特許第5962360号(P5962360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5962360カーテンシールドエアバッグ装置の設置構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962360
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】カーテンシールドエアバッグ装置の設置構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/213 20110101AFI20160721BHJP
【FI】
   B60R21/213
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-199417(P2012-199417)
(22)【出願日】2012年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-54867(P2014-54867A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 義宏
(72)【発明者】
【氏名】金子 研
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−138859(JP,A)
【文献】 特開2006−213221(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/108101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車等の車両に設置されるカーテンシールドエアバッグ装置の設置構造であって、
該カーテンシールドエアバッグ装置は、袋状に形成されて内部に膨張流体が流入される袋体と、該袋体に流入させる膨張流体を生成するインフレータとを備え、車体フレームに組み付けられる天井モジュールの一部として天井モジュール本体に組み込まれており、
前記車体フレームには、グリップ支持ブラケットが車室内に向けて突出させて設けられており、
記袋体の上部には、前記グリップ支持ブラケットの突出形状が遊びを有した状態で挿通可能に形成される輪状の引掛け部と、前記引掛け部の少なくとも内周の下部位置で前記袋体と共に膨張可能な膨出部とが設けられており、
前記インフレータから前記袋体に膨張流体が流入して前記袋体が膨張展開する際に、前記膨出部が膨張して前記引掛け部に挿通された前記グリップ支持ブラケットの突出形状に密着するように当接し、前記袋体は、前記引掛け部前記グリップ支持ブラケットの突出形状引っ掛けられることにより該グリップ支持ブラケットに吊下げられるカーテンシールドエアバッグ装置の設置構造。
【請求項2】
請求項1に記載のカーテンシールドエアバッグ装置の設置構造において、
前記カーテンシールドエアバッグ装置は、前記グリップ支持ブラケットからの支持を受けるプロテクタを備え、
前記プロテクタは、前記袋体の膨張展開の際に生ずる該袋体の膨張展開の反動力を支持するカーテンシールドエアバッグ装置の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設置されるカーテンシールドエアバッグ装置の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の乗員保護システムの中の1つとしてエアバッグが知られている。このようなエアバッグには、カーテンシールドエアバッグ装置と称されるものがある。このカーテンシールドエアバッグ装置は、自動車側面衝突時または自動車横転時に、ルーフサイドレールに沿った部分から膨らみ、運転席搭乗者や助手席搭乗者や後席搭乗者の、頭部および頚部を保護する。このカーテンシールドエアバッグ装置も、一般のエアバッグと同様、バッグ袋体と、インフレータとを備える。バッグ袋体は、袋状に形成され、インフレータは、バッグ袋体に流入させる膨張流体を生成する。
一方、この種のカーテンシールドエアバッグ装置は、次の手順により車体フレームに設置される。すなわち、車体フレームをなすピラー上部には天井モジュール(車両天井)が組み付けられており、この後に、サンバイザー、内装モール、アシストグリップ等が組み付けられる。さらに、ピラーにカーテンシールドエアバッグ装置は固定される(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。つまり、このカーテンシールドエアバッグ装置を構成するバッグ袋体は、ピラーに対して螺子固定されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−198407
