(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962348
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】鉄塔基礎構造、及び鉄塔基礎の補強方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/42 20060101AFI20160721BHJP
E02D 27/38 20060101ALI20160721BHJP
E04H 12/10 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
E02D27/42 Z
E02D27/38 B
E04H12/10 A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-193194(P2012-193194)
(22)【出願日】2012年9月3日
(65)【公開番号】特開2014-47581(P2014-47581A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100090516
【弁理士】
【氏名又は名称】松倉 秀実
(74)【代理人】
【識別番号】100089244
【弁理士】
【氏名又は名称】遠山 勉
(72)【発明者】
【氏名】和田 収司
(72)【発明者】
【氏名】河村 直明
(72)【発明者】
【氏名】田邉 成
(72)【発明者】
【氏名】武石 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】杉本 剛康
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−300872(JP,A)
【文献】
特開2011−032698(JP,A)
【文献】
特開2008−208634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00〜 27/52
E04H 12/00〜 12/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔の脚を支持する基礎と、
前記基礎の上部周囲に設けられた平板状のマット基礎とを備え、
前記基礎と前記マット基礎との間には、間隙が形成され、
前記基礎は、前記脚が接続された柱状部と、当該柱状部の下部に設けられたベース部とを含み、前記柱状部は、少なくとも一部にテーパ部を有し、
前記テーパ部に接続され、当該テーパ部を垂直化する補強部を更に備え、
前記補強部と前記マット基礎との間に前記間隙が形成されることで、前記マット基礎は、前記基礎から独立して沈下できるとともに、前記基礎の変位のうち、垂直方向以外の方向の変位を抑制する鉄塔基礎構造。
【請求項2】
鉄塔の脚を支持する基礎の上部周囲を掘削する掘削工程と、
前記掘削工程後、前記基礎の上部周囲に設けるマット基礎の鉄筋を組み立てる鉄筋組立工程と、
前記鉄筋組立工程後、前記マット基礎のコンクリートを打設する打設工程と、を備える鉄塔基礎の補強方法であって、
前記打設工程では、前記基礎と前記マット基礎との間に間隙が形成されるよう、当該マット基礎のコンクリートを打設し、
前記基礎は、前記脚が接続された柱状部と、当該柱状部の下部に設けられたベース部とを含み、前記柱状部は、少なくとも一部にテーパ部を有し、
前記鉄塔基礎の補強方法は、前記テーパ部に接続され、当該テーパ部を垂直化する補強部を設置する補強部設置工程を更に備え、
前記補強部と前記マット基礎との間に前記間隙が形成されることで、前記マット基礎は、前記基礎から独立して沈下できるとともに、前記基礎の変位のうち、垂直方向以外の方向の変位を抑制する、
