w:4.8
Tg:2.4℃、T
d5:268.9℃
【0167】
実施例5 ポリアクリレートのチオウレアネットワークポリマーの合成
10mLサンプル瓶に、実施例4で得たポリ(2−イソチオシアネートエチルアクリレート)50mgおよびテトラヒドロフラン0.318mLを加えて室温で溶かし、均一溶液にした。これに1,6−ヘキサンジアミン3.7mg(0.0318mmol)のテトラヒドロフラン溶液0.318mL(0.1mol/L)を更に加えて室温で1分間撹拌した。得られた白色ゲルを真空乾燥し、ポリアクリレートのチオウレアネットワークポリマー(白色固体)を収率100%で得た。得られた化合物の構造式および分析結果を以下に示す。
【0168】
【化22】
【0169】
IR (KBr) ν
max: 3363 (br, N-H), 2932 (w, C-H), 2209 (br, N=C=S), 2094 (br, N=C=S), 1728 (s, C=O), 1548 (m, C=S), 1153 (m, C-O).
Tg:8.6℃、T
d5:143.9℃
【0170】
実施例6 ポリメタクリレートのチオウレアネットワークポリマーの合成
10mLサンプル瓶に、実施例2で得たポリ(2−イソチオシアネートエチルメタクリレート)50mgおよびテトラヒドロフラン0.293mLを加えて室温で溶かし、均一溶液にした。これに1,6−ヘキサンジアミン3.4mg(0.0293mmol)のアセトン溶液0.293mL(0.1mol/L)を更に加えて室温で1分間撹拌した。得られた白色ゲルを真空乾燥し、ポリメタクリレートのチオウレアネットワークポリマー(白色固体)を収率100%で得た。得られた化合物の構造式および分析結果を以下に示す。
【0171】
【化23】
【0172】
IR (KBr) ν
max: 3366 (br, N-H), 2934 (w, C-H), 2214 (br, N=C=S), 2111 (br, N=C=S), 1735 (s, C=O), 1545 (m, C=S), 1146 (m, C-O).
Tg:74.5℃、T
d5:168.2℃
【0173】
実施例7 ポリアクリレートのチオウレタンネットワークポリマーの合成
10mLサンプル瓶に、実施例4で得たポリ(2−イソチオシアネートエチルアクリレート)50mg、テトラヒドロフラン0.318mLおよび1,6−ヘキサンジオール3.76mg(0.0318mmol)を加えて室温で溶かし、均一溶液にした。これにジアザビシクロウンデセン4.84mg(0.0318mmol)のテトラヒドロフラン溶液0.318mL(0.1mol/L)を更に加えて室温で3時間撹拌した。得られた無色透明ゲルを真空乾燥し、ポリアクリレートのチオウレタンネットワークポリマー(白色固体)を収率100%で得た。得られた化合物の構造式および分析結果を以下に示す。
【0174】
【化24】
【0175】
IR (KBr) ν
max: 3224 (br, N-H), 2930 (w, C-H), 2092 (br, N=C=S), 1727 (s, C=O), 1538 (m, C=S), 1155 (m, C-O).
Tg:8.5℃、T
d5:106.6℃
【0176】
実施例8 ポリメタクリレートのチオウレタンネットワークポリマーの合成
10mLサンプル瓶に、実施例2で得たポリ(2−イソチオシアネートエチルメタクリレート)50mg、テトラヒドロフラン0.293mLおよび1,6−ヘキサンジオール3.46mg(0.0293mmol)を加えて室温で溶かし、均一溶液にした。これにジアザビシクロウンデセン4.46mg(0.0293mmol)のアセトン溶液0.293mL(0.1mol/L)を更に加えて室温で20分間撹拌した。得られた無色透明ゲルを真空乾燥し、ポリメタクリレートのチオウレタンネットワークポリマー(白色固体)を収率100%で得た。得られた化合物の構造式および分析結果を以下に示す。
【0177】
【化25】
【0178】
IR (KBr) ν
max: 3436 (br, N-H), 2931 (w, C-H), 2210 (br, N=C=S), 2102 (br, N=C=S), 1736 (s, C=O), 1542 (m, C=S), 1146 (m, C-O).
Tg:89.7℃、T
d5:129.2℃
【0179】
試験例1 安定性試験
実施例1〜4で得られた化合物を、それぞれテトラヒドロフラン(実施例1〜4で得られた化合物がそれぞれ1.0mol/Lとなる量)に溶解させ、実施例1〜4で得られた化合物の10モル当量の水をこれらに添加し、室温で12時間撹拌した。その後、テトラヒドロフランと水を除去し
1H NMR測定を行い前掲の各スペクトルと比較したところ、いずれも変化はみられなかった。
したがって、実施例1〜4で得られた化合物は、大気中の水と反応しにくく安定性に優れる。