【特許文献2】特開2009−67221
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他方、膨張展開したバッグ袋体は、ルーフサイドレールから垂れ下がる。このように垂れ下がったバッグ袋体は、螺子固定される車体フレームのピラーに支持される。従来、このように垂れ下がるバッグ袋体の支持を十分なものとするために、アシストグリップのブラケットにもバッグ袋体を螺子固定しておくことが考えられている。
しかしながら、このようにバッグ袋体の螺子固定個所を増やすと、螺子固定部材の部品点数が増加してしまって設置費用が高価となってしまう。さらに、バッグ袋体の螺子固定の作業点数が増加してしまって設置作業が煩雑となってしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、カーテンシールドエアバッグ装置の設置構造において、バッグ袋体をアシストグリップのブラケットに支持させるにあたり、部品点数の削減して設置費用を安価にしつつ、設置工数も削減して設置作業の簡単化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために本発明に係るカーテンシールドエアバッグ装置の設置構造は次の手段をとる。
すなわち、本発明の第1の発明に係るカーテンシールドエアバッグ装置の設置構造は、自動車等の車両に設置されるカーテンシールドエアバッグ装置の設置構造であって、該カーテンシールドエアバッグ装置は、袋状に形成されて内部に膨張流体が流入される袋体と、該袋体に流入させる膨張流体を生成するインフレータとを備え、車体フレームに組み付けられる天井モジュールの一部として天井モジュール本体に組み込まれており、前記車体フレームには、グリップ支持ブラケットが車室内に向けて突出させて設けられており、前記袋体の上部には、前記グリップ支持ブラケットの突出形状が遊びを有した状態で挿通可能に形成される輪状の引掛け部と、前記引掛け部の少なくとも内周の下部位置で前記袋体と共に膨張可能な膨出部とが設けられており、前記インフレータから前記袋体に膨張流体が流入して前記袋体が膨張展開する際に、前記膨出部が膨張して前記引掛け部に挿通された前記グリップ支持ブラケットの突出形状に密着するように当接し、前記袋体は、前記引掛け部前記グリップ支持ブラケットの突出形状引っ掛けられることにより該グリップ支持ブラケットに吊下げられる
第1の発明に係るカーテンシールドエアバッグ装置の設置構造によれば、膨張展開した際の袋体の上部には引掛け部が設けられており、袋体は、引掛け部の引っ掛けによってグリップ支持ブラケットに吊下げ可能にされている。これによって、引掛け部の引っ掛けによってグリップ支持ブラケットに袋体を吊り下げて支持することができる。したがって、袋体を螺子固定に用いていた螺子固定部材等を無くすことができて部品点数を削減でき、カーテンシールドエアバッグ装置の設置費用を安価にすることができる。また、袋体を螺子固定させるための螺子固定作業も削減できて、設置作業の簡単化も図ることができる。
【0007】
第2の発明に係るカーテンシールドエアバッグ装置の設置構造によると、カーテンシールドエアバッグ装置は、前記グリップ支持ブラケットからの支持を受けるプロテクタを備え、前記プロテクタは、前記袋体の膨張展開の際に生ずる該袋体の膨張展開の反動力を支持する。
即ち、グリップ支持ブラケットからの支持を受けるプロテクタは、袋体の膨張展開の際に生ずる袋体の膨張展開の反動力を支持する。これによって、袋体の膨張展開をプロテクタで受けて、袋体が所定の膨張展開となるように、より精確にガイドすることができる。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明に係るカーテンシールドエアバッグ装置の設置構造によれば、部品点数の削減して設置費用を安価にでき、工数も削減して設置作業の簡単化を図ることができる。
第2の発明に係るカーテンシールドエアバッグ装置の設置構造によれば、袋体が所定の膨張展開となるように、より精確にガイドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】天井モジュールを示す斜視図である。
図2図1の丸抜き個所IIを拡大して示す斜視図である。
図3】天井モジュールを分離させて示す分離斜視図である。
図4図3の引掛け部の個所を拡大して示す分離斜視図である。
図5図4の引掛け部の組付け状態を示す組付け斜視図である。
図6】車体フレームに天井モジュールを組み付ける前の前面図である。
図7図5の引掛け部のVII−VII断面矢視を示す断面図である。
図8図5の引掛け部のVIII−VIII断面矢視を示す断面図である。