鉄塔基礎の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔基礎構造、及び鉄塔基礎の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電用鉄塔などの塔状の建造物に適用される基礎構造に関する技術として、例えば特許文献1、2に記載の技術がある。特許文献1には、4カ所ある既設の逆T字形の基礎のそれぞれの上に十分大きな面積の押さえ部と押さえ部を結ぶ梁部とで四角の枠状にコンクリートを打って基礎を連結して補強することが開示されている。また、特許文献2には、鉄塔のすべての脚部を、単一のマットスラブによって支持し、マットスラブの下方の地盤に、鋼矢板を打設するとともに、マットスラブの少なくとも一部を鋼矢板の上端縁で支持することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−300872号公報
【特許文献2】特開2001―81791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
比較的規模が小さい送電線鉄塔1xの基礎として、標準基礎とよばれる4脚(2x)が独立した逆T字形の基礎3xがある(
図1参照)。この基礎3xでは鉄塔1xからの荷重が鉄塔1xの床板32xを介して地盤に伝えられる。そのため、鉄塔1xの床板部32xの地質がその荷重に対し充分な耐力を有している必要がある。一方で、大規模地震では、地震の揺れ、液状化等により、地盤変形の影響から、鉄塔にも被害が発生することが確認されている。特に床板が比較的小さい鉄塔、支持地盤が傾斜している鉄塔、脚間荷重差が大きい鉄塔で、液状化現象が発生した地域の鉄塔の被害が確認されている。これら被害が発生した鉄塔は、
図2に示すように、地震の影響によって基礎3xが回転または沈下し、鉄塔1xの基礎3xの根開き寸法が変わることで鉄塔に被害が発生したと考えられる。根開きとは、鉄塔1xの脚2xの間隔、換言すると、鉄塔1xの基礎3xの中心部同士の間隔である。
【0005】
ここで、電線張り替えなどで設計荷重が増加した場合や、地耐力不足が想定される場合の現在一般的に行われている補強方法として、
図3に示す方法がある。
図3では、既設の基礎3xの上部を巻き込んだマット基礎4xで補強し、更に杭5xを追加することで補強している。マット基礎4xで補強することで、既設の基礎3xの上部は強制的に変位を抑制されることになり、その結果、基礎3xの変位を抑制することができる。またマット基礎4xでは地耐力が不足する場合でも、杭5xを追加することで、基礎3xの変位を抑制することができる。
【0006】
しかしながら、基礎3xの上部に大きなマット基礎4xを構築して連結すると、マット基礎4xの剛性確保のため、基礎部分の重量が基礎3xの数倍以上の重量増となり,地耐力が不足する場合がある。また、表層付近に重量物を設けることは、地震時における鉄塔の挙動についても懸念が残る。この場合には、
図4に示すように、鉄塔1xの全体が傾斜することが懸念される。また、地震時の地盤沈下により、マット基礎4xの下部に空洞ができ、マット基礎4xの本来の機能を発揮できなくなり、地盤沈下を助長することも懸念される。杭5xを設けることで、このような問題の発生を抑制できるが、杭5xを設ける場合は工事費が高くなる他、用地が狭いなど、用地の周辺環境の問題で杭施工機械が搬入
できない場合もある。
【0007】
本発明では、上記の問題に鑑み、鉄塔基礎の変位を抑制する新たな技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上述した課題を解決するため、既設鉄塔基礎の周囲に間隙を設けた上でマット基礎を形成することとした。
【0009】
より詳細には、本発明は、鉄塔基礎構造に関し、鉄塔の脚を支持する基礎と、前記基礎の上部周囲に設けられた平板状のマット基礎とを備え、前記基礎と前記マット基礎との間には、間隙が形成され、前記マット基礎は、前記基礎から独立して沈下できるとともに、前記基礎の変位のうち、垂直方向以外の方向の変位を抑制する。
【0010】
