特許第5962370号(P5962370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5962370-ころ軸受 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5962370
(24)【登録日】2016年7月8日
(45)【発行日】2016年8月3日
(54)【発明の名称】ころ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/46 20060101AFI20160721BHJP
   F16C 19/36 20060101ALI20160721BHJP
【FI】
   F16C33/46
   F16C19/36
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-205715(P2012-205715)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-59037(P2014-59037A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】松田 晋也
【審査官】 北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−12479(JP,A)
【文献】 特開2008−8468(JP,A)
【文献】 特開平11−101245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56、33/30−33/66、
41/00−41/04、43/00−43/08
F16B 23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン穴を形成したころと、ピン穴に挿通されるピンを有し、このピンを介して前記ころを回転可能に支持した保持器とからなり、前記保持器は、軸方向に互いに離間して配置された第1環状部材および第2環状部材と、前記第1環状部材および前記第2環状部材を連結するとともに円周方向に間隔を空けて複数配置した前記ピンとからなり、前記第1環状部材にアイボルトを取付けるためのねじ穴を前記ピンと平行に貫通して形成したころ軸受において、前記ねじ穴の前記ピン側の端部にこの端部を潰すことによってねじ止めを形成したことを特徴とするころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンを介してころを回転可能に支持したころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図7(特許文献1)に示すようなころ軸受は、中空ころ130のピン穴にピン120を挿入し、ピン120の両端を小径環状部材101および大径環状部材110に連結している。小径環状部材101および大径環状部材110にねじ穴111が外径側より内径側へ穿孔され、このねじ穴111にアイボルト140が螺合されている。アイボルト140を使ってクレーンによりころ軸受を吊り下げて搬送している。小径環状部材101および大径環状部材110と、ピン120とからなる保持器100が構成されている。
【0003】
前記ねじ穴111は、組み立て完了後にアイボルト140を螺合させて使用するものであって、組み立て前にアイボルト140を螺合させて使用するものではない。
【0004】
ころ軸受の組み立ては、大径環状部材、中空ころ、小径環状部材の順に積み重ね、中空ころのピン穴にピンを挿入してピンの両端を小径環状部材および大径環状部材に連結することによってなされる。図8に示すように前記積み重ね方向に小径環状部材160を中空ころ150に対して降ろすには、小径環状部材160にピンの軸方向にねじ穴161を穿孔し、中空ころ150と反対側よりねじ穴161にアイボルト170のおねじ部172を螺合させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−101245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記ねじ穴161にアイボルト170のおねじ部172を螺合させるときに、作業者は、アイボルト170を緩ませたくない気持ちがあるため、アイボルト170のフランジ部171が小径環状部材160に当接するまでアイボルト170をねじ込んでしまう。この結果、アイボルト170のおねじ部172の一端が小径環状部材160に対して中空ころ150側へはみ出し、中空ころ150の小径側端面に当たって傷付けてしまう問題があった。