図9図5の引掛け部のIX−IX断面矢視を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るカーテンシールドエアバッグ装置(以下、簡単に「カーテンエアバッグ」と称する)の設置構造を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1の斜視図は天井モジュール30を示している。図2の斜視図は、天井モジュール30のうち図1の丸抜き個所IIを拡大して示している。図3の分離斜視図は、天井モジュール30をなす天井モジュール本体31とカーテンエアバッグ40とを分離させて示している。図4の分離斜視図は、図3の引掛け部62個所を拡大して示している。図5の組付け斜視図は、図4の引掛け部62組付け状態を示している。この天井モジュール30は、車両としての自動車の天井をなすものである。この天井モジュール30が配設される自動車は、前後3列でシートが装備されるタイプの自動車である。このため、この天井モジュール30には、サンルーフ構造等が設けられている。
天井モジュール30は、車両の天井をなすように車体フレーム10に組み付けられる。この天井モジュール30は、概略、天井モジュール本体31と、カーテンエアバッグ40とを備える。このため、天井モジュール本体31のサイド部分には、カーテンエアバッグ40が組み付けられている。言い換えれば、カーテンエアバッグ40は、車体フレーム10に組み付けられる天井モジュール30の一部として天井モジュール本体31に組み込まれている。この天井モジュール本体31は、従前の天井モジュールとして構成されるものであり、成形天井32に対して不図示のモジュール部品(例えば、オーバーヘッドコンソール、ルームランプ等)が装備されている。この天井モジュール30を車体フレーム10に組み付けた後には、サンバイザー(不図示)、内装モール(不図示)、アシストグリップ35等が組み付けられる。
【0011】
次に、天井モジュール30が組み付けられる車体フレーム10について説明する。図3等に示す車体フレーム10は、自動車の骨組みを構成し、前から順に、フロントピラー11、Aピラー12、Bピラー13、Cピラー14、を備える。これらのピラー11,12,13,14の上端を連接するように一体化されるルーフサイドレール15が設けられている。天井モジュール30は、このルーフサイドレール15に沿って組み付けられる。
図4の分離斜視図は、図3の引掛け部62個所を拡大して示している。図5の組付け斜視図は、図4の引掛け部62組付け状態を示している。ルーフサイドレール15には、アシストグリップ35の配設個所に応じて、グリップ支持ブラケット20が設けられている。具体的には、図3に示すように、ルーフサイドレール15の片側にはアシストグリップ35が3個所で配設されるように設定されている。このグリップ支持ブラケット20は、アシストグリップ35を2点で支持するように、ルーフサイドレール15に対して並列して2つずつ設けられている。このようにして、ルーフサイドレール15に設けられるグリップ支持ブラケット20は、3つのアシストグリップ35の個数に応じて対をなす6個所にて設けられている。
グリップ支持ブラケット20は、図4に示すように、脚部21と、保持部23と、係止孔25と、係合支持部27とを備える。脚部21,21は、一側の端部22,22がルーフサイドレール15にスポット溶接されて、他側を車室内に向けて突き出させるように延びる構成となっている。保持部23には、アシストグリップ35の係止凸部38を係止させる係止孔25が設けられている。また、この係止孔25の上側には、抜け止めの返し形状を有する係合支持部27が設けられている。このグリップ支持ブラケット20は、脚部21にて後に説明するカーテンエアバッグ40の引掛け部62に挿通させることが可能な突出形状を有している。この脚部21,21による突出形状によって、後述する引掛け部62を引っ掛ける構造が確保されている。
【0012】
次に、本発明に係るカーテンシールドエアバッグ装置としてのカーテンエアバッグ40について説明する。図6は、車体フレーム10にカーテンエアバッグ40を含む天井モジュール30を組み付ける前の前面図である。図7は、図5の引掛け部62のVII−VII断面矢視を示す断面図である。図8は、図5の引掛け部62のVIII−VIII断面矢視を示す断面図である。図9は、図5の引掛け部62のIX−IX断面矢視を示す断面図である。
カーテンエアバッグ40は、各図で示すように、概略、プロテクタ41と、バッグ袋体61と、インフレータ65(図3参照)とを備える。なお、バッグ袋体61は、袋状に形成されて内部に膨張流体が流入されるように形成されている。図示されるバッグ袋体61は、膨張展開する前の状態の巻き取られた状態となっている。インフレータ65は、このバッグ袋体61に流入させる膨張流体を生成する。