本発明によれば、基礎とマット基礎との間に間隙が形成され、マット基礎が基礎から独立して沈下できる。マット基礎と基礎は互いに独立していることから、マット基礎は、基礎の荷重、すなわち鉄塔そのものの荷重について、垂直荷重を負担する必要がなく、水平荷重のみを負担すればよい。ここで、垂直荷重は水平荷重の数倍にも及びその負担は大きいことから、従来のマット基礎には、垂直荷重を負担できる十分な厚みが要求されていた。これに対し、本発明のマット基礎は、水平荷重のみを負担すればよいため、水平荷重を負担できる厚みであればよく、従来よりも薄くすることができる。
【0011】
また、本発明に係る鉄塔基礎構造は、基礎の変位のうち、垂直方向以外の方向の変位を抑制することができるので、基礎の変位は垂直方向のみが許容される。基礎が傾くと、基礎の下面に作用する力は傾いた側の力が大きくなり、不等分布となる。これに対し、本発明では、基礎の変位が垂直方向のみ許容され、基礎が傾きにくいことから、基礎の下面に作用する力は、常に等分布に近い状態となる。その結果、基礎の耐力が向上する。
【0012】
また、マット基礎は、鉄塔下部の地盤を覆い、マット基礎の自重が鉄塔下部の地盤に作用する。そのため、主たる荷重である風荷重が作用した場合に鉄塔下部の地盤に起こり得る、既設基礎の影響による地盤の膨れ上がり(圧縮時)、地盤のせん断破壊(引張時)を抑制することができる。また、マット基礎を従来よりも薄くでき、また、杭基礎も不要となることから、本発明は経済性にも優れている。また、杭打機などの大型重機を用いる必要がないため、狭い敷地に設置された鉄塔にも適用できる。
【0013】
ここで、本発明に係る鉄塔基礎構造において、前記基礎は、前記脚が接続された柱状部と、当該柱状部の下部に設けられたベース部とを含み、前記柱状部は、少なくとも一部にテーパ部を有し、前記鉄塔基礎構造は、前記テーパ部に接続され、当該テーパ部を垂直化する補強部を更に備える構成としてもよい。
【0014】
鉄塔は脚が傾いているものが多く、そのため、基礎も柱状部の一部が傾斜しているものが多い。本発明に係る鉄塔基礎構造は、このような柱状部の一部が傾斜している鉄塔にも好適である。柱状部に、その一部が傾斜したテーパ部がある場合、基礎とマット基礎との間の間隙が大きければ、マット基礎は、自由に沈下可能となる。但し、間隙が大きいと、水平荷重を抑制する効果が弱まることが懸念される。そこで、本発明では、テーパ部を垂直化する補強部を更に備える構成とした。これにより、マット基礎は、基礎から独立して沈下でき、基礎の変位のうち、垂直方向以外の方向の変位を効果的に抑制することができる。
【0015】
なお、基礎の下部を支持する地盤の強度は、必ずしも一定ではなく、鉄塔の脚の位置に
よっては、地盤の強度が異なることも想定される。その場合、鉄塔の脚に作用する負荷は、脚毎に異なることが想定される。そこで、他の脚と比較して負荷が大きい脚が特定できる場合には、負荷が大きい脚を支持する基礎のテーパ部に接続される補強部の強度を他の補強部より強くしてもよい。これにより、より安定的に鉄塔の変位(垂直方向以外への変位)を抑制することができる。
【0016】
また、上記のように地盤の強度の差などにより、他の脚と比較して負荷が大きい脚が存在する場合には、負荷が大きい脚側に鉄塔が傾くことが想定される。そこで、負荷が大きい脚が特定できる場合には、負荷が大きい脚を支持する基礎とマット基礎との間の間隙を他の間隙よりも狭くしてもよい。これにより、より安定的に鉄塔の変位(垂直方向以外への変位)を抑制することができる。
【0017】
また、基礎の下方に改良地盤を設けてもよい。これにより、より安定的に鉄塔の変位を抑制することができる。また、本発明では、マット基礎により鉄塔の変位の抑制効果を十分に得られることから、改良地盤を設ける場合でも、使用する改良材は従来よりも少なくすることができる。
【0018】
また、本発明は、鉄塔基礎の補強方法として特定することもできる。例えば、本発明は、鉄塔基礎の補強方法であり、鉄塔の脚を支持する基礎の上部周囲を掘削する掘削工程と、前記掘削工程後、前記基礎の上部周囲に設けるマット基礎の鉄筋を組み立てる鉄筋組立工程と、前記鉄筋組立工程後、前記マット基礎のコンクリートを打設する打設工程と、を備え、前記打設工程では、前記基礎と前記マット基礎との間に間隙が形成されるよう、当該マット基礎のコンクリートを打設する。本発明に係る鉄塔基礎の補強方法によれば、既設の鉄塔基礎を、地震などにより変位しにくい基礎とすることができる。