本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、アイボルトによってころの端面を傷付けないころ軸受を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ピン穴を形成したころと、ピン穴に挿通されるピンを有し、このピンを介して前記ころを回転可能に支持した保持器とからなり、前記保持器は、軸方向に互いに離間して配置された第1環状部材および第2環状部材と、前記第1環状部材および前記第2環状部材を連結するとともに円周方向に間隔を空けて複数配置した前記ピンとからなり、前記第1環状部材にアイボルトを取付けるためのねじ穴を前記ピンと平行に貫通して形成したころ軸受において、前記ねじ穴の前記ピン側の端部にこの端部を潰すことによってねじ止めを形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ねじ穴にアイボルトを螺合させたときに、アイボルトの一端がねじ止めに当たるので、アイボルトが第1環状部材に対しころ側へ出っ張ることが無くなり、アイボルトによってころの端面を傷付けないころ軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態における円すいころ軸受の断面図である。
図2】本発明の一実施形態における円すいころ軸受の図1の別の角度位置での断面図である。
図3】本発明の一実施形態におけるねじ止めを形成する状態図である。
図4】本発明の一実施形態における小径環状部材をクレーンで搬送している状態図である。
図5】本発明の一実施形態における小径環状部材を円すいころ上に搬送してきた状態図である。
図6】本発明の一実施形態における図1のA−A線矢視図である。
図7】従来のころ軸受の断面図であり、ころ軸受にアイボルトを取付けた状態図である。
図8】アイボルトおよびころの干渉を説明するための参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について、図1乃至図5を参酌しつつ説明する。図1は、円すいころ軸受の断面図、図2は、円すいころ軸受の図1の別の角度位置での断面図、図3は、ねじ止めを形成する状態図、図4は、小径環状部材をクレーンで搬送している状態図、図5は、小径環状部材を円すいころ上に搬送してきた状態図、図6は、図1のA−A線矢視図である。
【0011】
図1乃至図2に示すように、円すいころ軸受10は、リング状の外輪11と、外輪11の内周側に配置されるリング状の内輪20と、外輪11および内輪20間に配置されるリング状の保持器40と、保持器40の後述するピン60に回転可能に支持される複数の円すいころ30とからなっている。前記外輪11、内輪20、保持器40、円すいころ30は、いずれも金属製の材料で構成され、特に鉄系の材料がよく使われる。
【0012】
前記外輪11の内周には、外輪11の軸線に対して傾斜した外輪側軌道面12が形成されている。
【0013】
前記内輪20の外周には、内輪20の軸線に対して傾斜した内輪側軌道面23が形成されている。また内輪20の外周には、内輪側軌道面23を挟んで大径側に半径方向外方へ突出した大径側端部25が形成され、内輪側軌道面23を挟んで小径側に半径方向外方へ突出した小径側端部21が形成されている。
【0014】
大径側端部25の円すいころ30側の端面には、円すいころ30の大径側端面に接触する大径側内側端面24が形成されている。小径側端部21の円すいころ30側の端面には、円すいころ30の小径側端面に接触する小径側内側端面22が形成されている。
【0015】
前記保持器40は、リング状で小径の小径環状部材50と、リング状で大径の大径環状部材55と、前記小径環状部材50および前記大径環状部材55を連結するピン60とからなっている。
【0016】
前記小径環状部材50には、ピン60を挿通する挿通穴51が貫通して形成されている。前記大径環状部材55には、ピン60を螺合する固定ねじ穴56が貫通して形成されている。固定ねじ穴56は、挿通穴51に対応する位置に形成され、固定ねじ穴56および挿通穴51は円周方向に等間隔に複数形成されている。
【0017】
また小径環状部材50には、一対の挿通穴57間で取付ねじ穴53が形成されている(図6)。大径環状部材55には、一対の固定ねじ穴56間で取付ねじ穴57が形成されている。取付ねじ穴57は、取付ねじ穴53に対応する位置に形成され、取付ねじ穴53および取付ねじ穴57は円周方向に等間隔に3乃至4箇所に形成されている。
【0018】
取付ねじ53の円すいころ30側に端部には、ねじ止め54が形成されている。図3に示すように、取付ねじ53は、予めねじ切り加工によって貫通して形成されている。一端にテーパ部96を有するポンチ95を取付ねじ53の他端より挿入し、テーパ部96で取付ねじ51の一部を押し潰すことによって、ねじ止め54が形成される。ねじ止め54は、一山あるいは二山のねじを塑性変形させたものである。
【0019】