プロテクタ41は、図1に示すように、機能として、保持部42と、螺子固定部45と、引掛け支持部51とを備える。保持部42は、バッグ袋体61を保持するバッグ保持部421と、インフレータ65とを保持するインフレータ保持部422とを備える。これらのバッグ保持部421とインフレータ保持部422とには、適宜の螺子孔を有する螺子固定部45が設けられている。具体的に言えば、Aピラー12に対してはA螺子固定部451が螺子固定されるようになっており、Bピラー13に対してはB螺子固定部452が螺子固定されるようになっており、Cピラー14に対してはC螺子固定部453が螺子固定されるようになっている。このように保持部42と螺子固定部45とを有するプロテクタ41は、バッグ袋体61とインフレータ65とを保持した状態で、Aピラー12,Bピラー13,Cピラー14に対して、不図示の螺子部材を介して螺子固定される。
【0013】
図2および図4に示すように、このプロテクタ41には、引掛け支持部51が設けられている。この引掛け支持部51は、上記したプロテクタ41の上側に張り出すように形成される。この引掛け支持部51には、前後片側ずつで、引掛け保持部52と組付け部57とが設けられている。なお、これら引掛け保持部52と組付け部57は、共通の樹脂製の板状部材53に対して設けられている。板状部材53のうち板状部材53の前後の端縁には、折り曲げ部531,532が設けられている。また、この折り曲げ部531,532に隣接する部分には、天井モジュール本体31に当接する支持突出片533,534が設けられている。
引掛け保持部52は、バッグ袋体61に一体で取り付けられる引掛け部62を保持する。この引掛け保持部52は、概略、把持部54と連通孔55とが設けられることにより構成される。把持部54は、引掛け部62の上端縁を把持するように構成される。この把持部54は、ヒンジ部541と、挟み板部542と、係止部543とにより構成される。すなわち、挟み板部542は、ヒンジ部541にて折り返されることにより引掛け部62を板状部材53と挟み込む。係止部543は、挟み板部542に対してヒンジ部541とは反対側に設けられている。係止部543は、板状部材53に対して嵌合する構造を有することより係止する構造を有する。このようにして引掛け部62を挟み込んだ挟み板部542は、係止部543を係止させることにより、挟み板部542と板状部材53とによる引掛け部62の挟み込み状態を保持する。引掛け保持部52に設けられる連通孔55は、引掛け部62に設けられる引掛け孔63と連通する孔形状を有している。この連通孔55には、引掛け部62の引掛け孔63と同様、グリップ支持ブラケット20が挿し込まれる。
【0014】
ところで、挟み板部542とにより引掛け部62を挟み込む板状部材53は、ガイドリブ535により引掛け部62の引掛け孔63を孔位置をガイド保持している。このように挟み込む板状部材53を含むプロテクタ41は、連通孔55に挿し込まれるグリップ支持ブラケット20からの支持力を受けることとなる。また、このプロテクタ41は、バッグ袋体61と一体にされる引掛け部62を把持部54により把持している。このため、プロテクタ41は、バッグ袋体61が膨張展開するに際して、このバッグ袋体61の膨張展開の反動力を受けることができるようになっている。つまり、プロテクタ41は、バッグ袋体61の膨張展開の際に生ずるバッグ袋体61の膨張展開の反動力を支持する。
また、連通孔55の周縁の上側の部分は、この連通孔55に挿し込まれたグリップ支持ブラケット20のうちの係合支持部27が係止する。また、この連通孔55に挿し込まれたグリップ支持ブラケット20は、引掛け部62を保持する引掛け支持部51を支持する。つまり、グリップ支持ブラケット20は、プロテクタ41(引掛け支持部51)を含むカーテンエアバッグ40を支持することとなる。
組付け部57は、上記した引掛け保持部52をなす板状部材53に対して設けられている。この組付け部57は、天井モジュール本体31に向けて当接可能に車室内に向けて突き出す形状を有している。図6に示すように、組付け部57には、鋲部材59が係合する係合孔58が設けられている。組付け部57に天井モジュール本体31の成形天井32を挟み込むようにした状態で、鋲部材59を係合孔58に係合させる。このようにして、組付け部57により、引掛け支持部51は、天井モジュール本体31と一体化して留められる。なお、この天井モジュール本体31には、この鋲部材59を挿通させる適宜の挿通孔が設けられている。また、組付け部57は、対をなすグリップ支持ブラケット20,20同士の間に配置される。
【0015】
バッグ袋体61の上部には、図2および図4に示すように、輪状をなす引掛け部62が設けられている。この引掛け部62は、膨張展開した際のバッグ袋体61の上部に対して縫合されることにより設けられている。つまり、引掛け部62は、膨張展開する前の巻き取られた状態のバッグ袋体61に対しても、バッグの取っ手を模した形状により、バッグ袋体61の上部に位置するように設けられている。引掛け部62は、バッグ袋体61の布状素材を数枚(3枚程度)重ねて縫われることにより形成される。