【0019】
また、本発明に係る鉄塔基礎の補強方法において、前記基礎は、前記脚が接続された柱状部と、当該柱状部の下部に設けられたベース部とを含み、前記柱状部は、少なくとも一部にテーパ部を有し、前記鉄塔基礎の補強方法は、前記テーパ部に接続され、当該テーパ部を垂直化する補強部を設置する補強部設置工程を更に備えるようにしてもよい。これにより、より安定的に鉄塔の変位(垂直方向以外への変位)を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鉄塔基礎の変位を抑制する新たな技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】従来例に係る補強された鉄塔基礎が傾く様子を示す。
【
図6】実施形態に係る鉄筋基礎の補強方法の処理フローを示す。
【
図7】実施形態に係る鉄塔基礎構造において、マット基礎が沈下する様子を示す。
【
図10】第三変形例に係るマット基礎の形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、鉄塔の一部の脚の負荷が他の脚の負荷よりも大きくなる場合をわかりやすく説明するため、傾斜した支持層の上に軟弱層が形成された地盤に鉄塔を設けた場合を例に説明する。以下の説明
は例示であり、本発明は以下に説明する事項に限定されない。鉄塔の一部の脚の負荷が他の脚の負荷よりも大きくなることが想定される一般的な例としては、地盤の強度が一定でない場合(地盤の固さが不均質な場合)が挙げられる。
【0023】
<<構成>>
図5は、実施形態に係る鉄塔基礎の構成を示す。
図5(a)は、鉄塔基礎の構成の断面図であり、
図5(b)は、鉄塔基礎の構成の平面図である。実施形態に係る鉄塔1は、傾斜した支持層の上に軟弱層が形成された地盤に設けられている。鉄塔1の基礎3の一つは、支持層に達しているものの、他の基礎3は、支持層に達していない。そのため、実施形態に係る鉄塔1は、地震の揺れ、液状化、地盤沈下等が発生した場合、支持層が低い側に傾くことが想定される。実際に鉄塔を施工する際は、支持層が傾いていても、他の基礎も支持層に達するように施工される。但し、本実施形態では鉄塔の一部の脚の負荷が他の脚の負荷よりも大きくなる場合をよりわかりやすく説明するため、鉄塔1の基礎3の一つが支持層に達していない場合を例に説明する。実施形態に係る鉄塔1は、このような傾き、すなわち変位を抑制するため、マット基礎4と補強部6が設けられ、基礎3とマット基礎4との間には間隙7が形成されている。以下、具体的に説明する。
【0024】
鉄塔1は、4本の脚2を有している。鉄塔の脚2の間隔は、上部から下部へ向けて徐々に広がっており、各脚2は夫々所定の角度で傾いている。
【0025】
各脚2の下部には、夫々基礎3が設けられている。この基礎3は、柱状の柱状部31と、柱状部31の下部に接続された板状のベース部32とによって構成されている。本実施形態に係る基礎3は、平面視がほぼ正方形であり、垂直断面が逆T字形である。柱状部31は、平面視がほぼ正方形であるが、脚2の傾きに合わせて、外側に位置する2つの面が傾斜面(以下、テーパ部とする)となっている。すなわち、柱状部31も脚2と同じく、上部から下部へ向けて徐々に広がっている。一方、内側に位置する2つの面は垂直に近い面となっている。ベース部32は、平面視がほぼ正方形であり、中心部に柱状部31の下部が接続されている。なお、一つのベース部32の下面のみが支持層と接している。
【0026】