図5に示すように取付ねじ53および取付ねじ57には、アイボルト80が螺合される。アイボルト80は、輪部81、フランジ部82、おねじ部83とからなる。輪部81には、後述するロープ88が挿通され、おねじ部83は取付ねじ53および取付ねじ57に螺合される。
【0020】
図1に示すように前記ピン60には、一端に工具が回転方向に係合する係合溝61が形成され、他端に固定ねじ穴56に螺合するおねじ63が形成されている。ピン60には、係合溝61からおねじ63にかけてピン穴31に摺接する嵌合部61が形成されている。挿通穴51およびピン60間には、メカニカルロック70が介挿され、このメカニカルロック70によってピン60は小径環状部材50に固定される。ピン60は内輪20の円周方向に等間隔に複数設けられ、各ピン60は円すいころ30の後述するピン穴31に挿通されている。これによって、各ピン60に円すいころ30が回転可能に支持されている。
【0021】
前記円すいころ30は、円すい形状から頂部を除去した形状を有するもので、前記外輪側軌道面12と前記内輪側軌道面23上を転動する転動面と、小径側の端面に形成された小径側端面と、大径側の端面に形成された大径側端面を有する。円すいころ30には、ピン60を挿通するピン穴31が軸方向に形成されている。
【0022】
続いて上述した構成にもとづいて、円すいころ軸受10の組付けについて説明する。
【0023】
固定部90には、水平な第1載置面91、水平な第2載置面92、傾斜した第3載置面93が形成されている。第1載置面91、第2載置面92、第3載置面93の順に高くなっている。
【0024】
第2載置面92に大径環状部材55を載置し、続いて第1載置面91に内輪20を載置し、第3載置面および大径側内側端面24に円すいころ30を載置し、円すいころ30に小径環状部材50を載置する。大径環状部材55、内輪20、小径環状部材50を移送、載置するときは、アイボルト80、ロープ88およびクレーンを使用する。
【0025】
小径環状部材50を移送、載置するときの例を説明する。
【0026】
別の場所に載置された小径環状部材50の取付ねじ穴53に、アイボルト80のおねじ部83を螺合させる。おねじ部83の一端がねじ止め54に当たり、アイボルト80のおねじ部83のそれ以上の螺合を阻止し、アイボルト80が小径環状部材50から円すいころ30側へはみ出すことが無くなる。
【0027】
クレーンの吊り金具85を、小径環状部材50の水平方向の重力中心と思われるところへ移動させる。アイボルト80にロープ88を通し、このロープ88を吊り金具85のフック87に掛ける。金属製ロープ89は、下へ吊り下げられ、吊り金具85のプーリ86を経て、上へ吊り上げられている。上へ吊り上げられている部分の金属製ロープ89をさらに上へ吊り上げると、吊り金具85とともに小径環状部材50が上昇する。
【0028】
小径環状部材50を円すいころ30上へ移送し、吊り金具85とともに小径環状部材50を下降させ、円すいころ30上へ小径環状部材50を載置する。このとき、アイボルト80が小径環状部材50から円すいころ30側へはみ出していないため、アイボルト80の一端で円すいころ30の小径側端面を傷付けることが無くなる。
【0029】
続いて上述した構成にもとづいて、円すいころ軸受10の作用について説明する。
【0030】
外輪11に対して内輪20が回転すると、円すいころ30は外輪側軌道面12上と内輪側軌道面23上を転動しながら内輪20の回転方向と同方向に移動する。円すいころ30はピン60によって回転可能に支持され、ピン60同士を小径環状部材50および前記大径環状部材55を介して内輪20の円周方向に連結しているため、複数の円すいころ30は、一斉に内輪20の回転方向と同方向に移動する。保持器40も内輪20と同方向に回転する。
【0031】
このとき、円すいころ30の小径側端面に傷が無いため、円すいころ30の小径側端面が小径環状部材50に接触しても、円すいころ30はスムーズに回転しながら内輪20の回転方向へ移動する。
【0032】
内輪20に軸方向のスラスト力が作用すると、円すいころ30の大径側端面が大径側内側端面24に接触し、さらに円すいころ30を介して外輪11に前記スラスト力が作用する。
【0033】
本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0034】
上述した実施形態は、円すいころ軸受10の保持器40にねじ止め54を形成した。他の実施形態として、円筒ころを使用したころ軸受の保持器にねじ止めを形成しても良い。
【符号の説明】
【0035】
10:円すいころ軸受(ころ軸受)、30:円すいころ(ころ)、31:ピン穴、40:保持器、50:小径環状部材(第1環状部材)、53:取付ねじ穴(ねじ穴)、54:ねじ止め、55:大径環状部材(第2環状部材)、60:ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8