この引掛け部62は、輪状をなすことにより、上記したグリップ支持ブラケット20の突出形状を遊びを有して挿通可能に形成される引掛け孔63が形成される。この引掛け孔63の孔形状の大きさは、上記したグリップ支持ブラケット20の突出形状が挿し込まれた際に、このグリップ支持ブラケット20の突出形状と引掛け孔63との間に遊びが設けられる大きさに設定されている。具体的には、引掛け孔63の開口形状は、グリップ支持ブラケット20の突出形状に対応した矩形の形状を有して形成されている。なお、この引掛け孔63をなす引掛け部62の外周縁も、矩形の形状を有して形成されている。このようにグリップ支持ブラケット20の突出形状を引掛け孔63に挿通させて、引掛け部62をグリップ支持ブラケット20に引っ掛けることとなると、バッグ袋体61はグリップ支持ブラケット20に吊り下げられることとなる。なお、この際、この引掛け部62を保持する引掛け保持部52の連通孔55にも、グリップ支持ブラケット20が挿通されているため、この引掛け保持部52もグリップ支持ブラケット20もブラケット20に引っ掛かることとなる。
【0016】
ところで、バッグ袋体61のうち引掛け部62の内周の下部に位置する部位は、膨出部64として設定されている。この膨出部64は、上記したインフレータ65から膨張流体が流入してバッグ袋体61が膨張展開するにあたり、バッグ袋体61の膨張とともに膨張する部位となっている。この膨出部64が設定される部位は、引掛け孔63が設定されるバッグ袋体61の上部に設定される部位であり、且つ、上記したバッグ袋体61の引掛け部62の内周として構成される部位である。この膨出部64は、通常のバッグ袋体61と同様、インフレータ65からの膨張流体の流入により膨らむ。膨張した膨出部64は、上記したグリップ支持ブラケット20の脚部21に対して密着するように当接する。そうすると、この膨出部64は、グリップ支持ブラケット20から支持力を受けることができる。つまり、このようにグリップ支持ブラケット20から支持力を受ける膨出部64は、膨出部64以外のバッグ袋体61の膨張展開を支持することができるようになっている。
なお、上記した引掛け部62は、バッグ袋体61とは別の布状素材を数枚重ねて縫われることにより形成されるものであった。しかしながら、この引掛け部62は、バッグ袋体61の一部で構成されるものであってもよい。すなわち、この引掛け部62にあっても、バッグ袋体61と内部が連通する構成であってもよい。具体的に言えば、この引掛け部62にあっても、バッグ袋体61の内部と連通するバッグ袋体61の一部として袋状に形成されるものであってもよい。このように引掛け部62を形成した場合には、バッグ袋体61の内部に膨張流体が流入されるとともに、引掛け部62の内部にも膨張流体が流入することとなる。つまり、この引掛け部62も、バッグ袋体61と同様に膨張展開する。なお、この引掛け部62は、バッグ袋体61よりもインフレータ65に近接配置されている。このため、インフレータ65からの膨張流体は、バッグ袋体61に流入するよりも前に引掛け部62に流入され、バッグ袋体61よりも引掛け部62の方が先に膨張展開する。このように引掛け部62の方が先に膨張展開することとなると、引掛け部62はグリップ支持ブラケット20に密着することができて、グリップ支持ブラケット20からの支持を受ける。これによって、引掛け部62は、グリップ支持ブラケット20からの支持を受けながら、この後のバッグ袋体61の膨張展開をガイドすることができる。
【0017】
上記したようにカーテンエアバッグ40が組み付けられた天井モジュール30は、図6に示すように、上記したように引掛け孔63と連通孔55とにグリップ支持ブラケット20を挿し通した状態で、アシストグリップ35が設置される。このアシストグリップ35は、図6に示すように、概略、グリップ本体36と、回動軸37と、係止凸部38とを備える。グリップ本体36は、手握り可能な形状を有して形成される。このグリップ本体36には、回動軸37が軸支持されている。この回動軸37には、係止凸部38が回動可能に支持されている。このため、この係止凸部38は、グリップ本体36に対して相対回転可能になっている。係止凸部38は、孔形状に対して抜け止め可能に嵌合する形状を有して形成されている。この天井モジュール本体31には、上記した鋲部材59と同様、アシストブラケット35の係止凸部38を挿通させる適宜の挿通孔が設けられている。