柱状部31の上部周囲(天端部周囲)には、平板状のマット基礎4が設けられている。基礎3とマット基礎4との間には、全周に亘って、間隙7が形成されており、マット基礎4は基礎3から独立して沈下可能である。補強部6が設けられた箇所では、補強部6と基礎3との間に間隙7が形成されている。間隙7は、例えば数ミリ程度とすることができる。マット基礎4は、平面視がほぼ正方形であり、4つの脚2を全て覆う面積を少なくとも有している。マット基礎4の厚みは、水平荷重を負担できるよう設計されている。マット基礎4は、鉄筋コンクリートによって構成することができる。従来のマット基礎は、垂直荷重を負担する必要があり、厚く設計する必要があった。そのため、従来のマット基礎は、格子状の鉄筋を上下に少なくとも2段組む必要があった。これに対し、実施形態に係るマット基礎4は、垂直荷重を負担する必要はなく、水平荷重のみ負担すればよいことから、従来のマット基礎4よりも薄くすることができる。したがって、鉄筋も、格子状の鉄筋を1段のみとすることができる。なお、格子状の鉄筋に加えて、
図5(b)に示すように、対角線上に位置する基礎3同士を結ぶように、細長いリング状の主鉄筋を更に設けるようにしてもよい。圧縮時の水平荷重は、
図5(b)の矢印で示すように、平面視において、鉄塔1の中心から基礎3に向けて作用する。したがって、対角線上に細長い円状の主鉄筋を設けることで、このような水平荷重に対抗することができる。なお、
図5(b)におけるC−C脚とは、圧縮脚(compression脚)を意味する。つまり、C−C脚は、沈下が
想定される側の脚を意味する。
図5(b)では、図示が省略されているが、C−C脚と反対側に位置する2つの脚は、T−T脚となる。T−T脚とは、引張脚(tension脚)を意
味する。つまり、T−T脚は、浮き上がりが想定される側の脚を意味する。
【0027】
柱状部31のテーパ部には、テーパ部を垂直化する補強部6が設けられている。補強部6は、テーパ部を補うため、例えばくさび形とすることができる。補強部6の形状は、柱状部31のテーパ部(斜面)が垂直面となるよう、テーパ部の形状に合わせて設計すればよい。なお、柱状部31が円筒である場合には、補強部6もこれに合わせて設計すればよい。テーパ部は、コンクリート、鋼鉄、高強度プラスチック等により構成することができる。
【0028】
<<補強方法>>
次に、鉄塔基礎の補強方法について説明する。
図6は、鉄筋基礎の補強方法の処理フローを示す。
【0029】
まず、掘削工程(S01)では、鉄塔1の脚2を支持する基礎3の上部周囲が掘削される。掘削範囲は、マット基礎4の面積と厚みによって決定される。次に、整地工程(S02)では、掘削した底面に砕石が敷かれ、転圧が行われる。なお、実施形態に係るマット基礎4は、従来よりも薄くてよいため、ベースコンクリート(捨コンともいう)を打設せず、転圧後の採石上に直接コンクリートを打設することができる。整地工程が完了すると、鉄筋組立工程へ進む。
【0030】
鉄筋組立工程(S03)では、マット基礎4の鉄筋が組み立てられる。掘削した側面には、型枠を配置してもよい。次に、打設工程(S04)では、基礎3とマット基礎4との間に間隙が形成されるよう、マット基礎4のコンクリートが打設される。なお、補強部6をコンクリートで構成する場合には、マット基礎4の打設と同じタイミングで打設することができる。すなわち、補強部6のコンクリートをマット基礎4に先行して打設する必要はなく、補強部6とマット基礎4を縁切り材によって仕切った状態で、補強部6とマット基礎4のコンクリートを同じタイミングで打設すればよい。なお、補強部6を鋼鉄や高強度プラスチック等によって構成する場合には、補強部6を予め基礎3のテーパ部に接続した上で、マット基礎4のコンクリートを打設するとよい。打設工程が完了すると、養生工程へ進む。
【0031】
養生工程(S05)では、打設されたコンクリートが一定期間養生される。なお、掘削した側面に型枠を用いた場合には、型枠が撤去される。また、補強部6とマット基礎4のコンクリートを同じタイミングで打設した場合には、縁切り材が撤去される。以上により、鉄塔基礎の補強が完了する。
【0032】
<<作用効果>>
実施形態に係る鉄塔基礎構造によれば、基礎3とマット基礎4との間に間隙7が形成され、マット基礎4が基礎3から独立して沈下できる。ここで、
図7は、実施形態に係る鉄塔基礎構造において、マット基礎が沈下する様子を示す。
図7に示すように、マット基礎4と基礎3は互いに独立していることから、マット基礎4が基礎3から独立して沈下できる。また、マット基礎4は、基礎3の荷重、すなわち鉄塔1そのものの荷重について、垂直荷重を負担する必要がなく、水平荷重のみを負担すればよい。そのため、マット基礎4の厚みは、水平荷重を負担できる厚みであればよく、従来よりも薄くすることができる。
【0033】
また、基礎3の変位のうち、垂直方向以外の方向の変位を抑制することができるので、基礎3の変位は垂直方向のみが許容される。基礎3が傾くと、基礎3の下面に作用する力は傾いた側の力が大きくなり、不等分布となる(
図2参照)。これに対し、実施形態に係る鉄塔基礎構造では、基礎3の変位が垂直方向のみ許容され、基礎3が傾きにくいことから、基礎3の下面に作用する力は、常に等分布となる(
図7参照)。その結果、基礎の耐力が向上する。
【0034】
また、マット基礎4は、鉄塔1下部の地盤を覆い、マット基礎4の自重が鉄塔下部の地盤に作用する。そのため、鉄塔1下部の地盤に起こり得る、地盤の膨れ上がり(圧縮時)、地盤のせん断破壊(引張時)を抑制することができる。また、マット基礎4を従来よりも薄くでき、また、杭基礎も不要となることから、実施形態に係る鉄塔補強構造は、経済性にも優れている。また、実施形態に係る鉄塔補強構造は、杭打機などの大型重機を用いる必要がないため、狭い敷地に設置された鉄塔にも適用できる。
【0035】
なお、基礎3のテーパ部には補強部6が形成されていることから、マット基礎4は、基礎から独立して沈下でき、基礎の変位のうち、垂直方向以外の方向の変位を効果的に抑制することができる。
【0036】
<<変形例>>
実施形態のように、基礎3の下部に位置する支持層が傾いており、負荷が大きい脚2が特定できる場合には、負荷が大きい脚2を支持する基礎3のテーパ部に接続される補強部6の強度を他の補強部より強くしてもよい。これにより、より安定的に鉄塔の変位(垂直方向以外への変位)を抑制することができる。
【0037】
また、上記と同じく、基礎3の下部に位置する支持層が傾いており、負荷が大きい脚が特定できる場合には、負荷が大きい脚2を支持する基礎3とマット基礎4との間の間隙を他の間隙よりも狭くしてもよい。これにより、より安定的に鉄塔の変位(垂直方向以外への変位)を抑制することができる。
【0038】
また、基礎3の下方に改良地盤を設けてもよい。これにより、より安定的に鉄塔の変位を抑制することができる。また、実施形態に係る鉄塔基礎構造では、マット基礎4により鉄塔1の変位の抑制効果を十分に得られることから、改良地盤を設ける場合でも、使用する改良材は従来よりも少なくすることができる。
【0039】
また、上述した実施形態では、平面視正方形のマット基礎4を例に説明したが、マット基礎4は、例えば
図8から
図10に示す態様でもよい。
図8は、第一変形例に係るマット基礎の形状を示す。第一変形例に係るマット基礎4aの内側が、角部が面取りされた四角形でくりぬかれている。また、
図9は、第二変形例に係るマット基礎の形状を示す。第二変形例に係るマット基礎4bは、対角線上にある基礎を結ぶ2本の直線状のマット基礎41bが交差しており、全体として十字状を形成している。なお、交差部分には、必要に応じて杭基礎を設けるようにしてもよい。また、
図10は、第三変形例に係るマット基礎の形状を示す。第三変形例に係るマット基礎4cは、各基礎3の周囲に設けられた4つの正方形のマット基礎41cと、この4つの正方形のマット基礎41cを連結する直線状のマット基礎42cによって構成されている。これら変形例に係るマット基礎によっても、実施形態に係るマット基礎4と同様の効果を得ることができる。また、変形例に係るマット基礎4a、4b、4cは、実施形態に係るマット基礎4と比較して面積が小さいことから、より経済性に優れている。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明はこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【符号の説明】
【0041】
1・・・鉄塔
2・・・脚
3・・・基礎
31・・・柱状部
32・・・ベース部
4・・・マット基礎
6・・・補強部
7・・・間隙