このため、アシストグリップ35の係止凸部38は、グリップ支持ブラケット20の係止孔25に対して係止することとなる。この際、このアシストグリップ35は、天井モジュール本体31の成形天井32を挟み込むようにした状態で、グリップ支持ブラケット20の係止孔25に対して係止することにより、この天井モジュール本体31を車体フレーム10に組み付けた状態としている。なお、この天井モジュール本体に組み付けられるカーテンエアバッグ40の引掛け保持部52は、このグリップ支持ブラケット20にて支持されることとなる。これと同時に、この引掛け保持部52により保持される引掛け部62も、グリップ支持ブラケット20にて支持される。
【0018】
上記したカーテンエアバッグ40の設置構造によれば、次の作用効果を奏することができる。すなわち、上記したカーテンエアバッグ40の設置構造によれば、膨張展開した際のバッグ袋体61の上部には引掛け部62が設けられており、バッグ袋体61は、引掛け部62の引っ掛けによってグリップ支持ブラケット20に吊下げ可能にされている。これによって、引掛け部62の引っ掛けによってグリップ支持ブラケット20にバッグ袋体61を吊り下げて支持することができる。したがって、バッグ袋体61を螺子固定に用いていた螺子固定部材等を無くすことができて部品点数を削減でき、カーテンエアバッグ40の設置費用を安価にすることができる。また、バッグ袋体61を螺子固定させるための螺子固定作業も削減できて、設置作業の簡単化も図ることができる。
また、上記したカーテンエアバッグ40の設置構造によれば、膨出部64は膨張によりグリップ支持ブラケット20と密着してグリップ支持ブラケット20から支持力を受けて膨出部64以外のバッグ袋体61の膨張展開を支持する。これによって、膨出部64からの支持力を受けてバッグ袋体61の膨張展開が所定の膨張展開となるようにガイドする機能を発揮する。したがって、バッグ袋体61の膨張展開をより安定した所定の膨張展開とすることができる。また、上記したカーテンエアバッグ40の設置構造によれば、カーテンエアバッグ40は、車体フレーム10に組み付けられる天井モジュール30の一部として天井モジュール本体31に組み込まれる。これによって、天井モジュール30を車体フレーム10に組み付けると同時に、車体フレーム10に対してカーテンエアバッグ40を位置決めして配置することができる。したがって、カーテンエアバッグ40を設置するにあたり、位置決め作業等の設置作業を省略できて、設置作業の簡単化を図ることができる。また、上記したカーテンエアバッグ40の設置構造によれば、グリップ支持ブラケット20からの支持を受けるプロテクタ41は、バッグ袋体61の膨張展開の際に生ずるバッグ袋体61の膨張展開の反動力を支持する。これによって、バッグ袋体61の膨張展開をプロテクタ41で受けて、バッグ袋体61が所定の膨張展開となるように、より精確にガイドすることができる。
【0019】
なお、本発明に係るカーテンシールドエアバッグ装置の設置構造にあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく適宜箇所を変更して構成するものであってもよい。例えば、上記した実施の形態では、バッグ袋体61のうち引掛け部62の内周の下部に位置する部位は膨出部64として設定されていたが、本発明に係る膨出部は、これに限定されることなく、前記引掛け部の内周の少なくとも一部が前記膨張流体の流入により膨張展開する前記バッグ袋体のなかで先ず最初に該膨張流体が流入するものとして設定されていればよい。また、上記したプロテクタ41には、バッグ袋体61の膨張展開の際に生ずるバッグ袋体61の膨張展開の反動力を支持するような適宜の構成が含まれて構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0020】
10 車体フレーム
11 フロントピラー
12 Aピラー
13 Bピラー
14 Cピラー
15 ルーフサイドレール
20 グリップ支持ブラケット
21 脚部
22 端部
23 保持部
25 係止孔
27 係合支持部
30 天井モジュール
31 天井モジュール本体
32 成形天井
35 アシストグリップ
36 グリップ本体
37 回動軸
38 係止凸部
40 カーテンエアバッグ
41 プロテクタ
42 保持部
421 バッグ保持部
422 インフレータ保持部
45 螺子固定部
451 A螺子固定部
452 B螺子固定部
453 C螺子固定部
51 引掛け支持部
52 引掛け保持部
53 板状部材
531,532 折り曲げ部
533,534 支持突出片
535 ガイドリブ
54 把持部
541 ヒンジ部
542 挟み板部
543 係止部
55 連通孔
57 組付け部
58 係合孔
59 鋲部材
61 バッグ袋体
62 引掛け部
63 引掛け孔
64 膨出部
65 インフレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9